起業家メンタリング / 01innovation review vol.2

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Copyright 2015 01Booster Inc. All rights reserved. 日本を事業創造できる国にして世界を変える 起業家メンタリングに関して 1000億企業を世界に100個創る 2016年5月6日 ㈱ゼロワンブースター Rev01 2016年5月6日 Vol.2 01 Innovation Review

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日本を事業創造できる国にして世界を変える

起業家メンタリングに関して1000億企業を世界に100個創る

2016年5月6日

㈱ゼロワンブースター

Rev012016年5月6日

Vol.2

01

Innovation

Review

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本資料はスタートアップを目指す起業チームおよび、大きな事業を目指す社内起業家に対してのメンタリングを対象にしております。

※スタートアップスタートアップは急成長を目的とした組織である

本資料に関して

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1. 01Boosterおよびメンター主導型アクセラレーターに関して (p3-p5)

2. メンタリングとそれを実施する前提に関して(p6-p11)

3. 社内起業・起業の違いと事業開発過程におけるメンタリングのポイント(p12-21)

4. メンターマニュフェスト・行動指針(p22-p33)

本資料のコンテンツ

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• 01BoosterはGlobal Accelerator Network(p3参照)の日本唯一(2016年5月6日現在)の加盟メンバーです。

• 01Boosterは一つの事業として「メンター主導型のアクセラレーター(p4参照)」を運用しております。

• 「コーポレートアクセラレーター」は01Boosterの登録商標です。

01Boosterに関して

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社外の起業家などのメンター

企業内のメンターアクセラレーター

のメンター

総勢40名以上のメンター陣 / メンター主導型アクセラレーター

10-12社程度の選抜ベンチャー企業

支援・運営支援支援

3〜6ヶ月の支援

メンター主導型(Mentor Driven)アクセラレーターの人的構成図

• 「メンター主導型アクセラレーター」は公募された起業家・事業家を選抜し、選抜した起業チームを3-6ヶ月の間、プッシュ型で支援して企業(事業)価値を上げるものです。

• 「メンター主導型」は起業チームの生存率が高い事に特徴があります。代表格のTechStars(http://www.techstars.com)で5年で90%程度です。統計上では一般的に15-60%です。

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Global Accelerator Network(GAN)のクライテリア

Mentor Driven Accelerator / メンター主導型アクセラレーターGANは100都市以上、70個以上のアクセラレーターが加盟する世界最大の

アクセラレーターの業界団体です。

3-6ヶ月

メンター主導

一回10-20チーム

投資が必要

起業家優先

運営チームが起業家http://gan.co

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メンタリングおよびその必要性は何か

メンタリング

メンタリング(Mentoring)とは、人の育成、指導方法の一つ。指示や命令によらず、メンター(Mentor)と呼ばれる指導者が、対話による気づきと助言による被育成者たるプロテジェ(protégé)ないしメンティー(Mentee)本人と、関係をむすび自発的・自律的な発達を促す方法である。※ Wikipediaよりhttps://ja.wikipedia.org/wiki/メンタリング

メンター(Mentor)

支援をする側 ※ 但し、教師が生徒に教えるような形ではありません。

メンティ(Mentee)

支援を受ける側

メンタリングにおける効果

TechCrunchの記事によるとNYCにおける調査で、他の成功した起業家からメンタリングを受けている起業家が受けていない起業家に比べて約3倍パフォーマンスが高い事が報告されております。その他、事業立ち上げに関わらず、その分野の専門家の話を聞くことで、時間短縮の効果もあります。起業にとっては「時間」は非常に貴重な投資資源です。

TechCrunchhttp://techcrunch.com/2015/03/22/mentors-are-the-secret-weapons-of-successful-startups/

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メンターでもっとも重要な4つの要素

• 知らないということを知ること。

• 自分自身を客観的に常に理解するように心がけ、内省をすること。

• 自分も創造者(Entrepreneur)であり続けるということ。

• メンティの事業を成功させるにはどうするか?という立場に立つこと。

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http://thegedi.org/tool/

日本の弱み• 事業を立ち上げる能力• 機会を掴む力• 国際性• 競争力

日本の強み・人材・技術・プロセス・製品

イノベーション

このギャップが勘違いを

引き起こす

日本の起業におけるスキルの国際比較

立上げスキル機会把握は極めて弱い

製品改善プロセス改善は強い 人材も良い

技術吸収も早い

事業立ち上げ以外の能力が高く、かつ、どんな優秀な起業家でも最初のアイデアはボロボロなので、それを見て、事業立ち上げも分かるとメンターが「勘違い」してしまうケースが非常に多くみられます。

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事業のフェーズで人格が異なる

事業の状況によって求められる「人格」「性格」「人」そのものが違います。この点が理解されていないケースが多く、急成長期を経験した人材は、創造期にも力を発揮するとは限りませんし(寧ろ、成功体験があり逆)、創造期のプレーヤーは安定成長期には逆に問題を興す可能性があります。

0→1

1→100

100→150

150→150

50→120

創造期 急成長期 安定成長期 デッドゾーン

衰退期 V字回復期

社内新規事業の起こしやすい時・踊り場が見えて来た時・衰退が見えてきた時

ミラクルが必要革命家

強引さからマネージメン型へ

正しい野心を持ったマイノリティ

変革者

※ 特に社内起業の場合、デッドゾーンでの本質的な事業創造は場合により、経営陣も含めた極めて強固な反発にあうため、非常に強い正しい野心と想いが必要となります。

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実行によりビジネスプランは磨かれる

初期アイデア

実行その1

プランその1

実行その2

この時点では当然ボロボロ

プランその2

初期のビジネスプラン(初期アイデア)はどんなに優秀でも市場の洗礼を受けていないので、ボロボロであり、逆にどんなに素晴らしいプランでも机上の空論であることが広く理解されていません。

このため、初度のアイデアを叩き続ける活動が後を絶ちません。具体的には下記の過ちがたいへん多くみられます。

(起業側)初度アイデアをいつまでも調べている(社内起業側)初度アイデアを叩いて止まっている

実行その3

プランその3

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起業家はプロ野球の選手である

• 大きな事業は既存市場を「Disrupt(破壊)」するので「既存のPlayer」には理解が難しいです。

• その結果、大きな事業を興す人を制御するのは難しい(例:ジョブズ氏、孫正義氏など)し、初度には理解が難しいです。

• 起業家はプロ野球(事業立上げ)の選手と思うとわかりやすいです。プロ野球の経験者でなければ野球そのものは指導(貢献)できません。一方で、筋力トレーニングや食事などの個々の専門分野では貢献可能です。

下記の違いを知り、自分のできることとできないことを謙虚に理解する必要があります。①事業立ち上げそのもののメンタリング②個別専門性に合わせたメンタリング

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社内起業・起業の問題点とメンタリングの例

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社内起業と起業の違い

起業 社内起業

利益の方向性 自分のため(資金調達をしていれば一部、株主のため)

会社、株主のため

事業ドメイン 過去の強みを形を変えて活かす方が勝てるが基本的に自由

飛び地を指示されるが実際には自社事業にシナジーのある分野となる

ビジョン等 一から創る 少なくとも元々ある程度ある

初期資金 自己資金、3F(家族、友達、Fool)、公庫、投資家の出資など

会社の内部説得による予算取り

給料 当初無い(2年は実質無給が普通) 給料は振り込まれる

社会的地位 当初無い 会社の長年の累積効果により高い or 高め

リソース 当初無い(アセットがない) 会社の大きなリソース

情報入手 非常に容易 部分的には容易であるが、全体としてはかなり困難

方向性決定 市場のジャッジによる意思決定。起業家自身によるので極めて容易。

社内説得による意思決定がほとんど。周りの説得行為のため、極めて困難。

指導者・メンター 立ち上げ自体に対しては非常に少ない 比較的社内も含めて多い(最近は逆に少ないが)

チーム 勝つために必要なチームを集められる。但し、知名度が無いので採用は難しいケースも多い。

基本的に社内の協力者となる。市場から見て最適ではないケースが多い。

切実度 場合により生活がかかっている 短期的リスクは非常に少ない

メディア 個人としてアピールするケースが多い 会社としてアピールするケースが多い

事業開発 ミラクル・グレーゾーンが狙える グレーゾーンを狙うのは難しい

スピード 25-600 1

社内起業と起業は類似点もありますが、方法的にも精神的にもほぼ別の行為です。この違いが理解されず、メンタリングの方向性を間違えているケースが多々有ります。

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創りたい世界の深慮と事業方向性の決定

起業の場合

• 起業の場合は選択肢が無限にあります。この発想の極端な自由度の中で「何かに決める」という行為は非常に辛い事になります。この辛さ(カオス: Chaos)は起業をしないと理解不能です。この点に気をつける必要があります(あの優秀だった彼・彼女が非常に頼りなく見える)。

• 当初、あなたが本当にやりたいことは何か?を自由に制限を取って、一瞬無意味に見えるのですが、確認して、心のコアの意志決定(概して家族関係などで大きくは決まる)の言語化を手伝うと効果的です。その意思決定(意思決定の癖)を考慮できるのでメンタリング効率を上げることができます。

• 特に日本はリベラルアーツ(例:何のために生きているか)に弱いですから、この機会にメンティの考えを掘り下げて「言語化」してあげましょう。

社内起業の場合

• 次頁に記載しますが、方向性があります。

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社内起業で重要になる4要素

会社/事業部の存在意義

自分の存在意義

会社/事業部の強み 自分の強み

自分の事業

「強いもので闘う」必要があります。このためには「自社の強み」の把握が重要ですが、実際には殆どの会社で自社の強み(自部門の強み)が客観的に理解されておりません。また、自社の存在意義(ビジョン)というものは、そもそも会社に入った段階で存在するのですが「実は認識は個々でバラバラ」なケースが多く、更に「自分個人の強み」も理解されておりません。この結果、会社が「足かせ」になったビジネスモデルが多く、「会社を正しく活用」できたものが少ないのが現状です

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事業を一から考えるのは難しい・弱い分野では勝てない

素人であることを伝え、自力だけで考えるのを考えなおさせる

• p8で記載したとおり、シリアルアントレプレナー(連続起業家)や職業的に起業家・事業家支援をしている人材はともかく、起業では0→1(ゼロからイチ)、社内起業では1→10(or 10→100)の部分に関しては「素人」であるとご理解頂くのが良いかと思います。この点ではp8の通り、筋肉を鍛えたことがないだけで、実力の問題ではないという事をお伝えし、プライドを下げて頂く。プライドが高い(≒ 思い込みが強い)人は周りも巻き込めませんし、勝つことが難しいです。

• 他国、他分野、歴史上、技術革新以外はおおよそのビジネスモデルは考え尽くされております。また、ある事業を広げる方法も類似素材が沢山あります。これを調べる事をお勧めしましょう。アイデア出しに凝ってもp10に記載したとおり「実行」するまでは意味がなく、アイデアはそもそも組み合わせです。良質な「Input」が必要です。

自分達の強みの把握を促す

• 自分たちの強みを理解して、事業に活かす必要があります。必ず(時に強力な)「競合」が存在するのに対し、自分(チーム)の強みが理解されていないケースが極めて多く、敢えて経験が無く、苦手なところを攻めているケースが多いです。

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社内起業で重要になる「ボスマネージメント」

• 社内説得ができればスタートアップではあり得ない社内リソースの活用ができます。

• 社内起業が特殊なのは社内説得です。特に「ボスマネージメント」が重要です。

• 社内起業で強いのは「政治力」のある人です。

• 社内調整を「社内向けマーケティング」と捉えましょう。

メンターは「上司が、社内が理解してくれない!」と意気込む社内起業家に冷静さと作戦を授けましょう。どうしたら説得できる(マーケティング)のか?です。愚痴では止まるだけです。前進の方法を考えましょう。

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世界観と上位概念が重要(起業・社内起業共通)

http://geopoli.exblog.jp/19661333

参考:Whyから始めようhttps://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action?language=ja

• 製品やサービスそのものはビジネスモデルではありません。それをマネタイズする戦略・広報・活動がビジネスモデルです。

• 特に技術・メーカー系は左図で言うところの、技術・戦術レベルを深掘りするため、上位概念を抑えてくるプレーヤー(往々にして欧米)の下請け構造にならざるを得ません。

• 上位の概念は「抽象的」で「未来」であり「答え」がありません。特に日系が苦手な分野ではありますが、p15に合わせて今一度、自社のビジョン(社内起業の場合)と合わせてこれを明確にする必要があります。

• ビジネスモデルはその世界観を達成する「手段」ですので、(途中で変わるにしろ)世界観が考えこまれていないとピボット(モデル変更)の方向性が分かりません。

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問題(課題)の本質は何かを深掘りする

多くのビジネスモデルが創りたい世界・解決したい課題の本質的な問題の解決を行っていない場合が多いです。

例:【課題】 食糧難で途上国で子供が飢えている【直接的な解決策】 食料を送る【起こった事象】 食料生産をせずに食料を得るために列ぶ【その結果】 食料を創る意欲が薄れ、食料難が更に深刻に

上記では例えば本質的な課題解決は食料を作る方法を伝授することであり短絡思考的な課題解決は状況を悪化させるケースがあります。

メンターは事業の目標に対し、その施策が本質として正しいのか考える必要があります。一方で白を黒だと思っている人にそれを白だと伝えるのは困難な行為です。この点を考慮に入れましょう。

HINT : 人は失敗するまで人の言うことを聞かない

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顧客を発明していないか

多くのビジネスモデルが自分(自社)の問題を解決するために顧客(競合)を発明しているケースが多いです。

例:【課題】 自分の地域の人口が減少している。【解決策】 綺麗な家を作ったら環境が良いし人が住むはずだ。【発明された顧客】 綺麗な家を作ったら喜んで移住してくる住民。【自分の問題】 自分の地域を盛り上げたい。

上記では「自分の課題」である自分の地域を盛り上げるために他地域の人のニーズを抑えなくても移り住んでくる「顧客が発明」されています。

顧客自体は実際には確かに自分の欲しいものを知りません。しかし、自分(自社)の都合では動きません。また新しい市場に参入すれば競合がおり、競合もダイナミックに変化します。特に強いコミュニティに属する個人はグループシンクしている可能性が高く、この点をメンティと客観的に理解するようにお互いに留意しましょう。

HINT : グループシンクの罠に気をつける

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その他の留意事項

• 起業もそうですが、特に社内起業では自分のビジネスアイデアを人に言えないケースが多いです。しかしながら、人に聞かずに(反応を知らずに)事業を成功する可能性は極めて低いでしょう。ノウハウや技術など、積み上げたものを話す必要はありませんが、「アイデアは盗まれたなら自分達の行動が遅いだけ・自分たちが戦略的に情報を出せていないだけ」というふうに考えましょう。

• 話を具体的にしましょう。特に公募型の社内起業では実行の部分が起業に対してかなり甘くなるので、話の具体性に欠けます。実際に明日から行うとしたらどうするのか?を問いましょう。

• マネタイズポイントを抑えましょう。特にお金に関しては精神的な抵抗感を持つ人が多いです(場合によりマネタイズが全く考えられていない)。往々にしてやりたいことは「粗利が低く」やりたくないことは「粗利が高い」です。まずは、粗利を取って、事業継続し、やりたいことにつなげていく、将来的な理想を達成するために、今日は現実主義という考え方を伝えましょう。

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メンターマニュフェスト(メンターの行動指針)

Rev012016年5月6日

※ メンターを実施する際の心構えが次頁以降に記載されております。

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共感と敬意から始める

メンティの目指すものに敬意を持ち、メンティの生き方に共感することからはじめてください。彼ら・彼女らに共感し敬意を持つ真剣で有益な他人として、彼ら・彼女らの人生と会社に関わってください。あくまで、彼ら・彼女らの人生であることを忘れずに。

解説起業でも社内起業においても、そこには強い意志が必要になると思います。実際に手を動かして事業を興す「アントレプレナー」が経済発展に重要であるという認識を持つ必要があり、かつ、仮に自分の方が100%正しいと思っても自分が相手の人生に責任を持つ存在ではないという謙虚さが必要だと思います。

問題となるポイント特に知見差が圧倒的にある場合(例:学生と玄人の組み合わせなど)、自分の考え方をメンティに押し付けてしまう場合があります。メンター本人は善意のつもりですが、知見や身分の差があると知らずに、相手に無用なプレッシャーやミスガイドをしている可能性があり、常に「最後は相手の人生だ」「自分は間違っているかも知れない」という相手を対等に見る謙虚な考え方が必要です。

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違いを認め合い、学び合う

あなたが相手を評するように、相手もあなたを評します。あなたが相手を成長させるように、あなたも相手から成長の機会を受け取ります。お互いの考え方や違いを認め合い、お互いにとって学びのある関係を築いてください。メンタリングは教師が生徒に一方的に教えるということではありません。共に学び合うという姿勢を忘れないで下さい。

解説メンターとはメンティがそう認めたらメンターといえます。もう一つ重要なのはメンタリングは一方的なものではなく、双方向的であり、メンター本人も自分の事業にインスピレーションを得る必要があります。ダイバーシティは「相手は自分とは違い、本質的には理解できない」と知ることですので、この点も忘れずに。

問題となるポイント時に起業家・社内起業家に「教えてあげたい」という声を聞きます。もちろん、成功者は後続を育てる必要はありますが、起業家は「情報が欲しいのであって」「教えて欲しい」とは思っていないと思います。あくまでお互いに学び合う姿勢が必要です。そのためには自分も創造者であることが必要です。かつ「学びたいだけ」という自己中心的な形で起業家・事業家に向き合うのも問題です。相手に貢献する過程が学びになっている必要があります。

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愛情と敬意のある指摘を旨とする

必要だと信じる限り、ときに残酷なこと、相手の心象を害することを告げる勇気を持ってください。優しい言葉にせよ厳しい言葉にせよ、あなたの指摘が相手にとって有益であり、目的達成に近づくために最善のものだと確信を持てるかをご自身に問うてください。但し、単なる批判家にはならないでください。解決方法(答え)ではなく、解決する考え方(答えの考え方)を伝えましょう。PlanB(うまく行かなかった場合の代替案、例えばピクニックに行こうとしたら当日雨でも雨のためのプラン“PlanB”を考えておけば貴重な時間を無駄にしません)の考慮も勧めましょう。

解説相手を褒めるだけであれば相手には嫌われずに済みます。一方で、ただ単なる批判者も問題です。「相手の事業がうまくいくためには何が必要か」を軸に時に残酷な事も言うべきです。しかし、答えを渡しては駄目で、あくまで考え方を伝えるべきです。もう一つ、必ず事業は失敗の過程を通るので、失敗した場合の代案を考える方向性も伝えましょう。

問題となるポイントただただ、相手を褒めるメンタリングを実施している人が居ると聞きます。あくまで、相手に好かれることではなく、相手の事業が上手くいく事を目標にすべきです。また、未来は不確定であり、一本調子では博打になります。最終的に勝つことが目的ですので、如何に相手が生存できるか?という視点も持ちましょう。

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良い質問のために良く聞く

メンティの話を傾聴してください。答えはメンティの中にあり、メンターの重要な役目はそれを引き出し、気づかせることです。メンティの気づきを促すために、良い質問をしてください。メンティが自らの口で自らの言葉にしたときにこそ行動につながります。

解説人は自分の事を言語化することが決して得意ではありません。この言語化のサポートをすることがメンターの一つの役目になります。そのためには「質問力」が極めて重要になります。そして、全ての答えはメンティの中にあります。なので、いくらメンターが正しい事を言っても、メンティが自分の言葉としてそれを発しなければ行動にはつながりません。良いメンターとは話している(聞いている)だけで、メンティを奮い立たせる人です。

問題となるポイント相手に自分の気持ちを押し付けている場合です。メンティの気持ちや考えには興味がなく、そこを深掘りしようとしません。この場合、メンタリングをしても効果はあまりあがりません。相手の心の琴線はなんなのか、相手の創りたい未来はなんなのか、「Why?(なぜ?)」を繰り返し、相手の心の声を言語化しましょう。

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秘密を守り、リターンを期待しない

あなたがメンティを信頼するようにメンティがあなたを信頼できるよう、秘密をメンティの利益にならない目的で利用しないこと、メンタリングによってメンティからの直接の短期的・個人的利益を期待しないことを心がけてください。

解説メンティと話すことで「永遠の起業家」であるメンターも様々な情報を得ます。これが大きなリターンとなります。もちろん、メンティも相手の時間を使っているわけですから、Give and Takeの関係は必要なものの、何かを期待してメンタリングを実施してはならないし、頂いた秘密はしっかりと守りましょう。

問題となるポイントメンターとはいえないかも知れませんが、立場の弱い起業家から情報だけ取ろうという人が散見されます。また、メンタリングをコンサル的に直ぐに金銭に結びつけるのも問題でしょう。実業を助けるようになればそれはリターンを伴うでしょうが、お互いに学び合うことという原理原則に従ってメンタリングを実施すること、また、秘密はしっかり守るようにしましょう。

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奉仕や慈善活動ではなく、同じ目的に向けた共同行為であると捉える

メンタリングは、メンターからのメンティに対する慈善行為ではありません。新たな事業を起こし、日本と世界を変えていく志士であるメンティに対して、メンターたるあなたが専門性・知識・知見・人脈その他資源をもって協力する共同行為です。

解説メンターとは支援を一方的に「施す」ものではなく、あくまで事業創造を行う上での協力者です。自分が起業するときはまた相談し、相手が起業しているときは相談に乗るようなお互いがどのような場合でも事業を創るCo-アントレプレナーであることが重要です。

問題となるポイントホスピタリティ・相手の役に立ちたいという欲望は誰にでもあると思います。しかし、相手に施しを与えるという考え方では最終的にはリターンを求めたくなりますし、長続きしません。あくまで、大きな事業創造という流れの中の共同行為であるという原理原則を忘れずに。そうです、メンターそのものも常に事業家として生きていくべきなのです。

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他のメンターとの交流を

メンティとの共同行為を充実させるために、他のメンターとも積極的に交流して下さい。メンターたるあなたのリソースが広がることは、メンティがあなたの助力を得て成し遂げられることが広がるということにほかなりません。

解説メンターであるあなたも広義でいう「起業家(アントレプレナー)」なのです。是非、世界を良い方向に変えましょう。人的ネットワークは極めて重要です。様々な分野の人間と交流することは重要です。弱い紐帯の強み(The strength of weak ties)を常に意識しましょう。

※ 弱い紐帯の強みhttps://ja.wikipedia.org/wiki/マーク・グラノヴェッター

問題となるポイント人は学ぶ事により、より強くなります。様々な事業も知見も人を介してしかやってきません。多くの人と交流しましょう。同じコミュニティには同じような考えで溢れており、知らず知らずにグループシンクの罠に嵌ります。グループシンクの怖さを思い出しましょう。

※ 集団思考(グループシンク)https://ja.wikipedia.org/wiki/集団思考

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知らないことを知る

自分の常識や理解できないことを理由に否定することはしないでください。自分の意見・考え方を過信せず、強制せず、常識は変わること、人は間違う運命にある事を常に意識してください。常にマイノリティが世界を変えている事を忘れないでください。

解説自然科学(化学の実験など)は間違わないと思います。しかし、社会科学は答えが人の意志によってシフトするので答えは常に変わります。つまり、「常識」や「考え方」そのものがあくまでテンポラリーな事なのです。人は常に間違っているという事実を理解し、知らないことを知るということはメンタリングの根幹にもなり得る概念です。特に大きな事業は現在の常識をくつがえす性格を元々持つことを忘れずに。

問題となるポイント大きな事業はその時点では狂ったアイデア(例:1980年にはペットボトルの水は狂ったアイデアです)です。つまり、「その時点」の常識ではNGなのです。また、常に世界を変えているのは現在の常識と闘ったマイノリティです。この事実をベースに客観的に考えながらもそういうオプションもあり得るという姿勢で望んで下さい。起業とは自分を再発明することなのです。

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挑戦に必要なものは前向きさと楽観

困難や課題に対して前向きであり、不確実性に対して楽観的であってください。未知に挑み、見たことのない未来を切り開こうとするのは人間の本質的な行動です。

解説良い起業家は未来に否定的な事を言いません。何故ならば未来とは自分が創るものだからです。スタートアップのやること(アイデア)は狂っています。そうしなければ、合理的にメリットのあることは大企業がやってしまうので勝てないからです。スタートアップには不確実性が伴います(今は小さいが将来大きく「なるかも知れない」ビジネスに手をだす)。このため、様々な施策を高速で試す必要があります。そして、起業家とは臆病な楽観主義という(最悪を想定してPlanBを用意した楽観者)性格を持つものです。

問題となるポイントそれは無理だろうとプランを小さくしてしまう例を良く聞きます。特にスケール型のビジネスを自分で経験したことのない人に多いです。この点は知らないことを知るという原理原則をもう一度思い起こして、リスクは考えながらも「先に達成する未来を決めてしまって」「どうやったらそれを達成できるか?」というポジティブな姿勢に変えていくべきです。

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できる範囲で協力を

無理はしないでできる範囲でご協力下さい。自分自身の成長のため、新しいビジネスのために定期的にメンターとして関与することをお勧めします。

解説義理人情に厚いことは素晴らしいですが、ご自身の無理のない範囲でメンタリングを実施しましょう。北米の起業家の話を聞くと、トップクラスの起業家でもかなりの確率でメンタリングを実施しております。メンタリングは起業家のエコシステムを創っていく上で重要ですので、是非、定期的にメンタリングを実施する習慣を身につけましょう。もちろん、無理のない範囲で。

問題となるポイントグレシャムの法則をご存知でしょうか。同じこと(事業)を続けていると創造的能力が低下します。つまり、自分の創造・想像力を高めるために全く(別)他人のビジネスを聞くということは有効なのです。一方で、非常に忙しい中で無理をしてまでメンタリングをする必要はありません。時にメンタリングという故郷に戻ってくるという考え方こそが必要なのです。※ グレシャムの法則 https://ja.wikipedia.org/wiki/グレシャムの法則

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あの頃の苦労を思い出して下さい

事業を立ち上げることには大きな苦労がつきものです。思い出して下さい自分自身も苦労したことを。メンティへの愛を忘れずに。

解説人は自分の事業が成功すると苦労した過去を忘れ、傲慢になる傾向があります。特に起業家は当初、虫けら扱いをされるものです。時に複雑な想いにも駆られるでしょう。目の前のメンティもそのような想いを「今」しているかも知れません。昔を思い出しましょう。あの頃の苦労を、悔しさを思い出し、今、まさにそのまっただ中にいる「勇者」にエールと愛を送りましょう。

問題となるポイント必要なものは「愛」です。世の中には様々な人がいます。相手を利用することだけを考えている良からぬ人も居るでしょう。しかし、多くの人は「今」を生きているのであり、メンティへの愛を、自分の過去の苦労を思い出し、傲慢にならないように留意しましょう。自信過剰バイアスに気をつけましょう。目の前の起業家は自分の昔の姿かも知れないのですから。※ 自信過剰バイアス(英語)https://en.wikipedia.org/wiki/Overconfidence_effect

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