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本資料はジェトロが Deloitte Legal, Pasternak, Korba i Wspólnicy Kancelaria Prawnicza sp.k. に委託して作成し ました。ジェトロは同社の許諾を得て本ウェブサイトに掲載しています。Copyright (C) 2014 Deloitte Legal, Pasternak, Korba i Wspólnicy Kancelaria Prawnicza sp.k. ポーランド労働法典アップデート 2013 2014 3 独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) ワルシャワ事務所 進出企業支援・知的財産部 進出企業支援課

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ポーランド労働法典アップデート 2013年

2014年 3月

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)

ワルシャワ事務所

進出企業支援・知的財産部 進出企業支援課

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内容

【はじめに】 ...................................................................................................... 1

第 1部 2013年に導入されたポーランド労働法典上の主要な変更点 .............. 2

1. 労働者による育児上の休暇取得権 ............................................................ 2

(1) はじめに ............................................................................................. 2

(2) 両親休暇(労働法典 1821a 条) ......................................................... 2

(3) 追加的産休 (労働法典 1821条) ....................................................... 3

(4) 追加的産休および両親休暇の一括申請(労働法典 1791条) ............. 4

(5) 産休 .................................................................................................... 5

(6) 育児休暇(労働法典 186条) ............................................................. 6

(7) 労働者による育児上の休暇取得権に関する法改正に伴う雇い主への

影響について ............................................................................................... 7

2. 労働時間 ................................................................................................... 8

(1) 労働時間清算期間の最長 12ヵ月間への延長可能性 (労働法典 129

条 2項) ...................................................................................................... 8

(2) 労働開始時間へのフレックスタイム制導入(労働法典 1401条) ...... 8

(3) 残業時間に関する新規制の導入(労働法典 151条) ......................... 9

(4) 新しい労働時間規制の導入に伴う雇い主への影響について .............. 9

3. 労働監督局および保健所への通告義務規定の一部廃止(労働法典旧 209

条および旧 283条 2項の 1) ......................................................................... 9

第 2部 2.(1)および 2. (2)で述べた労働時間に関する新規制の導入に関するケ

ース・スタディ ................................................................................................ 10

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報告書の利用についての注意・免責事項

本報告書は、日本貿易振興機構(ジェトロ)ワルシャワ事務所が現地会計・法律事務所

Deloitte Legal, Pasternak, Korba i Wspólnicy Kancelaria Prawnicza sp.k.(担当:

Joanna Dudek弁護士、Marcin Sękowski弁護士)に作成委託し、2014年 2月現在入手

している情報に基づくものであり、その後の法律改正などによって変わる場合があります。

また、掲載した情報・コメントは筆者およびジェトロの判断によるものですが、一般的な

情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありませんこと予めお断りします。

ジェトロおよび Deloitte Legal, Pasternak, Korba i Wspólnicy Kancelaria Prawnicza

sp.kは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随的、

あるいは懲罰的損害および利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、

あるいはその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。こ

れは、たとえジェトロおよび Deloitte Legal, Pasternak, Korba i Wspólnicy Kancelaria

Prawnicza sp.kがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。

本報告書作成委託先:

Deloitte Legal, Pasternak, Korba i

Wspólnicy Kancelaria Prawnicza sp.k.

al. Jana Pawła II 19

00-854 Warszawa

Tel:+48 (22) 511 08 11

本報告書にかかる問い合わせ先:

独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)

進出企業支援・知的財産部

進出企業支援課

E-mail: [email protected]

ジェトロ・ワルシャワ事務所

E-mail:[email protected]

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【はじめに】

本レポートでは、2013年中にポーランド労働法典に導入された主要な変更点について紹介

する。

2013年に施行された数多くの労働法典上の変更のうち、法的観点、ビジネス上の観点

から最も重要であると思われる点のみに焦点を絞って解説している。とりわけ、労働

者が取得できる育児休暇に関して導入された新規制は非常に複雑であり、導入された

新規制のエッセンスのみを紹介している。

本レポートは概説を目的としたものであり、移行措置(interim provisions / przepisy

przejściowe)に関しては、触れていない。

本レポートは、以下の二部構成となっている:

第1部では、2013年に施行されたポーランド労働法典の主要な改正点についてま

とめている。

第2部では、労働時間に関する新規制について、その導入手続きに関する実務上

の指針をケース・スタディとしてまとめている。

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第 1部 2013年に導入されたポーランド労働法典上の主

要な変更点

1. 労働者による育児上の休暇取得権

(1) はじめに

2013年には、労働者による育児上の休暇取得権に関する数多くの変更が労働法典に導入

された。改正点は、以前から労働法典上で認められていた権利(産休、追加産休、育児休

暇)に加え、新制度として、新生児の誕生に伴い生ずる権利として、両親休暇(parental

leave / urlop rodzicielski)というより長期間に渡る休暇の取得権が導入された。一連の法

改正の結果、新生児の誕生に伴い、労働者には最大で52週間の休暇(一人の出産の場合)

を取得する権利が与えられている。この期間には、母親または父親は社会保障基金から給

付金を受ける。

(2) 両親休暇(労働法典 1821a 条)

2013年6月17日施行

① 基本的なルール

労働者(男性も女性も)は最大で26週間の両親休暇の取得が認められる。なお、両親

休暇の取得期間は、一度の出産で生まれた新生児の数に関りなく、最大で26週間とな

る。

労働者は産休に加え、追加的産休をすべて消化した場合に両親休暇の取得権が与えら

れる(この際、追加産休の最終日の翌日から両親休暇を取得する必要があり、追加産

休の終了日と両親休暇の取得開始日との間にブランクがあってはならない)。

両親とも同時に両親休暇を取得する事が可能。この場合、両親によって取得される両

親休暇の長さは26週間を超えてはならない。

② 両親休暇の申請(労働法典 1821a条 4項および 1791条)

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両親休暇は、以下に掲げる方法のいずれかに従い、労働者が書面によって申請を行う

場合、雇い主により与えられる:

(i) 追加産休の取得期間中– 申請は両親休暇取得の開始予定日

の遅くとも 14日前までに提出される必要がある(母親にも

父親にも同じ規則を適用)。

(ii) 新生児出産から14日以内であれば、追加産休の取得および

両親休暇の取得申請を一括で行う事が出来る– 詳細につい

ては、1.(4)にて解説する(母親のみに適用のルール)。

雇い主は上記の申請が労働者からあった場合、これを受理しなければならない。

③ 両親休暇取得中に行われる労働について(労働法典 1821a条 6項、同 1821条 5項およ

び 6項)

両親休暇取得中の労働者は、雇い主のために労働を行うことも出来るが、労働時間は

通常の半分が上限。

両親休暇取得中に労働を行うにあたっては、労働者は労働開始日の14日前までに申請

書を提出する必要がある。雇い主は労働者の申請を受理する義務があるが、労働組織

上の理由によって、またはその労働者によって遂行されている職務の性格上、労働者

が両親休暇取得中に職務に復帰する事が不可能である場合は、この限りではない。

④ 労働契約の終了の例外規定(労働法典 1821a条 6項および同 177条)

両親休暇取得中の労働者は、労働契約の終了から保護されており、原則的に言って、

この期間中に雇い主は、労働者の解雇を行ったり、一方的に労働条件を改定したりす

る事はできない。

(3) 追加的産休 (労働法典 1821条)

2013年6月17日施行

a) 男性労働者の追加的産休取得権(労働法典1821条1項)

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新規制の導入により、女性労働者のみならず男性労働者にも追加的産休の取得権が認め

られた(改正前は、女性労働者に対してのみ追加的産休の取得権が認められていた)。

b) 追加的産休の取得期間の延長(労働法典1821条1項)

追加的産休の取得期間が、一人のみの出産の場合には最大で6週間(改正前は同4週間)

に、複数の新生児の出産の場合には8週間(同6週間)にそれぞれ延長された。

c) 追加的産休の申請(労働法典1821条3項および1791条)

新規制の下では、

(i) 男性労働者、女性労働者共に、追加的産休の取得申請は追加的産休取得開始日の

14日前までに行う必要がある(改正前は同7日前)、

(ii) 女性労働者の場合、新生児出産から14日以内であれば、追加産休の取得および両

親休暇の取得の申請を一括で行う事が出来る(1.(4)の記述参照)。

d) 追加的産休取得中に行われる労働について(労働法典1821条5項)

法改正により、雇い主は、労働組織上の理由によって、またはその労働者によって遂行

されている職務の性格上、労働者が両親休暇取得中に職務に復帰する事が不可能である場

合には、追加的産休取得中の労働者による通常の勤務時間の半分を上限とする時短労働の

申請を却下する事が出来るようになった。

(4) 追加的産休および両親休暇の一括申請(労働法典 1791条)

2013年6月17日施行

法改正により、(i) 産休終了後、即、最長期間でもって追加的産休に入る旨の申請およ

び (ii) 追加的産休終了後、即、最長期間でもって両親休暇に入る旨の申請が一括で出

来るようになった。ただし、一括申請は新生児の出産後、14日以内に、女性労働者に

より行われる場合のみ認められる。雇い主は、上記の申請があった場合、これを受理

しなければならない。

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上記の追加的産休と両親休暇との一括申請を選択した場合、労働者には以下のような

付随的な結果が生じる(以下については、1.(2)②で述べた追加的産休と両親休暇との

分離申請の場合には適用されない):

a) 追加的産休または両親休暇の放棄とそれに伴う父親である労働者との休暇シェア

の可能性(労働法典1792 条および同1793条)

女性労働者は追加的産休または両親休暇の全部または一部分について、これを放

棄する事が出来る。

上述の放棄は、労働復帰日から数えて14日前までに書面によって行われた場合、

有効となる。

女性労働者による追加的産休または両親休暇の放棄の場合には、父親の労働者は、

追加的産休または両親休暇の取得開始予定日から数えて14日前までに適切な申請

を自らの雇い主に対して行えば、女性労働者により放棄された追加的産休または

両親休暇の全部または一部を利用する権利が与えられる。

上記の申請を受けた場合、雇い主はこれを受理しなければならない。

b) 労働者に対して支払われる社会保障給付金の額について

原則的に言って、労働者が、追加的産休と両親休暇を別々に申請する場合(1.(2)

② (i)のケース)、産休および追加産休の取得中の給付額は給与の100%であるが、

両親休暇取得中の給付額は給与の60%となる。

しかしながら、労働法典1791 条の定めに従い、労働者が、追加的産休と両親休暇

を一括申請する場合には、原則的に言って、給付額は、産休所取得中、追加的産

休取得中、両親休暇取得中とも給与の80%となる。

(5) 産休

① 新生児の出産前に母親によって取得できる産休の長さに関する規定の改正(労働法典

180条 3項)

2013年6月17日施行

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原則として、産休は新生児の出産日から取得するが、女性労働者は新生児の出産以前

から産休を部分的に取得する事が出来る。

産休は、女性労働者が希望すれば、出産予定日以前から取得する事ができる。法改正

前は、このような場合、出産予定日の最低でも2週間前より産休を取得できるとされ

ていた(しかしながら、出産前に取得できる産休の最長期間に関する定めは無かっ

た)。

改正法により、出産予定日前に取得できる産休の最長期間は6週間であると定められ

た。

(6) 育児休暇(労働法典 186条)

改正法施行日:

下記の項目a) については、2013年6月17日から施行

下記の項目b)から f)までについては、2013年10月1日から施行

a) 育児休暇取得の利用期限(労働法典186条2項)

改正法入により、育児休暇取得の利用期限が、子供が5歳に達するまでに延長

された(改正前は4歳まで)。

b) 育児休暇の分割利用回数(労働法典186条6項)

育児休暇は最大で5回まで分割して取得可能(改正前は同4回まで)。

c) 両親による育児休暇の同時利用(労働法典186条8項)

両親は最大で4ヵ月間まで同時に育児休暇を利用できる(改正前は同3ヵ月間ま

で)。

d) 1ヵ月間と定められたいずれか一方の親による育児休暇の独占的取得権 (労働法

典186条4項)

育児休暇は最長で36ヵ月間取得できるとされているが、この期間には、いずれ

か一方の親が、もう一方の親または親権者(custodian / opiekun)に代理取得

してもらうことが出来ない1ヵ月間の独占的な育児休暇取得権の行使期間が含

まれている。従い、いずれか一方の親または親権者によって利用できる育児休

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暇の最大取得期間は35ヵ月間となる(残りの1ヵ月間は、もう一方の親または

親権者によって利用されない場合、掛捨てとなる)。

e) 育児休暇と年次有給休暇との関係(労働法典1552条2項)

労働法典1552条2項の新規定に拠れば、年次有給休暇の取得権を有する労働者

が、ある暦年において育児休暇を利用し、その同じ暦年に職場に復帰した場合、

年次有給休暇(勤続年数ならびに終了した最終学歴の組み合せで20日間または

26日間と定められる)をフルで利用できるようになる。例えば、26日間の年次

有給休暇取得権を有する労働者が2014年1月20から2014年12月25日まで育児休

暇を取得したとすると、その労働者が12月中に職場に復帰した後、なお、26日

間の年次有給休暇を取得する権利を有する。法改正以前には、育児休暇を取得

した暦年における勤続年数に応じて、年次有給休暇の取得日数が短縮されてい

た。

f) 年次有給休暇の取得期限(労働法典2931条)

改正後の労働法典2931条の規定に拠れば、育児休暇の取得中に関しては、年次

有給休暇の取得期限に関する制限は適用されない。年次有給休暇の取得期限に

関するカウントが開始されている場合には、育児休暇の取得中については、取

得期限のカウントが一時停止される。法改正以前は、育児休暇の取得をした場

合でも、年次有給休暇の取得期限のカウントには影響を与えないとされていた。

(7) 労働者による育児上の休暇取得権に関する法改正に伴う雇い主への影響について

上記の1.(2)から1.(6)までで述べた労働者による育児上の休暇取得権に関する法改正の

より、労働者が職場から離れる期間は長期化の傾向にあり、雇い主にとっても、重要

な意味を持つと考えられる。結果として、雇い主側は、労働者が職場から離れている

期間が長期化する中で、適正な労務管理を行う事が求められよう。さらに、上記の法

改正が非常に複雑な内容を含むため、労働法の定めを遵守しながら人事を掌握するた

めにも、改正法について幅広い見識を身につける事が求められている。

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2. 労働時間

(1) 労働時間清算期間の最長 12ヵ月間への延長可能性 (労働法典 129条 2項)

2013年8月23日施行

労働法典の改正により、職場で導入されている労働時間の清算期間を、特定の条件を

満たした場合において、最長で12ヵ月間にまで延長する事が可能となった(改正前は

最長で4ヵ月間)。清算期間の12ヵ月間までの延長措置は、客観的または技術上の理

由または労務管理上の理由によってそれが正当化できる場合に可能となっている。

清算期間の延長は、いかなる労働時間システムを採用している場合にも導入可能であ

る。

清算期間の延長を導入するためには、労働者代表との間の合意および管轄の労働監督

局(PIP: Państwowa Inspekcja Pracy)への通告が義務付けられている。清算期間延

長手続きについては、本レポートのPart IIにおいて詳述する。

(2) 労働開始時間へのフレックスタイム制導入(労働法典 1401条)

2013年8月23日施行

労働法典1401条の導入に伴い、以下のいずれかの手法によって労働開始時間へのフレ

ックスタイム制の導入が可能となった:

(i) 曜日により違う労働開始時間の導入(例:月曜、火曜、水曜、

金曜は朝7時始業、木曜のみ朝9時始業)。

(ii) 労働者が勤務を開始しなければならない時間帯の設定(例:

朝7時から9時の間)。

上記の (i) の場合でも (ii) の場合でも、ある特定の24時間の間に行われる労働

については、残業とは見なされない(例えば、月曜の労働開始時間が朝9時で、

火曜の労働開始時間が朝7時であるとすると、従前は、火曜日の朝7時から9時

までの間に行われる労働については残業の扱いがなされていた。フレックスタ

イム制の導入時には、この2時間の労働については残業とは見なされなくな

る)。 ちなみに、労働法典128条3項に拠れば、「24時間」の定義として、労

働者が就業スケジュールに従って労働を開始した時点から数え始める連続した

24時間を指すとされている。

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労働開始時間へのフレックスタイム制の導入手続きについては、労働時間清算期間の

延長手続きと同様の手順を踏み、労働者代表との間の合意および労働監督局への通告

が必須である。本手続きの詳細については、続くPart IIにおいて述べる 。

(3) 残業時間に関する新規制の導入(労働法典 151条)

2013年8月23日施行

労働法典の改正に伴い、労働者が、私的な用事を済ませる目的で雇い主に対して書面

による申し出を行った結果、職場を離れていた時間分を穴埋めする目的で通常の勤務

時間外で行った労働については、残業とは見なされなくなった。結果として、上記の

場合、雇い主は残業代を支払う義務から解放された。

(4) 新しい労働時間規制の導入に伴う雇い主への影響について

(1)から(3)までで紹介した法改正により、労働時間に関する規制はよりフレキシブルと

なり、雇い主側に有利になったと評価できる。加えて、清算期間の延長に関する新規

制の導入により、労働者が清算期間中の特定の月のみ、より多く労働を行うよう労働

時間の調整を行う事が可能となった。これにより、雇い主は残業代の支払を節約でき

る一方、法定の休息時間に関する規定は引き続き遵守する事が求められる。なお、労

働者は、清算期間中の閑散期においては時短労働を行う一方、清算時間相当分の労働

時間に関しては、賃金の支払を受ける事となる。本改正により、最も恩恵を受けるだ

ろうと目されるのは、年間を通じて、繁忙期と閑散期のビジネスサイクルがはっきり

と分れているような業種である。自社のビジネスサイクルに合致した労働時間スケジ

ュールを導入する事により、残業代の支払を節約でき、コスト競争力のアップが見込

まれるのである。

3. 労働監督局および保健所への通告義務規定の一部廃止(労働法典旧 209条

および旧 283条 2項の 1)

2013年1月17日施行

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廃止となった労働法典旧209条では、新規に経済活動を開始しようとする事業者は、

管轄の労働監督局および保健所(PIS/ sanepid: Państwowa Inspekcja Sanitarna)ま

で、新規ビジネスの内容について操業開始から30日以内に届出を行わなければならな

いとされていた。

上記の規定は、操業開始後のいかなるビジネス活動内容の変更に際しても適用される

とされていた。

上記規定に違反した場合、1,000PLNから最高で30,000PLNまでの罰金が科せられる

とされていた。

同規定の廃止に伴い、事業者は、計画している新規ビジネスの内容および創業後のビ

ジネス内容の変更について、管轄の労働監督局および保健所への通告義務から解放さ

れた。

第 2部 2.(1)および 2. (2)で述べた労働時間に関する新規

制の導入に関するケース・スタディ

はじめに:

2.(1)で述べた労働時間清算期間の延長および2. (2)で述べた労働開始時間へのフレックスタ

イム制導入に際しては、以下で述べるような同様の手続きを踏む必要がある。下記では、

ケース・スタディを通じて、本手続きの詳細について解説する。

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ケース 1

250人の雇用を行っている A社

社内では 3つの労働組合が活動中

使用者と労働組合との間に労使協定(collective labour agreement /

Układy zbiorowe pracy)締結済み

A 社の場合、労働時間清算期間を 12 ヵ月間に延長するために必要な手続きと

は?

清算期間の延長に当たっては以下の 2通りの方法がある。

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ケース 2

100人の雇用を行っている B社

社内では 2つの労働組合が活動中

使用者と労働組合との間には労使協定(collective labour agreement /

Układy zbiorowe pracy)存在せず

B 社では、どのような方法で、労働開始時間のフレックスタイム制を導入でき

るか(月曜から水曜までは朝 9 時から午後 5 時までの勤務、木曜と金曜は朝 7

時から午後 3時までの勤務)?

このケースでは、労組との間で協定を締結する事で導入が可能

a) 労使協定中に付属文書 (protokół dodatkowy) を添付する方法

雇い主は、労使協定の締結当事者となっている全労組に対して、労働時間清算期間の延長に関する労使協定付属文書について締結したい旨を通達

使用者および労組との間の交渉により付属文書締結

付属文書の締結に際しては、管轄の労働監督局へ届出を行い、労使協定登記簿への登記を行う必要がある。登記手続きは1ヵ月以内に終了する事となっている。

付属文書は付属文書中に記載された適用開始日をもって発効するが、上記の登記手続きの終了前であってはならない。

使用者は、管轄の労働監督局に対して、協定締結から5日以内に協定の写しを届け出る。

b) 労働時間清算期間の延長に関する協定を締結する方法

雇い主は、事業所内で活動している全労組に対して、労働清算期間の延長に関する協定を締結したい旨を通達

使用者および労組との間の交渉により協定締結

協定は書面により事業所内で活動している全労組との間で締結される必要がある。全労組との間で文面につき同意形成ができない場合、使用者は、労働法典 24125a 条が規定するところの事業所内代表労組( Reprezentatywna zakładowa organizacja związkowa) との間で協定を締結する。

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ケース 3

45人の雇用を行っている C社

社内で活動している労組はなし

C 社では、どのような方法でもって、労働開始時間へのフレックスタイム制の

導入が出来るか?(労働者は、朝 7時から 9時の間に労働を開始する)

•雇い主は、事業所内で活動している全労組に対して、労働開始時間へのフレックスタイム制導入に関する協定を締結したい旨を通達

STEP 1

• 使用者および労組との間の交渉により協定締結 STEP 2

• 協定は書面により事業所内で活動している全労組との間で締結される必要がある。全労組との間で文面につき同意形成ができない場合、使用者は、労働法典 24125a 条が規定するところの事業所内代表労組( Reprezentatywna zakładowa organizacja związkowa) との間で協定を締結する。

STEP 3

• 使用者は、管轄の労働監督局に対して、協定締結から5日以内に協定の写しを届け出る。

STEP 4

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労働者代表(representatives of employees / przedstawiciele pracowników)

との間の合意により導入可能

• 労働開始時間へのフレックスタイム制導入の意図がある事について労働者に通達

STEP 1

• 社内の内規に従い、労働者代表(複数の代表でなければならない)を選出する社内選挙を実施。内規は全労働者が選挙に参加でき、投票の秘密性が保たれている内容でなければならない。選挙で選ばれた労働者代表が協定締結の労働者側の当事者となる。

STEP 2

• 選挙で選ばれた複数の代表との間の交渉 STEP 3

• 書面による協定締結 STEP 4

• 使用者は、管轄の労働監督局に対して、協定締結から5日以内に協定の写しを届け出る。

STEP 5