ウ 歩くスキーコース 【現状】 「歩くスキー」はジャンプと ......11 ウ...

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11 ウ 歩くスキーコース 【現状】 「歩くスキー」はジャンプと異なり、一般の市民がウオーキングやジョギングの代 わりに行うレジャー種目(「するスポーツ」)としての位置づけが強い種目である。 現在市内には、アジア初の公認コースでノルディック世界選手権の会場にもなった 「白旗山競技場」をはじめ、「中島公園コース」、「真駒内公園桜山コース」を含む大小 15の施設がある(資料 1、2参照)。施設数や密度は充実している。 「白旗山競技場」は、国際レベル・全国レベルのクロスカントリー競技大会を実施 できる唯一の施設であり、競技の普及振興においてもその意義は大きい。交通アクセ スが悪く、公共交通機関を利用する場合、バス停から徒歩で 30 分かかり、非常に不便 ではあるが、利用者のほとんどは自家用車での来場であり、大会時はシャトルバスが 出ているので特に問題はないと考えられる(表8参照)。 「中島公園コース」「真駒内桜山コース」はそれぞれ地下鉄駅から徒歩5分と抜群の 立地にある。「中島公園コース」は、中心市街からも近いうえ、用具の貸出所のある中 島体育センター内で更衣室・シャワー、トイレが利用できる(表8、9参照)。 「真駒内桜山コース」は都心からのアクセスに優れるものの、用具の貸し出しがな く、駐車場設備がない。また、市民が自由に出入りし利用する形態となっているため、 利用状況が把握できていない。(表8、9参照)。 その他の 12 施設は、ほとんどが公園施設の有効利用として成立している。総じて交 通アクセスが悪いが、駐車場は完備されており、初心者から上級者向けまで、多様な コースが市内全域に存在し、用具の貸し出しが7施設で行われている。(表10参照)。 表8:設置年月・所管・アクセス 施設 設置年月 所管 アクセス 白旗山競技場 平成 3 年 1 月 札幌市 (スポーツ部) 地下鉄東豊線「月寒中央駅」からバス 下車徒歩 30 分 中島公園コース 昭和 57 年 1 月 地下鉄南北線「幌平橋」徒歩 5 分 真駒内桜山コース 地下鉄南北線「真駒内駅」徒歩 5 分 歩くスキーコース (12施設) 札幌市: 6 部 9 施設 国:1施設 道:2 施設 ほとんどの施設は、利便性があまり良くない

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    ウ 歩くスキーコース

    【現状】

    「歩くスキー」はジャンプと異なり、一般の市民がウオーキングやジョギングの代

    わりに行うレジャー種目(「するスポーツ」)としての位置づけが強い種目である。

    現在市内には、アジア初の公認コースでノルディック世界選手権の会場にもなった

    「白旗山競技場」をはじめ、「中島公園コース」、「真駒内公園桜山コース」を含む大小

    15の施設がある(資料 1、2参照)。施設数や密度は充実している。

    「白旗山競技場」は、国際レベル・全国レベルのクロスカントリー競技大会を実施

    できる唯一の施設であり、競技の普及振興においてもその意義は大きい。交通アクセ

    スが悪く、公共交通機関を利用する場合、バス停から徒歩で 30 分かかり、非常に不便

    ではあるが、利用者のほとんどは自家用車での来場であり、大会時はシャトルバスが

    出ているので特に問題はないと考えられる(表8参照)。

    「中島公園コース」「真駒内桜山コース」はそれぞれ地下鉄駅から徒歩 5 分と抜群の

    立地にある。「中島公園コース」は、中心市街からも近いうえ、用具の貸出所のある中

    島体育センター内で更衣室・シャワー、トイレが利用できる(表8、9参照)。

    「真駒内桜山コース」は都心からのアクセスに優れるものの、用具の貸し出しがな

    く、駐車場設備がない。また、市民が自由に出入りし利用する形態となっているため、

    利用状況が把握できていない。(表8、9参照)。

    その他の 12 施設は、ほとんどが公園施設の有効利用として成立している。総じて交

    通アクセスが悪いが、駐車場は完備されており、初心者から上級者向けまで、多様な

    コースが市内全域に存在し、用具の貸し出しが7施設で行われている。(表 10 参照)。

    表8:設置年月・所管・アクセス

    施設 設置年月 所管 アクセス

    白旗山競技場 平成 3 年 1 月

    札幌市

    (スポーツ部)

    地下鉄東豊線「月寒中央駅」からバス

    下車徒歩 30 分

    中島公園コース 昭和 57 年 1 月 地下鉄南北線「幌平橋」徒歩 5 分

    真駒内桜山コース 地下鉄南北線「真駒内駅」徒歩 5 分

    歩くスキーコース

    (12施設)

    札幌市:

    6 部 9 施設

    国:1施設

    道:2 施設

    ほとんどの施設は、利便性があまり良くない

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    表9:施設規模・付帯設備

    施設 施設規模 付帯設備

    白旗山競技場

    【距離スキーコース】

    1 周:25km

    ※FIS公認コース

    【歩くスキー常設コース】

    1周:4.5km

    ・更衣棟

    ・駐車場 50 台

    中島公園コース 【コース】

    1 周:1km

    ・歩くスキー無料貸し出し場

    ・隣接する中島体育センターの更衣室やシャワ

    ー、トイレが利用可能

    ・駐車場 20 台

    真駒内桜山コース 【コース】

    1 周:2.3km

    歩くスキーコース

    (12施設)

    【コース】

    1周:0.4km~10km

    多いのは、2~3km

    ・駐車場はどの施設にもある

    図3:白旗山競技場利用者数推移 ※(財)さっぽろ健康スポーツ財団「利用状況総覧」より

    図4:中島公園コース利用者数推移(歩くスキー貸出数)※市スポーツ部「事業概要」より

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    表 10:実施事業の概要・コメント、特徴

    施設 実施事業の概要 コメント、特徴

    白旗山競技場

    ・国際、全国レベルの大会の実施

    ・競技者の練習の場

    ・一般開放

    アジア初の公認コースであり、ノルディックスキ

    ー世界選手権が行われるなど、国際規模の大会

    が実施されている。

    また、夏期はサッカー場として開放しており、

    通年にわたる屋外スポーツ施設として活用され

    ている。利用者数は、減少傾向である。

    中島公園コース ・用具の無料貸出

    ・一般開放

    札幌市の中心部にあり交通アクセスがよく、無

    料で用具を貸出しており、初心者向けの平坦コ

    ースであることから、歩くスキー実施へのきっかけ

    となる場として活用されている。隣接している中

    島体育センターの更衣室やシャワー、トイレも使

    えることから、利便性の高い施設である。利用者

    数(スキー用具貸出数)は、ほぼ横ばいである。

    真駒内桜山コース 一般開放

    公共交通機関のアクセスは優れているが、用

    具の貸出がない。

    駐車場の設備がなく、その点では利便性が低

    いと考えられる。

    利用状況は不明。

    歩くスキーコース

    (12施設)

    ・一般開放

    【用具貸出】

    無料貸出:1 施設

    有料貸出:6 施設

    全般的に、公共交通機関のアクセスは良くな

    いが、どの施設にも駐車場はある。

    コースは、初心者から上級者向けのコースが

    市内全域にあり、用具の貸出を行っている施設

    も多く、歩くスキーを普及する環境にある。

    利用状況は不明。

    【評価】

    歩くスキーは、年代や体力に関係なく、幅広い層が気軽に楽しめる種目である。

    現在、歩くスキーコースの施設数は充実していると考えるが、幅広い層が実施して

    いる現状とは言えない。そのため、例えば、ファッション性に優れたウェアや用具の

    開発、飲食サービスの充実等を通じ女性実施者拡大を図ることや、指導者を配置する

    など初心者にも優しい環境を整えることなど、新たな層への掘り起こしの取り組みが

    必要である。

    市内にある歩くスキーコースの中でも「中島公園コース」は、中心市街からほど近

    く、中島体育センター内で更衣室・シャワー、トイレの利用が可能であること、無料

    での用具貸し出しも実施していることから、初心者や女性実施者の拡大の拠点として

    の役割を果たすことが期待される。そのため、今後、さらに魅力アップのためのサー

    ビス向上を、必要によっては利用者の一部負担化も含め検討すべきである。

    「真駒内桜山コース」は、利用状況が把握できず、現時点では公益性や運営の効率

    性の評価ができない。

    その他の 12 施設には多様なコースがあり、アクセスがいいとは言えない立地もある

    が、全ての施設で駐車場が完備されている。「真駒内桜山コース」同様に利用状況が把

    握できない施設もあるが、駐車場が完備されており、7施設で用具の貸し出しがされ

    ていることから、歩くスキー普及の施設環境はすでに整っているものと考えられる。

  • 14

    しかし、いくつかの問題点もある。第一に、各施設の広報が十分になされていない

    点である。どの施設にどのようなコースがあり、付帯設備や用具の貸し出しはどうな

    っているのか、更衣やトイレはどうするのかなど、一般の市民には情報が行き届いて

    いないと思われる。こうした情報が提供されるだけで、利用者の大幅な拡大が期待で

    きる。

    第二に、多くの公園には雪が積まれており、公園内への出入りが困難となっている

    ところもあり、気軽に行う歩くスキーの振興に支障をきたしているとも考えられる。

    全市的な問題となるが、逆に、例えば排雪の山を削りだしてハーフパイプを創設する

    など、排雪利用の考案も視野に入れた、所管横断的かつ柔軟な対応が期待される。

    第三に、札幌のような降雪地域で歩くスキーのコースを維持するには、それなりの

    コストがかかるという点である。利用者拡大のためには、いつでも整備されたコース

    が望まれるが、たびたび大量の降雪がある札幌では、コース整備に多くの費用が必要

    となる。圧雪やコース整備を徹底するためには専門の職員を常駐させる必要があり、

    それは相応のコストを要する。すべての施設でこうした対応が取れない以上、「選択と

    集中」といった経営的判断が求められるところである。このことは、歩くスキーに限

    らず、全ての種目にあてはまることである。

    このほか、用具の貸し出しを行っていないところでは利用状況で不明となっている

    現状があり、歩くスキーの普及振興にはまだまだ多くの仕事が残されていると言える。

  • 15

    (2)アイススポーツ施設

    ア スケート場

    【現状】

    アイススポーツの代表的な種目としてはスケート競技(フィギュアスケート、スピ

    ードスケート、スピードスケート・ショートトラック、アイスホッケー)やカーリン

    グ競技が挙げられる。

    現在市内には、スケート競技やカーリング競技を実施できる施設として「月寒体育

    館」、「真駒内屋内競技場(真駒内セキスイハイムアリーナ)」、「真駒内屋外競技場(真

    駒内セキスイハイムスタジアム」、「星置スケート場」、「美香保体育館」、「円山スケ

    ート場」があり、アクセスの面も含め、市内のアイススポーツ施設は充実している。

    (表11参照)

    しかし、これらの施設の総利用者数をみると、種目ごとに若干のばらつきが見ら

    れつつも、全体的には減少傾向にあると言える(図6~9参照)。

    表 11:設置年月・所管・アクセス

    施設 設置年月等 所管 アクセス

    真駒内屋内競技場 昭和 45 年 北海道

    ・自家用車で市内中心部から約 25 分

    ・地下鉄南北線「真駒内駅」からバス 10 分 真駒内屋外競技場 昭和 45 年

    月寒体育館

    昭和 47 年 4 月

    【改修履歴】

    昭和 53・60・61・62 年

    車庫増築

    平成 14・15 年

    リンク改修

    札幌市

    (スポーツ部)

    地下鉄東豊線「月寒中央駅」徒歩 1 分

    星置スケート場

    昭和 60 年 12 月

    【改修履歴】

    平成 12 年一部増築

    リンクフェンス改修

    JR バス「星置スケート場」徒歩 3 分

    美香保体育館

    昭和 47 年 2 月

    【改修履歴】

    昭和 53 年 発電機室新築

    昭和 56 年 収納庫新築

    平成8・9年 夏季体育館化

    平成 18 年 屋根整備

    地下鉄南北線「北 24 条駅」徒歩 10 分

    円山スケート場

    昭和 10 年 7 月

    【全面改修】

    昭和 58 年 5 月

    平成 9 年 3 月

    ・地下鉄東西線「円山公園駅」徒歩 15 分

    ・JR バス「総合グラウンド前」下車

  • 16

    表 12:施設規模・付帯設備

    施設 施設規模 付帯設備

    真駒内屋内競技場

    【建築面積】

    約 10,134m

    【アリーナ面積】

    68m×42m

    【観客席】

    固定:6,024 席、立見:約 1,500 人

    移動:約 4,000 人

    ・貸しスケート(有料)

    ・ウエイトトレーニング室

    ・ランニングコース、

    ・シャワー室

    ・医務室

    ・授乳室

    ・駐車場 50 台(夏期間の土日祝は有料)

    真駒内屋外競技場

    【建築面積】

    約 46,000 ㎡

    【アリーナ面積】

    15,900 ㎡

    【スケートリンク】

    1周400m

    【観客席】

    17,324 席

    ・貸しスケート(有料)

    ・サーキットトレーニング室

    ・シャワー室

    ・駐車場 150 台(有料)

    月寒体育館

    【敷地面積】

    18,165.5 ㎡

    【スケートリンク】

    30m×60m

    【観客席】

    固定:2,321 席、立見:1,052 人

    合計 3,373 人収容可

    ・「JOC認定アイスホッケー競技強化センター」の

    施設として認定

    ・貸しスケート(有料)

    ・2Fロビーを有効活用し体育室として卓球の開放

    ・食堂(土日のみ)

    ・身障者トイレ設置

    ・駐車場 150 台 (屋外競技場と併ねる)

    星置スケート場

    【敷地面積】

    6,289 ㎡

    【スケートリンク】

    30m×60m

    ・貸しスケート(有料)

    ・身障者トイレ設置

    ・駐車場 30 台

    美香保体育館

    【敷地面積】

    5,222.5 ㎡

    【スケートリンク】

    30m×60m

    【観客席】

    固定:1,264 席、立見: 700 人

    合計 1,971 人収容可

    ・夏季は体育館として開放

    スケート :11/1 日~翌年 4/30

    体育館:6/1~9/30

    ・身障者トイレ設置

    ・身障者シャワー設置

    ・身障者リフト設置

    ・エレベーター設置

    ・車椅子専用席設置

    ・駐車場70 台

    円山スケート場 【コース】

    1 周:300m ・夏季は陸上開放

  • 17

    図6:屋内スケート場利用者数推移(通年開放) 図7:屋内スケート場利用者数推移(冬季のみ開放)

    ※市スポーツ部「事業概要」より ※美香保体育館は市スポーツ部「事業概要」より

    真駒内屋内競技場は直接確認

    図8:屋外スケート場利用者数推移 図9:スケート場合計利用者数推移

    ※円山スケート場は市スポーツ部「事業概要」より 真駒内屋内競技場は直接確認

    図 10:美香保体育館種目別利用者数推移 ※美香保体育館に直接確認

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    (万人)

    月寒体育館 星置スケート場

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    真駒内屋内競技場 美香保体育館

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    (千人)

    専用3種目推移

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    一般開放推移

    一般開放

    フィギュア

    カーリング

    ショートトラック

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    H18 H19 H20

    (万人)

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    表 13:実施事業の概要・コメント、特徴

    施設 実施事業の概要 コメント、特徴

    真駒内屋内競技場

    ・トップスポーツイベントの実施

    ・各種レベルの大会の実施

    ・一般開放

    ・指定管理者主催の各種教室、イベントの実施

    ・スポーツ外イベントの実施

    幼児から一般までのフィギュアスケート、アイ

    スホッケー等の運動教室が実施されている。

    また、フィギュアスケート・アイスホッケー等の

    競技会・練習会のみならず、大規模な集会・コ

    ンサート等のイベントにも利用されている。

    夏期間は体育館として開放している。

    利用者数は、ほぼ横ばい。

    真駒内屋外競技場

    ・全国レベルの大会実施(1大会)

    ・一般開放

    ・指定管理者主催の各種教室、イベントの実施

    ・スポーツ外イベントの実施

    スケート施設としては、全国規模の大会の開

    催場所となっているが、大会開催は、その1大

    会のみとなっており、老朽化も著しい施設であ

    る。しかし、夏期はテニスやフットサル等に開放

    され、会議室等では運動教室が行われてお

    り、有効に通年で活用されている。

    屋内競技場と比較すると、ほぼ半数であり、

    減少傾向である。

    月寒体育館

    ・トップスポーツの実施。

    ・国際レベルまでの大会の実施。

    ・一般開放

    ・指定管理者主催の各種教室、イベントの実施

    幼児から一般までのフィギュアスケート、アイ

    スホッケーの教室等が実施され、個人利用者

    にも多く利用されている。

    また、ほぼ毎日、深夜まで、主に市民サーク

    ルのアイスホッケーの練習会場として開放して

    いるほか、トップスポーツの試合や国際大会も

    行われており、更に観客席が備わっていること

    から見るスポーツとしての役割も担っている。

    更に、JOC認定アイスホッケー競技強化セ

    ンターの施設として認定されており、選手強化

    のための施設としての役割も担っている。

    利用者数は、ほぼ横ばい。

    星置スケート場

    ・全道レベル程度の大会までの実施。

    ・一般開放

    ・指定管理者主催の各種教室、イベントの実施

    幼児から一般までのフィギュアスケート、アイ

    スホッケーの教室等が実施されている。

    また、主に市民サークルのアイスホッケーの

    練習会場として多くの愛好者に利用されている

    ほか、全道、全市レベルの大会も多数開催さ

    れている。

    利用者数は、ほぼ横ばい。

    美香保体育館

    ・トップスポーツイベントの実施

    ・全道レベル程度の大会までの実施

    ・一般市民開放

    ・指定管理者主催の各種教室、イベントの実施

    幼児から一般までのフィギュアスケートの教

    室を実施し、個人利用者も多く利用も多い。

    観客席を有することから、見るスポーツとしての

    施設の役割も担っている。

    また、フィギュアのほか、市内で唯一カーリン

    グの開放を行っており、新しいアイススポーツ

    の振興の場として期待される。

    ただし、種目が競合しており、飽和状態となっ

    ている面もある。

    利用者数は、一般開放はほぼ横ばいである

    が、専用利用者数は、増加傾向である。

    円山スケート場

    ・一般開放

    ・昨年度より、自主事業を実施。

    (2 時間耐久リレー)

    料金が他のスケート施設と比較すると安い。

    比較的市内中心部に近い。

    なお、自然凍結によってリンクを作るため、

    天候に大きく左右される施設である。

  • 19

    【評価】

    「月寒体育館」は、「通年型」のアイススポーツ施設であり、主にアイスホッケーと

    フィギュアスケートが実施されている。来場者の推移をみるとほぼ横ばいの状態で

    ある。特にアイスホッケーに関しては国際レベルの大会の実施実績もあり、「アイス

    ホッケー競技強化センター施設」としてJOCの認定を受けている。一方問題点として

    施設の名称がある。「通年型スケート場」にもかかわらず「月寒体育館」 との名称が用

    いられており、このことは「アイススポーツ実施施設」としてマイナスの方向に作用

    していると考える。広く市民に利用してもらうためには月寒体育館が、「体育館では

    なく、夏でも使えるスケート場である。」ということをアピールしていくことが重要

    であろう。

    「真駒内屋外競技場(真駒内セキスイハイムスタジアム)」は札幌オリンピックのス

    ピードスケート会場として昭和45年に設置された施設である。全国的にも貴重な400

    mの屋外公認スケートリンクであるが、老朽化も著しく、現在定期的に開催してい

    る全国レベルの大会は、毎年11月のスピードスケート競技会となる、「真駒内選抜競

    技会」のみである。冬期間の利用に限定して考えると、「全国規模の競技会が年一回」

    のみであると見込まれる観客数も限られ、収益面でも低調にならざるを得ない。今

    後、年間複数の競技会を誘致できる施設に整備し直すのか、このままフェードアウ

    トしていくのか、道立施設ではあるが、札幌市のスピードスケート競技場としては

    貴重なものであることから、今後の対応を注視したい。

    「美香保体育館」も札幌オリンピックのフィギュアスケート会場として昭和45年に

    設置された施設であるが、度重なる改修により耐用年数は飛躍的に延びている。こ

    の施設は冬期間のみスケート場として開放されており、これまでフィギュアスケー

    トとショートトラックに重点を置き使用されてきたが、近年、市内で唯一のカーリ

    ングレーンを設置した。北欧で歴史も人気もあるカーリングは、日本では比較的新

    しいスポーツであるが、オリンピックの正式種目になってからは、マスコミにも多

    く取り上げられる話題性の高いスポーツである。また、新たな実施者層の掘り起し

    が期待でき、冬季スポーツのすそ野を広げるために有効な種目と考えられている。

    現在の美香保体育館の利用形態は、自由に滑ることのできる一般開放と、特定競

    技の大会や練習等を行う専用利用があり、専用利用の種目として、フィギュアスケ

    ート、ショートトラック、カーリングの3種目が設定されている。それぞれの利用

    状況は、一般開放は減少傾向にあるが、専用利用では増加傾向にあり、その利用は

    飽和状態となっている。これらの3種目は、美香保体育館では互いの利用枠を圧迫

    し合っているが、他のスケート場でのこれ以上の受け入れは難しい状況にあり、ま

    た、種目の特性を考えるとスノースポーツ施設のような屋外系スポーツ施設の活用

    で補うことも不可能である(図 10 参照)。このため、新たな層の掘り起こしに有効な

    カーリングについては、専用施設の整備を検討する必要があると考える。その場合

    は建設や維持管理コストを考え、既存スケート施設での増築、併設なども検討し、

    より効率的かつ効果的な整備手法が求められる。

  • 20

    イ リュージュ競技場

    【現状】

    「藤野野外スポーツ交流施設」にはスキー場と共に、国内で2カ所しかないリュージ

    ュとスケルトンのコースが設置されている。しかし、その貴重なリュージュ・スケル

    トンコースは老朽化が著しく、全長 1,100mのコースのうち、600m程しか利用できな

    い状態である。現在は、そのコースを用いて、それぞれの競技団体がトップレベルの

    選手の練習場所や、普及・振興のための一般を対象として体験教室を開催したりして

    いるが、利用者数は減少傾向にある(図 11 参照)。

    表 14:設置年月・所管・アクセス

    施設 設置年月等 所管 アクセス

    藤野野外スポーツ交流施設 昭和 44 年 1 月 スポーツ部

    ・じょうてつバス「ふじの 3 条 11 丁目」下車

    徒歩 15 分

    ・自家用車で市内中心部から約 30 分

    表 15:施設規模・付帯設備

    施設 施設規模 付帯設備

    藤野野外スポーツ交流施設

    【敷地面積】

    329,790.3 ㎡

    【コース】

    全長:1,100m

    駐車場 500 台

    図 11:リュージュ競技場利用者数推移 ※市スポーツ部「事業概要」より

    表 16:実施事業の概要・コメント、特徴

    施設 実施事業の概要 コメント、特徴

    藤野野外スポーツ交流施設

    ・全国規模までの大会の実施

    ・競技者の練習会場

    ・一般利用者への体験教室を実施。

    ※リュージュ連盟の方が付いている

    時以外は一般開放を行っていない

    国内で 2 カ所しかないリュージュコースとし

    て貴重な施設であり、全国規模までの大会も

    開催されている。基本的に一般開放は行っ

    ていないが、普及振興のため、リュージュ・ス

    ケルトンの体験教室を開催している。

    しかし、利用者数は千人を切り、利用は低

    迷している。

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    1200

    1400

    H18 H19 H20

    (人)

  • 21

    【評価】

    利用者の減少に歯止めを掛けるためには、リュージュ・スケルトン各競技団体と連

    携して体験教室の回数をより増やしたり、あるいは、隣接するスキー場の利用者など

    に積極的に呼びかけ、体験参加を促すなど、競技の裾野を拡げるプロモーション活動

    を展開することが重要となると考える。

    競技団体やスキー場側と協議し、何とかやり繰りを付け、コース常駐員を配置する

    ことで、通常は行われていない一般開放が可能となる。それができれば、競技の認知

    度が高まり、競技人口増加の一助となる可能性もあると思われる。

  • 22

    4 冬季スポーツ施設の総括

    札幌は、冬季オリンピックの開催で得た施設や人材などの財産がありながら、近年、

    市民の冬季スポーツ離れが目立ち、冬季スポーツ人口は全体が伸び悩むとともに競技団

    体への登録者数も減少傾向にある。積雪寒冷地の札幌にとって、夏季のフィールドスポ

    ーツに加えて冬季スポーツの振興を図ることは、四季を通じてスポーツを楽しむために

    大変重要となる。

    冬季スポーツは、雪遊びから競技まで幅が広いことから、年代や体力に応じた対象ご

    とに普及の方法を考えることが必要である。

    特に子どもに関しては、幼少期に冬季スポーツに親しむ機会を持たないと、生涯にわ

    たり冬季スポーツを行う習慣が身につかないと言われており、冬期間に雪遊びなどを楽

    しみながら戸外で体を動かせるような仕掛けを考える必要がある。

    冬季スポーツを活性化し、冬季スポーツ人口を伸ばすためには、未経験者や経験はあ

    るが現在行っていない人の関心を高め、底辺を拡大する必要がある。

    そのためには、既存の種目の振興に加え、「だれもが」「身近で」「気軽に」を観点に、

    新たな種目の普及や屋外系スポーツ施設、学校のグラウンドの有効活用も考えていく必

    要がある。その際は、地域スポーツの担い手として活動している体育振興会や体育指導

    員の役割が期待される。

    冬季スポーツ施設の「費用対効果」を考える上で、「利用者数を増やす」ということも大

    きな課題である。冬季スポーツの「競技人口」が、今後飛躍的に増加するとは考えにくく、

    利用者数を増加させるためには、どのようにして「一般利用者」を増やしていくのか、あ

    るいは昨今のスポーツ参加形態の中で認知度が高まりつつある「みるスポーツ」実施者、

    すなわち施設で開催される競技会やイベントの「観戦者」をいかにして増やしていくの

    か、といった点を検討する必要がある。

    札幌は、他の都市にはない責務や使命感を背負っていると考えられる。それは「最北」

    という地理的条件によるところが大きく、「冬季スポーツの振興」に対してはどこよりも

    寛大な態度で臨む必要がある。

    しかし、一部を除いて、「冬季スポーツはマイナースポーツである」との認識も持ち併

    せる必要もある。マイナースポーツである以上、実施者も少なく、競技会も少ない、そ

    の結果、それらから多くの収益や集客を期待することは困難であり、この点においては、

    ある程度の採算性の度外視はやむを得ないものと考える。一方、「競技力の維持・向上」

    という観点では決して妥協できない面もあり、この点において行政は各競技団体と密接

    に協議を行い、市民の理解を得られる範囲内での強化・振興策は積極的に推進していく

    べきである。この姿勢を貫いて行くことで札幌は「わが国における冬季スポーツの中心

    拠点」の地位を確立されるばかりでなく、そこに居住する人々の「スポーツ文化の醸成」

    にも大いに寄与するものとなると考える。