卒 業 研 究 - 高知工科大学¬¬2 章 led・受光素子・変調方式・labview...

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題目 白色 LED を使った光空間伝送システムの設計 報 告 者 1060224 島村 卓嗣 指 導 教 員 岩下 克 教授 平成 18 2 21 高知工科大学工学部 電子・光システム工学科

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卒 業 研 究

題目

白色 LED を使った光空間伝送システムの設計

報 告 者

1060224

島村 卓嗣

指 導 教 員

岩下 克 教授

平成 18 年 2 月 21 日

高知工科大学工学部

電子・光システム工学科

第 1 章 序論...................................................................................................... 2 1.1 研究背景 ...................................................................................................................2 1.2 研究内容 ...................................................................................................................3 1.3 論文構成 ...................................................................................................................4

第 2 章 LED・受光素子・変調方式・LabVIEW.................................. 5 2.1 LED..........................................................................................................................5 2.2 受光素子 ...................................................................................................................7 2.3 変復調方式................................................................................................................9

2.3.1 CDMA方式 ........................................................................................................9 2.3.2 OFDM方式 ...................................................................................................... 11

2.4 LabVIEW ...............................................................................................................13 第 3 章 設計.....................................................................................................14

3.1 実験の基本システム ...............................................................................................14 3.2 信号伝搬システムの作成 ........................................................................................15 3.3 DAボードとADボードを使った信号伝搬 ...............................................................16 3.3 デジタル信号の空間伝搬 ........................................................................................17

第 4 章 結果.................................................................................................... 18 4.1 シミュレーションの結果 ........................................................................................19

4.1.1 各信号のスペクトル.........................................................................................19 4.1.2 DAボードとADボードを使用した信号伝搬システム.......................................23 4.1.3 空間伝搬...........................................................................................................24

第5章 結論 ...................................................................................................26 5.1 まとめ.....................................................................................................................26 5.2 今後の課題..............................................................................................................26

参考文献 ............................................................................................................27 謝辞 ...................................................................................................................27 参考 ...................................................................................................................28

1

第 1 章 序論

1.1 研究背景

近年、無線通信はインターネットや携帯電話の普及により様々な所で使われるよう

になった。現在では情報の大容量化に伴いネットワークの高速化が進められ、これか

らも進むと考えられる。しかし、無線通信は、電波法により使用できる周波数が制限

されている。そこで、注目されているのが空間伝搬を利用した可視光通信である。可

視光通信は、電波法による制限はないので、広帯域通信が可能である。現在、可視光

の中でも自然光に近い光を発光する LED は照明として普及しつつある。そこでLE

Dを使った信号の送信機として可視光通信の研究がされており、LED 道路照明を用

いた通信システムや一般標識を利用した光通信への応用(1)など研究されている。

しかし、家庭などの一般環境で可視光通信を行うと影となる障害物による光の減衰、

反射光によるマルチパスといった問題がある。そこで微弱の光でも通信が行えるよう

に高い受光感度を持った受光素子の開発、マルチパスに対応するための変復調方式に

無線 LAN(Local Area Network)や携帯電話に使われている OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式や CDMA(Code Division Multiple Access)方式を適用することが考えられる。 本研究では、可視光通信に CDMA 方式を適用し、その可能性をあきらかにする。

2

1.2 研究内容

本研究の目的である LED を使っての空間伝搬の構成を図 1.1 に示す。

信号1 信号2 信号3 信号4 信号5 信号6 信号7 信号8 信号9

拡散1 拡散2 拡散3 拡散4 拡散5 拡散6 拡散7 拡散8 拡散9

赤 青 緑(LED)

光フィルタ

受光素子

拡散1 拡散2 拡散3

信号1 信号2 信号3

信号1 信号2 信号3 信号4 信号5 信号6信号4 信号5 信号6 信号7 信号8 信号9信号7 信号8 信号9

拡散1 拡散2 拡散3拡散1 拡散2 拡散3 拡散4 拡散5 拡散6拡散4 拡散5 拡散6 拡散7 拡散8 拡散9拡散7 拡散8 拡散9

赤 青 緑(LED)

光フィルタ

受光素子

拡散1 拡散2 拡散3拡散1 拡散2 拡散3

信号1 信号2 信号3信号1 信号2 信号3

図 1.1 LED を使った多チャンネルの空間伝搬

本研究では障害物がある一般環境でも伝送遅延やマルチパスの影響をうけること

なく可視光通信を行うことが目的である。図 1.1 は多チャンネル映像のチャネル選択

を行うことを想定している。複数の信号を使って空間伝搬を行う時の多元接続方式と

して CDMA 方式を使う。CDMA 方式を使うことで送信側の複数の信号を加算して送

信し、受信側で必要な信号のみ取り出すことができる。LED を使うことで送信時に

色別に信号を送ることができ、光フィルタで必要な色の光を受け取る形をとることで、

同じ拡散符号を色違いで使用することができる。また、送信側と受信側に送信と受信

の機能を両方持たせることで信号の双方向伝送ができる。本研究では双方向伝送を行

なっていく。

3

1.3 論文構成

本論文の第 2 章では、LED と受光素子の特性及び変復調方式について述べる。ま

た、デジタル信号を使った実験で送信機、受信機、変調方式を作成するため使用した

LabVIEW について説明する。第 3 章では、デジタル信号の空間伝搬を行った時の送

信側と受信側の実験構成を述べる。第 4 章は第 3 章で述べた実験の結果を述べ、第5

章では第4章の結果から本研究の結論とする。

4

第 2 章 LED・受光素子・変調方式・LabVIEW この章では今回の実験に使用するLEDと受光素子について説明するとともに変復

調方式として CDMA 方式及びに OFDM 方式について説明する。また変復調方式を

作成するのに使用した LabVIEW について説明する。

2.1 LED LED(Light Emitting Diode)は電気エネルギーを光エネルギーに変換する半導

体である。LED は白熱電球に比べ、エネルギー効率が高く、寿命も長いので次世代

の光源として大きな期待がされている。次に LED 発光の原理図を示す。

P型半導体

N型半導体

電気 発光層

P型半導体

N型半導体

電気

P型半導体

N型半導体

電気 発光層

図 2.1 LED 発光の原理

LED に電流を流すと電子は N 型層から発光層へ行き、P 型層からは正孔が発光層

に行き、発光層において電子と正孔が結合することでエネルギーを放出し、発光層の

バンドギャップエネルギーに相当する波長の光が放出する。発光色は結合時に放出さ

れるエネルギーによって決まる。エネルギーが小さいと赤色、大きいと青色となる。

つまり発光色は発光層に使用されている半導体の材料によって決まる。

5

LED は高速の応答速度を持っているので発光と消光を繰り返すことで光通信への

適用が可能である。LDの場合ではコヒーレント光なので周波数帯域が狭く放射角も

狭いので無線空間伝搬で使用するには不向きである。LEDは放射広がり角が大きい

ので空間伝搬を行う時に受光素子が光を受けやすい点がある。可視光の周波数帯域と

波長域を次に示す。

図 2.2 周波数帯域と波長域

図 2.2 から可視光は広い周波数帯域を持っており、波長は約 380nm~780nm と広

い。

6

2.2 受光素子

発光素子からでた光を受け取るには受光素子が必要である。発光素子が電気エネル

ギーを光エネルギーに変換するのに対し、受光素子が光エネルギーを電気エネルギー

に変換する。発光素子は順方向バイアスで受光素子は逆方向バイアスが加えられる。

受光素子の電流―電圧特性曲線と動作モード、受光素子の動作モードを図2.3に示す。

図 2.3 受光素子の電流―電圧特性曲線と動作モード

フォトダイオードの動作は受光素子に光が入射すると、電子―正孔対が生成され、

それが両端にたまる。そこで逆バイアス電圧を印加すると空乏層 W に電界が発生し

図 2.4 で示すように空乏層を電子と正孔がドリフトして流れ、光電流を発生させるこ

とである。

7

図 2.4 受光素子の動作モード

フォトダイオードに逆バイアス電圧を印加されることで空乏層内ではほとんどの

光が吸収され、高い量子効率で電気信号に変換される。量子効率ηは次式で表せる。

η=入射光子数

リア数光電流に寄与するキャ=

hvPieIph

/0/

この式では Ip が光電流、e は電子の電荷量、Pi0 は入射光出力、hνは入射光の光

子エネルギーである。光通信ではPINフォトダイオードとアバランシェフォトダイ

オードが使用されている

PINフォトダイオード

PINフォトダイオードは高い量子効率と小さな暗電流を持っており、動作電圧が

低く、極めて使いやすい特徴がある。光電流の増倍作用がないため主に低中速・近距

離での受光素子として使用されている。 アバランシェフォトダイオード アバランシェフォトダイオードは光電流に対して増幅作用を持っているので微弱

な光信号を受信可能であり、高速光通信で使用されている。

8

2.3 変復調方式

ここではデジタル信号を効率よく空間伝搬するために使用する変復調方式につい

て説明する。 2.3.1 CDMA 方式

CDMA(Code Division Multiple Access)とは無線 LAN や移動通信システムなど

で使用されている方式で多元接続技術の一つである。CDMA 方式では送信側で元の

信号に高速拡散符号で拡散変調を行い、周波数帯域幅を広げる。違った端末に異なる

拡散符号を使うことで同じ周波数帯で多数の信号を送信することができる。受信側で

その中から必要な信号に変調した同じパターンの拡散信号で逆拡散を行い、必要な信

号を取り出す方式である。CDMA 方式の原理を次に示す

図 2.5 CDMA方式の原理(送信部)

図 2.5 ではデジタル信号を送信する時に、搬送波を送信データに掛けることで一次

変調を行い、狭帯域なスペクトルを持った信号にする。次に、送信データより一桁以

上高速でランダム性があるが周期性で生成されるデータ列で議事雑音と呼ばれる拡

散符号で変調して二次変調を行い信号のスペクトル広げる。複数のデータを扱う時は

拡散符号のパターンが異なることで同じ周波数帯に信号を加算することができる。

9

図 2.6 CDMA方式の原理(受信部)

図 2.6 のように伝送路で重なり合った信号に送信部で変調した同じ拡散符号を変

調し、逆拡散を行う。逆拡散を行うことで必要な信号のみ狭帯域な BPSK 信号に戻

し、搬送波で復調を行うことで元の信号に戻す。このように帯域を完全に共有しなが

ら、所望の信号と他の信号を拡散符号によって選択を行う方式が CDMA 方式である。

CDMA 方式は同じ周波数帯域幅で信号を多重化しているので周波数利用効率が良く、

同一周波数内で拡散符号のチャネル分割を行っているので受信側で拡散符号だけ変

えることで欲しい信号がとれる柔軟なシステムが作ることができる。また、CDMA方式を使って信号を伝搬するには定理がある。拡散符号の速度である拡散速度は搬送

波より低い必要があり、信号速度は拡散速度より低い必要がある。信号速度と拡散符

号の比は拡散率と呼ばれ、拡散率が高いことで周波数利用効率が良くなる。CDMA方式を使用する時はこれらの定理を考えながら値を決める必要がある。

無線通信では送信側から出た信号が受信機に直接くる信号と壁などの反射波から

くる遅れた信号(マルチパス信号)があり、直接の信号とずれた信号が受信側で足し

合わせされることでマルチパス干渉が起こる。そこで CDMA 方式では対策として図

2.7 のような RAKE 受信機が使われる。

10

先行信号

遅延信号1

遅延信号2

逆拡散器1

逆拡散器2

逆拡散器3

タイミング調整と合成

信号

RAKE受信機

先行信号

遅延信号1

遅延信号2

逆拡散器1

逆拡散器2

逆拡散器3

タイミング調整と合成

信号

RAKE受信機

図 2.7 RAKE 受信

RAKE 受信機では受信側のマルチパス信号をそれぞれ逆拡散器で信号を個別に分

離してからタイミングを調整して、信号の合成を行い、信号を戻す。このように

CDMA 方式では RAKE 受信機を使うことでマルチパス干渉に対応できる。

2.3.2 OFDM 方式 OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)方式は送信データを複数の

サブキャリアに分けて伝送する方式である。この方式を使えば低いシンボル・レート

での伝送が可能である。次に OFDM 方式のキャリアを図 2.8 に示す。

周波数

パワー

キャリア1

キャリア2

キャリア3

キャリア4

キャリア5

キャリア6

キャリア7

キャリア8

キャリア9

キャリア10

キャリア11

キャリア12

周波数

パワー

キャリア1

キャリア2

キャリア3

キャリア4

キャリア5

キャリア6

キャリア7

キャリア8

キャリア9

キャリア10

キャリア11

キャリア12

図 2.8 OFDM の原理

図 2.8 を見るとそれぞれのキャリア同士が重なっているため干渉が起きるように

見えるが、キャリア同士が直交(キャリア同士を掛け算して積分すると 0 となる状態)

になっているので互いを干渉することなく復調できる。

11

次に OFDM 方式の変調処理と復調処理を示す。

送信ビットシンボル・マッピング

直並列変換

逆離散フーリエ変換

並直列変換

送信送信ビットシンボル・マッピング

直並列変換

逆離散フーリエ変換

並直列変換

送信

図 2.9 OFDM 方式の変調処理

図 2.9 の OFDM 方式の変調処理では、まずビット系列の信号のシンボル・マッピング

と呼ばれる元の信号にビット別でキャリアに分ける作業を行い、BPSK、QPSK 信号などの

シンボル(一回の変調で送信する複数ビットのデータ)を判定する。この状態では直列伝

送なので単一の周波数帯に信号がある。そこで、直並列変換により周波数帯をキャリアに

よってずらした並行伝送することで複数の送信データを作成する。送信情報が変調され

た周波数軸上のキャリアの配列を合成信号の時間軸の波形に変化させる逆離散フーリ

エを行い、直並列変換の逆の動作である並直列変換を行ない送信する。

受信ビットビット・

マッピング並直列変換

離散フーリエ変換

直並列変換

受信受信ビットビット・

マッピング並直列変換

離散フーリエ変換

直並列変換

受信

図 2.10 OFDM 方式の復調処理

図 2.10 の OFDM 復調処理では先ほどの変調処理の逆の作業を行う。離散フーリエ変

換をすることでサブキャリア信号を再生し、並直列変換することでシンボル信号にして

ビット・マッピングをして信号を復調する。この方式は同じ帯域を使用して行い CDMA方式に比べて処理利得が少ないが、高速伝送に適しているので、デジタル TV 映像の伝

送方式に採用されている。

12

2.4 LabVIEW LabVIEW とは Laboratory Virtual Instrument Engineering Workbench の略でこ

れはナショナルインスツルメンツ社が作り上げた計測解析用ソフトウェア開発アプ

リケーションで、LabVIEW で作られるプログラムはバーチャルインスツルメンツ

(仮想計測器)と呼ばれ、これは C 言語などのプログラミング言語とは違い、G 言

語と言われるグラフィカルプログラミング言語を使って図形や記号でプログラムを

行うものである。本研究では LabVIEW を使ってデジタル信号の空間伝搬を行うた

めに、送信機と受信機、デジタル信号の変復調方式を作成する。次に LabVIEW を

使った例をあげる。

図 2.11 LabVIEW で作成したパルスパターンのブロックダイヤグラム

この図 2.11 はパルスパターンを作成するためのプログラムである。パルスパター

ン用の Vi を用意し、その Vi にサンプル、振幅、遅延、幅の数値を決め、数値とVi

をワイヤーでつなぐこと制御する。その結果を波形グラフに呼び出す。図 2.12 がそ

の結果である。

図 2.12 LabVIEW で作成したパルスパターン

13

第 3 章 設計 今回の実験ではデジタル信号を空間伝搬するために変復調及び CDMA の信号処理部

分を LabVIEW を使って作成した。LabVIEW のプログラムと DA ボードと AD ボード

を用いて、LED を使ったデジタル信号の空間伝搬を行った。この章では実験の基本シ

ステムと LabVIEW を使って作成した CDMA 方式の信号伝搬システムの構成と DA ボ

ードと AD ボードを使って伝搬を行った構成について説明する。 3.1 実験の基本システム 本研究の空間伝搬の基本システムを説明する。

信号 変調処理 LED 受光素子 復調処理 信号

空間伝送

送信側 受信側

送信機 受信機

信号 変調処理 LED 受光素子 復調処理 信号

空間伝送

送信側 受信側

信号 変調処理 LED 受光素子 復調処理 信号

空間伝送

送信側 受信側

送信機 受信機

図 3.1 実験の基本構造

図 3.1 は実験の基本構造である。送信側では信号を送信機に送り、LEDを発光

させる。受信側では LED の光を受光素子で受信し、受信機で信号の復調を行う。

アナログ信号は信号波形自体が情報を持っているので、信号の入力波形が出力先に

正確に伝送される必要がある。デジタル信号は2進数の 0 と 1 を出力先に正確に伝

送する必要がある。

14

3.2 信号伝搬システムの作成 変復調方式に CDMA 方式を採用した信号伝搬の構成図を図 3.2 に示し、LabVIEW

で作成したプログラムは参照(1)に示す。

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ

信号

受信側

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ

信号

受信側 図 3.2 信号伝搬システムの構成図

図 3.2 は信号伝搬の構成図である。各信号を BPSK 信号にしてパターンの違う拡

散符号を用いて、信号を拡散させた。その後、信号を加算して送信した。受信側で

は拡散符号を用いて逆拡散を行い、指定した周波数帯だけとりだすことができるバ

ンドパスフィルタを通過することで必要な信号を取り出し、同期検波をして信号を

取り出す。今回の研究でサンプリング周波数は使用した DA ボードのサンプリング

周波数の数値が固定されているため 1MHz とした、搬送波はサンプリング定理と

拡散した時周波数帯域が広がるので 200kHz とした。拡散速度は 100kbps、信号速

度 2kbps とした。

15

3.3 DA ボードと AD ボードを使った信号伝搬 空間伝搬をする時に送信側ではデータを出力する DA ボード、受信側ではデータを

受け取る AD ボードを使用して行う。空間伝搬を行う前に DA ボードと AD ボードを

使用して信号伝搬を行う。使用する DA ボードと AD ボードについて次に示す。

図 3.3 DA ボード PCI―3305

電圧出力出力制御方式 電圧出力出力制御方式

メモリ方式出力アクセス方式 メモリ方式出力アクセス方式

ユニポーラ0~+10.24Vバイポーラ± 10.24V

出力レンジ ユニポーラ0~+10.24Vバイポーラ± 10.24V

出力レンジ

20MSPS最高サンプリング速度 20MSPS最高サンプリング速度

2チャンネル出力チャンネル数 2チャンネル出力チャンネル数

12ビット出力分解能 12ビット出力分解能

0.2μsセントリングタイム 0.2μsセントリングタイム

図 3.4 PCI-3305 の仕様

デジタル信号からアナログ信号へ変換してからの出力が速いボードを使用する必要

があったため図 3.4 の仕様からサンプリング速度が速く、サンプリングが可能となるセ

トリングタイムが 2us である PCI-3305 を使用した。

図 3.5 AD ボード PCI―3161

マルチADC出力入力制御方式 マルチADC出力入力制御方式

メモリ方式入力アクセス方式 メモリ方式入力アクセス方式

ユニポーラ0~+1V0~+2.5V0~+5V

出力レンジ ユニポーラ0~+1V0~+2.5V0~+5V

出力レンジ

5MSPS最高出力更新速度 5MSPS最高出力更新速度

シングルエンド入力2チャンネル

入力チャンネル数 シングルエンド入力2チャンネル

入力チャンネル数

8ビット入力分解能 8ビット入力分解能

0.05μs変換時間 0.05μs変換時間

図 3.6 PCI―3161 の仕様

空間伝搬で DA ボードから出力された信号を高速度でアナログ信号からデジタル

信号に変換する必要があるので図 3.6 から AD 変換の変換時間が 0.05µs と高速度な

AD ボードである PCI-3161 を使用した。

16

次に LED と受光素子を接続する前に AD/DA ボードを直接接続し、信号伝搬を行

なった構成図を示す。LabVIEW で作成したプログラムは参照(2)に示す。

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ 信号

受信側

AD

ボード

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側D

A

ボード

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ 信号

受信側

AD

ボード

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ 信号

受信側

AD

ボード

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側D

A

ボード

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側D

A

ボード

図 3.7 DA ボードと AD ボードを使用した信号伝搬システムの構成図

図 3.7 は図 3.2 の構成図に DA ボードと AD ボードを加えている。DA ボードを使

用することで作成した信号を D/A 変換して外部へ出力でき、AD ボードを使用するこ

とで DA ボード出力した信号を A/D 変換して受け取ることができる。ボードを使用

することで作成した波形の空間伝搬を行うため図3.7のような構成の信号伝搬を行な

った。

3.3 デジタル信号の空間伝搬

3.2 で設計した信号伝搬システムを使って空間伝搬を行う。送信側で変調した信号

を LED に変調する。LED の光を受光素子で受光し、受信側で処理を行うことで信号

を復調する。

17

第 4 章 結果 この章では 3 章での実験の結果を述べる。3 章で述べた信号 1(1010・・)と信号 2

(1100・・)の波形を次に示す。

図 4.1 元の信号 1

図 4.2 元の信号 2

18

4.1 シミュレーションの結果

4.1.1 各信号のスペクトル 次に作成した空間伝搬システムの各部のスペクトルを図 4.3 に示す。

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ

信号

受信側

AD

ボード

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側

DA

ボード

③ ④

受光素子

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ

信号

受信側

AD

ボード

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側

DA

ボード

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ

信号

受信側

AD

ボード

バンドパスフィルタ

拡散符号 搬送波

ローパスフィルタ

信号

受信側

AD

ボード

信号1

搬送波 拡散符号1

信号2

搬送波 拡散符号2

送信側

DA

ボード

③ ④

受光素子

受光素子

図 4.3 スペクトルを計測した場所

① 信号1(1010・・・)に搬送波と拡散符号 1 で変調したスペクトルである。

図 4.4 ①のスペクトル

今回は単純な拡散符号を使ったので BPSK 信号に拡散符号で拡散すると図 4.4 の

スペクトルがでる。信号1(1010・・・)は周波数 50kHz,150kHz,250kHz といっ

た倍数間隔で線スペクトルでている。

19

② 信号2(1100・・・)に搬送波と拡散符号 2 で変調したスペクトルである。

図 4.5 ②のスペクトル

①のスペクトルと同様に単純な拡散符号を使ったので BPSK 信号に拡散符号を変調

すると図 4.5 のスペクトルがでる。信号 2(1100・・・)は 25kHz、75kHz、125kHz の倍数間隔で線スペクトルでている。

③ ①と②の信号を合成させたスペクトル

図 4.6 ③のスペクトル

図 4.6 から縦しま線が信号①で黒い部分が信号②である。図 4.6 からスペクトルが

重なっていることがわかる。

20

④ 合成された信号 1 に拡散信号 1 で逆拡散を行った時のスペクトルである。

図 4.7 ④のスペクトル

スペクトルの形が変化しているのは逆拡散を行ったからであり、図 4.7 の中心周波

数 200kHz の所で信号 1 のスペクトルがあらわれている。この結果から信号 1 のスペ

クトルが逆拡散することで選択できることがわかる。 ⑤ 合成された信号に信号②に掛けた拡散信号で逆拡散を行った時のスペクトルで

ある。

図 4.8 ⑤のスペクトル

図 4.7 のスペクトルと同様に、図 4.8 の中心周波数 200kHz の所で信号 2 のスペク

トルがあらわれている。この結果から信号 2 のスペクトルが逆拡散することで選択でき

ることがわかる。

21

⑥ 信号④がバンドパスフィルタを通過した時のスペクトル

図 4.9 ⑥のスペクトル

④のスペクトルの中心周波数帯以外をバンドパスフィルタでしたカットしたスペ

クトルである。

⑦ 信号⑤をバンドパスフィルタで通した時のスペクトル

図 4.10 ⑦のスペクトル

⑤のスペクトルの中心周波数帯以外をバンドパスフィルタでしたカットしたスペ

クトルである。

22

4.1.2 DA ボードと AD ボードを使用した信号伝搬システム 次に DA ボードと AD ボードを使用した信号伝搬システムを作成し、信号1と信号

2のシミュレーションを行った結果を述べる。

図 4.13 ボード使用して CDMA 方式で信号伝搬した信号 1

図 4.14 ボード使用して CDMA 方式で信号伝搬した信号 2

これらの図からボードを使用して LabVIEW 内で作成した CDMA 方式でボードを

通しても信号の選択が行うことができる。しかし、信号の波形にひずみが起きること

があり正確に信号を受信することができない時もあった

23

4.1.3 空間伝搬 次に信号伝搬システムに LED と受光素子を使って空間伝搬を行った実験図と結果の

図を示す。

図 4.15 空間伝搬の実験図

図 4.15 のように PC で作成した信号を DA ボードから出力して LED に信号を変調

している。光信号を受光素子で受け取って AD ボードに入力し PC で信号処理を行な

っている。また、LED の光が受光素子にー 30dBm 届く距離をあけている。

24

次に空間伝搬を行なった時の波形を示す。

図 4.16 空間伝搬した信号 1

図 4.17 空間伝搬した信号 2

これは空間伝搬を行った結果である。この図から信号の波形から空間伝搬できてい

ることがわかる。また、空間伝搬を行った時に LED と受光素子間で LED の光がー

30dBm ぐらい届くような状態でも LED に変調をかけた信号を受信することができ

た。

25

第5章 結論

5.1 まとめ

今回の研究では LabVIEW を使用して CDMA 方式を用いた信号伝搬を行ない、

LED と受光素子を使って空間伝搬を行なった。よって、今回の実験で CDMA 方式

を使ったデジタル信号の空間伝送が可能ということがわかった。また微弱な光でも

信号を読み取ることができた。この結果からデジタル信号の空間伝搬の変復調方式

にCDMA方式は適していると考えられる。今回はサンプリング周波数が固定され

たボードを使用したため一定のデジタル信号しか伝搬できなかったが、高いサンプ

リング周波数を持ったボードを使えばデジタル映像の伝搬も可能であると考えられ

る。また DA/AD 変換を行なった時に受信した信号の波形にひずみがあり、送信し

た信号が受信できないことがあった。これは送信側と受信側の拡散符号がシミュレ

ーションの実行時に同期できずに送信側と受信側の拡散符号がずれたと考えられる。

同期を正確にとることで正確な信号伝搬が可能である。

5.2 今後の課題

本研究の課題として、今回は一定のパターンの信号でしか空間伝搬ができなかった

ので 1,0 パターンをランダム信号して空間伝搬を行なう。また、今回は単純な拡散符

号を使用したので拡散符号を他の符号に変えて変調を行う。また、搬送波の抽出を行

う。今回は一方向での空間伝搬を行なったが、実際の通信を行なうためには双方向伝

送を行う必要がある、今後双方向伝送を実現させるために研究を行っていきたい。

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参考文献

(1) 監修 中川正雄 編集 可視光通信コンソーシアム:可視光通信の世界 :工業調査会

(2) 米津 宏雄:光通信素子工学 -発光・受光素子―:工学図書株式会社 (3) 石井 聡:無線通信とディジタル変復調技術:CQ出版社 (4) 西村 芳一:無線によるデータ変復調技術:CQ出版社 (5) 関 清三:ディジタル変復調の基礎:CQ出版社 (6) 中嶋 信生:新世代ワイヤレス技術:丸善株式会社 (7) 木村 磐根:光・無線システム:オーム社 (8) 藤岡 雅宣、服部 武:ワイヤレスブロードバンド教科書:IDG ジャパン (9) 重井 芳治:高速 PCM:コロナ社 (10) 堤坂秀樹、大庭秀雄:無線通信機器:日本理工出版会

謝辞

今回の研究において、多くのご指導とご教示を頂きました電子・光システム工学科

岩下 克教授に心から厚くお礼を申し上げます。 研究を進めるにあたり、様々な助言や協力をしていただきました、岩下研究室の渡邊

利成氏、中島 公亮氏、多木 勝彦氏、恒安 宏一氏、小松 昇氏、乾 梨紗氏、田口 翔

氏、坂本 貴章氏、山本 宣幸氏、野中研究室の鈴木 敏訓氏には深く感謝をしています。 お世話になった皆様に、心からの感謝を申し上げます。

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参考 参考(1) LabVIEW のみで作成した CDMA 方式

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参考(2)LabVIEW で作成した送信機

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参考(3)LabVIEW で作成した受信機

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