久保 格致 · 回路シミュレーションはmicrocap...

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MicroCap5/CQ を用いたアクティブ フィルターの設計と製作 綿森道夫助教授 久保 格致 平成 13年 2月 9日 高知工科大学 電子・光システム工学科

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卒 業 研 究 報 告

 題      目

MicroCap5/CQ を用いたアクティブ

フィルターの設計と製作

指 導 教 員

綿森道夫助教授

報 告 者

久保 格致

平成 13年  2月  9日

高知工科大学 電子・光システム工学科

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目次第1章 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第2章 フィルターについて

2-1  アクティブ・フィルタ・・・・・・・・・・・・・・・・2

2-2  規格化低域通過フィルタの伝達関数・・・・・・・・・・3

   -1  2 次のバターワース特性・・・・・・・・・・・・・・・6

   -2  3 次のバターワース特性・・・・・・・・・・・・・・・8

   -3  4 次のバターワース特性・・・・・・・・・・・・・・・9

   -4  5 次のバターワース特性・・・・・・・・・・・・・・・10

第3章 Q の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

第4章 回路の設計

4-1  アクティブ・フィルタの設計・・・・・・・・・・・・・16   -1  RC フィルタの設計・・・・・・・・・・・・・・・・・16   -2  2 次のローパスフィルタの設計・・・・・・・・・・・・16   -3  3 次のローパスフィルタの設計・・・・・・・・・・・・20   -4  4 次のローパスフィルタの設計・・・・・・・・・・・・27   -5  5 次のローパスフィルタの設計・・・・・・・・・・・・32

第5章 回路の作成と評価

5-1  ローパスフィルタのプリントパターンの作成・・・・・・39   -1  1 次、2 次のローパスフィルタのプリントパターンの作成

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39    -2  3 次のローパスフィルタのプリントパターンの作成・・・415-2  回路の実測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46

第6章 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48

第7章 総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50

謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51

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1

第1章 序論

現代社会では電気製品無しでは生活できないくらいに電気製品は浸透してい

る。しかし、日常生活を普通に送っている限りそれら電気製品の中がどうなっ

ているかなど気にもとめることなどない。

今回は工学部の学生として電気製品を構成している回路というものに注目し、

回路というのはどういうものかということで、基本的な小規模回路としてアク

ティブフィルターを選択した。

アクティブフィルターとして安価で作れるRC回路を選び、理解しやすいバ

ターワース特性を学ぶこととした。回路シミュレーションはMicroCap

5/CQ、回路エディタはPCBEを使用した。

MicroCap5とはSpectrumSoftware社の回路シミュ

レーターでSPICEとの上位互換性のあるソフトである。これはWindo

ws上で回路図の作成から解析までの一連の操作が行えるようにしたもので回

路の設計、動作チェック、回路定数の変化による回路への影響、温度変化によ

る回路特性への影響という実際に設計した回路がどのように動くかが回路を作

る前に確認ができる、というメリットがある。

PCBEは高戸谷 隆氏が作られた実際のプリント基板を作るための回路エ

ディタである。プリンタで印刷して版下を作成できる、ガーバーファイル、ホ

ールファイルを出力できる、主な操作コマンドは、ツールバーに配置してある。

という機能を持ちあわせている。

これらを使い、回路を設計し、シミュレーションをして作成、そしてシミュ

レーションと実測値の違いなどを検証した。

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2

第2章 フィルターについて

2-1 アクティブ・フィルタ

低周波では形状が大きくて単価の高いコイルを使わず、抵抗とキャパシタと

増幅回路網で構成されているフィルタをアクティブ・フィルタと呼ばれている。

増幅回路にはOPアンプを使うことが一般的なので今回の研究でもOPアンプ

と使用した。増幅回路を使用せずにCR回路のみで構成された回路はパッシ

ブ・フィルタと呼ばれている。今回のように周波数が低い場合はアクティブ・フ

ィルタが効果的だが周波数があがってくるとOPアンプの周波数特性の関係で

設計どおりに動作しなくなるので高い周波数の場合はRCフィルタまたはLC

フィルタで設計しなくてはならない。

RCフィルタの中にOPアンプを使うことにより、フィルタ各段の出力イン

ピーダンスを遮断周波数fcに関係なく低インピーダンスにすることができる

ので、形状が小さくなるだけでなくフィルタ各段の遮断周波数とQを決定する

ためのCR定数を、前後の段から独立して設計することができる。これがアク

ティブ・フィルタの特徴である。

今回は前述のQを使用してCとRを求める方法と、伝達特性と接点方程式を

用いてCとRを求める方法の二通りで回路を設計した。

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3

2-2 規格化低域通過フィルタの伝達関数

伝達関数と接点周波数から回路定数を求める方法でフィルタを設計する場合、

まず希望するフィルタの設計仕様を満足する伝達関数を求めなければならない。

理想低域通過フィルタ(ideal low pass filter)は、図1に示すように規格化

遮断周波数が1で、通過域での振幅特性が1(0dB)で、かつ阻止域で0倍(-

∞dB)のフィルタである。しかし現実的にはここまでの理想的なフィルタを構

成することができないことが知られている。このために、理想低域通過フィル

タにできるだけ近づけるように回路を設計している。この近似させる方法はい

ろいろあるが、ここではバターワース特性について述べる。

図1

バターワース特性(Butterworth)の周波数特性は、関数 nx がnの大きいとき

1<x ではほぼ0、 1>x では∞に近くなるという性質を利用している。具体的に

は実現性を考慮して、

njH

21

1|)(|ω

ω+

= -①

の特性を持つ。ただし、n はフィルタの次数(order)であり、ωは規格化周波数

(normalized frequency)である。周波数がω=0の付近では十分に平坦な特性を

持ち、 1>ω ではほとんど0となる。周波数が 1=ω の遮断周波数 (cuttoff

frequency)の点で、1/ 2(-3dB)の減衰がある。周波数の範囲が 10 ≤≤ ωの範囲を通過帯域(passband), ω<1 を減衰帯域(stopband)という。遮断周波数よ

り高い周波数の領域では、フィルタの次数をnとすると、約 [ ]decdBn×− 20 の

傾きで減衰する。

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

0.00.01 0.1 1 10

 通過域  阻止域

減衰率

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4

図 2

 図2にフィルタの次数の違いによる周波数特性を示す。フィルタの次数が多

くなるに従い、減衰が大きくなるのがわかる。フィルタの次数はフィルタの設

計仕様により決定しなければならないのが普通であるが今回は次数の違いによ

りどのような特性の差が出るかの研究なので1次から5次までの回路を設計し

て違いを見ることにした。バターワース特性の伝達関数は①の式を2乗して

)(1

1)(

2

2sGjH

n=

+=

ωω

とする特性関数 )(sG を考える。 ωjs = であるから上式より、

n

j

ssG

2

1

1)(

+

= を得る。

この式の分母を0とする代数方程式の解は

12

−=

n

j

s

πje −=を解くことで得られる。 ( )js は絶対値1の複素円上にあるはずであるからこ

れを αje とすると

ππα −= kn 22となる。ただし nk 2,,2,1 ⋅⋅⋅⋅⋅⋅= である。したがって根は

πsn

kj

kjes

12 −

= となる。

根k

s は複素平面上の単位円の円周上を n2/π の角度で等間隔に配置される。nが

奇数の場合は実軸上に-1の根を持つ。

正極側をとると伝達関数 )(sH は不安定となるので右半円の解を捨て、左半円上

の点を極として計算する。

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5

なぜ負極側をとるのかは、

n

c

2

1

1

+

ωω

 ’

この式を解くことを考える。

の中をいったん複素数に拡張して、絶対値が等しい2つの関数の積

)()(12

sgsfn

=

+ωω

となるようにする。

ただし| )(sf |=| )(sg |である。

この時、バターワース関数

n

c

2

1

1

+

ωω

は)(

1sf

または)(

1sg

ただしc

jsωω= で与えられる。

c

jsωω= とおいて

n

c

2

1

+

ωω

n

j

s2

1

+ は n2 個の解

nsss

221..,........., を用いて

n

c

2

1

+

ωω

= ( )1

ss − ( )2

ss − ・…… ( )n

ss2

− と積の形にかける。

)()()( sksgsf ⋅⋅ = )()()( sksgsf ⋅⋅ がいえるので絶対値の等しいものどおし

を2つに分類する。

例えば、 )(1

ss − と )(2

ss − を用いて

bjas +=1

、 djcs +=2

、 ωjs = とすると

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6

( )

( )22

2

221

dcss

bass

−+=−

−+=−

ω

ω

 つまり db =   ca ±= ということになる

以上のことを踏まえて絶対値の等しいもの同士を2つに分類すると

( )( ) ( )1231 −

−⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅−−n

ssssss

( )( ) ( )n

ssssss242

−⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅−−

となるので

n

c

2

1

1

+

ωω

= ( )( ) ( )1231

1

−−⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅−−

nssssss

または

n

c

2

1

1

+

ωω

= ( )( ) ( )n

ssssss242

1

−⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅−−

となる。

ここで、計算上は正極側、負極側どちらでもよいのだが、現実で回路を作る場

合、正極側をとると負のコンデンサを使うこととなり、正のコンデンサで作る

と帰還の位相が入力位相と同位相になり、発振してしまい実現不可能なので負

極側をとる。

2-2-1 2次のバターワース特性

フィルタの次数が 2=n の場合、特性関数は

411

)(s

sG+

= であるから、その極は

πjes =−= 14 なので

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7

ππ24

1 kjj

es+

= となる。

ここでαjes = と考えると

ππα24

1 k+= になり

πα41

0 =→=k    πα43

1 =→=k

πα45

2 =→=k    πα47

3 =→=k

以上から負極側を選択すると

 2

1

2

11

js +−=

 2

1

2

12

js −−=

の二つの極が得られる。

2 次の 2 つの極

これより伝達関数 )(sH は

)(sH ( )( )

( )

12

1

1

1

2

2121

2

21

++=

++−=

−−=

ss

ssssss

ssss

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8

2-2-2 3次のバターワース特性

 3次の場合は 3=n なので

611

)(s

sG+

= であるから、その極は

06 1 jes == なので

π3k

jes = となる。

ここでαjes = と考えると

πα3k= になり

00 =→= αk    πα31

1 =→=k

πα32

2 =→=k    πα33

3 =→=k

πα34

4 =→=k    πα35

5 =→=k

以上から負極側を選択すると

23

21

1js +−=

12

−=s

 23

21

3js −−=

の3つの極が得られる。(次項参照)

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3 次の 3 つの極

これより伝達関数 )(sH は

)(sH ( )( )( )

( ) ( )

1221

1

1

23

321133221321

23

321

+++=

++++++−=

−−−=

sss

sssssssssssssss

ssssss

2-2-3 4次のバターワース特性

2次、3次と同様にして

811

)(s

sG+

= であるから、

ππα48

1 k+−= になり

80

πα −=→=k    πα

81

1 =→=k

πα83

2 =→=k    πα85

3 =→=k

πα87

4 =→=k    πα89

5 =→=k

πα811

6 =→=k    πα813

7 =→=k

以上から負極側を選択すると

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10

js 924.0383.01

+−=

js 924.0383.02

−−=

js 383.0924.03

+−=

js 383.0924.04

−−=

の4つの極が得られる。

     4 次の 4 つの極

これより伝達関数 )(sH は

)(sH ( )( )( )( )

( ) ( )

1848.11

1766.01

11

1

22

4343

2

2121

2

4321

++⋅

++=

++−⋅

++−=

−−−−=

ssss

ssssssssssss

ssssssss

2-2-4 5次のバターワース特性

3次の場合も同様に

1011

)(s

sG+

= であるから

πα5k= になり

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11

50

πα −=→=k    πα

50

1 =→=k

πα51

2 =→=k    πα52

3 =→=k

πα53

4 =→=k    πα54

5 =→=k

πα55

6 =→=k    πα56

7 =→=k

πα57

8 =→=k    πα58

9 =→=k

以上から負極側を選択すると

js 951057.0309015.01

+−=

js 951057.0309015.02

−−=

13

−=s

js 587788.0809015.04

+−=

js 587788.0809015.05

−−=

以上より5つの極が得られる。

5 次の 5 つの極

これより伝達関数 )(sH は

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)(sH ( )( )( )( )( )

( ) ( ) ( )

161803.11

161803.161803.11

11

1

223

5454

2

321133221321

23

54321

++⋅

+++=

+++⋅

++++++−=

−−−−−=

sssss

sssssssssssssssssssss

ssssssssss

 となる。

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第3章 Q の定義

第2章で述べた伝達関数

n

j

ssH

2

1

1)(

+

= より求めた複素平面上の極k

s で実軸を対称にした極の和の

逆数が Q である。

伝達関数は

次数が偶数のフィルタの場合、2次の伝達関数の積。

))((1

))((1

))((1

)(14321 nn

sssssssssssssH

−−⋅⋅⋅⋅⋅

−−⋅

−−=

次数が奇数のフィルタの場合は1次の RC フィルタと2次の伝達関数の積で

考え、1次の RC フィルタの部分は 1−=k

s ということになる。

))((1

))((1

))((1

11

)(124321 −−

−−⋅⋅⋅⋅⋅

−−⋅

−−⋅

+=

nnsssssssssssss

sH

以上の伝達関数の2次部分を一般的に表したものを

1)(1

))((1

1

21

++−=

−−−−

ssssssssnnnn

とすると

Q=nn

ss +−

−1

1

が Q の定義になる。

2章の伝達関数より2次と3次の Q を求めてみる。

2=n の場合

  221

−=+ ss

 ゆえに

 Q=2

1

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14

3=n の場合

   131

−=+ ss

  ゆえに

  Q=1以下同様に求めるわけだがテキストにバターワース特性の正規化テーブルが載

っていたので今回はそちらを使用した。

計測のためのフィルタ回路設計より抜粋。

  c

f      Qn

2 次1

f 1.0 Q1

0.707107

1f 1.0 Q

10.53 次

2f 1.0 Q

21

1f 1.0 Q

10.5411964 次

2f 1.0 Q

21.306563

1f 1.0 Q

10.5

2f 1.0 Q

20.618034

5 次

3f 1.0 Q

31.618034

1f 1.0 Q

10.517638

2f 1.0 Q

20.707107

6 次

3f 1.0 Q

31.931852

1f 1.0 Q

10.5

2f 1.0 Q

20.554958

3f 1.0 Q

30.801938

7 次

4f 1.0 Q

42.246980

1f 1.0 Q

10.509796

2f 1.0 Q

20.601345

3f 1.0 Q

30.899976

8 次

4f 1.0 Q

42.562915

この表で1次のところが Q=0.5 となっているが、伝達関数 )(sH は入出力の電圧

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15

比でもあるので

11

1

1

)(+

=+

=sCR

sCR

sCsH

となり j が残ってしまう。

1 次のときは形式上 Q と書いてあるが普通の RC フィルタで考える。

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第4章 回路の設計4-1 アクティブ・フィルタの設計

 伝達関数を用いる方法と Q を用いる方法の2つの方法で、2次、3次、4次、

5次のアクティブ・フィルタを設計し、両方を比較する。

また、1次の RC フィルタも次数の変わるとどのように変わっていくかの比較

のためにアクティブ・フィルタではないが設計する。

4-1-1 RC フィルタの設計

Ω== kRkHzfc

10,1 として

RfC

cπ21= より

nFC 16=

4-1-2 2次のローパスフィルタ設計

2次のバターワース回路より

011

1

2

12

111

211

=−−

+++−

out

inVCj

R

VVCj

RRR

Vωω

   01

122

22

11 =

++− VCj

RR

012

=−out

VV

という方程式ができるが、実際に回路を作るときには2つの抵抗値を同じに

するので、

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21RRR == として

02

112

111=−−

++−

out

in VCjR

VVCj

RR

Vωω  -①

01

12211 =

++− VCj

RR

Vω  -②

012

=−out

VV -③

③より

outVV =

12-③’

②,③’より

( )out

VRCjV211

1 ω+= -②’

①、②’③’より

( ) 012

121=−−+

++−

out

out

out

in RVCjR

VVRCjCj

RR

Vωωω

( )( )

12121 outoutoutinRVCjVVRCjRCjV ωωω −−++=

  ( )out

VRCCRCjRCj 2

21

2

122 ωωω −++=

221

22

211

RCCRCjV

V

in

out

ωω −+=

  

2211

2

221

12

1

RCCRCj

RCC

−+−=

ωω

   )( ωjH=

これを先ほど求めた伝達関数と比較する。

12

1)(

2 ++=

sssH

ここでc

jsωω= とおくと

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18

22

2

2)(

cc

c

cj

jHωωωω

ω

ωω

++−= となり

cRCω2

2

1

=

22

21

1cRCC

ω=

ゆえに

RC

RC

c

c

ω

ω

22

2

2

2

1

=

=

以上のことから

1:2:21

=CC であることがわかる。

ここで Ω== kRkHzfc

10,1 とすると

ccfπω 2= より

431 1011012

1

22

2

×⋅×=

⋅=

ππ RfC

c

81025.2 −×≈nF5.22=

1:2:21

=CC より

nFC 25.112

=

次に Q を使う方法での回路を設計する。

Ω==== kRRRkHzfc

10,121

として

正規化表より Q=0.707107 なので

nFRf

Cc

f9.15

21 ==

π

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19

=1

C 2Q nFCf

5.22=

nFC

C 25.112

12

==

となり、 )(sH から求めた値と同じになる。

これを MicroCap5 で回路を作ると以下のようになる。

上図で out1 が 1 次のRC フィルタで out2が 2次のアクティブ・フィルタの出力

である。またバッファとしてオペアンプを用いた。

この out1と out2で遮断周波数とその 10倍の周波数での利得をシミュレーショ

ンしたのが下図である。(次項参照)

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20

青いラインが 1 次の RC フィルタ、緑のラインが 2 次のバターワースフィルタ

である。下の Left 部分、上段の青字で-3.000 の下に 0.976Kと書いてあるのが

out1 の遮断周波数で下段の-20.000 の下に 9.958K と書いてあるのが-20dBでの周波数である。理論上は 1次のRCフィルタは遮断周波数1kHz、-20dB/decなのでほぼ満たしているといえる。同じようにRight 部分、上段の緑字で-3.000の下に 0.965Kと書いてあるのが out2の遮断周波数で下段の緑字で-40.000の

下に 10.000K と書いてあるのが-40dB での周波数である。これも理論上は遮

断周波数 1kHz、-40dB/dec なのでほぼ満たしているといえる。

4-1-3 3次のローパスフィルタ設計

3次のバターワース回路より

節点方程式は

  011

2

12111

211

=−

+++−

R

VVCj

RRR

Vin ω

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21

011

23

13122

322

11 =−−

+++−

outVCj

R

VVCj

RRR

Vωω

   01

13333

12 =

++− VCj

RR

013

=−out

VV

という方程式ができるが、実際に回路を作るときには3つの抵抗値を同じに

するので、

321RRRR === として

  02 12

111=−

++−

R

VVCj

RR

Vin ω -①

02

213

12211 =−−

++−

outVCj

R

VVCj

RR

Vωω -②

01

13312 =

++− VCj

RR

Vω -③

   013

=−out

VV -④

となる。

④より

outVV =

13-④’

③,④’より

( )out

VCjR

V3

12 1 ω+=

( )out

VRCjV313

1 ω+= -③’

①、③’より

( ) 012

3111=+−

++−

out

in VRCjVCjRR

Vωω

( )out

in VRCjRR

VVCj

R 31111

12ωω ++=

+

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22

 outin

VCj

RR

RCjV

CjR

RV

+

++

+

=

1

3

1

11 2

1

21

ω

ω

ω-①’

①’、②より

( ) ( ) 012

2

2123

2

1

3 =−−+

++

+

++⋅−

out

out

out

outin VCjR

VVRCj

R

RCj

RCj

VRCjV

Rωω

ω

ω

ω

( )( )( ) ( ) 0

11

2

2

1

22

32

1

3

1

=

+

−+

++

+

+=

+ out

in VR

RCjRCj

R

RCj

RCjR

RCj

RCj

V ωω

ω

ω

ω

ω

−++−+−+++−−= 2

212

12

32

212

213

22)1)(224(1

RCCRCjRCjRCjRCCRCjRCjRCj

V

V

out

in

ωωωωωωωω

  

+−−−−−−+−+++−−

= 221

212

3321

3221

2

221

23

221

2213

222242241RCCRCjRCjRCCCjRCC

RCCRCjRCCRCjRCjRCjωωωωω

ωωωωωω

   ( ) ( ) 3

321

32

32

2

31

2

13231 RCCCjRCCRCCRCRCj ωωω −+−++=

( ) ( ) 3321

3232

231

213

2311

RCCCjRCCRCCRCRCjV

V

out

in

ωωω −+−++=

ここで分子分母を 3

321RCCC で割ると

3

321

2

32

2

3121

23

3

321

113112

1

RCCCRCCRCCj

RCRCj

RCCC

V

V

out

in

+

++

+⋅−−

=

ωωω

これを伝達関数 )(sH と比較する。

2章で求めた122

1)(

23 ++=

+ ssssH

これをc

jsωω= とおくと

3223

2

22)(

ccc

c

cj

jHωωωωωω

ω

ωω

++−−= となるので

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23

=

=+

=

+

33

321

22

322

21

12

1

213

211

2

c

c

c

RCCC

RCCRCC

R

RCRC

ω

ω

ω

ここでコンデンサ321

,, CCC を

1,1

,1

,1

321

==== RC

ZC

YC

Xc

ω とすると

XYZ=1 -①

)3(2 ZXY += -②

)(22 YX += -③

以上のことから

③より 11+−=

=+XY

YX -③’

②、③’より

XXX

Z

XZXXZXXZX

ZXX

−+−=

−=+−++−−=

++−=

1233

)1(233332

)3)(1(2

2

2

2

-②

①、②’より

012331

233)1(1

3

2

=−+−−

+−−=

XXX

XXXX

これをMathmaticaを使って解くと

iX 66659.0148971.0,718057.0 ±= であるが

必要なのは実数解なので

718057.0=X

このXを使いYとZを解くと

93946.4281943.0

==

ZY

Rω を元に戻して321

,, CCC の値が決まる。

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24

ここで Ω== kRkHzfc

10,1 とすると

7

1102242386.0

2718057.011 −×=

×==

RfRXC

ccπω

nF4.22=7

21056477.0

2281943.011 −×=

×==

RfRYC

ccπω

nF5.56=7

310032237.0

293946.411 −×=×

==RfRZ

Ccc

πω

  nF2.3=

設計した回路図は以下の図である。

この回路のシミュレーション図は以下の図である。(次項参照)

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25

 遮断周波数が942Hz と予定とは違ってしまっているが、10kHz でほぼ

-60dB と-20×ndB/dec とこちらの方は予定通りに動いた。

次に Q を使う方法での回路を設計する。

Ω===== kRRRRkHzfc

10,1321

として

正規化表より Q1=0.5、Q

22=1より

1 次の部分は普通のRCフィルタなので

nFRf

Cc

9.152

11

==π

2 次の部分は

nFRf

Cc

f9.15

21 ==

π

=2C 2Q nFCf

8.312

=

nFC

C 95.72

13 ==

設計した回路図としては以下のようにした。(次項参照)

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26

この回路のシミュレーション結果は以下のようになった。

こちらも遮断周波数が 944Hz と予定より少し低いが、10kHz では-59.982dBとほぼ-60dB を満たしている。

今回は )(sH から求めた値と異なっている。

その理由としては以下のような回路があったとすると

RC部分は 1 次のフィルタ、この出力側に回路 RL があったとすると

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27

回路 RL

この回路の伝達関数は

)1

(

1

)//1

(

//1

RLCjR

RLCj

RLCj

R

RLCj

++

+=

+ ω

ω

ω

ωなので

RL が非常に大きければCjR

Cj

RLCjR

RLCj

ωω

ω

ω

+=

++

+

)1

(

1

となり

RC 回路に影響はほとんどないが、RL が小さいと Va の電圧が変わって RC 回

路の特性が変わってしまう。Q を使って設計するほうはバッファを挟むので後

ろの回路のことは考えなくてよいが H(s)から求める方法では後ろの回路のこと

も考慮しているのでコンデンサの値が変わってくる。

4-1-4 4次のローパスフィルタ設計

4 次のフィルタは2次のフィルタを 2 段に直列接続すればよいので節点方程

式は4-1-2の式をそのまま使う。

まず、1 段目の C の値を決める。

2 次のフィルタの電圧比は

  

2211

2

221

12

1

)(

RCCRCj

RCCjH

−+−=

ωωω

これを先ほど求めた伝達関数と比較する。

1766.01

)(2 ++

=ss

sH

ここでc

jsωω= とおくと

22

2

766.0)(

cc

c

cj

jHωωωω

ω

ωω

++−= となり

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28

cRCω766.0

2

1

=

22

21

1cRCC

ω=

ゆえに

RC

RC

c

c

ω

ω

2766.0766.0

2

2

1

=

=

になる。

ここで Ω== kRkHzfc

10,1 とすると

ccfπω 2= より

71 10766.01

2766.02

××=

⋅=

ππ RfC

c

710416.0 −×≈nF6.41=

RC

cω2766.0

2= より

72 104766.0

2766.0

××==

ππ RfC

c

7100609.0 −×≈nF1.6=

続いて 2 段目の回路を設計する。

22

2

848.1)(

cc

c

cj

jHωωωω

ω

ωω

++−= なので

cRCω848.1

2

3

=

22

43

1cRCC

ω=

ゆえに

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29

RC

RC

c

c

ω

ω

2848.1848.1

2

4

3

=

=

になる。

ここで Ω== kRkHzfc

10,1 とすると

ccfπω 2= より

73 10848.11

2848.12

××=

⋅=

ππ RfC

c

81072.1 −×≈nF2.17=

RC

cω2848.1

4= より

74 104848.1

2848.1

××==

ππ RfC

c

81047.1 −×≈nF7.14=

次に Q を使う方法での回路を設計する。

Ω====== kRRRRRkHzfc

10,14321

として

正規化表より Q1=0.541196、Q

2=1.306563 なので

nFRf

Cc

f9.15

21 ==

π

=1

C 2Q 891

1072.1109.15541196.02 −− ×=×××=f

C

  nF2.17=

89

12

1047.105411962

109.152

−−

×=×

×==Q

CC f

nFC 7.142

=

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30

=3

C 2Q 892

1016.4109.15306563.12 −− ×=×××=f

C

  nF6.41=

99

24

1008.6306563.12

109.152

−−

×=×

×==Q

CC f

  nF1.6=となり、どちらのやり方でも 1 段目と 2 段目の C の数値が逆になったが値的に

は同じになった。

これを MicorCap5 で回路を作ると以下のようになる。

この図では Q を使った式の順番でCが並んでいるが入れ替えても同じなのでシ

ミュレーションもこの回路一つで行った。シミュレーション結果は下図である。

(次項参照)

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31

図を見ると遮断周波数が 928Hz、‐80dB/dec であることがわかる。4 次のバタ

ーワース特性は顕著に出ているが遮断周波数の誤差が‐7%になってしまって

いる。ただこれはグラフの表示範囲を-50dB くらいにすると遮断周波数が

985Hz に変化するのでソフト的な問題と思われる。(下図参照)

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32

4-1-4 5 次のバターワースフィルタの設計

5 次のフィルタも 3 次と 2 次に分けて考えられるので先に 3 次の方を考えてみ

ると、前章で求めた

161803.161803.11

)(23 ++

=+ sss

sH

これをc

jsωω= とおくと

3223

2

61832.161803.1)(

ccc

c

cj

jHωωωωωω

ω

ωω

+−−= となるので

=

=+

=

+

33

321

22

322

21

12

1

61803.113

61803.111

2

c

c

c

RCCC

RCCRCC

R

RCRC

ω

ω

ω

3 次のときと同様にして解くと

93946.4281943.0718057.0

===

ZYX

Ω== kRkHzfc

10,1 とすると

7

110224.0

2710347.011 −×=

×==

RfRXC

ccπω

nF4.22=7

210613.1

20986685.011 −×=

×==

RfRYC

ccπω

nF161=7

310011.0

22676.1411 −×=×

==RfRZ

Ccc

πω

  nF1.1=

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33

次は残りの 2 次の部分を設計する。

161803.11

)(2 ++

=ss

sH

ここでc

jsωω= とおくと

22

2

61803.1)(

cc

c

cj

jHωωωω

ω

ωω

++−= となり

cRCω61803.1

2

4

=

22

54

1cRCC

ω=

ゆえに

RC

RC

c

c

ω

ω

261803.161803.1

2

5

4

=

=

になる。

ここで Ω== kRkHzfc

10,1 とすると

774

10257.01061803.1

1261803.1

2 ×=××

=⋅

=ππ Rf

Cc

nF7.25=

RC

cω261803.1

5= より

775

10098.0104

61803.1261803.1 −×=

××==

ππ RfC

c

nF8.9=

設計した回路図は以下の図である。(次項参照)

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34

シミュレーション結果は

遮断周波数 1.015kHz、‐99.804dB/dec と理想に限りなく近いシミュレーショ

ン結果になった。

次に Q を使った 5 次のバターワースフィルタの設計は

Q 5.01= 、Q 681034.0

2= 、Q 618034.1

3=

kHzfRRRRRRc

1,54321

====== として

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35

1 段目は 1 次のパッシブ・フィルタなので

71 1021

21

××==

ππ RfC

c

nF9.15=2 段目は

87

1059.1102

12

1 −×=××

==ππ Rf

Cc

f

22

=C Q 72

10197.0 −×=f

C

nF7.19=

7

23

10129.02

−×==Q

CC f

nF9.12=3 段目は

24

=C Q 73

10515.0 −×=f

C

nF5.51=

7

35

100492.02

−×==Q

CC f

nF9.4=これをもとに以下のような回路図を作成した。(次項参照)

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36

この回路をシミュレーションした結果が以下の図である。

 図を見ると遮断周波数が 916kHz と目的の 1kHz からの誤差が-8%以上とだ

いぶ開きがあるが-100dB/dec とこちらの方はほぼ理想どおりの結果が得られ

た。しかし、4 次のフィルタのとき同様に Y 軸の範囲を変えてみると遮断周波

数が違う結果になった。シミュレーションの結果を以下に示す。(次項参照)

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37

10kHz では同様の-100dB であるが遮断周波数が 983kHz と 1kHz にかなり

近く-2%程度の誤差で充分と言える結果が出た。

4-2-1 OP アンプの特性

1 次から 5 次までの回路をシミュレーションしたが 1 次のパッシブ・フィルタ

以外はどれも 100kHz 付近でディップが発生している。これはパッシブ・フィル

タでは発生していないことから OP アンプが原因であると考えられる。今回の

研究では安価であることと入手しやすいという理由からナショナルセミコンダ

クタ社の LF353 という OP アンプを使用した。この LF353 がほかの素子を繋

がず、単体で今回のような正帰還に接続するとどのような動作をするか調べて

みた。

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38

これをシミュレーションしてみたところ以下のような結果が得られた。

やはり 100kHz 付近で特性が変化してしまっている。これが原因であると思

われる。ただ LF353 の仕様書では利得帯域幅が 4MHz と書いてあるで、40kHzまでのローパスフィルタは動作的に保証されているといえるので今回は 1kHzが遮断周波数として設定しているので動作上問題はないといえる。

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39

第 5 章 回路の作成と評価

5-1 ローパスフィルタプリントパターンの作成

回路の作成としてシミュレーションでは 5 次の回路までしたが作成するにあ

たり、4 次以上は 2 次と 3 次の回路の結合なので 3 次までの回路を作成できれ

ば、次数に関係なく回路を作成できると考え、1 次、2次、3 次のローパスフィ

ルタを作ることにした。

作り方の流れとしては、

① MicroCap5を使って作った回路を元にPCBE で基板のプリント配線のパタ

ーンをつくる。

② それをプリンタでマスク用のフィルムにパターンを打ち出す。

③ そのパターンを感光基板に焼き付ける。

④ 現像、エッチング。

⑤ パターンにあわせて基板に素子を乗っけていく。

と、いう流れで作る。

5-1-1 1次、2次のローパスフィルタのプリントパターン作成

4章で設計した回路を作ろうとしたところ、このままではコンデンサの値を

実現するのに適当な容量のコンデンサがないので、コンデンサを中心に回路を

作り直すことにした。コンデンサは E22 系列を使用した。

1次のフィルタではコンデンサと抵抗の値を決める式としてはRf

Cc

π21= と

用いていたのでコンデンサを中心に nFC 10= としたら Ω= kR 9.15 になるので、

もっとも近い値で Ω== kRnFC 16,10 を使って作ることにした。

また、2 次のフィルタでは nFCnFC 11,2221

== とし、抵抗は 10k のままで作

ることとした。製作に取り掛かる前に MicroCap5 を使って動作シミュレーショ

ンを行った。(次項参照)

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40

1 次のフィルタが遮断周波数 976Hz、ほぼ-20dB/dec、2 次のフィルタが遮

断周波数 1009Hz、ほぼ-40dB/dec なのでシミュレーション上は問題がないの

がわかった。

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41

5-1-2 3 次のローパスフィルタのプリントパターンの作成

同様にして 3 次のフィルタもコンデンサをもとに抵抗の値を決める。

並列に繋げばかなり細かい値まで実現できるがなるべく少ないコンデンサで

近い値になるようにコンデンサの値を決めた。Q を使わないで設計したほうは、

nFCnFCnfC 2.3,5.56,4.22321

=== なので2

C は nF47 と nF10 、3

C は nF2.2 と nF1

を並列に繋ぐことにした。 R は Ωk10 のままにする。

 動作的には遮断周波数 948kHz と理想値より-5%程度、-60dB/dec もほぼ

満たしている。

次に Q から求めたほうだが、 1:495.7:8.31:32

==CC なので21

,CC を nF22 、

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3C は nFnFnF 2.2,2.2,1 を使い nF4.5 とした。

シミュレーション結果は

遮断周波数 985kHz、ほぼ-60dB/dec とかなり理想値に近い値になった。

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これが PCBE を使って作成したプリントパターン図である。

感光するときに失敗することもあるのでこれらをいくつか複写してフィルムに

印刷した。

出来上がったフィルム

次に現像する。

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現像

エッチング

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これらの作業で残ったプリントパターン上の感光剤をヤスリで削ると以下のよ

うになる。

こうしてできたプリント配線が途中で断線していないかをテスターでひとつひ

とつ調べて断線していないものを切り取りその上に回路図どおりに素子を乗っ

けていく。

1 次と 2 次のローパスフィルタ

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3 次のローパスフィルタ

回路パターンを書くとき、コンデンサや抵抗を並列や直列に繋ぐことを考えて

いなかったので多少無理のある形になってしまった。

5-2 回路の実測

以下の器材を用いて作成した回路の実測をした。

① KENWOOD 社製 FUNCTION GENERATOR (交流電圧源用)② 同社製 DISTORTION METER (利得測定用)③ 同社製 REGULATED DC POWER SUPPLY ×2(OPア

ンプ直流電源用)

測定をするための初期値は 1 次から 3 次まですべて同じ条件で行った。

入力電圧1v、OP アンプ直流電圧+15v、-15v

150Hz 付近で出力が入力電圧と同じである。

これらを確認した上で以下の観測をした。

-3 d B -2 0 d B -4 0 d B -6 0 d B 10kHz1 次 992Hz 10.07kHz 97.6kHz -20dB2 次 920Hz 3.90kHz 9.66kHz -40dB3 次① 977Hz 2.28kHz 4.87kHz 11.36kHz -58dB3 次② 965Hz 2.29kHz 4.93kHz 11.42kHz -58dB

シミュレーションでは 100kHz 付近でディップが発生していたが実測では発

生しなかった。また、OP アンプも-3dB になるのは 1.4MHz と 200kHz ほ

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ど理論値よりも低かった。

実測した結果をグラフとして表すと

実測では目盛り読み取り誤差などがあるせいか、曲線が多少波打ったりして

いるが全体的にはだいたいシミュレーションどおりの結果になった。

-60

-50

-40

-30

-20

-10

0

10

1000 104

実測値

2次1次3次3次Q使用

周波数(Hz)

dB

1次

3次

2次

3次Q使用

ゲイ

150

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6章 結果 シミュレーションと実測値の差

1 次-20dB/dec

2 次-40dB/dec

3 次-60dB/dec

3 次 Q 使用-60dB/dec

シミュレーション 976Hz 965Hz 948Hz 985Hz遮断周波数( -3dB) 実測 992Hz 924Hz 990Hz 960Hz

シミュレーション 9.958kHz 10.228kHz 10.009kHz 10.176kHz/dec実測 10.07kHz 9.66kHz 11.36kHz 11.42kHz

 比較してみると抵抗やコンデンサの値は同じなのだがやはりシミュレーションと実測

値では違いが出るようだ。しかし、3 次の 60dB 下がるところ以外はさほどの差

にはならなかった。ただ 3 次の場合は-60dB と値がかなり小さいので多少の誤

差は測定器の精度などの関係で現れてしまっていると考えられる。

全体的に見て次数nが上がるにつれて-20dB/dec を満たしているのでバター

ワース特性のローパスフィルタとしては実際に回路として有効性はあるとい

える。

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7 章 総括実際に回路を作ったのは 3 次までではあったが、だいたい予定通りの動作を

してくれた。次数が奇数のフィルタを設計する場合、手間などを考えると正規

化表があるならば 1 次と 2 次のフィルタを接続したほうがよいと考えられる。

低い周波数のうちはいいが、高い周波数帯まで使えるフィルタを設計する場

合はよほど高性能なOPアンプを使うか OP アンプを使わないで設計する必要

があると思われる。

今回は基礎的な回路を作成するだけだったので充分だったが複雑、巨大な回

路を作成する場合、それなりの性能のソフトとハードが必要である。

今回の研究にでは自分の望みの遮断周波数から抵抗、コンデンサの値を決め

て MicroCap5/CQ を使い回路のシミュレーションをし、PCBEで回路のパタ

ーンの作成と、簡単ではあるが一つの回路ができるまでの一連の流れを体験し

た。途中の計算式が違って思い通りにシミュレーションの結果がでなかったり、

基板のプリントパターンを作る過程での失敗、計測時に原因不明と思われた誤

動作、初めて触る計測機器の使用法など思っていた以上にすんなりとはいかな

かった。しかし企業などでは個々の部門に分かれて全体に携わることはおそら

くないであろうと思われるので今回の研究では大変貴重な体験ができた。

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参考文献① 小高明夫・佐藤邦夫著 「改訂版」SPICE による電子回路の基礎(東海大学

出版界)

② 黒田徹著 はじめてのトランジスタ回路設計(CQ出版社)

③ 計測のためのフィルタ回路設計(CQ出版社)

④ トランジスタ技術 SPECIAL No.44 特集 フィルタの設計

⑤ トランジスタ技術 SPECIAL No.56 特集 電子回路シミュレーター活用

マニュアル(CQ出版社)

⑥ T・グレイ、J・グリン著 榊原進訳 Mathematica ビギナーズガイド(アジ

ソン ウェストレイ・トッパン)

⑦ JOHN KEOWN 著 町好雄訳 SPICE による電子回路設計(東京電気大

学出版局)

使用ソフト

① MicroCap5/CQ SpectrumSoftware 社

② PCBE 高戸谷隆 氏

③ KaleidaGraph ヒューリンクス社

④ Mathematica アジソン ウェスレイ・ジャパン社

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謝辞 今回の研究と論文の作成にあたり、終始丁寧なご指導と、ご教示を承りまし

た高知工科大学電子・システム工学科綿森道夫助教授に深い感謝の意を表しま

す。

また本研究の遂行にあたり、適切なるご助言を賜った橘昌良助教授に深い感謝

の意を表します。

 高知工科大学電子・光システム工学科在学中にご指導を賜った原央学科長に

心から感謝いたします。

最後に高知工科大学電子・光システム工学科在学中、本研究の実験遂行、各

過程で終始ご厚意、ご協力を頂いた高知工科大学電子・光システム工学科、平木

昭夫教授・河津哲教授・河東田隆教授・神戸宏教授・成沢忠教授・矢野政顕教

授・畠中兼司教授・西本俊彦教授、野中弘二助教授・八田章光助教授・井上昌

昭助教授・関口晃司助教授、笠原泰講師、武田光由実験講師、西田謙助手の方々

に重ねて感謝の意を述べさせていただきます。

また、本研究を遂行するにあたり細部にわたり実験にご協力いただいた梅村佳

克氏、嶋真秀氏、新田敏弘氏、長谷川和也氏に感謝いたします。