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Page 1: 回 自動車産業におけるCIM - JST

溶 接 学 会 誌 第63巻(1994)第1号33

INTERFACE

AND

INNOVATIVE

INTEGRATION

特集

生産技術のニューウェーブ「CIMと未来生産システム」

回 自動車産業におけるCIM

黒 須 則 明

CIM in Automobile Industries

by Noriaki Kurosu

キ ー ワー ド:CIM,調 和 型 自律 分 散 シス テ ム,生 きて い る シス テ ム,パ

ラニ ュー ロ ン,MAP,リ モー トID,AI,可 協調 性,縮 小

性,再 形 成性,再 構 成性

1.は じ め に

激動 す る環境 の変化 に,製 造 業 の代 表業 種 で あ る

自動車 産業 も見 回 れ てい る.生 産 シス テム も従来 以

上 に,「 変 化 へ の迅 速 な対 応」が せ ま られて い る.図

1に それ を示 す.こ の 図 は以 前 か らい ろい ろな場 で

紹介1)して い る もので あ るが,「 低 コス ト」化 が最 近

の変化 にあわ せ修 正 を加 えた もの であ る.こ の課 題

達成 のた め多 くの面 で見 直 しが行 わ れ て い る.CS

(Customer Satisfaction)の 御旗 の下,あ る面 で は必

要以上にふ くれ上がったものへの見直しが行われて

いる.車 種,車 型,部 品数の見直し,よ り生産性の

上る車構造の検討などと共に,生 産システムそのも

のも,成 長を暗黙の前提とした拡張性,改 良性ばか

りでなく企画販売台数を実績が大幅に下った時でも

価格原単位が同一であるような縮小性をも考慮した

柔軟性,弾 力性が求められている.

トヨタの場合,「FAを やろう」,「CIMを やろう」

とFAやCIMそ のものを目指しているわけでなく

「受注―生産―納車(納 品)ま での生産活動におけ

図1生 産 を取 り巻 く環境 の変化

る システ ムの効 率化,運 用,管 理,制 御 を行 う」 こ

とに過 去 か ら営 々 と取 り組 んで い る.「 受 注 ・設 計 ・

*原稿受付 平成5年11月4日

**トヨタ自動車(株)

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Page 2: 回 自動車産業におけるCIM - JST

34特 集 黒須:自 動車産業 におけるCIM

図2当 社のCIM体 系

製 造 ・物 流 を情 報 技術 に よ り統 合 した シス テ ム 体

系」とい う もの をCIMと 定義 づ け るな らば,ト ヨ タ

の生 産 システ ムに も当然 それ に近 い ものが存 在 して

い る.そ れ を図2に 示 す.

この中 で生 産CIMと 称 して い る もの を,過 去 ど

の ような考 え,コ ンセ プ トで構 築 して きた か?結 論

的 に言 えば それ は 「自律 分散」 概念 で あ るが,そ れ

を本 稿 で は概 括 的 に紹介 し,前 述 した柔軟 性 ・特 に

縮小 性 が最 近 の環境 変化 で特 に見直 されて い るので

その ことに焦点 を当て て事例紹 介 を行 い本特 集号 へ

の話 題提 供 とす る.

2.シ ステム構築の基本概念

トヨ タ社 内 での 生産 シ ステム構築 の基 本 コ ンセ プ

トは 「トヨタ生 産 方式」 で ある.Just In Timeと 自

働 化 が それ を支 え る2本 柱 であ る.必 要 な と きに,

必 要 な もの を,必 要 な だけつ くるJIT思 想 を具 現化

す る情 報 制御 ツール として 「か んば ん」 な どが使 わ

れ てい る.基 本的 考 え方 をべー ス に具現 手 技 を近代

化 させ てい るのが,最 近 の生産 シス テムづ くりの現

状 で あ る.

3.調 和型自律分散システム

環境の変化に対応するために生産システムにおい

ては人と機械が共存 ・共生した 「生きている」シス

テムを具現 しなければならない.人 と機械が共存す

る以上に,常 に人間が主人公でありどんな画期的な

設備 ・システムでも自分の手で改善できる現場体質

が生産システムの決め手である.ト ヨタ生産方式は

このようなシステムづくりを心がけてきた.い わゆ

る 「生きているシステム」づくりである.生 きてい

るシステムの定義は難しいが図3に キーワードを列

記する.こ れから派生し図4に 示すような要件が生

産システムに要求される。これら概念の結果は生物

の進化の歴史,生 命とは何であるか の考えに基づ

いている.概 念の抽象化を生物モデルに取ったこと

で,「 トヨタ生産方式」という企業内標語を一皮むい

て,シ ステムづ くりの基本概念を 「調和型自律分散

システム」と言っている.

「本来分かれていて,自 ら立てた規範に従って行

動する部分が他の部分 との協調によって,自 らの目

的を達成する集合体」がその定義であるご「自律分散

システム」の定義そのものでもあるが現時点では一

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Page 3: 回 自動車産業におけるCIM - JST

溶 接 学 会 誌 第63巻(1994)第1号35

図3生 きて い る シス テムLiving Systems

図4シ ステムの具備要件

般 に認 知 され てる用語 で もな いた め,他 との協 調 と

い うこ とに力 点 をお いて 「オ ーケス トラ」 の イメー

ジ を頭 に置 いて 「調和型 」 の接頭 語 を付 けて い る.

図5に 概 念 を他 の例 と共 に示 す.

4.生 ぎているシステムの評価指数

図6に 「生 きて い るシス テム」の評価 指数 を示 す.

システ ム評 価 を行 う時点 のプ ライオ リテ ィに よって

図5調 和型自律分散システム

各指数の重みが変る.一 例として大規模システムの

高信頼化を評価するものとして図7を 示す.可 協

調度を横軸に,可 制御度(一 部のサブシステムが故

障しても残 りの正常なシステムが自らを制御できる

Index of Living Systems

図6生 きて.いるシステムの評価指数

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Page 4: 回 自動車産業におけるCIM - JST

36特 集 黒須:自 動車産業 におけるCIM

図7シ ステムの分類

度合)を 縦軸に,自 律分散,階 層,集 中,機 能分散

の各システムを分類している.

本稿では指数の中の可協調度や再形成性などにつ

いて事例紹介のあと紹介する.

5.要 素 技 術

先述 の図4に 示 した シス テム具備 要件,図6に 示

して評 価指 数 を全 て満 足 させ るシステ ムを経 済性 を

満 た しつ つ構 築 す る こ とは難 しい ことで あ る し,達

成 手段 としての要 素技 術 も現 時点で は未熟 な もの で

はあ るが,そ れ な りに手 に入 れ られ る.そ れ らの う

ち情 報 関連 の もの を図8に 示 す.

分散 したモ ジ ュー ルが互 い に有 機的 に結 合 し相 互

に協 調 しなが ら全 体 として調和 の とれ たシス テム と

して機能 させ る為 の ネ ッ トワーク,現 場 の 「智恵 」

の取 り込 み に必要 なAI(Artificial Inteligence),生

命 体 の たん 白質が,DNAか らメ ッセ ンジ ャーRNA

を介 して合 成 され るイ メー ジを彷 髪 させ る リモー ト

IDシ ス テム,そ れ は車輛 に取 り付 け られ,仕 様 が書

き込 まれ た メモ リ内 の情報 を無線 で加 工,組 付機 に

図8要 素技術

指示 す るため の タグ(Data Carryer)と 地 上部 側 に

設置 され た情報 読 み書 き用 のア ンテ ナか ら構 成 され

て い て,ト ヨタの制御 ・情 報 システ ム構 築 の考 え方

の一 つで あ る 「物 と情 報 の一 致」,「物検 」 な ど を具

現 す る手 段 で あ るが,そ れ らが重要 な情 報関連 要 素

技術 で あ る.

6.シ ステム 事例

トヨタ にお け る車造 りの仕組 み を図9に 示 す.情

報 は コ ンピュー タ・ネ ッ トワー ク と共 に 「か ん ばん」

で流 され 「売 れ るもの を売 れ るス ピー ド」 で造 って

い る.生 体 シス テム にお いて新 潟大 ・藤 田教授 の提

起 した 「パ ラ・ニ ューロ ン」,ニ ュー ロン と同等 の働

き(パ ラ)が 腸 のシ ステム で も行 わ れて い る とい う

もの で あ るが,そ の シス テムの神 経系 が ネ ッ トワー

ク,ホ ル モ ン系が か んばん,こ れ は情 報伝 達速度 で

の分 け方 で あ るが,そ うい う生体 システ ム にアナ ロ

ジ ィ的 に生 産 シ ステム をモ デル化 で きな くも無 い.

図10は,将 来 工 場 像 で これ は,大 き な 機 能 モ

ジュ ール 「生産 管理 」 「物 流管 理」… とい くつか の 自

律 モ ジ ュール が有機 的 に調和 ・協 調 して生産 シス テ

ム を構 築 して る ことを示 す.こ の中 で現 時 点で の,

コン ビー タ,ネ ッ トワー ク中心 の もの は生 産管 理

シス テみ で,具 現 して る例 を図11に 示 す.

(1)新ALCシ ス テム

工 場 の 生 産 管 理,そ の 中 核 を な す もの はALC

(Assembly Line Contro1)と 略 称 され る.お 客様 か

らの 注文 に従 った各 種 仕 様 を ライ ンの作 業 者 や ロ

ポ ッ トに指示 す る生産 指示 シス テムで工場 の上 位 系

の シス テム として位置 づ け られて い る.こ のシス テ

ム は 旧の もの は'66年 に構築 して以 来,本 社 集 中 シ

ステ ム で あ ったが'89年,環 境 変 化 にあわ せ再 構築

した.そ の時 の基 本 コ ンセ プ トが 「調 和 型 自律 分

散 」でA工 場,B工 場 毎 に,又,ポ デー,塗 装… と

シ ョ ップ毎 に機能 を自律分 散 させ,工 場,シ ョップ

の問 題 は そ こで 自己完 結 的 に処 理 で きる よ うに し

て,環 境 変化 に対 応 した工場 ニ ーズ に迅速 に対 応 で

きる よ うに した.新 し く構 築 した もの を新ALCと

言 っ て い る.概 要 を 図12に 示 す.要 素 技術 的 に は

極 力,標 準 の もの を とい う こ とで ネ ッ トワー ク に

MAP,ミ ニMAPを 使 用 して い る こ とが特 徴 で あ

る.

(2)組 立 生産 指 示 システ ム

図13に 概 要 を示 す もの は,工 場 の下 位 の シ ス テ

ム で組 立 シ ョップの中 にあ る ロボ ッ トな どの 自動 機

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Page 5: 回 自動車産業におけるCIM - JST

溶 接 学 会 誌 第63巻(1994)第1号37

図9ト ヨタにおける車 造 りの仕組み

(物と情報 の流れ)

図10将 来工場像

図11車 両工場生産指示 システム

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Page 6: 回 自動車産業におけるCIM - JST

38特 集 黒須:自 動車産業 にお けるCIM

図12新ALC概 要

図13組 立生産指示 システムの概要

図13組 立生産指示 システムの概 要

に仕様指示する組立生産指示システムである.こ の

システムの特徴は車両に搭載されたIDタ グ内に書

き込 まれ た情報 を必 要 な時 に,必 要 な所 で読 め る よ

うに して各 工程,各 設備 が 自律 的 に加工,組 み付 け

が出 来 るよ うに 自律分 散制 御,シ ステ ム化 して ある

こ とで,こ うい う構成 によ って上位 コン ピュー タの

負荷軽 減,異 常 トラブル処 理 の簡 易化 が はか られ て

い る.

(3)塗 装 ライ ン ・ス トレー ジライ ン制御 システ ム

図14は,組 み立 て ラ イ ンの負荷 を平 準 化 す る た

め に,塗 装 一組 み立 てシ ョップ間 に設 置 され たス ト

レー ジラ イ ンの運 用 にAI技 術 を適用 して,現 場 の

作業 者 のラ イ ン運用 の智恵 を,問 題 領域 を整 理 し必

要 なパ ター ン を分類 し簡 素 に作 り上 げ た もの で あ

る.本 シス テム はあ る許容 制約 条件 内 な ら人 間以 上

の性 能 を発 揮 してい るが,そ れ を超 えた もの は人 間

の知 的 支援 に依 存 して いる現況 で あ る.

7.生 きているシステム ・評価指数の事例

図6に 揚 げた指数 の 中の特徴 的 な もの を,前 項 で

紹 介 した事例 に従 って紹介 す る.

(1)可 協 調性(Co-operability)

可協 調性 とはお互 い に協 調で きる度 合 で ある.図

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Page 7: 回 自動車産業におけるCIM - JST

溶 接 学 会 誌 第63巻(1994)第1号39

15は 新ALCシ ス テムで 使用 して る,シ ョップ毎 の

仕事 を司 るライ ン コン ピュー タのバ ックア ップシス

テ ム で,ほ ぼ同 機 能 を 持 つ 自律 した ラ イ ン コ ン

ピュー タが 同時 に2つ が故 障す る確率 は非常 に小 さ

い とい う前提 でN:1バ ックア ップ を採用 した例 で

あ る.組 立 ライ ンで作業 者 が突然 休 み を取 って も他

の作業 者 がバ ックア ップ して ライ ンは停 止 しな い と

い うよ うな相互 扶助 シス テム をコ ンピュー タ シス テ

ムで実 現 させ てい る.本 システ ムの要諦 は自律 す る

各 モ ジ ュール がほ ぼ同様 の機能 ・性 能 を持 ってい る

こ とであ る.人 を中心 とした システム は,多 能 工化

に よ り他人 を扶助 で きる人 を組 織 して組織 が構 成 さ

れ て い るが,そ れ に類 似 化 され る.

同様 な仕組 み は,ロ ボ ッ トを使 った溶接 ライ ンで

も具現 され て いる.ラ イ ンの どれか の ロボ ッ トが故

障 して もバ ックア ップ工程 の ロ ボッ トが 当該 ロボ ッ

トの プロ グラム を組 み込 み,ツ ール チ ェン ジを行 う

図15 N:1バ ッ クア ップ シス テム と規 模 の比 較

図16 トヨタ生産台数推移

こ とでN:1バ ック ア ップ シ ス テ ム を構 成 し て い

る.

(2)縮 小性(Reduceability)

今 まで の生産 システ ム は,成 長 を暗黙 に前提 と し

て いた.図16に トヨ タの生産 台数 を示 すが,こ れ は

全 体 概要 で あ る.車 種 ・ライ ンに よって は大 幅 な企

画台 数割 れ を お こ して い る.コ ス ト的 に は減 価償 却

費 が 台数 比例 とはなっ てい ない ため台 当 りコス トの

上 昇 とな って いる.

生産 シス テム の負 の柔軟 性,縮 小 性が 問わ れ るゆ

えん で あ る.正 へ の柔 軟性,拡 張性 はそれ な りに過

去 の成 長経 験 か らシス テムへ うま く組 み込 まれ てい

るが減 産対 応 は これ か らの課 題 で あ る.

本事 例 で紹 介 した新ALCシ ス テムで はライ ン閉

鎖,閉 鎖 され た ライ ンで の車 種 の他 ライ ンへ集約 し

て生 産 す る変化 に対 して は,分 散 化 され たモ ジュー

ル を他 へ転 用 して減 価 償 却,電 算 経 費 の 低減 を は

か っ た.し か し大 型 集 中 処 理 を して い るメ イ ン フ

図17 設備再構成

図18 ライン再構成

図19 エ ンジン混合組付 システム

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Page 8: 回 自動車産業におけるCIM - JST

40特 集 黒須:自 動車産業 におけるCIM

レー マ の経 費 は仕事 が 零 にな らな い限 り廃 棄 で きな

い ため,定 コスト の た め,台 当 りコス トの上 昇 を招

い てい る.ロ ボ ッ トな どの汎用設 備 と言 われ,てい る

もので も同様 の状 況で あ る.縮 小性 を達成 す るた め

の再形 成性,再 構 成性,可 搬 性 が,減 産状 況 の中,

強 く問 わ れ てい る.

再形 成(Reconfigure)と は,も と も とは航空 機 の

フ ォー ル ト ・トレ ラン トシス テムか ら生 まれ,た概念

で あ る程 度 予 測 で き る もの に対 す る もの を再 形

成,そ れ に対 して予測 で きない もの に対す る もの を

再 構成(Restructure)と 定 義 され て い る.

設備,ラ イ ン ・シス テム が企画販 売 台数 に満 た な

い場合,別 の製品 を,当 該 の設備,ラ イ ン,シ ス テ

ム を再形 成,再 構 成 して生産 をす る必要 が あ る.日

立 ・生 研 の松 本氏 の再構 成 の概念 図6)を図17に 引用

させ てい た だ く.

図18はAGV(Automatic Guided Vehicle)を 用

い た ライ ン再 構 成 の案 で あ る.図19はAGVを 用

いた多種 類 エ ン ジン組 付 シ ステム で生産 変動 に対 応

して搬 送速 度 ・ピ ッチ,AGV台 数 を可変 に して 生

産性 を確 保 して る例 で あ る.

8.お わ り に

自動 車 車両 生産 工場 の生産 指示 シス テム を主事 例

に 「自動 車産 業 のCIM」 を紹介 した.生 産 シス テム

に は,規 模 の大規 模化,厳 しい経 済環 境 の下 で多 く

の要件 が 求 め られ て い る.生 物 で これ ら要 件 が満 た

されて る ものが多 い.生 命誕 生以 来,35億 年 と言 わ

れ る歴 史 の生 み 出 した 自然 の妙 と言 え る.自 動 車 な

どの生 産 シ ステ ムで は,や はり人 間 中心 に システ ム

を考 え ざ るを得 ない.そ こで はシス テム構 築論 を生

物 学的 アナ ロジ ィで行 うこ とが論理 的 で ない とい う

批 判 は ある もの の多 くの人 か ら共 鳴,賛 同 を得 る こ

とが多 い.こ の よ うな学問追 求 のプ ロセ ス は過 去 に

もあった.19世 紀 科学 主義,英 で は生物 学,独 で は

物 理 学 をモ デル に社会 科 学 が探 求 され た8}.そ の遺

産 か,独 で は生 物学 モ デル は結 果 としてあ る もの に

過 ぎない と相手 に され て ない感 が あ る と,シ ュペ ン

グ ラー の 「西洋 の没 落」 を例 に阪大 の三 島憲 一氏 が

紹 介9)し てい る.本 稿 で の 主た る概 念,自 律 分 散 シ

ス テム概 念 は,わ が 国 で最初 に提言 され た独 自の概

念 で あ るが,ま だ緒 につい たばか りで統 一 的 な理 論

体 系 が生 まれ て いるわ けで ない.し か し生産 シス テ

ム工 学者 ば か りでな く,社 会,経 済,生 物,物 理 …

と多 方面 に関係 す る もので,各 分野 で の知見 が参 考

とな り相乗 効 果的 に進展 が期待 されて い る.本 稿 で

紹介 した,パ ラニュー ロ ンなる概 念 も生 理学 の世界

で は既 に'75年 に は提 言 され てい た.コ ン ビュー タ

の世 界 で はその頃'71年 の マ イ コ ンの 開発 を機 に現

在 まで加速 的 な速度 で ダウ ンサ イ ジ ングが進 ん でい

る.後 世,科 学 史家 が各分 野 の 「分散 化 」 の時代 の

流 れ を指 摘 す るか も知 れ ない.藤 田教授 の著 書4}は

視野 を広 く,多 くの ことに関心 を持 つ こ との重要性

を改 めて教 えて くれ た.こ れか らの生 産 シス テム は,

ます ます複 雑化 す る要 件 を満 た しつ つ構 築 しな けれ

ば な らな い.そ の為 に は,多 くの分野 の人 の協 力 を

仰が ねば な らない.そ の為 に,「見 え る ・分 か る ・軽

く ・小 さ く」 と矛か くは言 って る.固 くは 「調和 型

自律 分 散 シス テム」 の構築 と言 って い る.自 律 分散

の概 念 は立派 で もそれ を具現 す る技術 は未 だ未熟 で

あ る.一 部 の問題 を本稿 で紹 介 した.い ず れ これ ら

問題 も解 決 され てい くはず であ るが,長 い地 道 な努

力 が 要求 され る.そ の ため に も一人 で も多 くの方が

この 分野 の研 究 に参 加 され,日 本が 得意 と して い る,

進 ん で い る と言わ れ てい る生産 技術 をなお一 層,進

化 させ る こ とを願 うもので ある.そ うい う ことに本

稿 が い さ さかで も 「た め」にな るな らば幸 いで ある.

参 考 文 献

1) 黒 須:CIMに おけ る生 産管 理,オ ペ ー レー シ ョン

ズ ・リサ ー チ,37-10(1992),471

2) シ ュレ デ ィ ンガー:生 命 とは何 か,岩 波 新 書

3) 森 欣 司:自 律 分 散 シ ステ ム,電 子通 信 学 会誌,

69-3(1986),226-230

4) 藤 田恒 夫:腸 は考 える,岩 波 新 書(1991)

5) 佐 藤光 政,他:自 己修 復 型制 御 則 の試 設 計,日 本

航 空宇 宙 学 会誌,37-431(1989)

6) 松本 義 雄:未 来 の生 産 技術 にお ける知 能 ロボ ッ ト

シス テム,電 学誌,113-6(1993),454

7) 堀 秀 樹,他:自 動 車 構成 ユニ ッ ト混 合 組 付 シ ス

テ ムの 開 発,1993年 度 精 密工 学 会,秋 季大 会学 術

講 演 会 論文 集E83,865

8) 伊 藤 光 晴,根 井雅 弘:シ ュ ンペ ー ター,岩 波新 書

(1993),195

9) 三 島 憲 一,染 ま らず 批判 的 に読 め,朝 日新聞(夕),

1993年3月14日 号

40