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―  ― 59 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年) 本研究は,乳幼児期から青年期後期の各子育て期における親としての発達意識を検討することを 目的とした。第一子が 0 ~ 21 歳までの父母ペア 446 組を対象にオンライン調査を実施した。親発達 意識として「関係性意識」「人格意識」「リソースの制約感」「寂寥感・後悔」の 4 側面に着目し,第一 子年齢群(子育て期)と親性別(父親・母親)により平均値の差を確認したところ,子育て期にかかわ らず,母親は父親よりも人格の変化を大きく意識していた。また,子どもが成長することへの寂寥感・ 後悔においても,母親は父親より高かった。リソースの制約感は,年齢と親性別の交互作用,性別 の主効果,年齢の主効果がいずれも有意であり,乳幼児期,児童期の父親は青年期の父親よりも,児 童期の父親は思春期の父親よりも有意に高く,乳幼児期,児童期,青年期の母親は父親よりも有意 に高かった。今後は,親発達意識のパートナー間における相互影響の検討が課題である。 キーワード:親発達 , 父親,母親 , 子育て期 問題と目的 親が親として発達していく過程は,成人期発達の重要な一側面と考えられている。それは穏やか で楽しいばかりではなく,子育てのイライラ,ストレスなど,必ずしも思うとおりにならない体験 を含んでいる。しかしそうした思うとおりにならない困難な体験自体が,親としての成長につなが る契機となりうることが指摘されてきた。例えば坂上(2003)では,子どもの反抗や自己主張に直面 する母親が,試行錯誤の調整行動を経て適応していく姿が示され,菅野(2001)では,母親が子ども に対してもつ否定的感情を手がかりに自らの関わり方を振り返り方向づけられていく姿(菅野, 2001)が示されている。 柏木・若松(1994)は,親の人格的発達を「柔軟性」「自己抑制」「運命・信仰・伝統の受容」「視野の 広がり」「生きがい・存在感」「自己の強さ」の 5 側面から示し,子育てに主体的にかかわることが人 格発達を促す可能性を指摘した。同時に,母親と父親双方を対象とする研究手法も,親発達研究の 乳幼児期から青年期後期の子育て期における 親としての発達意識 加 藤 道 代 *   神 谷 哲 司 **  黒 澤   泰 *** 教育学研究科 教授 ** 教育学研究科 准教授 *** 茨城キリスト教大学生活科学部 助教

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年)

 本研究は,乳幼児期から青年期後期の各子育て期における親としての発達意識を検討することを

目的とした。第一子が0 ~ 21歳までの父母ペア446組を対象にオンライン調査を実施した。親発達

意識として「関係性意識」「人格意識」「リソースの制約感」「寂寥感・後悔」の4側面に着目し,第一

子年齢群(子育て期)と親性別(父親・母親)により平均値の差を確認したところ,子育て期にかかわ

らず,母親は父親よりも人格の変化を大きく意識していた。また,子どもが成長することへの寂寥感・

後悔においても,母親は父親より高かった。リソースの制約感は,年齢と親性別の交互作用,性別

の主効果,年齢の主効果がいずれも有意であり,乳幼児期,児童期の父親は青年期の父親よりも,児

童期の父親は思春期の父親よりも有意に高く,乳幼児期,児童期,青年期の母親は父親よりも有意

に高かった。今後は,親発達意識のパートナー間における相互影響の検討が課題である。

キーワード:親発達 , 父親,母親 , 子育て期

問題と目的 親が親として発達していく過程は,成人期発達の重要な一側面と考えられている。それは穏やか

で楽しいばかりではなく,子育てのイライラ,ストレスなど,必ずしも思うとおりにならない体験

を含んでいる。しかしそうした思うとおりにならない困難な体験自体が,親としての成長につなが

る契機となりうることが指摘されてきた。例えば坂上(2003)では,子どもの反抗や自己主張に直面

する母親が,試行錯誤の調整行動を経て適応していく姿が示され,菅野(2001)では,母親が子ども

に対してもつ否定的感情を手がかりに自らの関わり方を振り返り方向づけられていく姿(菅野,

2001)が示されている。

 柏木・若松(1994)は,親の人格的発達を「柔軟性」「自己抑制」「運命・信仰・伝統の受容」「視野の

広がり」「生きがい・存在感」「自己の強さ」の5側面から示し,子育てに主体的にかかわることが人

格発達を促す可能性を指摘した。同時に,母親と父親双方を対象とする研究手法も,親発達研究の

乳幼児期から青年期後期の子育て期における

親としての発達意識

加 藤 道 代*  

神 谷 哲 司** 

黒 澤   泰***

  *教育学研究科 教授 **教育学研究科 准教授***茨城キリスト教大学生活科学部 助教

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乳幼児期から青年期後期の子育て期における親としての発達意識

先導の役割を担っている。以後,柏木・若松(1994)による尺度がそのままあるいは一部使用された

研究(岡本,2001;目良,2001;井上・湯澤,2002;西野・小室・須田・中村・佐藤,2006;高橋・高橋,

2009)など)が相次いでいる。

 一方,父親に焦点をあてた森下(2006)は,配偶者や子どもからの影響を受けて発達する父親の姿

を描いた。「家族への愛情」「責任感や冷静さ」「子どもを通しての視野の広がり」「過去と未来への

展望」「自由の喪失」の5側面を抽出し,父親による子どもへの直接の関わりは「家族への愛情」「過

去と未来への展望」に関連することを示している。さらに,配偶者への愛情は,子育てを通じて家族

への愛情へと深まり,同時に自分自身の生活基盤の確立につながるのではないかと考察している。

 これらを受けて高橋・高橋(2009)は,森下(2006)と柏木・若松(1994)の両尺度にオリジナル項目

を加え,幼稚園児をもつ父親と母親を対象に調査を行った。その結果,幼児をもつ親の発達として,

子どもや配偶者との相互作用的発達と自身の人格発達の6側面を得るとともに,森下(2006)の重視

した家族との相互作用の側面が,父親だけでなく母親の発達をとらえる視点として有効であること

を示した。

 これら先行研究が代表するように,親発達は,主として妊娠後期から乳幼児の子育て期の親を対

象として検討されてきた。それは,親への移行の最初期を重視する目的からだけでなく,「幅広い

年齢の子どもの親についての研究では,結果の意味が曖昧(柏木・若松,1994)」になるという解釈上

の課題への対応として適切と思われる。しかし一方で,未就学児の家庭が対象とされていても,第

一子年齢(親になってからの年数)は統制されていないことが多く,対象者の “ 親歴 ” という面には

幅広いばらつきがあった。結果的に,使用される項目や因子のまとまりは調査ごとにまちまちであ

り,統一された項目として整理しにくい。このため,親の養育行動は子どもの発達変化に伴い変化

すると示唆されながらも(末盛,2007;落合・佐藤,1996),成人発達の広い期間を背景とした親子の

関係性に言及する知見は蓄積しにくく,親となって子どもを育てるということの成人発達上の全体

像は依然としてわかりにくいままである。従って親発達の理解のためには,特定の時期に焦点をあ

てるアプローチと,広汎な期間を概観するアプローチが,それぞれの限界を踏まえながらも相補的

に活用されていく必要があるだろう。

 そこで本研究は,先行研究の成果(柏木・若松,1994;森下,2006,2012;高橋・高橋,2009)を踏ま

えて尺度項目選定を行い,第一子年齢(親歴)をあらかじめ統制し,各子育て期の対象者(父母ペア)

を設定することで,むしろ幅広い年齢の子育てをバランスよく含みこむことから見えてくる親とし

ての発達意識の全体像を確認したいと考えた。従って本研究が目指すのは,親の発達変化の客観的

な評価や連続的な変化の記述ではなく,各子育て期の親が親になったことによる自身の変化に対す

る主観的評価について,長期的な子育て期間を視野にいれながら概観することである。

 次に,親となったことによるネガティブな変化のとらえかたについて,若干の整理をしておきた

い。まず,乳幼児期の親の負担感を中心にとりあげた「制約感」に着目した研究では,親としてのス

キルや自信,喜びのような面に負の影響を与えていることが知られている(柏木・若松,1994;小野

寺・青木・小山,1998;佐々木,2009)。これに対して徳田(2004)では,乳幼児の母親にも,子育て経

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年)

験の中で自らに見合った意味づけを模索し獲得していく意味づけのプロセスがあること,そこには

ネガティブなものを受け入れていく方略としての意味づけがみられることを指摘している。これは

子育てにおけるネガティブな体験が,むしろ親としての発達の契機となりうるとした,冒頭の坂上

(2003)や菅野(2001)にも通ずる視点と言える。さらにもうひとつの視点として,森下(2006)が父親

発達の一側面として見出した「自由の喪失」があげられる。自由を喪失すること自体はネガティブ

な変化に思えるが,森下(2006)は,「自由気ままな生活から子ども中心の生活へという生活構造の

移行に伴って自由がなくなることは,家族への愛情の深まりや家庭における安らぎを感じたりする

ようになることと同様に,親になる過程において必然的な変化」と述べ,自由に対する喪失感を父親

としての発達に位置づけた。

 これらのネガティブ面について考えるためには,Hobfall(1989)の述べるリソースとストレス状

況の関係が参考になる。人は持ちうる時間やエネルギー,お金など様々なリソース(資源)の喪失や

制約に対して,他の潜在的なリソースの動員や補充,新たなリソースの獲得によって対処するが,

それがうまくいかないと負担感や不全感を伴うストレス状況に陥る(Hobfall,1989)。すなわちリ

ソースの喪失や制約は,必ずしもそのまま不全感に繋がるわけではなく,新しいリソースの活用と

いうポジティブな変化の可能性をもつ。従って,この点から整理すると,負担感は新しいリソース

が活用されない状況に生じる感情であり,ネガティブなものの受け入れは意味づけ方略という新た

なリソースの活用された状況に生じたものと考えられる。これに対して,子育てによって「~でき

なくなる」というリソースの制約面(森下,2006)は,先述のように親になる過程における必然的な

変化である。そこで本研究は,いずれのプロセスにおいても前提ともなる必然的な変化であるリソー

スの制約面を,ネガティブな変化意識としてとりあげることにした。

 加えて本研究では,もうひとつのネガティブな側面として,子どもが育っていくことに伴う寂し

さや後悔の面にも着目する。子どもが育っていくことに伴う寂しさや後悔の念は,親になる前には

存在せず,親になった後に子どもとの関係の中で認識されるため,これまで述べてきた他の親発達

意識の側面とはやや性質が異なると言えるかもしれない。しかし,本研究がとりあげる親としての

発達変化の意識は,各子育て期の親が,その時点で,親としての自分をどのように感じているかを

映しだそうというものであり,必ずしも連続的な変化をとらえようとするものではない。また,子

育ての寂しさや後悔は,子どもの自立との関係において知見が散見されていることから,子育ての

プロセスの中で生起する変化の認識として重要な側面であると考え,今回,特に取り上げることと

した。

 先行研究に目を向けると,子どもの自立を喜ぶ気持ちは多くの母親に共通しているが,寂しさと

葛藤には個人差があること(長崎,2004;上西,2000),「子どもが手を離れる」ことは,充実感の増

加と減少の双方に関係していること(上西,2001),中年期母親の語りには,“ 子に良かれという思い ”

でありながら自分本位に子どもを誘導してしまった失敗体験や,子どもが離れていくことに対する

寂しさがみられること(大島,2013)などが報告されている。また加藤(2010)は,中高年女性の社会

的活動の背景に存在する子育てから離れる寂しさについて,次のような語りを引用している。それ

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乳幼児期から青年期後期の子育て期における親としての発達意識

は,「子どもが生れてから,あれだけずっと自分の時間が欲しいという風に思ってきて…(中略)…

自分の時間ばっかりになった瞬間から,ものすごい寂しいわけですよ」という言葉であった。この

語りには,先にとりあげたような,親になって「~できなくなる」という喪失変化が併せ持つ,「~

できなかったのに,~できるようになる」というもうひとつの喪失変化の側面が表れている。それ

はまた,上西(2001)が「子どもが手を離れる」ことに充実感の増加と減少の両面の混在を認めたの

と同様の論点であり,親としての発達プロセスが,単純に一方向の変化や一元的な喪失や獲得では

説明できないことを示唆するものと考えられた。ただしこれらは,いずれも自立期の子どもをもつ

中高年女性の心性としてとりあげられたものであり,より年少の子育てや父親に関しては明らかに

されていない。そこで本研究では,子育てにおける寂しさや後悔の面についても親発達意識として

とりあげ,より幅広く子育て全体の中で検討したいと考えた。

 以上を総合して,本研究は,具体的に以下のことを検討する。人格面や家族との相互作用面にみ

られるポジティブな変化意識および子育てによるリソースの制約感や子育てに伴う寂しさ・後悔を

中心としたネガティブな変化意識を含む親発達意識について,第一子年齢を統制し,乳幼児期から

青年期にわたる子育て期の父母ペアを対象として確認する。また,横断的ではあるが,第一子年齢

群による差異についても検討を行い,親としての発達変化に関する主観的評価について,子どもの

発達段階も視野にいれて明らかにしたい。

方法親発達意識尺度原案作成の手続き

 柏木・若松(1994),森下(2006,2012),高橋・高橋(2009)の4研究で使用された尺度項目を参照し,

複数研究にまたがる共通項目を中心に項目を選定した。それら項目を含む主だった因子名を参考に,

下の6つの側面に着目して項目を整理した。①「家族」…森下(2006,2012)の共通項目7項目のうち,

家族のことであることが明確でかつ因子負荷量が大きい方から5項目,②「人格」…森下(2006,

2012)の共通項目9項目のうち,因子負荷量の大きい方から5項目,③「柔軟さ」…高橋・高橋(2009)

の柔軟さ項目で因子負荷量の高い方から5項目(うち4項目は,柏木・若松(1994)の柔軟さ項目と重

複),④「過去未来」…森下(2006,2012),高橋・高橋(2009)の共通項目を中心とした5項目,⑤「子

どもへの関心」…森下(2006,2012)の共通項目であった全3項目(うち1項目は柏木・若松(1994)と

重複)にオリジナル2項目を加えた5項目,⑥「自由の喪失」…森下(2006)の全3項目にオリジナル2

項目を加えた5項目とした。オリジナル2項目は,母親面接により育児体験による喪失を示した徳

田(2002)を参考にして作成した。

 教示は,先行研究をもとに「親になったことで,あなたはこれまでにどのように変化したと感じ

ていらっしゃいますか。これまでのお子様とのかかわりや子育て生活をふりかえり,以下の項目に

ついて,今現在のあなたご自身にあてはまるものをお選びください」とし,「1. 全くあてはまらない」

~「5. たいへんあてはまる」の5件法で回答を求めた。なお,本調査は後述するようにインターネッ

ト調査で実施されたため,これらの30項目は,提示順序による回答への影響を低減するために,回

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年)

答者ごとにランダムに提示された。

 以上の項目群とは別に,寂寥感・後悔の側面として,中高年女性による子育ての振り返り(加藤,

2010)にみられた「子どもの成長と淋しさ」「自分の子育てへの心残り」を参考に,オリジナル6項目

を設定した。寂寥感・後悔に関する項目は,子どもの誕生以前との比較を含まず,子どもの成長に

伴う認識のため,教示文は「あなたは,今現在,以下の項目について,どのように感じていらっしゃ

いますか」とし,回答者ごとにランダムに提示し,「1. 全くあてはまらない」~「5. たいへんあては

まる」の5件法で回答を求めた。

調査方法と調査対象者

 調査会社 U'eyes Design のデータベースに登録されたモニター(2012年時点で全国45万人登録)

を対象に,インターネット調査を行った。対象者は,子ども年齢と親の性別の偏りを防ぐために,

第一子年齢4群(0~5歳,6~11歳,12~17歳,18~21歳)×性別2群(父親,母親)について均等割り

付けを行った。6月中旬から下旬にデータを収集し脚注1,得られた父親母親446組のペア回答を分析

の対象とした脚注2。分析には IBM SPSS Statistics 20を用い,分散分析の効果量の算出には井関

(2015)を参考にした。

倫理的配慮

 実施にあたり第一筆者の所属組織の研究倫理審査委員会による審査と承認を得た(承認 ID14-1-

003)。調査は無記名方式であり,回答の中断が可能であった。インターネット調査は , パスワード

管理をされ , アクセスと入力はひとり1回に制限され,回答のコピーや印刷ができないように設定

された。従って,回収調査票は生じず,研究者は個人を特定できないため,調査の匿名性は担保さ

れている。

結果 先述のように,本研究が検討する親発達意識は,子どもの誕生でこれまでにどのような変化を感

Table 1 回答者の属性 (446組)

母  親 父  親

年齢 22~55歳(M=41.42,SD=5.72) 22~59歳(M=43.17,SD=6.01)

職業公務員14(3.1%),会社員116(26.0%),自由業13

(2.9%),自営業10(2.2%),専業主婦243(54.5%),その他50(11.2%)

公務員48(10.8%),会社員345(77.4%),自由業12(2.7%),自営業26(5.8%),専業主夫4(0.9%),その他11(2.5%)

就業形態 フルタイム94(21.1%),パートタイム132(29.6%),フリーランス12(2.7%),無職208(46.6%)

フルタイム416(93.3%),パートタイム5(1.1%),フリーランス13(2.9%),無職12(2.7%)

子ども数 1人164(36.8%),2人219(49.1%),3人55(12.3%),4人7(1.6%),5人1(0.2%)

結婚歴 1~28年(M=13.77,SD=6.35)

家族形態 核家族381(85.4%),多世代同居家族65(14.6%)

夫婦居住形態 同居427(95.7%),別居 / 単身赴19(4.3%)

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乳幼児期から青年期後期の子育て期における親としての発達意識

じているかという「親になったことによる変化の意識(家族,人格等)」と,子どもの誕生以前との比

較は含まない「子どもの成長に伴って感じられる寂寥感・後悔」について,異なる教示を用いて別々

に測定した。従って分析にあたっても,これらは別々に因子分析を行った。以下に結果を示す。

親になったことによる変化の意識

 まず,親発達意識の30項目について,父母それぞれ,天井効果,床効果を平均値±1SD を基準に

確認したところ,父親回答の「3家族への責任感が増した。」において,M=4.04(SD=0.99)が基準を

超えていたが,分散もそれほど小さくはなかったため,父母ともに30項目を因子分析に用いること

とした。

 まず,母親の親発達意識30項目について,最尤法による因子分析を行ったところ,固有値の減衰は,

13.87,2.15,1.76,0.99…であり,スクリー基準によって3因子が適切であると考えられた。そこで,

3因子に指定して,最尤法による因子分析を行い,プロマックス回転を施したところ,因子負荷量 .40

を基準とした場合,「20他者に対して思いやりをもつようになった」が第1因子と第2因子に二重負

荷を示し,「8 時間を大切にするようになった」でいずれの因子にも負荷量が基準に満たなかった。

そこで,この2項目を削除し,28項目で同様の因子分析を行ったところ単純因子構造が得られた。

 次に父親の親発達意識30項目について,同じく最尤法による因子分析を行ったところ,固有値の

減衰は,13.21,2.17,2.02,1.21,0.88…であり,スクリー基準により3因子が適切であると考えられた。

そこで,3因子に指定して,最尤法による因子分析を行い,プロマックス回転を施したところ,因子

負荷量 .40を基準とした場合,二重負荷を示す項目はなかったものの,「6自分の子ども以外の子ど

もに関心を向けるようになった」,「10自分の親への感謝の気持ちが増した」,「12子どもの目線で

も考えてみるようになった」,「21自分が子どもの頃を思い出すようになった」,「26自分の親が自

分をどのように育ててくれたのか考えるようになった」の5項目がいずれに因子にも負荷量が基準

に満たなかったため,この5項目を削除し,再度同様の因子分析を行った結果,さらに,「11子ども

好きになった」がいずれの因子にも負荷量を示さなかったため,これを削除し,改めて因子分析を

行ったところ単純因子構造が得られた。父母それぞれの因子分析結果を Table2に示す。

 母親の第1因子は,「19家族のことを考えるようになった」,「2子どもを持つ親の気持ちが分かる

ようになった。」など,子どもが生まれたことによる子どもや家族に対する意識の変化を示している

他,自分の家族だけではない他の子どもや,自分自身が子どもであった時の実親との関係なども包

含しており,広く子育てにまつわる他者との関係性を示しているため「関係性意識」と命名された。

第2因子は,「22角がとれて丸くなった」や「25突発的に異変が生じてもあまり動じなくなった」など,

親になって以降の自分自身のパーソナリティに関する変化の認識であり,「人格意識」と命名された。

第3因子は,「27時間的余裕がなくなった」,「28行動範囲が狭まった」など,子育てに伴う制約や制

限に関する認識であり,「リソースの制約感」と命名された。

 父親においても,第1,2因子については該当する項目の数に若干の異同はあるものの,第1因子

が「人格意識」,第2因子が「関係性意識」,第3因子が「リソースの制約感」と命名された。父母にお

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年)

Table2 親になったことによる変化の因子分析結果(最尤法・プロマックス回転,446組の親)

母親 父親項  目 M(SD) F1 F2 F3 M(SD) F1 F2 F3

関係性意識 3.89(0.72) (α=.95) 3.84(0.74) (α=.93)

19 家族のことを考えるようになった 4.05(0.89) .89 -.10 .01 3.99(0.91) -.07 .86 .04

13 家族への愛情が深まった 4.02(.0.89) .88 -.08 -.03 3.96(0.92) -.11 .99 -.04

2 子どもを持つ親の気持ちが分かるようになった 4.09(0.90) .84 -.12 .08 3.91(0.90) .17 .55 .17

6 自分の子ども以外の子どもに関心を向けるようになった 3.80(0.97) .78 -.03 .01 3.52(0.97)

23 親子連れに関心を向けるようになった 3.79(0.95) .77 .00 .04 3.6(0.93) .21 .41 .12

3 家族への責任感が増した 4.00(0.89) .75 -.03 .12 4.04(0.99) -.04 .85 -.02

18 家族で安らぎを感じるようになった 3.81(0.96) .74 .10 -.10 3.83(0.95) .04 .89 -.16

10 自分の親への感謝の気持ちが増した 3.95(0.97) .73 .03 -.07 3.73(1.00)

7 子どもに関する社会の動きに関心を向けるようになった 3.91(0.91) .73 .00 .05 3.71(0.88) .21 .48 .12

16 家族の中で幸せだと感じるようになった 3.95(0.93) .72 .12 -.06 3.90(0.91) -.01 .92 -.09

26 自分の親が自分をどのように育ててくれたのか 考えるようになった 3.84(0.98) .71 .04 -.04 3.65(0.95)

1 自分と親の関わりを思い出し, 将来の自分と子どもとの関わりを想像するようになった 3.84(0.93) .71 .10 -.01 3.67(0.92) .24 .41 .17

11 子ども好きになった 3.80(0.98) .60 .17 -.04 3.59(0.96)

12 子どもの目線でも考えてみるようになった 3.81(0.91) .60 .22 .02 3.56(0.87)

21 自分が子どもの頃を思い出すようになった 3.72(0.95) .58 .10 -.02 3.60(0.95)

人格意識 3.53(0.68) (α=.88) 3.40(0.66) (α=.92)

22 角がとれて丸くなった 3.29(0.93) -.15 .87 -.05 3.34(0.91) .80 -.14 .03

30 寛大になった 3.43(0.91) .02 .77 -.02 3.36(0.87) .85 -.04 -.06

4 考え方が柔軟になった 3.51(0.87) .16 .68 -.08 4.04(0.99) .81 -.02 .00

25 突発的に異変が生じてもあまり動じなくなった 3.52(0.93) -.04 .58 .17 3.30(0.83) .69 .03 -.04

15 我慢強くなった 3.65(0.99) .19 .53 .11 3.43(0.91) .79 -.08 .02

9 物事の結果だけでなく,その過程も見るようになった 3.64(0.87) .31 .47 .01 3.50(0.86) .60 .14 .08

14 精神的にタフになった 3.71(0.94) .12 .47 .20 .337(0.86) .78 .02 -.14

29 思慮深くなった 3.49(0.88) .24 .47 .05 3.39(0.85) .69 .05 .01

20 他者に対して思いやりをもつようになった 3.65(0.88) 3.43(0.82) .70 .18 -.09

8 時間を大切にするようになった 3.70(0.90) 3.48(0.91) .44 .20 .15

リソースの制約感 3.71(0.82) (α=.82) 3.44(0.77) (α=.78)

27 時間的余裕がなくなった 3.87(1.02) .14 -.20 .83 3.54(1.02) -.03 .01 .80

24 自分の思うとおりに時間を使うことができなくなった 3.91(1.02) .13 -.08 .80 3.58(1.04) -.07 .08 .75

5 趣味に打ち込む余裕がなくなった 3.63(1.11) -.06 .07 .72 3.34(1.08) .14 -.12 .65

28 行動範囲が狭まった 3.47(1.13) -.21 .24 .57 3.17(1.07) -.04 -.15 .64

17 経済的な余裕がなくなった 3.68(1.12) -.05 .14 .50 3.60(1.08) -.13 .14 .45

因子間相関 F1 .65 .62 .66 .54

F2 .39 .48

※項目番号は便宜的なものであり,実際の調査においてはモニタ画面にランダムな順序で表示された

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―  ―66

乳幼児期から青年期後期の子育て期における親としての発達意識

ける項目の違いをみると,母親の関係性意識は15項目で構成されているのに対し,父親では9項目

であり,自分の家族にむけられた関心,愛情,責任感などの変化と,家族の営みの中で感じる安らぎ

や幸せを表す関係性意識が中心であった。人格意識については,父親では10項目で構成されている

のに対し,母親は8項目であった。また,「リソースの制約感」については,父母ともに同じ5項目で

あった。

 それぞれの因子に該当する項目の平均点を算出し,親発達意識の下位尺度として扱うため,各尺

度の Cronbach のαを求めた。父親のリソースの制約感がα=.78と若干低めであったが,それ以外

の尺度は,α=.82~.95と十分な値であったため,項目の平均値を各下位尺度得点とした。因子間相

関をみると,父母のいずれにおいても,「関係性意識」「人格意識」および「リソースの制約感」との

間に中程度からやや強い正の相関がみられた。

子どもの成長に伴う認識(寂寥感・後悔)の因子分析

 母親の寂寥感・後悔6項目について,最尤法による因子分析を行ったところ,固有値の減衰は3.64,

1.10,0.37…であり,ガットマン規準では2因子と考えられたが,初期固有値の寄与率は1因子で全

体の60%を超えていること,試行的に2因子でプロマックス回転を施したところ,3項目ずつ(項目

場号1,5,6の「寂しさ」と,項目番号2,3,4の「後悔」因子)に分かれ,項目数がそれほど多くない

こと,因子間相関が .59であったことから,1因子として扱うこととした。父親の親発達意識項目(産

後)についても,最尤法による因子分析では,固有値の減衰が3.66,1.15,0.43…であったが,母親と

同様に1因子で61.1% の寄与率(初期固有値)を示していること,因子間相関 .57であったことから,

6項目1因子として扱うこととした。母親,父親それぞれの因子分析結果(最尤法,1因子指定)を,

Table 3に示す。父母ともに6項目で,子どもが手を離れることに対する寂寥感・後悔の因子である

と命名した。Cronbach のαは父母いずれもα=.87と十分な値であったため,平均値を各下位尺度

得点とした。 Table 3 「寂寥感・後悔」の因子分析結果(最尤法,446組の親)

母親 父親項目 M(SD) F1 h2 M(SD) F1 h2

寂寥感・後悔 3.58(0.82)(α=.87) 3.22(0.80)(α=.87)1  子どもが大きくなっていくことに,なんとなく寂しさを感じる

ことがある 3.57(1.09) .75 .56 3.16(1.07) .75 .57

2  子どもに対してもっとああしてあげればよおかったと思うことがある 3.80(0.99) .74 .54 3.45(1.02) .68 .47

3  子どもに対してああしなければよかったと思うことがある 3.72(1.00) .73 .53 3.41(1.00) .74 .554  子どもに対してどうすればよかったか,今ならわかると思うこ

とがある 3.63(0.97) .71 .51 3.28(0.93) .66 .43

5  子どもがひとり立ちしていくのが寂しいと思うことがある 3.50(1.11) .76 .58 3.09(1.07) .80 .636  子どもが自分でやれることが増えていくのが寂しいと思うこと

がある 3.24(1.16) .69 .48 2.91(1.03) .74 .55

平方和 3.19 3.20寄与率 53.12 53.40

※項目番号は便宜的なものであり,実際の調査においてはモニタ画面にランダムな順序で表示された

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年)

第一子年齢ごとの親発達意識

 次に,親性別(父親・母親)と年齢4群を独立変数とし,親発達意識を従属変数とする2要因の分散

分析(混合計画)を父親と母親それぞれに行った。

 関係性意識は第一子年齢の主効果と年齢と親性別の交互作用が10%水準で有意傾向であった(順

に F(3,442)=2.34,p<.10,ηG2=.01;F(3,442)=2.50,p<.10,ηG

2=.00)。人格意識は性別の主効果の

み有意であり(F(1,442)=15.24,p<.001,ηG2=.01),母親の方が父親よりも高かった。リソースの

制約感は,性別の主効果,年齢の主効果,年齢と親性別の交互作用のいずれも有意であった(順に

F(1,442)=45.67,p<.001,ηG2=.03;F(3,442)=8.82,p<.001,ηG

2=.04;F(3,442)=2.99,p<.05,ηG2=.01)。

単純主効果検定の結果,第一子年齢における親の性別の単純主効果は父親においてのみ有意であり

(F(3,442)=12.59(p<.001,ηp2=.08),0~5歳>18~21歳,6~11歳>12~17歳,6~11歳>18~21歳の間

で有意な差が見られた。また,親の性別における年齢の単純主効果では,0~5歳(F(1,442)=6.07,

p<.05,ηp2=.01),12~17 歳(F(1,442)=20.16,p<.001,ηp

2=.04),18~21 歳(F(1,442)=26.56,

p<.001,ηp2=.06)において有意であり,いずれも父親よりも母親の方が高かった。寂寥感・後悔は

性別の主効果のみ有意であった(F(1,442)=81.52,p<.001,ηG2=.05)。

考察 「親は親になってどのように変化したと思っているのか」という親発達意識に関して,本研究は,

Table 4 親性別と第一子年齢による親発達意識の平均値と標準偏差(446組の親)

関係性意識 人格意識 リソースの制約感 寂寥感・後悔

親性別 子年齢 Mean(SD) Mean(SD) Mean(SD) Mean(SD)

母親 0-5歳(n=113) 3.97(0.74) 3.53(0.65) 3.81(0.79) 3.55(0.76)

6-11歳(n=110) 3.87(0.74) 3.50(0.75) 3.78(0.76) 3.56(0.88)

12-17歳(n=110) 3.86(0.71) 3.56(0.66) 3.72(0.77) 3.53(0.79)

18-21歳(n=113) 3.87(0.71) 3.53(0.65) 3.53(0.92) 3.67(0.85)

父親 0-5歳(n=113) 4.01(0.73) 3.49(0.68) 3.62(0.68) 3.19(0.77)

6-11歳(n=110) 3.88(0.66) 3.40(0.61) 3.67(0.74) 3.21(0.72)

12-17歳(n=110) 3.68(0.74) 3.35(0.69) 3.36(0.71) 3.17(0.83)

18-21歳(n=113) 3.79(0.78) 3.35(0.65) 3.13(0.83) 3.30(0.85)

F 値,pηG2 F 値,pηG

2 F 値,pηG2 F 値,pηG

2

主効果(親性別) df=(1,442) 2.45 n.s..00 15.24***.01 45.67***.03 81.52***.05

主効果(子年齢) df=(3,442) 052.34† .01 0.41 n.s..00 8.82***.04 0.91n.s..00

交互作用(性別*年齢) df=(3,442) 2.50† .00 1.27 n.s..00 2.99*.01 0.02 n.s..00

多重比較(Bonferroni) 親性別:母親>父親 (注) 親性別:

母親>父親† p<.10,*p<.05,**p<.01,***p<.001

注. 父親で0 ~ 5歳>18 ~ 21歳,6 ~ 11歳>12 ~ 17歳,6 ~ 11歳>18 ~ 21歳,また,0 ~ 5歳,12 ~ 17歳,18 ~21歳で母親>父親

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乳幼児期から青年期後期の子育て期における親としての発達意識

①乳児期から子どもの自立までの子育て期を視野に入れ,第一子年齢(親歴)を統制することにより,

言わばレンズを引いたことで見えてくる親発達意識の全体像を記した点,②親になることによる変

化のネガティブな面として,負担感や不適応感に表れる制約感ではなく,リソースの制約感および

子どもが成長することへの寂寥感・後悔にも注目した点,③父母ペアデータにより親発達意識にお

ける父母の差異を記した点に特徴がある。

父親と母親における親発達意識の様相

 父親と母親それぞれに行った因子分析の結果,ともに「関係性意識」「人格意識」「リソースの制約

感」からなる3因子を抽出した。岡本(2007)は,「個」としての自分と,自己と他者との「関係性」の

中で生じる自分の2軸によって,成人期のアイデンティティ発達をとらえることを試みている。本

研究が,広範囲な成人期を視野に入れた上で,その一側面としての親発達を見据えたことにより,

個人の人格面と他者との関係性の面が得られたことは,岡本(2007)の流れとも合致して興味深い。

 次に,父親と母親における下位尺度項目を確認すると,「リソースの制約感」「人格意識」において

は概ね一致した一方で,「関係性意識」では父親と母親の項目で相違がみられた。

 「関係性意識」において父親と母親に共通していたのは,「父―母―子」からなる自分の家族にむけ

られた関心,愛情,責任感などの意識の変化と,家族の営みの中で感じる安らぎや幸せを表す項目

群であった。これら共通項目に加えて,母親にはさらに6項目が含まれた。そのうち3項目(「自分

の親への感謝の気持ちが増した」「自分の親が自分をどのように育ててくれたのか考えるように

なった」「自分が子どもの頃を思い出すようになった」)が示しているのは,自分が親として子どもを

育てることを通じて,自分を育ててくれた実の親との状況や関係が想起されたり,そこに感謝の念

を抱くような認識である。また,残りの3項目は,「自分の子ども以外の子どもに関心を向けるよう

になった」「子ども好きになった」「子どもの目線でも考えてみるようになった」であり,母親の場合

は,自分の子ども以外の一般的な子どもへの関心や子どもというものの視線の獲得が,「関係性意識」

の構成要素に含まれたことになる。父親の「関係性意識」は,自分の家族に向けられた愛情の深まり

が中心であるのに対して,母親の「関係性意識」は,それらを土台に,自分が育ってきた原家族を含

む子育ての世代継承や,子ども一般への視線にも及んでおり,父親と母親の子育てにまつわるネッ

トワークの違いが反映した可能性を想定できるかもしれない。

 因子分析による結果は,あくまでも今回候補とした項目群におけるまとまりであるため,本結果

からだけでは積極的な解釈はできず,あくまでも想定の域を出ないが,この点については,先行研

究においても同様に示唆されているので参照しておく。例えば,子育て中の母親は,実母や実母に

替わる女性,あるいは子育て経験をもつ先輩女性などとの交流から,子育てのスキル,知識や知恵

を伝授され,それにまつわる親の思いを感じていた(加藤,2007)。一方,父親による子育て体験の

回想をまとめた大島(2011)によれば,父親における主観的子育て体験は,妻と子どもとの相互交流

からの気づきが主となっていた。父親は,概ね二次的な養育者として位置づけられ,母親に対する

支援者や子どもの遊び相手としてみなされやすく(神谷,2015),次世代育成支援対策推進法に基づ

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―  ―69

� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年)

く子育て支援も,父親が家庭外から家庭内に目を向けることへの勧奨が主となっている。これらを

まとめると,母親が子育てを通じて「父―母―子」という自分の家族を超えて関係性を拡大していく

のに対して,父親にとっての子育て体験は,むしろ自分の家族に求心的に焦点化されている可能性

が考えられる。夫婦がともに子育てを行う coparenting を考える上では,こうした夫婦の子育て行

動の射程範囲の相違や相補的な関係についての詳細な検討が必要となろう。

 さらに本結果から,リソースの制約感は,親にとっての変化意識の一側面として,子育て期全般

にわたる父親,母親ともにみられることが確認された。なお,森下(2006)は,父親が「自由の喪失」

の一方で家庭における安らぎや生活の安定を得ていると述べていることから,本研究が示した「リ

ソースの制約感」においても,「関係性意識」や「人格意識」の変化とどのような関係にあるかについ

て,さらに分析を重ねる必要がある。

第一子年齢群と性別(母親・父親)による比較

 第一子年齢4群(0~5歳,6~11歳,12~17歳,18~21歳)は,各々,乳幼児期,児童期,青年期前期,

青年期後期にあたる。本結果によれば,子育て時期にかかわらず,母親は父親よりも,寛大さ,柔軟

さ,タフさなどの人格面において,親になったことでの変化をより大きく感じていた。このことは,

柏木・若松(1994)で見られていたことが,より広範な子育て時期を通して確認されたことを意味す

る。同時に,子どもが成長することへの寂寥感,子育ての心残りや後悔という側面においても,母

親は父親より高いことが明らかとなった。リソースの制約感をみると,乳幼児期の父親は青年期後

期より,学童期の父親は青年期前期以降より高いものの,乳幼児期および青年期前期以降における

母親の制約感は父親の制約感よりさらに高い。すなわち,父親の制約感は子どもの成長とともに低

下するが,母親の制約感は子どもの年齢があがっても父親よりも高いレベルで維持されている。こ

のことは,前述のように,母親が主たる養育者として日常的な世話を行っていることが背景にある

と言えよう。

 また,人格意識とリソースの制約感および寂寥感・後悔に見られる性差を合わせて考えると,母

親の認識する親発達意識は,関係性意識を除き,ポジティブ面ネガティブ面とも父親よりも平均値

が高いことから,子育ての時期によらず両価性(アンビヴァレント)が高いと言える。また,従来,

子どもの自立に伴う認識として中高年女性を中心にとりあげられてきた母親の寂寥感・後悔には,

子育て時期による差はみられず,子育て初期から日々の子どもの成長によって喚起されていること

が示唆された。これは,問題と目的に展開したように,親としての発達プロセスが,単純に一方向

の変化や一元的な喪失や獲得では説明できない可能性を想起させる。今後は,一見すると喪失と思

われるものが併せ持つ獲得,および / あるいは,獲得と思われるものが併せもつ喪失という視点を

さらに精緻化し,子育てという営みやそこにみられる親の発達をそうした経験の蓄積として丁寧に

描写していくことが必要である。なお,父親の寂寥感・後悔は,母親より有意に低いとはいっても,

いずれの時期においてもその平均値は論理的中央値を超えている。子育ての最初期から,母親だけ

でなく父親もまた,子どもの成長に伴う一定の寂寥感・後悔を感じていることについては,これま

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―  ―70

乳幼児期から青年期後期の子育て期における親としての発達意識

で全く議論されていない。その詳細についてはさらに検討を進め,今後の研究展開の手がかりとし

たい。

 ところで,子育ては,時代の社会状況や施策等の影響を受ける可能性があり,年齢群による比較

はコホート差を無視できないため,解釈には限界がある。乳幼児期,学童期等,より年少児の父親

の関係性意識やリソースの制約感が,青年期前期以降の父親よりも高いという結果は,子育て期の

特徴としての解釈も可能だが,近年の子育て支援策により父親の子育てに対する自我関与が促進さ

れているという解釈の可能性も考えておきたい。また,人格意識における性差,リソースの制約感

の交互作用については,効果量がそれほど大きくないことも示されており,これらの結果について

は,今後の研究によってさらに検討が重ねられる必要があるものと考えられる。

今後の課題

 課題の1点目として,本研究は性差と子育て時期の差の検討に留まったが,今後は,パートナーか

らの(パートナーへの)影響を含めた父母二者間の相互関係の分析が必要である。すなわち,父母

ペアが,子どもの発達変化に伴って親行動をどのように調整していくのかを検討し,子育てを通じ

て父母が互いにどのように影響し合いながら変容していくのかについて,相互作用のパターンや背

景要因の検討とともに明らかにする必要がある。

 2点目として,親発達が成人発達の一部であることに立ち戻った時,成人期における生き方の多

様な選択を無視することはできない。法律上の親や生物学的な親ではない場合の養育行動,他の社

会的役割への関与(例えば,職業や地域活動等)や親にならないことにおける発達までも見据えた成

人発達の統合機序の中で,親としての発達をいかにとらえていくかという視点を忘れてはならない

だろう。

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―  ―71

� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年)

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菅野幸恵.(2001).母親が子どもをイヤになること:育児における不快感情とそれに対する説明づけ.発達心理学研究,

12,12-23.

高橋道子・高橋真美.(2009).親になる―ことによる発達とそれに関わる要因.東京学芸大学紀要 総合教育科学系,

60,209-218.

徳田治子.(2002).母親になることの獲得と喪失:ナラティヴアプローチを用いた質的分析.家庭教育研究所紀要,

24,110-120.

徳田治子.(2004).ナラティヴから捉える子育て期女性の意味づけ:生涯発達の視点から.発達心理学研究,15,13-

26.

上西幸代.(2000).子どもの自立に対する母親の意識についての一考察.大阪大学教育学年報,5,113-124.

上西幸代.(2001).中年期の女性の心理的発達課題に関する一考察:女性の充実感に影響を与える事例を手がかりに.

大阪大学教育学年報,6,235-244.

【脚注】1) 調査は2014年6月13-18日に実施され,各年齢群100組,計400組のデータがそろった時点で打ち切られた。その

400組の夫婦ペアデータについて,1)親年齢や子ども年齢,子ども人数の不自然な数値(例;親年齢と第一子年齢を

ともに15歳としたものや,子ども人数36名としたものなど),2)子どもの人数や年齢,性別について夫婦間で数値

が不一致の場合に該当する15組のデータを削除し,6月下旬に61組のデータを追加収集した。その結果,調査協力

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乳幼児期から青年期後期の子育て期における親としての発達意識

者は,446組の夫婦となった。父母ペアにおいて,子ども人数や第一子年齢にズレの生じるデータは,必ずしも単純

なミスだけではなく,夫あるいは妻が子連れの再婚の場合などにも生じる可能性が考えられる。しかしその詳細は

不明であるため,本研究では,誤差を生じさせないように分析から除外することとした。

2) オンラインモニターを対象として夫婦ペアデータを回収するにあたり,次のような手続きをとった。まず,モニ

ターから本調査の属性に該当する協力者を選別するためのスクリーニング項目を設定し,婚姻状況について,「未婚,

既婚,離別,死別」において「既婚」,「子どもの有無」によって「有」,「配偶者の2人各々(ペア)回答」について「承諾」

と回答したモニターを対象とした。全項目に回答の得られた対象者について,年齢4群×父母2群の8グループにつ

いて,各群のサンプル数が200名になるまでデータを収集した。回答に際しては,父母の一方が回答終了後,配偶者

に交替するようにモニターに表示し調査を継続してもらった。ペアデータ回答の信頼性担保のために,①最初に調

査の主旨として「配偶者への質問と回答は見ないこと」「代理で答えないこと(本人が答えること)」を明示し,②交

替後の全ての質問画面に,「先の回答者の配偶者の方がお答えください」を表示して回答者の注意を喚起した。

【付記】

 本研究は科研費基盤 B(24330191,研究代表者:加藤道代)の助成を受けた。本研究の一部は,日

本発達心理学会第25回大会(平成27年3月)において発表された。

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� 東北大学大学院教育学研究科研究年報 第64集・第1号(2015年)

The present study examined how mothers and fathers describe developmental changes they

experience in relation to childcare. An online questionnaire survey was conducted with 446

Japanese couples with a first child aged less than 21 years. The findings indicated that the

developmental changes resulting from becoming parents consist of several components, including

“enhancement of relatedness,” “enhancement of personality,” “constraints on resources” and

“regret and loneliness.” Moreover, “enhancement of relatedness” and “regret and loneliness” in

mothers are significantly higher than in fathers, regardless of the age group of the first child.

Furthermore, fathers’ “constraints on resources” during infancy and childhood are higher than in

adolescence, and that in childhood is higher than in puberty. Additionally, mothers’ “constraints

on resources” in infancy, childhood and adolescence are higher than fathers’. It is suggested that

future research on parental development would need to consider the interaction between parents.

Key Words:parental development,fathers, mothers,childrearing periods

How Do Mothers and Fathers Describe Developmental

Changes During Childrearing?

Michiyo KATO(Professor, Graduate School of Education, Tohoku University)

Tetsuji KAMIYA(Associate Professor, Graduate School of Education, Tohoku University)

Tai KUROSAWA(Assistant Professor, College of Life Sciences, Ibaraki Christian University)

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