γ グルタミルトランスペプチダーゼγ- グルタミルトランスペプチダーゼ...
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γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の新規阻害剤
京都大学化学研究所
生体機能化学研究系
生体触媒化学研究領域
助教 渡辺 文太
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γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)とは
グルタチオン(-Glu-Cys-Gly)およびその抱合
体のγ-グルタミル結合を加水分解する酵素
-Glu-Cys-Gly + H2O Glu + Cys-Gly (加水分解)
-Glu-Cys-Gly + X -Glu-X + Cys-Gly (ペプチド転移)
X = アミノ酸、ペプチド、アミン類
ほ乳類や植物、微生物までほとんどあらゆる生物に普遍的に存在
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HN
NH
CO2H
CO2H
H2NO
SH
O
グルタチオン(GSH)とは
システイン グリシングルタミン酸
• イソペプチドの一種• 重金属やアルキル化剤、活性酸素種など生
体異物の解毒• 生体内の酸化還元バランスの調節
GGT
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グルタチオン代謝酵素としてのGGT
Glu
Cys +
γ‐GCS
‐Glu‐Cys
Gly
GS
GSSGGR GPX
GS‐X
GST
GSH/GSSG/GS‐X
GSH/GSSG/GS‐X
Glu Cys‐Gly
X
‐Glu‐Cys‐Gly(GSH) +
GGT
Cys
Gly
GSH
GSH
MRP
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GGTの生理的意義
• グルタチオンを加水分解し、細胞のグルタチオン生合成に必要なシステインを供給する。
• グルタチオン抱合体を代謝し、生体異物を解毒する。
• グルタチオン代謝により、生体の酸化還元バランスを調節する。
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GGTのpro-oxidant効果
グルタチオン(-Glu-Cys-Gly)の分解産物で
あるCys-Glyは極めて活性なチオールであり、生理的条件下で金属イオンを介して容易に酸素を還元し、活性酸素種を作り出す。
GGT活性の増大はかえって酸化ストレスを亢進させることにつながる。
BioFactors, 17, 187 (2003).
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GGTと疾病(1)
心筋梗塞や狭心症などの心血管疾患、2型糖尿病において、血中GGT活性の上昇は危険因子である。
過度のアルコール摂取や薬物により、肝臓でのGGT発現および血中への漏出が顕著に起こる。
→肝疾患やアルコール依存症のマーカー酵素(γ-GTP)
Crit. Rev. Clin Lab. Sci., 38, 263 (2001).
Circulation, 112, 2130 (2005). Atherosclerosis, 194, 498 (2006). Eur. Heart J., 27, 2170 (2006). J. Intern. Med., 258, 527 (2005).
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GGTと疾病(2)
ガン細胞ではGGTを高発現するものが多く、抗がん剤や放射線療法に対する耐性獲得や転移活性との関係が示唆される。
ピロリ菌のGGTは、病害性因子として胃壁細胞のアポトーシスを誘導する。
GGTは骨再吸収因子として関節炎や骨粗鬆症に関与する。
Mol. Mocrobiol., 47, 443 (2003).
Endocrinology., 148, 2708 (2007).
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 3070 (1992). Carcinogenesis, 20, 553 (1999). Biochem. Pharmacol., 71, 231 (2006).
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本研究の目的
GGTの生理的役割を明確にするため選択的GGT阻害剤を開発する。
グルタチオン代謝を通した生体防御
酸化ストレスの亢進
各種疾病とGGT活性との具体的
な関係は?
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従来のGGT阻害剤CO2H
H2NO N
Cl
アシビシン(AT-125)
• Streptomyces sviceusの産生する抗生物質
• グルタミン代謝拮抗剤として、グルタミンアミドトランスフェラーゼ(GAT)類に広く作用する。
• 多くのグルタミン依存性酵素を阻害し、強い細胞毒性や中枢神経毒性を示す。
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アシビシンの問題点
低いGGT選択性とそれに起因する毒性
→GGT阻害による影響を正確に評価できない
GGT選択性を向上させるための分子設計
GGTの触媒機構に着目
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TS1
CO2H
H2NNHR
-
-
O O GGT
阻害剤の分子設計
NHRCO2H
H2NO
CO2H
H2NO GGT
O
CO2H
H2NOH
O
HO-GGT
H2NR
H2O
HO-GGT+
TS2
GGTの触媒機構
CO2H
H2N
-
-
O GGTO NHR
遷移状態アナログ阻害剤
P
CO2H
H2NO
O OMe
X P
CO2H
H2NOMe
O O GGT
HO-GGT+
HOX
P
C O 2H
H2NO
O OMe
X
P
C O 2B n
C bzHNC l
O OMe
P
C O 2B n
C bzHNC l
O C lP
C O 2B n
C bzHNOH
O OH
P
C O 2B n
C bzHNO
O OMe
X
P
C O 2H
H2NOH
O OH
PB r OE t
O OE t POE t
O OE t
C O 2E t
A c HNE tO 2CC O2E t
A c HNE tO 2C
Na++ –
(E tO)2C O, toluenerfx
1) 6N HC l, rfx
2) propylene oxide(97%)
1) C bz-C l, NaOH
2) B nOH, S OC l2(64%)
(C OC l)2, DMF
C H2C l2
MeOH
E t3N, -65ºC+
HOX
E t3N
0ºC(31~54%)
H2, P d/C or A lC l3
(48~70%)
阻害剤の合成
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阻害活性の測定
HN
CO2H
H2NO
O O
Me
OHCO2H
H2NO
GGT+
γ-Glu-AMC
• 4.0 or 0.2M -Glu-AMC• 阻害剤• ヒトGGT or 大腸菌GGT
100 mM コハク酸-Na (pH 5.5)
励起波長:350 nm蛍光波長:440 nm
蛍光測定
GGTの時間依存的失活
0
5
10
15
20
25
30
0 100 200 300 400 500 600
AM
C n
M
Time sec
[I] = 0 M
10
20
30
4060
H2N O O
Me
7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC)
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阻害活性の評価
GGTの時間依存的失活
0
5
10
15
20
25
30
0 100 200 300 400 500 600A
MC
nM
Time sec
[I] = 0 M
10
20
30
4060
E S+ P+EE•S
E-I
Vinact = kon [E] [I]
酵素と阻害剤との2次反応速度定数konを阻害活
性の指標とする。
konが大きいほど酵素が速やかに失
活する強い阻害剤である。
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ヒトおよび大腸菌GGTに対する阻害活性
P
CO2H
H2NO
O OMe
X
HOXP
CO2H
H2NOMe
O O GGT
HO-GGT
脱離基
+
pKaX kon [M-1s-1]ヒト 大腸菌
9.414-Cl 5.0 610
9.143-CO2H 1.6 450
10.404-OMe 8.704-CO2H0.16 19 5.2 3200
10.21 8.514-Me 4-CF30.24 24 12 2900
9.98H 8.363-NO20.40 120 49 5100
7.954-CN4-CH2CO2H 9.84 0.33 210 46 12000
0.40
pKaXkon [M-1s-1]
ヒト 大腸菌
CO2H
H2NO N
Cl
(アシビシン)
-6.18(HCl)
4-NO2 7.153-CH2CO2H 9.71 51 150 35000130
4200
No.
1
2
3
4
5
6
7
No.
8
9
10
11
12
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ブレンステッドプロット
ヒトGGT 大腸菌GGT
pKa pKa
pkon
pkon
◆
P
CO2H
H2NO
O OMe
CO2H
化合物5
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活性中心についての考察
P
CO2–
H3N+ O
O OMe
CO2–
Thr
+
H
X
HO
HN
NH
CO2–
CO2–
H3N+
SH
O
O O
Thr
+
H
Xδ- δ-
HN
NH
CO2–
CO2–
H3N+
SH
O
O O
Thrδ- δ-
P
CO2–
H3N+ O
O OMe
X
ThrHO
ヒトGGT 大腸菌GGT
ヒトGGTはグルタチオンC末端の負電荷を厳密に認識している。
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水溶液中での安定性
No. 構造D2O
(室温/12時間)
分解せず
12%分解
49%分解
kon(ヒトGGT)
51
46
130
5
11
12
備考
• D2O中室温で1ヶ月後も安定
• NaHCO3:100%分解• CD3CO2D中:40%分解• CF3CO2DまたはDCl:24時間後も安定
(いずれも1M)
P
CO2H
H2NO
O OMe
CO2H
P
CO2H
H2NO
O OMe CN
P
CO2H
H2NO
O OMe NO2
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化合物5の特徴
GGT選択性
• GAT(アスパラギン合成酵素のグルタミナーゼドメイン)を全く阻害しない(10 mM、2時間)。
安全性
• 雌雄マウスに対して急性毒性を示さない(100 mg/Kg、単回静脈内投与、2週間観察)。
• エイムス試験において変異原性を示さない。
アシビシンは0.1 mMの濃度でGATを90%以上失活させる。
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まとめ
P
CO2H
H2NO
O OMe
CO2H
• GGTの新規阻害剤を開発した。
• 阻害活性(ヒトGGT)、選択性、安全性の面で既存のGGT阻害剤であるアシビシンより優れる。
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想定される業界
用途:グルタチオン代謝に関する基礎研究全般に有用な生化学用試薬
・試薬メーカー
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :ホスホン酸ジエステル誘導体
およびその製造方法
• 出願番号 :特願2007-549163• 出願人 :国立大学法人京都大学
• 発明者 :平竹潤、坂田完三、韓立友