にほんでいきる 日本語指導動画コンテンツ開発など...
TRANSCRIPT
にほんでいきる
日本語指導動画コンテンツ開発など提言 外国人児童生徒ら向け、文科省
毎日新聞 2019 年 8 月 28 日 19 時 14 分
文部科学省=東京都千代田区で、長谷川直亮撮影
日本語教育が必要な外国人の児童生徒らへの指導体制確立を目指し、文部科学省は 28 日の有識者会
議に、日本語教師ら外部人材の活用や動画コンテンツの開発を提言した。早ければ来年度の予算化を目
指す。
日本の公立小中高校などに通い「日本語教育が必要」と判断された児童生徒は 2016 年度時点で全国に
約 4 万 4000 人いたが、うち約 1 万 400 人が指導を受けられない「無支援状態」に置かれていた。現場から
は「指導者がいない」「指導法が分からなかったり教材がなかったりする」などの声が上がっていた。
こうした状況を改善するため、提言では 18 年時点で約 1 万 8000 人いる民間の日本語教師の活用を掲
げた。学校での教育に特化した研修を充実させると同時に、教員免許を持たなくても教壇に立てる特別非
常勤講師などに位置づけ、立場の明確化を図る。また、校内の研修用に初心者向けの動画コンテンツや、
中上級者向けのオンライン講座を開発する方針も示した。
有識者会議は今年 4 月、外国人の児童生徒の教育について柴山昌彦文科相が中央教育審議会に諮問
したことを受けて設置。就学機会の確保や教員の指導力向上を議論して年内に報告をとりまとめ、文科省
が来年度以降の予算に反映させる。【奥山はるな】
にほんでいきる
外国からきた子どもたち 多言語で仕組み説明 親子対象に高校進学ガイダンス 就学支援金の紹介も
/東京
毎日新聞 2019 年 7 月 12 日 地方版
さまざまな言語の通訳を介し、高校入試についての説明を聞く親子ら=文京区の東洋大で
外国からきた親子に高校進学の仕組みを説明する「多言語高校進学ガイダンス東京」が都内各地で開か
れている。都立高校教諭や学習支援のNPOからなる実行委員会の主催で、多様な言語の通訳を手配し、
秋までに6カ所で開催。外国からきた子どもにとって困難とされる高校進学の手がかりとする。
文京区の東洋大白山キャンパスで6月23日に開かれた初回のガイダンスには、10カ国からきた親子17
6人が参加。言語別に分かれて着席し、通訳を介して熱心に聞いた。
冒頭で「日本では100人のうち98人が高校に行きます」「仕事に必要な資格の多くは高校を卒業しないと
取れません。日本社会で夢をかなえようと思ったら、ぜひ高校に進学を」などと説明。全日制と定時制の違
いや、入試の種類、年収に応じて支給される「就学支援金」制度を紹介した。また、入試面接のやりとりを再
現してみせると、保護者らが一斉にスマホを構えて動画を撮り、関心の高さをうかがわせた。
ガイダンスは2001年度から開かれ、今年度は秋にかけて都内6カ所で開催。実行委員長で、都立一橋
高教諭の角田仁さんは「入試の制度は複雑で、中学の先生だけで伝えるのは難しい。日本語が話せない
子は塾にも入りづらく、たくさんのハードルがあるが、力を発揮できるようサポートしたい」と話した。【奥山は
るな】
高校卒業後の進路相談受付 21日、千代田で
高校生の卒業後の進路相談もある。21日午後1~4時、都立一橋高校の柏葉会館(千代田区東神田1)
で開かれる。都立高校の教諭らが大学や専門学校、就職について説明し、先輩の体験談も聞ける。18日
までにメールアドレス([email protected])宛てに、氏名や学校名、担任名、電話番号を書いて、申し込む。
多言語進学ガイダンス東京の今後の予定
15日午後1~4時半、品川区の区立中小企業センター(問い合わせは03・6423・0654・国際市民の会)
▽10月13日午後、大田区の都立六郷工科高校▽10月27日午後、八王子市の八王子スクエアビル▽11
月初旬、新宿区内で。
〔都内版〕
にほんでいきる 外国からきた子どもたち 翻訳アプリで交流 武蔵野で講習会 20人参加 /東京
毎日新聞 2019 年 7 月 7 日 地方版
ボイストラを使い留学生と会話する参加者(左)=東京都武蔵野市
外国人にも分かりやすい「やさしい日本語」と多言語翻訳アプリ「ボイストラ」の使い方を学ぶ講習会が6日、
武蔵野市の亜細亜大学で開かれた。参加者約20人が、外国人留学生とボイストラで会話を楽しんだ。
やさしい日本語は1995年の阪神大震災で、言葉が通じずに避難情報などを受け取れない外国人が多く
出たことで考案された。「召し上がる」を「食べる」など、分かりやすい言葉に置き換えるのが特徴だ。
講習会は、2020年の東京五輪・パラリンピックで外国人観光客が増えることを見据え、武蔵野市が企画
した。「やさしい日本語ツーリズム研究会」の吉開章代表(52)が、活用方法を説明。その後、亜細亜大の留
学生とボイストラで会話し交流を深めた。武蔵野市の日本語教室ボランティア、河合輝雄さん(68)は「ボイ
ストラは、やさしい日本語で翻訳すると伝わりやすいと分かり、参考になった」と話した。【堀智行】
〔都内版〕
にほんでいきる
外国人の高校入試に地域間格差 問題へルビなど措置実施、約半数の都道府県のみ
毎日新聞 2019 年 6 月 24 日 18 時 27 分
高校進学を目指す外国籍の若者が勉強する学習支援教室「多文化ルーム KIBOU」=愛知県西尾市で
2019 年 5 月 23 日午後 1 時 45 分、太田敦子撮影
外国人の子どもに対する公立高校の入試制度が自治体によってばらつきが大きく、地域間格差が生じて
いることが、研究者らのグループによる全国調査で明らかになった。高卒資格は職業選択にも大きな影響
を及ぼすだけに、グループは「誰もが同じチャンスを得られるよう制度を改善すべきだ」と指摘している。
調査は愛知淑徳大の小島祥美准教授らでつくる「外国人生徒・中国帰国生徒等の高校入試を応援する有
志の会」が、都道府県と政令市を対象に実施した。昨春実施の高校入試について、外国人生徒に対する問
題文へのルビふりや試験時間の延長などの措置と、特別の入学枠があるか聞いたところ、全日制で措置が
ある都道府県は約半数の 23、入学枠を設けていたのは 16 にとどまっていた。
日本語指導が必要な児童生徒の多い 10 都府県では、全日制の措置は神奈川、東京、大阪、滋賀はある
が、愛知や静岡などはない。入学枠は滋賀以外はあるが、合格者数は東京 116 人▽神奈川 111 人▽大阪
85 人▽愛知 26 人▽静岡 21 人――などと開きがあった。
受験資格も異なる。ブラジル人学校など外国人学校中等部の修了者に受験資格を与えるかは各都道府
県教委の判断に委ねられており、東京や神奈川は資格があるが、愛知や静岡はない。大阪は生徒ごとの
個別判断で対応していた。
愛知県は日本語指導が必要な児童生徒数が全国最多だが、高校生の割合は目立って少なくなる。その
要因について、学習支援にあたる NPO 法人の関係者は「資格や日本語能力から受験を諦めざるを得ない
若者らが多い」と高校入試での壁を問題視する。一方で県教委は「高校入学までに手厚い日本語指導を受
ける中で、日本語指導が不要になった子どもたちがいる」と小中学校などでの成果を強調し、両者の見解は
食い違っている。
小島准教授は「住む場所や来日時期は親の都合で決まることが多い。本人の能力以前に、地域によって
スタートラインに違いがあってはいけない」と話している。【太田敦子】
高校進学を断念 中卒扱いされないブラジル人学校卒業生
全国で最もブラジル人住民の多い愛知県にはブラジル人学校が 12 校あり、約 1200 人が通う。日本人と
同じ高校で学びたいと望む子どももいるが、中卒扱いとされず進学のハードルは高い。
息子(16)を同県内のブラジル人学校に通わせている会社員、ジョゼファ・ドアルテ・デカストロ・ドサントス
さん(59)=同県西尾市=は「この先日本で生きていく息子は、本当は日本の高校に行かせたかった」と打
ち明けた。
一家は 2008 年のリーマン・ショックで母国に戻り、2 年前に再来日した。息子は日本の小学校で学んでい
たが、母国で日本語をずいぶん忘れ、時期的な問題もあってブラジル人学校中等部に編入した。
息子本人は日本の高校への進学を望み、地元の社会福祉法人が運営する学習支援教室に通ったが、受
験資格がなく断念。そのまま高等部に進んだ。ジョゼファさんは「将来の可能性を狭めてしまった。帰国を後
悔している」と話す。
外国籍の子どもらを支援する同県豊田市の NPO 法人「トルシーダ」の伊東浄江代表は「外国人学校は母
国での大学進学や留学を目指す場合はいいが、実際は日本で働く生徒が多い。日本語や社会のルールが
十分わからず、卒業後に職を転々とするケースも少なくない」と懸念する。
「日本語指導が必要な児童生徒数」上位 10 都府県の全日制高校入試対応
<愛知県>7277 人(242 人)、×、○、×
神奈川県 3947 人(552 人)、○、○、○
東京都 2932 人(526 人)、○、○、○
静岡県 2673 人(228 人)、×、○、×
大阪府 2275 人(274 人)、○、○、△
三重県 2058 人(221 人)、×、○、×
埼玉県 1762 人(175 人)、×、○、○
千葉県 1489 人(160 人)、×、○、×
岐阜県 1300 人(103 人)、×、○、×
滋賀県 1059 人(74 人)、○、×、○
※左から都府県名、児童生徒数(うち高校生の数)措置、入学枠、外国人学校修了者の受験資格――の
順。小島准教授ら調べ。児童生徒数は文部科学省の 2016 年調査
にほんでいきる
外国からきた子どもたち 日本語教育、国に責務 外国人対象、推進法成立
毎日新聞 2019 年 6 月 22 日 東京朝刊
日本語教育推進法の成立を受け、記者会見する日本語教育学会副会長の衣川隆生さん(右)と神吉宇一
さん=東京都千代田区の文部科学省で2019年6月21日午後4時33分、奥山はるな撮影
国と地方自治体に対し、外国人の日本語教育施策実施の責務を定めた日本語教育推進法が21日の参
院本会議で、全会一致で可決、成立した。政府による基本方針の策定や予算措置を明記しており、具体的
な施策は今後、協議される。【奥山はるな】
法律は超党派の日本語教育推進議員連盟(会長・河村建夫元官房長官)がまとめ、議員立法で提案。在
留外国人の増加や外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法の施行に合わせ、日本語教育につい
て国と地方自治体の責務を定め、「活力ある共生社会の実現」を目指すとしている。
対象は外国人の児童生徒や留学生、労働者など。国には指導の充実を可能とする教員の配置に関する
制度の整備、教員の養成、就学支援などの実施を求め、地方自治体には国と適切に役割分担することを促
す。
日本語教育は、これまで文部科学省や外務省などに所管が細分化され、自治体や民間の日本語学校が
それぞれ対応してきた。このため指導者の担い手不足や、日本語教育が必要なのに指導が受けられない
「無支援状態」の児童生徒の存在などが問題化していた。
法律では文科省や外務省が連携する「推進会議」の設置を定め、横断的な対応も求める。
文化庁の17年度調査によると、国内の学校や日本語教室に通う日本語学習者は約24万人で、1990年
度の約4倍に増加。日本語教師は約4万人いるが、常勤は1割に過ぎず、大半を非常勤やボランティアが占
めている。
民間教室「担い手育成、補助を」
日本語教育推進法の成立を受け、関係者らは具体的な施策の動向を注視している。
日本語教育学会の神吉宇一副会長らは21日、文部科学省で記者会見を開き「日本語教育の公的な位置
付けが明確になり、大変意義がある」と歓迎した。一方で「今回の法律は理念法。実体ある形にするには、
個々の施策を支える法律の整備と政策の推進が不可欠」と注文を付けた。
埼玉県蕨市でボランティアで日本語教室を開く坂田良介さん(83)は「担い手の養成に力を入れてほしい」
と期待する。教室を始めた19年前、約2000人だった市内の外国人は約7000人に増加。自腹で講師を呼
んで研修を開き、仲間を増やした。「家族の介護などで来られなくなるボランティアもおり、担い手の裾野を
広げたい。行政は、せめて研修に対する補助を出してほしい」と話した。【奥山はるな】
にほんでいきる
外国からきた子どもたち 日本語教員育成求める 外国籍児の教育、国報告書
毎日新聞 2019 年 6 月 18 日 東京朝刊
日本に住民登録しながらも義務教育を受けていなかったり、日本語が話せなかったりする外国籍の子ども
が増えていることを受け、文部科学省内に設置した「外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム」
(座長・浮島智子副文科相)は17日、就学実態の把握や日本語教員の育成などを求める報告書をまとめた。
検討チームは今年1月、義務教育年齢にありながら不就学になっている外国籍の子どもらが全国に1万6
000人以上いることが判明する中で発足。報告書は、外国籍の子どもに就学義務が課されていない現状に
言及した上で「就学実態の把握を進め、外国人の子どもに教育機会が確保されるよう取り組む必要がある」
と強調した。就学実態については、文科省が全国の1741自治体に就学不明者数の調査を依頼している。
さらに教員定数の義務標準法で、日本語教育が必要な子ども18人に対して教員1人を配置すると規定さ
れているにもかかわらず、順守されていないことにも触れ「2026年度までに同法に基づき定数の改善を図
る」とした。
また、義務教育の就学につなげるため、幼稚園や保育園への入園方法などを説明する多言語のガイドブ
ックを作成することなどを決めた。
報告書は「法改正による新たな共生社会を実現するためには、外国人の子どもの教育充実が必要」と明
記した。【水戸健一】
報告書で求めた施策 骨子
・就学状況を把握し、多言語での就学案内を徹底
・義務標準法に基づき日本語教員定数を改善
・日本語指導者を増やすため、全国的な研修の機会を確保
・高校入試で外国人生徒への特別な配慮を促進
・特別支援学校などに日本語指導補助者や母語支援員を配置
・外国人のための幼稚園(保育園)の就園ガイドを作成
・都道府県、政令市に少なくとも1校の夜間中学の設置を促進
・母文化を尊重しつつ、日本文化への理解を促進
にほんでいきる
「外国人の子どもに教育機会の確保を」 受け入れで施策発表 文科省のチーム
毎日新聞 2019 年 6 月 17 日 19 時 01 分
文部科学省=東京都千代田区で、長谷川直亮撮影
日本に住民登録しながらも義務教育を受けていなかったり、日本語が話せなかったりする外国籍の子ども
が増えていることを受け、文部科学省内に設置した「外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム」
(座長・浮島智子副文科相)は 17 日、就学実態の把握や日本語教員の育成などを求める報告書をまとめ
た。
検討チームは今年 1 月、義務教育年齢にありながら不就学になっている外国籍の子どもらが全国に 1 万
6000 人以上いることが判明する中で発足。報告書は、外国籍の子どもに就学義務が課されていない現状
に言及した上で「就学実態の把握を進め、外国人の子どもに教育機会が確保されるよう取り組む必要があ
る」と強調した。就学実態については、文科省が全国の 1741 自治体に就学不明者数の調査を依頼してい
る。
さらに教員定数の義務標準法で、日本語教育が必要な子ども 18 人に対して教員 1 人を配置すると規定
されているにもかかわらず、順守されていないことにも触れ「2026 年度までに同法に基づき定数の改善を図
る」とした。
また、義務教育の就学につなげるため、幼稚園や保育園への入園方法などを説明する多言語のガイドブ
ックを作成することなどを決めた。
今年 4 月に施行した改正入管法は、農業や介護などの 14 業種で新たな外国人の在留資格を設けたほ
か、熟練技能者に家族の帯同を認めており、国内で日本語教育の必要な外国籍の子どもが更に増えること
が想定される。報告書は「法改正による新たな共生社会を実現するためには、外国人の子どもの教育充実
が必要」と明記した。【水戸健一】
報告書で求めた主な施策
・就学状況を把握し、多言語での就学案内を徹底
・義務標準法に基づき日本語教員定数を改善
・日本語指導者を増やすため、全国的な研修の機会を確保
・高校入試で外国人生徒への特別な配慮を促進
・特別支援学校などに日本語指導補助者や母語支援員を配置
・外国人のための幼稚園(保育園)の就園ガイドを作成
・都道府県、政令市に少なくとも 1 校の夜間中学の設置を促進
・母文化を尊重しつつ、日本文化への理解を促進
にほんでいきる
外国からきた子どもたち 言語指導、善意頼り 統一的な学習できず
毎日新聞 2019 年 6 月 14 日 東京朝刊
ボランティアによる日本語教室で学ぶフィリピンからきた3きょうだい=埼玉県越谷市で、奥山はるな撮影
外国籍の子どもらにとって、地域の日本語教室は日本語を学べる重要な場所になっている。学校での指
導体制は十分とはいえず、日本語教室には受け皿の役割が期待される。だが、ボランティア頼みで学習時
間も短く、体系的に日本語を習得できる仕組みが構築されていないなど課題も少なくない。
4月上旬、埼玉県越谷市の日本語教室にフィリピンから来た3きょうだいの姿があった。中学2年の長男
(13)と小学6年の長女(11)、小学3年の次男(8)。4月から地元の公立小中学校に通っている。
3人は日本人の父とフィリピン人の母との間に生まれた。セブ島の学校に通っていたが、両親が「日本で
生活させたい」と考え、今年1月に来日。日本語が話せず、新年度のスタートまでに簡単な日本語を覚えら
れるよう、父が日本語教室に通うことを勧めた。
市内にあるボランティアの教室は、おおむね週1回の開催で2時間程度。3人は4カ所の教室で学習する。
先生役は大学生や元教員、高齢者などさまざまで、統一のテキストもない。この日の教室では、女性ボラン
ティアが文房具の名前を教えていた。実物を示しながら「えんぴつ」「けしごむ」などと英語を交えて繰り返し
た。「学校で分からないことがあったら『キリンモード』になってね」。ボランティアは、キリンのように首を伸ば
して、同級生の様子をうかがうことをアドバイスした。
別の日。3人は違う教室で、学校の決まり事を学んでいた。「起立」「礼」「着席」--。号令に合わせ始業
のあいさつをする。教室間の情報共有はなく、学習内容も連携しない。その結果、就学まで2週間を切って
も、3人は国語などの教科名を知らなかった。
東京都荒川区で、外国から来た子どもへの日本語指導などを行うNPO多文化共生センター東京の枦木
(はぜき)典子代表理事は「日本語教室は大半がボランティア頼みで、日によってスタッフが変わり継続的な
指導ができない」と指摘。「学年ごとに学習する言葉をまとめた多言語の教材が必要。国が主導して作成し、
広めるべきだ」と提言する。
入学から1カ月がたった5月中旬。3人は学校で教員や同級生と簡単な英語でコミュニケーションを取って
いた。「休み時間に縄跳びをした」。そう笑顔を見せるものの、学校で日本語指導員が付くのは週1時間の
みで、授業は黒板に書かれた文字を写しているだけという。3人は鉛筆を走らせる仕草をして「This only
(これだけ)」と学習内容を説明した。ノートには「計算」という文字もあったが、3人は読むことができなかっ
た。
3人が通う教室の一つ「多文化こども学習塾」の小川満代表は「行政に主導してもらい、我々が手伝えるよ
うな仕組みがあったら良いのではないか」と話した。【奥山はるな】
にほんでいきる
外国からきた子どもたち 多文化理解と日本社会語る 茨城でイベント /東京
毎日新聞 2019 年 5 月 26 日 地方版
異なる文化の間を行き来した経験を語る(左から)劉セイラさん、ライトナー・カトリン・友海子さん、星野ルネ
さん、トラン・ゴック・フックさんの4人=茨城県つくば市で
公益社団法人「日本語教育学会」が企画したトークセッション「『+日本語』の人生をたずねて-境界を生
き、境界をほぐす4人の物語」が25日、茨城県つくば市で開かれた。世界各国から来日し、さまざまなルー
ツを持つ4人が、日本社会の特色や多文化間を行き来した経験を語った。
中国出身の声優、劉(りゅう)セイラさんはアニメに魅せられて日本語を学び、日中両国で活躍。「例えば中
国人はピンポン(卓球)できるとか固定観念があるかもしれないが、消しましょう。実際に話して感じたことを
大切にして」と呼びかけた。
オーストリア出身の立教大准教授、ライトナー・カトリン・友海子(ゆみこ)さんは、母が日本人で、8歳から
柔道に打ち込んだ。「日本の文化や考えを尊重しながら『外の視点』を持って互いに刺激を与えたい」と話し
た。
カメルーン生まれの漫画家、星野ルネさんは4歳で来日。電車でアフリカ系の友人らと戦国武将の話をし
ていたら乗客に驚かれたといい、「(日本人に)『流ちょうな日本語は日本人がしゃべる』と思われている」と
指摘した。
1968年に留学生として来日したトラン・ゴック・フックさんは、ベトナム戦争の影響で帰国できなくなり、埼
玉県川口市で人工呼吸器を開発する会社「メトラン」を設立。低体重児の生存率を世界的に高めたとして、
前の天皇陛下の訪問を受けたこともあり「日本人になった証しと思った」と話した。【奥山はるな】
〔都内版〕
にほんでいきる
外国からきた子どもたち 中国出身高校生「見えない壁」越え 「急がなくていい」
毎日新聞 2019 年 5 月 24 日 東京朝刊
放課後、外国籍の生徒らと自習する石川名月さん(中央)=千葉県柏市で2019年5月10日、玉城達郎撮
影
日本語が十分に理解できないため、学校生活で孤独を感じる外国籍の子どもは少なくない。中国出身で
千葉県柏市立柏高校3年の石川名月さん(17)にとっても、日本の学校生活は戸惑いの連続だった。言葉
の通じない環境に置かれた子どもの気持ちを知ってほしい。そんな願いを伝えるため、石川さんは昨年、外
国籍の子どもらが対象の高校生日本語弁論大会に出場。「見えない言葉の壁」と題したスピーチで、最高賞
の外務大臣賞を獲得した。
石川さんは、中国籍の両親が日本で建築関係の仕事をしていたため、中国で祖父母に育てられた。弁論
大会では中学2年の2月に来日後、通学した柏市の中学校での出来事を発表した。
石川さんは日本語がほとんど話せない状態で中学3年に編入した。ある日、担任から「明日は白い靴を履
いて来てください」と指示があった。翌日は大雨だったが、石川さんは前日に母と一緒に買った靴を履いて
登校した。ところがクラスメートは白い靴を履いていない。担任が「白い靴下」と言ったのを聞き間違えていた。
スピーチでは、こう訴えた。
せっかく買ってもらった白い靴は泥で汚れていました。そんなことも分からないのかと涙が出てきました。
中国では友達も多く勉強も得意だったのに、日本では授業が分からずクラスメートに話しかけることもでき
ない。ある時、男子生徒が投げた筆箱が背中に当たった。「謝謝(シェシェ)」と言う生徒に「それは『ありがと
う』という意味だよ」と指摘すると、周りのクラスメートがバカにするかのように一斉に笑った。
どうしてみんなで笑うのでしょう。とても悲しく悔しかった。
日本語を理解し、早く友達を作りたいと勉強に打ち込んだ。帰宅後も、日本語教室や松戸市にある自主夜
間中学に通い、1カ月で1500字の漢字の読みを覚えた。中学校で週2時間、日本語を指導してくれたボラ
ンティアの男性は「急がなくていいよ。ゆっくりやればいい」と声をかけてくれた。同じクラスの男子生徒は、
誰も話しかけてくれない中、会うたびに「こんにちは、石川さん」とあいさつしてくれた。気にかけてくれる人が
いる。そう思うと心が軽くなった。
何気ないことで、他の人がどれほど傷ついているか分からないことがある。同時に何気ないことでどれほ
ど救われているか気づかないこともあるでしょう。
石川さんは、国際教育や外国語を母語とする生徒の指導に力を入れ、日本語教育の一環で毎年、弁論大
会に参加している市立柏高校に進学。弁論大会の県大会、関東大会を勝ち抜いて全国大会に臨んだ。スピ
ーチを始めると、当時の記憶がよみがえり涙が込み上げてきた。5分間の発表の最後、深く息を吸い込んで、
こう結んだ。
「急がなくていい」。これは国際交流を考えるときにも言えるのではないかと思います。国際交流は時間が
かかります。相手とじっくりと向き合うこと。時間を共有すること。これこそが大切なのではないかと思います。
【堀智行】=随時掲載
外国籍就学不明を調査 文科省、全国自治体に依頼
日本に住民登録している義務教育年齢の外国人のうち1万6000人以上が学校に行っているか確認でき
ない「就学不明」となっている問題で、文部科学省は都道府県教委などを通じ、全国の1741自治体に就学
不明者数の調査を依頼した。回答期限は6月14日で、年内に結果をとりまとめる。
調査の名前は「外国人の子どもの就学状況等調査」。今年5月1日時点で、小中学校や外国人学校に在
籍している人数や、学校に通っていない「不就学」となっている人数、就学不明の人数について回答を求め
ている。
また外国籍児の受け入れ態勢について、転入時に窓口で就学希望を確認しているか、就学案内を複数の
言語で用意しているかといった質問項目を設けた。
日本人の場合、保護者は子どもに教育を受けさせる就学義務を負うが、外国籍は対象外で、就学不明や
不就学の状態に陥るケースがある。毎日新聞が昨秋、外国籍児の多い100自治体を抽出して行ったアン
ケート調査では、6~14歳の外国籍児約7万7500人のうち2割にあたる約1万6000人が就学不明で、1
00自治体中38自治体が就学状況を確認していなかった。【奥山はるな】