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財団法人 中東協力センター エジプト・アラブ共和国の産業基盤 2006年版

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財団法人 中東協力センター

エジプト・アラブ共和国の産業基盤

2006年版

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Arab Republic of Egypt

エジプト・アラブ共和国の国旗

エジプト・アラブ共和国の国章

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C o n t e n t sINFRASTRUCTUREインフラストラクチャー

道 路…………………………… 2鉄  道…………………………… 4空 港…………………………… 6港 湾…………………………… 8電力・水…………………………10通 信……………………………12

MAP地 図 ………………………………… 16

産 業自由貿易区・工業地区…………14石油・ガス・石油化学…………18金 融……………………………21農水産業…………………………23観光・ホテル……………………25その他産業………………………27

INDUSTRY

LIFE・BUSINESS ENVIRONMENT生活・ビジネス環境

医 療……………………………30教 育……………………………32ビジネス…………………………34その他……………………………36

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INFRASTRUCTUREインフラストラクチャー

Egypt �� Egypt Egypt �� Egypt

ROAD【 道 路 】

カイロ市内とナイル川

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Egypt �� Egypt Egypt �� Egypt

エジプトは日本の約2.6倍という広大な国土面積を有しており、道路、鉄道、航空、河川が国内の輸送手段となっています。従来、鉄道が国内輸送において中心的な役割を担ってきましたが、道路輸送の重要性が高まり、エジプト政府による道路網の整備・拡張が推進されてきた結果、現在では国内の貨物総輸送量の約85%と人員総輸送量の約60%が道路輸送によって占められています。高速道路と一般舗装道路の総延長距離は1981年の1万5,300キロから2005年末には約4万7,000キロへと3倍以上に増加し、カイロ=アレキサンドリア間、カイロ=スエズ間、カイロ=ルクソール=アスワン間などの主要幹線道路をはじめ、アレキサンドリアから地中海沿岸を走りリビア国境に至る国際線道路などが整備されてきています。カイロ=アスワン道路は交通量が増大したため、この既存道路と並行して走る「新カイロ=アスワン道路」が2005年に完成しています。都市部の道路については、カイロ市内と周辺道路の交通渋滞緩和のため、外郭環状道路やバイパス道路、地下道路などが建設されており、現在も各地において道路の新設・拡幅工事が進められています。しかし、自動車の台数が増え続けているため、こうした道路網整備にもかかわらず、カイロなどの主要都市は交通渋滞と頻発する事故、大気汚染などに悩まされています。自動車の多くが旧式で、排ガス対策も不十分なため、大気汚染はなかなか緩和されず、今や深刻な社会問題になっています。一方、自動車のスムーズな交通を確保するフライオーバー(立体交差の横断橋)とナイル川、スエズ運河を跨ぐ橋梁の建設も交通網整備における最重要プロジェクトのひとつであり、これらの橋の数は鉄橋を含め現在までに合計180以上に達しています。ナイル川に架る橋の中では最長となるダミエッタ国際橋(Damietta International Bridge)が2004年に完成するなど、同川の架橋数は30近くに達しています。また、スエズ運河を横断する道路としてはアハマド・ハムディ・トンネルがありますが、同運河に架る初の自動車用橋梁、ムバラク平和友好橋が日本の無償資金協力により建設され、2001年10月に完成しています。

●カイロ市内の交通機関カイロ市内の主要交通機関は、大型バス、ミニバス、

路面電車、地下鉄(後述)、タクシーです。公営のバス、路面電車および地下鉄は、料金は非常に安いものの、安全性や運行の信頼性、言葉の問題などから、これらの交通機関の中で一般の外国人が比較的容易に利用できるの

は地下鉄だけと言えます。従って多くの在留外国人は市内の移動手段としてタクシーまたは地下鉄を利用しています。黒と白のツートンカラーのタクシーが市内に数多く走っており、ほとんどが個人経営のタクシーです。公定料金はあるものの、料金メーターが設置されていないため、乗客は乗車前に運転手と交渉して料金を取り決めておく必要があります。また、流しのタクシーに比べると料金は高くなりますが、法人経営のリムジンを利用することもできます。リムジンは予約も可能で、料金は目的地別の定額制になっています。タクシーの運転手には英語があまり通じず、また、ほとんどのタクシーの車両は非常に古く、エアコンも装備されていないため、現地生活に不慣れな外国人や観光客の評判は好ましくありません。こうした不評に対処するため、最近、エジプト政府は料金が完全メーター制で、エアコン付の車体が黄色の新型タクシーを導入しました。運転手もある程度の英語を理解できるため、黄色タクシーは好評を博しています。導入から日が浅いため、台数の少なさが問題になっていますが、政府は今後、黒白タクシーの台数を順次削減し、黄色タクシーに切り替える計画を立てています。

●エジプト国内での自動車の運転自動車は、国際運転免許証またはエジプトの運転免許証で運転することになります。国際免許証は、カイロの日本国大使館が発行する住居証明書など必要書類を所管の警察署に提出し、運転試験に合格すれば、エジプトの免許証に書き換えることができます。車両は右側通行で、制限速度の目安は市内が時速60キロ、市外が90キロです。一般的に言ってエジプトの運転マナーは良くなく、交通事故が多発していますので、自動車を運転する場合は細心の注意が必要になります。レンタカー会社は、ハーツ(Hertz)やエイヴィス(Avis)などの国際大手をはじめ、数多く営業しています。運転手付で車を借りることもできますので、交通事故を考慮すれば、自分で運転するよりは運転手付レンタカーを利用するほうがより安全で便利です。

ムバラク平和友好橋

都 市 名 距 離 都 市 名 距 離アレキサンドリア

(Alexandria) 225 スエズ(Suez) 140

マトルーフ(Matrouh) 499 エル・トゥール

(El-Tur) 450

サルーム(Saloum) 724 エル・ファイヨーム

(El-Fayoum) 103

ポートサイド(Port Said) 220 アシュート

(Asyut) 380

イスマイリア(Ismailiya) 140 ルクソール

(Luxor) 721

エル・アリシュ(El-Arish) 381 アスワン

(Aswan) 1,202

●カイロから主要都市までの距離(単位:キロメートル)

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INFRASTRUCTUREインフラストラクチャー

Egypt �� Egypt Egypt �� Egypt

スウィング式のエル・フェルダン鉄橋

RAILROAD【 鉄 道 】

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Egypt �� Egypt Egypt �� Egypt

エジプトの鉄道はアフリカ・中東地域では最も歴史が古く、最初に鉄道が敷設されたのは今から150年前以上の1853年まで遡ります。同年、アレキサンドリア=カフル・イッサ(Kafer Eassa)間の路線が開通し、1856年にカイロまで延伸されました。その後、鉄道路線網は着実に拡張され、2004/05年の会計年度(2004年7月1日から2005年6月30日)における総延長は約9,435キロに達し、国内全土の市町村の8割近くを結んでいるほか、港湾や鉱工業地域にも接続されています。鉄道路線の増設・改良工事は現在も進められていますが、2001年11月にはスエズ運河に架るエル・フェルダン鉄橋(El-Ferdan Railway Bridge)が完成しています。この鉄橋はイスマイリアの北20キロの地点に位置しており、世界最長のスウィング・ブリッジ(旋回橋)です。鉄道網の開発と平行して、老朽車両の更新、自動制御システムと監視システムの導入、電化、高速化など、鉄道の全般的な近代化も進められています。また、一部サービスの民営化も推進されており、夜行寝台列車の運行や飲食サービスなどの分野に民間部門が参入しています。現在、エジプト国有鉄道(Egyptian National Railways:

ENR)が旅客・貨物輸送事業を行っています。ENRはエアコン付の1等・2等車両やエアコンなしの2等・3等車両、食堂車、寝台車など各種車両を保有しており、特急、急行、普通列車を含む数多くの旅客列車と貨物列車を国内路線として運行しています。カイロ=アレキサンドリア線、カイロ=ルクソール=アスワン線、カイロ=スエズ線、アレキサンドリア=ポートサイド線、アレキサンドリア=マトルーフ線など、主要路線のほとんどがカイロとアレキサンドリアを起点として各方面に延びています。

ENRは年間約4億3,500万人(国内の人員総輸送量の約35%)の旅客と約1,300万トン(国内の貨物総輸送量の約8%)の貨物を輸送していますが、運賃が低廉なため、操業費用や人件費などを含む総経費の約6割しか鉄道収入で賄うことができず、同鉄道は慢性的な赤字経営に陥っています。この財政赤字の補填のため、ENRは総経費の約4割に相当する額の補助金を政府から毎年、受領しています。鉄道の近代化と経営の改善を加速し、赤字体質から早期に脱却することがENRの課題となっています。

●カイロの地下鉄(カイロ・メトロ)エジプトはアフリカ・中東地域で最初に地下鉄を導入した国で、現在、1号線と2号線がカイロ市で営業運転を行っています。1号線はヘルワン(Helwan)=エル・タハリール(El-Tahrir)=ラムセス(Ramses)=ニュー・エル・マルグ(New El-Marg)間を結ぶ路線距離44キロの地下鉄で、1987年にヘルワン=ムバラク区間(28.5キロ)、2年後の1989年にムバラク=エル・マルグ区間(14.5キロ)がそれぞれ開業し、ニュー・エル・マルグに至る全線が開通したのは1999年のことです。合計34の駅があり、そのうち5駅が地下駅です。最高速度は時速100キロ、ラッシュアワーの時間帯の運転間隔は3.5分です。一方、2号線の路線距離は21.5キロで、ショブラ・エル・ケイマ(Shubra El-Kheima)=ラムセス=エル・タハリール=エル・モニブ(El-Mounib)間を結んでおり、1996年に一部区間が営業を開始し、2005年1月に全線が開通しました。駅の数は20で、最高速度は時速80キロ、ラッシュアワーの時間帯は約3分間隔で運転されています。1号線、2号線ともに平常時間帯は約8~ 10分間隔で運転されており、全ての電車の1両目、時間帯によっては2両目も女性専用車両になっています。1日当りの乗客数は約300万人で、世界でも有数の利用者数を誇っています。なお、1号線の一部車両と2号線の全車両は日本製です。現在、カイロではインババ(Imbaba)=カイロ国際空港間の地下鉄3号線(路線距離33キロ、27の地下駅を含め合計29駅)の建設計画が推進されていますが、さらに、ナセル市=エル・アハラム(El-Ahram)間の4号線、ナセル市=ショブラ・エル・ケイマ間の5号線およびショブラ・エル・ケイマ=マアディ(Maadi)間の6号線の計画も浮上しています。また、エジプト第2の都市、アレキサンドリアにおいても同市初の地下鉄建設が計画されています。

地下鉄 寝台車

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INFRASTRUCTUREインフラストラクチャー

Egypt �� Egypt Egypt �� Egypt

上段 : カイロ国際空港 下段 : ルクソール国際空港

【 空 港 】AIRPORT

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Egypt �� Egypt Egypt �� Egypt

エジプトの民間航空部門は「民間航空省(Ministry of Civil Aviation)」によって統括されており、空港分野は同省の監督下にある「エジプト空港・航空管制 持 株 会 社(Egyptian Holding Company for Airports and Air Navigation:EHCAAN)」が管轄しています。EHCAANの統計資料によれば、2005年末現在、エジプト国内で開業している民間航空用の空港は20あり、EHCAANの傘下会社、「カイロ空港会社(Cairo Airport Company:CAC)」がカイロ国際空港を、「エジプト空港会社(Egyptian Airports Company:EAC)」が残りの空港をそれぞれ管理・運営しています。主な国際空港は、カイロ、アレキサンドリア、ルクソール、アスワン、シャルム・エル・シェイク(Sharm El- Sheikh)、タバ(Taba)など、10あまりの都市にありますが、そのうち最大の空港はカイロ国際空港です。カイロ国際空港はカイロ市の北東約15キロに位置し

ており、3,000メートル以上の滑走路3本とふたつの旅客ターミナルビルを保有する、中東・アフリカ地域では最大級の規模を誇る国際空港のひとつです。1963年3月に年間旅客収容能力500万人の第1ターミナルが、そして1986年に同300万人の第2ターミナルがそれぞれ完成し、現在に至っています。第1ターミナルはエジプト航空が国際・国内便用に使用しているほか、主としてアラブ諸国の航空会社が利用しています。第2ターミナルは欧米やアジア諸国などの外国航空会社が主に使用しています。乗降客数は1963年が約82万人、1970年約130万人、1980年約500万人、1990年約730万人、2000年約900万人と着実に増加し、2005年には約1,022万人に達しています。2005年のカイロ空港利用者数は全空港の総旅客数(約2,489万人)の約41%を占めています。現在、第2ターミナルに隣接して、第3ターミナル(旅客収容能力約1,1000万人 /年)の建設工事が進められており、2007年末までの完成・運用開始が予定されています。完成すればカイロ空港の旅客収容能力は倍増することになります。また、ルクソールやシャルム・エル・シェイク、ハルガダ(Hurghada)、ボルグ・エル・アラブ(Borg El-Arab)など他の空港においても施設の拡張・改良工事が完了もしくは実施中の段階にあります。一方、空港分野への民間部門の参入も推進されており、エジプト初のBOT(建設・操業・移転)方式による空港がマルサ・アラム(Marsa Alam)に建設され、2002年に開港しています。その後、2005年10

月に同方式によるエル・アラメイン(El-Alamein)空港が営業を開始したほか、他の2カ所においてもBOT方式による空港の建設が進捗中です。エジプトはアラブ・中東地域で初めて航空会社を保有した国です。1932年5月、世界で7番目の航空会社として「エジプト航空(EgyptAir)」が設立され、1933年7月から商業フライトを開始しました。政府による国有化や名称の変更、シリア航空との一時的な合併などもありましたが、設立後70数年間にわたりエジプト航空は順調な発展を遂げてきました。2002年、エジプト航空は民間航空省所管の持株会社となり、同持株会社の下、次の7社に組織変更されました;(1)エジプト航空会社、(2)エジプト航空メンテナンス・エンジニアリング会社、(3)エジプト航空グランドサービス会社、(4)エジプト航空貨物会社、(5)エジプト航空機内サービス会社、(6)エジプト航空観光・免税店会社、および(7)エジプト航空医療サービス会社。エジプト航空は国営航空会社として国内線をほぼ独占支配しており、その国際路線網もアジア、ヨーロッパ、アフリカ、北米へと広がっており、週400便以上の定期便が国内の主要都市と世界各国の70以上の都市に乗り入れています。エジプト=日本間の定期便は、エジプト航空が成田国際空港とカイロ国際空港間に週3便、関西国際空港とカイロ国際空港間に週2便(冬季の12月下旬~ 2月下旬は週3便)の直行便をそれぞれ運航しています。

空 港 発着便数 乗降客数カイロ 101,485 10,220,152

シャルム・エル・シェイク 38,582 4,755,529

ハルガダ 34,211 4,525,290

ルクソール 21,703 2,273,198

アスワン 12,008 1,032,460

アブ・シンベル(Abu Simbel) 6,057 650,642

アレキサンドリア 13,442 533,588

●主要空港統計( 2005年)

チェックイン・カウンター

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INFRASTRUCTUREインフラストラクチャー

Egypt �� Egypt Egypt �� Egypt

エル・ソフナ港

【 港 湾 】PORT

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Egypt �� Egypt Egypt �� Egypt

エジプトは地中海と紅海に面しており、海岸線の総延長は約2,000キロに達しています。また、全長約190キロあまりのスエズ運河が地中海側のポートサイドと紅海側のスエズを結んでいます。このため、エジプトでは海上輸送が国家経済に重大な影響を及ぼす最重要部門のひとつになっており、同国の外国貿易量のおよそ90%を占めています。海上輸送は運輸省の海運庁(Maritime Transport Sector, Ministry of Transportation)が統括しており、その監督下にある4港湾庁(Port Authority)が15の商業港を管轄しています。各港湾庁とその管轄港は次の通りです;(1)アレキサンドリア港湾庁(2港);アレキサンドリア港、エル・デヘイラ港(El-Dekheila)、(2)紅海港湾庁(9港);スエズ港、アダビーヤ港(Adabiya)、シャルム・エル・シェイク港、ヌウェイバ港(Nuweiba)、ハルガダ港、サファガ港(Safaga)、エル・ソフナ港(El-Sokhna)、エル・トゥール港、石油ドック(Petroleum Dock)、(3)ポートサイド港湾庁(3港);ポートサイド港、東ポートサイド港(Port Said East)、アリシュ港、および(4)ダミエッタ港湾庁(1港);ダミエッタ港(Damietta)。これら15の商業港の総面積は479.77平方キロ(陸上73.99平方キロ、海上405.78平方キロ)で、操業中の総バース数と総延長距離はそれぞれ177バースと3万1,075キロに達しており、年間取扱能力は貨物が1億3,013万トン、コンテナが547万TEU(TEUは20フィート・コンテナ換算個数)です。

2005年の港湾取扱貨物量は、エジプト全体で9,747万2,000トンに達しており、そのうち輸入が5,574万4,000トン(うち1,105万5,000トンはトランジット貨物)、輸出が4,172万8,000トンで、トランジット貨物を除くと、約300万トンの輸入超になっています。コンテナ貨物の輸出入量は1,115万7,000トンで、アレキサンドリア港、ダミエッタ港、エル・デヘイラ港など合計6港において取り扱われています。2005年の総取扱貨物量に占める上位3港の比率は、ダミエッタ港が最大の26.5%(2,582万8,000トン)、次いでエル・デヘイラ港の21.3%(2,080万9,000トン)、次がアレキサンドリア港の20.4%(1,992万3,000トン)となっており、これら3港で全体の68.3%を占めています。商業港のほかに、エジプト国内には42の特別港があり、公的機関や民間企業によって管理・運営されています。これら特別港は目的別に4種類に分類されており、それら概要は次の通りです;(1)石油港(Petroleum Port);ガバル・エル・ゼイト港(Gabal El-Zeit)、ア

ル・ゼイト東港(Al-Zeit East)、メルサ・バドラン港(Mersa Badran)など、合計14港、(2)鉱業港(Mining Port);アブ・ゼニマ港(Abu Zenimah)、アブ・ガスーン港(Abu Ghasoun)など合計9港、(3)観光港(Touristic Port);ガリーブ港(Port Ghalib)、ポートサイド観光港(Port Said Tourist Port)など合計11港、および(4)漁港(Fishing Port);アッタカ漁港(Attaka)、エル・マアディヤ漁港(El-Maadiya)など合計8港。エジプト政府は民間部門の港湾分野への参画を促進しており、エル・ソフナ港と東ポートサイド港は民間資本が導入されたBOT(建設・操業・移転)方式によって運営されている港湾です。アレキサンドリアとエル・デヘイラ両港の同方式によるコンテナ・ターミナルの拡張・近代化計画が2005年3月に発表されるなど、BOT方式による港湾施設の整備が進められています。

●スエズ運河スエズ運河は全長約190キロの世界最長の運河で、アジアとヨーロッパを結ぶ最短の海上交通ルートとなっています。浚渫工事に約10年を要した同運河が開通したのは1869年で、当時の水深は約8メートル、水路幅は44メートルでしたが、その後、拡張工事が順次行われた結果、現在の水深は22.5メートル、水路幅は200~ 210メートルに達しています。なお、1975年から1980年に実施された第1次拡張計画では、日本政府が有償資金協力を行い、日本の民間企業が工事に参加しています。2005年の運河の通航量は、船舶数が1万8,193隻、船舶総トン数は約6億7,178万トンで、2002年以降毎年、増加しています。通航船舶数の増加と2005年2月からの通航料値上げにより、通航料収入も大きな伸びを示しており、2005年の収入は前年比12%増の34億5,800万ドルを記録しています。スエズ運河の通航料収入はエジプトの重要な外貨獲得源になっています。2006年12月末の新聞報道によれば、通航料は2007年4月1日から平均で2.84%値上げされますので、通航料収入は今後、さらに増大するものと予想されています。

輸 入 輸 出 合 計アレキサンドリア港 12,860 7,063 19,923

エル・デヘイラ港 15,497 5,312 20,809

ダミエッタ港 13,282 12,546 25,828

ポートサイド港 5,042 3,943 8,985

東ポートサイド港 2,947 2,866 5,813

●主要港の取扱貨物量( 2005年) 単位:千トン

2001年 2002年 2003年 2004年 2005年

通航船舶数 13,986 13,447 15,667 16,850 18,193

総トン数(100 万トン) 456.1 444.8 549.4 621.2 671.8

通航料収入(100 万ドル) 1,911 1,964 2,606 3,085 3,458

●スエズ運河統計

アレキサンドリアの港

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INFRASTRUCTUREインフラストラクチャー

Egypt ���0 Egypt Egypt ���0 Egypt

ELECTRIC POWER & WATER

【 電力・水 】

火力発電プラント

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Egypt ���0 Egypt Egypt ���0 Egypt

●電力部門従来、エジプトの電力需要はアスワン・ハイ・ダムを中心とする水力発電によって賄われてきました。しかし、人口増と工業発展に伴う電力需要拡大に対処するため、1980年代から数多くの火力発電所が建設されてきました。その結果、現在ではエジプトの総発電能力の約84%が火力発電所によって占められており、水力発電所のシェアーは16%弱となっています。当初、火力発電の燃料は石油でしたが、既存石油火力発電所のほとんどが天然ガス火力発電所に改造されたため、今では天然ガスが火力発電の主要燃料になっています。天然ガス火力発電所のガス消費量はエジプトのガス総消費量のおよそ65%を占めています。発電施設と送配電網が拡充されたことにより、エジプト国民のほとんどが電力の恩恵を享受しています。また、エジプトとリビア、チュニジア、ヨルダン、シリアなどの周辺諸国を結ぶ地域間送電網も整備されてきたことから、エジプトはそれらの国に余剰電力を供給する、電力輸出国になっています。エジプトの電力部門は、国営と民営の発電会社およ

び送配電会社によって運営されており、国営企業は政府機関の「エジプト電力持株会社(Egyptian Electricity Holding Company:EEHC)」の管轄下にあります。2004/05年度の総発電能力は1万8,544メガワット、総発電量は1,000億6,400万キロワット時、総電力消費量は857億1,800万キロワット時で、消費量は年平均7%前後の高い率で伸び続けています。消費量に占める部門別の比率は、工業部門35.3%、家庭部門36.4%、商業部門2.6%、その他24.9%および販売電力部門0.8%となっており、家庭が最大の電力消費部門になっています。エジプト政府は、電力分野への民間部門の積極的な参画を奨励するため、民間資本導入の「BOOT(建設・所有・操業・移転)方式」による10以上の新規発電所建設計画を立案し、実行に移しました。その結果、2003年までに次の民間会社3社が同方式に基づき設立され、操業を行っています;(1)東ポートサイド電力会社、(2)スエズ湾電力会社、および(3)シディ・クリル(Sidi Krir)発電会社。しかし、その後、エジプト政府は費用効果などの面から新規発電所建設計画を見直し、民間が発電所を所有するBOOT方式から、現在は政府が発電所を所有する従来型の借り入れ資金による建設方式に立ち戻っています。同政府は増大する電力需要を満たすため、欧州投資銀行(European Investment Bank)やアラブ経済・社会開発基金(Arab

Fund for Economic and Social Development)などの国際金融機関から融資を受け、EHCCの主導による新規発電プラントの建設プロジェクトを実施しています。計画されているすべての発電プラント(合計発電能力1万2,875メガワット)が2012年までに予定通り完成すれば、エジプトの総発電能力は現在の約1.7倍に増強されることになります。一方、太陽エネルギーや風力などの再生可能エネルギーを利用した、環境にやさしい発電計画も推進されています。エジプト政府は総発電能力150メガワットの太陽エネルギー発電所の建設を計画しており、そのうち、発電能力30メガワットの発電所がエル・クライマト(El-Kuraimat)にて建設されており、2007年の操業開始が予定されています。風力発電については、ハルガダとザアファラナ(Zaʼ afarana)において総発電能力145メガワットの風力発電プラントがすでに完成し、発電を行っています。また、エジプト政府は、アルゼンチンの協力を得て建設され、1997年から稼動を開始した核研究原子炉(発電能力22メガワット)も保有していますが、これに加え、地中海沿岸のエル・ダバア(El-Dabaa)に能力1,000メガワットの原子力発電所を建設する計画を2006年9月に発表しています。

●水部門現在、エジプトの水需要の95%がナイル川によって

賄われています。全長約6,700キロのナイル川は世界一の長さを誇る大河であり、エジプト国民にとって生命の源になっています。増大する水需要を満たすため、飲料水生産プラントの能力は1981年の465万立方メートル/日から2004/05年には2,100万立方メートル /日へと大幅に増強され、その結果、国民一人当たりの可能飲料水量は78.5リットル /日から305リットル /日へと約4倍に増加しています。また、配水網の総延長距離は約6,000キロから2万7,850キロに拡大しており、水道の普及率は地方の村落を除く都市部では100%に達しています。エジプト政府は現在、国際金融機関から資金を借り入れ、村落の配水網整備プロジェクトに取り組んでいます。一方、シナイ半島南東部のアカバ湾沿岸に位置するタバとヌウェイバでは海水淡水化プラントが建設中であり、2007年までに操業が開始される予定です。

一般用 業務用 月間使用量: 超高圧 : 0.098 (約 1.96 円) 1~ 50 KWh : 0.05 (約 1 円) 高 圧 : 0.1191(約 2.38 円) 51~200 KWh : 0.0872 (約 1.74 円) 中 圧 : 0.161 (約 3.22 円) 201~350 KWh : 0.118 (約 2.36 円) 低 圧 : 0.085 (約 1.7 円) 351~650 KWh : 0.168 (約 3.36 円) ― 651~1,000 KWh : 0.237 (約 4.74 円) ― 1,000 KWh 以上 : 0.285 (約 5.7 円) ―

●カイロ市電気料金( 2006年1月現在) 単位:LE/キロワット時

注:LE はエジプト・ポンドで、1LE ≒ 20 円。電圧 220V 50 サイクル

一般用 業務用 月間使用量: 大規模工場 : 0.80(約 16 円) 1~ 10 ㎥ : 0.18(約 3.6 円) 小規模工場 : 0.70(約 14 円) 11~ 30 ㎥ : 0.19(約 3.8 円) ― 30 ㎥以上 : 0.25(約 5 円) ―

●カイロ市水道料金( 2006年1月現在) 単位:LE/立方メートル

アスワン・ハイ・ダム

風力発電

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INFRASTRUCTUREインフラストラクチャー

Egypt ���� Egypt Egypt ���� Egypt

COMMUNICATION【 通 信 】

カイロ市内の郵便局

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Egypt ���� Egypt Egypt ���� Egypt

エジプトは、通信・情報技術(Communication & Information Technology:CIT)分野において世界で最も急速な発展を遂げている国のひとつです。通信設備とサービスの拡充は国家開発における優先事項であり、エジプト政府は通信網の整備・近代化に鋭意、取り組んできています。現在、1,400社を超える内外のCIT関連企業が同分野において事業を行っており、4万人が雇用されています。

CIT分野は、通信政策の立案およびCIT分野開発の責任機関として1999年に設立された、「通信・情報技術省(Ministry of Communications and Information Technology)」によって統括されています。同省の監督のもと、全般的な通信事業は国営企業の「テレコム・エジプト(Telecom Egypt:TE)」を中心として運営されており、固定電話から携帯電話、ファックス、インターネットに至るまで、幅広い通信サービスが国民に提供されています。1998年に「エジプト国営電気通信庁(Arab Republic of Egypt National Telecommunications)」が再編され、TEがエジプト政府の100%保有株式会社として新たに設立されました。2005年12月、政府の民営化政策の一環としてTE株式の20%がカイロ・アレキサンドリア証券取引所とロンドン証券取引所にて売却されたため、政府の現在の株式保有率は80%に低下しています。●固定電話固定電話事業のライセンスはTEのみに付与されてお

り、同社の独占事業となっています。同社は中東およびアフリカ地域では最大の固定電話サービス事業者であり、2006年6月末時点の国内の固定電話加入者は1,060万人(普及率14.8%)を数えています。通話状態は良好で、国内、国外ともにダイヤル・インで通話することができます。なお、一般家庭の電話から国際電話をする場合、事前の加入申し込みが必要となります。公衆電話ボックスは、主要都市の中心街や空港、鉄道の駅、幹線道路上などに数多く設置されており、2006年8月現在の設置数は5万5,728台にのぼっています。これら電話ボックスのサービスは、(1)Menatel社(設置数3万675台)、(2)Nile Telecom(同1万8,872台)、および(3)TE(同6,181台)の3社によって提供されています。電話はカード式ですので、テレフォン・カードの事前購入が必要となります。●携帯電話携帯電話は国民の間で急速に普及しており、加入者

数は2006年8月時点で1,539万8,639人、普及率は19.6%に達しています。同時点の携帯電話事業会社は、(1)フランス企業との合弁会社、Mobinil社(加入者数776万713人)と(2)英国企業との合弁会社、Vodafone Egypt社(同763万7,926人)の2社ですが、2006年7月に国内3番目の携帯電話事業ライセンスがアラブ首長国連邦の国営通信会社、「イッティサラート(Etisalat)社」を主体とするコンソーシアムに付与されたため、第3の携帯事業会社

が近々、営業を開始する予定になっています。●インターネットインターネットの利用者も急増しています。2000年

の利用者数は50数万人でしたが、2006年8月時点ではその10倍以上の540万人に達しています。一般の電話回線を使用したダイヤルアップによるインターネット接続サービス、ADSLなどのブロードバンド・サービス、多数のインターネット・サービス・プロバイダーとインターネットカフェの存在など、インターネットを取り巻く環境は格段に整備されています。2002年、エジプト政府は無料インターネット接続サービスを導入しました。これは、利用者がプロバイダーと契約せずに、指定された電話番号にダイヤルすれば、インターネットに接続でき、料金は電話の市内通話料金のみというシステムです。利用者が飛躍的に増加したのは、この無料サービスの導入が一因になっています。●スマート・ビレッジ(Smart Village)エジプト政府は同国をCIT産業のハブとすべく、「ス

マート・ビレッジ(SV)」と称するCIT関連企業用の特別地区の設立に着手しています。その第1号である「ピラミッド・スマート・ビレッジ(Pyramids Smart Village)」の建設工事が進められてきましたが、2003年9月に同ビレッジの第1期施設が完成し、オープンしました。広さ33万6,000平方メートルを有するこのビレッジはカイロから車で約20分、ギザのピラミッドから約10キロのカイロ=アレキサンドリア道路沿いに位置しています。進出を希望する企業は事務所を賃借して入居するか、または土地を購入し、自社のオフィス・ビルを建設して入居することになります。進出企業には10年間の税金免除などのインセンティブが付与されます。現在、内外のCIT企業各社がすでに入居しており、IBMやマイクロソフト社では、IT関連の技術訓練などが実施されています。●郵 便

2006年7月現在、3,545の郵便局が国内に設置されており、各種郵便物の取扱業務や預貯金などの金融業務を行っています。日本から送付される葉書や封書などの郵便物は宛先に個別配達されますが、小包は郵便局留めとなります。一方、封書などの送付は街中に設置してある郵便ポストに投函することもできますが、設置数が極めて少ないため、多くの人は最寄の郵便局を利用しています。日本=エジプト間の航空郵便の所要日数は7日~ 10日前後ですが、エジプト国内では郵便物が紛失するケースもあるため、郵便事情は必ずしも良好とは言えません。郵便物をエジプトの相手先に確実に届けるためには、EMS(Express Mail Service)や国際郵便物運送会社(DHL、OCSなど)の宅配サービスの利用が勧められます。

電話架設料(一般用) 605.3(約 1 万 2,100 円)電話基本料金(一般用、月額) 8(約 160 円)1 分当り通話料 0.02(約 0.4 円)日本向け国際通話料(3 分) 8 時 ~20 時;13.5(約 270 円)

20 時 ~ 8 時;10.5(約 210 円)携帯電話加入料 150(約 3,000 円)携帯電話基本料金(月額) 100(約 2,000 円)1 分当り通話料 ・携帯電話間;0.30(約 6 円)

・携帯電話から固定電話; 8 時 ~20 時;0.45(約 9 円) 20 時 ~ 8 時;0.35(約 7 円)

●通信関連費用( 2006年1月現在) 単位:LE

公衆電話ボックス郵便ポスト

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INDUSTRY産 業

Egypt ���� Egypt Egypt ���� Egypt

エジプト・メディア・プロダクション・センター(メディア公共 FZ)

FREE ZONES & INDUSTRIAL ZONES

【 自由貿易区・工業地区 】

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Egypt ���� Egypt Egypt ���� Egypt

自由貿易区(フリーゾーン:FZ)は国家経済開発に多大な貢献をもたらすため、多くの国々が自国の特定地域にFZを設立しており、その数は世界全体で約3,000あまりに達しています。エジプトは、輸出の拡大、外国投資の誘致、最新技術の導入、雇用機会の創出などを主目的として1970年代初期からFZの設立を開始しています。現在、同国には、公共FZ(Public Free Zone)と民間FZ(Private Free Zone)の2種類のフリーゾーンがあり、民間FZは単独プロジェクトに限定して設立されるFZです。一方、国内19の県に41の工業地区が設立されており、様々な工業品が製造されています。これらのFZと工業地区は、「投資・フリーゾーン庁(General Authority for Investment and Free Zones:GAFI)」によって管轄されています。近年、エジプトは国内企業の投資拡大や海外からの投資促進、輸出増大などを目的として、個人所得税の最高税率を32%から20%へ、一般企業の法人税を42%から20%へ、そして関税率を平均14.6%から9%へ引き下げたほか、関税率分類も29から6へ削減するなど、各種の税制改革を実行しています。こうした税制改革や貿易の自由化、民営化の促進、銀行業界の再構築など、一連の経済改革の断行により、エジプト経済は着実な発展を見せており、2006/07年度の経済成長率は7%に達すると予測されています。また、外国直接投資(FDI)も急激に増大しており、2001/02年度のFDIは約4億3,000万ドルでしたが、2005/06年度は約61億1,000万ドルへとわずか4年間で15倍に急増しています。2006/07年度は75~ 80億ドルに達するものと予想されており、これが実現すれば、エジプトは南アフリカを凌ぐアフリカ最大のFDI誘致国になります。

●自由貿易区(FZ)エジプトの公共FZは、物資の輸入とFZ製品の輸出を円滑に行うため、港や空港に近接して設立されており、現在、10地区が公共FZに指定されています。公共および民間FZの進出企業は以下に記載の投資優遇措置・インセンティブを享受できます。但し、製造・組み立てプロジェクトについては、その製品価格の1%相当額、FZ内に保管される物品については、その価格の1%相当額ならびにサービス案件については、年間総収入の1%相当額が毎年課税されます。

主要優遇措置・インセンティブ:(1)エジプトのすべての税と関税の事業存続期間中の免除(2)すべての輸出入関連規則の適用免除(3)投資事業選択の自由(4)資本の国籍不問と出資金額の無制限(5)利益と資本の国外移転の自由(6)個人プロジェクト、合名、合弁など事業形態の自由(7)プロジェクトの国有化および没収に対する保証(8)電気・水など公共サービスの低廉な料金による提供

●工業地区合計41の工業地区がアレキサンドリア、イスマイリア、ポートサイドなど19の県に設立されており、総面積は約1億6,200万平方メートルに達しています。2005年1月1日現在、2,210のプロジェクトが承認され、そのうち930プロジェクトにおいて各種工業品の生産が開始されています。主な産業は、医薬品・医療機器、塗料、農業用トラクター、家畜飼料、有機肥料、コンクリート製パイプ、セメント、乾燥野菜・果物、セラミック、石油化学、家電、製紙、化学薬品、紡績、製鉄、ガス液化などです。

●その他上述のFZと工業地区のほかに、「特別経済地区(Special

Economic Zone:SEZ)」と「資格工業地区(Qualifying Industrial Zone:QIZ)」も設立されています。SEZは2002年法律第83号に基づき、国内数カ所に設立されており、10%の低率法人税やエジプト原産地証明書の発行など各種の優遇措置が講じられています。エジプト初のSEZは、スエズ市南東約45キロに位置する、「スエズ湾北西SEZ(North West Suez SEZ)」で、エル・ソフナ港に隣接しています。同地区では肥料や鉄鋼、医薬品、建築資材、石油化学品などの製造会社がすでに生産を開始しています。一方、QIZはエジプト製品を無税にて米国に輸出するために設けられた制度で、在QIZの企業と在イスラエルの企業が最低35%のローカルコンテント(現地調達率)要求のすくなくとも3分の一を満たせば、エジプト製品の対米無税輸出が可能となります。現在、カイロ、アレキサンドリアおよびスエズ湾地区の3地域において、合計8地区がQIZに指定されています。

●公共FZと主要投資分野FZ 名 主要投資分野

アレキサンドリア 紡績・衣類、食品加工、化学薬品、肥料、ガス液化、医療機器

ナセル・シティ 食品加工、医薬品、医療機器、紡績・衣類、電気・電子機器

ポートサイド 紡績・衣類、化学薬品、革製品、食品加工・梱包、家電

スエズ 石油化学、石油精製、ガス液化、ガラス、鉄・金属製品、造船

イスマイリア 衣類、革製品、コンピューター・電子機器、化学薬品、肥料

ダミエッタ 石油化学、ガス液化、医療機器、電子機器、紡績・衣類、食品加工

メディア ラジオ・TV・衛星放送と番組制作、メディア関連機器、観光施設

シェビン・エル・コム(Shebin El-Kom)

紡績・衣類、タバコ・食品加工

ケフト(Qeft) 医薬品、食品加工東ポートサイド港 コンテナ取扱・物資輸送業

●外国直接投資額推移(単位:100万ドル)

2001/02年度 2002/03年度 2003/04年度 2004/05年度 2005/06年度投資額 428.2 700.6 2,107.2 3,901.6 6,111.4

造船(スエズ公共 FZ)

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Egypt ���� Egypt Egypt ���� Egypt

主要道路

主要鉄道

国境線

主要空港

首都

主要都市

地 中 海Mediterranean Sea

紅 海Red Sea

スエズ湾

Gulf of Suez アカバ湾Gulf of Aqaba

リビアLIBYA

スーダン SUDAN

エジプトEGYPT

サウディアラビアSAUDI ARABIA

ヨルダンJORDAN

イスラエルISRAEL

シナイ半島SINAI

サルーム

マトルーフ

シワ

アレキサンドリア

ダミエッタポートサイド

エル・アリシュ

カイロギザ

バウィティ

スエズ

イスマイリア

エル・ファイヨーム

アシュート

ルクソール

アスワン

アブ・シンベル

エル・アイン・エル・ソフナ

ラス・ガリーブ

ハルガダ

サファガ

クセイル

マルサ・アラム

タバ

ヌウェイバ

シャルム・エル・シェイク

エル・トゥール

SALOUM

MATROUH

SIWA

ALEXANDRIA

GIZA

BAWITI

EL-FAYOUM

DAMIETTAPORT SAID

EL-ARISH

CAIRO

SUEZ

ISMAILIA

ASYUT

EL-AIN EL-SOKHNA

RAS GHARIB

HURGHADA

SAFAGA

QUSEIR

TABA

NUWEIBA

SHARM EL-SHEIKH

EL-TUR

LUXOR

ASWAN

ABU SIMBEL

MARSA ALAM●面積:100 万 1,500km2

●人口:7,400 万人(2005 年)●首都:カイロ●民族:アラブ人

●公用語:アラビア語●宗教:イスラム教●政体:立憲共和制

エジプト概要

Egypt ���� Egypt

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Egypt ���� Egypt Egypt ���� Egypt

主要道路

主要鉄道

国境線

主要空港

首都

主要都市

地 中 海Mediterranean Sea

紅 海Red Sea

スエズ湾

Gulf of Suez アカバ湾Gulf of Aqaba

リビアLIBYA

スーダン SUDAN

エジプトEGYPT

サウディアラビアSAUDI ARABIA

ヨルダンJORDAN

イスラエルISRAEL

シナイ半島SINAI

サルーム

マトルーフ

シワ

アレキサンドリア

ダミエッタポートサイド

エル・アリシュ

カイロギザ

バウィティ

スエズ

イスマイリア

エル・ファイヨーム

アシュート

ルクソール

アスワン

アブ・シンベル

エル・アイン・エル・ソフナ

ラス・ガリーブ

ハルガダ

サファガ

クセイル

マルサ・アラム

タバ

ヌウェイバ

シャルム・エル・シェイク

エル・トゥール

SALOUM

MATROUH

SIWA

ALEXANDRIA

GIZA

BAWITI

EL-FAYOUM

DAMIETTAPORT SAID

EL-ARISH

CAIRO

SUEZ

ISMAILIA

ASYUT

EL-AIN EL-SOKHNA

RAS GHARIB

HURGHADA

SAFAGA

QUSEIR

TABA

NUWEIBA

SHARM EL-SHEIKH

EL-TUR

LUXOR

ASWAN

ABU SIMBEL

MARSA ALAM

Egypt ���� Egypt

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INDUSTRY産 業

Egypt ���� Egypt Egypt ���� Egypt

OIL・GASPETROCHEMICALS

海上油田施設

【 石油・ガス・石油化学】

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Egypt ���� Egypt Egypt ���� Egypt

2000年、エジプト政府は石油部門の強化のため、「エジプト石油公社(Egyptian General Petroleum Corporation:EGPC)」からその所管事業であった天然ガスと石油化学を切り離し、別組織を設立するなどの組織改革に着手しました。上エジプトの資源開発のための独立会社の設立と、鉱物資源事業の石油省移管による新組織の創設により、現在、エジプトの石油部門は、石油省の監督下にある次の5つの事業体から構成されています。(1)エジプト石油公社(EGPC)、(2)エジプト天然ガス持株会社(Egyptian Natural Gas Holding Company:EGAS)、(3)エジプト石油化学持株会社(Egyptian Petrochemicals Holding Company:ECHEM)、(4)ガヌーブ・エル・ワディ石油持株会社(Ganoub El-Wadi Petroleum Holding Company:GANOPE)、および(5)エジプト鉱物資源庁(Egyptian General Authority for Mineral Resources)。アラブ石油輸出国機構(OAPEC)の統計によれば、

2005年末現在のエジプトの原油確認埋蔵量は37億バーレル、同年の平均生産量は64万バーレル /日で、生産量は油田の老朽化に伴い減少傾向にあります。この生産量を基に計算すると、エジプトの原油埋蔵量は約16年で枯渇することになります。一方、同年末の天然ガスの確認埋蔵量は1兆8,970億立方メートル、生産量は331億立方メートルで、埋蔵量・生産量ともに増加を続けています。2005年の輸出量は、原油が5万7,000バーレル /日、石油製品が9万8,000バーレル /日、天然ガスが80億立方メートルです。2005年から天然ガスの輸出量が急増したことに伴い、原油・石油製品および天然ガスの総輸出金額も増加しており、2002/03年度の32億ドルから2005/06年度には102億2,200万ドルへとわずか3年間で3倍以上に増大しています。

●石 油エジプトの石油と天然ガスは、スエズ湾、西部砂漠、東部砂漠、地中海、シナイ半島の5地域の油田地帯から主として生産されており、最大の産油地帯は国内総生産量の約5割を占めているスエズ湾です。EGPC傘下の国営企業12社に加え、BPやBG(British Gas)、Shell、ENI、Apache、Conoco Phillips、Petronasなどの国際大手石油・ガス会社を含む50社以上の外国企業がエジプトの石油・ガス事業に参画しています。これら外国企業の年間総投資額は20億ドルと推定されています。EGPCと外国企業との主な合弁石油会社としては、スエズ湾で操業を行っている「Gulf of Suez Petroleum Company;BP出資」や「PETROBEL;ENI

出資」、「Badr El-Din Petroleum Company;Sell出資」などがあります。日本からは帝国石油(株)の子会社、「エジプト石油開発(株)」と「アラビア石油(株)」の2社がエジプトに進出しています。エジプト石油開発は1980年から原油を生産しており、現在も約5,400バーレル /日の生産を行っています。2005年7月、同社は現行の石油生産契約を10年間延長し、2020年4月までとする延長石油生産契約に調印しています。一方、アラビア石油は2005年7月にスエズ湾の鉱区における石油・ガス開発に係わる生産分与契約をエジプト政府およびEGPCと締結し、掘削作業に着手しました。その結果、同社は2006年7月に試掘1号井にて4,900バーレル /日の産出を確認し、現在、2008年度中の商業生産開始に向けた開発準備を進めています。エジプト政府は新たな石油・ガス田の開発を目指し、

「ガヌーブ・エル・ワディ石油持株会社(GANOPE)」を設立しました。GANOPEはカイロ南部の上エジプト地域におけるすべての石油・ガス開発事業を行う会社であり、紅海の沖合いも開発地域に含まれています。同社は国際入札による新鉱区の開放を進めており、2005年に石油・ガス開発契約が締結された鉱区の総面積は7万平方キロに達しています。2006年はスエズ湾南部、東部 /西部砂漠および紅海における8鉱区を第1次国際入札鉱区に指定し、外国石油会社の応札を募るなど、GANOPEは引き続き活発な事業活動を展開しています。

●天然ガスエジプトで天然ガスの利用が開始されたのは、同国初のガス田であるアブ・マディ・ガス田の生産が始まった1975年のことです。1990年代初頭から外国石油会社は積極的なガス探鉱事業を開始し、ナイル・デルタや地中海、西部砂漠などにおいて有望なガス田を相次いで発見しています。新規ガス田の開発に伴い、ガス生産量も伸びており、2000年の200億立方メートルから2005年には331億立方メートルへと、5年間で約1.7倍に増大しています。ガスの埋蔵量と生産量が増加している一方、石油の生産量が低迷していることから、近い将来、天然ガスがエジプトのエネルギー部門発展の主役になるものと予想されています。生産されている天然ガスは、その全生産量の約6割が火力発電用燃料として消費されているほか、家庭用の燃料と化学工業用の原材料として消費されており、余剰分が海外に輸出されています。輸出量は2004年の11億立方メートルから2005年には80億立方メートルへと急増して

シディ・クリル石油化学会社

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Egypt ���0 Egypt Egypt ���0 Egypt

いますが、これはLNG(液化天然ガス)の輸出が2005年から本格的に開始されたことによります。

2003年7月、エジプトのエル・アリシュからヨルダンのアカバに至る海底ガスパイプラインが開通し、エジプト産天然ガスが初めて国外に輸出され、同国は天然ガスの輸出国となりました。このパイプラインは「アラブ・ガスパイプライン(Arab Gas Pipeline)」プロジェクトの第1段階として建設されたものであり、エジプト、ヨルダン、シリア、レバノン、トルコの5カ国間の合意に基づき、最終的にはシリアからレバノン、キプロス、そしてトルコまで延伸される計画になっています。第2段階のアカバからヨルダン北部のシリア国境に至るパイプラインも2006年1月に完成しています。一方、LNGの生産・輸出プロジェクトも順調な進展を見せています。エジプト初のLNG生産会社、「スペイン・エジプトガス会社(Spanish Egyptian Gas Company:SEGAS)」がダミエッタで建設していたLNGプラント(生産能力550万トン /年)が操業を開始し、2005年1月にエジプトからスペインにLNGが初出荷されました。SEGASは、Union Fenosa Gas(スペインのUnion FenosaとイタリアのENIとの折半出資合弁企業)、EGASおよびEGPCが80対10対10の出資比率にて設立した合弁企業です。一方、アレキサンドリアの東50キロに位置するイドゥク(Idku)では「エジプトLNGプロジェクト(Egyptian LNG Project:ELNG)」と呼称されているエジプト第2のLNGプロジェクトがマレーシアのPetronas(出資比率35.5%)、イギリスのBG(同35.5%)、EGPC(同12%)、EGAS(同12%)およびフランスのGaz de France(同5%)との合弁事業により進められています。ELNGの生産施設は計画よりかなり早く完成し、その第1生産トレイン(生産能力360万トン /年)は2005年3月に生産を開始、予定より4カ月早い2005年5月からLNGの輸出が開始されました。また、第2生産トレイン(同360万トン /年)は計画より9カ月も早い2005年9月に操業を開始しています。これらLNGプロジェクトにより、エジプトは今や世界で第6位にランクされるLNG輸出国になっています。

●石油精製現在、エジプトには9の製油所があり、2005年末現在の精製能力は合計で81万9,000バーレル /日、同年の生産量は64万バーレル /日、国内消費量は51万2,000バーレル /日、輸出量は9万8,000バーレル /日です。最

大の製油所は、EGPCの100%子会社であるエル・ナセル石油会社が操業している、エル・ナセル製油所です。増加する石油製品の国内需要の充足と輸出の拡大を目指し、エジプト政府は既存精製施設の近代化・拡張計画を進めている一方、2製油所の新規建設も計画しています。ひとつは、総投資額95億ドルの石油精製・化学コンプレックスの建設計画で、精製能力35万バーレル /日の製油所が地中海沿岸のカフル・エル・シェイク(Kafr El-Sheikh)に新設される予定です。他のひとつの計画はスエズ湾沿岸のエル・アイン・エル・ソフナ(El-Ain El-Sokhna)に建設される精製能力10万バーレル /日の製油所です。

●石油化学エ ジ プ ト で は 現 在、EGPCの100 % 子 会 社 を含め次の5社が石油化学事業に従事しています;( 1)Egyptian Petrochemicals Co.(EPC)、( 2)Sidi Kerir Petrochemicals Co.(SIDPEC)、( 3)Oriental Petrochemical Co.(OPC)、(4)Alexandria for Special Petroleum Product Co.(ASPPC)、および(5)Amerya Refining Company。これら5社で生産されている主な製品は、エチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、苛性ソーダなどで、一部製品は輸出されています。石油化学部門は、「エジプト石油化学持株会社(ECHEM)」が統括していますが、同社は石油化学産業のさらなる拡大を目指し、20年間にわたる長期マスタープラン(2002年~ 2022年)を現在、実施しています。総投資額は100億ドル以上が見込まれており、24の石油化学プラントが14の工業コンビナートにおいて建設される予定です。計画が予定通り実施されれば、エジプトは世界でも有数の石油化学製品の生産国になるものと思われます。

2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年埋蔵量 3.7 3.7 3.7 3.7 3.7 3.7

生産量 768 760 751 750 709 696

●石油統計(単位:埋蔵量は10億バーレル、生産量は千バーレル /日)

2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年埋蔵量 1,444 1,557 1,657 1,725 1,854 1,897

生産量 20.0 24.5 26.5 29.7 33.1 33.1

●天然ガス統計(単位:10億立方メートル)

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Egypt ���0 Egypt

産 業INDUSTRY産 業

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エジプト国営銀行

FINANCE【 金 融 】

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エジプトの銀行業は中東地域では最も歴史が古く、1880年に最初の銀行が設立されています。現在、銀行部門は、「エジプト中央銀行(Central Bank of Egypt:CBE)」の監督の下、商業銀行(Commercial Bank)、事業・投資銀行(Business and Investment Bank)ならびに特殊銀行(Specialized Bank)の3種類の銀行から構成されています。2003年、エジプト中央銀行は不良債権の増加などにより経営困難に陥っている銀行の統廃合を決定し、銀行部門の再編に乗り出しました。その結果、Arab African International BankによるMisr America International Bank 株式の100%買収やエジプト国営銀行(National Bank of Egypt:NBE)とMohandes Bankの合併など、銀行間での買収・合併が相次いで行われています。また、NBEやミスル銀行(Banque Misr)などの国営銀行が外資との合弁銀行に保有している株式の他行への売却も実施されているほか、カイロ銀行(Banque du Caire)とミスル銀行の国営銀行同士の合併や国営銀行の民営化計画も進められています。この民営化計画の第1弾として、国営のアレキサンドリア銀行がイタリアのSao Paulo銀行によってその株式の80%を買収され、民営化されています。こうした銀行の統廃合により、エジプト国内で営業を行っている銀行数は年々減少し、2003年6月末時点で62行あったものが、2005年6月末には59行へ、そして2006年9月末現在では42行へと大幅に減っています。2007年末にはその数はさらに減少し、34行になると推定されています。

●エジプト中央銀行(CBE)

エジプト中央銀行(CBE)は銀行部門の監督機関として1961年に設立されています。CBEの現在の権限と主要目的は2003年法律第88号と適宜発布される大統領令により定められており、その概要は次の通りです。・ 物価安定と健全な金融システムの実現・ 金融政策の立案と実施・ 国家通貨の発行とその単位の決定・ 国家経済における流動性の維持と公開市場操作・ 国家保有の金と外貨準備高の管理・ 為替市場の規制と管理・ 銀行部門の監督

●銀 行2005年6月末現在、CBEとその監督下にない2銀行

(Arab International BankとNasser Social Bank)を除き、合計で59の商業銀行、事業・投資銀行および特殊銀行が

エジプト国内で営業を行っており、総支店数は2,847店に達しています。これら銀行の内訳は以下の通りです。1.商業銀行;27行(国営銀行 4行 /支店数 943店、民間銀行と合弁銀行 23行 /支店数 430店)

2.事業・投資銀行;29行(民間銀行と投資銀行 11行/支店数 177店、オフショア銀行 18行 /支店数 55店)

3.特殊銀行;3行 ・エジプト工業開発銀行(Egyptian Industrial

Development Bank)、支店数13店。 ・アラブ・エジプト不動産銀行(Arab Egyptian Real

Estate Bank)、支店数27店。 ・開発・農業クレジット銀行(Principal Bank for

Development & Agricultural Credit)、支店数1,202店。

●証券取引所エジプトで唯一登録されている証券取引所は、「カイ

ロ・アレキサンドリア証券取引所(Cairo & Alexandria Stock Exchanges:CASE)」です。CASEは民間会社ではなく、国家保有の公的機関です。CASEの歴史は非常に古く、100年以上前に遡り、アレキサンドリア証券取引所が1883年に、そしてカイロ証券取引所が1903年にそれぞれ設立されています。両取引所は順調な発展を遂げ、アレキサンドリア取引所は1940年代に世界第5位にランクされたこともあります。現在、CASEでは、上場企業の株式をはじめ国債、社債、

投資信託などが約120社のブローカーを通じ取引されています。公正で透明な取引の確保や投資家保護、迅速な情報開示などを目的とした各種法律の整備、最新の電子取引システムの導入、外国人投資家による売買と資本・利益の国外移転の自由など、エジプト政府はCASE活性化のため様々な手段を講じています。2006年9月末現在、632社が上場されており、時価総額は4,866億エジプト・ポンド(約9兆7,320億円)に達しています。

2004 年 6 月末 2005 年 6 月末 2006 年 9 月末銀行数 61 59 42支店数 2,783 2,847 2,967

●銀行統計

2003/04 年度 2004/05 年度出来高(株) エジプト・ポンド取引 ドル取引

1,470,28030,034

2,407,56627,952

売買高 エジプト・ポンド(千 LE) ドル(千ドル)

2,071,85337,624

3,093,015150,940

年度末時価総額(100 万 LE) 172,865 337,059年度末上場企業数 803 770

●株式統計

カイロ・アレキサンドリア証券取引所

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産 業INDUSTRY産 業

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AGRICULTURE & FISHERIES

【 農水産業 】

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農業部門はエジプト経済において古くから中心的な役割を担ってきていますが、他の産業部門の発展に伴い、その重要度は次第に低下しており、同部門のGDPに占める比率は1985年の20%から2005年には13.9%に減少しています。しかしながら、国内の食糧需要と食品加工産業の原材料の供給源として、そしてエジプト全就業人口の27.8%に当る約531万人を吸収する国内最大の雇用先として、現在も農業が重要産業のひとつであることに変わりはありません。

●農畜産業エジプトは農業水のほとんどをナイル川の灌漑用水

に依存しています。雨水を利用した農業が行われているのは北部沿岸地域とシナイ半島北部で、降水量は限られています。一方、砂漠地帯の農業の主要給水源は地下水です。灌漑農業が農耕地面積の84.5%を占めており、残りが地下水と雨水による農耕地となっています。農耕地面積は全国土のわずか3%(370万ヘクタール)あまりに過ぎず、また、年2%前後の高い率で人口が増え続けていることから、エジプトは今や主要穀物の多くを輸入に依存する、食料輸入大国になっています。エジプト政府はこうした状況を打開するため、1997年から2017年までの20年間に及ぶ大規模農業開発プロジェクトに鋭意、取り組んでいます。これは農耕地面積を約320万フェダーン(約134.4万ヘクタール。1フェダーン≒0.42ヘクタール)増加させる野心的な計画であり、サウス・バレー(South Valley)、シナイ半島、西部砂漠地帯などにおいて、数々のプロジェクトが実施されています。主なプロジェクトとしては、「トシュカ・プロジェクト(農地開発面積約23万ヘクタール)」、「オワイナート東プロジェクト(同11万ヘクタール)」、「アル・サラーム運河プロジェクト(同26万ヘクタール)」などがあり、順次開墾を終えた土地では、有機栽培による農作物の生産もすでに開始されています。エジプトは農業に適した気候条件に恵まれている

ため、1年を通じ農作が可能となっています。主要な農業地域は、アスワン・ハイ・ダムのダム湖であるナセル湖の下流からカイロに至るナイル川に沿った地域(ナイル渓谷)、カイロから地中海沿岸に至る三角州地帯(ナイル・デルタ地帯)、ナイル渓谷西側の砂漠地帯に点在するオアシス地帯、地中海沿岸地域およびシナイ半島北部で、小麦、大麦、米、綿花、トウモロコシ、豆類、クローバー、サトウキビ、各種の野菜・果実など、多種多様の作物が栽培されています。2005/06年度の主要農産物の生産高は、小麦827万4,000トン、大麦14万トン、トウモロコシ726万7,000トン、米612万4,000トン、サトウキビ1,624万5,000トン、綿実69万1,000トン、ソラマメ24万7,000トンです。農産物の生産性も向上しており、2004/05年度の1フェダーン当りの生産性は、米、サトウキビおよびトウモロコシが世界第1位、ピーナツが第2位、ビートが第7位を占めています。農

作物のうち、米、綿花、ジャガイモ、柑橘類などが中東諸国や欧州諸国に輸出されています。畜産業は主として民営の小規模農家によって営まれ

ており、畜産物生産量の80%がこれら農家によって占められていますが、近代的な大規模酪農場の数も近年、増加傾向にあります。1982年から2004年の間、畜産物の生産量は着実に伸び、赤肉は178%増の31万5,000トンから56万トンへ、鶏肉は207%増の31万5,000トンから65万2,000トンへ、鶏卵は220%増の32億個から70億個へ、生鮮ミルクは210%増の190万トンから400万トンへと各々増大しています。現在、牛450万頭、水牛390万頭、羊520万頭、ヤギ400万頭がそれぞれ飼育されていますが、養鶏業については、2006年初頭に鳥インフルエンザが発生したことなどにより、大きな打撃を受け、不振が続いています。

●水産業エジプトの水産業は、地中海、紅海、スエズ湾を中

心とする海面漁業と、北部の汽水湖や内陸部の湖、ナイル川、ナセル湖、運河などで行われている内水面漁業に分けられます。国内全体の漁獲高は1982年の20万トンから2004年には87万5,000トンへと約4.4倍に増加しています。近年、養殖業も盛んに行われており、汽水湖と内陸部の湖沼、ナイル川などを利用した養殖事業への投資が奨励されています。

●食料自給率1981年から2004年までの主要食料品の自給率は、小

麦が25%から55%へ、砂糖が60%から70%へ、赤肉が65%から75%へとそれぞれ高まったほか、野菜、果物、鶏肉、鶏卵、生鮮ミルクおよび魚類は自給率100%を達成しています。

小麦 8,274 サトウキビ 16,245

大麦 140 テンサイ 4,127

トウモロコシ 7,267 亜麻 86

米 6,124 野菜類 19,582

ソラマメ 247 タマネギ 1,527

綿実 691 果実 8,968

●主要農産物生産量統計( 2005/06年度) 単位:千トン

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産 業INDUSTRY産 業

Egypt ���� Egypt

SIGHTSEEING & HOTEL

【 観光・ホテル 】

ピラミッドの音と光のショー

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古代ギリシャの歴史家、ヘロドトスが「ナイルの賜物」と称したエジプトは、世界四大文明のひとつであるエジプト文明の発祥の地として、またファラオ、ギリシャ、ローマ、コプトそしてイスラム時代の歴史的遺産の宝庫として、世界で最も有名な国のひとつで、7,000年以上の歴史を有しています。壮大で華麗な古代遺跡群、地中海と紅海沿岸に広がる紺碧の海、美しい砂浜と珊瑚礁、エジプト考古学博物館、国立文化センター(オペラハウス)など、膨大な数にのぼる観光スポットがあり、世界中から同国を訪れる観光客を魅了しています。こうした従来の観光資源に加え、エジプト政府は観光産業の多様化に乗り出し、考古学ツーリズムや海洋ツーリズム、レクリエーション・ツーリズム、宗教ツーリズム、砂漠サファリ・ツーリズム、テラピ・ツーリズム、エコ・ツーリズム、スポーツ・ツーリズム、国際会議・展示会ツーリズムなど、多岐にわたる新規観光事業を展開しています。また、外国人観光客のさらなる誘致を目的として、2005年に「休暇用住宅ツーリズム(Vacations Houses Tourism)」が創設されましたが、これにより、非エジプト人も紅海沿岸のハルガダや地中海沿岸のマトルーフなどの著名観光地において小規模住宅の所有権や使用権を取得できるようになりました。観光産業への2005年度の投資額は前年度比21%増の30億LE(約600億円)に達しており、豪華ホテルの新築や既存観光関連施設の改築、新たな観光地の開発など、各種プロジェクトが実施されています。このような観光産業拡大政策により、外国人観光客数と観光収入はここ数年来、着実な伸びを示しています。

2004/05年度の外国人観光客数は前年度の751万人を約15%上回る過去最高の865万人を記録しています。ドイツを筆頭にイギリス、イタリア、フランスなど西欧諸国からの観光客が最も多く、次に多いのはサウディアラビアやリビアなど中東諸国からの観光客です。一方、同年度の観光収入は前年度比約17%増の64億ドル、そして2005/06年度は72億ドルに達しており、観光産業はエジプト最大の外貨収入源のひとつになっています。また、全エジプト人労働者の約12.6%が観光業に従事しているなど、雇用機会の増大も伴う観光産業はエジプトの経済発展に大きく寄与しています。ホテル・レストラン部門がGDPに占める比率は、2005年度はわずか3.5%でしたが、直接・間接的な波及効果を考慮すれば、観光産業の同年度のGDPに占めた比率は約11.3%と見積もられています。エジプトの主要観光地は、カイロとその近郊(エジ

プト考古学博物館、国立文化センター、アズハル・モスク、聖セルギウス教会、カイロ・タワー、ギザやサッカラのピラミッド群、スフィンクス)、アレキサンドリア(地中海の輝ける真珠と称されるエジプト第2の都市でマリンリゾート地。ローマ劇場、ポンペイの柱)、ルクソール(カルナック神殿、ルクソール神殿、王家の谷)、アスワン(アブ・シンベル神殿、アガ・カーン廟、聖シオン修道院)、シナイ半島(エル・アリシュ、ラファハ、シャルム・エル・シェイク、ダハブ、ヌウェイバ、タバなどのマリンリゾート地。ラス・ムハンマドはスキューバダイビングのメッカ。聖カトリーナ修道院)、ハルガダ(紅海沿岸のマリンリゾート地で美しい珊瑚礁で有名)、砂漠地域のシーワ・オアシスなどです。また、ナイル川クルーズもエジプト観光の目玉のひとつになっています。日本政府は、王家の谷周辺地区整備計画に対し、文化遺産無償資金協力を行っています。数々の名所旧跡の中で、現在、世界遺産に登録されているのは次の7カ所です(括弧内は登録年);(1)メンフィスとその墓地遺跡‐ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯(1979年)、(2)古代都市テーベ(現ルクソール)とその墓地遺跡(1979年)、(3)アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群(1979年)、(4)イスラム都市カイロ(1979年)、(5)アブ・メナ(1979年、危機遺産)、(6)聖カトリーナ修道院地域(2002年)、および(7)ワディ・エル・ヒータン(クジラの谷)(2005年)。観光客を収容する宿泊施設も質・量ともに充実しています。フォーシーズンズ、シェラトン、ヒルトン、メリディアン、インターコンチネンタルなど外資系のデラックスホテルをはじめ、ナイル川に浮かぶ水上ホテル、観光村のホテルなど各種の施設が整備されています。2005年時点のこれら宿泊施設の総数は1,187、部屋数は16万室に達しています。5つ星の一流ホテルはカイロをはじめアレキサンドリアやシャルム・エル・シェイクなど主要観光地にあり、カイロだけでも20以上を数えており、客室の設備や付帯施設、サービスはおおむね国際水準を満たしています。

観光客数(千人) 観光収入(100 万ドル)2002/03 年 5,239 3,796.4

2003/04 年 7,512 5,475.1

2004/05 年 8,649 6,429.8

●観光統計

王家の谷の墓 アブ・シンベル神殿

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産 業INDUSTRY産 業

Egypt ���� Egypt

OTHER INDUSTRIES【 その他産業 】

セメント工場

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エジプトの製造業部門はGDPの約20%を占めており、年10%前後の高い率で成長しています。エジプト政府による民営化促進政策により、工業生産高に占める公共部門の比率は大幅に低下し、今や民間部門が工業生産高のほぼ90%を占めるに至っています。繊維・衣類、食品加工、自動車、電子・電気機器、肥料、医薬品、セラミック、セメント、製鉄、家具など多様な製造業分野がエジプト経済を支えています。主要製造業の概要は次の通りです。

●繊 維繊維産業は豊富で高品質の綿花の生産を基盤として、エジプトでは歴史的に最も早く発展してきた産業であり、同国の経済・社会発展に大きな貢献を果たしてきていますが、セラミックや家具、薬品など他の製造業の発展に伴い、繊維産業の経済に占める比重は減少傾向にあります。しかし、4,500社を超える企業が繊維産業に従事しており、また、就業者数は製造業部門の約3割を占めているなど、繊維産業は現在もエジプト経済において枢要な役割を担っています。エジプトは繊維・衣類の生産・輸出において世界でも最重要国のひとつに数えられています。原綿、綿糸、既製衣服、カーペット、合成繊維など繊維部門全体の2004/05年度の輸出額は約10億4,200万ドルで、エジプトの総輸出額(138億3,300万ドル)の約7.5%を占めています。

●食品加工1930年代に設立された食品加工産業は繊維産業に次ぐ第2の製造業分野として繊維業と共に成長し、エジプト経済を牽引してきました。食品加工業に登録されている企業数は5,000近くを数え、約25万人の熟練

労働者が働いています。これら企業の80%以上が中小企業で、主として国内市場向けの食品を製造しており、輸出用の食品は大規模企業によって生産されています。小麦粉、動植物油脂、砂糖、炭酸飲料、アルコール飲料、酪農製品、冷蔵・冷凍野菜、果物・野菜ジュースなど多種多様の食品が製造されています。

●自動車エジプトの自動車産業は近年、急速に成長しており、

ゼネラル・モーターズ、メルセデス・ベンツ、BMW、プジョー、シトロエン、ダイムラー・クライスラーなどの欧米各社をはじめ、韓国のヒュンダイ(現代)、日本のスズキ、日産など、世界の自動車メーカーが地元企業と合弁会社を設立し、乗用車、バス、ミニバス、トラック、バンなどの組み立て事業を行っています。2004/05年度の総生産台数は前年度比32.3%増の9万1,671台で、バスを中心とした輸出も行われており、同年度の輸出額は約2億4,700万ドルに達しています。また、カーエアコンやバッテリー、燃料タンク、タイヤ、安全ベルト、ガラスなど、各種自動車用部品の製造業も拡大しており、これら製品の一部は輸出されています。

●医薬品医薬品産業は1939年に設立されており、エジプトでは

最も古い歴史を有する産業のひとつです。現在、民間会社を中心に50社以上の製薬会社が事業を行っており、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Meyers-Squibb)やノバルティス(Novartis)、アベンティス(Aventis)、ファイザー(Pfizer)などの国際大手医薬品メーカーも進出しています。今日エジプトは中東・北アフリカ地域では最大の医薬品の生産・消費国になっており、2004/05年

2003/04 年度 2004/05 年度精糖(千トン) 1,572.0 1,603.0

炭酸飲料(100 万箱) 334.0 344.0

タバコ(10 億本) 72.3 75.7

綿糸(千トン) 290.0 290.0

既製服地・ベッドカバー(100 万枚) 292.7 303.2

乗用車・バス・トラック(台) 88,890.0 91,671.0

洗濯機(千台) 849.3 878.7

冷蔵庫(千台) 862.5 886.8

アルミニウム / シート(千トン) 251.5 259.9

強化鉄(千トン) 4,505.1 4,706.6

セメント(千トン) 29,737.0 30,470.0

窒素・燐酸肥料(千トン) 11,810.0 11,960.0

●主要工業製品生産量

製  品 金 額 製  品 金 額綿 糸 117.2 セメント 225.3

綿繊維 305.8 自動車 246.6

既製服 296.9 アルミ製品 220.5

カーペット類 110.8 エアコン 71.4

医薬品 215.2 冷蔵庫 14.1

鉄鋼製品 622.8 TV・電話機器・ラジオ 26.0

肥 料 149.6 コンピューター 47.8

注:石油・ガス関連を除く。

●主要製品別輸出( 2004/05年度) 単位:100万ドル

自動車工場

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度の医薬品の自給率は96%に達しています。一方、エジプト製の医薬品はアラブ、アフリカおよびヨーロッパの約100カ国におよぶ国々に輸出されています。輸出額は2001/02年度の8,250万ドルから2004/05年度には2億1,520万ドルへと約2.6倍に増加しています。

●製 鉄鉄鋼産業はエジプトにとって最も重要な産業のひとつであり、自動車や造船、建設、消費財など他の製造業に必要不可欠な資材を供給しています。鉄鋼製品は従来、国営企業が中心となって生産されていましたが、現在では民間の鉄鋼メーカーが国内生産量の95%を担っています。棒鋼と鋼板が主要鉄鋼製品で、2004年度は棒鋼が650万トン、鋼板が340万トンそれぞれ生産されています。国際鉄鋼協会(International Iron and Steel Institute)の統計によれば、エジプトは2005年の粗鋼生産量において、世界で第29位にランクされています。一方、6億2,280万ドルの鉄鋼製品が2004/05年度に輸出されています。国内約20社の鉄鋼メーカーの中で最大の会社はエッズ・デヘイラ社(Ezz-Dekheila)で、国内シェアーの約6割を占めており、棒鋼と鋼板の国内総生産能力に占める同社の比率はそれぞれ50%と80%に達しています。

●セメント観光産業関連プロジェクトの増加や住宅の建設ブーム、政府によるインフラ整備プロジェクトなどに後押しされ、エジプトのセメント産業は1990年代から急成長を遂げ、同国は今やアラブ世界最大のセメント生産国になっています。エジプト政府の民営化促進と外国投資誘致政策により、フランス、メキシコ、ポルトガルなど外国の大手メーカーがエジプトのセメント事業に参画しています。現在、セメントメーカー 10数社が国内で操業を行っていますが、その半数以上が外国企業との合弁会社になっています。外資100%会社を含むこれら合弁セメントメーカーの生産能力は国内全体の約70%に達しています。セメントの国内総生産能力と生産量は着実に伸びており、エジプトは今日、世界でも有数のセメント生産・輸出国に成長しています。2004/05年度のセメント生産量は3,047万トンで、金額にして2億2,530万ドルのセメントが地中海沿岸のヨーロッパ諸国や中東諸国に輸出されています。

●肥 料エジプトの農業にとって化学肥料は必要不可欠であり、窒素や燐酸などの化学肥料が古くから生産されて

います。肥料の一部は輸出されているものの、エジプトは不足分を近隣諸国からの輸入に依存しており、また、「農水産業」の項で概説されている通り、今後、農耕地面積の一層の拡大が計画されていることから、肥料の需要はさらに増大するものと予想されています。このため、肥料用途のアンモニアや尿素などの新規製造工場の建設プロジェクトが実施されています。2006年5月、日本の日揮株式会社は、三菱商事、エジプト石油公社、同国の大手建設会社などと共同で、年産70万トンのアンモニア製造・販売事業に出資すると発表しており、2009年2月からの製造開始が予定されています。2004/05年度の肥料生産量は窒素肥料が1,068万トン、燐酸肥料が128万トンの合計1,196万トン、輸出金額は1億4,960万ドル、輸入金額は3億1,680万ドルで大幅な輸入超となっています。

●その他製造業上述の製造業以外では、アルミやセラミック、電子・電気などの産業分野も着実に発展しています。アルミ地金、アルミ線材、セラミックタイル、衛生陶器、コンピューター、エアコン、テレビ、洗濯機、冷蔵庫などが製造されており、多くの製品が輸出されています。

●鉱業部門エジプトは、鉄鉱石、燐鉱石、石炭、タンタライト、マンガン、金、銅、亜鉛、錫、鉛、ウランなど多くの種類の鉱物に恵まれています。鉄鉱石は西部砂漠地帯のバハリア・オアシスとアスワン南東部で、燐鉱石は紅海のサファガとクセイル両港からほど近い、エジプト南部のセバイヤにてそれぞれ採掘されています。石炭の推定埋蔵量は5,000万トンで、主要採掘地はシナイ半島です。東部砂漠地帯ではタンタライトの埋蔵が確認されており、その推定埋蔵量は4,800万トンで、世界第4位の規模を誇っています。

エジプト製医薬品

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LIFE・BUSINESS ENVIRONMENT 生活・ビジネス環境

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MEDICAL SERVICES 【 医 療 】

小児ガン専門病院

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エジプトの医療分野はハード面、ソフト面ともに着実に整備されており、都市部と地方では多少の格差はあるものの、標準的な医療サービスは国内全土に普及しています。医療分野の更なる整備・拡充のため、公共・民間両部門による医療分野への投資が現在も活発に行われています。2004/05年度の総投資額は24億LE(約480億円)に達し、公共部門がその70.08%に当る17億LE(約340億円)を占めています。数多くある国立病院や保健センターなどの公的医療施設に加え、1980年代以降、最新の医療設備・機器を備えた私立の医療機関が相次いで設立されたことから、医療水準も向上しており、脳外科や心臓外科などほとんどの専門分野での手術が可能となっています。現在、BCGやポリオ、DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)などの予防接種が乳幼児に義務付けられており、エジプト国民は無料で接種を受けることができます。日本政府はエジプト政府とユニセフが主導している「ポリオ撲滅計画」に対し、無償資金協力を行っています。世界銀行のデータによれば、予防接種の義務化や医療水準の向上により、出生児1,000人当りの乳児の死亡率は2002年の33人から2004年には26人へと減少し、また、平均寿命も71歳まで延びています。エジプト政府は国民皆保険政策を実施しており、

2004/05年度の健康保険加入者数は3,650万に達しています。国立病院は外国人も含め、医療費は原則として無料ですが、在留日本人は医療設備の整った私立の総合病院かクリニックを利用しています。私立病院の医療費は、例えば風邪などの場合、診療費が80LE(約1,600円)、薬代が3日分で65LE(約1,300円)ほどです。医薬分業のため、医薬品は医師の処方箋を持参して、薬局で購入することになります。薬局は公営と民営を含め多数営業しており、24時間営業の店もあります。医

師の処方箋なしに購入できる薬や抗生物質も販売されており、薬価は政府の統一価格となっています。エジプトで感染する恐れのある病気は、腸チフス、

A型肝炎、細菌性赤痢、寄生虫症、マラリア、コレラ、流行性脳脊髄膜炎、破傷風などで、日本ではほとんど見られない病気もありますので注意が必要です。1月から2月は最も寒くなり、最低気温も5度を下回るため、インフルエンザや風邪が流行し、3月からはハムシーンと呼ばれる砂嵐がしばしば発生するため、アレルギー性皮膚炎、喘息などの呼吸器疾患などに悩まされる人が増えます。また、自動車や工場からの排出ガスが主因で、カイロとその周辺地域は深刻な大気汚染に見舞われており、気管支系の病気を患う人も増加しています。日常生活において健康上、留意すべきことは、生水や生ものの飲食を避けること、食事前の手洗いを励行すること、衛生管理が十分な店で食料品を購入すること、清潔なレストランで飲食をすることなどです。一方、狂犬病や鳥インフルエンザも発生していますので、野犬や野良猫、鶏などに近づかないよう注意する必要があるほか、ナイル川の水がビルハルツ住血吸虫症の発生源であることから、ナイル川に手足を浸したり、川で遊泳したりしないよう注意しなければなりません。

エジプト航空付属病院

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LIFE・BUSINESS ENVIRONMENT 生活・ビジネス環境

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EDUCATION【 教 育 】

カイロ大学

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エジプト政府は古くから教育の普及に力を注いできており、義務教育が定められたのは1923年のことです。現在、エジプトの教育制度は日本と同様の「6・3・3・4制」で、小・中学校の9年間が義務教育となっており、公立学校の教育費は無料です。学期は2学期制で、1学期は9月中旬から1月中旬まで、2学期は2月上旬から5月下旬までで、その後3カ月あまりの長い夏休みがあります。2004年現在の就学率は、小学校が100%、中学校が87%、高校が33%で、エジプト人児童の100%が初等教育を受けています。小学校から高校まで、各学年に厳格な進級試験制度があるため、小学校の段階から留年や中途退学を余儀なくされる生徒もいます。2004/05年度の小学から高校までの生徒総数は1,654万4,000人に達しています。また、公立校以外に私立の学校と日本人学校などの外国のインターナショナル・スクールも多数あり、各々のカリキュラムに準拠した教育が行われています。一方、高等教育については、カイロ大学(創立1908年)やアレキサンドリ大学(同1942年)、アイン・シャムス大学(同1950年)、アシュート大学(1957年)、マンスーラ大学(同1972

年)、タンタ大学(同1972年)など10数校の国立大学があるほか、カイロ・アメリカン大学、ドイツ大学、シックス・オクトーバー大学(6 October University)、ミスル国際大学、ミスル科学・技術大学などの私立大学も開校しており、国内の大学数は合計で20校を超えています。中でも、アズハル大学は1,000年以上の歴史を有する世界最古の大学であり、イスラム世界の最高学府と称されています。同大学の2004/05学年度の在籍学生数は、数千人の外国人留学生を含め、50万4,600

人に達しています。エジプトでは、日本への関心が高いため、カイロ大学とアイン・シャムス大学に日本語

学科が開設されており、高水準の日本語教育が行われています。また、エジプト政府は ITやエレクトロニクスなど世界の最先端技術の教育にも重点を置いており、各地に技術専門学校を設立し、優秀な卒業生をビジネス社会に送り出しています。教育の普及促進と並行して、エジプト政府は1990

年から2010年までの20年間を文盲撲滅期間と位置付け、1991年に「文盲・成人教育庁(General Authority

for Illiteracy and Adults Education)」を設立し、国を挙げての文盲対策に着手しています。2006年9月のユネスコの統計によれば、エジプト人の成人(15歳以上)の識字率は71.4%(男性83.0%、女性59.4%)に達していますが、いまだに読み書きのできない国民は1,420

万人(男性415万人、女性1,006万人)に達していると推定されています。特に女性の識字率が低いため、その向上が今後の大きな課題になっています。

●カイロ日本人学校カイロには、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどの欧米系や日本を含むアジア系の学校など、多くのインターナショナル・スクールがありますが、在留日本人子女のほとんどはカイロ日本人学校に通学しています。同校には小学部と中学部があり、日本の文部科学省の学習指導要領に基づいた教育が行われています。2006年1学期末時点の在校生徒数は36名です。また、幼稚園はエジプト現地のものを含め、英語系、フランス系など各種の幼稚園があり、日本人幼児の多くは英語系の幼稚園に通園しています。日本人学校の詳細につきましては、同校のホームページ(http://

www.cjseg.com)をご参照ください。

2002/03学年度

2003/04学年度

2004/05学年度

生徒数(小学校~高校) 16,271 16,301 16,544

大学生数 1,553 1,615 2,541

非識字率(10 歳以上)% 27.4 27.9 22.3

●エジプト教育関連統計(単位:千人)

編入学金・入学金 授業料(月額)PTA 会費(年額)海外学校傷害保険

US$ 200 US$ 350 120 LE(約 2,400 円) 約 US$ 34

注:授業料はスクールバス代を含む。PTA 会費は 1 家庭当り。

●カイロ日本人学校学費( 2006年5月1日現在)

アレキサンドリア図書館

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LIFE・BUSINESS ENVIRONMENT 生活・ビジネス環境

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BUSINESS【 ビジネス 】

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エジプトはアフリカ大陸の北東端にあり、ヨーロッパ、中東、アフリカ、西アジア地域との交差点に位置しています。この地理的な優位性により同国は国際貿易の要衝の地として、また中継貿易の拠点として経済的・政治的な発展を続け、アラブ世界とアフリカ地域における指導的地位を確立しています。発達した陸海空の輸送網、最新技術を駆使した通信設備、充実した電力・水施設など社会基盤の完備、近代的な法制度の確立、多様化された自由経済、生産的で低賃金の熟練労働者の存在、衣食住を含む快適な社会生活など、エジプトを取り巻くビジネス環境は十分に整備されています。エジプトの政治・経済の中心地は人口約1,700万人を擁する首都カイロです。同地は世界に名だたるピラミッドやカイロ博物館などを有する世界屈指の観光地でもあり、世界各国から多くのビジネスマンや観光客が訪れています。日本とエジプトは、1936年に日本の公使館がカイロに設置されて以来、長年にわたり友好関係を維持しています。両国間の貿易については、日本からは自動車などの輸送機械や一般機械、電気機器、精密機器などが輸出され、エジプトは野菜や果実などの食品、石油・石油関連製品、繊維製品などを日本に輸出しています。2005年の日本の対エジプト貿易額は、輸出が約9億2,000万ドル、輸入が約1億1,800万ドルで、日本の大幅な輸出超となっています。一方、日本政府はエジプトに対し、有償・無償資金の提供などを通じた経済協力を積極的に行っています。資金協力による代表的なプロジェクトとしては、国立文化センター(オペラハウス)、スエズ運河架橋(ムバラク平和友好橋)、カイロ=アレキサンドリア間送電網計画、大エジプト博物館建設計画などが挙げられます。2006年10月時点のエジプト在留邦人数は約1,000人、進出邦人企業は30社前後を数えています。

●言 語アラビア語が公用語です。官庁やビジネス社会では教育水準の高いエジプト人の多くが英語を理解できるほか、フランス語も通用します。

●勤務時間官庁や銀行などの勤務時間は概ね次表の通りですが、ラマダン月(断食月)の1カ月間はこれらの時間帯は多少変更され、官庁をはじめ民間会社などでは勤務時間は1時間半から2時間ほど短縮されます

官  庁 8:30 ~ 14:30 (大半の官庁の週休日は金曜日、土曜日)

銀  行 8:30 ~ 14:00(週休日は金曜日、土曜日)

会  社 9:00 ~ 12:30、13:30 ~ 17:00 (週休日は金曜日、土曜日)

商  店9:00 ~ 22:00(14:00 ~ 17:00 の間、閉店するところもある。週休日はほとんどが日曜日。24 時間営業や年中無休のスーパーマーケットもある)

日本国大使館開館時間 8:30 ~ 16:30(週休日は金曜日と土曜日)

●祝祭日メーデーや革命記念日など国家行事による祝祭日

(西暦)と、イスラムの宗教行事に準拠した祝祭日(イスラム暦)があります。イスラム暦は太陰暦に基づ

いており、その1年間は通常、西暦より11日間短いため、宗教上の祝祭日の西暦対応月日は毎年変動します。2007年に予定されている祝祭日は次表の通りです。

1 月 1 日~ 4 日 犠牲祭*

1 月 7 日 コプト教クリスマス4 月 9 日 春香祭4 月 25 日 シナイ半島解放記念日5 月 1 日 メーデー7 月 23 日 革命記念日10 月 6 日(7 日振替休日) 軍隊記念日10 月 14 日~ 15 日 断食明けの祭り*

12 月 19 日~ 23 日 犠牲祭*

*印の休日は毎年変動する。

●現地時間GMTプラス2時間で、日本との時差はマイナス7時間です。但し、夏時間の期間(4月の最終金曜日から9月の最終金曜日まで)は日本との時差はマイナス6時間になります。

●通 貨 通貨単位:エジプト・ポンド(LE)とピアストル(PT)、      LE1=100PT。 為替レート:US$1=LE 5.7195(2006年12月20日現在)      LE1=20.243円

紙 幣 LE:1、5、10、20、50、100、PT: 5、10、25、50 硬 貨(PT のみ) 5、10、20、25

●オフィス賃借料立地条件やオフィス・ビルの新旧などにより、大幅に変動します。カイロの事務所賃借料の目安は1平方メートル当り月額で30~ 150 LE(約600円~ 3,000円)ほどです。

アレキサンドリア市内

オフィスビル(カイロ市内)

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LIFE・BUSINESS ENVIRONMENT 生活・ビジネス環境

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OTHERS【 その他 】

スーク(市場)

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●食 事エジプトの首都カイロは、様々な国籍の外国人が観光や商用で来訪する一大国際都市です。従ってカイロには、エジプト料理やレバノン料理などのアラブ料理はもちろんのこと、イタリア、フランス、ドイツなどの西洋料理、トルコ料理、中国料理、韓国料理、インド料理、タイ料理、そして日本料理など、世界各国の料理レストランが5つ星の高級ホテル内や街中で開店しています。市内に数件ある日本料理店では、寿司や鉄板焼き、すき焼き、天ぷら、ラーメン、うどん、そばなどの和食が提供されています。エジプトは国民の大部分がイスラムを信奉するイスラム国家ですが酒類は禁止されていませんので、料理と一緒に各種のアルコール飲料を提供するレストランもあります。マクドナルド、ピザハット、ケンタッキーなどの国際的なチェーン店を含め、各種のファストフード店が営業を行っているほか、エジプトは果物が豊富に収穫できるため、オレンジやマンゴーなどの絞りたてのフレッシュジュースを販売しているジュース・スタンドも数多くあります。また、アレキサンドリア、ハルガダなど、地中海や紅海に面した都市では、新鮮な魚介類を使ったシーフードを味わうこともできます。

●買い物カイロには近代的なショッピングモールをはじめカルフールなどの欧米型大規模スーパーマーケット、個人商店、スーク(市場)など、多種多様のショッピング・スポットがあり、食料品や日用雑貨から高級ブランド品にいたるまで、すべての生活必需品が揃っています。米、肉、野菜、果物、魚、加工品など、食料品は種類、量ともに豊富にあり、スーパーマーケットなどで容易に購入することができます。生鮮肉は牛肉や羊肉、鶏肉などのほか、イスラムでは禁止されている豚肉を販売している店や、豚肉を原料としたハム、ベーコンなどを取り扱っている店もあります。日本人にとっては馴染みの薄い鳩やうさぎなどの肉も販売されていますが、鳩肉料理はエジプトの名物料理のひとつになっています。アルコール飲料は、エジプト国産のビールやワインが自由に購入できるほか、外国人(21歳以上)はエジプト入国後24時間以内ならば、政府経営の免税店にて外国産のウイスキーなどの洋酒類を3本(輸入缶ビール1箱を買った場合は2本)まで購入することができます。日本食品は醤油、味噌、豆腐、インスタントラーメンなどがスーパーで販売されていますが、価格は例えば米国製の醤油やラーメンの場合、日本の約3倍ぐらいします。

一方、アラブの伝統的なスークでは、エジプト古来の金銀製品や宝石、絨毯、革工芸品、木工細工、香水、スパイス、刺繍入りの民族衣装など様々な品物が販売されています。カイロのハンハリーリ・スークは数千の店が軒を連ねるエジプト最大のスークで、多くの観光客と地元住民で連日、賑わっています。

●娯 楽カイロには各種スポーツ施設や文化・芸術の殿堂であるオペラハウス、そして映画館、ナイトクラブ、カジノなど、幅広い娯楽施設が整っています。また、「観光・ホテル」の項目に記載の国内の観光地巡りやナイル川クルーズも在留外国人にとっては大きな楽しみのひとつになっています。カイロ市内や郊外では、テニス、水泳、スカッシュ、フィットネス、ゴルフ、乗馬などのスポーツを楽しむことができるほか、紅海や地中海沿岸のリゾート地では、海水浴やスキューバダイビング、ヨット、ウィンドサーフィン、海釣りなど多彩なマリンスポーツを満喫することもできます。ゴルフ場はカイロに7カ所、アレキサンドリアに1カ所、ルクソールに1カ所、紅海沿岸の観光地に3カ所の合わせて12カ所あり、エジプトはゴルファーのパラダイスになっています。カイロには100年以上の歴史を誇る由緒あるゴルフコースがあるほか、ギザのピラミッドを目の前に望みながらプレーできるコースもあります。一方、カイロのオペラハウスでは、ほぼ1年を通し公演されているオペラや音楽コンサート、バレエなどを堪能することができます。

●外国人用住宅在留外国人は一戸建ての住宅またはフラット(アパー

トメント)と称されるマンション型の集合住宅を借りて住んでいます。フラットのほとんどは家具付で在留日本人の多くがフラットに居住しています。フラットを選択する場合、家族構成や生活の利便性、フラットの状況(電話、エアコン、エレベーターなどの設備と駐車場の有無、家具や電気製品の新旧の確認)などを考慮する必要があります。カイロ市内のフラットの家賃は、居住地区や付帯設備などによりかなり相違します。家具付の2~ 3LDKの家賃は、在留日本人が比較的多く居住しているザマレク(カイロ中心部に近いナイル川中州)では月額1,500~ 2,800ドル、西洋人や中国人、韓国人が多いマアディ(カイロ南端の新興住宅地)では、1,300~ 2,000ドルが相場となっています。

新興住宅街スーパー内の野菜・果物売場

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【主要参考資料】The Fourth Quarterly Report 2005/2006 Ministry of Investment

Investment in Egypt 2004Making Progress The Benefi t of Reform Ministry of Foreign Trade

Higher Education in Egypt 2002Ministry of Higher Education

Egypt Year Book 2005Egypt State Information Service

Egypt Land of InvestmentEgypt Open for BusinessEgyptian Free ZonesGeneral Authority for Investment and Free Zones (GAFI)

Annual Report 2004/2005Monthly Statistical Bulletin November 2006 Central Bank of Egypt

ECONOMIC BULLETIN Vol.59 No.1, 2006National Bank of Egypt

POSSIBILITIESEgyptian Petrochemicals Holding Company (ECHEM)

Annual Statistical Report 2006Organization of Arab Petroleum Exporting Countries

EGYPT OIL & GAS Spring/Summer 2006Beyond Communication, S.L.

Egypt Country Profi le 2006Economist Intelligence Unit (EIU)

エジプト 観光ガイド エジプト観光省

エジプト ARC レポート 2005 (財)世界経済情報サービス(ワイス)

【主要参考ウェブサイト】The Egyptian Presidencyhttp://www.presidency.gov.eg

Ministry of Investmenthttp://www.investment.gov.eg

Ministry of Communications & Information Technologyhttp://www.mcit.gov.eg

Ministry of Petroleumhttp://www.emp.gov.eg

Ministry of Transporthttp://www.mts.gov.eg

Egypt State Information Servicehttp://www.sis.gov.eg

Central Agency for Public Mobilization and Statisticshttp://www.capmas.gov.eg

Egyptian National Railwayshttp://www.egyptrail.gov.eg

Egyptian Maritime Data Bankhttp://www.emdb.gov.eg

Central Bank of Egypthttp://www.cbe.org.eg

General Authority for Investment and Free Zoneshttp://www.gafi net.org

National Authority for Tunnelshttp://www.nat.org.eg

Egyptian Holding Company for Airports and Air Navigationhttp://www.ehcaan.com

Egyptian Electric Utility & Consumer Protection Regulatory Agencyhttp://www.egyptera.com

Egyptian Natural Gas Holding Company (EGAS)http://www.egas.com.eg

Egyptian Petrochemicals Holding Company (ECHEM)http://www.echem-eg.com

Cairo & Alexandria Stock Exchangeshttp://www.egyptse.com

Telecom Egypthttp://ir.telecomegypt.com.eg

EgyptAirhttp://www.egyptair.com.eg

Cairo Universityhttp://www.cu.edu.eg

Organization of Arab Petroleum Exporting Countrieshttp://www.oapecorg.org

在エジプト日本国大使館http://www.eg.emb-japan.go.jp

カイロ日本人学校http://www.cjseg.com

在日エジプト・アラブ共和国大使館http://www.embassy-avenue.jp/egypt

日本国外務省http://mofa.go.jp

日本貿易振興機構(JETRO)http://www.jetro.go.jp

国際協力機構(JICA)http://www.jica.go.jp

【写真・資料提供】(順不同)在日エジプト・アラブ共和国大使館エジプト航空東京事務所

平成19 年 2 月発行

発行者(財)中東協力センター(JCCME)〒102-0073 東京都千代田区九段北1丁目14-17 AMINAKA 九段ビル6階TEL:03-3237-6721 FAX:03-3237-8018

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