規制政策・規制の経済学 第 13 講...

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規制政策・規制の経済学 第 13 講 環境・安全規制と環境・エネルギー政策. 今日の講義の目的 (1) バラバラに出てきた環境規制・環境政策を俯瞰し、全体の構造を理解する。 (2) スマートグリッド、スマートエネルギーネットワーク、スマートコミュニティという発想を理解する (3) 環境政策の基本的な性質を復習する。. 環境政策と規制. 環境政策の基本は本来は環境税、ないし排出権取引 これで統一しないので様々な問題が発生 場当たり的な政策が次々と導入され、部分最適が追求されると、統一性のない複雑な仕組ができてしまう。 - PowerPoint PPT Presentation

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Page 1: 規制政策・規制の経済学 第 13 講 環境・安全規制と環境・エネルギー政策

規制政策 規制の経済学 1

規制政策・規制の経済学 第 13講環境・安全規制と環境・エネルギー

政策 

今日の講義の目的今日の講義の目的(1) バラバラに出てきた環境規制・環境政策を俯

瞰し、全体の構造を理解する。(2) スマートグリッド、スマートエネルギーネッ

トワーク、スマートコミュニティという発想を理解する

(3) 環境政策の基本的な性質を復習する。

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規制政策 規制の経済学 2

環境政策と規制環境政策の基本は本来は環境税、ないし排出権取引

これで統一しないので様々な問題が発生

場当たり的な政策が次々と導入され、部分最適が追求されると、統一性のない複雑な仕組ができてしまう。

温対法、自主行動計画、 RPS法、各種補助金、環境規制、グリーン電力証書

環境税・排出権取引の導入で変わる可能性も

一方で環境規制が重要な役割を果たしてきた。

~ 9-12講で取りあげた規制分野と関わりの深い環境政策を取りあげる。

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1. 超低炭素社会のイメージ

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炭素排出量 25%削減

2020年までに 1990年比で 25%

→2008年比で 29.6%、 2005年比で 33.3%削減全国民が週に2日全くエネルギーを使わないで、ようやく達成できる水準2030年 ,50年を見据えるなら更に大きな削減 (1990年比 30%,80%削減~震災前のエネルギー基本計画 )

⇒従来の発想の延長ではない抜本的な社会構造の変革が不可欠

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炭素排出量 30%削減 (2030年)

震災前に策定されたエネルギー基本計画2030年までに 1990年比で 30%(真水で達成 )

・ゼロエミッション電源 70%、内原子力 50%(新増設 14、稼働率 90%)⇒原子力比率は見直し必死~縮原発・高効率発電・次世代自動車、高効率給湯器、ゼロエミッション住宅、ゼロエミッションビルの普及・電化シフト、ガスシフト、廃熱利用・スマートコミュニティの全国展開

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低炭素社会のイメージ( 1 ) バイオエネルギー社会(1-a) 直接燃焼・植物油・バイオガスで発電・熱供給(1-b) バイオエタノール・バイオディーゼル(2) 水素社会(2-a) 燃料電池で発電・熱供給、水素パイプライン(2-b) 燃料電池車(3) 電化社会(3-a) ゼロエミッション電源(原子力・水力・太陽光・風力・地熱・波力等 renewable 電源)で発電(3-b) 電気自動車

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バイオエネルギー社会

直接燃焼・植物油・バイオガスで発電・熱供給は経済効率的にもエネルギー効率からも合理的← 低コスト・高効率で使える資源には限りが。。。製造業でも石炭・石油代替材として利用バイオエタノール~現時点ではエネルギー効率が低すぎる。食料との競合も。食料と競合しない材料(廃棄物、藁、海藻、間伐材等)から高効率で精製する技術革新⇒ 短期にも長期にも重要だがこれだけで超低炭素社会の世界を描くのは難しい~一方でオプションとしては依然重要

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水素社会 分散電源で熱と電気を効率的に利用温暖化ガスを出さないだけでなく、利用段階ではそれ以外の廃棄物も出さないクリーンエンジン(電気自動車共通)どうやって水素を作るのか・化石燃料から→水素を作る段階で炭素が⇒ 超低炭素社会にはならない→ CCS (Carbon Dioxide Capture and Storage, CO2回収・貯留 )

・原子力利用→立地に制約が(電化社会と同様の問題)・バイオ由来→バイオ社会と同様の問題が(オプションとしては重要~藻・屎尿等からバイオガス・水素を製造)・水の電気分解⇒電化社会 ( 貯蔵手段として重要 )

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電化社会現在のオール電化:ガスを電気に置き換え冷房・給湯・暖房・厨房を全て電気に超低炭素社会での電化:輸送(電気自動車、バス、船舶)産業用需要(産業用ヒートポンプ)も含めた大規模な電力の利用→大幅な省エネにも拘わらず、電力需要は大幅には減少しない(むしろ増える可能性が高い)。

電源の脱炭素化+電化⇒超低炭素社会~原子力事故でハードルがかなり高くなる

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ベストミックス

電源のベストミックス:原子力と再生可能電源を中心に、高効率石炭火力、天然ガス、燃料電池を適切に組合せる。再生可能電源も太陽光・太陽熱・風力・水力・バイオ等の性質の違う電源を適切に組み合わせるエネルギーのベストミックス:電力を中心として、熱、ガス、水素 (燃料電池 )、バイオ、 GTL等を適切に組合せて、エネルギー市場全体での効率的利用を目指す社会限界費用、出力調整能力、安定性、省 CO2、省エネ、エネルギー安全保障等を総合的に考慮

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ベストミックスと制度改革

この割合、全体システムを集権的に計画するのではなく、自然にベストミックスが実現されるような社会制度を構築するのが重要~オープンアクセスと透明なルール及び合理的な料金体系が重要~電気を捨てるなどという愚かなことは減るはず

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消費者の選択によって自然に実現するベストミックス

(a) 環境価値、セキュリティの価値、量産効果などの異時点間の生産 ( 消費 )の外部性等を適正な税・補助金、 FIT,RPS等で補正することを前提として、(b) 本来事業者が負担すべき費用 ( 賠償に備える保険料、バックエンドの費用、系統費用等 )を第3者につけ回しさせないことを前提として、(c) 公正な競争環境のもとで消費者に支持される事業者が生き残ることを通じて、自然にベストミックスが実現するのが理想。

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消費者の選択によって自然に実現するベストミックス

「どの電源が何パーセントになるのが理想か」ではなく、「どの程度の税・補助金が妥当か (aの議論 ) 」「負担すべき費用が正しく事業者に負担されているか (bの議論 ) 」を議論すれば事足りる制度を作ることが重要~残念ながら、現行の電気事業制度はこれからほど遠い

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消費者の選択とベストミックス・脱原発も脱化石燃料も支持する消費者は再生可能電源を主力とする事業者から電気を買い、・脱原発は支持するが脱化石燃料までは支持しない消費者は再生可能電源と化石燃料を組み合わせる事業者から電気を買い、・原子力こそ脱炭素の王道と今でも信じている消費者は原子力を組み入れた事業者から電気を買い、・価格が最重要である消費者はもっとも費用の低い事業者から買う~消費者から支持される事業者が生き残ることを通じてベストミックスが実現

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消費者の選択「再生可能電源を支持する」と言うステートメントは、それに伴う費用負担を引き受ける意志のない無責任なステートメントである可能性を排除できない ( 無責任と決めつけているわけではない )。「再生可能電源を主力とする事業者から電気を買う」という行動は、必要な費用を負担した上での責任を伴った立派な再生可能電源の支持表明。~電力市場の自由化により、このような責任ある意志表明の機会を消費者は与えられるべき。

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事業者の選択「再生可能電源は化石燃料電源より低コスト」とのステートメントは、自分に都合の良いデータだけを集めただけの無責任なステートメントである可能性を排除できない ( 無責任と決めつけているわけではない )。もし本当に固くこれが事実だと信じているなら、再生可能電源を主力とする事業を立ち上げて (ないしそのような事業者に出資するなどして )、市場に参入すればよい。「価格が多少高くても国民に支持されるはず」と考えている者も同様。~電力市場の自由化により、参入行動のような責任ある意志表明の機会を与えられるべき。

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現状は?

現状はそのような機会を与えられていない。(a)そもそも家庭用の電力市場は自由化されていない(b)自由化されている大口市場も競争メカニズムは殆ど機能していない(c)透明で公正な競争環境が保証されていない「再生可能電源は化石燃料電源より低コスト」と仮に信じていても、低費用の事業者が市場で勝つことが必ずしも期待できない市場構造では参入が難しい。→参入がなければ、消費者は支持表明をする機会を実質的に奪われる~自由化するだけではだめ。

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規制なき独占をさけるために規制なき独占を避けるためには、単に小口市場を自由化するだけではだめ→電気事業制度の改革が不可欠(a)発送電分離(b)同時同量、インバランス料金の改革(c) 卸取引市場の改革(d) 市場、取引監視機能の強化・・・・

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やるべきこと

(1)環境価値、セキュリティの価値等の社会的価値を生み出すものにどれだけ(補助金、 FIT等で)下駄をはかせるか、あるいは損なうものに(税等で)どれだけハンディを負わせるのかを国民の価値観を反映する形で決め←エネルギー基本計画

(2) 透明で公正な競争環境を整備し、消費者の実効性ある選択ができる状況を作り出す←電力市場制度改革

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垂直統合・垂直分離日本のエネルギー市場の現状にとらわれないよう、敢えて全く架空の通信市場を考える。

ブロードバンドインターネットアクセスの伝送路を通信事業者 (N)が独占。有料及び広告付き無料インターネットコンテンツの 96%を Nが供給。残り 4%を他の独立コンテンツ事業者が N から伝送路を借りて ( 接続して ) 供給する。独立事業者が Nに払う配信 ( 接続 )の料金は規制されているが、接続の可否や細かな条件は Nが決められる。→ Nは伝送路の独占を梃子にコンテンツの独占も可能

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垂直統合の問題Nは伝送路の独占を梃子にコンテンツの独占も可能この弊害・多様なコンテンツの流通が阻害される→実質的な消費者の選択機会が奪われる・多様なアイデアを持つコンテンツ事業者の参入が阻害される→技術革新の停滞、成長機会の喪失、高コスト体質の定着・国際競争力の喪失

透明で公正な接続・参入機会を確保するためにどのような制度が考えられるか?

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ゼロベースでの垂直分離・統合の選択

(1)所有権分離・コンテンツ事業を別会社化して外部に売却させる~不公正な取り扱いをする誘因を根本的に取り去る(2) 機能分離・ N から接続の可否・接続条件を決定する機能を切り出して独立させる

~不公正な取り扱いをする手段を根本的に取り去る(3) 垂直統合+徹底的な規制~不公正な取り扱いを外部機関が徹底的に監視して抑え込む

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電力市場では(1)所有権分離・発電会社を別会社化して外部に切り出す。接続、アンシラリー用の電力調達などは送配電部門が行う

(2) 機能分離・一般電気事業者と完全に独立した強力な ISO

(Independent System Operator ),RTO(Regional Transmission Organization)を作る

(3) 垂直統合+徹底的な規制・一般電気事業者による発送電一貫体制を前提として、

送配電部門の取引・事業者との交渉過程を全て公開させる。公益事業委員会のような強力な第3者機関を設けて恒常的に送配電部門の行動を監視する。

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透明で公正な市場環境を諦めるなら

(4) 垂直統合+実効性の乏しい規制残念ながら現状は (4)、あるいは後述する (2’)に近い一般電気事業者にとっては極めて居心地の良い制度。(5) 垂直統合+規制による独占かつての日本の電力市場。世界の制度の諸類型も日本の過去及び現在の制度も、この5つの選択肢及びその派生型として理解できる。白地に理想の絵を描く議論なら (1)-(3)のいずれか、あるいはその組み合わせを選ぶべき。

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市場設計

(1)をとれば必然的に市場の設計をせざるを得ない。しかし市場の設計は (1)のケースだけでなく (2),(3)でも同様に重要。仮に (3) を採用するとしても取引の公正性・透明性を確保するもっとも自然で簡単な方法は、市場取引を活用すること。アンシラリー取引が公正であったかを検証するのに、閉鎖的な内部取引ではなく透明な市場取引であれば、遙かに証明・検証しやすい→(1)-(3)のいずれでも市場設計・改革は重要

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電力取引市場(a)先渡市場(b)スポット市場(c)時間前市場(d)リアルタイム市場

(e)予備力市場(f)需給調整市場

~ネガワット取引等によって需要家を巻き込むことができればより効果的な市場に

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安定供給電力市場の制度設計において安定供給の視点は重要。発送電分離が安定供給を損なう可能性も、その逆の可能性もあるから。安定供給を損なう要因(a) 中給の運用の失敗←どの制度でも起こりうる問題(b) 送配電投資不足←送配電部門に第一義的な安定供給の責任を負わせる(c) 発電投資不足←予備力保有を義務付ければよい(d) 発電投資と送配電投資の調整の失敗 ~ 範囲の経済性←垂直分離が進むほど、より慎重な制度設計が必要

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発送電一貫体制は安定供給をもたらすのか?

垂直統合が安定供給の障害になる可能性(a)垂直統合の下では連系線投資の誘因が過小になる~連系線増強が電力間競争の可能性を高めるから(b) 垂直統合の下では危機時に自社電源を優先する恐れがある(c) 本来系統安定のために使うべき契約 ( 需給調整契約 )を営業目的で使う恐れがある

垂直統合が供給安定性に資すると言う発想が正しいか、検証すべき~手始めに今春の輪番停電の検証を

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発送電分離をすれば問題が解決するか?競争基盤整備

発電(売電)市場で一般電気事業者が圧倒的なシェアを持つ→仮に (1)の発送電分離しても、分離された強力な発電事業者が独占力を行使する可能性⇒規制なき独占の恐れ(1)発電事業者の水平分割→即効性がある強力な対策だが、弱い (コスト高の ) 多数の電力事業者を作るだけの結果になり、国益に反する可能性~他の改革が機能し ,これをやらなくても済むのが理想(2)電力間競争~期待が大きかったが全く機能しなかった。

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競争基盤整備(3) 卸取引所の強化一般電気事業者の取引増により卸取引所の流動性が高まれば、実質的に電力間競争に近い機能を果たす~両建取引の強制、ネガワット取引の導入、 VPP

(4) 人為的に規模の経済性を作り出す不公正で非効率的な制度である 30分同時同量制度の改善(5) 部分供給

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2. 再生可能エネルギー大量導入と系統対策

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電力市場の特徴

・実同時同量 (貯蔵が難しい ) →ダム式水力、揚水発電、蓄電池

アンシラリーサービス (周波数調整等 )の必要性安定性維持のための送電網建設の必要性予備力の確保・需要抑制の社会的要請 (特にピーク時 )

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太陽光発電大量導入の社会的費用太陽光発電 :安定的な電源ではない~お日様任せ・必要なときに発電してくれる保証がない

従来と逆方向の電力の流れ→逆潮流対策

太陽光の不安定性:急に曇ると出力が急減→アンシラリーコストの増大夜にも雨の日にも発電できない→必要な予備力の増大

水力、地熱、バイオ、風力、太陽熱~それぞれ異なる特性。太陽光と補完関係。全体として太陽光に過度に依存するのは非効率的。太陽熱利用も含め、それぞれの特性に応じてバランス導入すべき。

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アンシラリーコスト・予備力現時点でガバナフリー運転 ( 自動的に周波数を調整する運転)をしていないが潜在的には可能な資源が大量に存在

卸・自家発、大・中規模のコジェネ、原発、 PPS の電源

小規模なコジェネレーション、蓄電池の利用

⇒ 再生可能エネルギーを入れると巨額のアンシラリー費用がかかるという主張は精査する必要が。

一般電気事業者が全てを担う発想を変える必要がある

同様に予備力に関してもコジェネ・自家発等未利用資源をうまく使うことが重要

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3. モノのインターネット社会 (Internet of Things)

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Internet of Things第1段階:人と人とがネットワークを介してつながる社会 (従来のインターネット社会 )

第2段階:人と物とがネットワークを介してつながる世界 ( 接続された物を人間がインターネットを介してコントロール )~既に実現している世界

第3段階:物と物とが直接ネットワークでつながり連帯して作業を行う世界 (モノのインターネット社会 )~実現しつつある世界

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規制政策 規制の経済学 372010/2/23  中津川 37

Internet of Things天候用センサーと農業機器が通信→水やり・肥料管理

血圧測定→病院のデータベース→危険時に医師へ伝達

ホームパーティ→掃除ロボット

    →冷蔵庫・ワインセラー→欠品を自動発注

道路にセンサー網→カーナビ→より渋滞の少ない進路を指示

商店街にセンサー網→携帯電話に情報を自動送信

エネルギーの効率利用に絶大な威力

→スマートグリッド、スマートコミュニティ

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Key Technology

(1) センサー技術

(2) 小電力消費だがローカルに安定的な通信

(3) 情報処理技術用・行動パターンの解析

(4) 情報管理・セキュリティ

スマートグリッド・スマートエネルギーネットワークにおける DSMの潜在能力・課題ともに共通

電力網の観点からのみスマートグリッドを見るのではなく、発想を逆転させてインターネットの観点から電力網を見る発想が重要。社会システムに大革新をもたらす可能性も。

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規制政策 規制の経済学 392010/2/23   39

4. スマートグリッドスマートエネルギーネットワーク、

スマートコミュニティ

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Smart Energy Networkスマートグリッド:効率的な電力系統

スマートエネルギーネットワーク:効率的なエネルギーネットワーク~熱供給等も含めたエネルギー全体の効率的利用網

熱の面的な効率的利用~高いコストパフォーマンス

なぜスマートグリッドとスマート熱供給網ではいけないのか?→熱供給の大きな部分はコジェネ (含む燃料電池 )が担う~電力供給と熱供給は不可分

スマートコミュニティ・スマートシティ:エネルギーシステムだけでなく、水・交通などのインフラを含めて全体を効率化

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スマートグリッドスマートグリッド、スマートエネルギーネットワーク、スマートコミュニティ、スマートシティ

どれも定義がはっきりしない。人によってバラバラ~様々な側面があるから。社会ごとに要請が異なる。それでも共通の要素があるはず。

私のスマートグリッドのイメージ

・電力系統網+情報通信網 (インターネット )

・大量の再生可能エネルギー導入+高信頼性+効率性

・分散電源、大規模電源、需要コントロール (DSM)の最適な組み合わせ

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スマートグリッドスマートグリッド=電力系統網+情報通信網 (インターネット )

電力網に接続する機器は全てスマートグリッドに接続

スマートグリッドは情報通信網でもある→全ての電気機器が情報通信網 (インターネット )に接続することになる~情報通信の観点からも一大革新となる可能性・巨大な需要

インターネットの発展を支えたオープン接続が最重要

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DSM (Demand-side Management)同時同量→ピークにあわせた設備が必要→ピークの(社会的 ) 費用はとてつもなく高い

⇒負荷平準化の社会的利益は非常に大きい

夏昼間の需要を夜にシフトさせられれば大きな利益

~深夜割引料金、需要開拓 (エコキュート、エコアイス、電気自動車 )

低炭素社会ではこんな単純な仕組みだけでは持たない

・太陽光発電が普及すると夏の昼間むしろ電気が余ってしまう。同じ昼間でも雨が降ると電力が不足する。

⇒従来より遙かにきめ細かなコントロールが必要

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5. DSMとスマートメーター

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太陽光大量導入の系統対策費用

前述の対策を取らず、従来型の対応+蓄電池で対応すると費用はいくらぐらいかかるか

シナリオ1 出力調整なし(蓄電池費用 15.1兆~56.7兆 )

シナリオ2 特異日(年間14日)全量出力抑制(同2.80兆 )

シナリオ3 特異日半量抑制(同 7.56兆 )

シナリオ4 年間30日出力抑制(同 0.55兆 )

それ以外の費用もそれぞれのシナリオで1兆円程度

国民負担 一般家庭月 58円 -901円 (300kwh) 、産業界全体の負担 58.2億 -901.3億円 (300億 kWh)

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出力調整?電気を捨てる?太陽光発電に関して言えば出力調整とは要するに電気を捨てる行為←膨大な補助金を投入して作る貴重なゼロエミッション電気を捨てるなんて・・・

シナリオ1~捨てないと 15.1兆も費用がかかる、と国民を脅して出力抑制が当然という気にさせる

なぜ電気を蓄電池でためるという発想しかないのか?

この期間化石燃料から水素を作るプラントを止めて、代わりに水の電気分解で水素を蓄えればいいではないか?

水素で蓄える発想を追求すればこの無駄を防ぐだけでなく水素社会との補完関係も

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規制政策 規制の経済学 47

出力調整?電気を捨てる?水の電気分解が最適な方策と言っているわけではない。

もっともっと色々な知恵があるはず。色々な知恵のある人が参入できる基盤を整えれば、15兆円もの費用をかけなくてももっと効率的な社会基盤を作れるのではないか?

15兆円もの費用を蓄電池に投資しても( 0.55兆円しか投資しなくても)同様に火力調整運転の費用が1500億円もかかる、と安易に考える人たちに制度設計を任せておいて費用負担だけ押しつけられてもいいのか?

膨大な費用~知恵のない人に任せるとこれだけ費用がかかるという推計

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規制政策 規制の経済学 48

電力の価値年間14日も電気を捨てる→電気の価値はこの期間マイナスかゼロになっているはず

~電気代は当然にゼロ(あるいはアンシラリーのための限界費用だけを含む極めて低い価格)になって当然

→当然に需要の開拓が起こるのではないか?日本国民はこの状態になっても需要開拓できないほど知恵のない国民なのか?

需要開拓はむしろコスト高、という結論は知恵のない自分を基準にして、現在も未来も国民みんなが今の自分同様に知恵がない、ということを前提にした結論。

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規制政策 規制の経済学 49

DSM、電力価値とスマートメータスマートメータ・ 30分、 1 時間単位の計量・データ保存可能・双方向通信機能~自動検針 ( 需要家→事業者 )昼間でも晴天時と雨天時では電気の価値が全く異なる。スマートメータはこの区別を可能にする。スマートメータがなければ、電気を捨てるほどに電気が余っている状態の時のみ価格をゼロにすることは難しい

→家庭で電力消費をシフトさせる誘因がなくなる~民間企業にもそのための機器開発をする誘因を与えない

スマートメータは、国民の知恵を集めてエネルギー消費を効率化するための重要な社会基盤

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6. 規制料金体系と規制電力市場における DSM 競争の制度設計

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規制政策 規制の経済学 51

経済効率性

・同じ効果をより低い負担で、同じ目標ならより低い費用で実現できる技術の組み合わせを探す

・より社会全体の余剰が大きくなる目標を設定する

2つは密接に関連しているが区別して考える必要がある。後者はたぶんに政治的(国民の選択の)問題。前者は技術的な問題。

前者のキーワード~中立性:同じものを同じように評価する。

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規制政策 規制の経済学 52

制度設計の成功例・失敗例

(成功例)深夜電力割引~誰がどう電力消費をシフトしても同様の利益。社会的限界費に対応した料金設定→導入当初は画期的な制度。現在では outdatedになりつつある

(失敗例)太陽光自家発余剰固定価格買取制度

余剰買取  VS 全量買取

電力使用サーチャージ  VS エネルギー使用サーチャージ

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規制政策 規制の経済学 53

余剰買取 VS 全量買取太陽光発電固定価格買取制度

高価格で買い取るのは自家消費で余った余剰分だけ(余剰買取 ) か、発電量全部か (全量買取 )。

(例)昼太陽が照ると 10発電、同時間帯 5 消費

余剰買取なら 5× 買取価格を家庭に支払

全量買取なら 10× 買取価格ー 5× 小売価格を家庭支払

どちらが効率的か?→余剰買取だと大きな歪みが発生

余剰買取:電力を系統に売ることを評価する発想

全量買取:再生可能電源での発電を評価する発想

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規制政策 規制の経済学 54

余剰買取制度の問題点・昼間消費電力の少ない人の方が導入の誘因が大きくなる

・太陽光発電が稼働しているときのみ省エネの誘因を大きくする

・太陽光発電が稼働している時間から稼働していない時間に需要を移す誘因を生み出す

いずれも、経済効率性の観点からも系統安定性・配電対策の観点からも ( 公平性の観点からも )余剰買取制度はひどい制度

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規制政策 規制の経済学 55

部分最適が全体最適につながる制度・環境価値など非経済的価値を適切に価格に反映

・系統費用も含めた費用を適切に反映した価格

→社会的費用を反映した価格体系

これを前提に各経済主体が部分最適を行えば、自然に全体最適につながる。歪みを場当たり的に埋めていくと乖離がますます大きくなる。

スマートグリッドの時代こそ合理的な料金体系が不可欠。多様なアイデアの参入の制度的基盤。規制料金を続けるならこれを適正化するのは政府の責務

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規制政策 規制の経済学 56

7.エネルギの地産地消・エネルギーの相互融通とスマートコミュ

ニティ

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規制政策 規制の経済学 57

点から面へスマートハウス、スマートビルからスマートコミュニティへ

HEMS (Home Energy Management System)、 BEMSから CEMS (Community Energy Management System地域エネルギーマネージメント )へ

単体での省エネから地域全体での省エネへ

省エネからエネルギーマネージメントへ

地域内の再生可能エネルギーを無駄なく効率的に利用

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規制政策 規制の経済学 58

面の効率化~スマートコミュニティある家、あるビルで電気ないし熱が余剰

~隣の家は不足しているかもしれない

ある家で電池に電力をため、別の家では電池から電気を供給するのは如何にも無駄

(a) 蓄電・放電、放熱のエネルギー損失

(b) 電池の消耗

(c) 必要な電池の容量の増大

コミュニティ内でエネルギーを相互利用

~太陽光の余剰買取制度はスマートコミュニティ形成の弊害になる~全量買取ならこの問題は起きない

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規制政策 規制の経済学 59

エネルギーの面的コーディネーションEV,PHVの大量普及後に、一斉に 18 時に急速充電を始めたら大変なことに (ヒートポンプの利用も同様 )

コミュニティ内でタイミングを効率化~消費者がこれを考えながら充電作業するのは難しい→自動制御

消費者の情報入力+機器の学習機能+コミュニティ全体の消費状況→充電のタイミングを自動制御する

更に、エネルギーの地産地消⇒相互融通太陽光・風力の余剰の相互融通⇒VtoG (自動車から電力系統への電力供給)~系統安定性も分散的に地域が担う4地域(横浜、豊田、京阪奈、北九州)の実証実験へ

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社会変革全ての電気機器が通院網に接続、その情報を蓄積

~詳細な個人情報(生活パターンに関する情報)

⇒うまく利用すれば巨大なビジネスチャンスと社会変革の契機に:生活習慣改善~医療・福祉改革、快適で効率的な生活の提言~個人情報保護の必要性大

通信、エネルギー、交通システム、水インフラ、医療・福祉を一体で整備~縦割りの行政では対応できない→スマートコミュニティという発想がこの縦割りの発想からの脱却の端緒とすべき

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電力市場と環境政策本来は環境税、ないし排出権取引で対応すべき

これで統一しないのでいろいろな問題が発生

対処療法的に場当たり的な政策が次々と導入され部分最適が追求される結果として全体が統一性のない複雑なだけの仕組みができてしまう。

温対法、自主行動計画、 RPS法、各種補助金、環境規制、グリーン電力証書

環境税・排出権取引の導入で変わる可能性も

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自主行動計画・一般電気事業者は全体として排出係数に関する目標を設定し (20%削減 )、自主的にこれを達成すると宣言

→かなり厳しい目標で、 (国際市場において排出権購入する、発電効率を高めるなど ) かなり努力している←どういう誘因で?

(1) 企業の社会的責任

(2) 強制的な規制の回避

~達成できなかったり、そもそも目標・計画が甘すぎると強制的な規制が課されると予想。

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温対法と排出係数

炭素排出量/販売電力量を各事業者に公表させる。

→ 需用者はこの値を自らの排出量の計算に使う。

(1) 電気事業者は競争上これを下げる誘因

(2)ユーザーはより低い排出業者を選ぶ誘因

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温対法の問題A事業者は原子力中心で石炭を組み合わせる。原子力の排出係数0。石炭 0.9 。平均排出係数 0.3 。

B 事業者はガス火力中心。平均排出係数 0.4 。

ユーザーが事業者をAに切り替える

→A 事業者は石炭を炊き増して、その結果むしろ排出量は増えてしまう(原発は既にフル稼働しているから)

⇒歪んだ誘因~限界ではなく平均を使うのがまずい?

~でも長期にはこの誘因でいいのかもしれない

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OM・ BM

OM  炊き増し・炊き減らしを評価する限界排出係数

BM  発電所建設まで考えた長期の限界排出係数

いろいろな文脈で重要な考え方

・コジェネ導入の環境評価

・新エネ導入の環境評価

・省エネの環境評価

・需要シフト(昼→夜、ピーク→オフピーク)の環境評価

・オール電化導入の環境評価

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RPS法

RPS (Renewables Portfolio Standard)

RPS法→電力事業者に一定の利用義務を課す

2010年度時点で 122億 kWh、約 1.35%

それまでに段階的に義務量を増加させていく

義務量は 2010年以降拡大、太陽光の優遇→太陽光を2倍でカウント

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RPS法の対象電源

対象となるエネルギー:再生可能エネルギーのうち特に普及のために支援を必要とするもの

風力、太陽光、地熱 (のごく一部 )、小水力 (水路式で 1000kW以下のもの、対象は順次変更 )、バイオマス

ダム式の大規模水力は入っていない

→これらを入れると 2004年時点で 10%強。ドイツを上回る。

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RPS法の狙い・目的

・地球温暖化対策

・分散型電源の普及促進

・エネルギー安全保障

・新エネルギーの研究開発促進

このために恣意的な対象の選択になっている

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効率性に配慮した RPS法の工夫(1) 5種類の電源の内訳を指定しない

→最も費用の低い電源を選択できる

(2) 電力供給と切り離した RPS 価値という概念を導入

→Tradable Permitと同じ効果。費用の低い地域で電源が普及。~ RPSの利益 ( 費用 )を明示する副次効果

(3) 義務を超過達成した分は次年度以降に繰り越せる

(バンキング )

→動学的に最も効率的なタイミングで導入できる~実際にはうまくいかなかった

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RPS法の費用

RPS相当量の価格: 2003- 2005年概ね 5円 (1kWh当たり )で推移。現在は 6円程度と言われている。

これが続くとすると 2010年時点で 750億円の負担

(実際には6円は限界費用なのでこれより低い可能性もあるが、一方で6円以上の負担で電源を開発している事例もあるので過小評価の可能性もある。 )

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RPS法の便益二酸化炭素の排出量減。

原子力を代替→二酸化炭素排出量ほとんど減らず

(短期的にはどちらも排出量ゼロ、ライフサイクルで見ても

風力と同程度、太陽光の半分弱)

全電源平均→排出係数 0.38 ( LNG でほぼ同程度 )

石油(石炭)火力を代替→排出係数 0.55(0.82)

排出係数: 1kWh当たりの二酸化炭素排出量 (kg)

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RPS法の便益RPS法での限界費用~ RPS価値6円として1トン当たり○○円(石炭代替ケース)~△△円(全電源平均のケース)

の費用をかけて炭素排出を削減していることになる。

問題○○、△△を埋めよ。

想定 排出係数 0.82 (石炭)、 0.38 (全電源平均)、RPS対応電源に換えると炭素排出ゼロ

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RPS法の便益京都メカニズム活用~1トン当たり 1000 ~ 2000円

RPS法での限界費用~ RPS価値6円として1トン当たり 7300円(石炭代替ケース)~ 15800円(全電源平均のケース)

⇒京都メカニズムを使うより3 .6倍ー□□倍の費用

1トン当たりの費用 =1000 ・ 6/排出係数

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バイオマス発電・RPS電源の中では安定的な電源

・木質バイオマス、バイオエタノール、バイオガス、廃棄物など多様な原燃料(コスト・環境負荷・最適発電規模も多様)~多様な使い方が可能。熱利用・燃料生産・燃料電池等と密接な関係。

・必ずしも国産エネルギーとはいえない

・コスト競争力のある部分の電源開発は既にかなり進んでいる

・既存発電所でそのまま利用も~しかし低炭素ではない

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風力発電変動が激しい→系統安定性の観点から導入量に制約が

安定的な電源ではない

~風任せ・必要なときに発電してくれる保証がない

← バックアップ電源を余分に持たないと安定(停電回避)を維持できない~見かけ以上に費用のかかる電源

蓄電池の導入(費用を 1kWh当り 4-5円引きあげる)

(1) 短期変動の回避 (2)夜から昼への電力供給シフト

→ 経済性を高める効果も:~成形して取引所に

CO2フリー電気取引開始( 2008年 11月)

分散型小型発電との相性

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太陽光発電・安定的な電源ではない~お日様任せ・必要なときに発電してくれる保証がない:バックアップ電源を持つ必要。需要ピーク時により多く発電してくれるメリットも。

・一般消費者の省エネ意識を高める副次効果

・日本が先行したが最近はドイツで急速に普及

・コストは急激に下がってきたが、RPS価値を考慮しても通常の電源・風力発電などに対して競争力を持っていない。

1kWh のコスト  140円 (1994年 )→45~60円 (2006年 )→23円( 2010年?目標)→ 7円( 2030年目標 )

(在来型は 7- 10数円、大型風力は 10数円程度)

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規制政策 規制の経済学 77

太陽光発電への導入促進策(1) 設置補助金 (国+自治体 )

(2) RPS法

(3) 電力会社による買取 (販売価格と同額→倍額 )

(4) グリーン調達、グリーン電力証書、優遇金利

(5) 固定価格買取制度 ( ドイツ )

~リスクを電力事業者が負う制度

(6) 優遇税制 (アメリカ、フランス )

裁量的・技術非中立的介入がなぜ必要か?

←外部性の大きさが異なる

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太陽光固定価格買取制度家庭用の太陽光発電の余剰電力を 48円で買取、

家庭の購入電力単価の2倍。→家庭での太陽光発電導入を後押し。~導入が経済的に不利にならない水準(環境意識が特に高い人に導入が限定されない水準)

一般電気事業者の負担~電力利用者が電気消費量に比例して広く薄く負担(太陽光サーチャージ)

家庭での直接負担は月額:数十円~数百円。たいしたことない?

しかしこの額から負担を判断してはいけない。電気はあらゆる財の生産に使われている (自由化の利益の議論と同じ )。負担は見た目以上に重い。

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余剰買取 VS 全量買取高価格で買い取るのは自家消費で余った余剰分だけ(余剰買取 ) か、発電量全部か (全量買取 )。

(例)昼太陽が照ると 10発電、同時間帯 5 消費

余剰買取なら 5× 買取価格を家庭に支払い

全量買取なら 10× 買取価格ー 5× 小売価格

どちらがより効率的か正しいか?

→余剰買取だと大きな歪みが発生

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余剰買取制度の問題点・昼間消費電力の少ない人の方が導入の誘因が大きくなる

・太陽光発電が稼働しているときのみ省エネの誘因を大きくする

・人為的な規模の経済性を作り出す

いずれも、経済効率性の観点からも系統安定性・配電対策の観点からも ( 公平性の観点からも )余剰買取制度はひどい制度

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なぜこんなひどい制度が導入された?

・関与した経済学者に問題があった?←経済学者に出来ることは限られている。一人反対しても政策に影響を与えられない。

・メータの問題 (ひどい制度が導入されるときにはしばしばこれが口実にされる )

・余剰買取の方が見かけ上より強力な導入促進策に見える ~余剰率 50%とすると (実際には内生だが )、余剰買取価格 48円は全量買取ベースでは 36円で買うのと同じ効果→見かけ上高い価格で買っているように見える (一般国民を馬鹿にした上げ底の政策 )

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全量買取だと国民負担が増える?

買取価格を 48円にしたままで余剰買取から全量買取にすると、実質的な太陽光発電への補助金が増えて国民負担が増す~これは余剰買取価格を ( 買取率 50%として )72円に上げるのと同じ

余剰買取であろうと全量買取であろうと買取価格が高すぎれば負担が増すと言っているのにすぎない~全量買取制度の問題点ではなく買取価格の問題

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規制政策 規制の経済学 83

買取制度は金持ち優遇で不公正?

太陽光発電を導入しやすいのは広い一戸建てに住む金持ち。それを全国民の負担で補助するなど金持ち優遇でけしからん?

全くナンセンス。買い取り価格はもともと、環境意識の高い人が採算度外視で導入していた状況を、採算のとれるぎりぎりの水準にするのがそもそもの目的

→基本的には(差額地代の部分を除けば)導入者は儲からないはず~すごく儲かるほどに高価格をつけるのなら、その価格水準を不公正というのが筋

買取制度の問題点ではなく買取価格の問題

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モノのインターネット社会 (Internet of Things) とスマートグリッド、スマートエネルギーシステム、スマートコミニュティ

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規制政策 規制の経済学 85

背景

IPv4→IPv6~アドレスの枯渇の制約から開放される

ブロードバンド普及 (光ファイバー網の整備 )

NGN、3 . 9世代携帯電話 (LTE)、 ZigBee

センサー技術+無線通信技術

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規制政策 規制の経済学 86

モノのインターネット社会第1段階:人と人とがネットワークを介してつながる社会 (従来のインターネット社会 )

第2段階:人と物とがネットワークを介してつながる世界 ( 接続された物を人間がインターネットを介してコントロール )~既に実現している世界

第3段階:物と物とが直接ネットワークでつながり連帯して作業を行う世界 (モノのインターネット社会 )~実現しつつある世界

考えようによっては電気の世界ではとっくに実現している社会~ガバナフリー運転等

しかし軽負荷で家庭にまで入り込む事が重要

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規制政策 規制の経済学 87

モノのインターネット社会

局地天候用センサーと農業機器が通信→水やり・肥料管理

家庭の血圧測定→病院のデータベース→危険時に医師への伝達

ホームパーティ→掃除ロボット

    →冷蔵庫・ワインセラー→欠品を自動発注

道路にセンサー網→カーナビ→より渋滞の少ない進路を指示

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Key Technology

(1) センサー技術

(2) 小電力消費だがローカルに安定的な通信

(3) 情報処理技術用・行動パターンの解析

(4) 情報管理・セキュリティ

スマートグリッド・スマートエネルギーネットワークにおける DSMの潜在能力・課題ともに共通

電力網の観点からのみスマートグリッドを見るのではなく、発想を逆転させてインターネットの観点から電力網を見る発想が重要。社会システム変革には数十年に 1度の大革新をもたらす千載一遇のチャンス。

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スマートコミュニティ省エネ:燃費向上、 LRT、モーダルシフト→スマートコミュニティエネルギー・通信・水道・交通システムの統合

風力・太陽光発電の余剰・出力変動を電気自動車の蓄電池で吸収、電力不足時に放出電気自動車の蓄電池を風力の蓄電池として再活用センサー網で自動車・ LRTの運転を制御巨大な市場。数十年に1度のビジネスチャンスかも。