遺物分布はどのように理解されてきたのか/ how we document, recognize and interpret...

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How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context : past, present and perspective 野口 (明治大学校地内遺跡調査団) A. NOGUCHI (Meiji Univ.) 中央大学考古学研究室・Archaeo-GIS Workshop ・立体考古研究会準備会共催 合同ワークショップ「遺跡・遺構の中の遺物」2 2013/9/7 @ 中央大学多摩キャンパス 遺物分布はどのように記録され、 理解されてきたのか

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*sorry Japanese only contents, English version may come later 中央大学考古学研究室・Archaeo-GIS Workshop・立体考古研究会準備会の共催による第2回ワークショップの基調報告その2です。 ワークショップのウェブサイト https://sites.google.com/site/3darchjpもご覧ください

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Page 1: 遺物分布はどのように理解されてきたのか/ How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context: past, present and perspective

How we document, recognize and interpretthe distribution of artefacts in archaeological context

: past, present and perspective

野口 淳

(明治大学校地内遺跡調査団)

A. NOGUCHI (Meiji Univ.)

中央大学考古学研究室・Archaeo-GIS Workshop・立体考古研究会準備会共催

合同ワークショップ「遺跡・遺構の中の遺物」22013/9/7 @ 中央大学多摩キャンパス

遺物分布はどのように記録され、理解されてきたのか

Page 2: 遺物分布はどのように理解されてきたのか/ How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context: past, present and perspective

本日のお題

1.考古学における「記録」の意義 :なぜ詳細記録を取る必要があるのか?

2.詳細記録の難しさ:データ量の規模と複雑さ

3.「普及率」の壁:つねに最新機器・ソフトが必要なわけではない

4.「何がしたいのか」と「何ができるのか」の擦り合わせ

5.何よりも考古学者の「仕事」が重要

6.次の課題:計測・記録・解析技術と考古学者の仕事を結びつけたその先

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考古学における「記録」の意義

本ワークショップの基本姿勢として

詳細記録は「必要」であることが前提ですが…まず確認:

すべての発掘調査は考古学的状況の破壊滅失を前提としている

≫記録を「取れない」ことはあっても「取らなくてよい」道理はない

そして…

≫詳細な記録から要約されたデータを作成することはできるが

粗い不十分な記録から詳細データを作成することはできない

(不可逆性)

Page 4: 遺物分布はどのように理解されてきたのか/ How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context: past, present and perspective

なぜ詳細記録は必要とされないのか

しかし、しばしば詳細記録(全点ドットそのほか)は

「不要」という声が聞こえる

なぜなら、詳細記録はあまりにも利活用されないから…

≫なぜ「されない」という第三者視点の批判なのか?

どう利活用「できる」のか(または「できない」のか)

主体的検討しないのはなぜ?結局のところ…

利活用する・しない、は考古学者が主体的に判断すること

Page 5: 遺物分布はどのように理解されてきたのか/ How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context: past, present and perspective

「木を見て森を見ず?」

詳細記録、微細な分析は「分かりにくい」とも言われる

確かに一般への普及啓発のためには「分かりやすさ」が重要だが…

「分かりやすさ」と「簡単」は同じではない!!要請されるのは…

細かく観察、記録、分析した結果を説明・解釈の段階で要約すること

そうでないならば…

プラン確認だけして、サンプル調査すればよいのでは???

Page 6: 遺物分布はどのように理解されてきたのか/ How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context: past, present and perspective

複雑なデータを要約する

複雑で多量のデータを要約、客観的に記述する手段

⇒統計解析すなわち考古学者の鬼門

例)旧石器時代の石器集中部・石器分布の広がり(まとまり・散らばり)

⇒規格楕円で表現・点間最近隣距離も集中度を示す尺度・3Dの分布傾向は重回帰分散分析でetc.

多数の属性情報の解析≫パッケージ化され、

解析~グラフ作成まで比較的簡単にできるソフトも

結局、「どのような属性を扱い」「何を知りたいのか」

がもっとも重要

Page 7: 遺物分布はどのように理解されてきたのか/ How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context: past, present and perspective

もうひとつの道:見える化

傾斜した地層、複雑な微地形、その中の遺物分布と接合関係

⇒要約して記載するのはかなり難題

(原図:『明治大学校地内遺跡調査団年報6』第23図)

Page 8: 遺物分布はどのように理解されてきたのか/ How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context: past, present and perspective

もうひとつの道:見える化

3Dのものを3Dのまま表示する方が分かりやすい場合も(市川発表も参照)

⇒解析・表示の手段、表現方法はまだまだ課題ではあるが

参考図:細分層位DEMデータ(50cmメッシュ)にもとづくボクセル中の遺物分布頻度と接合関係

Page 9: 遺物分布はどのように理解されてきたのか/ How we document, recognize and interpret the distribution of artefacts in archaeological context: past, present and perspective

何のための技術・手段なのか

とはいえ、詳細記録、微細な分析は手間がかかる

こ れ は 事 実 !時間が/人手が割けないという局面は多々ある

そこを無理を押して実施しなければならないというのではなく…

その手間を軽減する補助手段を導入すれば良い

そうは言っても…「言うは易し、行うは難し」

専門的知識や技能の習熟の問題/補助手段導入の障壁

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考古学者からのアプローチ

まず「何をしたいのか」を整理して発信する!!

「できる」人や技術とのコネクションの活用

≫これ、本ワークショップが「合同」で行われるひとつの意義

「何ができるのか」を議論してみる

≫たとえば最新の機器やソフトでなくてもできることはある

最新の3Dレーザー・スキャナ⇔トータルステーション

/一般的なデジカメ

「何ができるのか」の選択肢を多く知る

⇒事例ごとのコスト・ベネフィットを考える!!

≫「手段」ではなく「対象」と「方法」がむしろ課題

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むしろ考古学者の仕事が重要

最新の測量機器や解析ソフトもあくまで補助手段

新しい・高い・高性能=解決策ではない!!≫使いこなしてはじめて意味がある

すなわち、調査研究のデザイン

>どのようなデータ(属性情報)を得たいのか

>どのような成果を求めて解析を行うのか

高精度・高解像度の位置座標や形状データの取得

≫そこにどのような属性を重ねるか、考古学的観察・分析

考古学と計測記録や解析をどのように結びつけるのか

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次への課題

個別の機器や技術、解析手法については第1部の各発表を

考古学者の視点や取り組みについては第2部の各発表を

一定のゴールに到達した事例研究は

まだないかもしれないが…≫新たな展開への方向性を見出したい

遺構・遺物といった事物(feature)だけでなく、

その配置・分布と、そこにおける「関係性」や「構造」を、立体的・複眼的に把握することを目指したい

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続きはウェブで

合同ワークショップ「遺跡・遺構の中の遺物」では、考古学の発掘

調査、整理報告の現場における多様な課題について議論します。

「合同」の趣旨は、中央大学考古学研究室・Archaeo-GISWorkshop・立体考古研究会準備会の自由な連携によるもの、とい

う意味です。

これまでの活動と最新情報については、ワークショップのウェブサ

イトをご覧ください。

https://sites.google.com/site/3darchjp/