エポキシ樹脂硬化剤 hn-2200の特性 · pdf fileu.d.c.る78.る8る.043...

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U.D.C.る78.る8る.04 エポキシ樹脂硬化剤■HN-2200の特性 Properties ofNew Epoxy Resin Hardener HN-2200 弘* Hi∫OSl】iMiyajima 治** Et.sujiT五月i エポキシ樹脂硬化剤として日立化成工業株式会社が新たに開発したHN-2200は,室温で低粘性の液状な ので取り扱いやすく,また,その硬化樹脂は電気的,機械的,熟的特性にすぐれ,含浸,注型,積層分野に 広く用いることができる。本稿はこの新規な酸無水物のエポキシ樹脂硬化剤としての評価を加えたものである。 l.経 エポキシ樹脂が電気絶縁材料として約20年前に紹介されて以来, その応用技術の進歩に伴い多種類のエポキシ樹脂および硬化剤が 開発されてきた。エポキシ樹脂は電気的,機械的,化学的,熟的 性質がすぐれているので,電気絶縁材科,構造材料,接着剤ある いは塗料などに広く使用されている。 日立化成工業株式会社では,すでにエポキシ樹脂の硬化剤とし て無水メチルハイミック酸(1)を製品化したが,今回低粘度で,か つ価格的にもかっこうなHN-2200を開発した。このものは,次 のような特長を持っている。 (1)市販され▲ている汎用酸無水物のうち,最も粘度が低い液状 硬化剤である。 (2)エポキシ樹脂と反応しやすい硬化剤であるが,硬化促進剤 の選択によって幅広いゲル化時間,長いポットライフの配合 物を作ることができる。 (3)室温に放置しても結晶化せず安定である(-200cで1年間 放置後でも結晶化したり,変質しない)。 4 5 6 毒性がほとんどない。 すべてのエポキシ樹脂と簡単に相溶する。 比較的安価である。 ここでは主として,HN-2200のエポキシ樹脂硬化剤としての 特性試験結果について述べる。 11 印l耳〕二> l】 0 日立化成商品名: 名: HN-2200 30r4一皿et叫一1,2,5,6寸etrabydro pもtもalic anIlydride (分子量166) 2.実 2.1使 本実験に使用したHN-2200の性状は表卜に,またエポキシ樹 脂は表2に,比較のため用いた他の酸無水物硬化剤は表3に,そ の他の材料は表4に示すとおりである。 2.2 (1)粘 B形回転粘度計またはガードナチーブで定められた温度で測毒 した。 * 日立化成工業株式会社山崎工場 ** 日立化成工業株式会社五井工場 表1 HN-2200の性状 す直 相(ガードナ) 1以下 上ヒ 重(25刀c) 1.21土0.05 度(P25DcJ 0.5--0.8 点(Oc) -15以下 81~卓5 表2 エポキシ樹脂の性状 名rエポキシ当量 粘度(P〕 エビコート 828 ユ84-194 120~150 ビスフェノール系 Sムe】ユ(三尊油化J社 GY-250 180-190 90~110 lビスフェノ‾ル系 ・Cl必A社 DER-331 186~192 70~100 ビス7ユ/-ル系 わowCもe皿社 エビコ【卜1001 アラルタイト8 450-500 ビスフェノール系 SbeIl社 370-435 ビスフェノール系 】C王BA社 CX221 135~140 .4・6~6 式けッソ株式会社 Ef〉-4000 330~360i30~40 ビスフェノール系l 一泡電化工業株式会社 表3 酸無水物硬化剤の性状 略号 THPA l 分子量喜義軍。。)点F柑空 7無水テトラヒドロ7タル醸 1152 F 98~102 新日本甥王化㈱ MHHPA 無水メチルヘキサヒドロフタ′レ酸 岳168 -1ノ5> 0.5~0.8 BAY正三R杜 HHPA ■無水ヘキサヒドロブタル醸 154 35~40 新.日本理化㈱ MHAC !無水メチルハイミック酸 17名 -15> 11・5~・3・0 ・日立化成工砦㈱ 表4 硬化促進剤および希釈剤 i種 ノーか-ムよび商社 DPM-30 トリス〔ジメチルアミノメナ叫フェノール 硬化促進剤 弓Roもm&Haa K-61王手 DMP-30一卜り(2-エチルヘクソエート〕 硬化促進剤 Slle山化学㈱ 2,4-EMl 2-エチルー4-メチルーイミグゾール 硬化促進剤 .四 成㈱ B工)MA ノヾンジルジメチルアミン 硬化促進剤 東京化成工業㈱ BF3-400 硬化促進剤 橋本化成工業㈱ M2-100 ニッサンカナオン M2-100 硬化他生剤一日本油脂㈱ アラルタイト DY-022 反応性希釈剤;CI丑A社 ‾アラルデイト DY-023 反応性柵剤; CJBA祉 49

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Page 1: エポキシ樹脂硬化剤 HN-2200の特性 · PDF fileU.D.C.る78.る8る.043 エポキシ樹脂硬化剤 HN-2200の特性 Properties ofNew Epoxy Resin Hardener HN-2200 宮 嶋 弘*

U.D.C.る78.る8る.043

エポキシ樹脂硬化剤■HN-2200の特性Properties ofNew Epoxy Resin Hardener HN-2200

宮 嶋 弘* 谷Hi∫OSl】iMiyajima

悦 治**Et.sujiT五月i

要 旨

エポキシ樹脂硬化剤として日立化成工業株式会社が新たに開発したHN-2200は,室温で低粘性の液状な

ので取り扱いやすく,また,その硬化樹脂は電気的,機械的,熟的特性にすぐれ,含浸,注型,積層分野に

広く用いることができる。本稿はこの新規な酸無水物のエポキシ樹脂硬化剤としての評価を加えたものである。

l.経 口

エポキシ樹脂が電気絶縁材料として約20年前に紹介されて以来,

その応用技術の進歩に伴い多種類のエポキシ樹脂および硬化剤が

開発されてきた。エポキシ樹脂は電気的,機械的,化学的,熟的

性質がすぐれているので,電気絶縁材科,構造材料,接着剤ある

いは塗料などに広く使用されている。

日立化成工業株式会社では,すでにエポキシ樹脂の硬化剤とし

て無水メチルハイミック酸(1)を製品化したが,今回低粘度で,か

つ価格的にもかっこうなHN-2200を開発した。このものは,次

のような特長を持っている。

(1)市販され▲ている汎用酸無水物のうち,最も粘度が低い液状

硬化剤である。

(2)エポキシ樹脂と反応しやすい硬化剤であるが,硬化促進剤

の選択によって幅広いゲル化時間,長いポットライフの配合

物を作ることができる。

(3)室温に放置しても結晶化せず安定である(-200cで1年間

放置後でも結晶化したり,変質しない)。

4

5

6

毒性がほとんどない。

すべてのエポキシ樹脂と簡単に相溶する。

比較的安価である。

ここでは主として,HN-2200のエポキシ樹脂硬化剤としての

特性試験結果について述べる。

11

印l耳〕二>】

l】

0

日立化成商品名:

学 名:

HN-2200

30r4一皿et叫一1,2,5,6寸etrabydro

pもtもalic anIlydride

(分子量166)

2.実 験 方 法

2.1使 用 材 料

本実験に使用したHN-2200の性状は表卜に,またエポキシ樹

脂は表2に,比較のため用いた他の酸無水物硬化剤は表3に,そ

の他の材料は表4に示すとおりである。

2.2 試 験 方 法

(1)粘 度

B形回転粘度計またはガードナチーブで定められた温度で測毒

した。

* 日立化成工業株式会社山崎工場** 日立化成工業株式会社五井工場

表1 HN-2200の性状

項 目 特 性 す直

外 観 淡 黄 色 液 状

色 相(ガードナ) 1以下

上ヒ 重(25刀c) 1.21土0.05

粘 度(P25DcJ 0.5--0.8

融 点(Oc) -15以下

中 和 当 量 81~卓5

表2 エポキシ樹脂の性状

商 品 名rエポキシ当量粘度(P〕 構 造 メ ー カ ー

エビコート 828 ユ84-194 120~150 ビスフェノール系 Sムe】ユ(三尊油化J社

GY-250 180-190 90~110 lビスフェノ‾ル系 ・Cl必A社

DER-331 186~192 70~100 ビス7ユ/-ル系 わowCもe皿社

エビコ【卜1001

アラルタイト8

450-500 固 形 ビスフェノール系 SbeIl社

370-435 固 形 ビスフェノール系 】C王BA社

CX221 135~140.4・6~6

佃 環 式けッソ株式会社Ef〉-4000

330~360i30~40 ビスフェノール系l一泡電化工業株式会社

表3 酸無水物硬化剤の性状

略号

THPA

l

名 称

分子量喜義軍。。)点F柑空(2是:)メ

カー

7無水テトラヒドロ7タル醸1152F

98~102 国 体 新日本甥王化㈱

MHHPA 無水メチルヘキサヒドロフタ′レ酸岳168-1ノ5> 0.5~0.8 BAY正三R杜

HHPA ■無水ヘキサヒドロブタル醸 154 35~40三

固 体 新.日本理化㈱

MHAC !無水メチルハイミック酸17名 -15> 11・5~・3・0 ・日立化成工砦㈱

表4 硬化促進剤および希釈剤

略 号 名 称 i種 別 ノーか-ムよび商社

DPM-30 トリス〔ジメチルアミノメナ叫フェノール 硬化促進剤 弓Roもm&HaasK-61王手 DMP-30一卜り(2-エチルヘクソエート〕 硬化促進剤 Slle山化学㈱

2,4-EMl 2-エチルー4-メチルーイミグゾール 硬化促進剤.四

国 化 成㈱

B工)MA ノヾンジルジメチルアミン 硬化促進剤 東京化成工業㈱

BF3-400 硬化促進剤 橋本化成工業㈱

M2-100 ニッサンカナオン M2-100 硬化他生剤一日本油脂㈱アラルタイト

DY-022 反応性希釈剤;CI丑A社‾アラルデイトDY-023 反応性柵剤;CJBA祉

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344 日 立 評 論

(2)ゲル化時間

18¢試験管に配合物を15g秤量(ひようりょう)し,3¢ガラス

棒でかきまぜながら定められた温度のオイルバスで加熱し,ガラ

ス棒が動かなくなる時間を測定した。

(3)発 熱 曲 線

189i試験管に配合物28g秤量し,サーモカップルを底部から50

mmにセットし記録計に接続する。定められた温度のオイルバスで

加熱し求めた。

(4)硬化収縮率

ピタノメータを用い定められた硬化条件で測定した。

(5)曲 げ 強 度

10×10×120(Ⅶ)の試験片を用い,支点間を100皿とし,室温で

アムスラー万能試験機で測定した(JISK6911を応用)。

(6)熟変形温度(H.D.T)

ASTM D6糾一45T(A)に準じて測定した。

(7)耐熱衝撃性

%'′ボルトを埋め込み,加熱温度(1000c)から冷却温度(0-

-500c)のヒートサイクル後,クラック発生の有無を調べた。なを冷却温度は250cから50cずつ下げ各サイクルの保持時間を30分

とした。

(8)耐トラッキング性

‾DIN53480(1961)に準じて測定した。

(9)絶 縁 抵 抗

JISK6911(50Hz)に準じて測定した。

(1¢)誘 電 正 接

JISK6911(50Hz)に準じて測定した。

(11)誘 電 率

JISK6911(50Hz)に準じて測定した。

(1勿体横紙抗率

JISK6911(50Hz)に準じて測定した。

3.結果と考案

3.1一遍配合lの検討

一般にエポキシ樹脂と酸無水物の硬化反応速度は,塩基性触媒

のない場合は非常に小さい。そのためエポキシ樹脂を酸無水物で

硬化させる場合,反応速度を速めるために,触媒として第三級ア

ミンなどを少量(通常0.5~2pbr)添加する。

その反応機構は,無水7タル酸を例にとると次のように考えら

れる(2)。

0/\

0三=C C=0

沓十:帆=㊦?O

RユN⇒C占-00

沓+C鞍C…一RrN⇒C C-0-CH2-CH-X十0

¢001】l

R3帖Cと-0亡)

魯㊤?0 11

fミュN寸C C-0-CH2-CH-Ⅹ

堕胎

㊥?? 爪 立ノ?モアN⇒C C-0-CHゥーCH-X十0=C C=0 - R-N三>C(「RtN⇒C C-()-CH2-C11

但占8

包 也

ぜン?? 干 ?RコN⇒C C-0-CH2・-CH-0-C~

但0 Ⅹ 0

但抹諾寒呂二告二∩ Ⅹ ∩

5①

X Ol ll

十0・-CH2-CH-(トC叫-1-一

十NR.-

(1)

r2)

00

()-C仁一0ヒノLl

也(3)

(4J

120

…:三三望‾/ヾ…:L

ⅤOL.54 N0.4

′\j法←828三吉竺1005h十1500C15h

1,2

10060 70 80 90 1

HN-2200】一別r‥-__+⊥_+▼

___堅叫+至些LO.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1-1

エ′ナキ

図1 エビコート 828,HN-2200配合比とH.D.Tの関係

95

(〕L

ト.□.コ

//

30 40

HN-2200i恭加j止

仇5 l.0

エビコート1001100

HN-2200 20へ60

咄化促准別 +こi.即【1

150小C/10h

50

(Pムr)

1.5

60

絶無水牛れ′エポキシJ右

図2 エビコート1001,HN-2200配合比とH.D.Tの関係

1972

また,水酸基を持つエポキシ樹脂との反応では,次のような反

応機構が報告されている㌘)

0 0 0/\ l lll1

0=C C=O HC-0--C C-OH

中ロH十J5一 一也

0 0 0 0r 】L ll l ll LI

HC-∩-C C-OH HC-0-C C-0-CH2-CH一

一也+C甲乙フCH一一】むムH

l J

CHOH+CH。-CH一 一 HC-0-CH:-CH-l 、\/ l r

O OH

(5)

(6)

(7)

エポキシ樹脂と酸無水物の硬化反応は,エステル化(2卜(6),エ

ーテル化(7)反応によって進むために非常に複雑であり,最適配合量は実験室的に求められている。通常その最適配合量は,硬化樹

脂のH.D.T.の極大点を求めて決められるが,山般には,酸無水物

/エポキシ基=0.8~0.9/1(当量比)の範囲にある。

エビコート828とエビコート1001に対するHN-2200の最適配

合量測定結果を図1,2に示した。図lに示すようにエビコート

828100部に対してHN-2200の最適配合量は,紬pbr(酸無水物

/エポキシ基≒0.9)である。なお,DER-331,GY-250につ

いても同様の結果を得た。水酸基を持つエビコート1001に対する

HN-2200の最適配合量は40phr(酸無水物/エポキシ基≒1.15)

付近にあり,これは反応(5)が参加するからであろう(図2)。アラ

ルタイトBについても最適配合量は40phrであった。

参考までにエポキシ樹脂の硬化剤として使用されている代表的

な酸無水物の最適配合は表5に,またその電気特性は図3~5に

示すとおりである。HN-2200と他の酸無水物の電気特性を比較

した場合,ほぼ同様の性質を持っていることがわかる。

3.2 半占度と安定性

ビスフェノール系エポキシ樹脂は,比較的粘度の高い液状ある

いは回状で市販され,用途に応じて選択される。実際に配合物を

含浸,注型などに使用するとき,混合物の初期粘度および安定性

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エポキシ樹脂硬化剤HN-2200の特性 345

表5 代表的な酸無水物硬化剤の最適配合(重量部)

1 2 3 4 5

エビコート 828 100 100 100 100 100

HN-2200 80

THPA 75

MHHPA さ0

HHPA 80

MHAC【

80

実験条件 配合 エビコート 828 100

酸 無 水 物 60~100

DMP-30 1

硬化120ロc/5b十1500c/1011

+1-IN-2200

一一_〉-【1Hl⊃A

一--「▲-ル】HHIJA

--▼-一-THPA

一----亡トトIHAC

3 + ⊥_

20 50 100

けICC)

150

図3 各種酸無水物~エビコート828硬化物(表5配合)の誘電率・温度特性

毒妻巨20

--+トHN-2200

一=ニーHHPA

‾‾▲一MHHPA

‾‾少「rHPA

‾‾‾++九・IHAC

50 100 150

f∴ミ_比(つC)

図4 各種酸無水物~エビコート828硬化物の

誘電正接・ブ且度特性

1011

萱10‖ヨ

ネi・-

+占

喜1012

1011

\+HN-2200

-1ンーHHPA+h・1HHPA

-一心--THPA

什MトIAC

150 170

-iJ空ドC)

図5 各種酸水物~エビコート828硬化物の

体積抵抗率・i温度特性

が作業性を大きく左右する。硬化促進剤を加えない場合のエビコ

ート828とHN-2200の混合物の250c,500cにおける粘度変化を

示すと図6のようになる。図から,HN-2200と組み合わせるこ

とによって混合物の258cにおける初期粘度を10Pまで下げること

ができ,1個月間室温に放置しても粘度変化は少な〈じゅうぶん

に使用出来る状態にあることがわかる。さらに保存するには,消

費量に応じて新規配合物を補充すれば,長期間使用することがで

きると思われる。500cに加熱すれば初期粘度は2P以下であり,

10jxぷ‾lノ×

(礼〕

㌢■一一=丁

_/

ンーー×一 ,_/X空E〆Xノ‾

エビコート828100

HN-2200 79

0 10 20 30

放置H致(d)

図6 エビコート828~HN-2200

混合物の粘度安定性(硬化促進剤未添加)

∧U2

(亡=ヒ一≡き]-+■こ、

上、B6K

川「rト00

0

八U3叩l■lい

てル+げ/■

00

50

0

5

(山一山三壬

1+

/

/粁/

上1エコーート828100

HN-22DO 79

n九IP-30 1

_ _ _+_____

2

拍L岩「=川七(d)

図7 エビコート828-HN-2201

混合物の粘度安定性(硬化促進剤添加)

エヒ■コーー

HN-2200

\、′ノ/号・孟諾吉。′′∵+∴「∠BDルIA

0.5 1.0 1.5

(Phr)

ホ硬化†山吐剤

2.0

ト828 100

79

刊 0.5~2.0

図8 各種硬化促進剤添加量とゲル化時間の関係

(測定温度130凸c,測定量15g)

nU52

00

50

2〇L

叫二。一■ュ斗心㌧

00

.2.4-EMI

卓二F。-400

/DMP-30

′ノBDMA一、、、′

/

/一一/

_+____.

10

ノごエヒコート828

HN-2200

咄化促i吐剤

柑川(min)

図9 各種硬化促進剤を添加した系の発熱曲線

(測定温度130凸c,測定量28g)

0

9

1

ハリ

7

コイル含浸,ガラスクロスを用いた積層板などに利用できる。硬

化促進剤DMP-30を加えた場合の粘度変化は図7に示すとおり

である。

3.3 ゲル化時間および最高発熱温度

一般に硬化促進剤は0.5~2pbrの範囲で使用されるが,小形注

型用などでは混合後直ちに注型し,しかも金型の回転率を高める

ために短時間で硬化させることが要求される。反面,大形注型の

場合は反応速度が大きい(ゲル化時間が速い)と,反応熱が蓄積さ

れるため発熱が大となり,硬化時の収縮,ひずみなどが重なって

クラックが発生することがあるので適当な反応速度に調節するこ

とが必要になる。

発熱を押えるには,充てん剤の添加あるいは硬化促進剤の選択

などの手段が採られるが,ここでは後者について検討した。各種

硬化促進剤の添加量とゲル化時間の関係は図8に,硬化促進剤1

pbr添加したときの発熱曲線は図9に示すとおりである。硬化促

進剤を選択し添加量を定める場合は,注型物の大きさ,最高発熱

温度,ゲル化時間などを考慮しなければならない。図8,9から

51

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346 日 立 評 論

D丸IP-30IPItr

0.7Phr

ハリO

一〕■レ)

小二三ビ、心い

0.5Phr 0.3Phr

ユヒコーーート828 100

HN-2200 79

D九1P-30 0.3-1,0

10

咋 問(min)

囲10 DMP-30添加量と発熱曲線(測定温度1300c,測定量28g)

表6 代表的醸無水物硬化剤の反応性の比較

Ⅳα1 2 3 4

エビコート 828 100 100 100l

100

HHPA 73.3

HN-220¢ 79

MHHPA 80

MHAC 84.7

DMP-30 1 1 1 1

昇温速度(一c/mim) 27.9 20.0 柑.3 6.8

最高発熱温度(Oc) 202 190 188F

158

酸無水物/エポキシ基=0.9/1

測定温度1300c,測定量 28g

昇温速度(Oc/mim)=最高発熱温度-1000c

lOOOcから薇高発熱温度までの所要時間(血In)

わかるように,一般に使用されているDMP-30,BDMA,2,

4EMI,BF3-400の促進効果はほぼ同様で,K-61Bはそれら

よりややゆるやかである。田川はDMP-30の添加量をかえた場合

の発熱曲線を示したものである。

エポキシ樹脂の配合物を取り扱う場合その安定性は,硬化促進

剤の種類,量が支配的であるが,含浸用のように比較的硬化促進

剤の添加量が少ない場合には酸無水物硬化剤自身の反応性を無視

することができない。代表的な酸無水物硬化剤の反応性について

発熱曲線から比較した結果は表6に示すとおりである。

反応速度は,MHAC:(HN-2200≒MHHPA):HHPA≒1:3

3:4となり,この結果は同じ条件下での粘度増加率などとよく

一致している。

3.4 硬 化 収 縮

エポキシ樹脂は不飽和ポリエステル樹脂に比較して硬化時の収

縮率が小さいので,成形品の寸法安定性がすぐれている。特に注

型品などでは,この収縮率の大小が問題になることが多い。硬化

時における収縮は,化学的な反応による収縮,硬化温度と室温と

の差および状態変化から起こる(図‖参照)。一般的に収縮率は,

図‖に示す体積収縮率で表わされている。此容積変化からエビコ

ート828に対してHN-2200の最適配合付近で添加量と収縮率を測定した結果は表7■,図12に示すとおりである。また,参考まで

にそのほかの酸無水物硬化剤について,最適配合量における収縮

率を比較して付記した。

図ほに示すようにエビコート82さに対してHN-2200の添加量

を変えた場合,最も密に架橋している最適配合量(80pbr)付近で

体積収縮率が小さい。このことは実際に配合組成を定めるとき注

意しなければならないであろう。

3.5 希釈翔の形書

HN-2200は低粘度(室温0.5~0.8cP)の硬化剤であるので,

エポキシ樹脂との混合物の粘度は一般的に低いが,使用目的によ

ってはさらに粘度を下げるため,非反応性あるいは反応性希釈剤

52

0.90

0.80

ⅤOL.54 NO,4 1972

20 50 100 150

i誌 性(OC)

図11エビコート828~HN-2200の比容積変化(表7No.3)

表7 代表的酸無水物の収縮率

No. 1 2 3 4 5 6 7

A

エビコート828 100 100 100 100 100 100 100

HN-2200 40 60 80 100

MHAC 80

HHPA 80

MHHPA 80

iDMP-30 1 1 11l

1 1 1 1

硬化収縮率(%) 6.5 6.3 6.2 6.6 6.1 6.6 6.4

反応収縮率(%) 4.8 5.2 4.6 4.3 4.5 5,3 5.0

体積収縮率(%) 2.2 1.8 1.6 2.4 1.7 2.3 2.0

硬化条件1000c/5h+1500c/15b

耐ヒ収縮率

40 60 80 100

HN-2200添加最(Pムr)

図12 HN-2200添加量と収縮率の関係

を加えることがある。一般的に反応性希釈剤のうち希釈効果のす

ぐれたモノエポキシ化合物は,架橋密度を下げるので硬化物の電

気的,機械的性質が低下する傾向にある。非反応性希釈剤は,未

硬化のまま分子内に残るので同様の影響がある(4)。多くの反応性

希釈剤が市販されているが,アラルデイトDY-022,DY-023に

ついて希釈効果および硬化物の電気特性を測定した。反応性希釈

剤添加量100に対して,HN-2200を120重量比追加して試験した。

表8に示す配合物の粘度を図柑に示した。その粘度低下効果は

著しく,アラルタイトDY-022,DY-023ともに20pbr添加すれ

ば,粘度は約%に下がる。しかし,希釈剤添加量の異なる硬化

物の電気特性(図14~19)に示すように,希釈剤が多くなるほど

その特性の低下が大きい。実用上は作業条件と要求特性に応じて

希釈剤量を定めなければならない。

8.6 可換(とう)性付与剤の影響

エポキシ樹脂は他の無溶剤形注型用樹脂に比べて硬化収縮率は

小さいが,部品の形状,大きさによっては硬化時の発熱,収縮に

よるひずみあるいは埋込部品との線膨張率などによってクラック

を生ずることがある。

クラックを防止するには,(1)充てん剤を多量に加える。(2)埋

込部品の形状をなるべ〈鈍角にする。(3)硬化時の熟,収縮によ

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エポキシ樹脂硬化剤HN-2200の特性 347

表8 希釈剤の影響の検討配合

No,1

r

2 3 4 5 ¢ 7

エビコート 828 100 100 100 100 100 100 100

HN-2200 80 86 92 104 8(i 92 104

アラルタイトDY-022 r 5 10 20

アラルタイトDY-023l

5 10 20

DMP-30 1 1 1 1il 1 1

硬化条件130-c/2l】

喜4

軍3エゴ

車2

1

。L

-X-OPhr

一一ニーー5Phr+10Pllr

‾‾「-20Phl・ ガ/

冬日叶幣

r

r

r

一▲

lL皿

▼れ

PhPhOPOP

O

5

1

2

〓〓

(巳聖妄

10

;Lh-、\望

\、.=芋三三とーニ【アラルデ■イトDY-022

-∴-7ラルタイトDY-023

\-

\ (J_

10 15

希釈別添わ口品(Pbr)

20

図13 希釈剤添加量と初期粘度の関係

(測定温度250c)

′′∠1014

101り

20 40 60 80 100 120 140

i誌 性(OC)

図14 アラルタイトDY-022添加量と

誘電正接の温度特性

㌃○【×)

璧当村常

一r

-1し‖th】

PbPbOPOP

n)

5「▲2

〓〓

ダ/20 40 60 80 100 120 140

f£ 度rOC)

図15 アラルタイトDY-023添加量と

誘電正接の温度特性

20 40 60 80 04∧U200

温度(Oc)

図16 アラルダイトDY-22添加量と

誘電率の温度特性

一〆-OPhr

・・・・・・+←-5Phr

-・・・・⊂)-10Phr

--■-20f)hr

20 40 60 80 100 120 140

J】Lユ性(OC)

図17 アラルタイトDY-023添加量と

誘電率の温度特性

るひずみを小さくする。(4)高分子量のエポキシ樹脂を用いる。

(5)可境性付与剤を添加する。などの方法がある。ここではビス

フェノール核の両末端にエポキシ基を持つ側鎖状エポキシ樹脂EP

-4000(5)の可擁性付与効果を表9に,また表9の各配合物の電気特性を図20-22に示すことにする。通常のビスフェノール形エポキ

シ樹脂GY-250に対して可摸性エポキシ樹脂の添加量を多くする

ほど,耐熱衝撃性にすぐれた硬化物が得られるが,電気的,機械

的性質が低下する傾向を示している。比較的,電気的,機械的性

質を維持し,かつ耐熱衝撃性にすぐれた硬化物を必要とする場合

は,混合比50:50付近が適当であることがわかる。

4.HN-2200の急性毒性

エポキシ樹脂の用途の多様化に伴い,樹脂および硬化剤(主と

してアミン系)による皮膚疾患が新しい職業病として発生してい

る。エポキシ樹脂の経口投与による毒性は,動物実験の結果をそ

のまま人間の体重に換算できると仮定すればLD50=30-800gと

されている(6)。酸無水物硬化剤については,無水マレイン酸,無

水フタル酸などによる皮膚疾患が確認されているが,その他のも

のについては明らかでない。

HN-2200を取り扱う際に,誤って皮膚に接触あるいは目に入

(∈U・望

首志望志士

(EU・望

キせご叫三吉T-

ー×-OPhr

--くニー5Phr

+10Pl】r

一-ぺ「-20Ⅰ)hr

2.8 2.6 2.4 2.2

(1′/′TxlO3)

100120140160

≠比性(9C)

図18 アラルタイトDY-022添加量と

体積抵抗率の温度特性

1014

1010

-×-OPllr

----1■・・・・・・5Phr

------・ロー10Pllr

--+トーー20Phr

2.8 2.6 2.4 2.2

(1/TXlO3)

100120140160

(温度OC)

図19 アラルタイトDY-023添加量と

体積抵抗率の温度特性

れた場合を考慮して,急性毒性試験を行なった。なお,比較のた

めにMHAC,THPAについても同様の試験を行なったら

4.1試 験 方 法

(1)LD50値(Vander W畠rden法)

腹腔内注射,経口投与・…‥ラット(含),マウス(含),THPAは

エタノールに溶解(検体濃度40%)。

(2)皮膚刺激試験(局所反応試験)

家兎(かと)の耳,背部に塗布した部位およぴその間辺の皮膚に

53

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348 日 立 評 論

表9 EP-4000添加量とその特性

No.1 2 3 4 5

A仁一

GY-250 30 40 50 60 70

EP-4000 70 60 50 40 30

HN-2200●1 54.5 58.3 62.0 65.名 69.5

M2-100 1 1 1 1 1

初 期 粘 度(P250c) 9,6 9.4 9.2 9.1 9.0

●2

H.D.T. (Pc) 68 75.5 82 85 94

耐ト ラッキング性 A。C A3C AさC AさC A3C

絶縁抵抗

(氾)

常 態 >1013 >101き >101与 >1013 >1013

2b煮沸後 >1013 >1018 >1013 >101ユ >1013

曲げ強さ(也/m2) 10.6 12.3 12.9 13.5 14.4

耐熱衝撃性(Oc) -50 -35 -35 -35 -5

*1 HN-2200/エポキシ基=0.9/1*2 硬化条件1200c5b

表10 醸無水物硬化剤の急性毒性試験結果

試 験 項 目 HN-2200 MHAC THPA

(1)LD50(g/kg)

腹腔内注射ラット

マウス

経口投与ラット

マウス

0.255

0.222

2,102

1.707 0.918 3.335

(2)皮膚刺激試験 0.5mハ0.16g/k)

家兎の耳部

背部

異常なし

2.Omパ0.57g/也) 5mJ(2.1g/也) 5g(1.7g/也)

1回塗布

3回塗布

異常なし で赤色 異常なし

0.4mJ/回(0.12g/也) 1mJ/回(0.42g/也) 5g(1.7g/也)

以上で痛皮形成 で皮膚き裂,赤黒色 異常なし

(3)桂皮毒性

家兎の背部 2mパ0.57g/也) 5mパ2.1g/也) 5g(1.7g/也)

1回塗布

3回塗布

異常なし 食欲不振 異常なし

2mJ/回(0.57g/也) 1mJ/回(0.42g/也) 5g(1.7g/晦)

異常なし 皮庸き裂 異常なし

(4)眼 刺 激 (a)0.01mJ以上で

刺激がある。24時間後

半眼に回復,1週間後

完全に回復凸

(b)0.1mJ点眼後

では閉限し,1分後角

膜混濁し,眼球に光沢

なく,光に対する反応

が弱い。

10日後半眼になり光に

対して正常に復し充血

も消えた。

発赤,浮腫(ふしゅ),痛皮(かひ)形成の有無を調べた。THPA

はワセリンで塗った(検体濃度50%)。

(3)経皮毒性試験

家兎の背部の毛を200cm2刈り取り,塗布後皮膚から吸収されど

のような中毒症状が起こるかを調べた。THPAはワセリンで塗

った(検体濃度50%)。

(4)目刺激試験

家兎の1眼にHN-2200,他眼にオリーブ油を点眼し角膜の混

濁と広がり,虹彩(こうさい)の充血,睡眠(すいがん),出血,浮

腫,流涙および目やになどを調べた。

4.2 実 験 結 果

LD50から比較すると毒性は,MHAC>HN-2200>THPAと

なる。しかしMHACあるいは,この相当品MNA(Allied社製)

は広く一般化された硬化剤で,アミン系硬化剤の毒性の約鬼程

度であり,これらを取り扱う際はエポキシ樹脂で留意されている

一般的な注意を払えばじゅうぶんである。HN-2200の毒性は,

54

㌃≡‥こ

空い一三蕪一

l†八NNNN

ニ二十

-hJ

30 60 90

温 度ドC)

120 150

図20 EP-4000添加量と誘電正接の

温度特性

6斗

ヲゼミ、

■■ニ5

-×-No.1

--く-・No.2

・・一一ト・・・No.3

一一山--No,4

・・・・・・・⊂トーNo.5 ノ

ⅤOL.54 N0.4

1010

109

(EU・望駄媒岩をせ

≠い1.111翫Ⅶ州州川WV

1972

123AT5

0

0

人じ

八U

(U

NNNNN≡ニ

2.8 2.6 2.4 2.2

(1/TxlO3)

帥1001201401印

温度(OC)

図22 EP-4000添加量と

体積抵抗率の温度特性

30 60 90 120 150

i古ユ.腔(□C)

図21EP-4000添加量と誘電率の温度特性

MHACの約%で無水フタル酸のような刺激臭がなく,人体には

ほとんど無害といえるが経口飲下は論外としても,皮膚に触れた

り,付着したときは石けん水で洗い流し,また目にはいった場合

は直ちに洗眼すればじゅうぶんである。

5.績 言

注型,含浸あるいは積層用のエポキシ樹脂硬化剤として新たに

開発したHN-2200は,すぐれた作業性および硬化特性を持って

いることを確認した。本稿では,応用例について特に触れなかっ

たが,HN-2200の特長を生かした配合物の組成を決定する一助

となれば幸いである。特に作業上問題になる皮膚疾患,毒性につ

いては一般的なエポキシ樹脂などの取扱方法および予防処置をと

ればじゅうぶんであることを確認した。

終わりに終始ご指導いただいた日立化成工業株式会社山崎工場

絶材研究課,検査課試験係グループたらびに実験にご協力いただ

いた真野目,高崎,小原,高橋,前田.の諸氏に深甚の謝意を表

する。

AT-5

6

参 考 文 献

堀辺,小川:日立評論 ヰ4,1768(昭 37)

R.F.Fisber:J.Polymer Sei.,糾,155(1960)

W.Fi畠Cb,W.Hofman:J.Polymer Sci.,ほ,497(1954)

W.Fisch,W.Hofman:J.Applied Polymer Cbem.,6,

429(1956)

呉羽化学株式会社カタログ:エポキシ樹脂配合希釈剤EX-50

旭電化株式会社カタログ:アデカレジンEP-4000

古川:"アラルタイトエポキシ樹脂取り扱い上の安全衛生についてご

ライニング工業会講演要旨(昭 42)