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25年度 教育研究集録 教育実践の充実をめざして 常滑市教育委員会

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  • 平 成 2 5 年 度

    教 育 研 究 集 録

    教育実践の充実をめざして

    常滑市教育委員会

  • 目 次

    各校における現職教育のまとめ

    1 目的意識,相手意識をもって伝え合う児童の育成 ・・・・・・・・・・ 1

    ― 尐人数グループでの話し合いを通して ―

    常滑市立三和小学校

    2 自ら学ぼうとする子の育成を目指して ・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

    ― 感動に出会える授業づくりを通して ―

    常滑市立大野小学校

    3 自分の考えをもち,生き生きと学び合う子の育成をめざして ・・・・・ 9

    ― 伝え合う力を高める実践を通して ―

    常滑市立鬼崎北小学校

    4 一人一人の表現力を伸ばす指導の工夫 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

    ― 言語活動の場の工夫を通して ―

    常滑市立鬼崎南小学校

    5 各教科における伝え合う力を高める授業づくり ・・・・・・・・・・・ 17

    ― 児童の言語活動の充実を通して ―

    常滑市立常滑西小学校

    6 自分の思いを伝える力を育む授業づくり ・・・・・・・・・・・・・・ 21

    ― 地域から学び,地域に発信する実践を通して ―

    常滑市立常滑東小学校

    7 言語生活を豊かにできる児童をめざして ・・・・・・・・・・・・・・・ 25

    ― 書く活動を通して ―

    常滑市立西浦北小学校

    8 自分の考えをもち,表現することのできる児童の育成 ・・・・・・・・ 29

    ― 基礎的・基本的な知識・技能の定着を大切にした指導の工夫を通して ―

    常滑市立西浦南小学校

    9 わかる・できる喜びを実感し,意欲的に学習する児童の育成 ・・・・・・ 33

    ― 一斉指導におけるユニバーサルデザインの追求を通して ―

    常滑市立小鈴谷小学校

  • 10 確かな学力を育む授業展開の工夫 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

    ― 基礎・基本(読む・書く・聞く・話す)を活用し,思考力を伸ばす ―

    常滑市立青海中学校

    11 生きる力を支える表現力を身に付けた生徒の育成 ・・・・・・・・・・ 41

    ― 思考力をはたらかせる授業の工夫を通して ―

    常滑市立鬼崎中学校

    12 心豊かな生徒の育成を目指して ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

    ― 道徳の授業の実践を通して ―

    常滑市立常滑中学校

    13 「確かな学力」を育み,進んで学ぼうとする生徒の育成 ・・・・・・・ 49

    ― 言語活動の充実に向けて ―

    常滑市立南陵中学校

    幼 児 教 育

    「伝えたい」「聞きたい」心がつながる喜びを大切にした環境と援助 ・・・ 53

    常滑市立常滑幼稚園

    常滑市立青海こども園

    共 同 研 究

    学生ボランティア活用研究の取り組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

    常滑市教務主任者会

    市内小中学校の地震・津波に対する減災対策の研究 ・・・・・・・・・・・ 63

    ― 各校の実態に合わせた児童・生徒の避難訓練と避難所運営訓練を通して ―

    常滑市校務主任者会

  • 1

    目的意識目的意識目的意識目的意識,,,,相手意識相手意識相手意識相手意識をもってをもってをもってをもって伝伝伝伝ええええ合合合合うううう児童児童児童児童のののの育成育成育成育成

    ----少人数少人数少人数少人数グループでのグループでのグループでのグループでの話話話話しししし合合合合いいいいをををを通通通通してしてしてして----

    常滑市立三和小学校

    1 はじめに

    本校の児童は,明るく活発で,自然とのふれあい体験を豊富にもっている児童が多い。しかし,

    控えめな児童が多く,自主性に欠ける面があったり,活動への覇気や協調性に欠ける面があった

    りする。こうした児童が自分の意見をしっかりもち,積極的に活動できるようにしたいと考えた。

    そこで,国語の授業における話し合い活動を通して,話し合いの基礎を学び,自分の考えを積

    極的に発表できる児童を育成する授業実践を推進することにした。

    2 研究の概要

    (1) ねらい

    子どもたちが,話し合いの基礎を身につけ,自分の考えを積極的に発表できる力を身につけ

    させる。そして,話し合いの中で,友達の意見をしっかり聞き,一人一人の意見を大切にして

    いく態度を身につけさせる。

    (2) 研究内容と手だて

    ア 話し合い活動の基礎の理解と授業実践

    ・ 年間指導計画の作成

    ・ 国語の授業で,話し合いの基礎を身につけさせる。

    ・ 少人数グループでの話し合いを中心に研究を進める。

    ・ 目的意識や相手意識をしっかりもって話し合えるようにする。

    イ 一人一授業の実施

    ・ 国語(話し合いの基礎を築く)の授業

    ・ 新学習指導要領の趣旨を踏まえた授業

    3 研究の実際

    (1) 年間指導計画の作成

    国語科において,話し合いの基礎を

    築く授業を行うにあたって,「話すこと,

    聞くこと」「話し合うこと」の年間計画

    を作成することにした。そこで,各学

    年で「話すこと,聞くこと」「話し合う

    2年生 「話すこと・聞くこと」「話し合うこと」年間計画

    実施時期 単元名 単元の目標 学習の計画

    1学期

    6月

    だいじなことを

    おとさずに、話

    したり聞いたり

    しよう

    ともこさんはともこさんはともこさんはともこさんは

    どこかなどこかなどこかなどこかな

    (1)

    (2)

    (3)

    絵の内容に興味をもち,ゲームに楽しく参加し

    ようとする。

    大事なことを聞き落とさないようにしながら聞

    いたり,必要な事柄を選び,声の大きさや速さ

    に注意して,はっきりと話している。

    アクセントによって指すものが異なる語の違い

    を理解している。

    第1時

    第2時

    第3時~第4時

    絵を見ながら迷子探しをすることをつかみ,学習の計画を立てる。

    ★大事なことを落とさずに,話したり聞いたりしよう音声CDを聞い

    て、「よいしつもん」のポイントを整理する。

    聞き落としてはいけないことについて話し合い,自分で迷子のお知ら

    せを考えて話す。

    遠足の持ち物や明日の用意を友達に連絡し合う。「音の高さ」を学習

    する。

    相手に分かりやすく伝えるための注意点を話し合い、スピーチメモを

    作る。

    グループで一人ずつ話をし、聞き手は質問や感想を言う。

    2学期

    9月

    はっぴょうしよ

    あったらいいあったらいいあったらいいあったらいい

    なななな,,,,こんなもこんなもこんなもこんなも

    のののの

    (1)

    (2)

    (3)

    相手に分かるように話したり,友達の考えた物

    について聞いたりしようする。

    o自分が考えた物について,話す事柄や順序を

    考え,声の大きさや速度に注意して,はっきり

    とした発音で話している。

    o大事なことを落とさないように聞き,分から

    ないことは質問したり,感想を述べたりしてい

    る。

    「あったらいいもの」の名前や理由がよく伝わ

    るように,敬体で書いている。

    第1時

    第2時

    第3時~第5時

    第6時~第9時

    第10時~第12時

    第13時~第14時

    「あったらいいなこんなもの」の発表会を開くことを知り,学習の計

    画を立てる。★話し方を考えて,「あったらいいな こんなもの」の

    発表会をしよう

    「あったらいいな こんなもの」をたくさん考えて書く。

    「あったらいいな こんなもの」の発表会の見通しをもつ。

    あったらいいなと思うものについてカードにまとめ,台本を作る。

    順序よく話す練習をする。

    発表会を開き,感想を交換する。(言語活動)

    2学期

    12月

    図書館のひみつ

    をさぐろう

    きみたちはきみたちはきみたちはきみたちは,,,,

    「「「「図書館図書館図書館図書館たんたんたんたん

    ていだんていだんていだんていだん」」」」

    (1)

    (2)

    (3)

    図書館での本の並び方に興味をもち,分類の仕

    方を知ろうとする。

    話す事柄を順序立てて,丁寧な言葉と普通の言

    葉との違いに気を付けて話している。

    おおまかな本の類別を意識して本を探してい

    る。

    第1時

    第2時~第3時

    第4時~第5時

    第6時

    第7時~第14時

    教材文(P.43)を読み,学習の計画を立てる。★図書館のひみつをさ

    ぐろう

    グループごとに地図を作成し,本を探しながら分かったことを記録す

    る。

    カード「おねがい2」に従って,本の分け方や並べ方について気付い

    たことをまとめる。

    報告会をする。(言語活動)

    読みたい本を探して,読む。

    【「話すこと・聞くこと」「話し合うこと」年間計画】

  • 2

    こと」の単元を洗い出し,実施時期や指導内容などをまとめ,年間計画を作成した。年間計画

    をもとに,各学年で指導するとともに,授業実践の計画を立てた。また,各学年の目標を確認

    し,系統的に学習が進むように考えた。

    (2) 授業実践

    ア 1年生の国語科での実践

    ○単元名 はなそう,きこう(おはなし きいて)

    ○学習の計画(4時間完了)

    (本時) 第4時 「おはなし会」を開く。

    ○本時の目標

    o経験したことについて,相手に聞こえる声で,話すことができる。

    o話す友だちの方を見て,最後まで静かに聞くことができる。

    ○学習過程の工夫と実践

    o話し方や聞き方の工夫を黒板に掲示する。

    聞き方 話し方

    ※だれもが「聞き方」「話し方」に気をつけることができた。学年や単元の目標にあった

    ものを黒板に貼ったり配ったりして,視覚的に補助することの大切さが確認できた。

    oどの児童も話したり聞いたりできるように3~4人組で「おはなしかい」を行う。

    「発表する人」「質問をする人」と役割を決めて行う。

    ○ ○ □ 発表者

    ■ ■ 聞く人

    ○ ○

    ※発表者を正面から見えるように,グループの席を工夫する必要がある。

    ※まわりのグループの声がよく聞こえて,発表が聞きにくかった。グループの配置を

    考える必要がある。

    oワークシートを使って,まとめをする。

    ※低学年では書く量を減らし,選択肢などで簡単に記述できるようにする。

    イ 4年生の国語科での実践

    ○単元名 調べて発表しよう(だれもがかかわり合えるように)

    ○学習の計画(15時間完了)

    (本時) 第12時 グループで発表の練習をし,自分のめあてをもつ。

    あ…あいてのかおをみて

    お…おしまいまできく

    き…きこえるこえではなす

    い…いそがずにはなす

    発表者を横から見

    ることになる

    発表者を正面から

    見えるようにする

  • 3

    ○本時の目標

    o相手や目的に応じ,理由や事例などを挙げながら筋道を立てて話すことができる。

    o話の中心に気をつけて聞き,質問をしたり,感想を伝えたりすることができる。

    ○学習過程の工夫と実践

    o「発表する人」「聞く人」のポイントをプリントにして配布する。

    o机の配置を工夫する。(発表者を正面から見えるようにする)

    ※発表者と正面から向き合えたが,黒板に背を向けてしまう児童が出てしまった。全員

    が黒板向きになるよう机を配置する。

    ※今回も1年生の授業と同様に,まわりのグループの発表の声が気になった。机の配置

    とともに,適切な声の大きさについても指導していく必要がある。

    o「発表する人」「聞く人」「応援者」の役割をもって,3人組で発表の練習を行う。

    少人数のグループで,全員が役割をもって,発表の練習ができるようにする。

    ※発表の手順,①発表,②聞く人が質問をする,③応援者が感想・意見を発表する,④

    プリントに感想を書く、が十分に理解されていなかった。発表の手順をプリントで配

    布したり,黒板に掲示したりして,手助けをする必要がある。

    ※「応援者」の役割が、十分理解されていなかった。話し合いの手順とともに、役割の

    理解を徹底する。

    ウ 2年生での国語での実践

    ○単元名 はっぴょうしよう「にじの三和小ゆめのアイテム」(あったらいいなこんなもの)

    ○学習の計画(13時間完了)

    (本時) 第5時 話し合いを通して,夢のアイテムを詳しくする。

    ○本時の目標

    o相手にわかるように話したり,友だちの夢のアイテムについて質問したりしている。

    o夢のアイテムを詳しくすることができる。

    ○学習過程の工夫と実践

    o机の配置をくふうする。(教室を広く使うために机を二人に1つにする)

    前後で児童が交代し,より多くの児童と話し合いを行う。

    黒板に背を向けて

    しまう

    発表者を正面に見て,黒

    板に背を向けない

  • 4

    ※机を二人で1つにしたため,教室を広く使うことができ,隣とのとの距離が広くなっ

    た。そのため,他のグループの声はあまり気にならなかった。

    ※席を移動して,何度も話し合いを行うことでより多くの質問をしたり,自信をもって

    答えたりすることができた。

    ※児童の向きはどうしたらいいのか。今後の課題。

    ①正面を向く ②イスを90度斜めにする ③向かい合う

    □ □ ◇ ◇ □ □

    □ □ ◇ ◇ □ □

    o「話すとき」「聞くとき」のポイントや目標を黒板に掲示する。

    o「話し合いの進め方」を黒板に掲示する。

    ※どの児童も,同じように話し合いを進めることができた。

    ※質問の例が多く出されており,誰でも積極的に話し合いに参加できた。

    ※話し合いの手順を細かくしめしたため,手順が多くなり,分かりづらくなった。

    o詳しくしたいことを付箋に書く。

    ※付箋に書くことで,どんどん詳しくなっていった。

    ※付箋はいつ書かせるのか。質問が全て終わってから書けば,話し合いの流れを止めず

    にすむ。質問ごとに書かないと書けない児童もいる。

    ※会話だけで進めて,付箋などは書かないほうがいいのでは。

    4 成果と今後の課題

    (1) 成果

    ○ 話し合い活動を行うための机の配置の工夫

    ・少人数のグループで話し合いを行う。

    ・グループごとの間をあける。(話し合いの声ができるだけ聞こえないようにする)

    ○ 話し合いの手順や,「聞き方」「話し方」などを掲示したり,配布したりすることで,活発

    な話し合いを行うことができる

    (2) 課題

    ・低中高学年ごとの目指す児童像を考え,学年の目標を立てる。

    ・系統的な指導方法を確立していく。

    ・国語以外の授業でも,意識して話し合い活動に取り組んでいく。

    ① ② ③ 児童はどういう向

    きがいいのだろう

    交代して話し合い

    を行う

  • 5

    自自自自らららら学学学学ぼうとするぼうとするぼうとするぼうとする子子子子のののの育成育成育成育成をををを目指目指目指目指してしてしてして

    ----感動感動感動感動にににに出会出会出会出会えるえるえるえる授業授業授業授業づくりをづくりをづくりをづくりを通通通通してしてしてして----

    常滑市立大野小学校常滑市立大野小学校常滑市立大野小学校常滑市立大野小学校

    1111 はじめにはじめにはじめにはじめに

    昨年度までの4年間,「伝え合う力」「学び合う力」の育成に焦点を当て,研究に取り組ん

    できた。各教科において,単元の中に「伝え合い」「学び合い」の場を確保し,児童が伝え合い,

    学び合うことの楽しさやすばらしさを実感できる機会を多く設定した。その結果,児童は,友だ

    ちやまわりの子と積極的に自分の意見を交流させ,新しい考えに気付いたり,自分の考えを深め

    ることに喜びを感じたりしてきた。しかし,「もっと知りたい」「もっとやってみたい」などの

    気持ちをもっていても,進んでその気持ちを表したり,行動にうつしたりはできない。そこで,

    全ての学習活動の土台となる「学びたい」「知りたい」「もっとやってみたい」などの気持ちを

    喚起させ,主体的に学習活動に取り組める児童の育成を図ることが必要であると考えた。

    2222 研究研究研究研究のののの仮説仮説仮説仮説

    以下のような仮説を立て,授業研究に取り組んだ。

    児童が感動に出会えるような題材・指導方法の工夫をし、各教科の特性を生かした「伝え

    合い」「学び合い」の場を確保していけば、主体的に学習に取り組む児童を育成することが

    できるであろう。

    3333 本年度本年度本年度本年度のののの取取取取りりりり組組組組みみみみ

    以下のような研究の方法で取り組んだ。

    (1) 研究の方法

    ア 学習に対する意欲・関心が高まるような題材・指導方法の工夫をする。感動に出会える

    授業を以下の状態が生まれる授業ととらえる。

    ○「話さずにはいられない」「やらずにはいられない」などの意欲

    ○「面白い」「もっとやってみたい」などの興味

    ○「できた!」「わかった!」などの理解,獲得の実感

  • 6

    ○「分かってもらえた」「認められた」などの喜び

    イ 各教科の特性を生かした「伝え合い」「学び合い」の場を確保し,互いの思いや考えを

    伝え合い,ものの見方や考え方をよりよいものへ変えていき,主体的に学習に取り組む児

    童を育成する。

    ウ 一人一授業の研究授業を行い,低・中・高学年の3部会の代表研究授業は,全員参加の

    授業研究とする。

    (2) 研究の計画・・・・低・中・高学年の3つの部会を設け研究を進める。

    ○現職全体会(4月) ・研究の方向性とテーマの確認をする。

    ○研究授業(順次) ・一人1授業の計画を立て,計画に従い研究授業を

    行う。(全16回)

    ○研究授業(5月) ・研究授業を行う。(高学年部会代表授業)

    ○現職推進委員会(5月) ・研究授業の指導案の検討を行う。

    ○学校訪問(6月) ・研究授業を行う。(中学年部会代表授業)

    ・研究内容の検証をする。

    ○現職推進委員会(9月) ・2学期の現職教育推進の確認をする。

    ○研究授業(10月) ・研究授業を行う。(低学年部会代表授業)

    ○低・中・高学年部会(1月)・低・中・高学年部会で,現職についてまとめる。

    ○現職全体会(3月) ・本年度の研究のまとめをする。

    4444 研究研究研究研究のののの実践実践実践実践

    (1) 授業実践Ⅰ(3年生理科単元「かぜやゴムで動かそう」)

    ア 授業の実際と考察

    ゴム車を駐車場にぴったり止めようという学習問題で,ゲーム的な要素を取り入れた

    実験を行った。ゴム車を走らせるためのコースがテープで仕切って作られ,視聴覚室が

    特別な空間となり授業への参加意欲が高まった。同じコースを使う児童同士で,協力し

    合ったり,アドバイスをし合ったりして,児童は意欲的に取り組んだ。また,教師の児

    童への多くの励ましの言葉が,児童のやる気につながっていた。そして,実験の時間が

    しっかり確保され,繰り返し挑戦でき,成功したことが感動につながった。予想→実験

    →確かめ→結果という学習過程で,最初の実験後に話し合ったことを,実際に実験で確

    かめ共有できた。

    イ 実践の成果と課題

  • 7

    (ア) 成果

    ・児童が感動し,生き生きしていた。また,内容もよく理解できていた。

    ・教師が表情豊かに授業を楽しんでいて,児童のやる気につながった。

    (イ) 課題

    ・実験で全員成功体験することができたのか確認すべきであった。

    ・ペアで伝え合う,チーム戦でやる,合計点で競うなど工夫がほしい。

    ・困っている児童をしっかりと把握したり,ペア活動を取り入れたりするとよかった。

    ・ヒントやキーワードがあれば,ワークシートが書けなかった児童でも記入できた。

    (2) 授業研究への取り組み

    ア 少経験者の授業実践

    少経験者の授業研究に当たり,事前の指導案検討会での経験豊かな教師からの意見を参

    考に,自分で考えながら何度も指導案を書き直している姿が印象的であった。結果,現職

    教育の意義を理解し,目指す子ども像に沿った授業の組み立てができた。そして,自信を

    もって授業に臨んでいる少経験者の姿があった。少経験者の感想に,「ベテラン教師の指

    導のアイデアの豊かさに驚かされた」とあった。少経験者,ベテランを問わず,授業研究

    の機会を生かした取り組みの大切さを感じた。

    イ 30分間のワークショップ型研究協議会のもちかた

    ワークショップ型を取り入れ,3年目になった。グループ構成を,ベテラン・中堅・若

    手が混ざるようにして教育技術の継承を図っている。少経験者も臆することなく自分の考

    えを出すことができている。一人一授業時は,30分間のワークショップによる研究協議

    会で,時間を区切って行っている。授業改善への姿勢を日常化し,校内研究を継続的なも

    のにするためには,1回の協議会の負担をできる限り減らすことが重要である。

    ウ 授業の可能性を高める

    研究協議会では,最初に「なぜこのような発問をしたのか」「どうしてグループ活動に

    したのか」など授業者への質問はしないようにしている。疑問を尋ねる前に手にしている

    事実から,参加者一人一人が最大限の想像をする。そうすることで,参観者が自由な立場

    で幅広く意見を交わすことで,授業の可能性を高めていく。授業者の応答を聞いた後では,

    可能性が固定したり,狭くなったりしてしまう。授業を参観した全員で授業を分析し,答

    えを探っていくようにしている。「なぜこの子は,このような発言やしぐさをしたのか」

    発言,つぶやき,しぐさなどの児童の事実で語るようにしている。

    エ 抽出児の変容を追い授業検証

    「抽出児は,授業を照らすたいまつである」教師がある意図をもって選んだ抽出児で,

  • 8

    授業の検証をする。同時に,抽出児や児童の変容・成長を願う。個性能力を異にした大勢

    の児童を相手に一斉授業を行うためには,あらかじめよく把握してある数名の抽出児を手

    がかりにするのがきわめて効果的ある。抽出児を追究することを通して,他の児童や教師

    の在り方をとらえ,授業のそのものを検証するための手がかりとしている。

    オ 授業記録の活用

    教師の発問と児童の発言の授業記録をとり,時系列に沿って見ていく。授業記録を分析

    し,事実に基づいて授業の検証をする。出された意見が全てではなく,意見の背景を探る

    ことが大事である。児童の固有名詞で授業中の児童の姿をもとにした協議を目指している。

    授業記録や記録のどの記述からかを示して発言をする。児童の学びを自分なりに読み取っ

    て,自分なりに解釈し,参加者の個々の解釈を交流することで,自身の児童理解,授業観

    を深める。授業記録を分析すると,児童を見る解釈の幅が広がったり,児童の発言に対す

    る教師の出や発問を検証できる。

    (3) その他の現職教育(外部講師を招いての演劇指導)

    劇団より講師を招いて演劇指導をしてもらった。実際に教員が児童になりきり,演じる

    ための心と体の準備運動を体験した。エア-縄跳びでは,縄跳びがない状態で,回し手が

    回した長縄が回っていると想像して跳んだ。想像力を働かせる演劇のおもしろさを感じた。

    また,グループで体を使ってブルドーザーやかたつむりなどを表現した。そして,場面転

    換は隠さなくてもよい。役の交代はハイタッチでもよい。敵対関係,身分の違いは距離を

    とる。客にお尻を向けるのはタブーではないなど,演劇のプロの指導から学んだ。

    参加者の感想に,「教師の目先で指導していたことが,子どもをおさえてしまっていた。

    素の自分が出せるような環境を整えていくことが大切だとわかった」とあった。

    5555 おわりにおわりにおわりにおわりに

    「わかる授業は,子どもに達成感を与える」「子どもが活躍する授業は自己存在感を与える」

    など,授業力を高めることで児童を育てる。日々授業力の向上を目指し,教師としての責任を

    果たしていく。今後も少経験者を始めとする教職員の力量向上に努めたい。

  • 9

    自分の考えをもち,生き生きと学び合う子の育成をめざして

    -伝え合う力を高める実践を通して-

    常滑市立鬼崎北小学校

    1 は じ め に

    本校では,昨年度より「自分の考えをもち,生き生きと学び合う子の育成」というテーマのも

    と,特に「話し合い」活動に重点を置いて取り組んできた。「話し合い」活動を学習活動に位置

    付け実践したことで,発言の機会が増え,進んで発表する児童が増えてきた。また,話型や話し

    合いの進め方を提示したことで,話し

    方のスキルが身につき,自分の言葉で

    話す力が伸びてきた。しかし,聞き手

    を意識して伝えることはできるように

    なってきたものの,双方向の話し合い

    のためのスキルは,十分に身について

    いない状況であり,考えを出し合い豊

    かに関わるための「表現力」や「コミ

    ュニケーション能力」,さらに考えを

    取りこんで結論を導いたり整理したり

    する「まとめる力」を育成することが

    必要であると考えられた。

    そこで本年度は,サブテーマを昨年

    度に引き続き「伝え合う力を高める実

    践を通して」として,右図のような研

    究構想図を作成した。

    研究の視点を,学び合いを育むとい

    う観点から①伝え合う力の育成を目指

    した授業実践,②表現力の育成を支え

    る日常的な言語活動・体験活動とし,

    心を育むという観点から③情意の形成

    を意図した学級経営とし,研究に取り

    組むことにした。

  • 10

    2 研 究 の 概 要

    (1) 伝え合う力の育成を目指した授業実践

    ① 研究の視点と手立て

    研究を効果的に進めるためには,目標と手立てを全教職員が共有することが重要である。

    そこで年度当初に方策や指針を協議する場を設け,共通理解を図り,授業実践では,以下に

    示す3点に留意して取り組んだ。一人一研究授業を実践し,指導案には具体的な手立てを明

    記することとした。

    ア 「話し合う」言語活動を取り入れた授業の展開

    各教科のねらいや特性に応じた言語活動を取り入れる。特に,自分の考えを「話し合

    う」活動の中で表現させるための手立てを工夫する。

    イ 伝え合う場の工夫

    ペアで,グループで,全体でなど,意見交流の形態や方法を工夫し,伝える内容を書

    いてまとめる活動を取り入れる。

    ウ 学ぶ意欲の向上と学習習慣づくり

    「わかる」「できた」と感じることができる教科指導の改善と工夫を行う。具体的な

    手立てを工夫する実践の中で,視覚的に考えを深めさせる支援として,板書計画の立案

    を今年度も継続して行う。

    ② 授業実践の概要紹介

    <4年 理科「電気のはたらき」>

    ア 提案内容

    各自が考えた回路を直列・並列に分ける活動において,

    グループや学級全体でのワークシートを活用した話し合

    いの中で,共通点や相違点を意識した考察ができるので

    はないか。

    イ 授業の概要

    乾電池2個とモーターを使った回路を考え,それを仲

    間分けするという学習内容であった。乾電池が2個にな 4年 理科「電気のはたらき」

    ったことで様々な回路が考えられ,それらの共通点や相違点を根拠とした話し合いが行

    われた。話し合いの支援としてのワークシートのあり方や,意見交換ができるグループ

    の分け方が課題となった。本授業は,今年度最初の研究授業であり,研究の方向性を教

    職員全体で確認することができた。

  • 11

    <2年 国語「はっぴょうしよう」(あったらいいな こんなもの)>

    ア 提案内容

    意図的に二人組を構成し,博士・助手という役割分担や話型を用いることで,話し合

    いをスムーズに行うことができるのではないか。また,話し合って詳しくなった内容を

    付箋紙に書くことで,自分の考えを整理できるのではないか。

    イ 授業の概要

    前時に考えた「あったらいいな こんなもの」につ

    いて二人組で対話をしていく。話型にそって聞き手が

    質問することで,話し手の「あったらいいな」と思う

    ものを,より具体的な形にしていくという学習内容で

    あった。話型を使ったことで児童の安心につながり,

    テンポよく質問していた。二人組で話しているときと 2年 国語「はっぴょうしよう」

    付箋紙に書くときに考えが変わってしまうことがあったが,実際その場面で話し合いが

    始まり,より具体的なものになっていた。本来の双方向の意見の交流,学び合いになっ

    ていた。

    <5年 社会「自動車工業のさかんな地域」>

    ア 提案内容

    異質グループを構成し,リーダーの児童を中心に話し合いを進めていけるようにする

    ことで,学び合いが深まるのではないか。友達の意見で共感するものにはアンダーライ

    ンを引くことで,一目で話し合いの成果を感じられるのではないか。

    イ 授業の概要

    人にやさしい自動車の工夫を知り,もっと人にやさしい自動車を自分たちで考えると

    いう学習内容であった。グループ用ワークシートには,各自が色ペン(青・緑・黒)で記

    入し,誰の意見か特定できるようにされていた。

    発言を苦手とする児童が多いため,グループ活動から全体へという学習の流れで取り

    組んできている。徐々にではあるが,グループのリーダー格の児童が機能するようにな

    ってきている。

    ③ 授業実践の成果

    各教科のねらいや特性に応じた言語活動を取り入れ,グループで「話し合う」活動を学習

    過程の中に位置付けた授業実践に取り組んできた。グループ内での話し合いを設けたことで

    活発に意見交流することができ,下位児童も達成感を得ることができた。しかし,グループ

    によっては上位の児童に流されて進んでしまったり,グループ間の差がでてしまったりした。

  • 12

    何を話し合うのか目的意識をしっかりもたせることや,話し合いの方向性を教師が示しなが

    ら,スムーズに話し合いが進められるよう経験を積ませていく必要がある。

    (2) 表現力の育成を支える日常的な言語活動・体験活動

    授業以外の時間にも,自分の思いや考えを表現する機会が必要であると考え,毎日の生活の

    なかに言語活動を位置付けた。

    ① 読書活動の推進

    昨年度から火~木曜日の週3日間を「読書タイム」とした。落ち着いた雰囲気のなか一日

    を始めることができ,読書に親しむ児童の姿を以前にも増して見かけるようになった。

    ② スピーチ活動の充実

    学年の実態に応じた目標を設定して,スピーチ活動に毎日取り組んだ。1学期終業式には

    2・6年生の代表者による「1学期を振り返って」,2学期終業式には1・5年生の代表者

    による「2学期を振り返って」という学年代表による発表の場を設けて,「聞き手」にとっ

    て分かりやすく,聞き取りやすいスピーチの内容や話し方を全校児童に紹介してきた。3学

    期修了式には3・4年生代表者による発表を予定している。

    ③ 体験活動の充実

    よい体験がよい表現へつながるという考えのもと,本校の特色ある教育活動である「海と

    友だち活動」や校内学習発表会等の学校行事,学年行事の終了後には,考えたことや思った

    ことを発表する場を計画的に設けてきた。「海と友だち活動」としては,海のお祭り(海岸

    清掃・潮干狩り・海へのメッセージ)をペア学年を基盤とした10の縦割りグループによる

    異学年交流で行った。また,4年生による海浜事故防止講座,1年生による海苔すき体験を

    実施した。これらの活動終了後の感想発表会や事後作文を通して,分かりやすく伝え合う力

    の育成を意識した実践になった。

    (3) 情意の形成を意図した学級経営

    学習・生活の指導マニュアル「鬼北小スタンダード」を基に,基本的な生活習慣を身につけ

    させるとともに,抵抗なく互いに意見を交わすことができるような温かな学級経営に努め,互

    いに認め合える雰囲気づくりに心がけている。

    3 今 後 の 課 題

    (1) 話し合いのための効果的な学習形態を工夫し,聞き手やグループの話し合いでのリーダーを

    育てることで,伝え合い,深まりにつなげていく。

    (2) 少経験者向けの内容を多く取り入れながら,経験豊富な教師にとっても有意義な研修を工夫

    し,教職員全体の指導力をさらに高めていく。

    (3) 児童数や施設面,地域の特性を考慮して,今後も充実した体験活動を継続発展させていく。

  • 13

    一人一人一人一人一人一人一人一人のののの表現力表現力表現力表現力をををを伸伸伸伸ばすばすばすばす指導指導指導指導のののの工夫工夫工夫工夫

    ―――― 言語活動言語活動言語活動言語活動のののの場場場場のののの工夫工夫工夫工夫をををを通通通通してしてしてして ――――

    常滑市立鬼崎南小学校常滑市立鬼崎南小学校常滑市立鬼崎南小学校常滑市立鬼崎南小学校

    1111 はじめにはじめにはじめにはじめに

    学習指導要領では,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得

    させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他

    の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに重点がおかれている。

    本校では,表現力に関する児童の実態として「様々な場面に応じて,発達段階に応じた適切な

    言葉が使えない。」「主体的に学習に取り組み,伸び伸びと表現する姿勢に乏しい。」「国語科で学

    習した表現力が十分に生かされていない。」という現状がある。そのために,国語科の学習活動を

    中核として,各教科の年間学習計画と連動させながら,言語活動の工夫について積極的に取り組

    んだ。また,発達段階において期待される表現を意識した授業と表現力の高まりを検証する方法

    の工夫,主体的に学習に取り組む態度を養う効果的な指導方法について研究してきた。

    本年度の実践は,「筋道を立て,自分の考えをわかりやすく表現できる子」をテーマとして,国

    語科で培った能力を活用し,各発達段階において期待される表現を用いながら,主体的に学習に

    取り組む児童の姿を目指した。この取組を通じて,学習過程の様々な場面で言語活動の工夫がさ

    れ,児童一人一人が豊かに表現することを期待した。

    2222 研究研究研究研究のののの概要概要概要概要

    (1) めざす児童像

    「「「「筋道筋道筋道筋道をををを立立立立てててて,,,,自分自分自分自分のののの考考考考えをわかりやすくえをわかりやすくえをわかりやすくえをわかりやすく表現表現表現表現できるできるできるできる子子子子」」」」

    (2) 仮説

    「子どもの意欲を伸ばす工夫や発達段階に応じた指導を充実すれば,表現力が高まるだ

    ろう」

    (3) 手立て

    ア 主体的に学習に取り組む態度を養い,効果的な指導を探る。

    ・ 単元の初めに学習計画を話し合い,主体的に学習に取り組む態度を養う。

    ・ 本時の学習予定を示し,見通しをもたせ,学習意欲の向上へつなげる。

  • 14

    発達段階に応じて,期待される表現

    話し合われた単元計画

    イ 表現力の高まりを検証する方法を探り,フィードバックする。

    ・ 研究協議会を充実させ,言語活動の工夫が適切であったか検討する。

    ・ 児童の発達段階に応じて,期待される表現を意識して指導する。

    【低学年】

    ○主語と述語(例えば,性質,状態,関係など)を明確にして表現する。

    ○比較の視点(例えば,大きさ,色,形,位置など)を明確にして表現する。

    ○判断と理由の関係を明確にして表現する。

    【中学年】

    ○判断と根拠,結果と原因の関係を明確にして表現する。

    ○条件文( 例えば,「もし,○○○ならば,△△△である)で表現する。

    ○書いた物を発表し合い,書き手の考えの明確さなどについて意見を述べ合う。

    【高学年】

    ○演繹法や帰納法などの論理を用いて表現する。

    ○規則性やきまりなどを用いて表現する。

    ○互いの立場や意図をはっきりさせながら,計画的に話し合う。

    ウ 国語科と他教科・領域との関連を図り,言語活動を充実させる。

    ・ 国語科で学んだ表現方法を他教科,領域で生かす。

    ・ 年間学習計画一覧表を活用し,他教科との関連を考慮し,効果的な配置にする。

    ・ 内容に合わせて,合科的に扱う。

    (4) 具体的な実践 検証授業より

    ア 第6学年 社会「天下統一と江戸幕府」

    表現力向上をねらううえで基礎・基本

    の充実とともに主体的に学習に取り組む

    態度を養うことが大切とされている。こ

    の実践では,単元の初めに学習計画を話

    し合い,それにより,登場する歴史人物

    に手紙を書くことや単元のまとめとして,

    歴史新聞を書くことを知り学習の見通し

    をもつことができた。また,毎時,その

    授業の流れをホワイトボードを使って,

    授業の最初に提示することでその授業で

    学ぶべき内容やめあてをしっかりと児童

  • 15

    織田信長に宛てた手紙

    色のカードを使ったハンドサイン

    気持ちの変化を根拠とともに表現

    一人一人がつかむことができた。

    このように学習に計画性をもたせることで児童

    自身の主体性や意欲を促すことができ,充実した

    表現活動を行うことができた。この単元の検証授

    業では言語活動充実の手立てとして国語科「文章

    と対話しながら読み,自分の考えをもとう」(自分

    の立場をはっきりさせ,自分なりの思いや考えを

    もつ)の単元で学習したことを活かそうと考え

    た。そこで,「信長の行動をとらえ,自分の立場

    をはっきりさせた内容で信長に手紙を書く。」という学習活動を取り入れた。児童の中に

    は,自分の立場を町民として,信長が行ったことに賛成し,感謝する内容を適切な用語

    を用いて伝える子もいた。信長が行ったことを資料から読み取り,信長へ手紙を書く活

    動を行うことで,自分の立場や考えをはっきりさせて表現する力を使い,信長の業績と

    その意味を関連付けてとらえさせる効果があった。

    イ 第4学年 道徳「本当の友達」2-(3)信頼・友情

    様々な場面において,発達段階に応じた適切

    な表現ができることが大切であるとされている。

    この実践では,4年国語科「話し合いのしかた

    について考えよう」(互いの考えの共通点や相違

    点を考えながら話し合う)との関連を考えた。

    そこで,中学年で期待される「判断と根拠,結

    果と原因の関係を明確にして表現する」という

    ポイントを意識して,児童が友達のいろいろな

    意見を聞き,自分の考えを練り直し,道徳的価

    値を高める活動を行った。ワークシートやハン

    ドサインを工夫することで,自分の考えと友達

    の考えとの共通点や相違点を明確にすることが

    でき,判断した根拠や自分の立場を表現するこ

    とへの高まりがみられた。

  • 16

    クリアボードを使った話し合い

    ウ 第6学年 算数「円の面積」

    本時の授業では,円の面積をその

    まま使っただけでは解くことのでき

    ない複雑な図形の面積を求めること

    を課題とした。この実践は,国語科

    「学級討論会をしよう」(話し手の意

    図をとらえながら聞き,自分の意見

    と比べる)の活動を活かしたいと考

    えた。そこで,ホワイトボードマー

    カーで書いたり,消したりできるクリ

    アボードを活用した。これはグループ

    で考える際に補助線を書き込んだり,図を指し示したりしながら自分の考えを分かりや

    すく伝えることができるものである。

    実際に,ある児童が思いついた解き方を口頭でグループに説明した。しかし,それを

    聞いた同じグループの児童は正確に理解できない。そこで,クリアボードに補助線など

    を書き込み説明し直すと,意図が伝わりやすくなった。聞いていた他の児童も自分の意

    見を書き込むことで自分の意見と比べやすくなるなど,教具の工夫で数学的な考え方を

    共有し,表現力が向上する実践となった。

    3333 成果成果成果成果とととと課題課題課題課題

    (1) 表現力の高まりを検証することは難しいという反省から,発達段階に応じて期待され

    る表現について共通理解を図った。これにより,児童の表現力の高まりについて,的確

    な研究協議を行うことができ,その有効性を検討することでフィードバックすることに

    役立った。

    (2) 児童が主体的に学習に取り組む態度を養うために,単元の初めに学習計画を話し合っ

    たり,授業の初めに本時の学習予定を示し見通しをもたせたりする実践をした。以前よ

    り主体的に取り組む姿勢が見られたが,より効果的な方法を探りたい。

    (3) 一人一人の表現力を伸ばす指導の工夫をテーマに実践を積んできた。これまでの3年

    間で教科間の関連を意識して単元づくりをすることができた。これらの成果を有効に活

    用して,今後日々の学習活動に活かしていきたい。

  • 17

    各教科各教科各教科各教科におけるにおけるにおけるにおける伝伝伝伝ええええ合合合合うううう力力力力をををを高高高高めるめるめるめる授業授業授業授業づくりづくりづくりづくり

    ~ 児童の言語活動の充実を通して ~

    常滑市立常滑西小学校

    1 は じ め に

    現在の学習指導要領が施行され3年が過ぎる。重要課題の言語活動を充実させようと、本校も

    日々の実践を積んでいる。本校の現職教育では、これまで国語科を中心に据えて「豊かに表現で

    きる子の育成」に取り組んできた。昨年度は、読解教材における「伝え合い」のあり方に重点を

    置いて取り組みを進めた。本年度は以下に示すように、今まで培ってきた「伝え合いの力」を他

    の教科でも生かし、他者とのコミュニケーション能力をさらに高めたいと考えた。

    2 取 り 組 み の 実 際

    (1) 主題設定の理由

    本校の児童は、明るく素直で、様々なことに前向きに取り組もうとする姿勢がよくみられる。

    昨年度までの2年間、国語科の「言語表現」に研究を絞り、「伝え合いの力」のレベルアッ

    プを目指してきた。伝え合いのスキルを基に、「系統表の検証」「読解単元における、伝え合

    い活動を生かした読解の深め方」「単元構成の再構成」この3点を重点にして取り組んできた。

    その成果として、

    ・伝えようとする意欲が高まり、人前で堂々とわかりやすく話すことができた。

    ・人の意見を聞く機会が増え、ハンドサインや言葉を使って自分の考えを伝えることができ

    た。

    が挙げられた。また、自分の考えを伝えることができるようになったことで、授業に主体的に

    取り組むようになった児童が増えてきた。

    伝え合う力をさらに高めるためには、国語科の授業だけでなく、教育活動全体において育成

    する必要がある。各教科の授業において国語科で培った伝え合う力が活用できる言語活動を取

    り入れ、実践することが有効だと考えた。また、各教科の授業で、対話・記録・報告・要約・

    説明・感想などの言語活動を充実させた授業を展開すれば、各教科における基礎的・基本的な

    知識や技能の習得が図れ、児童の伝え合う力が高まり、友達との関わりも深めることにつなが

    ると考えた。

    そこで、各教科の特性を生かし、四つの力(聞く、話す、書く、読む)の育成を図ることを

  • 18

    通し、言語活動を充実させ、伝え合う力を高めることとした。

    (2) 研究の方法

    ○「一人一授業実践」を行い、研究を進める。

    ・ 取り組みたい教科で授業を全員が行う。

    ・ 各教科の特性を生かし、伝え合う力を高め、本時の目標を達成させるための言語活動を

    取り入れた授業をする。

    ・ 四つの力(聞く、話す、書く、読む)のいずれかに焦点をあて、授業を構成する。

    ・ どのような言語活動を取り入れたかがわかるような指導案の形式を工夫する。

    ・ 事前に指導案の検討会を各部会で行う。(低学年、中学年、高学年)

    ・ 授業者の属する部会で研究協議会を行う。

    (3) 研究の実際

    ア 4年・算数科での取り組み(単元「面積」)

    (ア) 本時の言語活動

    本時は、右図のような長方形や正方形を複合させた

    面積を求めることが目標である。この目標を達成させ

    るため次のような言語活動を取り入れた。

    ・ 例題の解き方を考える場面で、理解をより深めるため、自分が見つけた考えを隣

    同士で伝え合わせる。

    ・ 例題の解き方を基にした演習問題を考える場面で、他者の考えからよりよい解き

    方を検討するため、グループで伝え合わせる。

    算数科の言語活動の特性として、図や式を用いて説明することが挙げられる。本時も

    図を用いて、自分の解き方を説明できるように全員に問題が載せてある学習プリントを

    用意した。また、考え方がわかっていてもそれを伝えることが苦手な児童のために、話

    形カードを用意し、それを用いて伝えさせることにした。

    (イ) 授業の様子

    はじめに、長方形と正方形の面積の求め方を確認し、例題の図形を提示した。その効

    果からか、多くの子が階段型の図形を二つの長方形に分けたり、欠けた部分を補完して

    長方形にしたりする解き方を見つけることができた。

    隣同士伝え合わせる場面では、自分の見つけた解き方をうまく説明できない児童が多

    かった。伝え方のヒントとして話形カードを示したところ、ほとんどの児童が説明でき

    るようになった。学級全体で発表させる場面でも、それが自信となり大きな声でわかり

    やすく説明できていた。

    本時の例題「階段型の図形」

  • 19

    グループでの伝え合いでも、ヒントカードが児

    童の発表の大きな手助けとなった。さらに、児童

    同士で説明を補助し合う場面がみられた。ある児

    童が説明の仕方に迷っているときに、隣の児童が

    説明する児童の解き方に気づき、その説明の仕方

    をていねいに教えていた。お互いに考え方や説明

    の仕方を学び合う場面となっていた。

    (ウ) 成果と課題

    成果として、話し合う活動が児童の理解力の向上に効果的であることが確認された。

    話し合う活動を通して、自力で見つけた考え方の理解を深めたり、自力で解き方を見つ

    けられなかった児童が解けるようになったりした。話形が書いてあるヒントカードが手

    立てとして、とても有効であった。自力で見つけた考え方は、人に伝えたくなる。しか

    し、どのように伝えればよいかわからずに困る児童が多い。そのような場合に話形を参

    考にすることにより、自分の考えを整理して話すことができることがわかった。

    今回の授業では、児童が学級全体に説明する場面で、黒板に掲示された図形に線を引

    いて説明を行った。この方法よりも分割した図形のパーツを用意しておいた方が説明し

    やすく、聞いている児童もわかりやすかったと考えられる。児童が説明しやすくするた

    めの教具の準備が必要であることが課題となった。

    学級の話し合いでは、間違った考えの発言から学べることも多く、たくさん出させた

    いものである。今回の授業では、その間違った考えの発言をどのように教師がサポート

    していくかが課題として残った。はじめは解き方を見つけることができなかったが、グ

    ループの話し合いで友達の解き方をやっと理解することができた児童がいた。しかし、

    学級全体での話し合いになり、間違った考えの発言を聞き、困惑した様子であった。せ

    っかく理解したことを惑わせないように話し合いをすすめていくことが必要であった。

    イ 6年・家庭科での取り組み(単元「工夫しよう さわやかな生活」)

    (ア) 本時の言語活動

    本時は、エコな洗濯にするための洗剤と水の量や、汚れの落とし方を理解することが

    目標である。この目標を達成させるために、洗濯の条件を話し合いで決め、実際に洗濯

    の実験を行い、どの方法がよかったかを話し合わせる活動を取り入れた。

    (イ) 授業の様子

    授業を行った学級児童の洗濯経験は、33 人中8人と少なかった。そのため事前に家の

    人に洗濯の仕方や、洗濯で工夫していることを調べる宿題を出した。それを基にして、

    ぼくの解き方も聞いて

  • 20

    まず個人で、使う洗剤や量、すすぎの回数、

    洗い方などを考えさせた。そして、それを班

    で話し合わせ、班で決まった方法で実験を行

    った。最後に洗濯後の布ときれいな布を比べ

    て正しい洗濯の方法を学級で話し合い、考察

    していった。

    考えを出し合って決めた方法で実験を行

    ったことが児童の考察心をかき立てていた。

    実験中には、「あまり汚れが落ちないけどどうしてだろう」という声が聞かれた班があ

    った。その班は、学級全体での考察の場面で「自分たちの方法で汚れが落ちなかった原

    因がわかった」と他の班の意見からよい方法を学んでいた。

    (ウ) 成果と課題

    グループや学級での話し合い活動を通して、他の考えを知り、よりよい方法を学び合

    えることができたことが大きな成果であった。この授業のあと、「汚れの落とし方のコ

    ツ」に興味をもち、自分で調べた児童が多くいた。実際に自分たちで考えた方法で実験

    を行ったり、実験の方法や考察を集団で話し合わせたりしたことで普段の生活のことを

    追究しようとするきっかけになったと考えられる。

    今回は、洗剤の種類、水の量、洗い方と三つの条件について方法を考えた。洗剤の種

    類が3種類、水の量や洗い方も多数あり、その組み合わせでかなりの数の方法になって

    しまっていた。きれいに汚れが落ちたとしても、どの条件の効果かわかりにくくなって

    いたように思われる。実験の方法について話し合う場合は、条件の数について精選しな

    ければならないことが課題としてわかった。

    3 お わ り に

    本年度、多くの教科で「伝え合う」活動を取り入れたことで、児童たちのコミュニケーション

    能力をさらに高めることができた。始業式や終業式で行っている児童の意見発表では、どの学年

    の児童も堂々と自分の考えを伝えることができ、聞いている児童もしっかり相手をみて聞くこと

    ができている。今後の言語活動を、他者の考えから自分の考えをさらに高めたり、深めたりする

    活動に発展させていきたい。そのためには、目標とする児童像を明確にし、その児童像に近づく

    ための手立てを発達段階に応じて考えていくことが必要である。

    来年度も全職員で共通理解を図り、同じ考えの下で日々の活動を児童と一緒に行っていきたい。

    考えを伝え合いながら

  • 21

    自分自分自分自分のののの思思思思いをいをいをいを伝伝伝伝えるえるえるえる力力力力をををを育育育育むむむむ授業授業授業授業づくりづくりづくりづくり

    -地域から学び,地域に発信する実践を通して-

    常滑市立常滑東小学校常滑市立常滑東小学校常滑市立常滑東小学校常滑市立常滑東小学校

    1111 はははは じじじじ めめめめ にににに

    本校は,明るく素直な子が多い。一方で,自分の気持ちを正しく伝えることがでず,友達とト

    ラブルになってしまうことがある。根拠や理由を付けて説明したり,全校集会などの大勢の前で

    発表したりすることに苦手意識をもっている児童も多い。また,あいさつや聞く態度といった基

    本的な生活習慣が身に付いていない児童もいる。つまり,「伝える力」が十分に育っていない。地

    域には,常滑焼や常滑散歩道,祭礼やセントレアなど,学びに活かすことのできる「人」や「も

    の」が多くある。そこで,子どもたちが生まれ育ったこの常滑という地域リソースを活用した授

    業を工夫し,学んだことを再び地域へ発信することを通して,伝える力を育みたいと考えた。

    2222 研研研研 究究究究 のののの 概概概概 要要要要

    ⑴ 研究目標

    ⑵ 研究の方法

    ア 話す,聞く,話し合う活動における学びのスタンダードを各学年で明確にする。

    イ 各学年の発達段階に応じて,地域リソースを活かした授業を工夫し,授業研究をする。

    授業後の協議会は,ワークショップ型で行う。

    ウ 校内の教師が講師となったり,外部から講師を招いたりして,互いに学び合い,指導力

    の向上を図る(東小スキルアップセミナーの実施)。

    エ 現職研究通信(東スキルアップ!通信~「ひがし」で,共に学び合い,高め合おう!~)

    を発行し,職員の意思疎通を図る手立てとする。

    各教科・領域において,地域リソースを活用した授業を工夫する。地域から学び,地域

    に発信する実践を通して,学んだことを他に伝えたいという思いをもち,その思いを伝え

    ることのできる児童の育成を目指す。

  • 22

    3333 実実実実 践践践践 のののの 概概概概 要要要要

    ⑴ 東小学びのスタンダードの作成

    各学年に適切な話し方・聞き方・話型・声のものさしについて話し合い,系統表を作成し,教

    室に常掲した。内容が多すぎるとかえって身に付かせにくいのではないかと考え,今年度は必要

    最小限のものとした。

    中・高学年の声のものさし 中学年の話し方・聞き方・話型

    ⑵ 授業研究の実施

    実践1 4年生 社会科「健康なくらしをささえる ごみのしまつと活用」

    ○ねらい

    ・意見を言ったり,友達の意見を聞いたりして,ごみを減らす方法を考える話し合いに進ん

    で取り組むことができる。

    ・地域でごみを減らしていく方法を考えることができる。

    ○ねらいにせまるための手立てと実際の様子

    手立て1 少人数での話し合い

    地域へのエコ作戦の内容を考える際に,3~4人の少

    人数での話し合いを取り入れた。グループの話し合いで

    は,自信をもって自分の考えを言えるように,付箋に意

    見を書く活動を取り入れた。付箋を出しながら,自分の

    意見を伝えていった。

    手立て2 話し合いカードの活用

    話し合いが円滑に進められるように話し合いカードを活用した。グループでの話し合いにま

    だ慣れていない子どもたちにとって,型から入る指導は有効であった。慣れてきたら,カード

    をなくし,自分たちの言葉で話し合いを進めていくことができた。

    手立て3 ホワイトボードを活用した発表

    グループで話し合ったことを発表する際には,小さいホワイトボードを活用した。発表後,

    そのホワイトボードは黒板に貼っていった。言葉だけでなく,視覚的にも分かりやすかった。

    付箋を活用した少人数での話し合い

  • 23

    手立て4 ポスターの作成

    子どもたちはごみについて学ぶ中で,ごみを減らすためには自分たちの力だけでは限界があ

    ることを知った。そのため,自分たちの学んだこと,話し合ったことを地域に知らせたいと考

    えた。ポスターやチラシ,看板の作成,ホームページでの発信方法を考え,その中で,ポスタ

    ーを作成し,教育委員会を通して公共施設に掲示してもらうことにした。様々な公共施設の協

    力を得て,中央公民館,福祉会館,常滑市役所,図書館に掲示してもらい,地域へ発信するこ

    とができた。

    実践2 6年生 総合的な学習「将来に向けて~63会社設立~」

    ○ねらい

    ・自分達の夢に近づけるような会社を立ち上げ,実戦可能な計画を立て,課題に対して主体

    的に関わり,創意工夫しながら活動することができる。

    ・いろいろな人に話を聞くなど,積極的に関わりながら考えを深める。また,他者と協力し

    ながら話し合いを深めていく。

    ・表現方法を工夫し,グループの思いや考えを相手に分かりやすく伝えることができる。

    ○ねらいにせまるための手立てと実際の様子

    手立て1 ウェビングによる課題づくり

    テーマに迫る課題づくりを行うために,個人と学級全

    体でウェビングを行った。今回のねらいでもある「働く」

    そして「会社」をキーワードに,イメージするものをつ

    なげていった。その図を見ながら,どんな活動をしてい

    くかを考えていった。できあがったウェビング図は,教

    室に掲示することで,振り返りながら次に確認したいこ

    とや調べたいことなどのヒントになった。また,自分の

    活動や学習が,テーマから離れていないか確認すること

    ができた。

    手立て2 13 才のハローワークでの発見

    中学校から 1 人 1 冊ずつ 13 才のハローワークを借り

    て,読ませた。漠然とした夢をもっていた子どもたちに

    も,幅広い職業があることを知ることができた。また,

    夢に向かって,もっと知らなければならないことがある

    ことを知ることもできた。

    「働く」と「会社」のウェビング図

  • 24

    手立て3 ゲストティーチャーによる講話

    夢を叶えた方にゲストティーチャーとして来校してい

    ただき,話を聞いた。その職業を選んだ理由やきっかけ,

    どういうことをがんばっているかを話していただいた。

    ある会社の社長には,どういう人材を求めているかを話

    していただいた。夢に向かってどんなことをしていく必

    要があるか,これから会社ではどういう人間が求められているかを知ることができた。

    手立て4 総合ノートの活用

    毎回の授業後に,振り返りや次回取り組みたいことなどを総合ノートに記させた。総合ノート

    を担任が読み,子どもたちそれぞれの思いを受け止めたコメントをしたり,アドバイスをしたり

    した。各グループでの活動になっていくと,担任がそれぞれの活動を把握しづらくなるが,総合

    ノートによって,それぞれの活動や思いを知ることができ,子どもたちも担任の思いを受けて,

    次の活動に生かすことができた。

    ⑶ 東小スキルアップセミナーの実施

    毎年実施している研修のほかに,研修したいことの

    希望調査を行い,希望の多かった三つの研修を行った。

    研修の内容に合わせて,校内の教師が講師となったり,

    外部講師を招いたりして,教師の資質向上をめざした。

    6月には「発声の仕方セミナー」を,8月には「理科

    の実験セミナー」,11 月には「マット・跳び箱セミナー」を開催した。どのセミナーもすぐに授

    業で活かせる内容ばかりだったので,大変価値のあるものであった。

    4444 おおおお わわわわ りりりり にににに

    研究初年度であるこの1年は,低・中・高学年の系統性をもたせた「話し方・聞き方・話型」

    を作成し,「自分の思いを伝える」基礎を養う活動に取り組んだ。その定着と発達段階を追って

    の確実な積み上げを図り始めたところである。授業では,指導法の工夫を通し,話し合いの決ま

    りや役割への意識をもたせることができた。伝えたいという思いがなければ,話すことはできな

    い。地域に伝えるという明確な思いがあることで,生き生きと話すことができた。また伝えると

    きには,単に意見を出すのではなく,その理由も付けることで,自分の考えや集団の考えを深め

    たり,広げたりすることができた。今後は意見の出し合いに終わらず,より建設的・発展的な学

    びとなるために,「伝える」だけでなく「伝え合う」ことに重点を置いて取り組んでいきたい。

    仕事について話を聞く会

    マット・跳び箱セミナー

  • 25

    言語生活を豊かにできる児童を目指して

    ―書く活動を通してー

    常滑市立西浦北小学校

    1 は じ め に

    本校では、昨年度より、漢字力を含めた語彙力の向上やマイ辞書の活用・読書タイムの徹底な

    ど、言語活動を充実する工夫を重ねてきた。分からない言葉があると、すぐ辞書を引いたりして

    言葉への関心は高まってきたが、まだ、自分の思いや考えを言葉でうまく表現できない児童が多

    くいる。従って、今年度も昨年度の研究を引き継ぎつつ、「書く活動」を中心に据えて言語活動

    の充実を図り、言語生活を豊かにできる児童を目指してこの研究に取り組んだ。

    2 研 究 の 方 針

    (1) 研究のねらい

    ・言語能力(言語能力とは「語彙力・文章表現力・読解力・朗読する力」とする。)を高め

    る指導を工夫しながら、「書く」活動を充実させ、自分の考えを整理したり深めたりする。

    (2) 研究の仮説

    ・言語能力を高める指導を工夫・継続することで、言語生活を支える基盤となる力が身に付

    くであろう。

    ・各教科において「書く活動」を取り入れることで、児童の考えや思いを整理し、適切に表

    現したり考えたりできるであろう。

    (3) 研究の手立て

    ア 言語能力(特に語彙力の向上)を高める指導について

    (ア) 漢字の定着を図る。

    ・学期末に漢字検定を実施する。

    ・漢字ノートの使い方を工夫する。

    ・漢字を使った熟語作りや短文作りを充実させる。

    (イ) 読書の習慣を身に付ける。

    ・朝の読書タイム(業前15分間)を継続する。

    ・図書ボランティアの人などによる読み聞かせを継続する。(低学年)

    (ウ) 辞書を積極的に活用する。(3年生以上はマイ辞書の携帯)

    ・国語に限らず各教科で、分からない言葉の意味を辞書で引かせる。

  • 26

    イ 「書く活動」について

    (ア) 各教科において「書く」場面を工夫して設定する。

    ・考える場面などに書く活動を取り入れる。

    ・授業の最後に「振り返り」の場面を設定し、授業で分かったことや思いを書かせる。

    ・各学年の「書く」についてのめあては以下の通りである。

    1・2年(低) 3・4年(中) 5・6年(高)

    ・考えや思いを進んで

    書くことができる。

    (書けないうちは話

    させる)

    ・理由や根拠をもって自分の

    考えを書くことができる。

    ・書いたものを見直したり発

    表したりできる。

    ・理由や根拠をもって自分の考えを書く

    ことができる。

    ・友達との交流を通して、考えを修正し

    たり深めたりできる。

    (イ) 日記を定期的に書かせたり、行事の後に振り返りとして作文を書かせたりすることに

    よって、書くことへの抵抗を少なくする。

    3 研 究 の 内 容

    (1) 研究授業Ⅰ【6年 道徳 もう一度考えて(1-(1) 節度・節制) 】

    ア 本時のねらい

    ・自分の心にゆとりをもち、相手の気持ちを考えて行動しようとする気持ちを高める。

    イ 指導計画(略案 一部省略)

    学習活動 指導上の留意事項

    1 最近、頭にきた出来事を発表する。

    2 資料の前半を読んで話し合う。

    ・漫画の資料で児童の

    関心を高めさせる。

    3 資料の後半を読んで話し合う。

    4 自分の行動を振り返る。

    5 本時の振り返りをする。

    ・ワークシートに自分の考えをしっかりまとめ

    て発表させる。

    ・ワークシートに自分の言葉で書かせる。

    ウ 授業の様子

    王様と鳥はどんな関係なのだろう。

    王様は、なぜ鳥に手を出してしまったのだろうか。

    自分の過ちに気が付いた王様は、どんなことを考えたのだろう。

  • 27

    漫画を教材(資料)にしたことで、児童は意欲的に授業に取り組んだ。特に、普段の道徳

    の授業で意見を言わない児童も、人物の顔の表情から想像して、王様の気持ちを読み取って

    いた。中心発問の場面では書いて考えさせることによ

    り、自分の考えを整理し、多くの児童が積極的に発言

    することができた。さらに、自分の考えと違う意見に

    対して反論する児童も出てきた。振り返りの場面で

    は、この授業で分かったことや王様の気持ちを自分の

    経験に照らし合わせて、自分の言葉でしっかり書いて

    いた。 【T・Y 振り返り】

    (2) 研究授業Ⅱ【4年 国語 読んで考えたことを話し合おう(ごんぎつね)】

    ア 本時の目標(6/14)

    ・つぐないをするごんの気持ちを読み取ることができる。

    ・つぐないをしているごんの気持ちになって、ごん日記を書くことができる。

    イ 学習過程(略案 一部省略)

    学習活動 指導上の留意事項

    1 前時のごんの気持ちを振り返り、本時の場面を確認する。

    (1) 第2場面のごん日記を聞く。

    (2)「つぐない」の意味を確認する。

    ・マイ辞書で調べさせる。

    2 本時の課題を知る。

    つぐないをするごんの気持ちを考えよう。

    3 第三場面を読みごんのしたつぐないを読み取る。

    (1) つぐないの分かる文に線を

    引き、発表する。

    (2) ごんが思ったことをプリン

    トに書き込む。

    (3) つぐないを比べ、ごんの気持ちの変化を考える。

    ・教師の範読を聞かせ、ご

    んのつぐないを整理して

    表にする。

    ・短い言葉で簡単に書かせ

    る。

    4 ごんが兵十につぐないをす

    る気持ちを読み取る。

    5 ごん日記を書く。

    ・書けない人は、ごんの気

    持ちがまとめられている

    板書を参考にしながら書

    かせる。

  • 28

    ウ 授業の様子

    「つぐない」の意味を考えさせたとき、素早く辞書を出して引く姿

    が見られた。(3)のごんが思ったことを書くとき時間が足りなくなっ

    た。原因の一つは、簡潔に思いを書くことができず、長文で書いてい

    る児童が多くいたことである。ごん日記を書くとき、自分の気持ちを

    はっきり分からない児童は、板書で分類されているごんの気持ちを参

    考にしていた。どの 気持ちが自分に近いかを見つけることで、ごん

    日記を書くことができた。 【I・A ごん日記】

    (3) 言語能力を高めるための各学年での取組

    【1年】 吹き出しを利用して楽しく書かせている。また、日記指導も少し行っている。

    【2年】 詩の暗唱を朝の会や帰りの会等を使って定期的に行っている。

    【3年】 しっかりマイ辞書を活用させている。文章を視写することも定期的に行っている。

    【4年】 聞いたことを全て書くことは難しいので、必要に応じてメモの取り方を指導している

    【5年】 調べ学習では、自分の言葉でまとめるように心がけさせ

    分からない言葉をマイ辞書で引くようにしている。

    【6年】 新出漢字を用いて単元ごとに短文作りを行っている。

    漢字探しや辞書の意味を読んでクイズを出し合い、楽しま

    せながら語彙を増やしている。

    4 おわりに

    研究を終えて、以下のような成果と今後の課題が見えてきた。

    (1)書くことによって、自分の思いを整理するこができ、よく発言するようになってきた。

    (2) マイ辞書(3年生以上)が定着し、辞書の調べた言葉のページに付箋を貼るなど意欲的に

    取り組むようになった。

    (3)各学年の作文単元をしっかり把握した上で、その学年に合った書く活動を展開することが

    大切である。

    (4) メモの取り方や要点など、基本的な書く技能をさらに身に付ける必要がある。

    少しずつではあるが正しい言葉遣いで相手に伝わるように話す児童が増えてきたことは嬉し

    いことである。人間関係が稀薄になってきている今日、私たちは、言葉を通して自分の思いが言

    える児童、また、その言葉から相手の気持ちを理解できる児童を育てなければならない。今後も

    教職員が一丸となって、子供たちの将来のために研究を推進していきたい。

    【マイ辞書】

  • 29

    自分の考えをもち,表現することのできる児童の育成

    ―基礎的・基本的な知識・技能の定着を大切にした指導の工夫を通して-

    常滑市立西浦南小学校

    1 はじめに

    本校では昨年度,「数量や図形についての確かな力をもち,筋道を立てて考え表現する子の育

    成」をテーマとして研究に取り組んできた。丸付け法や個に応じた指導を行うことで,児童にあ

    る程度の基礎的・基本的な知識・技能をもたせることはできた。しかし,表現の練習に重きを置

    いたものの,学習指導要領でこれまで以上に重要視されている「自分で考えたことを説明したり,

    表現したりする活動」は充実しなかった。その原因としては,自分の考えをもつ段階までたどり

    つくことのできた児童が少なかったことが第一に挙げられる。

    そこで,本年度はもう一度原点に返って,基礎的・基本的な知識・技能(大まかには小学校学

    習指導要領に記されている各教科の目標)の定着を大切にした指導に取り組みたいと考えた。そ

    して,それを基に自分の考えをもてるようにすることを第一に目指すことにした。

    2 研究の概要

    (1) 目指す児童像

    基礎的・基本的な知識・技能を身に付け,自分の考えをもつことのできる子

    (2) 研究の仮説

    教材開発や指導の工夫により,児童に確かな基礎的・基本的な知識・技能を身

    に付けさせれば,児童は自分の考えをもつことができるだろう。

    (3) 具体的な手立て

    ア 継続的に自分の考えをもつ機会を設ける(朝の会・帰りの会など)

    イ 児童の興味関心を高める工夫

    (なぜ?何?を大切にした発問の工夫,学習機器の活用,学習活動の工夫など)

    ウ 児童の思考を大切にした指導の流れの工夫(つかむ→さぐる→高める→まとめる)

    エ 学び合いを生かした学習集団づくり(ペア学習,グループ学習,ハンドサインなど)

    オ 学習プリントの工夫(ヒントカード,ワークシート,習熟プリントなど)

    カ 個に応じた指導・支援の工夫(丸付け法,ティームティーチングなど)

  • 30

    キ 学習習慣づくり(反復練習・ノートの取り方・朝学習の徹底・家庭学習の定着など)

    ク 学習を支える環境づくり(学習の約束の徹底)

    3 授業実践の成果と課題

    (1) 6年 社会科 単元名「貴族の政治とくらし」(5月実践)

    ア 第1時の目標

    ・単元の学習問題をつかみ,国の仕組みや政治,人々の生活に関心をもつことがで

    きる。

    ・挿絵を通して,国の様子や生活の変化に気付くことができる。

    イ 手立て

    (ア) 児童の意見をもとに発問や補助発問を投げかけ,「なぜ,何」と考えさせる。

    (イ) 児童の考えに丸をつけていくことで,自分の考えに自信をもたせる。

    (ウ) パソコンで大型テレビに画像を映し出し,興味をもたせる。

    ウ 成果

    (ア) 児童の意見をもとに教師が発問を投げかけることで,次時

    に向けて興味をもたせることができた。

    (イ) 教師の丸付け,言葉かけで子どもは自信をもって自分の考

    えを発言できた。

    (ウ) 場面に応じて効果的に画像を映し出すことで,児童の興味

    を高めることができた。

    エ 課題

    (ア) 学習問題が一部わかりにくい内容だったので,もう少し具体的にした方がよかった。

    (イ) 児童の発表が少人数だったので,児童同士で話し合うような手立てが必要だった。

    (2) 5年 社会科 単元名「さまざまな土地のくらし」(6月実践)

    ア 第10時の目標

    ・沖縄県と北海道の人々のくらしについて,既習内容をもとに PR する内容を考えよ

    うとする。

    ・特色ある地域の人々のくらしを振り返り,PR したいことを考え,判断し,適切に

    表現している。

  • 31

    イ 手立て

    (ア) 大使任命カードを配付し大使に任命することで,学習