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Page 1: 文様とその歴史 - 中津市役所...文様とその歴史 文様とは 草花文や雷文など、美術作品には多くの文様が使われています。幾何学的なものから、動
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文様とその歴史

◇文様とは

草花文や雷文など、美術作品には多くの文様が使われています。幾何学的なものから、動植物をもとにしたものまで、その種類は様々です。特に工芸作品ではいろいろな形で、文様が使われています。

単独の文様主に動植物を元にした文様が多い。図柄は単独で、繰り返すことはない。いくつかの要素を持つもの、単独で文様になるものの両方がある。

連続した文様一つのパターンを繰り返す文様。幾何学的な要素が強いが、元々は自然物である文様もある。一面に用いられる文様の他、線状に連なる文様もある。

立涌文様

蝶文様

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土器、漆器の他にも、青銅器などに文様を確認することができる。魔除けや祭祀道具としての文様、そこから転じた装飾的な文様とともに、大陸からもたらされたであろうものも増えていく。

◇文様の歴史

文様の歴史は古く、縄文・弥生時代の土器や漆器にも幾何学的な模様などが付けられています。祭祀的な意味合いを持ったものから、装飾的なものまで、多くの文様が造られ、使われていきます。

「雲形文漆塗り土器」(縄文時代、青森県立博物館蔵)

「加茂岩倉井堰出土銅鐸」(弥生時代、加茂町蔵)

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仏教の伝来や神道の発展、他国・他地域との交流によっても文様の種類は増えていく。同時に工芸品制作の技術も向上、多くの名品が生まれてきた。庶民の衣服などには、草花など身近なものをもとにした文様が用いられ、文様の幅はどんどん広がっていく。

宝珠文様

三つ巴文様唐花唐草文様

宝相華文様

寺院内陣の柱などに描かれている極彩色の花が宝相華。

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現在、美術作品については「文様」が一番よく用いられる。併せて、解説などでも「文様」が使われることが多い。連続したものについては「模様」が使用されることもあるが、単独のものについてはほとんどが「文様」。慣例的に「紋様」が使われる作品もある(古いものが多い)

◇文様と紋様と模様

作品によって、「文様」とされていたり、「紋様」とされていたり……。似た言葉に「模様」もあります。作品ジャンルによっては実は使い分けされているこれらの言葉を一度確認してみます。

文様幾何学的なものから、ワンポイントのようなものまで、幅広く使われる。美術工芸品については、こちらに統一されつつある。

紋様連続的な文様の場合に使用されることが多い。単独文様では、慣例的な場合のみ使用されており、新たに用いられることはごくわずか。また、家紋など定型化されたものにも「紋様」とされることがある。

模様一般的な名詞。文様・紋様ともに含む。美術品の名称には用いない。

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「紋様」は、「文様」に比べて、よりパターン化したものを指す場合も。「雷紋」など、紐状の文様にも多い。

雷紋様

「黒漆塗葵紋蒔絵貝桶型重箱」(江戸後期~明治)

「絵志野連山紋茶碗」(桃山~江戸初期)

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パターン化と文様

◇伝統的な文様

古くから用いられてきた文様には、パターン化・抽象化したものが多くあります。梅・桜・桃の花は特に良く知られますが、他にも記号化された自然物は多く、波、雲、松、桐、竹などが美術作品でよく使用されます。

決まった形 藤

藤や菊の花びら、桐の花や葉の数などの違いで使用できるところや、文様の指すものが違うことも。

菊菱

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幾何学的な伝統文様

パターン化された文様の他に、「市松模様」のような、連続した幾何学的な文様も、伝統的な文様としてあげられます。もともと意味があったものもありますが、そうした来歴が不明な文様も多数あります。

四割菱

分銅繋 七宝繋

矢絣

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名前と形で複雑な意味を持つもの、意味を失っていくもの、様々。

七宝

七宝繋(花輪違)

七宝は、仏教での七つの宝。金・銀・瑠璃などの七つで富や美の象徴。非常に大切なものの比喩として使われることもある。得も言われぬ美しさといった意味でも扱われ、“七宝焼”はその用例。

七宝文様は、四つの円をずらして配置することでできる文様。そこから、“人の縁”が繋がる、広がるなど縁起のいい意味が与えられている。そうした“御縁”は非常に貴重で大事なものだということで、「七宝文様」と名付けられたといわれている。

七宝繋文様も、この七宝文様が無限に広がる様子から、縁起の良い文様として扱われる。

長く用いられる中で、花や草の文様を足した七宝文様が登場。華やかだから用いられる、ということも増えていく。

京焼「色絵七宝文茶碗」(江戸時代)

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古典柄といわれるような文様の多くは、有職文様に含まれている。近世以降、庶民にも使用されるようになったこともあり、他の文様と区別するために「有職文様」という言葉が使用されるようになった。

◇有職文様平安時代頃から、公家の装束等に使われてきた伝統的な文様の事を有職文様と呼びます。隋や唐から伝わったものが、日本風に変化したものが多く、唐草文様などもその一つです。近世以降には、その格式に関わらず、庶民にまで使用が広がります。

当人の位や、儀式の格など「有職」をはじめとする公家の決まりごとに準じて使用できる文様も決まっていた。八藤文様(八藤丸文様)

亀甲花菱文様

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シルクロード周辺地域に広がる唐草文様。日本では、公家たちの間で普及し、有職文様の一つに数えられる。近世以降、他の有職文様と同じく一般化した他、仏教美術・工芸作品への使用も古くから確認できる。

唐草文様

葡萄唐草文様

葉唐草文様

花唐草文様

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何か別の文様と組み合わせて、地模様のように配置されることも。工芸や服飾など様々な分野で使用され、現在でもよくみかける文様が多い。また、欄間彫刻などに使用されていることも。

◇自然現象を元にした文様自然現象をもとにした文様も多くあります。波を模した青海波文様、雲や霞を模した霞文様などです。どれもかなり簡略化されていますが、使用される際には、もとになったものからくる意味が重要になってくるものも多くあります。

青海波文様

霞文様

雲文様

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祥瑞文様

景徳鎮窯「祥瑞蜜柑水指」(明代)

景徳鎮窯「祥瑞山水丸文酒呑」(明・17世紀)

◇絵画的な文様

簡略化・パターン化されたものが多い文様ですが、一部のものは、絵画と同じ要素を持ったものもあります。たいていの場合は工芸品に用いられていれば、どれだけ絵画的でも「文様」と呼称されます。

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梅に鶯、波に兎

梅に鶯春を表す取り合わせ。絵画のモチーフとしても使用される組み合わせだが、工芸品の文様などとしても良く用いられている。

波に兎波と兎。兎といえば、月との取り合わせもあるが、波とセットにされる場合も多い。建物を装飾するための彫刻などにも良くあらわれる。一説には因幡の兎伝説に関連するとも、謡曲「竹生島」が元ともいわれる。

「梅に鶯文様数全染振袖」(江戸時代)

調神社(埼玉県)鳥居(部分)

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◇組み合わせの文様

梅に鶯、波に兎をはじめとして、動植物等の組み合わせが決まっているものが多々あります。紅葉に鹿などは前二つとあわせてかなり良く見かけるものですが、他にも絵画の題材として、文様として、多くの組み合わせが存在しています。

工芸品の文様や、絵画の題材として使用される他、欄間彫刻など建築彫刻にも多用される。寺社建築なども、よく見てみるとそうした組み合わせごと配置されていたりする。

「萌黄紋縮緬地雪持竹雀文様牡丹紋付小袖」(江戸後期)

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季節と文様

◇季節を示す文様

「梅に鶯」のように、季節を象徴するものを組み合わせる文様や、季節が決まっている動植物の文様、吉祥文様として正月用の調度に用いられる文様など、季節を示す文様は様々です。

吉祥文様 松竹梅、鶴亀、七福神や宝づくしなど縁起のいい文様。織物、漆器をはじめとした工芸品によく用いられる。

宝づくし文様麻の葉文様

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古くから日本にある植物の多くは、紋や文様として美術工芸品に用いられています。家紋などに用いられるような決まったもののほかにも、柳や万年青など多くの植物が意匠化されて用いられています。

◇季節の植物と文様

伊万里染付万年青文六寸皿(現代)

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浅葱地柳に燕文金襴単狩衣(江戸後期)

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工芸作品にみる文様

◇金工と文様

鉄や銅、その他合金を鍛造・鋳造してつくられる作品。様々なタイプの文様が用いられます。一面に文様があるものや、一箇所だけのもの。また、立体的な作品が多いので、他の要素と組み合わせて、文様を表現するものもあります。

渡部雅珍「葵葉透鐔」(江戸時代) 安藤半兵衛宜時「月下読書図鐔」(江戸時代)

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大西浄久「オランダ釜」(江戸中期)

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作者不詳「八角面取釜」(江戸前~中期)

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陶芸作品では、彫る・描く・盛るなどの様々な技法で文様が施されます。特に自由度の高い「描く」文様では、豪華なものも多く、絵画に近いものも見る事ができます。

◇陶芸と文様

鍋島焼「色鍋島毘沙門亀甲桐文皿」(江戸時代) 鍋島焼「松竹梅文皿」(江戸時代)

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組木や象嵌で文様を表現する木工作品。幾何学的なものはもちろん、象嵌による文様表現は多岐にわたります。彫刻での文様表現はダイナミックなものが多く、寺社建築などの建物内の装飾でも楽しむことができます。

◇木工と文様

「組木細工仕掛け箱」(現代)西村荘一郎「松猿図丸額」(明治時代)

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漆や蒔絵、螺鈿で文様を表現します。非常に細かく、高い技術で伝統的な文様を描いているものが多く残されています。文箱等の小さなものかから、家具建具のような大きなものまで文様が施された漆芸作品・調度は多種多様です。

◇漆芸と文様

六角紫水「金胎蒔絵唐花文鉢」(昭和10年頃)銘 張成「花鳥文堆朱盆」(元~明代)

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作者不詳「苅田蒔絵小鼓箱」(室町時代)

作者不詳「片輪車螺鈿蒔絵手箱」(平安時代)

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布・紙にみる文様

◇装束と文様

織物・染物どちらにも多くの文様が使用されます。特に装束に施される文様は、用途や着用季節によって様々です。装束そのものの他に、絵画の中の人物が着ている衣服の文様なども、注目すると面白いポイントです。

「赤地七宝に八ツ手文唐織」(江戸前~中期)

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能装束「紅萌黄地山道菊桐文片身替唐織」(桃山時代)

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短冊・色紙などに多く見られますが、他にも絵巻や経典、時には書簡などの手紙類にも用いられる、文様がいれられた紙。多くは和歌集などに用いられたりしています。

◇紙と文様

本阿弥光悦・俵屋宗達「鶴図下絵和歌巻」(江戸時代)

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伝藤原公任「尾形切」(平安時代)

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元屋敷窯「鳴海織部向付」桃山時代

まとめ

古くは縄文時代から文様が使用されてきた

伝統的な文様の中には当初と意味づけが変化したものも

文様も作品を構成する要素の一つで、大切なもの

なぜこの文様が? と注目すると、違った面が見えることも

単純な文様にも、名前や意味があったりします

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展覧会情報

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会場:大分県立美術館

大分県立美術館 8~9月に開催中の企画展

県立美術館では、夏から秋にかけて、

注目の展覧会が多く開かれます。

まず、現在開催中の企画展は「ムーミ

ン展 THE ART AND THE STORY」です。

9月1日まで、ムーミンの原画を始めと

する関連作品・資料が展示されていま

す。

また、9月下旬からは、「日本の美意

識-刀剣と金工-」、「江戸浮世絵の黄

金時代 The Ukiyo-e 歌川派-豊春か

ら国芳、広重まで」が開催されます。大

分にゆかりある作品や、普段なかなか

目にする機会のない貴重な作品など、

多数展示される予定です。

関連のワークショップや講演会なども

充実しています。ぜひお見逃し無く!

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ワークショップ

「墨での表現を楽しむ~俳画制作体験~」

開催日:令和元年8月25日(日)

時 間:午後1時30分~3時30分

場 所:小幡記念図書館 視聴覚室

講 師:外園 雅美 氏

定 員:20名(先着順)

対 象:一般(小学校低学年以下保護者同伴)

参加費:無料

その他:要事前申込

電話・FAX、または美術館受付まで

電話 0979-22-7767FAX 0979-24-3516

ギャラリー・トーク(学芸員による展示解説)

開催日:令和元年8月18日(日)

時 間:午後2時~ (30分程度)

場 所:木村記念美術館

(入口付近集合)

その他:申込不要、当日の入館券が必要

木村記念美術館企画展関連イベント

ワークショップ&ギャラリートークのお知らせ

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○次回講座