減価償却費損金益金

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The仕訳　番外編～減価償却を会計・税務で考えよう～

※登場人物、団体等は全て架空のものであり、　　実際の人物、団体等とは一切関係ありません。


新店舗の経理処理で忙しいはじめくんとりさ子先輩。今日は近所の洋食屋さんでランチです。

最近W大時代の仲間と話す機会が多いはじめくん。昨日の飲み会で出た話をりさ子先輩に聞いてみることにしました。


ここのハンバーグ、おいしいですね～

そうね。老舗の味ね。さすがソースにコクがあるわ。


そう言えば、ここの店、先月の「Denchu 」に載ってましたよ。

へ～、はじめくんもグルメ雑誌なんか読むのね。


最近料理男子が、ぼくの周りでも増えてますから、話題になるんです。

うちの会社も飲食店事業に力を入れて行きそうだから、いいことね｡


そう言えば、昨日W大時代の仲間と話していて、またわからない事があって。

昨日はどんな話をしていたの？


よく、「損金が取れる」とか、「損金が取れない」って、部長が話してますよね。

してるわね。


会社の費用って、会社の為に使ったなら、P/Lに計上しなくてはならないですよね。

そうよ。


なのに、「取れない」っておかしくないですか？

うーん、はじめくん。まずは「費用」と「損金」の話からしなくちゃね。


先輩、一杯飲みますか？

会計と税務の違いについてふか～い話になっちゃいそうだけど・・・


冗談っす。話、聞かせてください。

ばかね！今はランチよ。飲む訳ないでしょ。


デザートを食べながら、りさ子先輩の会計トークがはじまりました。

りさ子先輩は会計の話をはじめたら、止まりません・・・


ここで少し解説しましょう。会計で言う「費用」と税務で言う「損金」とは似て非なるものです。


どう違うのか・・・。減価償却をネタに、りさ子さんに話してもらいましょう。


まずは会計の目的、税務の目的から話してもらいましょう。


そもそも、会計で作るB/S 、 P/Lの目的って何だと思う？

確か、利害関係者への情報提供だった様な・・・。


じゃ、税務の目的って何だと思う？

えっと・・税務って言われても、あんまり意識してないっていうか・・・


そうね。簿記を勉強しているだけでは、あまり意識しないわね。

簿記では当期純利益を計算するのが目的だと思って・・・


それも大切だけど、その当期純利益を使って、会社は法人税を計算するのよ。

法人税ですか・・・


そう。つまり、税務の目的は、公平な税金計算をすることなのよ。

まだぴんと来ないなぁ。どう違うんですか？


　会計は企業の実態を表す　ためなら、積極的に費用を　計上すべきって考えるの。

坂上先生のワンポイント解説◇ 会計の目的企業の現在価値を正しく表示する　財務諸表の作成をし、投資家に　有益な情報を提供する。◇ 税務の目的　課税の公平を図るために、過大な損金　を計上せずに、正しく税金計算を行う。


　逆に税務は、公平に課税する　為に、過大な損金を計上して　利益が小さくなりすぎないように　なっているの。

坂上先生のワンポイント解説◇ 会計の目的企業の現在価値を正しく表示する　財務諸表の作成をし、投資家に　有益な情報を提供する。◇ 税務の目的　課税の公平を図るために、過大な損金　を計上せずに、正しく税金計算を行う。


こんな例を考えてみて。認められる処理かしら。

え、良いんじゃないですか？

減価償却費60　 / 　減価償却累計額　60

うちの会社は営業車120円を2年で乗りつぶしてしまう。だから、 2年で減価償却60円ずつ計上したい。


半分正解で、半分不正解よ。

えっダメなんですか？！

会計だけの側面で考えたら、OKよ。


でも、税務の側面で考えたら、不正解よ。

どういうことですか？


2年で乗りつぶしてしまう営業車120円。1年使った時の費用を考えてみよう。

買ったときの価値　 120 円　



新品



1 年経ったときの価値　 60 円　




古い




60円分古くなったことが実態。だから、会計では60円を費用に入れるべきだ！



その通りだと思います。

でも、税務では違う考え方をするの。



NO ！




国では、車両は6年使えるものと考えている。




だから、 1年間では20円分だけ古くなったと認めよう。




だから、 1年間では20円分だけ古くなったと認めよう。


X


1 年経ったときの税務上の価値　 100 円　

20 円分



え～！ 20円分しか費用として認めてもらえないんですか？

そうなの。会社によって自由に償却費を計上できると、利益調整に使われる可能性があるのよ。


だから、「法定耐用年数」と言って、国が償却期間を定めてるって訳。

法定耐用年数って聞いたことあります！！


法律では、計上できる費用の上限を定めている場合があるの。

厳しいんですね・・・。


その上限を超えない範囲内の費用が税務上の費用となるの。これを「損金」と呼ぶのよ。

ついに「損金」登場だ～！



会計上の費用60 円

税務上の損金20 円




税務上の損金20 円 40円





損金不算入の減価償却費





損金不算入の減価償却費

↓損金として「とれない」


でも、損金として取れないと、何で部長はあんなに残念そうな顔をしてたんだろう・・・。

それはね、損金として「取れない」ってことは、それだけ法人税が高くなるってことになるからよ。


会計では「費用」。税務では「損金」。損金≠費用の時の、法人税について考えよう。

会計上の P/L 　税務上の P/L 　借方貸方

減価償却費 60 売上 50当期純損失 △10合計 50 合計 50

借方貸方

減価償却費 20 売上 50当期所得 30合計 50 合計 50


借方貸方

減価償却費 60 売上 500当期純利益 440合計 500 合計 500


会計上の P/L 　借方貸方


税務上の P/L 　借方貸方


借方貸方


計上する費用が減ると、

※費用・損金がわかりずらくなるので、「費用」で統一して説明しています。


借方貸方







借方貸方


利益が増えます。

※利益・所得がわかりずらくなるので、「利益」で統一して説明しています。


借方貸方







借方貸方


利益が増えると、法人税が増えます。

※利益・所得がわかりずらくなるので、「利益」で統一して説明しています。


借方貸方







借方貸方


0 ×45 ％＝ 0 30×45 ％＝ 13 　※ わかりやすくする為に税率は 45 ％としております。　


借方貸方







借方貸方


0 ×45 ％＝ 0 30×45 ％＝ 13 　<※ わかりやすくする為に税率は 45 ％としております。　


なるほど。「損金」にならない「費用」を計上すると会社が赤字決算でも、法人税を払わなくてはならない場合があるんですね。



会計の考え方では、正しい財務諸表を作る為に、「損金」にならない「費用」を計上しなければならない場合があるのよ。

会計と税務の目的の違いがわかると、理解しやすいですね。


あ、もうこんな時間。午後はミーティングよ。こんなに食べちゃったから眠くなりそう・・

りさ子先輩でも、ミーティングで眠くなるんですか・・・？


こうして、 2人は午後の仕事に戻って行きました。

今後の二人の物語については、毎週月・水・木のThe仕訳をお楽しみに。


The仕訳シリーズ

毎週月・水・木更新。新人のはじめ君と先輩のりさ子さんとのやり取りを通して、「仕訳のコツ！」を分かりやすくお伝えします。

簡単そうで実は奥の深い仕訳の世界。なんとなくではなく、その目的や意味を理解した上で仕訳を切ると、きっと新しい世界が見えてくるはずです。


坂上信一郎公認会計士・税理士事務所（エスエス会計）

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