スライド 1title スライド 1 author. created date 7/18/2011 6:25:34 pm
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電子カルテが導入され記録の電子化は進んでいるが、関節リウマチ診療においては多数の関節所見を記録する必要があり、その記録は煩雑である。またDAS28やSDAIといった臨床指標が実地で要求される場面も多くなり卓上のDAS計算機なども普及している。 当院では昨年7月に電子カルテの導入を行ったが、これを機会にDAS28計算機(リウマチ計算機)の開発を行い、リウマチ診療にて日常診療で行われている関節所見の入力やDAS28などの各種指標の計算といった作業の省力化を図った。
はじめに
電子カルテ向けの関節リウマチ診療補助ツールを開発すること。 具体的には関節リウマチの日常診療において一般に行われている関節所見の入力を電子カルテへ簡単に行える機能を実現し、DAS28、SDAIなどの各種臨床指標の計算行うソフトウェアを開発する。
目的
Fig.1 紙カルテ+卓上計算機からコンピュータ上のリウマチ計算機へ
開発したリウマチ計算機
従来のDAS Calculator
開発言語: Microsoft社製 Visual Basic 2008 Express Edition
比較的平易なコンピュータ言語であり、画面上のボタンなども簡単に設計できる。
開発方法(1)
Fig.2 実際の開発画面
開発方法(2)
Fig.3 開発過程の一部
●SDAI値を四捨五入して小数点以下2桁まで表示。●SDAI値≦3.3で「Rem.」を表示 3.3<SDAI値<11で「Low」を表示 11≦SDAI値≦26で「Mod.」を表示 26<SDAI値で「High」を表示
日本語(自然言語)
Microsoft Visual Basic (コンピュータ言語)
人間の言語(自然言語)をコンピュータの理解する「コンピュータ言語」へ変換する作業、いわゆる「プログラミング」作業の一例。SDAI値および活動性の表示の部分を示す。
プログラミング作業
*コード量(プログラム原文の量): 約5,000行 (A4用紙90枚程度)
*完成したプログラム本体 (.exeファイル):約500kバイト
*動作検証機種: Microsoft Windows Vista、7が動作する機種
開発方法(3)
1.関節所見・検査結果等の入力
圧痛・腫脹関節:青いXが圧痛関節でマウスの左クリックで入力、赤い○が腫脹関節でマウスの右クリックで入力する。(圧痛/腫脹関節数を数値で入力することも可能)
開発したリウマチ計算機の機能
GH/PGA、MDGA(スライドバーで視覚的に入力する方法)
ESR値、CRP値は白いボックスに直接数値入力する。GH/PGA、MDGAについては数値入力でもスライドバーでも入力可能。
DAS28、SDAI、CDAIの計算結果はリアルタイムに表示され、計算結果に応じた疾患活動性評価も表示される。
2.計算結果の表示
Fig.4 「ACR/EULAR2010 RA分類基準」判定機能
リウマチ計算機で入力した関節所見、ESR値、CRP値に加えてRF値などの必要な項目を追加することによりACR/EULAR2010 RA分類基準による分類の補助を行える。
3.新RA分類基準の判定補助
判定結果
急性期反応物質(ESR/CRP)
罹患関節
血清学的検査/症状持続期間
Fig.5 一部のJOA スコアの計算にも対応した
整形外科領域で術前、術後の評価に使われるJOA(日本整形外科学会)スコアの計算を簡便に行うため、JOAスコア計算機能を追加した。現時点で股関節、OA膝、RA膝、頸髄改定、腰痛、肩関節スコアを計算可能。
4.JOAスコアの計算
JOA股関節機能判定基準
JOA リウマチ膝治療成績判定基準
画面全体
圧痛 2/28関節、腫脹 4/28関節ESR[1h] 23mm、CRP 0.56mg/dl患者評価(VAS) 44/100、医師評価(VAS) 33/100DAS28(4)ESR 4.16 (Mod.)DAS28(3)ESR 3.99 (Mod.)DAS28(4)CRP 3.61 (Mod.)DAS28(3)CRP 3.38 (Mod.)SDAI 14.26 (Mod.)CDAI 13.7 (Mod.)
Fig.6 電子カルテへの記入(コピー&ペースト)
関節図のみ
テキスト情報のみ
入力した関節所見や計算結果は計算機の「Copyボタン」でクリップボードへ各種情報がコピーされるので、電子カルテソフトのカルテ記述欄にペースト機能で転記する。
5.電子カルテへの記入
Fig.7 電子カルテへの展開(コピー&ペースト) … 実際の電子カルテ画面(模擬患者)
画面左上のリウマチ計算機で入力した内容と計算結果を電子カルテへ転記した状態。
関節図を電子カルテ記事欄にペースト
テキスト情報(DAS28、SDAI等の計算結果)を電子カルテ記事欄にペースト
リウマチ計算機
考察 従来の紙カルテでは関節図に腫脹を「○」で記載するような伝統的な方法をとってきた。電子カルテではこのような伝統的な方法で関節所見を記載する簡便な方法がない。電子カルテ開発元が用意したテンプレートをカスタマイズする方法があるが、記載表現は限られている。また、リウマチ診療には各種臨床指標を使用するが、指標が数年で変化するリウマチ診療において計算機の仕様も頻繁に変更が必要である。このような理由によりリウマチ診療補助ツールとしてのリウマチ計算機を自家製作した。当院では本計算機が日々のリウマチ診療の補助として役立っている。ただ、電子カルテシステムとは独立しており検査科のシステムへの結果書き込み機能はなく過去の各種指標を含めて時系列でグラフ化する機能はない。また、個人で開発しており動作の正確性についての検証作業も不十分であるため臨床で使用するツールとしては今後しばらくの検証作業も必要である。
まとめ●当院の電子カルテ導入を期にリウマチ診療の補助としてリウマチ計算機ツールを独自に開発した。●計算機の機能として、(1)関節所見図の記載補助、(2)DAS28やSDAIといったリウマチ診療指標の計算、(3)RA新分類基準判定の補助、(4)手術成績評価に使われるJOAスコアの計算補助、といった機能を実現した。●当院のリウマチ診療の補助ツールとして診療の省力化や記録の判読性向上に役立っている。●問題点としては電子カルテとは独立したソフトウェアであるため計算結果を電子カルテの臨床検査システムへ保存する機能はなく、計算結果を時系列で表示することもできないといったことがあげられる。