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コーンビーム CTを使いこなすためのワークショップ
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ワークショップ
コーンビームCTを使いこなすためのワークショップ
GEユーザー報告
彩都友紘会病院 福西康修
1. はじめに
当院は「がん治療」に重点を置く病院として 2007 年 9 月に開院した.血管撮影室では開設時に導
入した GE 社製 Innova3100IQを使用している.使用目的としては主に躯幹部を対象とした腫瘍塞栓
や動注化学療法および各種ドレナージ等の癌治療である.コーンビーム CT の仕様は以下の通りであ
る.
(装置の特性)
アームの構造が,C アームを約 50cm 患者左サイドにシフトした構造なっているために,head first
の体位でも頭部から約 1m の範囲までの回転撮影が可能であり,成人では骨盤部あたりまでを回転撮
影の対象部位とすることが可能である.搭載 FPD の最大視野を使用しても FOV は 17.8cm となるた
め,肝全域を一度に視野に納めることができない.したがって CTAP を目的とした撮影には向かず,
もっぱら選択的な CTA で feeder を確認することに用いている.
2. 1 空間分解能
3D-angiographyではView数がかなり少ない反面,受
光器の検出器配列間隔がMSCTに比べると非常に細かく
なっている.
またCone-beam CT のMTFは使用するFOVによって
も変化する.当院の装置ではFOV30cmでのsampling
pitchが 400μm, FOV20,16,12cmでは 200μmと変更され
るため大きな変化が表れた(図 2).
また 3D-angiography では回転角速度を CT と同様に
変更することが可能である.目的あるいは呼吸停止の有
無に応じて最適な速度を選択する必要がある.この回転
角速度を変更させワイヤ法にて計測した axial image の
中央での MTF は,まったく view 数はことなるが,MTF の形状に差異は表れなかった.
アームタイプ:LC アーム
回転速度:10, 20, 40°/秒
回転角度:203 度
線量:low, normal dose mode の 2 段階
FPD サイズ:307×307mm
視野サイズ:30, 20, 16, 12cm
検出器:ヨウ化セシウム+アモルファスシリコン
ピクセル数:1536×1536
画素サイズ:200×200μm, 14bit,
30cmモードのみ 400×400μm
view数:10deg/sec 587view,
20deg/sec 292view, 40deg/sec 147view
図 1:GE社製 Innova3100
図 2:Cone-beam CT の MTF
全国循環器撮影研究会誌 Vol.23 2011
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3D-angiography の使用目的としては,この高い空間分解能を生かし,脳動脈瘤などを対象とした
血管形状の詳細な評価がある.また 1 回の 3D-angiography を行うだけで,複雑な血管走行や血管と
腫瘍などの関係が任意の方向から観察可能となり,立体的な位置の把握が容易となるため,撮影回数
を減らすことにも用いられる.
3. 2 撮像中の血管が造影されている時間比が画質に与える影響
3D-angiography は幅広い X 線を人体に照射し,一回の回転撮影で広範囲をカバーするために,全
撮影時間としては現状の MSCT と同等レベルの撮影時間となっている.しかし一回転の速度が 0.5
秒以下の MSCT では問題とならない回転中の被写体内の血管濃度の変化が 3D-angiographyd では発
生する.つまり 10 秒程度の撮影時間を要する 3D-angiography では撮影中の 10 秒間,対象の血管に
造影剤が満たされていることが理想的であるが,時間が長いために途中で造影剤が流れ去ってしまっ
たりあるいは目的の部分にまで造影剤が撮影開始の段階で届いていなかったりすることがある.この
現象は一回転の投影データ収集中の対象物の変化であることから,CT でいう非線形パーシャルボリ
ューム効果やムービングアーチファクトと同様な現象となって画像に表れる.
図3はファントム内に挿入した模擬血管を途中で抜き去ることで撮影中に血管が造影されている時
間比を変化させた結果である.存在時間比が短くなるほどそれぞれの血管は動きをともなったような
アーチファクトが発生し,血管部分の信号値も低下してしまった.
またこのアーチファクトの影響は VR画像にも現れ本来円柱状の模擬血管の断面形状が楕円の円柱
となって描出され(図 4),axial image と同様に極端に存在時間比が短くなる場合には血管の判別がつ
かなくなった.
このような現象を正確に把握するために血管部分の信号値を測定し,完全に模擬血管が入っている
時を 1 として正規化し各存在時間比ごとの信号強度の変化を図 5 のように 1 つのグラフにまとめた.
2mm 以上の血管径では径によらずすべて同様な傾向で信号強度が存在時間比の低下と共にシグモイ
ドカーブの形状で低下した.
また回転撮影の途中から造影剤が目的血管に流れ込んだ例を想定し,ファントム内に回転撮影の途
中から時間を変えながら模擬血管を挿入し撮影を行った.そのaxial imageについても同様な解析を
図 3
図 4
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行ったが,そのグラフの形状は若干,肩部で違いがあったが全体的な傾向は同様であった(図 6).
これらの解析結果により目的血管が造影されている時間比が約 70%以上であれば血管信号の低下
は 10%未満であるが,VR画像の形状に着目すればアーチファクトは時間比 70%でも発生しているた
めVR画像上で形状変化が現れた.
正確な形状再現のためには時間比 80%以上もしくは 100%の造影が必要である.
3. Cone-beam CT 画像
3. 1 低コントラスト分解能
Cone-beam CT は MSCT と比較すると,half scan であることや,撮影の実効エネルギーが低いこ
と,また焦点から受光部の各点までの距離が等距離でないこと(円弧状の形状でない)など,断面再構
成には様々な不利な点があり,均一ファントムを撮影した際に,強いリングアーチファクトが表れる
ことが多くある.そのため低コントラスト分解能ファントムを撮影しても,このリングアーチファク
トに低コントラスト信号が埋もれてしまうことがあり,低コントラスト分解能はかなり低いと言える.
図 7 の右の2つのファントム画像は Cone-beam CT と MSCT で CTDI がほぼ同一な画像である.粒
状性そのものは大きな差があるようには見えないが,画像の均一性に関しては明らかな差がある.
図 8 の臨床写真は上記の写真と同様な条件にて被写体を撮影した例である.ファントムと同様な傾
向を示すが,Cone-beam CT と MSCT の著明な差は FOV 周辺部の描出能に現れ,Cone-beam CT
では体表面に近い部分の信号値の低下が著しくなった.また low dose mode では肝内の脈管影の識別
が不十分であった.
図 7
図 5
図 6
図 8
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図 11
図 9
図 10
Cone-beam CT の実効エネルギーは MSCT と比
較した場合かなり低い値となっている(表 1).この実
効エネルギーを高めることで入射皮膚線量の低減
が可能であり,場合によっては若干の画質改善が可
能となる場合がある.
Cone-beam CT と一般的な3DCTとでは図9のよ
うに,体軸方向のX線の拡がり(コーン角)がかな
りことなっている.
このことは検出器でとらえる投影データそのも
のの組成に影響を与えることになる.つまり受光系
に到達する投影像には,照射幅が大きくなるほど顕著に散乱線が多く含まれるようになり,結果的に
は再構成画像の画質を大きく低下させる原因となる.図 10 は実験的にアクリル 20cm中央にカテーテ
ルと1年玉を挟み,絞り開放と約 2cm幅の絞りで撮影した時のそれぞれのライブ画像である.約 2cm
の幅は一般的なMSCTのZ軸方向のX線幅を想定したものである.絞り込んだ画像と絞り開放の画像で
は,明らかに映し出されたカテーテルと1円玉のコントラストに差があり,再構成画像に大きく影響
が出ることがわかる.この差の原因は受光系に入るX線の散乱線含有率の差によるものである.
そこで受光系への散乱線を減らすためにFPD前面のGridにさらに直交するGridを加えたり,頭尾方
向のX線幅を必要部分のみに絞り込こんだりすることが効果的である.
図 11 は Cross Grid と絞り込みを行った場合の結果である.axial image では明らかに中央部の濃
度低下(cupping artifact)が改善され,中央部に配置された小さなアクリル球の描出能が上がっている.
表 1
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3. 2 アキシャル面内のアーチファクト
patient tableの幅より小さい 20cm程度のファン
トムを撮影した際には,両端の table edge から発生
したと思われるシャワー状のアーチファクトが強
く表れることがある(図 12).アーチファクトの影響
を取り除くためには,回転照射野内に table が入ら
ないようにするか,ファントムと table の間に発泡
スチロールなどのスペーサを入れ,距離を空けるな
どの工夫が必要である.
また IVR 施行中の患者の四肢にはモニターや点
滴がつながっているために,Cone-beam CT 撮像時
に腕を上げるポジショニングを行うことは非常に
煩雑で支障を伴うが,腕を下げた状態での撮影では
腕が原因となる beam hardening やシャワー状のア
ーチファクトが強く表れ撮像画像の画質は明らかに
低下してしまう(図 13). 淡い濃染や欠損像を撮像の
目的とするならば煩雑ではあるが患者の腕上げは必
須と言える.
またこのような患者体位の変更は患者に接続され
たチューブやケーブルの位置が大きく変わるために
注意が必要である.
3. 3 線量評価
図 14 は腹部標準ファントムを用いて,GE 社製装
置のルーチンモードで撮影した際の撮影条件をもと
に,CTDIairを測定した結果である.
4. まとめ
Cone-beam CT は血管撮影室への CT 装置併設と
比較して明らかに省スペースではあるが,CT とはま
ったくことなる画像収集法の欠点によって,CT と同
じ画質レベルを有したアキシャル画像を得ることは
現時点では困難と考えられる.しかし適度な造影剤
濃度で造影した画像では,造影剤の分布域をアキシ
ャル画像や MPR 画像で観察することが可能であり,さらに高分解能な血管像の3次元構築が容易で
あることから, IVR での超選択的な塞栓術等をサポートする重要な撮影法であると言える.
図 12
図 13
図 14