Page 2018 池袋サンシャインシテイ Feb ７,2018

『技術進化と印刷業の対応』

ー制約条件の変化ー

若生彦治（国際印刷大学校）

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目的１ 印刷業

紙印刷物の複写・量産作業を請け負う加工業。原材料と機械設備は異業種・他社から購入。

２ 脱紙印刷・脱印刷業

紙印刷物は機械操作機能が皆無。刷版・媒体は19紀後半に有形・紙から無形・電気へ移行。機能の限界は1940年代に英国で顕在化。

3 中小印刷業のＩｏＴ時代における生き残り策

日本の印刷物の売上高，従業者数は1997年以降年率約３％，約６％で逓減，人員削減で対応。

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背景１ 移動手段の必要性

ヒト・モノ・情報の移動手段は環境変化への対応，安心確保，生活物資の調達，サービス提供に必須。

２ 情報媒体機能の要件

情報は安全、選択，統治の武器。機能は媒体利用の目的と利用者の生活・使用環境に適合，信頼，適時適宜，競争優位，低価格，操作容易、等。

３ ネットワークシステム・社会

電気信号網の物理的機能は、文字・言語・地理を超えて音声，動画，データをヒトと機械へ直接移動，情報の流れを変え、時間と経費を節約、身体・感覚器官の機能の限界を補完，ヒトと機械の役割を変革。

志向志向し3

印刷業の衰退（仮説）と経営課題

１ ＩｏＴ

デジタル通信網、ICT機器の認識・音声・決済機能お

よび企業の価格戦略は利用者の使用料金を下げ，数を増大、顧客の情報と購買行動を囲い込んだ。

個人の認識・判断・行動は個人の利害関係・流通・社会サービスを変革。スマートフォンは印刷物の符号（二次元バーコード）を読み取り、ネットワークで決済処理、サバ―から動画・音声・データを再生。

２ 対応策

事業目標の見直し，量産製法に活用又はICT機器を

利用するサービ業化、中核技術の深堀，人材育成および対応結果の確認の繰り返し。 4

印刷業の経営形態1) 書写業から分化し木版で量産、低価格化。

2) 不足する器材は購入、輸入或いは相互業務委託で補完。収入源は請負加工手間賃。

3) 日本語文化圏に護られ、工業化で繁栄。設備輸入、自主創作無用、研究開発費少額、ＯＪＴ教育、低価格受注競争。

4) 大量安定受注の成功社がピラミッド構造の頂点に立った。

5) 電気媒体の機能と進化は、昼夜を問わず情報ネットワークでヒト、機械を結び付けた。

6）電気媒体の出現と機能は、非専業・個人が印刷可能、無機能の高額な媒体である印刷物の機能を飲み込んだ。

7) 印刷業はＩＣＴ機器に支えられて生き残りを図っている。

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図１ 印刷業の支持基盤

静止視覚情

報 音声，動画，

データ，解析，操作原材料、 経営、

技術 印刷 管理

紙，イ 物 集団

ンキ，機 電磁波 統治，布

械 労働力、 教 個

Computer, インフラ 人，サービ

Network ビス

出典：著者作成

視覚情報

視覚情報

視覚情報

視覚情報

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表１ 情報媒体別の広告費収入額媒体の種類 調査年度 2005 順位 2007 2009 2011 2013 順位 2013/2005

ＧＤＰ(千億円) 5,039 ― 5,130 4,711 4,713 4,784 ― 94.9(%)

総広告費(億円) 98,235 ― 70,191 59,222 57,096 59,762 ― 60.8

総広告費/ＧＤＰ(％) 1.35 ― 1.37 1.26 1.21 1.25 ― 92.6

テレビ(億円)；Ａ 20,411 ① 19,981 17,139 17,237 17,913 ① 87.1

Ａ/総広告費(％) 29,9 28.5 30.0 30.2 30.0 100.3

新聞(億円)；Ｂ 10,379 ② 9,462 6,739 5,990 6,170 ③ 57.0※

Ｂ/総広告費(％) 15.2 13.5 11.4 10.5 10.3 65.0※

雑誌(億円)；Ｃ 4,842 ③ 4,585 3,034 2,542 2,499 ④ 51.6

Ｃ/総広告費(％) 7.1 ― 6.5 5.1 4.5 4.2 ― 59.2

インターネット(億円);D 3,777 ④ 6,003 7,069 8,062 9,381 ② 48.4※※

Ｄ/総広告費(％) 5.5 8.6 11.9 14.1 15.7 285.5※※

衛星メディア(億円)；Ｅ 487 ⑤ 603 709 891 1,110 ⑤ 227.9

Ｅ/総広告費(％) 0.7 0.9 1.2 1.6 1.9 271.4

出典：電通総研(2014)『日本の広告費・第２次改訂』より著者算出。

注：広告媒体は交通，展示などがあり，上記の％を合計しても100％にならない。※；新聞系と雑誌系の合算額。※※；インターネット系と衛星メディア系の合算額。

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表２ 米国の全雇用者数に占める産業別雇用者数比（Ａ）および1996年比（Ｂ）

年 2016 1976 1996 2016 1976 1996 2016

雇用者数 千人 Ａ％ Ａ％ Ａ％ Ｂ％ Ｂ％ Ｂ％

全雇用者数 144306 100 100 100 66.3 100 120.4

民間企業 122083 81.13 83.70 84.60 64.3 100 121.7

製造業 12348 22.05 14.38 8.56 101.7 100 71.6

Computer 1048 - 1.46 0.73 - 100 60.0

印刷関連 447 - 0.68 0.31 - 100 54.8

小売 15820 11.28 11.80 10.96 63.4 100 111.9

情報(internet除く) 2772 2.66 2.45 1.92 71.8 100 94.3

金融・保険・不動産 8285 - 5.86 5.74 - 100 118.1

ﾌﾟﾛﾌｪｼｮﾅﾙ･ﾋﾞｼﾞﾈｽ 20136 7.91 11.23 13.97 46.7 100 149.6

技術ｻｰﾋﾞｽ 8877 - 4.43 6.15 - 100 167.1

ｽﾍﾟｼｬﾙﾃﾞｻﾞｲﾝ 140 - 0.09 0 .- 100 130.6

教育・健康 22616 7.24 11.48 15.67 41.8 100 164.3

宿泊・飲食 13386 - 7.72 9.28 - 100 144.6

出典：U.S. Bureau of Labor(2017)data.bls.gov/pdq/SurveyOutServlet.

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表11 中小企業の研究開発実施状況

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製造業 うち印刷・同関連業 情報通信業 うち情報サービス業

母集団 415,134 30,528 51,565 27,707

研究開発実施企業数 22,337 367 3,307 2,574

研究開発実施率(％) 5.38 1.20 6.41 9.29

研究開発費(百万円) 393,758 1,050 21,074 18,724

研究開発費(百万円／社) 17.63 2.86 6.37 7.27

研究促進税利用企業数 2,652 31 305 297

促進税利用比率(％) 11.9 8.4 9.2 11.6

工業所有権所有企業数 23,908 664 2,072 1,342

同権所有率(％) 5.8 2.2 4.0 4.8

出典：総務省(2012)『科学技術研究調査報告・中小企業実態基本調査 2011年実施』。

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図３ 印刷業のライフサイクルと規模の二極化

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数 Ｓ：印刷が書写から分化

量 Ｒ Ｇ：興隆期，限界収入増

・ Ｒ：成熟期，限界収入減

用 Ｌ Ｄ Ｄ：紙から電気へ移行

途 Ｌ：全国規模

Ｐ：特化・地域規模

Ｇ Ｒ

Ｓ Ｐ

技能・価格

出典：著者作成

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ドット・二次元バーコードを光学ペン・スマフォで読み取り文字・音声・動画へ変換。印刷物は文字が不要、絵と符号の表示体（某メーカーカタログ）。

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ステンレス鋼板コンベア。空気孔から紙を吸引又は浮上非接触。インクジェット印刷機と雰囲気槽は別途外付け（某メーカーカタログ）。

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まとめ１ 移動手段は日常生活，生態・社会環境変化への対応，経済活動の効率化に必須，誰でもいつでも使用可能な機能が望まれる。

２ 技術進化

情報処理・機械操作の機能は個人情報の光速、量産，無料化で在宅勤務やロボット，物流の低価格化，産業を創出，世界の産業構造を分化させている。

３ 印刷業は機械機能が無い紙印刷物の加工請負専業

として分業体制に支えられて繁栄。中小印刷業・加工請負専業の生き残り策は地域・ベンチャー企業のＩＣＴ技術の流用，連携，サービス業化の選択，信頼関係醸成，人材育成がある。

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参考文献1) 篠崎彰彦（2017）「イノベーションの奔流とグローバル経済の発展」研究技術計画Vol.32,No.1,pp31-38.

2) Caitlin Moldvay(2012)”Out of print: The industry struggles as printed

media lose consumers to the web”, IBISWorld Industry Report 32311,

www.ibisworld.com.

3) 若生彦治(2017)「情報媒体の技術進化と印刷業の対応（1）」印刷技術，10月号，p.59-61。

4) 日本印刷産業連合会（2016）「2015年デジタル印刷市場の現状」同会。

5) U.S. Bureau of Economic Analysis(2017),http://www.bea.go/,iTable

/iTable.cfm?

6) Matthias F. Brauer and Margarethe F. Wiersema(2012)”Industry

divestiture waves How a firm’s position influences investor returns”

Academy of management Journal. Vol.55, No.6, 1472-1492.

7) 二又俊文（２０１６）「ＩｏＴ時代への新しい知財・標準化戦略」研究技術計画Vol.3１,No.1,pp80-94.

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