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設置環境ガイドライン 20125Copyright 2012 FUJITSU LIMITED

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Page 1: 設置環境ガイドライン - Fujitsu Japanjp.fujitsu.com/platform/installation_guide/installation...細目(温湿度) 5.1.3 異常値処置例 測定結果が基準値を満たせない場合、設置室の管理者は、その原因を究明する必要が

設置環境ガイドライン

2012年5月

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目次

1.本ガイドラインについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

2.本ガイドライン制定の狙い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

3.適用範囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

4.基準値 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

5.細目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

5.1 温湿度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

5.2 供給電源 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

5.3 接地・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

5.4 ノイズ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

5.5 塵埃・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

5.6 腐食性ガス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

5.7 搬入出/設置スペース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

6. 参考規格 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

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本ガイドラインの概要

1. 本ガイドラインについて

本ガイドラインは、富士通製品を設置する場所における、システムとしての環境条件を

明確にしたものです。

製品の設置条件と実際の環境状況を照らし合わせ、事前に設置環境(供給電源、温湿

度、腐食性ガスの防止等)を整備して頂く必要があります。

2. 本ガイドライン制定の狙い

環境に起因したトラブルは、設置後から長時間経過した後に見えてくるものが多く、障害

が発生してから対応する場合、多大な費用と工数を要することが考えられます。

富士通は、設置環境に起因したトラブルを未然に防止することが重要と考えており、富

士通製品における設置場所の環境条件や考え方などをガイドラインとしてまとめており

ます。お客様が製品を導入される前に設置環境を確認し、整備して頂くための資料とし

て、本ガイドラインをご活用頂きたいと考えています。

3. 適用範囲

富士通製品(サーバ、ストレージ、ネットワーク機器)を設置する計算機室やデータセン

ターの環境に適用します。

各製品の詳細条件については、各製品のマニュアルをご参照下さい。

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基準値

当社製品を導入いただく設置場所の環境は、装置導入時に下記条件を満足していることが

重要です。導入後も定期的な確認を推奨します。

項番 項目 条件 備考

1

装置吸気

温湿度

許容値

装置状態 動作時(許容値) 動作時(推奨値) 休止時

解説5.1

温度 10~35℃ 18~28℃ 5~45℃

湿度 20~80%RH

(結露しないこと)

5.5 ℃ DP ~15 ℃ DP か つ60%RH以下

8~80%RH

(結露しないこと)

・動作時:電源投入され、装置が稼動している状態

・休止時:電源未投入で、装置が停止している状態

【出典】 ASHRAE Particulate and Gaseous Contamination Guidelines for Data Centers

ASHRAE 2011 Thermal Guidelines for Data Processing Environments –

Expanded Data center Classes and Usage Guidance

※温度の推奨値については、富士通独自の値であり、ASHRAEの基準値を包含しております。

※上記条件より厳しい使用条件の製品を導入される場合は、当該製品の設置条件に従って下

さい。

表4.1 温湿度許容値

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4. 基準値

3

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基準値

表4.2 供給電源に関する条件 項番 項目 条件 備考

2

供給電源

定格入力電圧

相数 日本国内 海外

解説5.2.1

単相2線 100V 100V、110V、115V、120V

単相2線 200V 200V、208V、220V、230V、240V

3相3線 200V 200V、208V、220V、230V、240V

3相4線 400V 380V、400V、415V中性線接地

定格入力周波数 50Hzまたは60Hz

電 圧 変 動 率(AC/DC)

定格入力電圧に対し、+10%~-10%以内(受端) 解説5.2.2

周波数変動率(AC) 定格入力周波数に対し、+2%~-2%(受端) 解説5.2.3

波形ひずみ率(AC) 装置受端にて、10%以下 解説5.2.4

波高値低下率 装置受端にて、5%以下 解説5.2.5

瞬時停電 装置受端にて、10msecまたは1/2サイクル以下 解説5.2.6

定格入力電圧

不平衡度 5%以内(単相3線、3相の場合) 解説5.2.7

ブレーカ選定

主幹ブレーカは、システム全体の電力量を満足するブレーカを設置して下さい。分岐ブレーカは、装置単位に当該定格容量を満足するブレーカを設置してください。また装置が複数の電源入力を持つ製品においては、ACケーブル毎に電流容量の適したブレーカを設置して下さい

その他 その他補足事項 解説5.2.8

【出典】 JEITA IT1004A

※上記条件より厳しい使用条件の製品を導入される場合は、当該製品の設置条件に従って下さい。

項番 項目 条件 備考

3 接地 接地の種類 専用A種、専用C種または等電位ボンディング 解説5.3

表4.3 接地条件

【出典】 JEITA IT1004A

JIS C 60364-5-54 接地設備 等電位ボンディング

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基準値

表4.4 ノイズ条件 項番 項目 条件 備考

4 ノイズ

静電気 接触放電 解説5.4.1にて防止策

などを記載 解説5.4.1

気中放電

電磁界 電 波 ( 電 界 強 度 ) :150kHz~1GHz

3V/m 解説5.4.2

磁界 交流電源 3A/m

解説5.4.3 直流電源 400A/m(地磁気を除く)

雷サージ サージ 1kV 解説5.4.4

【出典】 静電気 JEITA IT1004A

電磁界 IEC61000-4-3(JIS C61000-4-3)、IEC61000-4-6(JIS C61000-4-6) 、JEITA IT1004A

磁界 IEC61000-4-8(JIS C61000-4-8) 、JEITA IT1004A

雷サージ IEC61000-4-5(JIS C61000-4-5) 、JEITA IT1004A

表4.5 塵埃許容量 項番 項目 条件 備考

5 塵埃

(浮遊塵埃)

ISO 14644-1 class8を満たさなければならない

(直径0.5μm以上の塵埃が3,520,000以下) 解説5.5

【出典】 ISO 14644-1、JEITA IT1004A

表4.6 腐食性ガス許容量 項番 項目 条件 備考

6 腐食性ガス IEC60721-3-3における「表A.2.3」の環境分類「3C1L」を

満たさなければならない 解説5.6

【出典】 IEC 60721-3-3、JEITA IT1004A

項番 項目 条件 備考

7

搬入出・設置スペース

搬入出経路

スロープ傾斜 製品が転倒しない傾斜とすること

解説5.7

エレベータ 製品の質量、高さ、幅等、梱包状態を考慮したスペースを確保すること

床耐荷重 製品の質量に加え、梱包材や搬入のための設備の質量を考慮すること

スペースの 確保

①製品搬入のためのスペースを確保すること ②搬入のための設備の旋回・昇降等に必要なスペースを確保すること

設置場所

床耐荷重 製品の質量とレイアウトより単位面積あたりの荷重を算出しスラブ床強度の範囲内にあることを確認する。必要に応じて補強する

保守スペース ①装置を保守するためのスペースを確保すること ②ラック搭載製品では、ラックの扉やスライドレールの長さを考慮すること

吸気・ 排気スペース

装置の吸気口に、常に冷気が取り入れできるよう装置を配置すること

表4.7 搬入出経路・設置スペースに関する条件

【出典】ラックシステム構築ガイド

http://jp.fujitsu.com/platform/server/primergy/technical/index.html

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細目(温湿度)

5.1 温湿度

5.1.1 考え方

表4.1における基準値は、富士通製品の設置条件を満たしており、ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)が、データセンターに求めている環境基準のClass A2を包含した値となっております。

ASHRAEは、暖房、換気、空調、冷凍など空気調和に関わる、あらゆる個人や、団体のための学会であり、ASHRAEの基準値を参照している企業は、北米を中心として世界に多く存在します。

ASHRAEでは、推奨値を18℃~27℃としていますが、富士通はそれを包含し、エコなどを考慮した上で、18℃~28℃としております。

また、急激な温度変化を伴う場合には結露が発生し、水滴が製品に悪影響を及ぼす可能性があるため、結露しないことを前提条件として、当基準値の範囲を維持する必要があります。

推奨値とは、空調設備と装置の調和が取れる温湿度範囲であり、電源効率と装置の安定稼働の双方に考慮した温湿度の範囲を示したものになります。

ASHRAEによるクラス分けは下記のようになっております。

Class A1 通常、精密に制御された環境パラメタ(露点、温度、および相対湿度)とミッションクリティカルな運用を実施するデータセンターの環境を指しております。通常、この環境のために設計された製品のタイプは、企業サーバとストレージ製品です。

Class A2 環境パラメタ(露点、温度、および相対湿度)のいくつかをコントロールする事が可能な情報技術スペース、オフィスまたは研究室環境を指しております。通常、この環境のために設計された製品のタイプは、ボリュームサーバと、ストレージ製品と、パソコンと、ワークステーションです。

推奨値における、「DP」とは、Dew Pointの略であり、露点温度を指しております。5.5℃DPとは、露点温度が5.5℃となる空気が結露する温度となります。そのときの絶対湿度は、おおよそ7.03[g/m3](0.0056[kg/kg])となります。

同様に15℃DPは、おおよそ12.84[g/m3] (0.011[kg/kg])

5.1.2 測定方法例

空調設備管理者は、継続して測定を行い、常に設置室内における温湿度を観測できる状態にしておく必要があります。測定器もしくは検知器の設置位置は、他の装置の排気の影響を受けない場所で床より1.5m程度の高さとして下さい。床下空調の場合も同様の測定とし、床下吹き出し空気を測定項目として、追加して下さい。

空調機の配置や装置レイアウトなど室内の条件によっては、温湿度に差が出る可能性があるため、測定点を複数設けることを推奨しております。

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5. 細目

6

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細目(温湿度)

5.1.3 異常値処置例

測定結果が基準値を満たせない場合、設置室の管理者は、その原因を究明する必要があります。例えば下記の要因が考えられます。

①空調機の性能不足や、不具合など

②設置室内の空気循環が非効率など、設置室における構造上の問題

③温湿度に影響を与える要因が、設置室内及びその周辺に存在している

上記は一例であり、これ以外にも温湿度を正常に制御できない要因が考えられます。

設置室の管理者は、問題の原因が判明次第、装置稼働前に対応を取る必要があります。

また、冬季における室外からの搬入時や夏季における室内からの搬出時には、結露防止のため、急激な温度変化を避ける必要があります。例として、保温車の使用や搬入出前に一時的に室内で保管するなどの対応があります。

5.1.4 製品への影響例

(1)設置場所における温湿度が基準値範囲を超えた場合、製品に下記のような影響を与える可能性があります。

①故障の増加、寿命の低下(高温状態)

②電気信号の誤差増大(動作時における、高温状態及び低温状態)

③誤作動(動作時、起動時における高温状態及び低温状態)

④製品の加熱(動作時における高温状態)

⑤さびや腐食の進行(高温、高湿状態)

⑥グリースの劣化及び性能低下(高温、低温、高湿状態)

⑦結露と汚損の複合による、電食や誤作動(高湿状態で、急激な温度変化を伴う場合)

⑧絶縁の低下(高湿状態)

⑨トナーの固化(高湿状態)

⑩静電気放電による、製品の誤作動及び故障(低湿状態)

⑪プリンタ用紙等の紙送り不良(低湿状態)

⑫記録媒体の萎縮、変形による動作不良(低湿状態)

⑬温度変化率が大きかった場合、製品内温度のバラつきによる誤作動

(2)要因の相乗効果による悪影響の増大

腐食性ガスや塵埃など、他の要因と複合した場合、製品への悪影響が増大するため注意が必要です。

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細目(温湿度)

5.1.5 空調設備の仕様選択と温湿度管理について

(1)空調設備の仕様選択と温湿度管理

設置場所を計画・設計する部門は、設置する空調設備を決定する際、空調設備は設置場所専用とし、室内温湿度を年間通して一定の範囲に保つことが出来るものを選択して下さい。また、塵埃や腐食性ガスなどを除去し、設置室内に良好な空気を循環できる設備の設置等を必要に応じて実施して下さい。

(2)設備冗長化と異常時の対応

空調設備は、予備設備の設置などの冗長化をすることにより、システム全体の信頼性を向上することができます。また、室内温湿度を連続的に観測し温湿度の変化を常に監視出来る体制を取り、すみやかに異常状態を発見できる運用もシステム可用性向上に役立ちます。

5.1.6 適正な装置レイアウト

同一室内に、複数製品を設置する場合、相互に影響を及ぼさないよう各製品の吸気方向、排気方向などを考慮し、適切に温湿度管理が可能となるレイアウトとすることが必要です。

例えば、Hot Aisle及びCold Aisleの考え方に従った配置を行うことを推奨します。

Hot Aisle及びCold Aisleの考え方とは、データセンターの空調効率を考慮し、冷気と暖気の混合を避けるための考え方です。

下図の様に装置の排気と排気を向き合わせたエリアをHot Aisle、吸気と吸気を向き合わせたエリアをCold Aisleと呼んでいます。

図 Hot Aisle及びCold Aisleの例

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細目(温湿度)

5.1.7 ラック内の吸排気の考慮

ラック内の装置の配置について、下記に例示した配慮が必要です。

・ラック内排気熱回り込みを防止するため、未実装位置に、ブランクパネルを取り付ける。

・装置背面のケーブルが排気口を塞がないよう考慮する。

5.1.8 参考資料

ASHRAE Particulate and Gaseous Contamination Guidelines for Data Centers

ASHRAE 2011 Thermal Guidelines for Data Processing Environments –Expanded

Data center Classes and Usage Guidance

JEITA IT-1004A 産業用情報処理機器設置環境基準

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細目(供給電源)

5.2 供給電源

各基準値の設定背景

供給電源はその種類や仕様により、装置の安定稼動に多大な影響を与える可能性があります。

さらに、一度設置場所を建設してからの変更は、大変難しく、膨大な費用と期間を伴うため、事前の検討が重要となります。

供給電源に関する、各基準値を規定している考え方や注意事項は下記に示します。

JEITAに準拠している項目については、基準値のClass Bに準拠しております。

IECを始め、環境に関するClass分けの考え方に基づいています。

Class A:産業用情報処理・制御機器の設置環境を完全化するための設備を有する環境、または産業用情報処理・制御機器に悪影響を及ぼさない良好な環境

Class B:産業用情報処理・制御機器の設備環境を改善するための設備を特に持たない、一般レベルの環境

※製品によっては、より厳しい環境条件(Class A相当)を要求している場合があり、そのような製品を設置する場合は、当該製品の設置条件に従って下さい。

5.2.1 定格入力電圧

5.2.1.1 考え方

表4.2は、一般的な相数と電圧を示しています。装置を設置する場所には、富士通製品の仕様に応じた、入力電圧を供給して下さい。供給できる電圧と製品仕様に差が生ずる場合は変圧器などの設置が必要となります。

5.2.1.2 製品への影響例

定格入力電圧が異常値の場合、製品の故障につながることが考えられます。

・異常発熱

・ブレーカや製品内蔵ヒューズの不用意遮断

・製品内素子破壊

・強制的な電源断

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細目(供給電源)

5.2.2 電圧変動

5.2.2.1 考え方

分電盤に接続された、様々な装置の負荷変動によって電圧変動が起こります。本基準値は、当社製品の設置諸元を満足しており、JEITAのClass Bに準拠しております。また、IEC60038における基準値を包含しております。

電圧変動における、JEITAが定めているClass分けの目安は下記の通りです。

Class A:定電圧電源装置(UPS、AVR、MGなど)から給電した場合の環境

「基準値:±5%」 Class B:一般商用電源から給電した場合の環境

「基準値:±10%」

5.2.2.2 測定方法

一般的にはAC電圧計、テスターやAC電源アナライザーを用いて測定することが可能です。

5.2.2.3 製品への影響例

最近の製品は、電圧が変動しても消費電力が一定となる電源方式がとられているものが多く、電圧が低下した場合消費電流が増加し、定格電流を超えブレーカが落ちる場合があります。

5.2.3 周波数変動率

5.2.3.1 考え方

本基準値は、当社製品の設置諸元を満足しており、JEITA のClass Bに準拠しております。また、IEC61000-2-1における基準値を包含しております。

周波数変動における、JEITAが定めているClass分けの目安は下記の通りです。

Class A:一般商用電源やUPSから給電した場合の環境「基準値:±1%」 Class B:MGから給電した場合の環境「基準値:±2%」

5.2.3.2 測定方法

50/60Hzの±0.1の確度における測定が可能な周波数測定器を用いて、装置の受端にお

ける周波数変動率を測定する必要があります。AC電源アナライザーで測定が可能です。

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細目(供給電源)

5.2.4 波形ひずみ率

5.2.4.1 考え方

本基準値は、当社製品の設置諸元を満足しており、JEITA の基準Class Bに準拠してお

ります。また、IEC61000-2-2における基準値を包含しております。本基準値は、実負荷状

態にて装置受端における値としています。

波形ひずみ率における、JEITA IT1004Aが定めているClass分けの目安は下記の通りで

す。

Class AおよびB:無瞬断切替機能を持つ電源装置における、系統切替の際の瞬時ならび

に過渡変動を想定したものです。

[基準値]

Class A:5%以下

Class B:10%以下

5.2.4.2 測定方法例

AC電源アナライザーを用いて測定が可能です。

5.2.5 波高値低下率

5.2.5.1 考え方

本基準値は、JEITAにてデータセンターに求めている波高値低下率の値を採用しました。

本基準値は、実負荷状態にて装置受端における値としています。

尚、波高値低下率の定義は下記の通りです。

波高値低下率={(基本波の波高値-実電圧波の波高値) ÷ (基本波の波高値)}×100

・・・式(1)

5.2.5.2 測定方法例

AC電源アナライザーで測定が可能です。

また、オシロスコープを用いる測定方法もあります。

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細目(供給電源)

5.2.6 瞬時停電

5.2.6.1 考え方

回線の切り替え時や落雷などで発生する短時間の停電のことです。本基準値は、当社製品の設置諸元を満足しており、JEITAの基準Class Bに準拠しております。また、CISPR24における基準値を包含しております。

本基準において停電とは、供給電源が装置受端において、その許容電圧変動範囲以下(-5%以下)に低下した場合を指しています。この時、供給電源電圧は定格値とします。

瞬時停電における、JEITA IT1004Aが定めているClass分けの目安は下記の通りです。

Class AおよびB:無瞬断切替機能を持つ電源装置における、系統切替の際の瞬時ならびに過渡変動を想定したものです。

[基準値]

Class A:3msec以下

Class B:10msec以下または、1/2サイクル以下

5.2.7 定格入力電圧不平衡度

5.2.7.1 考え方

本基準値は、当社製品の電源供給装置に関する入力電圧不平衡度の値です。また、本基準値はIEC61000-2-2における基準値を包含しております。入力電圧不平衡とは、3相入力電源装置の各1線間電圧の差を指しております。

5.2.7.2 参考

3相4線式で給電する場合、各相の電力負荷に不平衡が生ずると中性線が過負荷状態になる場合があり、電圧低下、発熱などのトラブルを起こす可能性があるので、注意が必要です。

また、単相の装置を3相電源に接続する場合、一般に不平衡負荷がかかるため、各相に負荷が平均化するよう接続装置の配分を行う必要があります。

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細目(供給電源)

5.2.8 その他補足事項例

(1)突入電流や起動電流を考慮して下さい。

製品に電源を投入する際や停電状態からの復電の際に、突入電流や起動電流といった定常負荷電流の10数倍のピーク値を持った電流が流れることがあり、過負荷状態になる場合があります。

さらに、電源投入からモーターが定常回転数に達するまでに、定常負荷電流の3~10

倍の起動電流が数十秒流れる場合があります。

CVCFやUPSなどは、半導体素子を保護するため出力容量の制限があり、突入電流や起動電流を発生する装置が設置されていると全負荷同時投入ができない場合があります。その場合は、下記対策例を参考にして下さい。

①電源装置の瞬時過負荷耐量を大きくして下さい。

②UPSは無瞬断切換方式として、製品の起動時は直送側から供給し、負荷電流が定常状態になってからUPSに切換えて下さい。

③負荷を分割して自動的に順次、電源を投入する順序投入回路を設けて下さい。

④出力電圧の立ち上がりを遅くする機能を持った電源装置として下さい。

(2)波形ひずみは実効値応答型計器で測定・管理して下さい。

ひずみの大きな電流波形では、-20%から-50%もの大きな指示誤差を生じる場合があるため、正確な実効値応答形計器を使用する必要があります。

(3)波高値低下率と電圧変動を組合せ、装置動作範囲を満足するよう考慮して下さい。

波高値の低下が大きいと、製品の停電検出回路で異常を検出され、製品内の直流電源出力の安定性が失われる場合があります。従って電圧変動と波高値低下率とがそれぞれ許容範囲内であっても前述の支障をきたす恐れがあるため注意が必要です。

(4)電源供給ケーブルなどの強電ラインは、装置間接続信号ケーブルやLANケーブルなどの信号ラインへの影響を防止するよう配線して下さい。

電源装置から、製品までの電源配線は、信号ケーブルに対して誘導ノイズを与えないよう、互いに平行配線を避け、物理的に離して下さい。

電源供給線及び他の強電ラインは、ノイズを避けるため必要に応じて、金属管配線または、シールド線を使用することが出来ます。

(5)原則として、システムを構成している各製品にサーキットブレーカを設置して下さい。

製品の設置場所には分電盤を設け、原則として各製品にサーキットブレーカを設け、各製品における個々の異常がシステム全体に影響を与えないよう考慮して下さい。製品個別で推奨しているブレーカがあれば、そちらを設置して下さい。

5.2.9 参考資料

JEITA IT-1004A 産業用情報処理機器設置環境基準

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細目(接地)

5.3 接地

JEITAでは機能用接地および、保安用接地について「電気設備技術基準とその解釈」に準拠したJEITA IT1004Aを規定しております。さらに、コンピュ-タシステム特有の仕様を盛り込んだJEITA ITR1005にて詳細について補足しています。

5.3.1 接地の目的① (機能用接地・・・雑音対策用接地、及び信号用接地)

5.3.1.1 考え方

システムの基準電位を確保するための機能用接地について、下記にその接地工事の概要を説明します。

接地工事の種類 接地抵抗値 接地線径の目安

A種接地工事 10Ω以下 22mm2以上

C種接地工事 10Ω以下 (抵抗電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは、500Ω)

22mm2以上

表.5.1 接地工事の種類①

※接地極同士の距離は10m以上離すことを推奨しております。

5.3.1.2 製品への影響について

製品の動作を保証するために確実な接地を実施しなければなりません。

接地の不備による障害要因を下記に示します。

(1)動力機器と製品の共用接地による障害

(2)溶接機のアーク電流が製品の接地線に混入したための障害

(3)接地極の場所が地下水の経路にあたり渇水期に接地抵抗が大きくなったための障害

5.3.1.3 機能用接地において考慮すべき事項

(1)接地配線は、確実な配線とルートの確保を行ってください。

(2)システムは、電源供給がされている分電盤より、各製品について独立に接続してください。その分電盤は、1つの接地極のみに接続してください。

(3)接地線径について

接地線のインピーダンスを減らすために、接地線径は22mm2以上を目安としています。また、接地極までの配線長をできるだけ短くする配慮が必要です。

5.3.2 接地の目的② (保安用接地)

5.3.2.1 考え方

人体の安全を確保することを第一目的として施す接地です。従って、対地電位上昇限界値が「低圧電路地絡保護指針」に規定されている第2種許容接触電圧25Vを越えない範囲においてD種(旧第三種)以上の接地工事を実施して下さい。

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細目(接地)

接地工事の種類 接地抵抗値 接地線の種類

D種接地工事

100Ω以下(低圧電路において、当該電路に地絡を生じた場合に0.5秒以

内に自動的に電路を遮断する装置を施設するときは、500Ω)

引張強さ0.39kN以上の金属線

または、直径1.6mm以上の軟銅線

表.5.2 接地工事の種類②

※接地極同士の距離は10m以上離すことを推奨しております。

5.3.3 その他考慮事項

5.3.3.1 分散システム、遠隔設置装置間等の接地

分散型システムや装置本体と長い距離をおいて接続される端末装置、ビルの上層と下層に設置される装置、あるいは他のシステムと接続する等の場合、1点接地の実施は困難です。

従って、接続される装置の仕様に基づいて、以下にあげる方法例を参考とし、最も適している接続方法を取捨選択することが重要となります。

(1)光(光通信)結合機器、無線機器の使用による分離接続

(機器別接地の実施)

(2)モデムの使用による分離接続(トランス絶縁)

(製品別接地の実施)

(3)トランシーバあるいはハブ使用による分離接続(トランス絶縁)

(製品別接地の実施)

(4)保安(筐体)接地と機能接地の分離

(保安接地は、多点接地、機能接地は1点接地とする方式)

(5)網状接地(メッシュ接地、ネットワーク接地)に接続する方式

特に、他社装置間あるいは異なるシステム間を接続する場合には接地システムの違いによる誤動作を防止する(対策の実施を容易にする)ため、連結接続は避けることが必要です。

5.3.4 参考資料

JEITA IT-1004A 産業用情報処理機器設置環境基準

JEITA ITR-1005A 情報システム用接地に関するガイドライン

5.3.5 備考

海外に設置する場合、もしくはIEC規格に基づく建屋の場合に関しては、IEC60364-5-54

「接地設備および保護導体」JIS C60364-5-54「電気機器の選定及び施工-接地設備,保護導体及び保護ボンディング導体」等の関連規格に基づいて接地してください。

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細目(ノイズ)

5.4 ノイズ

【考え方】 ノイズに関する各基準値は、すべてJEITAがデータセンターに求める基準値を採用しています。JEITAは、ノイズに関する本基準値をすべてIECから採用しており世界的に採用されている基準です。

当社製品は、環境や他の装置に対して、許容できない電磁ノイズを与えず、かつその環境において製品自身も正常に機能するように設計されています。これを電磁両立性と呼び、電磁両立性と各種ノイズ源から発生するノイズのレベル、装置の感受性、装置の耐力レベルを表すと下図のようになります。

③ ④

ノイズレベル

統計的分布

図5.2 電磁妨害のレベルの関係

※①:装置の感受性(誤作動発生等)(統計的分布)

②:イミュニティ限度値(規定試験レベル)

③:両立性レベル(環境値)

④:全発生ノイズレベル(統計的分布)

ノイズレベルとして国際的に明確に規定されているIEC61000-4(JIS C61000-4)の装置におけるノイズ耐力(イミュニティ限度値)レベルを採用しています。

本基準はIEC61000-4(JIS C61000-4)に従い、ノイズ耐力にて制定しているため、本基準で制定しているイミュニティレベルの値よりもノイズレベルをより小さく抑えて管理することが望ましいです。

本項目に関しては、JEITA IT1004AのClass Bに準拠しております。

※製品によっては、より厳しい環境条件(Class A相当)を要求している場合があり、そのような製品を設置する場合は、当該製品の設置条件に従って下さい。

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細目(ノイズ)

5.4.1 静電気

帯電した人体や運搬用台車が装置筐体の金属部分に接触し、静電気放電が起こることにより製品の誤作動を引き起こす可能性があります。また、プリンタ機器等においては、静電気による紙詰まりが発生する場合も考えられます。なお、静電気は、湿度に大きく影響されるため、設置室内の温湿度を管理する必要があります。

5.4.1.1 静電気防止策例

・湿度を一定に保つよう空調し、冬期は加湿を行う。例えば湿度を50%(RH) 程度に保つ。

・帯電しやすい印刷用紙等を処理するプリンタなどの装置は、確実に筐体接地を実施する。

・床材として静電気を発生しにくい材質で、帯電防止処理等を施したじゅうたん、カーペットを使用する。

・フリーアクセスフロアにおいて、上げ床板の表面は、帯電防止処理を施した材料を用い、床板間、床板と支柱間は伝導パッド等により電気的に接続して下さい。尚、上床の支柱は、接地線を使用し、接地することが望ましい。

・衣類としては静電気を発生しにくい材質を選び、靴も静電気帯電防止靴を履くことが望ましい。

5.4.2 電磁界

5.4.2.1 電波(電界強度)150kHz~1GHz

放送アンテナ、レーダーからの電波や、トランシーバ及び携帯電話等の影響によって、電源ライン、信号ラインや筐体の隙間等から侵入するノイズで、装置の誤動作などの性能低下を引き起こす可能性があります。

5.4.2.2 測定方法例

電界メータ(電界強度計)で測定可能です。

[参考]

本基準値は、IEC61000-4-3(JIS C61000-4-3)の試験レベル2と同じです。

電磁界におけるJEITAが定めている、Class Bの環境の目安は下記の通りです。

・中レベルの電磁放射環境

小出力携帯形トランシーバ(通常,定格1W以下)を用いることができるが、装置の近傍での使用に対する制約がある。典型的な商用環境。

表.5.3 一般的な装置の設置室内における無線機器の使用条件(例)

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無線機器 設置室内での使用可否

注意事項

携帯電話

市民バンドトランシーバ

業務用無線、アマチュア無線

使用不可 ・装置が誤作動を起こす可能性があります。

・室内に持ち込む際は、電源を切って下さい。

コードレス電話

PHS 使用可

・装置及び信号ケーブルから0.5m以上離して下さい。

(装置0.5m以内に近づける場合は、必ず電源を切って下さい)

小電力コードレス電話

小電力トランシーバ 使用可

・本体及びアンテナは、装置や信号ケーブルに接触

させないで下さい。

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細目(ノイズ)

5.4.3 磁界

磁界の発生原因としては、大電流電力線の周囲に生じる磁界やトランスの漏洩磁束によるものや、電気溶接などによる金属類の磁化や永久磁石(直流磁界)などが考えられます。磁界の影響として、CRTディスプレイの画面揺れや装置の誤作動、さらには磁気記録媒体のデータ破壊などが考えられます。また、医療に使用されるMRIなどの機器は極めて強い磁力を持っており、磁気を利用した記憶装置を設置する場合は,影響を受けないレイアウトを考慮する必要があります。

5.4.3.1 参考

本基準は、IEC61000-4-8(JIS C61000-4-8)の試験レベル2と同じです。

磁界におけるJEITAが定めている、Class Bの環境の目安は下記の通りです。

・十分に保護された環境

①漏れ磁束を発生する可能性のある電源変圧器などの電気機器がない環境

②高圧母線の影響を受けない区域

例えば、「保護接地導体や、工業用施設の区域や高圧変電所等から離れた一般家庭、事務所、病院の保護区域」のような環境を対象としたClassです。

電子ビーム使用の敏感な装置(CRTディスプレイ等)を使用する場合は、本基準値では影響を受ける可能性があるため、JEITA IT1004AのClass A (IEC61000-4-8の試験レベル1)で管理する事を推奨します。

画面揺れは、感じ方に個人差があるため、管理上は0.5A/m(約6ミリガウス)以下にすることが望ましいです。

※備考

実際には各相で発生する磁界が打ち消しあうため、本数値の数倍の電流値で同等の画面揺れとなります。

5.4.3.2 対策

(1)電力線の各相の電流値を平衡させる。

(2)電力線の各相からの距離を平衡させる。

(3)電力線を金属配管にする。

(4)磁界発生源からCRTディスプレイや磁気記録媒体などを離して設置する。

5.4.3.3 測定方法例

磁界メータ(磁界強度計)で測定可能です。

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細目(ノイズ)

5.4.4 雷サージ

本基準値は、入力電源線からの雷サージの値です。

5.4.4.1 雷サージの種類

雷サージには大きく2種類あります。1つは自然現象に起因する外雷サージ。もう1つは電気回路系統における過渡現象に起因する内雷サージです。外雷サージは、さらに直撃雷サージと誘電雷サージに分かれます。

それぞれの特徴を下記に示します。

(1)直撃雷サージ:電気設備等に直接直撃を受けるものです。頻度は少ないですが、雷エネルギーが極めて大きく、電源設備のフラッシュオーバーは避けられません。

(2)誘電雷サージ:雷放電時に拘束が解かれ、送電線路上を進行する雷サージ。発生頻度は高めですが、電圧は低いです。

(3)内雷サージ :電力系統の事故時あるいは、回路の操作時(回路開閉時)に発生します。発生頻度は高めです。

5.4.4.2 参考

本基準値は、IEC61000-4-5(JIS C61000-4-5)における試験サージ電圧のレベル2と同じです。

雷サージにおけるJEITAが定めている、Class Bの環境の目安は下記の通りです。

・短い配線においてもケーブルが十分に分離された環境

①設備は、設備自体または雷により発生した妨害電圧を受けるおそれのある電源設備の接地システムに独立の接地ラインを通して接地されています。

②電子機器に給電する電源は、電源用の特殊な変圧器によって、他の回路から分離されています。

③設備内に保護されていない回路が存在するが、十分に分離され、数が制限されています。

5.4.4.3 雷サージに対する対策(誘導雷サージを対象とする)

雷サージに対する対策として以下のような処置が考えられます。

・電力通信ケーブルの、地中ケーブル化

・架空配線ケーブルの場合、できるだけ地表近くへの架設

・通信ケーブルの光ファイバー化

・すべての屋外ケーブルに接続される回路(電源、通信、アース線等)に避雷器(SPD)等を設置し等電位化

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細目(ノイズ)

5.4.5 参考資料

JEITA IT-1004 A 産業用情報処理・制御機器設置環境基準

ARIB標準 ARIB STD-T66 第二世代小電力データ通信システム/ワイヤレスLANシステム

IEC61000-4-3 電磁両立性(EMC)-第4-3部:試験及び測定技術-放射無線周波電磁界イミュニティ試験

IEC61000-4-4 電磁両立性(EMC)-第4-4部:試験及び測定技術-電気的ファストトランジェント(高速過渡現象)/バーストイミュニティ試験 基本EMC出版物

IEC61000-4-5 電磁両立性(EMC)-第4-5部:試験技術及び測定技術-サージイミュニティ試験

IEC61000-4-6 電磁両立性(EMC)-第4-6部:試験及び測定技術-無線周波電磁界によって誘導された伝導妨害に対するイミュニティ試験

IEC61000-4-8 電磁両立性(EMC)-第4-8部:試験技術及び測定技術-電力周波数磁界イミュニティ試験

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細目(塵埃)

5.5 塵埃

5.5.1 考え方

ASHRAEがデータセンターに求めている空気清浄度は、ISO14644-1(JIS B9920;2002)

のClass8であり、当社製品を導入する設置場所における許容塵埃量をこれと同様に規定し、下記許容塵埃量を満足しなければなりません。(必須条件)

粒子の大きさ

ISOのクラス ≧0.1μm ≧0.2μm ≧0.3μm ≧0.5μm ≧1μm ≧5μm

Class1 10 2 - - - -

Class2 100 24 10 4 - -

Class3 1000 237 102 35 8 -

Class4 10000 2370 1020 352 83 -

Class5 100000 23700 10200 3520 832 29

Class6 1000000 237000 102000 35200 8320 293

Class7 - - - 352000 83200 2930

Class8 - - - 3520000 832000 29300

Class9 - - - - 8320000 293000

表.5.4 ISO14644-1空気清浄度と許容される粒子の最大濃度(粒子数/m3)

5.5.2 測定方法例

デジタル粉塵計を使用して重量換算を行うことで測定が可能です。

※重量濃度測定にて算出される本基準のClass8相当の値は、約0.07mg/m3です。

5.5.3 維持方法例

外気を使った熱交換方式ではないデータセンターは本基準値を下記の濾過方法を選択する事で満たすことが出来ます。

(1)室内へ侵入する空気は、MERV8フィルタでフィルタすることでレベルを維持できます。

(2)データセンター内に侵入する空気は、MERV11、できればMERV13でフィルタすることでレベルを維持できます。

但し、外気を使った熱交換方式のデータセンターについてのフィルタの選択は、そのデータセンターに存在する特定の条件によって異なります。

※MERV(Minimum Efficiency Reporting Value)の定義

フィルタの性能をMERVという単位で区分しております。フィルタの性能を1~20まで区分分けしており、数字が高い方が性能の高いフィルタです。表5.5にMERVの区分分けの目安を示します。

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細目(塵埃)

MERV 粒径

備考 3~10μm 1~3μm 0.3~1μm

1 <20% - - 住宅用 花粉 堆積ダニアレルゲン

2 <20% - -

3 <20% - -

4 <20% - -

5 20~35% - - 産業用 粉塵 カビ 胞子

6 35~50% - -

7 50~70% - -

8 >70% - -

9 >85% <50% - 産業用 レジオネラ属菌 粉塵

10 >85% 50~65% -

11 >85% 65~80% -

12 >90% >80% -

13 >90% >90% <75% 病院用 煙草煙 細菌

14 >90% >90% 75~85%

15 >90% >90% 85~95%

16 >95% >95% >95%

17 - - ≧99.97% クリーンルーム 外科 生化学物 ウイルス

18 - - ≧99.99%

19 - - ≧99.999%

20 - - ≧99.9999%

表5.5 MERVの区分目安

5.5.4 塵埃対策例

設置室内自体に塵埃対策を施す方法について

(1)土足の厳禁

(2)室内の禁煙

⇒煙自体よりも二次的な影響、例えば、灰をキーボードやフレキシブルディスクなどの開放型機器に落下させてしまうなど。

(3)集塵装置を設ける

⇒但しこの場合、下記に注意

①オゾンの発生に対する注意

②ダストの再飛散への注意

③濾過式集塵の場合の濾過後の微小粒子等に対する注意

④ウイスカの発生を防ぐため、電気亜鉛めっきを施した、上げ床材等の使用は避ける。

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細目(塵埃)

5.5.5 障害事例

(1)塵埃に関する、富士通の過去障害事例を下記に示します。

・床下に大量の鉄粉があり、装置に混入することで障害が発生し、大量の部品入換えが発生。

・フィルタを目詰まりさせるゴミにより、装置温度が上昇し、障害が多発。

(2)塵埃に関する一般的な障害事例を下記に示します。

・製品の可動部及び接触部に対しての悪影響。

・密閉度の低い磁気媒体のアクセスエラー、キーボードやタッチパネルの接触不良、OCR等光を媒体とする装置の誤作動等。

・金属粉やウイスカ等の伝導性の塵埃の場合の絶縁低下や短絡。

・絶縁塵埃の場合は、コンタクト間に付着し、接触不良。

・装置が空冷方式である場合、冷却用エア取込口のエアフィルターが目詰まりし、装置内部温度上昇による故障。

5.5.6 備考

本基準のClass8は、よく知られているクリーンルームの清浄度を表す指標のFED-209ではClass10万に相当します。FED-209のClassの目安は下記の通りです。

・農村の雨上がりの外気 10万~20万

・ふつうの外気 100万~

・勤務中の事務室 200万~400万

・喫煙がある会議室 1000万~

5.5.7 参考資料

ASHRAE Particulate and Gaseous Contamination Guidelines for Data Centers

JEITA IT-1004 A 産業用情報処理機器設置環境基準

ISO14644-1 クリーンルーム関連環境規格-第1部:空気清浄度の分類

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細目(腐食性ガス)

5.6 腐食性ガス

5.6.1 考え方

富士通の製品は腐食性ガスの許容濃度について、国際規格IEC60721-3-3における環境分類の項目「3C1L」に準拠しております。

IEC60721-3-3で「3C1L」の環境は、「室内空気を連続して調節している場所」としています。

各腐食性ガスの許容濃度について下記基準値を満たしている必要があります。(必須)

腐食性ガスや潮風は、装置を腐食させ、誤動作、破損及び、装置寿命を著しく短くする原因となり、適切な空気清浄設備を設けて除去する必要があります。さらに、清浄な空気で室内を陽圧にすることにより、外からの腐食性ガスの侵入防止に効果があります。腐食性ガスの発生源としては、化学工場地域、温泉/火山地帯などが考えられます。

下記値は、いずれも富士通の定める設置基準を満足しています。

IEC60721-3-3における環境分類「3C1L」

海塩 なし

二酸化硫黄 (SO2) Max 0.037cm3/m3

硫化水素 (H2S) Max 0.0071cm3/m3

塩素 (Cl2) Max 0.0034cm3/m3

塩化水素 (HCl) Max 0.0066cm3/m3

フッ化水素 (HF) Max 0.0036cm3/m3

アンモニア (NH3) Max 0.42cm3/m3

オゾン (O3) Max 0.005cm3/m3

窒素酸化物 (NO2) Max 0.052cm3/m3

表.5.6 腐食性ガス許容濃度

5.6.2 腐食性ガスによる影響

腐食性ガスは、一般的に自動車から放出される排気ガスや、温泉・火山地帯において噴出する硫化水素ガス、市街地のよどんだ川床から発生するガスなどがあります。

腐食性ガスが装置内部の金属を腐食させ、装置故障の原因となります。腐食性ガスによる影響は、装置を設置してから、数か月~数年稼働した後に現れることが多く、腐食が進行してしまうと、装置の安定稼働を妨げることとなります。このため、設置する前に腐食性ガスの有無を確認する事が大切です。簡便な測定法で実績も豊富な、エコチェッカによる調査を推奨します。

また、装置設置後に設置室内の腐食性ガス濃度状況が変化する事も想定されるため、定期的な環境チェックを実施することを推奨します。

下記に、装置における大気汚染の影響事例を挙げます。

(1)スイッチ、コネクタの接触不良

(2)配線の断線、配管の局部腐食

(3)装置構成金属材料の発錆、磨耗、腐食疲労、破断

(4)プリント配線のマイグレーション、ウイスカによる短絡

(5)リーク電流による電食

(6)外装の発錆、局部的腐食

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細目(腐食性ガス)

5.6.3 腐食性ガス測定方法例

積算測定法 瞬間測定法 連続測定法

SO2 二酸化鉛法 アルカリろ紙法 エコチェッカ

ロザニリンホルマリン法 比濁法等 (全硫黄酸化物測定法JIS K 0103)(検知管法)

溶液導電率法 電量適定法 可視部吸光光度法

NO2 アルカリろ紙法 ザルツマン吸光光度法等(JIS K 0104) (検知管法)

可視部吸光光度法 赤外線吸収法

H2S 酢酸亜鉛円筒法 アルカリろ紙法 エコチェッカ

メチレンブルー吸光光度法等(JIS K 0108) 感応ろ紙法 (検知管法)、エコチェッカQCM

電量適定法 ろ紙着色法

Cl2 アルカリろ紙法 エコチェッカ

感応ろ紙法 各種吸光光度法(JIS K 0106) (検知管法)

溶液導電率法 紫外線吸収法 ろ紙着色法

NH3 酸性ろ紙法 インドフェノール青吸光光度法等 (JIS K 0099)(検知管法)

双イオン電極法

表.5.7 腐食性ガスの測定方法(例)

(1)積算測定法

吸収体により大気中のガス成分を比較的長時間(1週間~1ヶ月)に渡り補集し、濃度を測定する方法であり、低濃度の測定に向いています。なお、エコチェッカ以外は、測定結果をppm単位のガス濃度に直接換算出来ません。

(2)瞬間測定法

環境の1瞬間をとらえて測定する測定法のため、日照、通風、降雨等の自然現象や周辺の樹木、建築物等により測定値が変動します。このため環境を代表するような時期、場所、自然条件を選定する必要があります。

ガスの種類によっては許容濃度低いため、高感度の分析が必要であり、費用が高額となります。

なお、瞬間測定法の1種である検知管法は、比較的高濃度(0.5~1ppm以上)の測定に向いた簡便法です。

(3)連続測定法

測定器が一般には大型・高価であり据置型として使用されています。

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細目(腐食性ガス)

5.6.4 クラス分け

JEITA IT-1004 A 「産業用情報処理・制御機器設置環境基準」では腐食性ガス環境をクラス分けしており、大気腐食の相互作用因子として腐食性ガス、温度、湿度、汚損度を設定し、これら因子の濃度レベルに評価点を与え、その合計評価点により以下のように分類しています。

環境 クラス 合計評価点

温度、湿度が低くガスが検知されない良好な環境 Class A ≦9

湿度が比較的低くガスが少ない一般的な環境 Class B 10~25

湿度がやや高くガスが少ない環境 Class S1 26~36

温度、湿度が高くガスが若干ある環境 Class S2 37~50

温度、湿度が高くガスが多い環境 Class S3 ≧51

表.5.8 腐食性ガス環境のクラス分け

区分 環境因子

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

測定値 評価点 測定値 評価点 測定値 評価点 測定値 評価点

年 平 均 温 度(℃)

A ≦20 1 ≦25 2 ≦30 4 >30 8

年平均湿度 (%)

B ≦50 1 ≦60 8 ≦75 16 >75 24

ガス (ppb)

SO2 C1 ≦40 1 ≦80 3 ≦200 6 ≦ 5000

9

NO2 C2 ≦20 1 ≦50 3 ≦100 6 ≦ 5000

9

H2S C3 ≦3 1 ≦10 8 ≦100 14 ≦ 10000

20

Cl2 C4 ≦2 1 ≦10 10 ≦100 20 ≦ 1000

30

NH3 C5 ≦100 1 ≦ 1000

2 ≦ 10000

4 ≦ 100000

8

汚損度 (等価塩分量) (mg/cm2)

D ≦0.03 1 ≦0.06 8 ≦0.12 16 >0.12 24

表.5.9 各環境因子、区分と評価点一覧

(合計評価点=A+B+C1+C2+C3+C4+C5+D)

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細目(腐食性ガス)

5.6.5 各クラスの解説

装置は、環境因子の多種多様な組合せ状況のもとで使用され、その複合環境の影響を受けます。

このような複合環境下の影響をとらえるため、各因子の金属に対する影響度から評価点を与え、各因子の測定結果に基づき、対応する評価点を合計することで、環境のクラス分けを行います。

(1)Class A環境

情報機器の設置環境を改善するための設備を有する良好な環境であり、情報機器の信頼性に影響を及ぼす腐食は発生しない環境です。

(2)Class B環境

情報機器の設置環境を改善するための設備を有しない以下に代表される一般的な環境であり、情報機器の信頼性に影響を及ぼす腐食は発生しない環境であるが、湿度が低くないときに一旦腐食性ガスや塵埃の侵入があると、情報機器は腐食を起こしやすいため、腐食性ガスや塵埃の侵入に充分な配慮を行うとともに、きめ細かな定期点検を行う必要があります。Class B環境としては、温度湿度が低く、複数の腐食性ガスが少し認められる環境あるいは、温度、湿度が低く特定の腐食性ガスと汚損度が少し認められる環境です。

(3)Class S1~3環境

温度、湿度とも高く腐食性ガスが存在し、汚損度も高い環境で、情報機器の信頼性に影響を及ぼす腐食が数年から数ヶ月で発生する環境であり、設置環境の改善や情報機器の密閉化などの対策が必要です。

※例えば、

年平均温度:23℃(A)、年平均湿度47%(B)、SO2=15ppb(C1)、NO2=15ppb(C2)、H2S

=5ppb(C3)、Cl2=5ppb(C4)、NH3=100ppb(C5)、汚損度=0.05mg/cm2(D)

という環境下であった場合、表5.9を用いて合計評価点は以下となる。

(合計評価点)=2+1+1+1+8+10+1+8

(合計評価点)=32

さらに、表5.8を用いて、当環境状況は「Class S1」となり、設置環境の改善が必要であると判断できます。

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細目(腐食性ガス)

5.6.6 対処例

腐食性ガス浄化方法の例として、「換気による方法」と「活性炭による方法」の2種類を下記に挙げます。

(1)換気による装置設置室内空気の浄化方法

作業者に対する執務室内における換気の基準は、「労働安全衛生規則」によって規定されています。一般的には、装置設置室内において腐食性ガスは発生がなく、換気はもっぱらオペレータの安全衛生を考慮しての対応です。装置設置室内では内圧を外気よりも高くしておくことで、腐食性ガスを含んだ外気は室内へ侵入しませんが、一定の圧力差を保つためには、常に室内へ新鮮な空気を補充しなければなりません。

外気空気の取入口の近くに腐食性ガスの発生源や、近隣工場の汚染源がある場合には、腐食性ガスを取込むことになるため、周囲の状況調査を事前に充分行い、必要に応じ外気取り込み位置の変更などの対応を取ってください。

周辺の腐食性ガス環境が悪い場合、装置設置室内における構造は、密閉構造が理想であり、窓枠にはパッキングをはめ、扉を二重構造にする位の配慮が望ましいです。しかし、このような処置を施しても、ケーブルダクトやピットの処置が不完全である場合など思いもよらぬ腐食を受ける可能性があるため、ダクトやピットの隙間処理にもパテで隙間を埋めるなどの注意が必要です。

(2)活性炭による浄化方法

ガスの除去に用いられる活性炭の吸着力は、グラム当たり、600~1500m2の表面積を有する、極めて精微な多孔構造をもつことによります。活性炭フィルタの性能として下記のようなことが要求されます。

①吸着効果を充分に発揮できること

②圧力損失が少ないこと

③設置スペースが小さいこと

④保守を考慮し、取り外し、交換が容易にできること

⑤耐腐食性があること

5.6.7 注意事項

(1)建物周辺に、腐食性ガス発生源がないこと。

(2)窓枠を二重パッキン構造にする/出入り口を二重化するなど設置室内への外気の流入を防止すること。

(3)外気取り入れ口、空調設備等に活性炭フィルタを設置し、設置室内の雰囲気を清浄な状態で維持すること。

(4)腐食性ガスは、温湿度に依存する可能性があるため、温湿度の管理も徹底すること。

(5)ガス同士が相乗的に反応し、装置を腐食させる可能性があるため、いずれのガスも記載している濃度よりさらに低い値で維持する方が望ましい。

(6)エコチェッカを用いて、事前に装置設置場所付近の腐食性ガス環境状況を確認する事が望ましい。

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細目(腐食性ガス)

腐食性ガス 発生源

二酸化硫黄(SO2) 石油、石炭を燃料・原料とする燃焼、ガス化設備工場の排出ガス 製鉄工業、非鉄製錬工業、硫酸工業、硫黄製錬工業、製紙工業の排出ガス ごみ焼却場排出ガス

硫化水素(H2S) 石油精製、ガス工業、ゴム工場、アンモニア工業、製紙工業、製鉄工業の排出ガス、火山、温泉地帯の大気、下水処理場の大気、汚れた河川、ごみ処理場の大気、ごみ置き場の大気、ダンボール

窒素酸化物(NO、NO2)

固体燃料ボイラの排出ガス、硫酸工業の排出ガス、自動車等内燃機関の 排出ガス

塩素(CL2) 化学工業、製紙工業の排出ガス、上水処理場の大気、プラスチック焼却

アンモニア(NH3) 化学肥料工業の排出ガス、フェノール樹脂

オゾン(O3) 光化学スモッグ、電気式集塵装置

表5.10 腐食性ガス発生源の例

5.6.8 参考資料

JEITA IT-1004 A 産業用情報処理・制御機器設置環境基準

IEC60721-3-3 環境条件の分類-第3部:環境条件のパラメータとレベル分類に関する基準

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細目(搬入出/設置スペース)

5.7 搬入出/設置スペース

製品の大きさや質量などの物理的条件を、建屋の搬入経路のエレベータや通路の構造物が満足していないと、製品を搬入できないなどのトラブルが発生する可能性があります。そのような問題を回避するため、搬入経路や床耐荷重などの建屋状況の事前確認が必要です。また、搬入時の転倒事故等を防止するためにスロープ部の傾斜度の確認も重要です。

5.7.1 搬入出経路

(1)スロープ傾斜

スロープ部傾斜度は製品が転倒しない安全な傾斜角が必要です。一般的に当社製品は57%未満の傾斜度では転倒しない設計となっておりますので、安全を考慮し使用するスロープの傾斜度は26%以下を推奨致します。

また、低騒音型ラックは、傾斜を8.7%以下にする必要があります。(レベルフットが渡り板に接触する場合があります)

(2)エレベータ

エレベータは製品重量、高さ、幅や梱包状態を考慮したスペースを確保する必要があります。

(3)床耐荷重

床耐荷重の確認時には、製品質量に加え、梱包材や搬入に使用する設備の質量を考慮する必要があります。

搬入系路の床材が途中からタイル→カーペットのように異なっている場合など、床面の摩擦の急激な変化やタイルカーペットなどの剥がれが発生しやすいなど、それによる転倒にも十分注意する必要があります。

製品の転倒防止、及びタイル、カーペットなどの床材保護のためにも養生を施して搬入出することが望ましいです。

設置室内の上げ床についても、マシンを移動する際の重量に耐えることができるかどうかを確認して下さい。

マシン移動時の重量に耐えられない場合や、長年にわたる床下の配線作業の結果、角の支柱がずれている場合などは、床が陥没するのを防ぐため、搬入経路の床補強、養生等を行い、重量を分散させることが望ましいです。

(4)スペースの確保

①製品搬入のためのスペースを確保する必要があります。

②搬入のための設備の旋回・昇降等に必要なスペースを確保する必要があります。

輸送車から、設置場所への製品搬入にはハンドリフトとパレット、ジャッキやキャスターによる手動移動が一般的です。搬入のための設備旋回半径を考慮して下さい。

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細目(搬入出/設置スペース)

5.7.2 設置場所

(1)床耐荷重

製品の質量および設置面積から単位面積あたりの荷重を算出し、必要に応じて荷重分散板などを用いて補強する必要があります。

ラックに搭載する装置の台数により、ラックを含む最大総質量が900kgを超える場合があります。

設置場所の床の積載荷重許容値が設置する製品の単位面積あたりの床荷重以上であるか事前の確認が必要です。ラックの総質量が床耐荷重を超える場合、ラック搭載装置の見直しを行い、総質量を制限する必要があります。

例) 周囲に重い製品を置かない、又は床に鉄板を置いてラックからの荷重を分散するなどの対策も可能です。

(2)保守スペース

①製品を保守するためのスペースを確保する必要があります。

②ラック搭載製品では,ラックの扉の回転半径やスライドレールの長さを考慮して下さい。

(3)吸気・排気スペース

製品の吸気口に,常に冷気が取り入れできるよう、配置する必要があります。

ラックの設置が適切でない場合には、他の装置からの排気が吸気に回り込み、ラック内部の冷却に悪影響を与える場合があります。また、ラックの吸気スペースが充分でない場合、吸気量が減少し、ラック内部の冷却に悪影響を与える場合があります。

他にも、ラック搭載時の注意事項が記載されておりますので、下記マニュアルをご参照下さい。

「ラックシステム構築ガイド」 http://jp.fujitsu.com/platform/server/primergy/technical/index.html

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参考規格

・JEITA IT-1004 A 産業用情報処理・制御機器設置環境基準

・JEITA ITR 1006 情報システムの消火設備ガイドライン(最新版)

・ASHRAE Particulate and Gaseous Contamination Guidelines for Data Centers

・IEC60721-3-3 環境条件の分類-第3部:環境条件のパラメータとレベル分類に関する基準

・IEC61000-4-3 電磁両立性(EMC)-第4-3部:試験及び測定技術-放射無線周波電磁界イミュニティ試験

・IEC61000-4-4 電磁両立性(EMC)-第4-4部:試験及び測定技術-電気的ファストトランジェント(高速過渡現象)/バーストイミュニティ試験 基本EMC出版物

・IEC61000-4-5 電磁両立性(EMC)-第4-5部:試験技術及び測定技術-サージイミュニティ試験

・IEC61000-4-6 電磁両立性(EMC)-第4-6部:試験及び測定技術-無線周波電磁界によって誘導された伝導妨害に対するイミュニティ試験

・IEC61000-4-8 電磁両立性(EMC)-第4-8部:試験技術及び測定技術-電力周波数磁界イミュニティ試験

・ISO14644-1 クリーンルーム関連環境規格-第1部:空気清浄度の分類

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6. 参考規格

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