湖沼流入河川の医薬品負荷量と湖沼内の医薬品濃度の関係

独立行政法人土木研究所水環境研究グループ（水質）

小森行也、鈴木穣

Public Works Research Institute

水環境における医薬品に関する研究課題

　　　調査・研究対象物質の選定　分析方法　実態把握　（河川・湖沼・下水道）　挙動把握　（河川・湖沼・下水道）　生物影響　（急性毒性・慢性毒性）　薬剤耐性菌　　　　　↓　環境影響評価　対策技術（除去技術）

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2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

研究

発表

論文

数

国内における論文・研究発表等の数

・水環境学会年会・シンポジウム・環境工学研究フォーラム・環境化学討論会・ EICA 研究発表会

湖沼とその流入河川における医薬品の存在実態

湖沼と河川の特徴　湖　　　沼：河川に比べ滞留時間が長い（水質は安定）　流入河川：一過性・湖沼に比べ滞留時間が短い（水質は変動）

湖沼と河川水中の医薬品濃度を比較

第 11 回日本水環境学会シンポジウム（ 2008 ）

まとめと課題

　湖沼とその流入河川の医薬品濃度を明らかにした　湖沼内で検出された殆どの医薬品は、流入河川の濃度に比べ低い値を示した

↓　今後は、流量観測も合わせて行い、負荷量を算出するなど、定量的な視点から考察を加える必要がある

湖沼とその流入河川における医薬品の存在実態調査を実施

湖沼流入河川の医薬品負荷量と湖沼内の医薬品濃度の関係

第 12 回日本水環境学会シンポジウム（ 2009 ）

調査地点数：１４地点（湖沼流入河川・１１地点，湖沼内・３地

点）

湖沼面積36 ｋｍ 2

調査日： 2009.3.12 　

比較的流量の少ない小河川

比較的流量の多い流入河川

湖沼に架かる橋

比較的流量の少ない小河川

調査地点（一部）

No. No.1 acetaminophen 解熱鎮痛消炎剤 47 sulpiride 消化性潰瘍用剤2 antipyrine 解熱鎮痛消炎剤 48 flovoxate ,他の泌尿生殖器官 肛門用薬3 atenolol 不整脈用剤 49 amoxicillin 抗生物質4 carbamazepine 抗てんかん剤 50 dipyridamole 血管拡張剤5 clarithromycin 抗生物質 51 furosemide 利尿剤6 clenbuterol 気管支拡張剤 52 verapamil 血管拡張剤7 clofibric acid ｸﾛﾌｨﾌ ﾗ゙ｰ ﾄの代謝物 53 diltiazem 血管拡張剤8 crotamiton , , ,鎮痛 鎮痒 収れん消炎剤 54 tolbutamide 糖尿病用剤9 cyclophosphamide 抗悪性腫瘍用薬 55 carbazochrome 止血剤10 diclofenac , , ,鎮痛 鎮痒 収れん消炎剤 56 bromovalerylurea 抗不安剤11 N,N-diethyl-m- toluamide 昆虫忌避剤 57 spironolactone 利尿剤12 disopyramide 不整脈用剤 58 griseofulvin 主にカビ作用剤13 ethenzamide 解熱鎮痛消炎剤 59 diphenidol 鎮暈剤14 fenoprofen 解熱鎮痛剤 60 chlorpromazine 神経系用剤15 ibuprofen 解熱鎮痛消炎剤 61 nalidixic acid 合成抗菌剤16 ifenprodil 他の循環器官用薬 62 dextromethorphan 鎮咳剤17 indomethacin 解熱鎮痛消炎剤 63 acetazolamide 利尿剤18 isopropylantipyrine 解熱鎮痛消炎剤 64 trimethoprim 合成抗菌剤19 ketoprofen 解熱鎮痛消炎剤 65 ampicillin 抗生物質20 mefenamic acid 解熱鎮痛消炎剤 66 prednisolone 副腎ホルモン剤21 metoprolol 降圧剤 67 tolperisone 鎮けい剤22 naproxen 解熱鎮痛消炎剤 68 amitriptyline 神経系用剤23 p-phenylphenol 殺菌剤 69 promethazine 抗ヒスタミン剤24 pindolol 不整脈用剤 70 imipramine 神経系用剤25 propranolol 不整脈用剤 71 metoclopramide 他の消化器官用薬26 salbutamol 気管支拡張剤 72 scoporamine 鎮けい剤27 sotalol 不整脈用剤 73 chlormadinone acetate 混合ホルモン28 theophylline 気管支拡張剤 74 mepirizole 解熱鎮痛消炎剤29 terbutaline 気管支拡張剤 75 pirenzepine 消化性潰瘍用剤30 benzylpenicillin 抗生物質 76 fulfenamic acid 解熱鎮痛消炎剤31 chlortetracyclin 抗生物質 77 neospiramycin 抗生物質32 danofloxacin 抗生物質 78 thiamphenicol 合成抗菌剤33 diclazuril 抗コクシジウム剤 79 chloramphenicol 抗生物質34 nicarbazin 内寄生虫用剤 80 primidone 抗てんかん剤35 oxytetracycline 抗生物質 81 phenytoin 抗てんかん剤36 2-quinoxalinecarboxylic acid ｶﾙ ﾊ ﾄ゙ ｯ゙ｸｽの代謝物 82 haloperidol 神経系用剤37 sarafloxacin 抗生物質 83 pentoxifylline 血管拡張剤38 sulfadimidine ｻ ﾙ ﾌｧ剤 84 caffeine 強心剤39 sulfadimethoxine ｻ ﾙ ﾌｧ剤 85 bezafibrate 高脂血症用剤40 sulfamethoxazole 他の化学療法剤 86 levofloxacin 合成抗菌剤41 sulfamonomethoxine ｻ ﾙ ﾌｧ剤 87 azithromycin 抗生物質42 tetracyclin 抗生物質 88 phenobarbital ,催眠鎮静剤 抗不安剤43 oleandmycin 抗生物質 89 phenacetin 解熱鎮痛消炎剤44 kitasamycin 抗生物質 90 methoxsalen 他の外皮用剤45 josamycin 抗生物質 91 dexamethasone 副腎皮質ホルモン剤46 novobiocin 抗生物質 92 dexamethasone acetate 副腎皮質ホルモン剤

分析対象物質 用 途 等 分析対象物質 用 途 等

調査対象物質　

解熱鎮痛消炎剤、消化性潰瘍用剤、抗てんかん剤、不整脈用剤、血管拡張剤、合成抗菌剤、抗生物質等の医薬品 92物質

小西千絵，宝輪勳，中田典秀，小森行也，鈴木穣，田中宏明 (2006) 水環境中医薬品の LC-MS/MS による一斉分析法の検討，環境工学研究論文集， 43 ， 73-82．小森行也，岡安祐司，鈴木穣 （ 2007 ） 下水道未整備地域の小河川における医薬品の実態調査，学会誌「 EICA」， 12 （ 2/3 ）， 37-44．

参考文献

保存剤(アスコルビン酸 1 g/L、EDTA-2Na 1 g/L)の試料採取時添加 河川水,下水処理場放流水200 mL,下水処理場流入水50 mL

ガラス繊維ろ紙；Whatman, GF/F 47 mm Ø 吸引ポンプによる吸引ろ過

1 mol/L 塩酸

カートリッジ； カートリッジコンディショニングWaters, Oasis HLB Plus 6 cc メタノール15 mL、pH4調整MilliQ水15 mL

通水速度 1 mL/min 溶出メタノール6 mL自然滴下による溶出

窒素気流下での濃縮乾固

アセトニトリル：0.1%ぎ酸MilliQ水＝7：93, 1 mL 超音波 (周波数28 kHz) 1 minによる溶解

1000 rpm, 1 min 上澄み採取

ESI(エレクトロスプレーイオン化法)

試料

ろ過

ろ液 ろ紙残渣

LC/MS/MS

濃縮乾固

溶解・定容

遠心分離

<pHが3.5～4.5の間> <pHが3.5～4.5以外>

pH調整

固相抽出

分析フロー

小西千絵，宝輪勳，中田典秀，小森行也，鈴木穣，田中宏明 (2006) 水環境中医薬品の LC-MS/MS による一斉分析法の検討，環境工学研究論文集， 43 ， 73-82．小森行也，岡安祐司，鈴木穣 （ 2007 ） 下水道未整備地域の小河川における医薬品の実態調査，学会誌「 EICA」， 12 （ 2/3 ）， 37-44．

参考文献

調査結果（ 11 の流入河川中 6 ヶ所以上の地点で検出された 17 物質）

調査地点番号

92 物質中 46 物質が 14ヶ所のいずれかで検出され、その検出濃度は， carbamazepine ， clofibric acid ， naproxen 等の 0.1ng/L から caffeineの 540ng/L であった．また， 14ヶ所すべての地点から clarithromycin ， crotamiton ， N,N-diethyl-m-toluamide ， indomethacin ， theophylline ， amoxicillin ， griseofulvin ， caffeine の 8物質が検出された．

2008 年調査と 2009 年調査の比較（ 14ヶ所すべての地点で検出された 8物質について）

医薬品 2008 年 2 月 13 日調査 2009 年 3 月 12 日調査

clarithromycin 21 - 37 4.6 - 66 crotamiton ND - 146 1.6 - 160

N,N-diethyl-m- toluamide ND - 6.4 0.2 - 3.8

indomethacin ND - 6.7 0.4 - 30 theophylline 0.7 - 24 0.3 - 14 amoxicillin 24 - 480 1.5 - 13 griseofulvin 0.7 - 24 0.2 - 1.4

caffeine 36 - 450 9.5 - 540

各試料の clarithromycin 濃度 各試料の clarithromycin 負荷量

clarithromycin 平均濃度（計算値）と湖沼内濃度

医薬品 平均値 A 橋 B 橋 C 橋

clarithromycin 18 13 10 9.5

crotamiton 13 13 9.1 7.5

N,N-diethyl-m- toluamide

1.2 2.7 3.5 3.8

indomethacin 4.6 0.9 0.6 0.4

theophylline 2.5 6.5 3.5 2.7

amoxicillin 3.5 13 3.4 2.4

griseofulvin 0.6 1.2 0.9 0.8

caffeine 110 110 43 41

負荷量から求めた平均濃度と湖沼内濃度（ ng/L)

N,N-diethyl-m-toluamide ， theophylline ， amoxicillin の 3物質は，負荷量から求めた平均濃度に比べ湖沼内の濃度が高い傾向を示しており，本調査による流入河川以外にも負荷源が存在する可能性が示唆された．

まとめと課題

　湖沼流入河川の医薬品負荷量から算出した流入河川の平均濃度と湖沼内の医薬品濃度を比較したところ， N,N-diethyl-m-toluamide ， theophylline ， amoxicillin の 3物質は，負荷量から求めた平均濃度に比べ湖沼内の濃度が高い傾向を示しており本調査による流入河川以外にも負荷源が存在する可能性が示唆された．

↓　

　他の負荷源の確認、雨天時の流入負荷量等についての検討が必要と考える

物質選定

生物影響

薬剤耐性菌

挙動把握

分析方法

環境影響評価

対策技術

実態把握

水環境における医薬品に

関する研究課題　　

　調査・研究対象物質の選定　分析方法　実態把握（河川・湖沼・下水道）　挙動把握（河川・湖沼・下水道）　生物影響（急性毒性・慢性毒性）　薬剤耐性菌　　　　　↓　環境影響評価　対策技術（除去技術）

　今後は、関係者間での情報交換・意見交換等、更なる連携が重要である