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http://www.***.net 情報社会とデジタルゲーム -フィンランド・タンペレ大学における 「位置情報ゲーム」研究の取り組み マルチメディア振興センター 七邊 信重

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http://www.***.net

情報社会とデジタルゲーム -フィンランド・タンペレ大学における「位置情報ゲーム」研究の取り組み

マルチメディア振興センター

七邊 信重

自己紹介

七邊信重(ひちべのぶしげ)

専門

メディア(ゲーム、アニメ等)

情報社会

著作

『デジタルゲームの教科書』

『妖怪ウォッチが10倍楽しくなる本――妖怪ウォッチのゲーム・アニメ学』

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本日の発表内容

発表の背景・目的・意義

タンペレ大学ゲーム研究ラボ

「BotFighters」(2001)

「The Songs of North」(2003-2004)

「LARP」(2004-2008)

「ルディフィケーション」と「ポケモンGO」「プレイフルデザイン」

今後の課題

日本での調査研究計画

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発表の背景

2016年7月、「ポケモンGO」配信開始

「位置情報ゲーム(Location-based Game,

LBG)」への世界的注目

物理的世界における人の移動を促すゲーム

日本) LBGの経済的価値への関心

フィンランド

2000年代初頭から、 LBGのように、物理的世界とデジタル世界を結びつけて遊ぶゲームのデザインや、それらと社会・文化・芸術・経済との関係の研究が蓄積

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発表の目的と意義

目的

LBG やハイブリッド・リアリティ・ゲーム(HRG)と呼ばれるゲームの研究を主導してきたタンペレ大学ゲーム研究ラボ(Game Research Lab)の取組みと成果を解説

HRG: 物理的世界とゲーム世界を結合させたゲーム。LARPなど。ビデオゲームに限定されない

意義

物理的世界を舞台とするLBGやHRGの社会的・文化的・経済的可能性と課題に関する海外の研究に関する情報を提供

後続の研究に貢献 5

タンペレ大学ゲーム研究ラボ

ゲーム、遊び、関連現象を学際的に研究・教育する組織

2002年、タンペレ大学にハイパーメディアに関する学部の学科が設置された際に同時に設立

代表者: フランス・マウラ(Frans Mäyrä)

1990年代初めから、情報社会やデジタル文化、ハイパーメディアを研究

DiGRAの初代会長(2003~2006年)

2016年9月16日にタンペレ大学でマウラ教授

に実施したインタビューに基づき、ラボの取組みの歴史を紹介 6

タンペレ大学

7

Prof. Frans Mäyrä

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「BotFighters」(2001)

BotFighters (LBG)

スウェーデン企業(It’s Alive)が制作、フィンランドでもリリース

プレイヤーが戦闘ロボットになり、現実世界で近接する他プレイヤー(ロボット)と戦闘

SMSによってコマンドをサーバに送り、また別のSMSを受け取る

プレイヤーの位置測定のため、GSM(2G)ネットワーク上の基地局IDを利用

同ゲームを使った実験を実施

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「Botfighters」 (2001)

10 出典: http://iasl.uni-muenchen.de/links/NAPGe.html

「The Songs of North」(2003-2004)

The Songs of North (2003-2004)

ゲーム研究ラボが開発したLBG。

Tekes、ノキア、テリアソネラが資金提供

プレイヤーは精霊世界と交流できる魔術師になり、都市(タンペレ)を携帯電話を持って歩きながら、アイテム等を集め、他のプレイヤーと争う

11 出典: Mäyrä and Lankoski (2009)

「The Songs of North」(LBG)

ゲーム研究ラボの貢献

LBGの多様なデザインを研究

デザインの指針、将来のLBGへの助言を作成

プレイヤーに端末をポケットに入れるように求める

歩いている時に端末から音が出るようにする

「事故に巻き込まれる恐れがあるので、歩行中にプレイヤーが端末を見ないようにゲームをデザインしてください」など。

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LARP(2004-2008)

IPerG: Integrated Project on Pervasive

Gaming (2004-2008)

LBG、LARPなど、非常に多くのゲームを研究

LAPR(Live Action Role Play Game)

若者のコミュニティが制作した、非商業的で、芸術的なゲーム

SFやファンタジー、中世史、政治(国際危機や難民)

難民や兵士などの役割を演じることを通して、故郷を離れた人の苦難や言語がわからない状況、国境管理、警察の対応などを学ぶ

Pervasive GameやLARPの研究は続いており、博士論文や著作が成果として蓄積 13

LARP (2004-2008)

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「ルディフィケーション」と「ポケモンGO」

Ludification of Culture and Society (2014-

2018)

ゲーミフィケーション: 単にゲームの要素を取り出し、役に立つ目的のために社会に適用

ルディフィケーション: 社会や文化を「より楽しいものに変える」ことを議論

「ポケモンGO」

「ルディフィケーション」の根拠の一つ

文化が楽しさや公共的な遊びに寛容になった

「Shadow Cities」(2010)→「ポケモンGO」(2016)

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「ルディフィケーション」と「プレイフルデザイン」

仕事をより創造的にする方法の研究

ロボット等が退屈な仕事を行うので、人間の仕事が生き残るためには創造的でなければならない

職場環境に遊びを導入し、創造性を高める

遊んでいる時、心はよりリラックスし、多様な思考方法を思いつく

楽しさは情報交換を促進し、人びとをより互いにオープンにする

遊びにおける民主的な関係は、新製品やイノベーションを支援

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「ルディフィケーション」と「プレイフルデザイン」

OASIS

ゲーム研究ラボの遊び部屋

学生やスタッフがリラックスしたり議論できる環境

椅子、机、ボールが入ったバスタブの他、ゲームやコミック、おもちゃなど

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OASIS

出典: https://twitter.com/soralapio/status/639756144710393856 18

今後の課題

マウラ教授やヤッコ・スオミネン教授(トゥルク大学)のグループの研究

フィンランドの「ポケモンGO」プレイヤー約2,500

名の意識や行動に関する調査研究開始

日本でもLBGの活用可能性や課題に関する研究をマウラ教授らと実施

FMMC「ゲーム・アニメ産業におけるイノベーションと地域活性化に関する調査研究」

FOST「位置情報ゲームの外出行動に与える影響に関する研究」(代表:小山友介(芝浦工大))

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参考文献 [1] The University of Tampere Game Research Lab <

http://gameresearchlab.uta.fi/>(2017年1月31日アクセス)

[2] Sotamaa, Olli. (2009). BotFighters. Montola, Markus, Stenros, Jaakko,

Waern Annika. (ED.), Pervasive Games: Theory and Design. Morgan

Kaufmann Publishers, pp.73-75.

[3] Mäyrä, Frans, Lankoski, Petri. (2009). Play in Hybrid Reality: Alternative

approaches to Game Design. Silva, Adriana de Souza, Sutko, Daniel M..

(ED.), Digital Cityscapes: Merging Digital and Urban Playspaces. Peter

Lang, pp.129-147.

[4] Montola, Markus, Stenros, Jaakko, Waern Annika. (ED.)(2009).

Pervasive Games: Theory and Design. Morgan Kaufmann Publishers.

[5] OASIS < http://oasis.uta.fi/>(2017年1月31日アクセス)

[6] Mobile Meda & Communication Vol.5, Issue 1. Special section:

Pokémon GO: Playful phoneurs and the politics of digital wayfarers. <

http://journals.sagepub.com/toc/mmca/5/1>(2017年1月31日アクセス)

[7] Castells, Manuel, Himanen, Pekka (2002). The Information Society and

the Welfare State: The Finnish Model. Oxford University Press.

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謝辞

本研究は、一般財団法人マルチメディア振興センター(FMMC)の研究プロジェクト『ゲー

ム・アニメ産業におけるイノベーションと地域活性化に関する調査研究』の一部です。

マウラ先生へのインタビューにあたり、天野圭二先生(星城大学)、ヤッコ・スオミネン先生(トゥルク大学)、藍澤志津様(FMMC)に

様々なご支援を賜りました。記して感謝いたします。

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ご静聴、ありがとうございました。

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七邊信重(Hichibe, Nobushige)

[email protected]

twitter: yakumo415, chimarisan