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1 OCR(過電流継電器)整定での保護協調線図の有効な活用例 整定値の算出と保護協調線図の JW-CAD 作成、OCR 試験の実際 九州産業コンサルタント協会 技術士(電気電子・総合技術監理) 増永秀人 1.はじめに 2.協調を取るための考え方 3.OCR 整定 3-1.限時要素の整定 1)定格容量からの電流値の整定 2)限時特性による動作時間の読み取り 3)協調線図への書き込み、検討 3-2.瞬時要素の整定 3-3.整定による OCR 特性の変化 3-4.試験結果例 3-5.小容量受電設備の整定例 3-6.直列 OCR の整定例 4.試験の実際 4-1.試験準備 1) 事前準備 2)試験用電源 3) 本体調整(時限・VCB 動作電源・CTD4) 試験電流の入力(テスト端子、プラグ) 5) 単体試験と組合せ試験 4-2.特性試験(電力使用申込書記載事項の確認) 1)最少動作電流(短絡感度確認) 2)限時特性 3) 瞬時電流 4)瞬時時限(事故除去時間確認 瞬時 2 段特性) 5) VCB 動作時間 4-3.その他 1)レバー10 の試験 2)試験機の電流設定 5.関連事項 5-1CT 過電流定数(n値) 5-2電力変電所アナログ OCR との協調 5-3短絡事故時の動作PF、低圧 MCCB を含む受電システムとしての考え方) 1)高圧短絡時の現象及び協調 2)高圧引込 CV ケーブル等のサイズ・容量 3)変圧器二次直下短絡事故(配電盤 MCCB 遮断容量 Icu・太陽光設備での焼損) 4)スイッチ類の動作協調 5-4OCR での LBS トリップ(小容量受電設備) 1)目的(PF G 値) 2)電力使用申込書での短絡感度 3OCR の整定(PF 動作との保護協調、小電流遮断、G 値との関係) 4LBS OCR の試験(受電用、類似の DGR 用等の実務) update 2019/9/130.6A 定格容量 0.01 0.001 0.1 1 10 0.002 0.004 0.006 0.02 0.04 0.06 0.2 0.4 0.6 2 4 6 10 20 100 1000 10000 200 400 600 2000 6000 4000 40 60 20 1000 10000 200 2000 6000 4000 40 60 100 10 (秒) 400 600 720A 360A (配変OCR) 一次換算電流 (A) 35A 変圧器突入最大電流 変圧器最大電流×10 306A 350kVA 整定値

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OCR(過電流継電器)整定での保護協調線図の有効な活用例

整定値の算出と保護協調線図の JW-CAD作成、OCR試験の実際

九州産業コンサルタント協会

技術士(電気電子・総合技術監理) 増永秀人

1.はじめに

2.協調を取るための考え方

3.OCR整定

3-1.限時要素の整定

1)定格容量からの電流値の整定 2)限時特性による動作時間の読み取り

3)協調線図への書き込み、検討

3-2.瞬時要素の整定

3-3.整定による OCR特性の変化

3-4.試験結果例

3-5.小容量受電設備の整定例

3-6.直列 OCR の整定例

4.試験の実際

4-1.試験準備

1) 事前準備 2)試験用電源 3) 本体調整(時限・VCB動作電源・CTD)

4) 試験電流の入力(テスト端子、プラグ) 5) 単体試験と組合せ試験

4-2.特性試験(電力使用申込書記載事項の確認)

1)最少動作電流(短絡感度確認) 2)限時特性 3) 瞬時電流

4)瞬時時限(事故除去時間確認 瞬時 2段特性) 5) VCB動作時間

4-3.その他

1)レバー10の試験 2)試験機の電流設定

5.関連事項

5-1.CT過電流定数(n値)

5-2.電力変電所アナログ OCRとの協調

5-3.短絡事故時の動作(PF、低圧MCCBを含む受電システムとしての考え方)

1)高圧短絡時の現象及び協調 2)高圧引込 CVケーブル等のサイズ・容量

3)変圧器二次直下短絡事故(配電盤MCCB遮断容量 Icu・太陽光設備での焼損)

4)スイッチ類の動作協調

5-4.OCRでの LBSトリップ(小容量受電設備)

1)目的(PFの G値) 2)電力使用申込書での短絡感度

3)OCRの整定(PF動作との保護協調、小電流遮断、G値との関係)

4)LBS用 OCRの試験(受電用、類似の DGR用等の実務)

(update 2019/9/1)

30.6A

定格容量

0.01

0.001

0.1

1

10

0.002

0.004

0.006

0.02

0.04

0.06

0.2

0.4

0.6

2

4

6

10 20 100 1000 10000200 400 600 2000 6000400040 60

20 1000 10000200 2000 6000400040 60 10010

時間

(秒)

400 600

720A360A

(配変 OCR)

一次換算 電流 ( A)

35A

変圧器突 入最大電 流

変圧器最 大電流× 10

306A

350kVA

整定値

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1.はじめに

OCR(過電流継電器)の整定では保護協調線図を作成すると、動作状態が図として把握

でき、わかりやすく、より安心な考察ができます。検討は高圧電流を横軸、時間を縦軸とす

る両対数目盛の用紙に制限要素と OCR の動作特性を書き込むことにより行います。実用的

な整定のための考え方を、具体例を使用して、作図方法と併せてご説明します。用紙は CAD

等で簡単に作成することができます。御参考のために私が使用している JW-CADで作成し

た用紙を添付しています。ホームページへ戻り、JW-CAD 用資料、をご覧ください。本文

での作図例は JW-CAD使用ですが、手書きでも十分に対応できます。PDF用紙も添付して

います。

本稿では「6kV高圧受電設備の保護協調 Q&A」のデータを多用しています。末尾に詳細

をご紹介します。本文中では「末尾参考文献」として表示しています。

OCR の安全な整定のためには、確認のための試験方法、低圧部を含む受電システム全体

の協調も考える必要があります。4節、5節の関連事項をご参照ください。

2.協調を取るための考え方 topへ

保護協調を行うために考慮すべき制限要素には 4つがあります。

・条件① 受電設備(変圧器容量)の定格電流までは動作しないこと。

・条件② 電力配電所の 51リレーより先に動作すること(波及事故防止)。

第二キュービクルの場合は、第一より先に動作すること(停電部限定)。

・条件③ 受電時の変圧器突入電流で動作しないこと(投入時の誤動作防止)。

・条件④ VCB 二次側の特性と協調していること。

通常は条件①~③を考えます。④は第二キュービクル等があり二次側にVCBがある場合、

LBS用 PFに G75程度の大容量のものがある場合などに考慮する必要が出てきます。OCR

の限時要素(整定電流とタイムダイアル TD)、及び瞬時要素の整定を行い、OCRの動作特

性が各制限要素を満足するように調整します。それぞれの要素は、電流を高圧側に換算して

考えます。

例として 1250kVA、OCR 用 CT 比が 30 である受電設備について考えます。それぞれの

制限要素は次のようになります。④については、別途考察を行います。

・条件① 変圧器容量 1250kVAより、定格電流(高圧)は 1250/6.6/1.732≒110Aとなる。

・条件② 配電所 OCRは現状では段特性になっている。小容量配電線と大電流配電線で限

時値は 360A と 720A、瞬時値は 720A と 1420A に設定されている。瞬時時限は 0.5sec と

0.2secである。小容量配電線特性を満足させれば安全である。

・条件③ 受電時等の変圧器突入電流は定格電流の 10倍、0.1secを採用すれば安全である。

この場合は①の 110Aの 10倍で 1100A になる。コンデンサ突入電流もあるが、0.002secで

あり、OCRの動作より極めて短い時限であるため、通常は考慮していない。

※ 変圧器突入電流については、末尾参考文献 P.88、及び日本電気技術者協会電気技術解

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説講座の機器材料(http://www.jeea.or.jp/course/contents/07304/)に説明があります。

条件①~③を、用紙に書き込むと下図のようになります。制限要素の領域を含まない、緑

線ハンチング部が整定可能領域になります。

0.01

0.001

0.1

1

10

0.002

0.004

0.006

0.02

0.04

0.06

0.2

0.4

0.6

2

4

6

10 20 100 1000 10000200 400 600 2000 6000400040 60

20 1000 10000200 2000 6000400040 60 10010

時間

(秒)

400 600

720A360A

一次換算電流 (A)

定格電流

110A

小容量配電線 大容量配電線

投入時の誤動作防止

定格電流まで使用

波及事故防止

3 定格電流× 10

(配変 OCR設定)

0.2sec

0.1sec

最大変圧器突入電流

OCR設定可能域

1440A0.5sec

※ここでは定格電流を変圧器全容量から三相として算出しています。一般的には動力容量

が電灯容量より十分に大きく、変圧器電流の位相差からも、実用上では対応できると考えて

います。しかしながら 300kVA 未満での LBS 用 OCR の場合等は、電灯と動力のそれぞれ

の電流を考えたほうが良い場合があります。5-4節で説明します。

3.OCR整定 topへ

3-1.限時要素の整定

1)定格容量からの電流整定

高圧側電流値で定格電流以上になるように整定します。定格電流が 110Aなので、CT二

次側電流は CT 比 30 より、>110/30=3.6A が条件となります。一つ大きいタップ値である

4Aに整定します。高圧側電流は 4×30=120Aになり、定格運用でも動作することはありま

せん。

※ 一般的に、VCB 用 OCR が設置される 300kVA 以上の場合は設備余裕が大きく、実使

用デマンドは概ね 2/3以下です。同時起動する直入れの大容量電動機が多数ある等の特殊な

場合でなければ運用中に定格電流を超過する場合は無いと考えています。線図を作成する

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と、定格電流と OCR 特性の関連からも想定できます。300kVA未満で LBS用 OCRの場合

は 5-4節に説明します。

電流整定値は 3A~5Aが一般的です。測定用CT二次電流を使用する電流引き外し式VCB

の場合、トリップコイル電流が 3A未満では不安定なことがあるとなっています。電圧引き

外しの場合は整定 3A未満でも可能ですが、以後の年次点検試験時等に迷い?を生じること

があります。5A 超過は CT 誤差及び負担の問題があり、引き外し方式によらず推奨できま

せん。新設時は設備容量を勘案しての CT比となっていますが、増減設備の場合には CTの

更新も必要です。

2)限時特性による動作時間の読み取り

タイムダイアル(TD)と整定値倍率による動作時間を、メーカカタログによる特性図で

読み取ります。動作時間は、TD毎に整定値の倍率で表されています。三菱MOC型を例と

して考えます。

時限特性には定限時、反限時、強反限時、超反限時があります。定限時は整定値以上では

動作時間は同じ、反限時は整定電流に対する倍率(例、横軸 2は 200%)で動作時間が減少

します。反限時にも三通りがあり、左側が超反時限、右側が強反時限です。超→強→反で立

下りが緩やかになります。左は超反限時、右は強反限時の特性です。

MOC 型では 4 種類が採用可能ですが、限時特性が固定されている(オムロン K2CA で

は反限時)型があります。動作時間もメーカ毎にわずかですが異なることがあります。使用

する OCRのメーカ、型式を確認することが必要です。

右図は強反限時特性の拡大です(私は習慣的に強反限時を使用しています)。動作時間は

300%での動作時間は TD=0.5では 0.34sec、TD=1では 0.69secと読み取ることができま

す。限時等の設定方法は 4-2-1)事前準備(OCR本体設定)の節で説明します。

注意点は、横軸の単位は限時整定値の倍率であることです。TD=1の場合、整定値 3Aで

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も、整定値 5A でも、300%では 0.69sec で同じです。誘導型では異なることがありました

が、静止型では全く同じです。

3)協調線図への書き込み、検討

TD と限時特性を仮決めして、整定電流の 200%、300%、500%等の値を読みとります。

三菱MOC型で、強反限時、TD=0.5の場合 200%で 0.75sec、300%で 0.34sec、500%で

0.16sec、700%で 0.1sec と読み取ることができます。4A 整定、CT 比 30 の場合の高圧電

流、動作時間を表にまとめると下表のようになります。150%があれば、整定値付近が書き

やすくなります。200%の高圧電流換算は 4×30×2=240Aになります。

150% 200% 300% 500% 700%

高圧電流(A) 180 240 360 600 840

時間(sec) 1.35 0.68 0.34 0.16 0.11

横軸を高圧電流、縦軸を動作時間として、電流整定 120Aに対して漸近線になるように作図

します。反限時での TD=1、超反限時での TD=0.5を含めて、3例を作図すると下図のよう

になります。TD 整定の差による違いが分かります。強反限時 TD=1 では条件①の電力変

電所静定の小容量特性にかかり、超反限時 TD=0.5では、変圧器突入電流特性にかかる恐れ

があることがわかります。強反限時 TD=0.5が最適となります。

三菱、東芝殿等、取説に計算式が示されている場合は、詳細な値を計算により求めること

0.01

0.1

1

10

0.004

0.006

0.02

0.04

0.06

0.2

0.4

0.6

2

4

6

20 1000 10000200 2000 6000400040 60 10010

時間

(秒)

400 600

720A360A

定格電流

110A

限時整定電流

120A

最大変圧器突入電流

小容量配電線 大容量配電線

超 TD=0.5

強 TD=1

強 TD=0.5 1440A

0.2sec

0.5sec

0.1sec

(配変 OCR)

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ができます。表で示した動作時間は三菱MOC型について、計算式で求めたものです。参考

に同型の TD及び限時特性の組み合わせでの動作時間データを示します。

150% 200% 300% 500% 700%

強反限時 TD=0.5 1.35 0.68 0.34 0.17 0.11

強反限時 TD=1 2.7 1.35 0.68 0.34 0.23

超反限時 TD=0.5 3.2 1.33 0.5 0.17 0.083

同一特性では動作時間がほぼ TDに反比例していることもわかります。

3-2.瞬時要素の整定

受電時の定格電流の 10倍とされている変圧器突入電流による誤動作がないように整定し

ます。ここでは定格電流 110Aより 1100A 以上になります。通常は限時整定値の 10倍が採

用されます。限時整定値を 4Aとすれば、40Aが瞬時整定値となり、例では CT比 30より、

40×30=1200A(>1100A)が高圧側電流となります。瞬時動作時間は定限時特性であり、

限時の特性には関係なく、0.05msec一定になっています。協調線図は瞬時整定を超えた時

点で 0.05secで動作するものとして作成します。瞬時要素を書き込むと保護協調線図が完成

します。

参考のために、条件④

として、第 2受電などで

使用されることの多い

LBS用の G75PFの動作

特性を記入しています。

絶対値と時限を合わせて

考えると、母線短絡の場

合は PF が、過負荷の場

合は VCB が先に動作す

ることがわかります。こ

の考え方は、OCR での受

電LBSトリップ(5-4節)

でも使用されています。

※ 電力配電線 OCR の

瞬時時限整定は 0.2secですが、慣習として受電側での VCB組合せで 0.18sec以内に動作す

ることが要求されています。差分の 0.02secは誘導円盤型 OCR の慣性特性(誘導型で回転

を始めた円盤が急には停止できない影響)をみたものです。OCR 単体が 0.05sec 動作であ

れば、VCBの 3サイクル(60Hzでは 0.05sec)を合わせて連動 0.1secの動作となり、保護

720A360A

(配変 OCR)

定格電流

110A

限時整定電流

120A

1200A

瞬時電流整定

最大変圧器突入電流

G75特性

小容量配電線 大容量配電線

実際?

超 TD=0.5

強 TD=1

強 TD=0.5

波及事故防止

投入時の誤動作防止

定格電流まで使用

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協調<0.18secと、電力使用申込書の事故除去時間 0.1secを満足します。実際は OCR、VCB

共に、測定例 3-5に示すように、より早く動作します。

※ 超反限時・TD=0.5 では変圧器突入特性にかかっています。実際は図の角が落ちた形

であるとされています(末尾参考文献 p.90に詳細説明)。超反限時、TD=0.5での使用も可

能と考えられます。

1500kVA 超過の場合は定格電流の 10 倍が 1300A 以上になります。強反限時でも配変

OCR 瞬時設定値 1440A と、変圧器突入電流特性を両方ともに交差しないようにすること

が極めて困難になります。変圧器突入電流で OCR誤動作の可能性があるのは、年次点検後

と系統瞬時停電後の復電時です。私は自所短絡時の系統波及防止を優先と考えて、どちらに

もかかる場合は、動作特性を変圧器突入電流特性に交差させる方が安全であると考えてい

ます。保護協調線図の作成で、変圧器突入電流によるトリップ現象の可能性を理解・想定し

ておけば、再度の投入で受電できます。

瞬時特性が配変特性と同様な 2 段(3 段)となっている OCR が使用され始めています。

設定方法の考え方について、4-2節で追記しています。

※ 本来は OCR整定のみではなく、受電時の対応を、第二キュービクルに電動バネ型 VCB

を採用して 27リレーでの自動投入シーケンシャル制御を行う等のシステムとしても考える

べきです。しかしながらほとんどの場合、主任技術者が OCR整定を行うときには設備仕様

は決定されており、OCR整定のみでの対応が要求されます。

3-3.整定による OCR特性の変化

OCR特性の各要素の整定値調整による変化をまとめると下図のようになります。

・限時特性(超、強、反限時)の

選択で立下り特性が変化しま

す。メーカによっては選択不可

です。

・限時(A)設定で全体が左右に

動きます。

・TD(無名数)設定で全体が上

下に動きます。動作時間は概ね、

TDに反比例します。

・瞬時(A)設定で瞬時の動作位

置が変化します。動作時間は固

定です。

それぞれの要素の調整による

特性変化を考えて、OCR 動作特性を許容範囲に納めることが保護協調線図による OCR 整

超 TD=0.5

強 TD=1

強 TD=0.5

限時設定

瞬時設定限時特性

限時 TD

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定の狙いです。OCR 特性の設定の具体的な例は、4.試験テクニックの事前準備の節に記述

します。

3-4.試験結果例

1250kVA での試験結果例を下表に示します。単体試験を行うと、ほぼ公称値の値が得ら

れます。組合試験結果と比較することで、VCB の動作時間を判定しています。試験方法は

次節の試験テクニックをご参照ください。

OCR単体動作時限測定記録

R相 T相

200% 300% 500% 700% 200% 300% 500% 700%

使用値 0.664s 0.346s 0.163s 0.107s 0.660s 0.346s 0.163s 0.108s

公称値 0.675s 0.338s 0.169s 0.112s 0.675s 0.338s 0.169s 0.112s

公称値はメーカ計算式による値です。動作時間は、いずれも公称値の±10%以下です。協調

線図を作成するためには 3点以上の測定が必要です。

瞬時測定記録

R相 T相

電流整定 20A 20A

最少動作 20A 19.5A

動作時間 0.035s 0.035s

協調線図を作成するためには最少動作値と動作時間の測定が必要です。本来は設定値で行

うべきですが、使用している試験用発電機 16Aの容量により 20Aに変更して試験を行って

います。ほとんどの場合 9Aでも可能です。

VCB組合限時測定記録

R相 T相

時間整定 300% 300%

動作時間 0.374s 0.381s

VCB動作時間=組合動作時間―単体動作時間≒0.04s<0.05s

300%での確認で VCBの公称動作時間以下での動作が確認できます。

3-5.小容量受電設備の整定例

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小容量受電設備での整定例をご

紹介します。設備容量 350kVA、CT

比 10、OCR は MOC 型です。限時

整定は 3.5A、条件②と③の間の余裕

があるため TD=1としました。山間

部であったため、小容量配電線での

安全対策として 360A 前に瞬時動作

するように瞬時も 35A(高圧電流

350A)で設定しています。高圧側電

流で、360A、720A、1440A を意識

して整定されている例は、良く見か

けます。

更に小容量である 300kVA以下の

LBS 用 OCR については 5-4 節で説

明します。医療関連設備などでの単相変圧器が大きい場合は、単相と三相の容量配分による

一次電流の違いにも、同様の注意が必要です。

3-6.直列 OCR の整定例

二次変電(第二キュービクル等)にも VCBがあり、一次(受電キュービクル等)の VCB

と直列になる場合は、所内でも OCRの協調が必要となります。受電での整定は、条件④の

場合となり、二次 OCRを受電 OCRより早く動作させることが原則です。数値計算のみで

の確認は困難ですが、協調線図作成で安心な整定ができます。

全体(受電)容量 1500kVA、第二

キュービクル(二次)容量 400kVA

の例です。線図より、二次 OCRが受

電 OCR より早く動作することが分

かります。受電、二次共に強反限時

特性ですが、受電は配変特性より早

くするため TD=0.5、二次は変圧器突

入領域との交差を防ぐためにTD=1

として特性を持ちあげています。3-3

で説明した方法です。

受電と、第二キュービクルの容量

差が少ない(二次キュービクルの容

量が受電キュービクルより大きい)場合等は、限時特性を変えて対応する場合もでてきます。

30.6A

定格容量

0.01

0.001

0.1

1

10

0.002

0.004

0.006

0.02

0.04

0.06

0.2

0.4

0.6

2

4

6

10 20 100 1000 10000200 400 600 2000 6000400040 60

20 1000 10000200 2000 6000400040 60 10010

時間

(秒)

400 600

720A360A

(配変 OCR)

一次換算 電流 ( A)

35A

変圧器突 入最大電 流

変圧器最 大電流× 10

306A

350kVA

整定値

350A

0.01

0.001

0.1

1

10

0.002

0.004

0.006

0.02

0.04

0.06

0.2

0.4

0.6

2

4

6

10 20 100 1000 10000200 400 600 2000 6000400040 60

20 1000 10000200 2000 6000400040 60 10010

時間

(秒)

400 600

720A360A

(配変 OCR)

一次換 算電流  ( A)

32.8A35A

二次全 電流 二次限 時制定

1600A

瞬時電 流整定瞬時電 流整定140A

受電限 時整定

330A

二次特性

受電特性

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4.試験の実際 topへ

私の OCR 試験の方法を、高圧受電設備の竣工試験を例として御紹介します。OCR 動作

と併せて、電力使用申込書の事故除去時間と短絡感度の確認も目的としています。

4-1.試験準備

1) 事前準備

試験前に設備容量、CT比、OCR型式を調査して、OCR整定を含めて事前に検討してお

きます。VCB付属で 1/10電流での試験を行うものもあります。限時特性、瞬時特性の設定

が可能な型が多くなっています。限時特性が異なると、限時整定が同じであっても動作時間

は異なる物になります。協調線図の作成で安心ができます。

OCR の特性はメーカホームページの取説等で調べることができます。試験時には、試験

に専念することが必要です。保護協調用のための難しい装置とは考えず、内部に接点がある

単純な装置、例えば電流指針に接点が付いたメータリレーと同等と考えて試験作業を行い

ます。

2) 試験用電源

竣工試験では試験用電源(携帯発電機)使用が一般的です。時限測定で電流をステップ状

に変動させる場合は、追従ができないので、エコモードは切っておきます。試験開始前に暖

機運転をしておくと安定した試験ができます。電源の電流波形はあまり問題になりません

が、工事用電源は電圧変動で測定値が不安定になることがあります。仮設受電で ELB が使

用されている場合、入力と出力が絶縁されていない試験機(IPR等)を使用すると、ELBが

試験で動作し、他所を含めての停電となります。

3) OCR本体調整

・本体設定

リレー本体の試験前の設定を三菱 MOC 型の場合を例に記述します。電源周波数と限時

特性を OCR表面のディップスイッチ(ドライバで示してい

る部分)の上下で、下側の説明に従い設定します。他の型式

の場合も同様のディップスイッチがついています。

出荷時には時限が超反限時に設定されています。異なる

時限特性を使用する場合は、切り替を行います。図での設定

はディップスイッチ SW1で周波数 60Hzに、SW3・4で強

反限時に設定しています。ディップスイッチ上の「表示切

替」ロータリースイッチは、最少動作電流測定での始動確認のために時間経過に切り替えて

おきます。限時電流、タイムダイヤル、瞬時電流はスイッチの矢印に注意して整定値に合わ

せます。細いマイナスドライバーで切り替ができます。

オムロン K2OC 型とフジ QHA 型は限時特性のみでなく、次節 4-2 で説明する瞬時特性

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の 2 段又は 3 段の設定が必要です。ディップスイッチの個数と配置は異なりますが、いず

れも下側についている説明に従って切り替えができます。オムロン K2CA 型では反限時

(DO 特性)に固定なので調整はできません。オムロン K2OC 型では既設更新の場合に役

立つ、K2CA型の DO特性の選択もできます。

・VCB動作電源(コンデンサトリップ)

OCRには電流動作型(MOC-A1T等)と電圧動作型(MOC-A1V等)が

あります。5)節の組合せ試験では、電流動作型は試験電流で動作するの

で動作電源は不要です。電圧動作型は動作電源が必要です。ほとんどの

高圧受電設備ではバッテリーによる DC110V制御電源がないため、コン

デンサトリップデバイス(CTD)が使用されます。

CTD は P1・P2 に入力された AC 電源を DC としてコンデンサに蓄え、出力します。一

般的には P1・P2 は VT 二次側直結で、充電後は電源喪失後も一定時間は切動作が可能で

す。試験の回数には対応できないので、試験時には CTD 裏面の P1・P2

端子の AC 配線を外し、図のように本体単独で AC100V を連続供給しま

す。クリップをつけている端子が P1・P2で、横の端子二つが DC出力で

す。作業性が悪いところが多いので、端子台を挟み込んで接触不良になら

ないよう、ネジ頭を少しだしておきます。誤結線による設備損傷、VTで

の逆圧等の重大な障害の防止のためにヒューズ、プロテクトリレー等の各種の保護が付属

した市販の試験機の補助電源での AC供給が安全です。例えば、DC出力側に試験機の補助

電源から AC100V を供給する(とんでもない間違いです)と、即時に試験機の保護動作に

より停止します。試験用発電機も瞬間的にうなり音が増えるので、そのまま続けると損傷す

ると考えられます。

接続が正常であると、補助電源活かしで、表面の充電表示ランプが点灯します。使用中の

設備では薄く点灯することが多いので注意が必要です。活かした後のCTD直流側にはVCB

動作用の DC141V が残ります。解結線は放電スイッチを押して、充電表示ランプ消灯を確

認して行います。

太陽光設備等で、OCR に OR 条件で手動復帰型 OVGR があり、リセットを忘れると、

VCB 組合せ試験では OCR が動作しない場合があります。VCB のトリップコイルで CTD

のコンデンサが短絡のままとなり、充電ができない状態であると考えら

れます。リセットしてしばらくすると、DC電圧が戻ります。CTDと類

似した形状の、リレー電源に使用される DC24V 電源装置(AC/DC 変

換機)が使用されていることがあるので、表示の確認が必要です。

4) 試験電流の入力

試験電流の入力には各種の方法があります。大きく分けて、テスト端子での分離操作を

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行う場合①と、行わない場合②があります。OCRと CT周り制御線の三線配線を、電圧動

作型 OCRを例として下図に示します。電流動作型でも試験電流入力部については同様で

す。電流入力は汎用試験機での試験コード R・C(アースサイド又はコモン)・Tを使用す

るものとしています。

①-1 停電中には、盤面のテスト端子の短絡片を外して一次と二次を分離し、二次端子(リ

レー側端子)から入力します。安全のために一次端子(CT側)相間は短絡します。一次側

の確認は EDが取られているかで行います。

テストプラグを使用する場合もあります。右図は 3

端子型の結線です。一次側はあらかじめ短絡バーを

取り付けておきます。プラグの差し込みで一次側の

短絡、一次二次間の開放、二次側端子の接続が行われ

ます。インタロック用の端子が追加された、4端子型

もあります。

①-2 盤裏面で TT二次側 C11・C21・C31の端子を解線して、そ

れぞれ試験コード R・C・Tを接続します。プラグ式でプラグが準

備できていない場合等の方法です。右図の解線している端子です。

②-1 解線またはテスト端子(プラグ)での分離操作を行わずに、

TTの一次側(又は二次側)に試験コードを接続します。高圧用 CT

の二次側から見たインピーダンスが著しく大きく、試験電流の殆ど

はリレーに流れることを前提にしています。

②-2 高圧用 CTの R 相 K端子に試験コード R、T 相 K端子に T、EDに C を接続する方

法です。試験電流の配分は②-1同様です。

①-1の方法が基本であると考えています。試験コードの取付け、作業中のはずれの有無、

解結線の不良(作業忘れ、ネジ締め付け不良による発熱)等、作業の全てを盤表面で行

い、直視確認できます。竣工、年次(自電源・他電源)に関係なく、同一の操作での試験

ができます。テスト端子では一次端子(CT側)相間の短絡を習慣化しておくと、停電試

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験の後、復帰操作を忘れて受電しても、一次二次間に短絡片を取り付け、一次端子の相間

短絡を外して復帰することもできます。テスト端子(テストプラグ)は簡易化のみでな

く、試験作業での安全経験を積み重ねて現在の形で使用されているものと考えられます。

②-2 は CT 端子から OCR までの配線確認もできますが、高圧機器の接地配線等を含めて、

盤メーカの検査範囲であると考えています。

結線後 1A程度の電流を R相、S相に流して電流計指示を見ることで、配線の確認ができ

ます。5Aを流すと、通常は電流計が 100%の指示となります(メータ試験)。確認後、電流

計保護のため、ASを切位置として短絡します。

5)単体試験と組合せ試験(トリップ接点の配置)

・単体試験

リレー単体での限時および瞬時の動作時間を測定

します。試験機トリップ接点をリレー裏面の補助接

点 a1・a2(MOC 型の場合・右図の配列)又は a・

c(K2OC 型)等に取り、VCB は切位置のまま行い

ます。VCB 動作は無いため電圧動作型であっても

CTD への電源供給は不要です。電流動作型でも VCB トリップコイルの駆動電圧が不要で

あるため、試験用発電機は 9A 型でも十分に対応できます。試験毎の VCB再投も不要なの

で、試験時間も短くなります。

※ 単体試験のトリップ信号は厳密にはリレーの T1、T2(電圧トリップ型の場合)ですが、

補助接点でも支障のない値が得られます。T1・T2は配線済なので、できるだけ外したくな

いという考えです。外さなければ、再接続時のミスは発生しません。補助接点が「高圧過電

流」等の警報引出に使用されている場合は解線する必要があります。

・組合せ(連動)試験

VCB 開極時間を含めての時限を測定します。試験機トリップ接点信号を VCB 主回路一

と二次に取ります。OCR 単体試験が終了している場合は、組合せ試験は通常、300%又は

500%で R 相、S 相それぞれ1回ずつになります。一回毎に、VCB を再投入する必要があ

ります。

※ トリップコイルの定格電流は 3A なので、電流引き外し方式で限時整定が 3A 以下

(本来は不適です)の場合は、3A としての組合せ試験を行います。電流動作型 VCB では

トリップコイルの駆動電圧も必要であるため、試験機の電源抵抗を抜きすぎると、OCR が

動作してもチチチと音がする(VCB からのチャタリング音)だけで VCB が動作できない

場合があります。出力電圧計がある場合は電流設定時に 30V以上とすれば安全です。VCB

トリップコイル抵抗を 10Ωとすれば、コイル電流が 3A以上になります。

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4-2.特性試験(電力使用申込書記載事項の確認)

最小動作電流(短絡感度)、瞬時動作電流、限時特性、瞬時時限(短絡事故除去時間)を

測定して OCRが良好であることと、電気使用申込書に記入した保護協調欄の数値の確認を

行います。アンダーライン項目が電力使用申込関連項目です。瞬時動作電流と限時特性は使

用申込書では要求されていません。波及事故防止と設備特性を考えての主任技術者の判断

に任せられていると考えています。試験の結果により、VCB 動作時間を推定することがで

きます。

1)最少動作電流(短絡感度の確認)

限時整定タップ値での動作開始を確認します。誘導型(新規に設置されることは無い)で

は、円盤が回転を始める電流(ピクリと動く、実際はなかなかわかりません)が始動電流で

す。据付・保全不良等で発生する可動部の機械的な抵抗により、始動しても円盤が途中停止

し接点閉にならない(動作しない)ことがよくあります。若干の電流増を行い、接点が閉じ

る電流を最少動作電流とします。

静止型では、途中停止はないので、始動電流=最小動作電流になります。リレー表面の始

動表示の点灯、又は時限表示ディスプレイ等のカウントが開始する(0が表示される)電流

を読みます。0.1A 単位で読み取るためには、整定値付近では試験電流をゆっくり増加させ

ます。試験電流 1A 程度で「RUN」または「運転」等の表示が点灯することを確認しておけ

ば、安心して試験ができます。表示部は直射日光等で見にくいことも多く、周辺を覆う等の

準備が必要です。

タップ値で電力使用申込の短絡感度が算出されます。4A整定で CT比 30であれば、4×

30×6600×1.2(CT誤差 20%を見込む)≒0.95MVAになります。限時タップ(例えば 4A)

ではなく瞬時タップ(例えば 40A)で計算しても、電力変電所の感度以下であれば、受領し

てもらえるようです。工事店等で異なった値で申請されている場合も、1A以内の整定変更

であれば、竣工時に再調整してもトラブルにはならないようです。

2)限時特性

電力使用申込書の記載事項ではありません。試験電流をステップ状に変化させて動作時

間を測定します。汎用試験機での電流設定方法は 4-3-2)節で説明します。単体試験終了後

に VCB組合せ(連動)試験を行えば効率的です。

※ 年次点検は、異常が発生していないかが目的であり、一般的には、組合せ試験のみで行

います。トリップ信号も VCB 端子直接ではなく、振動検出(G トリップ)、自己電源によ

る試験機の電源喪失等でも行われます。

3)瞬時電流

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瞬時動作する電流を測定します。一般的な限時整定では、電流を試験値まで増加中に、限

時要素が先に動作します。TD 整定を最大値にしておく、または OCR をロックして測定し

ます。誘導型では瞬時用コイルと限時用コイルが別途でしたが、静止型では同一であるため、

OCRリレー下部のターゲットで判断します。

4)瞬時時限(短絡事故除去時間 0.1secの確認)

OCRが動作して VCBが開くまでの(組合せ)時間

が短絡除去時間になります。OCR単体の時限に次項の

VCB開極時間を加えて求めます。

三菱 MOC の場合、瞬時動作時限は整定値の 150%

(20A整定では 30A)で試験しています。メーカ取説

での瞬時特性は、右図のようであり、150%で 50msec

以下(定限時特性)になっています。上述のように、

単体 0.035secであれば VCBの公称 3サイクル(60Hz

では 3/60sec で 0.05sec)と併せて 0.1sec 以下である

ことが確認できます。

VCB の最大目的である所内短絡時の保護を考えると、瞬時時限は保護協調線図の作成に

必要です。年次点検の瞬時要素試験では最少動作電流ではなく、時限測定を必須としている

場合もあります。「0.05secで動作するはずだ」との考えが妥当であれば、限時特性の測定も

不要になります。

※ 瞬時 2段特性を持つ OCR

富士電機製 QHA型・オムロン製 K2OC型では、瞬時特

性が 2 段及び 3 段の特性をもっています。2 段では右図の

ように配変用 OCR と同様の形状で、100%~160%は

0.09sec、160%以上が 0.05secとなっています。三菱MOC

型等とは異なり、瞬時の時限測定は 160%を超える値で行

う必要があります。計算が簡単な 200%が良いと考えてい

ます。竣工試験では併せて 150%を行えば段特性の確認が

できます。

瞬時動作は厳密には、160%までは VCB の 0.05secを加

えると公称 0.14secになり、事故除去時間 0.1secを満足で

きません。(私の測定例では、150%での VCB 組合せ試験

では 0.11secでした。)

電力使用申込書の感度計算に瞬時整定値を使用する場合は、1.6倍を使用すべきか?です

が、系統の短絡感度は需要家よりはるかに大きいので、整定値をそのまま使用しても実用上

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は十分だと考えています。自所での短絡時の電流は、5-3節で記述します。

ディップスイッチで選択可能な

3 段特性での保護協調例を下図に

示します。赤線で示される 3 段特

性は 50%~100%までの 0.31sec

動作が 2 段特性に追加された形と

なっています。2 段特性と共通の

100~160%・0.09sec は変圧器突

入電流でのミストリップの防止と

して使用しています。瞬時整定値

を変圧器定格電流の 10 倍以下と

しても、重なりを実用上では問題

にならない程度まで少なくすることができます。系統復電後の受電を 27リレーにより電動

バネ VCBの自動投入で行う設備では、特に有効になると考えられます。3段特性の 50%・

0.31secは配変特性との協調に使用しています。限時特性のままでは配変特性と重なる場合

も、瞬時動作により対応することができます。自所内での OCR 直列配置の場合の特性の重

なりを避けるためにも使用できます。

※ 3段(2段)特性が保護協調でどのように作用するかは、協調線図の作成で理解するこ

とができます。保護協調線図作成の必要性が更に高くなっていると考えられます。

5)VCB動作時間

OCR単体と VCB 組合せ試験の時間差で、VCB動作時間の算出ができます。例えば、限

時特性の 300%試験で、単体 0.331sec、組合せ 0.365 であれば、差の 0.034sec が VCB の

動作時間となります。60Hzでの VCB公称動作時間 3サイクル(=0.05sec)を満足してい

ることが分かります。1)~4)項までを単体で行い、トリップ接点入力を移動して、組合せ

試験を 300%または 500%で行うと、VCB配線の良好確認と併せての確認ができます。

瞬時動作でも同様の判断ができますが、安定に瞬時動作を行わせるためには 4)に記述す

るように、瞬時整定の 150%以上の試験電流が必要です。20A 整定であれば 30A 以上にな

ります。試験用の携帯発電機では、動作が不安定になる場合があります。

※ PFの瞬時動作時間

PF-S 型の場合、かつては短絡事故除去時間として 0.01sec が使用されていました。限流ヒ

ューズでは半波遮断が公称値であるため、50Hzでの場合の 1/50secの 1/2である 1/100sec

が使用されていたと考えられます。現在は CB型同様の 0.1secが使用されています。

4-3.その他

変圧器突入

限時特性

瞬時特性

0.05s

0.31sec

100%

160%

50%

瞬時特性

(配変特性)

0.2sec

0.09sec

0.5sec

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1)レバー10の試験(限時特性)

静止型では、動作時間公称値が限時設定値(TD)毎の図表、またはパラメータとする計

算式で詳細に示されています。私は、使用整定での正確な公称値がわかるため、使用 TD値

での試験のみを行っています。リレー試験では、レバー10 でメーカ許容誤差内であること

よりも、使用値で保護協調が取れていることの確認が重要であると考えていることも要因

です。

誘導型の場合はレバー(TD)10での特性のみが、リレーの表面に図

示されていました。静止型でも慣習的に表示されています。図はオム

ロン K2CA型の例です。読み取った値を TD/10で乗じることにより、

整定 TDでの動作時間が算出できます。現場での確認には有効ですが、

取説の図表・計算式に比べれば不正確です。

※ 限時及び瞬時共に、動作時限は整定値の絶対値には無関係で、倍数により決定されます。

試験用発電機の容量が小さい場合は整定値を下げることでも、測定値を得ることができま

す。例えば限時の時間測定で 300%は使用値の整定で、500%は整定を下げての試験として

も、得られる結果は同じになります。現在の静止型は cpu 数値演算結果によって動作して

いるためと考えられます。

※ VCB組合せでは VCB開極時間(公称 0.05sec・60Hz)を含む時限が測定されます。開

極時間が含まれるため、時限が短い場合は不正確になります。例えば、OCR動作 0.5secの

場合は開極時間 0.05secで許容誤差の 10%になります。TD=10の長時限での測定を行うと

誤差は小さくなります。K2CA型では、300%で 10secなので、動作するまでの間、過電流

を流し続けることに留意する必要があります。

2)試験機の電流設定

手動式の IPR 等の試験電流設定には、切替スイッチを設定位置にして内部の模擬負荷で

行う方法と、試験位置でリレーをロックして実電流を流しながら調整する方法があります。

後者がより高度な方法であり、指定される場合があるとも聞きます。しかしながら、IPR等

は電源にスライダックを使用している誘導性の試験機です。模擬負荷であっても実電流で

あっても、設定時の電流は定常電流ですが、試験時は過渡現象を含む突変電流です。理論的

に、試験時の電流と設定電流には差が生じます。試験電流と設定電流を一致させるためには、

無誘導である水抵抗、最低でも無誘導試験機である TPR等を使用する必要があります。無

誘導試験機は電源スライダックに巻き戻しを行う等により、電源部の誘導性を減少させた

ものです。

高圧設備で汎用試験機(IPR等)を使用できる試験であれば、どちらで方法でも良いと考

えています。試験端子の計器側配線は短かく、OCR、VCBを含む試験回路のインピーダン

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スはトリップコイルの抵抗(10Ω)が主で、試験機の内部抵抗より十分に小さいと考えられ

ます。私は安全性と時間短縮を考えて、設定位置での電流設定を行っていますが、3-5の試

験結果例のように、ほぼ公称値と同じ値が出てきます。

5.関連事項 topへ

5-1.CT過電流定数(n値)

CTには磁心の磁気飽和を考えて、何倍の電流まで歪なく流せるかを示す、過電流定数n

が定義されています。キュービクル等で多用されている三菱 CD-40Kは n>3です。この値

では、CT二次電流 5A×3=15A以上でのリレー使用はできないことになります。しかしな

がら、n値と同様に、実使用中の負担電流等により決定される実力値n’も定義されていま

す。CT に磁気飽和が生じるまでの余裕を見たものです。CD シリーズでは次の式で説明さ

れています。

n’=n×(CTの定格負担+二次漏洩 VA)/(使用負担+二次漏洩 VA)

通常の CT 電流は定格 5A より小さい等のため、n’はnの数倍となります。2~3 倍とす

れば 40A 程度までは使用可能となります。テキスト等ではn>10 の CT 使用が推奨されて

いますが、CD-40K(n>3)使用であっても、メーカ組み込みの場合に取り換えを要求する

ことは困難なようです。高信頼性のために大きなn値が必要であることを、状況によっては

コメントする必要はあると思います。最近の設備では、n>10 の CT(CD-40NA 等)が使

用されているところが多くなっています。

※ 二次漏洩 VA(インピーダンス)は n=3で概 5VA、n=10で 10VA程度です

n>3の CTで瞬時整定を 50A以上にする場合は注意が必要です。変圧器増設などで瞬時

が 60A設定になっている例もあります。リレー整定はCT特性も含めて考えるべきであり、

良好な整定とは言えません。

5-2.電力変電所アナログ OCRとの協調 topへ

電力変電所(都市部)でのアナログ型 OCRの整定例をご紹介します。下図・左のように

なっています。電流ではなく短絡容量MVA での表示となっています。

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デジタル型の大容量での動作は、第一段が 720A、第 2段が 1440Aです。1440A・6.6kV

の容量変換値は 1.732×6.6kV×1440A=16.5MVAとなります。時動作 0.18secを併せて書

き込むと右図のようになります。3節で説明した、大容量配電線での段設定と考えての整定

を行っても協調が取れ、安全であると考えられます。図では OCR動作の短絡容量は 0.2sec

では 68.6MVA、0.18secで 100MVAとなっています。

5-3.短絡故障時の動作 topへ

受電設備で、高圧部又は低圧部で短絡故障が発生した場合に生じる現象と、安全に遮断す

るために必要な機能を考えます。

1)高圧短絡時の協調(系統短絡容量)

・短絡電流の概算

受電設備での高圧短絡時には、設備容量・使用中の負荷電流には関係なく、接続されてい

る配電系統の短絡容量による電流が系統から流入します。短絡容量は高圧受電の場合、それ

ぞれの系統毎に、50MVA~100MVA になるよう、電力配電所での系統切り分けが行われて

います(変電所の横等の特殊な場合、より大きい場合があります)。前節の配電変電所アナ

ログリレーの整定例で、瞬時動作 0.2secでの動作が 68.6MVA、0.18secの動作が 100MVA

であることからもわかります。

短絡容量 59MVA の場合(都市部ではない)を考えます。高圧部短絡時に系統から流入す

る電流は、引込ケーブルのインピーダンスを無視すれば、

59000kVA ÷ 1.732 ÷ 6.6kV ≒ 5200A

概 5200A の電流が、配電系統から引込高圧ケーブルを通過して短絡点に流れ込みます。受

電設備の容量などには無関係であることに注意が必要です。

・短絡時の保護協調

3節での協調線図の大電流部分の拡大図に短絡電流5200Aを書き込んだものを示します。

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短絡電流 5200A は瞬時整定 1200A の 4 倍以上となり、配電変電所 OCR、受電設備 OCR、

LBS パワーヒューズ共、全てが瞬時動作領域となっています。この状態での各部の動作順

位は、時限によって決まります。

動作時限

変電所 OCR 0.2sec

需要家 OCR 0.05sec

PF75G <0.05sec

動作順位は PF→需要家OCR→

変電 OCR の順になり、末端部

ほどの動作時限が小さく(早く

動作して)、停電範囲を最小化す

るための保護協調がとれていることが分かります。

需要家内の受電と第二受電の OCR動作時限は同じく 0.05sなので、動作順位は付けられ

ません。波及事故防止のために配変 OCR が要求する 0.18sec 以内の VCB 動作を満足させ

るためです。

2)高圧引込 CV ケーブル等のサイズ

CVケーブルサイズは高圧部短絡時に、自所の負荷電流による発熱ではなく、系統から供

給される短絡故障電流による急速な発熱を許容範囲内にすることで決定されます。上位(電

力配電変電所)系統の VCB による遮断での故障除去までの、配電変電所の OCR 整定が

0.2secであるので、VCBの開極時間を含む故

障電流遮断時間は 0.25secとなります。ケーブ

ルサイズと許容電流は短絡時の遮断時間別

に、90℃運用されているケーブルの温度上昇

を 230℃まで許容するとしての計算結果の例

が、右図に示されています。

(オーム社 ケーススタディ現場の電気計

算技法 第 2集 千葉幸著)。

図より、故障電流 10kA(短絡容量では

1.732×6.6×10≒110MVA)の場合、38sq以

上が必要になることが分かります。故障時に

は、系統のみでなく、自所又は近隣設備から

の、モーターコントリビューション等による

1200A

瞬時電流整定

G75特性実際?

1440A

5200A

0.2sec

0.05sec

系統短絡容量  59MVA 

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故障電流も供給されます。短絡容量が 100MVA に近い配電系統に接続する場合は、余裕を

見て、60sqの採用が安全です。

※ 系統との受電点に設置される PASはスイッチであり、開閉能力は 200A(〜400A)で

す。これ以上の電流遮断を行うと開放アークにより墳破するため、付属 SOGにより動作

ロックされ、上位の VCBによる停電を待って開放されます。

第二キュービクル送り等のケーブルの場合で、受電点に設置された瞬時 0.1sec 動作の

VCB を経由する(保護される)場合は 38sqで可となります。しかしながら、需要家 VCB

と電力変電所 VCB の保全状態・信頼性の違いを考えると、ケーブルサイズの余裕は取るべ

きであると考えられます。ケーブルサイズの決定には、他に、ケーブルインピーダンスによ

る電圧降下、電磁振動、機械的外力に対する安全強度等の検討も必要です。

3)変圧器二次側直下短絡(配電盤MCCB遮断容量・Icu)

受電用変圧器の二次端子から配電盤MCCBまでの短絡(地絡短絡を含む)では、高圧事

故に匹敵する損傷を起こします。変圧器二次側直下短絡と呼ばれる、大電流による短絡現象

です。このための保護は、配電盤のMCCBで行います。

・短絡時の電流

短絡電流 Ic は、変圧器の定格二次電流(In)ではなく、高圧側短絡容量を変圧器の%イ

ンピーダンス(%Z)によって制限された大きさになります。大まかには変圧器の定格電流

(In)と%インピーダンス(%Z)により求めることができます。100kVA 電灯(三相)変

圧器、%Zが 3%の場合の超概算を示します。

In = 100000÷210 = 476A

(三相変圧器の場合の Inは√3で除して求めます)

Ic = 476÷(3/100)≒ 16,000A

詳細計算の例を、後述する分電盤用MCCBの選定でご紹介します。

・配電盤用MCCB の選定

MCCB の電流遮断規格には、VCB 同様に負荷電流に

対する定格電流(In)と、短絡故障に対する遮断電流(定

格限界遮断容量 Icu)があります。In はハンドルに表示

されています。Icuの値はブレーカ本体に、右図の赤枠で

示しているように、JIS として電圧階級毎に記入されて

います。動作責務により、Icnとも呼ばれています。短絡

事故で Icu 以上の大電流を遮断すると、遮断不能による

ブレーカ焼損等が生じます。

キュービクル配電盤近傍で短絡事故が生じると、故障電流は変圧器二次直下短絡 Ic とほ

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ぼ同じ値になります。配電盤MCCBで Icを安全に遮断するためには、Icn>Icが必要にな

ります。本例では、Icが 16kAなので Icuが 25kVA(一般的な値)以上であれば安全です。

図のMCCBでは Inが 150A、AC220Vでの Icnが 30kAであるので、安全であることが分

かります。

小容量の負荷を配電盤から直接引き出す場合等に、定格電流 In

のみの判断で、Icuが小さいブレーカが選定されることがあるので

注意が必要です。配電盤MCCBの例を右図に示します。左側は定

格電流 100A・Icu10kA(220V)、右側は定格電流 50A・Icu25kA

です。体格は定格電流ではなく、Icuにより異なることが分かりま

す。分電盤用MCCBが配電盤に設置されたと考えられます。キュ

ービクル外部へ引出すケーブルを接続し、出口近くで短絡するお

それがある場合には、20Aの引出であっても、分岐用ブレーカではなく、配電盤用 Icuを持

つ MCCB が必要になります。VCB に要求されている定格遮断電流(一般的には 8kA 又は

12kA)が受電設備の負荷電流ではなく、系統短絡容量により決定されるものであることと

同様です。

小容量受電設備で、配電盤 MCCB の In が変圧器容量を超過している場合、PF の G 値を

併せての注意が必要です。盤メーカのノウハウとして配電盤MCCB を考慮しての、パワー

ヒューズ選定も行われているといわれています。

・分電盤用MCCB の選定

配電盤同様に、負荷電流のみによる選定は不適です。しかしながら、分電盤は配電盤ブレ

ーカの保護下であり、ケーブルインピーダンスで Icが制限されるため、受電用であっても、

Icu の小さなブレーカの使用が可能で

す。一般的には、配電盤 MCCB は Icu

が 25〜50kVA、分電盤では 2.5~10kVA

程度が使用されています。単相 100kVA

変圧器の場合のケーブルサイズと長さ

による短絡電流早見表を、河村電器殿ホ

ームページから転載したものを示しま

す。ケーブルサイズと距離により短絡電

流が小さくなっていることが分かりま

す。変圧器二次直下の場合(MCCB出、

距離 0m)では、ケーブルサイズによらず、前出の概要計算と近い、概 16kVA となってい

ることもわかります。

詳細な計算方法と変圧器容量毎の早見表は下記ホームページに説明されています。

https://www.kawamura.co.jp/catalog/pdf/DB-113.pdf

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※ 二次側 16kA は一次側高圧電流に換算すると 500A です。OCR 整定は変圧器一次側ま

でを考えたものです。低圧部保護は不完全な状態であり、OCR 整定値によっては、限時の

みでなく、瞬時でも動作がない場合が考えられます。変圧器個毎の LBS(又は PCS)設置

が必要な理由です。

※ MW規模の太陽光発電の分電盤MCCBの Icu不足による焼損事故例です。通常運用時

は 100A 程度の負荷電流が PC(パワーコンディショナ)から変圧器へ流れますが、PC と

MCCB 間(例としては相間の離隔が少ない接続プラグ等)で短絡が生じた場合の短絡電流

は系統連携の変圧器から流れます。配電盤から分電盤までのケーブルサイズが大きい場合

は二次直下短絡に近い電流となります。線間電圧が 500V級では短絡電流が 10kA以上にな

ることがあります。前出のMCCBでは線間 220Vでの Icuは 30kAですが、500Vでは 10kA

です。一般の配電盤用 MCCB を使用していても、Icu 不足の焼損事故となる場合がありま

す。PC 発生の負荷電流のみでなく、配電系統による短絡電流が MCCB 選定の重要な要素

になります。

※ 配電盤での異物接触、作業ミス等による短絡は、高圧短絡と同

等の重大な損傷を生じます。分電盤同様の「低圧」ではないと認識し、

厳重に予防する必要があります。

電圧測定でも注意が必要です。最近の IECの測定カテゴリーでは配

電盤MCCB一次側(変圧器二次端子直結)は CAT.Ⅳです。右図が

600V-CAT.Ⅳ用テスタのプローブです(鉛筆は比較用)。赤は CAT.Ⅳ

対応状態、黒は先端キャップを外しての CAT.Ⅲ(MCCB二次)対応とした状態です。大き

さ、保護用の鍔がある形状からも、コンセント出口等の CAT.Ⅱ(ポケットテスタ)範囲と

の潜在する危険性の違いが想定できます。竣工時の外線工事中で配電盤MCCBが投入でき

ない状態等でのMCCB一次側の電圧測定では、CAT.Ⅳ対応でない測定器の使用は、基本的

な危険作業になります。低圧電源に含まれるサージ等でテスタが内部損傷した場合は、二次

直下短絡事故になります。

4)スイッチ類の動作協調

高圧設備には各種のスイッチ及びブレーカが直列又は並列で使用されています(概要を

後述します)。高圧では、無電圧以外で操作するとアークが発生します。スイッチ類のそれ

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ぞれの機能の差は、発生するアークの消弧能力と開極距離の違いによるものです。

現在のほとんどの高圧受電設備ではスイッチ類は単独に動作します。複数の機器が直列

である場合も相互確認シーケンス等はなく、DS(断路器)は負荷電流が流れていても、操

作しようとすれば手動での「開」操作ができ(一部ロック機能付きがあります)、重大事故

になります。OCR 等の保護リレー整定も機能を考慮して行う必要があります。スイッチ類

の機能と保護リレーとの関係概要は次のようになります。

・ブレーカ(VCB、GCB、OCB等)

負荷電流の開閉と故障(過負荷及び短絡)電流の遮断を目的としています。動作時に発生

するアークは真空、SF6高圧ガス、絶縁油による抑制・拡散により消弧します。GCB では

補助的に吹き消しを利用したものもあります。負荷電流(A)の開閉から故障電流(kA)の

遮断までが可能で、OCR整定の保護協調により動作させるものが殆どです。多頻度の動作、

機種によっては遠方操作も可能です。

主接点の開極距離は最も小さくなっています。必ず、直列の断路器が設置されるか、本体

引出等による断路機構が追加されています。VCB を安全に使用するためには、絶縁抵抗測

定のみでなく、メーカ基準による真空度チェック等を含む定期点検が推奨されていますが、

需要家設備ではほとんど実施されていないのが現状です。

・負荷開閉器(VCS等)

VCSは VCB同様の主接点構造を持ちますが、コンデンサ、電動機等の設備別の運用に使

用され、負荷電流の多頻度の開閉を目的としています。故障(短絡)

電流の遮断能力がなく、PF(パワーヒューズ)が短絡保護のために

直列に使用されます。多頻度の入り切りはマグネット(図・左)で

行われ、投入時に常時励磁の場合は節約抵抗(図・右の緑色)がコ

イル電流低減のために直列に使用されます。ごくまれに自電流による磁気を利用してアー

ク引き伸ばし消弧を行うMBB型が残存していることがあります。消弧室の横に磁極用の金

属板があることが特長です。

保護は 2E(過負荷・欠相)又は 3E(2E+逆相)リレーで行います。OCRでの保護もあ

りますが、欠相での電流増加が OCRでも検出される場合であると考えられます。

・負荷開閉器(PAS、LBS等)

負荷電流の小頻度の開放(PAS は投入を含む)及び回路の区分を目的とします。負荷電

流開放によるアークをアークシュートの中に引き延ばして気中で冷却消弧します。LBSで、

PF(パワーヒューズ)が付属したものでは、過負荷電流及び短絡故障電流の遮断を PF で

行います。OCR(又は DGR等)により機械的開放を行う場合は、故障電流等の遮断を機械

的開放動作で行わないよう整定する必要があります。次節の 5-4-③に記述します。G付 PAS

は過電流時に開動作をロックし、停電を確認して動作するための内蔵 OCR による SOG 機

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能が付属しています。付属 PFが無いため、故障遮断は電力配電所のブレーカに委ねるもの

となっています。PASの変形として GCB技術を利用した PGSがあります。

・断路器(DS)

消弧能力がなく、負荷電流の開閉はできません。開極距離はもっとも長くなっています。

停電中の電路の区分が主目的です。断路能力が無い固定式 VCB 等の場合は、電源側に必要

条件として設置されます。三極型(LS、ラインスイッチ)では無負荷充電電流に対応する

ため、10A程度以下の開閉が可能な場合があります。OCR等による自動動作はありません。

5-4.OCRでの LBSトリップ topへ

300kVA未満(VCB無しの PF-S型)のキュービクルで受電用に電圧引外し型 LBSを使

用し、OCR動作とした設備が増えています。

右写真が電圧引外し機構です。黄色部が引外し(トリップ)コイ

ルです。コイルで移動する鉄心でパワーヒューズ(PF)のストライ

カと同様に LBSの機械的開放を行います。

同じ形式の LBS は、出迎え方式の受電用及び第二キュービクル

送り用の GRトリップ、高圧コンデンサの内圧(膨らみ)異常での

トリップでも使用されています。

1)目的

変圧器の過負荷防止であると考えています。例として電灯 50kVA、動力 200kVA の設備

を考えます。受電 LBSの PFは変圧器のみでは G40ですが、動力変圧器容量の概ね 1/3で

ある進相コンデンサ 75kVA があるために G50 が使用されているとします。電灯変圧器の

他の電流がないものとして PF動作を考えます。

・短絡保護

変圧器が損傷しないための一般的な短絡強度は定格電流の 25倍で 2secとされています。

電灯 50kVA では定格電流(高圧換算)は 7.5A なので、2sec での許容電流は 187A となり

ます。右図は PF の溶断時間-電流特性図の例で

す(三菱電機殿 LBS カタログ)。G50 の 2sec 動

作は 200A となっています。187A 以上なので、

許容電流を超過する場合があることになります。

G 値を低下させて G40 とすれば、2sec 動作は

150Aであるので許容電流以下となります。PF-S

型の PF選定にも適用される考え方です。

※ PFの特性には許容時間、溶断時間、動作時間

があります。ここでは電流が遮断されるまでの最

大値として、動作時間特性を使用しています。

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・変圧器の過負荷保護

極めて短時間の過負荷容量の参考にできるものとして、下図の愛知電気殿ホームページ

「配電用変圧器データブック」の短時間過負荷許容曲線があります。

G40では 100A(変圧器定格の 13倍)では 100secでの動作になり、許容負荷である概 4倍

を大きく超過します。1台の PFでの、並列に接続された変圧器 2台の過負荷保護を併せて

行うことは難しいことが分かります。

OCR の場合はより細かな整定ができます。高圧側定格電流は動力変圧器 17.5A、電灯変

圧器 7.5A、合計 25A となります。OCR 限時を CT 一次側 30A に整定すれば、TD=0.5 で

限時設定の 2 倍である 60A(電灯変圧器定格電流の 8 倍)で 1sec 以内の護動作を行いま

す。15A(電灯変圧器定格の 2 倍)でも 2sec 以下であり限時要素のみで変圧器の短絡と過

電流の保護ができます。

VCB 使用の 300kVA 以上になると、OCR でも 2 台以上並列の変圧器の過負荷保護は困

難になります。それぞれの変圧器に適合する PF を持つ LBS(PCS)を設置することが必

要です。

2)電力使用申込書での短絡感度

OCRの有無によって短絡感度が変わります。容量 250kVAで G40の PFを使用した設備

に、OCRトリップを追加した場合について考えます。OCR用 CTは 5/30とします。

・OCRがない場合

最少遮断電流が G値の 3倍、誤差を 1.2として

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短絡感度=1.732×7.2kV×40A×3×1.2≒1.79MVA

・OCRがある場合

高圧定格電流は 250kVA÷1.732÷6.6kV≒22A、CT 二次電流は 22÷6=3.6A であるの

で、OCR限時電流整定値を 4Aとして

短絡感度=1.732×6.6kV×4A×(30/5)×1.2≒0.33MVA

OCR がある場合、申込書の短絡(過負荷?)感度は極めて小さくなります。短絡故障電流

の遮断は PFによるため、故障除去時間は 0.1secで同じになります。OCRで機械的に LBS

を開放すれば、PF動作の不安定に関係なく、受電設備の過負荷電流域で(短絡領域ではな

い)の安定的な遮断ができます。

3)OCRの整定

LBS の負荷電流開放は気中接点で行うため、定格負荷電流が一般的には 200A であるこ

とに留意が必要です。これ以上では過負荷遮断となり、メーカの動作保証回数は 1~3 回で

す。安全に継続使用するためには、定格負荷電流以上では PF遮断動作後に OCR動作とす

る必要があり、整定は VCBより面倒なものになります。

三菱電機殿 LBS カタログには「過電流継電器

による開閉器開極までの動作特性とヒューズの

動作特性との交点の電流が定格負荷電流開閉容

量以下となれば動作協調がとれています」との説

明と、わかりやすい保護協調線図(右図)が示さ

れています。過負荷(小)電流部分は OCR で保

護し、短絡(大)電流部分はヒューズ溶断で保護

することが示されています。

※ メーカによっては、LBSの OCRトリップは

推奨されていない場合もあります。VCB 使用の方が安全という考えです。

・限時設定

機構部保護のため、LBS 定格開閉容量以上の電流を OCR では開路させないように整定

します。協調線図での交点を求めることはかなり面倒ですが、目安としては高圧側電流

200A で 1sec 以上と考えています。パワーヒューズとの協調として、超反限時特性での対

応となります。

小容量では定格電流に電灯(単相)容量と動力(三相)容量の配分で定格電流が変わりま

す。医療関連設備では電灯容量が大きい場合には注意が必要です。設備容量 200kVAで CT

比 6とした例を示します。全体容量が同じであっても、CT二次電流は概 1.5倍の違いがあ

ります。

例 電灯容量-電流 動力容量・電流 CT一次 CT二次

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① 50kVA 7.5A 150kVA 13.1A 20.7A 3.5A

② 100kVA 15.2A 100kVA 8.7A 23.9A 4.0A

③ 150kVA 22.7A 50kVA 4.4A 27.1A 4.5A

実運用では位相差があるため、この表よりも小さな値となります。

・瞬時整定

OCRの瞬時整定値を LBS定格負荷電流以下にすれば、遮断電流による LBSの損傷は防

止できます。前項の例①では、CT 比 6、瞬時設定 30A で高圧側電流 180A となり LBS 定

格 200A以下となります。いずれの例でも定格運用での電流の 6倍以上であり、過負荷保護

でも障害は無い範囲と考えられます。

投入時の変圧器突入電流による誤動作防止のため、定格負荷電流の 10倍以上での瞬時設

定にすると、いずれの場合にも 200Aを超えます。実用的な対策として大きい変圧器の定格

電流の 10 倍という考え(末尾文献 P.83)を適用します。瞬時整定を 40A とすれば高圧側

電流 240Aであり、妥協できる範囲であると考えます。例③の場合は限時 5A、瞬時 40A と

なります。

短絡保護は PF で保証されているので、OCR は過負荷保護用であると割り切ることもで

きます。瞬時はロック位置(又は整定値を十分に大きくする等)とすることも一つの方法で

す。

※PFの小電流遮断

一般的な広域ヒューズでは定格電流(G 値)の 2 倍以上から定格遮断電流までの電流の

遮断が保証されていますが、5倍以下の小電流遮断は不安定となる、小電流遮断と呼ばれて

いる現象があるとされています。ヒューズ溶断で発生するアークを安定的に消去するため

には一定のパワーが必要であるため、電流が十分でないと、アークの吹き消し不完全による

再発弧等による不安定現象が生じるためとなっています。メーカにより異なりますが、一般

には G値の 2~3倍の電流が最少遮断電流と呼ばれています。

図は LBSの 1相のアークシュートが溶損した事故例です。

小電流遮断現象を原因として考えれば、次のようになります

・PFが小電流遮断域で断線し、ストライカが動作

・主接触子が開放、故障電流がアーク接触子に移動

・PF遮断完了前に、過電流状態でアーク接触子が開動作

・消弧能力超過のため、シュート溶損

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アーク接触子は精密加工品です。変形、電流痕等があると、投入できなくなります。図は

接触子に残ったアークによる電流痕です。投入できたとしても、次回の開操

作で事故が生じます。定格負荷電流付近で PF 遮断前に開動作(遮断)した

恐れがある場合は、速やかな本体更新が必要です。PF遮断状態(ストライカ

動作)以外での開動作では、健全なアーク接触子であっても、微小アークが

必ず発生します。

OCR による動作の場合も、機構部不良での不揃い動作等でアーク発生の

場合は、相間短絡にもつながります。相間バリアの設置、機構部への専用グリス塗布(グリ

ス入れ替え)等の保全が、より必要になります。

LBS の機構部がどこまでの過負荷電流に耐えるかのカタログ記載はありません。ブレー

カである VCBで定格負荷電流 400Aの場合は定格遮断電流 8kAと記載されています。8kA

までは少なくとも、もう一回の入り切り動作ができることが保証されていますが、スイッチ

である LBSには適用されません。短絡時の電流は電源系統の短絡容量によります。変圧器

二次側の短絡で、変圧器のインピーダンスでの制限があっても数千A以上になり(5-3-2))、

全ての PFは 0.1sec以内(0.02sec以内)で遮断します。

第二変電送りの地絡保護を DGR で行う場合も、短絡電流域では PF 安定動作(0.1sec)

前に機械的開放を行わないように注意が必要です。PAS 時限との協調を重視して DGR の

時限整定を 0 にすると、地絡短絡が発生した場合には上流側の VCB による短絡電流遮断

(0.1sec)前に機械的開放が行われ、LBSが損傷する恐れがあります。ほとんど発生しない

事故とは考えられますが、スイッチ類の特性も考えての OCR(DGR)の整定としておくこ

とが、広い意味での保護協調として必要です。

※ PF-S型受電用 PFの G値と OCR 限時整定の関係

300kVA未満の PF-S型受電設備は、OCRではなく、受電 LBSのパワーヒューズ(PF)

で保護されます。PFの G値は単相と三相の変圧器容量組み合わせから、メーカ選定表で決

定します。G値と、OCR を使用する場合の CT 一次電流である高圧定格電流との関係を考

えます。定格電流は(単相変圧器容量 kVA÷6.6)+(三相変圧器容量 kVA÷6.6÷1.732)で

求めます。下表に計算結果(黒)と、富士電機殿の標準選定表による G 値(青)を示しま

す。概ね定格電流に 10を加えた値よりも大きい、10単位の値が基準となっていることが分

かります。例えば電灯 50kVA、動力 100kVA の場合は定格電流 16.3Aなので、10を加える

と 26.5A、G値は 30となっています。定格電流に 10Aの裕度(PFが必要とする各種要素・

コンデンサ等)を見て、G値を採用しているとも考えることができます。他メーカもほぼ同

様です。OCR限時整定でのタップ値整定と同様であると言えます。

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高圧定格電流と G値の関係(黒字:定格電流 青字:G値)

選定表は、動力変圧器の 1/3容量までの並列コンデンサが許容されたものです。高圧コンデ

ンサ故障保護機能(0.05sec以下での遮断)も含まれています。OCRでは瞬時動作でもコン

デンサ保護は不能です。実際の G 値選定は、定格電流ではなく、それぞれのメーカ選定表

によります。変圧器、コンデンサ単体では G値でなく、T値、C値になります。

盤メーカでの G値の選定には、高圧電流のみでなく、5-3-3)節の変圧器二次直下事故の

保護についてもノウハウとして加えられている場合があるようです。

4)LBS用 OCR の試験 topへ

LBSのトリップコイル駆動のために、OCRは電圧引外し型が使用されます。試験電流入

力方法は VCB用と同様です。

単体試験はトリップ検出信号を OCR補助接点 a1、a2等から取ることにより行います。

連動試験を併せて行うと、開極時間を算出することができます。私の竣工試験の例では、単

体 163ms・連動 195msで、開極時間は 30msがあります。

連動試験はトリップ電源が AC100V の場合は、OCR用等と記入された MCCB二次側を

解線して引出線に供給します。MCCBが無い VT直結では、VTヒューズを外して二次側へ

電源供給します。予想外の配線が行われていることがあるので、試験機補助電源が安全です。

試験用発電機等から直接供給する場合は、過電流ヒューズ(5A 程度)をつけておくことが

必要です。VTヒューズ本体の破損、フォルダの変形による緩み防止等、取扱い上の注意も

必要です。トリップ信号は、大きな動作をする LBS本体の一次二次ではなく、前後のブス

等から取るほうが安全です。試験機付属の短いコードは届かないので、数メートルのリード

線を準備しておけば役立ちます。信号取出しの不具合、機構不良でトリップ信号が検出され

ずに、試験機が自動停止しない場合は短時間定格のコイルに電流が流れたままになり、焼損

する恐れがあります。試験機停止ボタンで直ちに手動停止する体制を取っておくことが、

VCB用試験以上に必要です。電気信号による許容動作回数はカタログ値 200回であること

にも注意が必要です。

10 2.4 10 3.1 20 3.9 20 5.4 20 8.5 20 12.2 30 16 30 23.6 4015 2.8 10 3.6 20 4.3 20 5.9 20 8.9 20 12.7 30 16.5 30 24 4030 4.1 20 4.9 20 5.7 20 7.2 20 10.2 20 14 30 17.8 30 25.4 4050 5.9 20 6.6 20 7.4 20 8.9 20 11.9 30 15.7 30 19.5 30 27.1 4075 8.1 20 8.8 20 9.6 20 11.1 30 14.1 30 17.9 30 21.7 40 29.3 40100 10.3 20 11 30 11.8 30 13.3 30 16.3 30 20.1 40 23.9 40 31.5 50150 14.6 30 15.4 30 16.2 30 17.7 30 20.7 40 24.5 40 28.3 40 35.8 50200 19 30 19.8 30 20.5 30 22 40 25.1 40 28.9 50 32.6 50 40.2 60250 23.4 40 24.1 40 24.9 40 26.4 40 29.4 40 33.2 50 37 50 44.6 60300 27.8 40 28.5 40 29.3 40 30.8 50 33.8 50 37.6 50 41.4 60 49 60

75 100

動力用三相

150    電灯用単相10 15 20 30 50

Page 31: ì OCR(過電流継電器)整定での保護協調線図の有効な活用例 · 2 1.はじめに ocr(過電流継電器)の整定では保護協調線図を作成すると、動作状態が図として把握

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※ 第二変電送り用(DGR動作)およびコンデンサ保護用(内圧検出

動作)は、LBS が動作しても制御電源が停止しない(電源喪失にはな

らない)ため、トリップコイル焼損防止のための本体補助接点(パレッ

トスイッチ)で制御回路を開路するようになっています。右図が LBS

下部に取り付けられたスイッチの例です。受電用では LBS動作で停電

することが前提とされ、補助接点が省略されています。

DGR 動作の場合、「DGR 用」等と記入された MCCB の二次側に

AC100Vを供給すれば、リレー電源(P1、P2)、コイル電源共に活かすことができるように

配線されていることが一般的です。

※ 年次点検

PAS で停電できる場合は全停電後に、試験用発電機での他電源試験が安全です。受電用

では自電源試験として、試験機電源をキュービクル 100Vコンセントからとれば、試験機電

源喪失による時限測定ができますが、高圧活線近接作業も生じます。停電作業と試験操作は

分離できるものであれば、極力、分離すべきものです。経年品の場合、機構の劣化で開極時

間が大幅に大きくなることがあります。本体清掃・グリスアップなどの本来の保全が、VCB

以上に必要になると考えています。

全体としての参考文献 topへ

OCR整定については、「エネルギーフォーラム社 6kV高圧受電設備の保護協調 Q&A 川

本浩彦著 ISBN4-88555-273-7」 に詳細に説明されています。ご一読をおすすめします。