日本病理学会中国四国支部第96回学術集会（スラ...

東京医科大学東京医科大学病理診断学講座病理診断学講座

泉泉美貴美貴

EE--mailmail：：mizumi@[email protected]

日本病理学会中国四国支部第96回学術集会（スライドカンファレンス）

2008.6.28 於島根大学

汗腺系腫瘍の病理診汗腺系腫瘍の病理診断断

総論総論

1.1. 腫瘍の分化はどう決まる？腫瘍の分化はどう決まる？

2.2. 汗腺系腫瘍と判断するには汗腺系腫瘍と判断するには

3.3. 汗腺系腫瘍の診断名の特異性汗腺系腫瘍の診断名の特異性

4.4. 発生，正常構造発生，正常構造

（アポクリン腺（アポクリン腺 vs. vs. エクリン腺）エクリン腺）

5.5. 良悪性の判断の仕方良悪性の判断の仕方

6.6. 腺上皮系？腺上皮系？扁平上皮系？扁平上皮系？

各論各論

腫瘍の分化は腫瘍の分化はどう決まる？どう決まる？

腫瘍の分化はどう決まる？！腫瘍の分化はどう決まる？！

高分化型扁平上皮癌？未分化癌？

１．面積？１．面積？２．最も分化した部位？２．最も分化した部位？３．最も分化していない部位？３．最も分化していない部位？４．大きい概念？４．大きい概念？

実は，腫瘍の分化の決定には実は，腫瘍の分化の決定には決まったルールがない？！決まったルールがない？！

２．最も分化した部位？２．最も分化した部位？

““最も分化した最も分化した””とは？とは？

発生学的に，最も後に分化した発生学的に，最も後に分化した

皮膚の汗腺系病変で，皮膚の汗腺系病変で，““発生学的に最も後に分化した発生学的に最も後に分化した””とはとは

皮瘍の汗腺系病変で，皮瘍の汗腺系病変で，““発生学的に最も後に分化した発生学的に最も後に分化した””とはとは

胎生８週

胎生12週アポクリン腺（毛芽）

エクリン腺

胎児表皮periderm胚細胞層germinative cell

＊京都大学附属病院病院病理部, 真鍋俊明教授のご厚意による

アポクリン汗管（腺）

エクリン汗管（腺）

胎生16週


←脂腺

←汗腺

←立毛筋付着部

アポクリン汗管（腺）



皮膚の汗腺系病変で，皮膚の汗腺系病変で，““発生学的に最も後に分化した発生学的に最も後に分化した””

表皮表皮

毛囊毛囊

汗管（汗腺）汗管（汗腺），脂腺，脂腺

汗腺系病変汗腺系病変と判断すると判断するにはには

““汗管や汗腺に類似する構造汗管や汗腺に類似する構造””発発生：生：胎生期の組織像胎生期の組織像

正常組織像：正常組織像：汗管や汗腺の組織像汗管や汗腺の組織像

汗腺系腫瘍と判断する汗腺系腫瘍と判断するにはには

汗管，汗腺の発生汗管，汗腺の発生アポクリン汗管（腺）


汗管（汗腺）の分化汗管（汗腺）の分化

真皮内汗管

表皮内（毛嚢上皮内）の汗管

細胞質内細胞質内//細胞間空胞細胞間空胞

例：Poroma

アポクリン腺アポクリン腺 vs. vs. エクリン腺エクリン腺

アポクリン腺の特徴アポクリン腺の特徴

1. アポクリン分泌像：断頭分泌 decapitation secretion（アポクリンスナウトapocrine snout，apical snout，pinching-off，フリンジfringe）

2. 病巣内における毛囊や脂腺の共存3. 病変が既存の毛囊と連続4. 長い管状構造5. 乳頭状の増殖6. 筋上皮細胞との明瞭な二相性7. 多稜形細胞：筋上皮細胞8. 形質細胞様細胞：筋上皮細胞9. 淡明細胞：Syringoma，Hidradenoma10.粘液細胞：正常のエクリン腺でもみられるが，アポクリン腺でより高頻度11.印環細胞：〃12.リポフスチンの存在：∵腫瘍ではまれ13.上皮と分泌物との間の空隙（scalloping）：腫瘍ではまれ

アポクリンスナウトアポクリンスナウト

アポクリン腺の特徴アポクリン腺の特徴毛嚢や脂腺の共存毛嚢や脂腺の共存

アポクリン腺の特徴アポクリン腺の特徴毛嚢との連続毛嚢との連続

アポクリン腺の特徴アポクリン腺の特徴長い管状構造長い管状構造

アポクリン腺の特徴アポクリン腺の特徴明瞭な筋上皮細胞明瞭な筋上皮細胞

アポクリン腺の特徴アポクリン腺の特徴淡明細胞淡明細胞

汗管の正常構造汗管の正常構造淡明細胞淡明細胞

正常のエクリン腺上皮正常汗腺の筋上皮細胞

外毛根鞘，脂腺細胞も淡明．．．．

アポクリン腺の特徴アポクリン腺の特徴

1. アポクリン分泌像：断頭分泌decapitation secretion（アポクリンスナウトapocrine snout，apical snout，pinching-off，フリンジfringe）

2. 病巣内における毛囊や脂腺の共存：3. 病変の既存の毛囊との連続性4. 長い管状構造5. 筋上皮細胞との明瞭な二相性6. 多稜形細胞：筋上皮細胞7. 形質細胞様細胞8. 乳頭状の増殖9. リポフスチンの存在10.淡明細胞11.粘液細胞12.印環細胞13.上皮と分泌物との間の空隙（scalloping）

エクリン腺エクリン腺の正常構造の正常構造

•暗調細胞•明調細胞•筋上皮細胞

エックリン腺は特徴的所見が乏しい！エックリン腺は特徴的所見が乏しい！

腫瘍内で，エクリン腺と認識することはできない

エクリン腺だけエクリン腺だけ

が増殖するが増殖する疾患はない！疾患はない！

正常構造：汗管正常構造：汗管

表皮内汗管：螺旋状小皮縁細胞 Cuticular cells孔細胞 Poroid cells顆粒層あり（扁平上皮 ! ）角化あり

真皮内汗管：小皮縁細胞 Cuticular cells孔細胞 Poroid cells エクリン汗管とアポクリン汗管で差はない！

正常構造：表皮内汗管正常構造：表皮内汗管

正常の表皮内汗管のporoid cell

孔

Cuticular cell（クチクラ）

Poromaで増殖するporoid cells

Poroid cell

汗管の正常構造：まとめ汗管の正常構造：まとめ

孔を小皮縁細胞と孔細胞が取り巻く．汗管の構造は，エクリン管とアポクリン管とで差がない．アポクリン腺まで分化していれば，アポクリン系腫瘍に．エクリン腺への分化は，形態的には積極的に捉えることができない．

汗腺系病変汗腺系病変の捉え方の捉え方

汗腺系病変の捉え方汗腺系病変の捉え方

腺管の形成


乳頭状の増殖


筋上皮細胞の出現/増生

汗腺系腫瘍の汗腺系腫瘍の

本質（分化）は本質（分化）は

汗管の腫瘍！汗管の腫瘍！（（““汗管腫汗管腫”” ““汗管癌汗管癌””））

汗腺系腫瘍の診断汗腺系腫瘍の診断汗腺系腫瘍の基本形は，汗腺系腫瘍の基本形は，汗管汗管の増殖！の増殖！

アポクリン腺

エクリン腺

““汗管腫汗管腫”” ““汗管癌汗管癌””

汗腺系腫瘍の基本形は，汗腺系腫瘍の基本形は，汗管汗管の増殖！の増殖！

表皮内汗管の増殖

表皮内～真皮浅層の汗管の増殖

表皮と真皮内汗管の増殖

真皮内汗管の増殖

汗腺系腫瘍汗腺系腫瘍診断名の特異性診断名の特異性

汗腺系腫瘍の特徴汗腺系腫瘍の特徴

特異な組織模様特異な組織模様

を示し，を示し，疾患名疾患名が変わる！が変わる！

診断名について診断名について

Syringoma

Eccrine poromaSyringocystadenoma papilliferum

Mixed tumor

汗管系腫瘍の汗管系腫瘍の良悪性の判断良悪性の判断

良悪性の判断の仕方良悪性の判断の仕方弱拡大弱拡大における浸潤の有無が重要！における浸潤の有無が重要！

良悪性の判断の仕方良悪性の判断の仕方強拡大にすると，しばしば迷う強拡大にすると，しばしば迷う

例：Poroma

汗腺系腫瘍は，汗腺系腫瘍は，

腺上皮系腫瘍？腺上皮系腫瘍？

扁平上皮系腫瘍？扁平上皮系腫瘍？

汗腺系腫瘍の本質は？汗腺系腫瘍の本質は？腺上皮系腫瘍？扁平上皮系腫瘍？？腺上皮系腫瘍？扁平上皮系腫瘍？？

•腺管を形成し，汗（フェロモン）を分泌する→腺上皮

•汗管を構成する細胞（角化，細胞間橋）→扁平上皮

分化：発生学的に，最も遅れて形成される細胞で規定

判断：発生学的な，細胞質内/間の小孔形成正常の汗管を模倣する，孔，小皮縁細胞，孔細胞

アポクリン腺への分化：アポクリンスナウトの存在

エクリン腺への分化：認識できない

汗管：アポクリン腺系とエクリン腺系で形態に差はない

命名：疾患ごとに特異的な組織像を呈し，疾患名が冠される

本質：汗管系腫瘍

広義の腺上皮系腫瘍＋扁平上皮系腫瘍

良悪性の判断：弱拡大で！

汗腺系腫瘍の診断汗腺系腫瘍の診断

総論まとめ総論まとめ

各論各論A.A. （アポクリン）良性腫瘍：（アポクリン）良性腫瘍：1.1. Hidrocystoma (Cystadenoma) Hidrocystoma (Cystadenoma) 2.2. Apocrine tubular adenomaApocrine tubular adenoma3.3. HidradenomaHidradenoma4.4. Clear cell hidradenomaClear cell hidradenoma5.5. Hidradenoma papilliferumHidradenoma papilliferum6.6. Syringocystadenoma papilliferumSyringocystadenoma papilliferum7.7. Mixed tumorMixed tumorB.B. （アポクリン）悪性腫瘍：（アポクリン）悪性腫瘍：

1.1. Apocrine carcinomaApocrine carcinomaMucinous carcinomasMucinous carcinomasCerminous adenoma/carcinomaCerminous adenoma/carcinoma

2.2. Extramammary PagetExtramammary Paget’’s diseases disease

各論各論C. C. （エクリン）良性腫瘍：（エクリン）良性腫瘍：

1.1. (Eccrine mixed tumor)(Eccrine mixed tumor)2.2. SyringomaSyringoma3.3. SpiradenomaSpiradenoma4.4. CylindromaCylindroma5.5. Poroma Poroma （（ Hidracanthoma simplexHidracanthoma simplex，，Eccrine Eccrine

poromaporoma，，Dermal duct tumorDermal duct tumor，， Poroid Poroid hidradenomahidradenoma，，clonal typeclonal type））

6.6. Eccrine spiradenomaEccrine spiradenomaD. D. （エクリン）悪性腫瘍：（エクリン）悪性腫瘍：

1.1. PorocarcinomaPorocarcinoma（（de novode novo，，developed in poromadeveloped in poroma））2.2. Malignant spiradenoma Malignant spiradenoma （（Eccrine spiradenocarcinomaEccrine spiradenocarcinoma））

3.3. Eccrine carcinoma (syringomatous carcinoma)Eccrine carcinoma (syringomatous carcinoma)Microcystic adnexal tumorMicrocystic adnexal tumorDigital papillary adenocarcinomaDigital papillary adenocarcinoma

各論各論1.1. Hidrocystoma (Cystadenoma) Hidrocystoma (Cystadenoma) 2.2. Apocrine tubular adenomaApocrine tubular adenoma3.3. SyringomaSyringoma4.4. Poroma Poroma

（（Hidracanthoma simplexHidracanthoma simplex，，Eccrine poromaEccrine poroma，，Dermal Dermal duct tumorduct tumor，， Poroid hidradenomaPoroid hidradenoma，，Clonal typeClonal type））

5.5. PorocarcinomaPorocarcinoma6.6. HidradenomaHidradenoma7.7. Clear cell hidradenomaClear cell hidradenoma8.8. Hidradenoma papilliferumHidradenoma papilliferum9.9. Syringocystadenoma papilliferumSyringocystadenoma papilliferum10.10. SpiradenomaSpiradenoma11.11. CylindromaCylindroma12.12. Mixed tumorMixed tumor13.13. Apocrine carcinomaApocrine carcinoma

Mucinous carcinomasMucinous carcinomasCerminous adenoma/carcinomaCerminous adenoma/carcinoma

14.14. Extramammary PagetExtramammary Paget’’s diseases disease15.15. Microcystic adnexal tumorMicrocystic adnexal tumor

HidrocystomaHidrocystomaCystadenomaCystadenomaアポクリン管嚢腫アポクリン管嚢腫アポクリン嚢胞腺腫アポクリン嚢胞腺腫

Apocrine hidrocystomaApocrine hidrocystomaアポクリン汗嚢腫アポクリン汗嚢腫

定義：アポクリン定義：アポクリン汗管汗管の非腫瘍性の拡張の非腫瘍性の拡張同義語：同義語：

Apocrine cystadenomaApocrine cystadenomaアポクリン囊胞腺腫アポクリン囊胞腺腫((腫瘍腫瘍性疾患？同義性疾患？同義))Median raphe cystsMedian raphe cysts陰茎縫線囊胞（別疾患）陰茎縫線囊胞（別疾患）

＊エクリン腺系の嚢胞性疾患という概念はない．＊エクリン腺系の嚢胞性疾患という概念はない．好発部位：眼の外側好発部位：眼の外側組織像：組織像：壁は二相性：アポクリン腺，筋上皮細胞壁は二相性：アポクリン腺，筋上皮細胞壁が圧排されると，低円柱状を呈する．壁が圧排されると，低円柱状を呈する．部分的に乳頭状～管状増殖部分的に乳頭状～管状増殖

Apocrine hidrocystomaApocrine hidrocystomaアポクリン汗嚢腫アポクリン汗嚢腫

Apocrine Apocrine tubular tubular

adenomaadenoma

Apocrine tubular adenomaApocrine tubular adenoma

定義：真皮内のアポクリン定義：真皮内のアポクリン汗管汗管の良性腫瘍の良性腫瘍同義語：同義語：Papillary tubular adenomaPapillary tubular adenoma組織像：組織像：真皮内の拡張性の汗管の集簇巣真皮内の拡張性の汗管の集簇巣二相性：アポクリン腺と筋上皮細胞二相性：アポクリン腺と筋上皮細胞真の乳頭状増殖ではなく上皮の重積真の乳頭状増殖ではなく上皮の重積間質の線維化間質の線維化表皮の反応性の増生（リ表皮の反応性の増生（リDXDX：皮膚線維腫，：皮膚線維腫，HPVHPV感染）感染）

Apocrine tubular adenomaApocrine tubular adenoma

Apocrine tubular Apocrine tubular adenomaadenoma表皮の増生

SyringomaSyringoma汗管腫汗管腫

定義：真皮浅層（～表皮内）の定義：真皮浅層（～表皮内）の汗管汗管の腫瘍の腫瘍

臨床：臨床：2/32/3女性，顔面（過半数）の多発性丘疹．女性，顔面（過半数）の多発性丘疹．

組織像：組織像：

真皮浅層のレンズ状の真皮浅層のレンズ状の膠原線維の増生巣．膠原線維の増生巣．汗管が管状，胞巣状，索状に増生．汗管が管状，胞巣状，索状に増生．

二相性：淡明な二相性：淡明な小皮縁細胞，孔細胞小皮縁細胞，孔細胞

まれながら：細胞質内空胞，顆粒層，角化まれながら：細胞質内空胞，顆粒層，角化


角化は，汗腺系腫瘍を否定するものではない！むしろ，表皮内汗管を模倣している．

PoromaPoroma汗孔腫汗孔腫

定義：表皮内～真皮内定義：表皮内～真皮内汗管汗管を模倣する良性腫瘍を模倣する良性腫瘍

組織学的定義：組織学的定義：1. 孔が空いている（細胞質内，細胞間空胞の存在）2. 小皮縁細胞の裏打ち3. 孔細胞の増殖分類：分類：

1.1. Hidracanthoma simplexHidracanthoma simplex2.2. Eccrine poromaEccrine poroma（狭義の（狭義のporomaporoma））3.3. Dermal duct tumorDermal duct tumor4.4. Poroid hidradenomaPoroid hidradenoma

PoromaPoroma汗孔腫：定義汗孔腫：定義

＊

＊

＊＊

＊

＊＊

＊＊

PoromaPoroma汗孔腫：定義汗孔腫：定義

A B

C D

Abenoza P and Ackerman AB 「Neoplasm’s with eccrine differentiation」より引用

PoromaPoroma汗孔腫：汗孔腫：分類４型分類４型ーー病変の位置と嚢胞の有無病変の位置と嚢胞の有無－－

Hidracanthoma simplex

Poroid hidradenomaDermal duct tumor

Eccrine poroma

表皮突起が延長

Hidracanthoma simplexHidracanthoma simplex

Eccrine PoromaEccrine Poroma（狭義の）汗孔腫（狭義の）汗孔腫

真皮乳頭層を埋める孔細胞の増生

Dermal duct tumorDermal duct tumor真皮内の充実性胞巣の集簇巣

Poroid hidradenomaPoroid hidradenoma真皮内の囊胞性＆充実性腫瘤

PoromaPoromaの４型の４型

Hidradenoma simplex Eccrine poroma

Dermal duct tumor

Poroid hidradenoma

分ける必要なし！

PoromaPoromaの組織像：その他の組織像：その他

間質の浮腫：囊胞・血管周囲腔間質の浮腫：囊胞・血管周囲腔

＊

PoromaPoromaの組織像：その他の組織像：その他

壊死壊死

PoromaPoromaの組織像の組織像

小皮縁細胞の異型，核分裂像小皮縁細胞の異型，核分裂像

Poroma, clonal typePoroma, clonal type脂漏性角化症Poroma

脂漏性角化症脂漏性角化症

毛嚢漏斗部へ分化する腫瘍毛嚢漏斗部へ分化する腫瘍毛嚢漏斗部の基底細胞の増殖毛嚢漏斗部の基底細胞の増殖

孔細胞と毛嚢上皮の基底細胞の類似性孔細胞と毛嚢上皮の基底細胞の類似性

正常の表皮内汗管のporoid cell

Poroid cell

正常の毛嚢漏斗部の基底細胞

脂漏性角化症脂漏性角化症

1. 細胞がやや細長い2. 多形性がある3. 配列に流れや渦巻き状構造4. メラニンの沈着5. 偽角質嚢胞（＋）

汗孔腫汗孔腫

1. 類円形2. 均一3. シート状（均等配列）4. メラニンなし5. 偽角質嚢胞（－）6. 汗孔腫独特の構造

汗孔腫独特の構造汗孔腫独特の構造

Poroid cell

+

+

孔，cuticular cells

導管

細胞質内空胞細胞間空胞

PorocarcinomaPorocarcinoma汗孔癌汗孔癌

定定義：汗孔腫の一部が癌化義：汗孔腫の一部が癌化/de novo/de novo臨床像：下肢（下腿），経過が長い，リンパ管侵臨床像：下肢（下腿），経過が長い，リンパ管侵襲（襲（++++）多数の娘結節を形成．）多数の娘結節を形成．

組織像：組織像：悪性の基準悪性の基準を満し，を満し，汗孔癌汗孔癌というにはというには

弱拡大：胞巣が大小不同で帯状に融合弱拡大：胞巣が大小不同で帯状に融合強拡大：強拡大：

1.1. 細胞質内，細胞間空胞細胞質内，細胞間空胞2.2. 小皮縁細胞の増生小皮縁細胞の増生3.3. 孔細胞の増生孔細胞の増生

1.1. 浸潤性の増殖浸潤性の増殖

＊壊死，小皮縁細胞の著しい異型，核分裂像などは，悪性の指標にはならない！！

PorocarcinomaPorocarcinoma汗孔癌汗孔癌de novode novo

虎の門病院皮膚科大原國章部長のご厚意による

Porocarcinoma汗孔癌(de novo)

胞巣が帯状で横に長い

リンパ管侵襲が多い


広義の扁平上皮癌でもあるので，角化を示すことがある．∵SCCほど明かではない

HidradenomaHidradenoma汗腺腫汗腺腫定義：（真皮内）汗管の良性腫瘍

分泌腺の良性腫瘍

分類：Poroid hidradenoma：孔，孔細胞，小皮縁細胞：汗管への分化Clear cell hidradenoma淡明細胞汗腺腫：汗腺への分化（clear cell myoepithelioma, nodular hidradenoma, eccrine sweat gland adenoma of clear cell type, solid and cystic hidradenoma, eccrine acrospiroma）

組織像（Clear cell hidradenoma）：４つの細胞① 淡明細胞：必ずしもなくともよい② 多稜形細胞③ 粘液細胞④ 導管（汗管）

疾患名： solid- (nodular-), cystic-, solid & cystic-apocrine-, eccrine-

Hidro-汗:汗腺

Poroid hidradenoma Poroid hidradenoma 汗腺腫汗腺腫

Poroma①孔の形成②小皮縁細胞③孔細胞

→汗管の腫瘍汗管の腫瘍

Clear cell hidradenomaClear cell hidradenoma汗腺腫汗腺腫

HidradenomaHidradenoma汗腺腫汗腺腫

Hidradenoma papilliferumHidradenoma papilliferum乳頭状汗腺腫乳頭状汗腺腫

定義：アポクリン定義：アポクリン汗管汗管の良性腫瘍の良性腫瘍

臨床：臨床：女性，外陰部女性，外陰部

組織像組織像

1.1. 大型の大型の囊胞囊胞の形成の形成

2.2. 嚢胞内に嚢胞内に乳頭状乳頭状の増殖の増殖

3.3. アポクリン腺アポクリン腺上皮，筋上皮細胞上皮，筋上皮細胞

Hidradenoma papilliferumHidradenoma papilliferum乳頭状汗腺腫乳頭状汗腺腫

定義：定義：重層扁平上皮重層扁平上皮とと汗管汗管の増生の増生

（毛嚢漏斗部の腫瘍）（毛嚢漏斗部の腫瘍）

臨床：臨床：脂腺母斑脂腺母斑と合併と合併：頭皮：頭皮


1.1. 扁平上皮扁平上皮（表皮）（表皮）の増生の増生

2.2. 導管構造導管構造：アポクリン腺，筋上皮細胞：アポクリン腺，筋上皮細胞

3.3. 間質の間質の形質細胞形質細胞浸潤浸潤

Syringocystadenoma Syringocystadenoma papilliferumpapilliferum乳頭状汗管囊胞腺腫乳頭状汗管囊胞腺腫

Syringocystadenoma Syringocystadenoma papilliferumpapilliferum乳頭状汗管囊胞腺腫乳頭状汗管囊胞腺腫

SpiradenomaSpiradenomaらせん腺腫らせん腺腫


定定義：真皮内義：真皮内汗管汗管の良性腫瘍の良性腫瘍

臨床像：若い成人，有痛性腫瘤．臨床像：若い成人，有痛性腫瘤．

組織像：組織像：線維性被膜によって覆われた多結節の集簇巣線維性被膜によって覆われた多結節の集簇巣

３種類の細胞３種類の細胞1. 淡好酸性の大型上皮細胞（小皮縁細胞）2. N/C比の高い小型上皮細胞（孔細胞）3. リンパ球4. 厚い基底膜，硝子様間質（硝子様小体）5. 血管周囲腔，囊胞形成，出血

＊

＊

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＊＊

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＊

特徴的な硝子様間質

らせん腺癌らせん腺癌SpiradenocarcinomaSpiradenocarcinoma

定義：定義：1) 1) らせん腺腫の一部が癌化らせん腺腫の一部が癌化>>>>2) 2) de novode novo

組織像：組織像：1)1)既存にらせん腺腫があり，一部が悪性化既存にらせん腺腫があり，一部が悪性化（未分化癌，腺癌，扁平上皮癌，乳癌に類似する癌，（未分化癌，腺癌，扁平上皮癌，乳癌に類似する癌，

線維肉腫，軟骨肉腫）線維肉腫，軟骨肉腫）

2)2)構成成分が類似するが，上皮に異型が高度構成成分が類似するが，上皮に異型が高度（大型好酸性細胞，（大型好酸性細胞，N/CN/C比の高い小型細胞，リンパ球）比の高い小型細胞，リンパ球）

＊


らせん腺癌らせん腺癌spiradenocarcinomaspiradenocarcinoma良性部位良性部位

らせん腺癌らせん腺癌spiradenocarcinomaspiradenocarcinoma癌化部位癌化部位

CylindromaCylindroma円柱腫円柱腫

定定義：真皮内義：真皮内汗管汗管の良性腫瘍（遺伝性疾患）の良性腫瘍（遺伝性疾患）

概概念：らせん腺腫の，一組織像でしかない？念：らせん腺腫の，一組織像でしかない？

臨床像：思春期．頭皮に，臨床像：思春期．頭皮に，““ターバンを巻いたようにターバンを巻いたように””多発．多発．

常染色体優性遺伝．常染色体優性遺伝．

実際には，存在しない？！！実際には，存在しない？！！組織像：組織像：

1.1. ““ジグゾーパズルジグゾーパズル””状の島状の小胞巣の集簇巣状の島状の小胞巣の集簇巣

2.2.辺縁に，辺縁に，N/CN/C比の高い小型細胞比の高い小型細胞

3.3.内部に，大型好酸性細胞内部に，大型好酸性細胞

4.4.厚い基底膜，厚い基底膜，円柱状円柱状の硝子様間質の硝子様間質

5.5. まれに，導管形成まれに，導管形成


自治医科大学皮膚科，大槻マミ太郎先生・山田朋子先生のご厚意による

66歳，女性．円柱腫の家族歴がある．頭皮や肩に多発する腫瘤

円柱腫は，らせん腺腫の一亜型？円柱腫は，らせん腺腫の一亜型？

円柱腫円柱腫らせん腺腫らせん腺腫

Mixed tumorMixed tumor皮膚混合腫瘍皮膚混合腫瘍


定義：定義：汗管汗管上皮と間質成分の増殖？？？！上皮と間質成分の増殖？？？！


定義：定義：筋上皮細胞が，上皮と無関係に増殖．筋上皮細胞が，上皮と無関係に増殖．

汗管が増生汗管が増生

間質に粘液（軟骨様基質）間質に粘液（軟骨様基質）

その他：アポクリンスナウト，毛嚢，骨，軟骨，脂肪その他：アポクリンスナウト，毛嚢，骨，軟骨，脂肪などなど →多彩な成分が→多彩な成分が““混合混合””

＊

＊

＊＊

＊

Mixed tumor Mixed tumor 皮膚混合腫瘍皮膚混合腫瘍

アポクリンへの分化アポクリンへの分化

脂腺や毛嚢が病変内に混在

アポクリンスナウト＋

Mixed tumor Mixed tumor 皮膚混合腫瘍皮膚混合腫瘍

多彩さ（毛嚢，毛母細胞）多彩さ（毛嚢，毛母細胞）

Mixed tumorMixed tumor皮膚皮膚““混合混合””腫瘍腫瘍

軟骨

骨

脂肪細胞

頻度：日本人では頻度：日本人ではMixed tumorMixed tumor全体の全体の数％数％

（欧米では（欧米では1010ないしないし2020％程度？？）％程度？？）


小型腺管小型腺管の増殖の増殖

腫瘍細胞だけが腫瘍細胞だけが均一均一に増殖に増殖

アポクリンスナウトはないアポクリンスナウトはない

Eccrine Eccrine mixed tumormixed tumor

存在するのか（？）存在するのか（？）

＊徳島大学医学部皮膚科学教室安齋眞一先生のご厚意による

Apocrine Apocrine carcinomacarcinoma

ApocrineApocrine carcinomacarcinoma

定義：アポクリン腺への分化を示す癌の定義：アポクリン腺への分化を示す癌の総称総称．．

特異的発生部位：特異的発生部位：外耳道（耳導腺外耳道（耳導腺ceruminous glandceruminous gland））眼瞼（モル腺眼瞼（モル腺Moll glandMoll gland））

組織像：組織像：乳癌（導管癌）と相同乳癌（導管癌）と相同

大型で好酸性の細胞質大型で好酸性の細胞質

アポクリンスナウトアポクリンスナウト

GCDFPGCDFP--15 (+)15 (+)

Apocrine carcinomaApocrine carcinoma

Apocrine carcinomasApocrine carcinomas

Apocrine carcinomaApocrine carcinoma

GCDFP-15

Extramammary Extramammary PagetPaget’’s diseases disease乳房外パジェット病乳房外パジェット病

Extramammary PagetExtramammary Paget’’s s diseasedisease乳房外パジェット病乳房外パジェット病

定定義：表皮内から発生する義：表皮内から発生する腺癌腺癌（アポクリン腺系）（アポクリン腺系）

予後：長い経過で予後良い．浸潤すれば不良．予後：長い経過で予後良い．浸潤すれば不良．


腺癌細胞腺癌細胞（腺管の形成，粘液を含有，核の偏在，クロマチ（腺管の形成，粘液を含有，核の偏在，クロマチンが濃縮，核小体が明瞭）ンが濃縮，核小体が明瞭）

メラニン沈着メラニン沈着

浸潤すれば，乳癌と相同の組織像と予後．浸潤すれば，乳癌と相同の組織像と予後．

Extramammary PagetExtramammary Paget’’s s carcinomacarcinoma乳房外パジェット癌乳房外パジェット癌

Microcystic adnexal carcinomaMicrocystic adnexal carcinoma

定義：表皮内と真皮内の定義：表皮内と真皮内の汗管汗管の悪性腫瘍の悪性腫瘍

同義語：同義語：Sclerosing sweat duct carcinoma, Sclerosing sweat duct carcinoma, Syringomatous carcinomaSyringomatous carcinoma

臨床像：中年女性．口周囲（上口唇，顎），硬い腫瘤臨床像：中年女性．口周囲（上口唇，顎），硬い腫瘤

再発必至再発必至

組織像：深い浸潤，神経周囲浸潤＋＋，細胞異型軽度組織像：深い浸潤，神経周囲浸潤＋＋，細胞異型軽度

真皮浅層：真皮浅層：小嚢胞形成（角化，顆粒層）小嚢胞形成（角化，顆粒層）

真皮深層：真皮深層：索状，管状索状，管状


浅層＝表皮内汗管を模倣


深層＝真皮内汗管を模倣

MACMAC以外のエクリン腺癌以外のエクリン腺癌

定義：エクリン腺に類似する悪性腫瘍定義：エクリン腺に類似する悪性腫瘍

同義語：同義語：syringoid eccrine ca. eccrine syringoid eccrine ca. eccrine epithelioma, basal cell epithelioma epithelioma, basal cell epithelioma with eccrine differentiation, eccrine ca. with eccrine differentiation, eccrine ca. with syringomatous feature, sweat with syringomatous feature, sweat gland ca. with syringomatous feature, gland ca. with syringomatous feature, malignant syringoma, eccrine basaliomamalignant syringoma, eccrine basalioma

Ackerman ABAckerman ABの提案：エクリン癌を総称しての提案：エクリン癌を総称して““Syringomatous carcinomaSyringomatous carcinoma””

-- wellwell-- moderatelymoderately-- poorly poorly

本講演の内容はすべて，本講演の内容はすべて，「みき先生の皮膚病理診断「みき先生の皮膚病理診断ABC ABC ①①表皮系病変表皮系病変秀潤社」秀潤社」「みき先生の皮膚病理診断「みき先生の皮膚病理診断ABC ABC ②②付属器病変付属器病変秀潤社」秀潤社」

に掲載されていますに掲載されています (*^_^*)(*^_^*)

これで，汗腺系病変はダイジョー･ブイ！

ご静聴ありがとうございました

第８回皮膚病理診断研究会開催「スピッツ母斑」

参加者および演題募集

日程：２００８年１１月８～９日（土，日）

会場：東京医科大学参加費：1万7千円（ハンドアウト代，CD代を含む），*会員は3,000円の割引あり．

スケジュール＝第一日目（８日，土）＝講義１３：００～１８：００（予定）講義１大原國章先生「（ダーモスコピー像を含む）臨床像」講義２真鍋俊明先生「病理総論：メラノサイト系病変の病理像」講義３泉美貴先生「病理各論：スピッツ母斑の病理像」

＝第二日目（９日，日）＝検鏡と症例検討８：３０～１４：００（予定）検鏡：スピッツ母斑を中心に検鏡（30例程度を予定）検鏡の解説：新井榮一先生症例検討：座長桜井孝規先生

定員：８０名

申し込み開始：会員：７月８日（火）より，非会員：７月１５日（火）よりTEL：(03)-3342-6111(内3524)/FAX：(03) 3342-2062E-mail：[email protected]

日本病理学会中国四国支部 第96回学術集会（スラ...

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