平成 23 年度女性医学生，研修医等をサポートするための会「あんな事情、こんな事情」

2012 年 1 月 28 日第 35 回日本眼科手術学会総会

あなた自身のキャリアを考えてみるー眼科女性医師としてー

内尾英一( 福岡大 )

女性医師を支えるための条件

九州大学病院きらめきプロジェクト Hp より

福岡大学医学部における女子学生

6 年生 5 年生 4 年生 3 年生 2 年生 1 年生0

20

40

60

80

100

120

140女子男子

38% 32

%37%28

%

32%

30%

福岡大学眼科医局の現状（所属別男女比）

男性 女性 合計大学教員 7 2 9

大学教員以外 3 5 8

関連病院医長 8 2 10

関連病院医長以外 8 8 16

非常勤医師 ( 育児休暇中含む )

0 3 3

合計 26(57%)

20(43%)

46

福岡大学眼科医局の現状（女性医師の年齢層と既婚率）

既婚 (%) 未婚 (%)

20 歳代 1(20%) 4(80%)

30 歳代 7(70%) 3(30%)

40 歳代 2(40%) 3(60%)

50 歳代 0 0

合計 10 10既婚者のうち出産経験者は 6 名，妊娠中は 1 名

福岡大学眼科医局の現状（子育て女性医師の実情）

• 医師 A– 入局 7 年目。第一子は産休明けに復帰。第二

子は育休取得し，現在非常勤勤務週 2 回。臨床大学院生。夫は歯科医。夫の母親から保育園にシフト。 専門医取得済み。

• 医師 B– 入局 4 年目。第一子 (2 歳 ) 出産後 1 年間育

休。実母が市内に在住。フルタイム勤務（当直なし施設）。保育園。夫は外科医で他県で勤務。

福岡大学眼科医局の現状（子育て女性医師の実情）

• 医師 C– 入局 4 年目。現在育休中。 4 月から臨床復帰。両親

が隣に居住。保育園へ。夫は内科医。• 医師 D

– 入局 4 年目。今月第一子を出産。夫（内科医）の転勤に伴い，関東で大学病院勤務していたが，夫の再転勤で福岡へ戻る。復帰は未定（実母は市外在住）。

• 医師 E– 入局 3 年目。子供は一人（幼稚園年長）。実母のサ

ポートあり。臨床を継続中。夫は外科医。住居のある福岡市への転勤を希望。

福岡大学眼科医局の現状（女性医師の待遇に関する申し合わせ）

• 基本的には男女機会均等• 出産後 1 年間は当直なし• 満 3 歳まで当直減免勤務• 事情により非常勤で外来のみ• 「外来のみ－病棟のみ」の体制は取ら

ない• 幼児がいる場合は県外勤務 (3 施設 ) は

なし

福岡県における女性医師支援事業

• 大学病院主導型–「きらめきプロジェクト」（九州大学病

院）–主として外来への人材派遣

• 行政主導型–女性医師職場復帰支援事業（福岡県）–福岡大学病院，久留米大学病院–臨床復帰プログラム重視

福岡大学病院の女性医師サポート制度

• 院内保育所– 平成 19 年 4 月開設– 利用対象者 ：助手・臨床研修医を含む– 運営形態：保育所運営業者による年中無休方式– 保育対象年齢：生後 3 か月から未就学児– 保育時間：午前 7 時～午後 7 時 30 分– 延長保育：午後 7 時 30 分～ 10 時 00 分まで可能– 月極保育料金： 0 歳 6カ月 (45,000円 ) ～未就学児

（ 35,000円）• 非常勤医師としての勤務：給与は常勤（助手）のほぼ

日割り相当

女性眼科医師のライフスタイルの分岐点

• 結婚する or 結婚しない–結婚しない or したくない割合は少ない

• 医師と結婚する or 医師以外とでも結婚する– 在学中に交際開始しているのがほとんど– 医師以外とどうやって結婚するのか？

• 子育てをどうするか• 親依存派（保育園 or 幼稚園 ） or 外注派

（保育園＋ a ） or 自力派（パート医へ） – 夫がどの程度子育てに協力できるか

眼科女性医師としての 3つのパターン• 収入重視

「専門医を取得し，早期 (40 歳前 ) に開業」– 今後の競争激化，飽和化（医師増員時代）の可能性

• フリータイム重視「常勤も開業もしないで，パート医としての人生を過ごす」– 結婚，子育てと両立は容易– 増加する女性医師との競争，収入は？満足感は？

• キャリア追求「勤務医としての上の地位をあくまでも目指す」– 結婚，子育てとの両立が困難– 常勤医としての社会的安定性，それなりの収入

眼科医の結婚相手のパターン

女性医師 男性医師（含む歯科医師）

その他

100%N=10

男性医師 女性医師（含む歯科医師）

専業主婦もと医療関係者それ以外

その他

21%

5%

37%37%

N=19

女性眼科医師のライフスタイル• 男性医師との結婚

–社会的に満足度が高い。–ほとんど在学中か研修（前期）期間中に交際，婚約する。

– フルタイム勤務に理解がある夫でないと勤務継続が困難。しばしば転勤がある。家事にかなり非協力的（ or できない）。

–妻がフルタイムで勤務しなくてはならないことが理解できない。親（義母）が専業主婦だった場合はさらに協力を得られにくい。

女性眼科医師のライフスタイル• 男性医師以外との結婚

–そもそも医師以外と結婚する人生など考えられない。

–どこで，どのように知り合ったらよいのかわからない。

– 勤務継続を前提に結婚できる可能性は高い。–収入（逆？）格差– シングルインカムの危険性を理解する未婚非

医師男性は着実に増加している。

出産後にフルタイムで眼科医を続けるために必要なもの

• 好意的な親族（≒実母）–円滑な人間関係のためには対価を– 親はどんどん年を取る

• 職業としての子守り–ベビーシッター babysitter

子供の世話（食事，送迎，入浴， etc ）–家政婦 nursery maid上記+家事

• 夫の協力

男性の職業別年収ランク1位 開業医師 2,086万円 7万人2位 パイロット 1,713

2,9203位 フジテレビ社員 1,567

1,3674位 公認会計士 1,426 2万5位 歯科医師 1,329 9万6位 税理士 1,266 7万7位 医師 1,227 26万

8位 大学教授 1,153 4万9位 不動産鑑定士 1,020

6,69610位 大学准教授 917 2万

PRESIDENT 2010 年

順位 職業 年収

1位 弁護士 1,271 （万円）

2位 医師 1,141

3位 パイロット 1,136

4位 大学教授 1,114

5位 大学准教授 862

6位 公認会計士 841

6位 税理士 841

: : :21位 歯科医師 582

職業ラボ 2010 年

女性の職業別年収ランク

1位 大学教授 1026万円 　 　 　 　

2位 大学准教授 875 　 　 　 　

3位 高等学校教員 835 4位 医師 778 　 　 　 　

5位 記者 774 　 　 　 　

6位 各種学校・専修学校教員 652 7位 航空機客室乗務員 635 8位 臨床検査技師 574 9位 自然科学系研究者 571 　 　 　 　

厚生労働省，事業所別調査 2010 年

「先生」がねらい目です• 大学教授は意外と高収入• 自由時間がとても多い（講義と会議のある

日以外は自宅にいても研究していることになる）

• 専任講師になれるまでに持ちこたえられるかどうかが将来を左右する（大学院博士課程修了後，およそ 35 歳頃）

• 専任講師になれば必ず教授に昇格できる• 大学教員は転勤がない• 失業もしない

余計なことですが…

• 勤務医を最も長く続けるのは独身女性医師• 女性眼科医師の非医師男性配偶者では，半数以上が大学教員，他に弁護士も

• 仕事しているとお受験できない（たぶん事実）が，一流中学校へは公立小学校からしか入れません

• 仕事（常勤）を続けられるかどうかを基準に結婚相手を考えることを提案します

問題は…

• 結婚するかどうかだけが女性医師の問題ではない

• 医師不足の問題は結婚，出産後にフルタイムの女性医師が減少することにある

• 特に公的病院のフルタイム女性医師が少ない

• 長くフルタイム眼科医を続けることに意義と幸福を見いだせるかどうかは個人の問題

• 医師養成数増加は本当に有効か？

子育て外注の概算費用（月額）

保育園費用（収入による）• 認可保育園

– 0 歳 8万円， 3 歳以下 6万円， 4 歳以上で 3万円

• 認可外保育園– 基本料金 7万～ 8万円＋給食費

ベビーシッター料金• 時給 1200-1400円

– 16 時から 22 時まで， 22 日で約 16万円24万円～ 19万円（就学前；就学後はさらに安い）はフルタイム医師ならば支払える範囲の金額

赤門育成会（東京都文京区） Hpもあります

あなた自身のキャリアとはーまとめー結局は個人の問題

• フルタイムをめざす，めざさない自由は尊重すべき• キャリア＋パートナー＋子供の備わった人生の可能性も十分あります

• 必要なのは固定観念から踏み出す勇気• 充実感に忙しさは必ず付いてきます• 仕事をしていても子供は問題なく育ちますが，大人が気にかける必要は常にあります→「三田佳子」になるな

• フルタイムを続けることは結婚前に必ず要契約（説得可能かどうか）

• 勝ち組か負け組かは 30 年以上たたないとわからない