リビオ姫路大津 ブルームガーデンのぞみ野 project 1 54...

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54 55 Project 1 3 調9 調調夏祭りの様子。多くの子ど もたちで賑わった 街区公園。もともとため池のあった場所に作られた ため、ため池の形を記憶として残している 調201112 13 リビオ姫路大津 ブルームガーデンのぞみ野 「ブルームガーデンのぞみ野」は、新日鉄興和不動産が分譲する住宅地(293 区画)。きめ細かなルールブックづくりや居住者による管理組合を発足、美 しいまちなみの維持管理とともに資産価値を高め、コミュニティづくりを促 進するマネジメントシステムを導入しています。 Project 1 左から出田昭仁さん、齊藤広子さん 公道上に設けられた植栽帯。道路を管理 する姫路市との協定により、管理組合が 維持管理を行う JR2 15 20114 3 撮影:福尾行洋 ランドスケープデザインに配慮した植栽

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Page 1: リビオ姫路大津 ブルームガーデンのぞみ野 Project 1 54 定されています。そのための、『チーム』かを含めて、マネジメントシステムが設のは住民です。その体制をどうつくるの

5455 Pro ject 1

のは住民です。その体制をどうつくるの

かを含めて、マネジメントシステムが設

定されています。そのための、『チーム』

(管理組合)、『ルール』(地区計画、景観協

定、ガイドライン)、『その他のサポート』

(コミュニティ・マネージャー、管理会

社)の3つがあるのです」と強調します。

事業主でもある新日鉄興和不動産姫路

事業所所長の出田昭仁さんは、「これま

で分譲事業者はまちをつくり、販売した

ら終わると思われていたかもしれませ

ん。しかし、それでは価値ある住宅地を

維持管理することは困難ですし、事業者

として、居住者の皆さんが自立できる状

態までサポートする必要があると感じて

います」と、このしくみをつくった背景

を話されます。これまで、管理組合を対

象として継続開催されてきた勉強会には

居住者の9割を超える参加があることか

らも、きめ細かい連絡調整、情報発信を

されていることがわかります。

まだ入居が始まって半年ほどですが、

今年は居住者による実行委員会が組織さ

れ、初めての夏祭りが行われました。

「勉強会を繰り返しているプロセスも

大事で、顔なじみになっていくことはも

ちろんですが、この活動を通じて『まち

に住む』ということを実感されていると

感じます。また他の人から『素敵なまち

ね』と言われて、再認識されている方も

いらっしゃいます。先日、住民の方に対

面式のアンケート調査を実施しました

が、段々と『自分たちのまちを作り上げ

ていくためのルールだ』と感じてこられ

ているようです」と齊藤さん。

マネジメントシステムは、まちに快適

に暮らし、そしてまちの価値を上げてい

くために必要な「ご近所力」をうまく循環

するためのもの。最初の居住者にはその

認識が広がり始めています。そしてきめ

細かなルールブックの作成をはじめ、住

み継ぐための「価値観の継承」について

も、美しいまちなみの成熟とともに始

まっています。

夏祭りの様子。多くの子どもたちで賑わった

街区公園。もともとため池のあった場所に作られたため、ため池の形を記憶として残している

り奨励賞」を受賞しました。

ふたつ目の「ふれあい、育てる街」に関

しては、サークル活動やオーディオ鑑賞

など多目的に利用することができるコ

ミュニティハウスが整備され、管理組合

で所有・運営されています。将来的に

は、維持管理費用捻出のための事業活動

(テナント貸、コミュニティビジネスの拠

点等)も視野に入れられているそうです。

最後の「安心・安全な街」を実現するた

めには、街区内の通過交通を減らす工夫

とともに、緩やかなカーブを描くコミュ

ニティ道路は自動車の減速を促す工夫を

行っています。また、街区内に交番を移

設し、まちの清掃や定期的な巡回を行う

まちのコンシェルジュとなる常駐のコ

ミュニティ・マネージャーを設置してい

ます。

そして新しい住宅地でこれらのしくみ

がうまく回るように導入されているの

が、マネジメントシステムです。このマ

ネジメントシステムのプロデューサーであ

る明海大学不動産学部教授の齊藤広子さ

んは、「これまで海外も含め多くの素晴ら

しい住宅地、失敗した住宅地を調査して

きましたが、そこから学んだことは、魅

力的につくるだけではなく、魅力を支え

るマネジメントシステムが重要だと感じ

ました」と話すとともに、「まちを育てる

ながら美しいみどりを育てていく工夫があ

ります。そしてこれらのみどりの軸の中心

には大きな公園が配置されるとともに、

無電柱化が図られることで、広々とした

空が広がり開放感が生まれています。姫

路市の地区計画では、建物の用途や敷地

に対する大きさ、道路からの壁面の位置

が定められ、また住民どうしによる景観

協定では、敷地や外構の基準や駐車場、

緑化に関する基準、建物の色彩基準など

が細かく定められており、価値のあるま

ちなみづくりのために運営委員会による

審査が行われます。これらの美しい景観

づくりが評価され、2011年12月には

兵庫県による「第13回人間サイズまちづく

リビオ姫路大津

ブルームガーデンのぞみ野「ブルームガーデンのぞみ野」は、新日鉄興和不動産が分譲する住宅地(293区画)。きめ細かなルールブックづくりや居住者による管理組合を発足、美しいまちなみの維持管理とともに資産価値を高め、コミュニティづくりを促進するマネジメントシステムを導入しています。

まちの価値を高め、

居住者が安心して暮らせる

エリアマネジメントシステムの導入

Project1

左から出田昭仁さん、齊藤広子さん

公道上に設けられた植栽帯。道路を管理する姫路市との協定により、管理組合が維持管理を行う

JR山陽本線「姫路」駅から岡山方面に

2つ目の駅である「はりま勝原」駅から徒

歩約15分。そこには2011年4月にま

ち開きをしたばかりの「リビオ姫路大津

ブルームガーデンのぞみ野」があります。

ここは、「世代を超えて住み継がれている

まちには、美しいまちなみやみどりの景

観とともに、何か特別な時間が刻まれて

いる」という理念のもと開発され、それ

を実現するために、時間をかけてまちを

育てていくしくみが内包されています。

その中心となるのが、「美しい街」「ふ

れあい、育てる街」「安心・安全な街」の

3つのポイントです。ここではそれらを

実現するために、さまざまな工夫が凝ら

されています。

ひとつ目の「美しい街」では、景観コー

ディネーターのもと美しい景観づくりに向

けたしくみがつくられています。生活空

間の一部となるコミュニティ道路がカーブ

を描きながら街区をつなぎ、道路両側に

は緑地帯を設け、管理組合が維持管理し

撮影:福尾行洋

ランドスケープデザインに配慮した植栽