ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する 軸 rf コ … 年代に開発された50 Ω...

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ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する 同軸 RF コネクタの 選定/取り扱いガイダンス アプリケーションノート このアプリケーションノートでは、同軸 RF コネクタの取り扱いと管理について説明します。 このガイダンスによって、ローデ・シュワル ツの測定機器を使って十分な再現性を持つ測 定値を獲得できるだけでなく、コネクタの寿 命を延ばすことが可能になります。 アプリケーションノート Mark Bailey 2012-12-12, 1MA99, Version 1.0

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ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する 同軸 RF コネクタの 選定/取り扱いガイダンス アプリケーションノート

このアプリケーションノートでは、同軸 RF

コネクタの取り扱いと管理について説明します。

このガイダンスによって、ローデ・シュワル

ツの測定機器を使って十分な再現性を持つ測

定値を獲得できるだけでなく、コネクタの寿

命を延ばすことが可能になります。

アプリケーションノート

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目次

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 2

目次

1 要約 .......................................................................................... 3

2 同軸コネクタ使用のための簡単なヒント ................................ 4

3 同軸コネクタのタイプ ............................................................. 5

3.1 タイプ Nコネクタ(50 Ω) ........................................................................... 6

3.2 サブミニチュアバージョン A(SMA)コネクタ........................................... 6

3.3 3.5 mm 精密型コネクタ ................................................................................. 7

3.4 2.92 mm 精密型コネクタ ............................................................................... 8

3.5 2.4 mm精密型コネクタおよび 1.8 mm精密型コネクタ .............................. 8

3.6 1.0 mm精密型コネクタ ................................................................................. 9

3.7 測定機器-“特殊コネクタ” ............................................................................ 9

3.7.1 高強度テストポート・コネクタ ..................................................................... 9

3.7.2 ローデ・シュワルツのテストポート・アダプタシステム ...........................10

4 保管、検査、クリーニング、取り扱い ......................................... 11

4.1 保管 ..............................................................................................................11

4.2 検査 ..............................................................................................................11

4.3 クリーニング ................................................................................................13

4.4 取り扱い .......................................................................................................14

5 付録:同軸伝送ラインの電気的特性 ...................................... 17

5.1 特性インピーダンス .....................................................................................17

5.2 使用可能な上限周波数 .................................................................................18

6 参考文献 ................................................................................. 19

7 追加情報 ................................................................................. 20

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要約

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 3

1 要約 同軸コネクタは、RF とマイクロ波のアプリケーションにおいて重要な部品です。その重要性と

システム性能全体に与える効果は時として見過ごされることがあります。

このアプリケーションノートでは、RF とマイクロ波のアプリケーションで使われる同軸コネク

タを対象として、使用可能なコネクタ・タイプに関する情報を提供するとともに、コネクタの

管理方法とコネクタの電気的特性について説明します。

この情報は、ローデ・シュワルツの測定機器を使用するすべての人にとって重要であり、以下

の点を理解する上で手助けとなります。

正しい同軸コネクタ・タイプの選定

正確で再現性のある測定値を獲得し、最大限の同軸コネクタの寿命と性能を達成する

ために必要なコネクタの取り扱い

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同軸コネクタ使用のための簡単なヒント

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 4

2 同軸コネクタ使用のための簡単なヒント 同軸コネクタの使用に関するガイドを以下にまとめます。さらに詳しい情報は、このアプリ

ケーションノートの本文に記載されています。

1. 使用可能な上限周波数より低い周波数で作動するケーブルとコネクタを選定する。

2. 測定機器/被測定物とのインタフェースに適合するコネクタ・タイプを使用する。

3. 精密型コネクタとそれ以外のコネクタを接続しない。

4. 使用する前にコネクタに汚れや損傷のないことを確認する。

5. 手で締めるだけでコネクタ同士を簡単につなげることができる。

6. ひとつのコネクタに対して、指先でナットの部分だけを回す。それ以外の部分を回し

てはいけない。

7. 締め付けを確実なものにするために、校正済みのトルクレンチを使用する。

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同軸コネクタのタイプ

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 5

3 同軸コネクタのタイプ 通常、同軸ケーブルは、同軸構造と規定のインピーダンを有する同軸コネクタで終端されます。

同軸ケーブルの電気的特性に関する詳しい情報は、第 5 章の“付録:同軸伝送ラインの電気的特

性”に記載されています。

一般的に、同軸コネクタは外部導体と内部導体の接触部から構成され、他のコネクタと接合が

できるようになっています。最適な電気性能を得るために、通常、金属コネクタには銀メッキ

または金メッキが施されています。

コネクタのタイプ選定は重要で、周波数範囲、耐電力、物理的寸法など、使用されるアプリ

ケーション要件によって決まります。さらに、コネクタには各種の品質等級があり、計量、計

装、生産の分野での使用をサポートしています。

図 1 に、市販されているコネクタ・タイプとその動作周波数の例を示します。同軸コネクタの

導体部の物理的寸法が小さくなるほど、使用可能な上限周波数が高くなるので覚えておいてく

ださい。大部分のコネクタは、名前の後に外部導体の内径を付けて表記されます。

図 1 同軸コネクタと動作周波数

共通システムの中で、複数タイプのコネクタを使用する場合には注意が必要です。これは、最

も低い周波数範囲を持つコネクタ・タイプによってシステムの周波数範囲が決まるためです。

特定のコネクタ・タイプの性能は、必ずコネクタの供給メーカによるチェックを受けなければ

なりません。

1 GHz

2 GHz

4 GHz

4 GHz

10 GHz

11 GHz

12 GHz

15 GHz

18 GHz

18 GHz

26.5 GHz

38 GHz

40 GHz

50 GHz

67 GHz

110 GHz

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110

UHF

F

BNC

SMB

SMC

Type N

SMA

TNC

Precision N

PC 7 mm

PC 3.5 mm

SSMA

PC 2.92 mm

PC 2.4 mm

PC 1.85 mm

PC 1 mm

Frequency (GHz)

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同軸コネクタのタイプ

タイプ Nコネクタ(50 Ω)

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 6

以下の各章では、測定機器で使われる最も一般的なタイプの同軸コネクタの詳細について説明

します。

3.1 タイプ Nコネクタ(50 Ω)

最大周波数: 11 GHz(通常型)、18 GHz(精密型)

絶縁体: PTFE1(通常型)、空気(精密型)

タイプ N(Navy)のコネクタは、耐久性、耐候性、中サイズ、および 11 GHz までの対応性能

がある RF コネクタ、という要求を満たすために開発されたコネクタです。タイプ N コネクタ

の精密型は空気絶縁体を採用し、18 GHzまで使用することができます。

* 注:

1. 75 Ωと 50 Ωのタイプ N コネクタは共通のネジ径を持っていますが、適合性はあ

りません。50 Ωのタイプ N コネクタのオスピンは、75 Ωのタイプ Nコネクタの

メスソケットより大きく、これらのコネクタを接続するとコネクタの損傷を招き

ます。

2. 75 Ωのタイプ N コネクタの上限周波数は 4 GHzです。

3.2 サブミニチュアバージョン A(SMA)コネクタ

最大周波数: 12 GHz

絶縁体: PTFE

1960 年代に開発された 50 Ω SMAコネクタは半精密型サブミニチュアユニットで、DCから 12

GHz まで優れた電気的性能を発揮します。PTFE1 絶縁体を使用している SMA コネクタは、小

型で耐脱着操作回数はわずか 500 回に設定されています。SMA コネクタは、最も一般的に使わ

れている RF 用およびマイクロ波用のコネクタ・タイプです。18 GHzまで動作可能な SMA コ

ネクタを供給しているメーカもあります。

1 PTFE:ポリテトラフルオロエチレン

図 2 タイプ N コネクタのオス(左)とメス(右)

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同軸コネクタのタイプ

3.5 mm 精密型コネクタ

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このコネクタ・タイプは、異なる供給メーカが出しているコネクタごとにおいて、大きな機械

的ばらつきがあると言われています。ユーザは、物理的損傷を回避するために細心の注意を

払って適合性のチェックを行わなければなりません。

3.3 3.5 mm 精密型コネクタ

最大周波数: 26.5 GHz

絶縁体: 空気

3.5 mm 精密型コネクタは、SMA コネクタを基に作られました。その設計思想において主眼と

したのは、幾度となく繰り返される接続操作を可能にし、一般的な SMA コネクタと接続できる

頑丈な物理的インタフェースを達成することでした。

一部のオス SMA コネクタではセンタピンの公差が大きすぎて損傷を招くことがありますが、こ

のコネクタは安価な SMA コネクタと十分な適合性があります。

図 4 3.5 mm 精密型コネクタのオス(左)とメス(右)

図 3 SMA コネクタのオス(左)とメス(右)

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同軸コネクタのタイプ

2.92 mm 精密型コネクタ

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3.4 2.92 mm 精密型コネクタ

最大周波数: 40 GHz

絶縁体: 空気

信頼性の高いこのコネクタは、既定の K 周波数帯域をカバーします。このコネクタは高い性能

を必要とする測定システムと測定アプリケーションで使用され、SMA コネクタおよび 3.5 mm

コネクタと互換性があります。

図 5 2.92 mm コネクタのオス(左)とメス(右)

3.5 2.4 mm精密型コネクタおよび 1.8 mm精密型コネクタ

最大周波数: 50 GHz(2.4 mm)

67 GHz(1.85 mm)

絶縁体: 空気

これら 2 タイプの精密型コネクタは相互に互換性がありますが、SMA、3.5 mm、2.92 mm との

互換性はありません。その堅牢な設計により、内部導体が接合される前に外部導体が嵌合しま

す。2.4 mm と 1.85 mm のコネクタは、それぞれ Q コネクタおよび Vコネクタ としても知られ

ています。

図 6 2.4 mm コネクタのメス(左)、1.85 mm コネクタのメス(中央)、および1.85 mm コネクタのオス(右)

Photograph NPL

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同軸コネクタのタイプ

1.0 mm精密型コネクタ

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3.6 1.0 mm精密型コネクタ

最大周波数: 110 GHz

絶縁体: 空気

このコネクタ・タイプでは、同軸部の導体形状が小さく、高い周波数をサポートできるように

なっています。接合部とネジ部の径は、強度を最大に、接続する過程において内部導体の損傷

を最小にする設計となっています。

3.7 測定機器-“特殊コネクタ”

一部の測定機器では、機械的強度を高めたコネクタ、あるいは、保護アダプタといった特殊な

コネクタを使用して、測定機器のコネクタ接合面を保護します。

3.7.1 高強度テストポート・コネクタ

このコネクタ・タイプは、強度の高いインタフェースを測定機器に接続するために、コネクタ

に大きなネジ部があります。高強度コネクタは、3.5 mm、2.92 mm、2.4 mm、1.85 mmのタイ

プが用意されています。オスコネクタは、通常、測定機器へ接続され、高強度コネクタを持つ

ケーブルと接続できるだけでなく、機械的寸法の小さい標準のメスコネクタへの接続も行うこ

とが出来るフレキシビリティを持っています。図 8 に示すオスコネクタの外ネジと内ネジをご

覧ください。

図 7 1 mm コネクタのオス(左)とメス(右)

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同軸コネクタのタイプ

測定機器-“特殊コネクタ”

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図 8 ローデ・シュワルツの 3.5 mm 高強度ケーブル

ケーブルの他に、測定機器の高強度インタフェースから他の同軸コネクタ・インタフェースへ

直接変換することができる高強度アダプタがあります。これらのアダプタは“コネクタ・セー

バ”とも呼ばれることがあり、測定機器のコネクタに対する保護インタフェースとして機能し

ます。

3.7.2 ローデ・シュワルツのテストポート・アダプタシステム

これらの多様な測定機器コネクタ・インタフェースは、1 台の測定機器で異なるコネクタ・イン

タフェースをサポートできるようになります。また、損傷しても測定機器に影響を与えること

なく、あまり費用をかけずに簡単に交換することができます。

図 9 R&S テストポート・アダプタのテストポート・インタフェース(左)とタイプ N・インタ

フェース(右)

詳細については、以下のローデ・シュワルツのアプリケーションノートをご参照下さい。

“Interchangeable Port Connector System, Test Port Adapter System”, 1MA100.

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保管、検査、クリーニング、取り扱い

保管

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4 保管、検査、クリーニング、取り扱い 同軸コネクタの接合部は損傷しやすく、損傷したコネクタをそのまま使い続けると他のコネク

タの損傷につながります。

以下のためにも、同軸コネクタの管理が不可欠となります。:

RF 挿入損失とインピーダンスの不整合を最小にする。

十分に安定した再現性のある測定を確保する。

高価な測定機器のコネクタの損傷を最小にする。

コネクタの寿命を最大限まで延ばす。

4.1 保管

コネクタは、汚れのない乾燥した環境の中で保管しなければなりません。納入時に使われてい

た梱包または発泡材で仕切られた箱を使用してください。保護用のプラスチック製エンド

キャップを使用し、接合面との接触を防止してください。

接合面の損傷を防止するため、緩んだ状態で接続されたコネクタを保管することや接合面を下

にした状態で置かないでください。

精密型コネクタを落したりしないでください。

4.2 検査

適正な保管と取り扱いのなされたコネクタでも、その使用に伴い、コネクタを接続するときに

生じる機械的プロセスの影響によって電気的性能が低下します。そのため、接続前にコネクタ

の目視検査を必ず実施することをお勧めします。損傷したコネクタは廃棄してください。

目視検査は、顕微鏡または拡大鏡を使って行うことをお勧めします。以下などについて検査を

行ってください。

汚れ コネクタの内部部品、絶縁体、ネジ部に、金属粒子、繊維、他の混入物が

付着していないか調べます。PTFE の中に金属粒子が蓄積すると電気的性

能に影響を与えるため、この検査は SMA コネクタでは特に重要な項目と

なります。

外部導体 接合面の検査を行って、ひどい汚れや他のコネクタの損傷の原因となりう

る擦り傷の深さ、金属の欠損の有無を確認します。

ネジ部が円形で、くぼんでいないことをチェックします。

接合面の正常磨耗は、均等に分布したわずかなこすれと目視可能なダレと

して現れます。

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保管、検査、クリーニング、取り扱い

検査

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内部導体 損傷を生じることなくメスソケットと一直線に嵌合するためにも、オスピ

ンはまっすぐで、中心に位置しているか同心でなければなりません。

オスピンの絶縁体サポートを検査します。

メスソケット内の接触部は高い精度で作られているので、細心の注意を

払って扱わなければなりません。図 10 に示すように、すべての接触部分

が存在し、均一に揃っていて、損傷がないことをチェックします。

図 10 良好な状態の 3.5 mm コネクタのメスソケット

図 11に中心導体の損傷例を示します。

図 11 コネクタの損傷例:メススロテッドコネクタ側で曲がったフィン

ガ(左)と偏心したオスピン(右)

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保管、検査、クリーニング、取り扱い

クリーニング

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 13

4.3 クリーニング

コネクタが良好な物理的状態にあることを目視検査で確認できたにもかかわらずクリーニング

の必要がある場合、以下の用具が必要となります。

溶剤を含有していない低圧圧縮空気(対応の注意を遵守してください)

イソプロパノール(対応の注意を遵守してください)

クリーニング用の発泡スワブ

不織布の清掃用ふきん

木製の楊枝

拡大鏡および静電気(ESD)について注意をしながら、以下の手順でクリーニングを進めてく

ださい。

1. 圧縮空気を吹き付けて、ネジ部と接合面から大きなゴミを取り除きます。空気をコネ

クタの中へ直接吹き付けることはしないでください。残っている小さな粒子を慎重に

除去するために、木製の楊枝を使用します。

2. イソプロパノールを湿らせたスワブを使用

し、ネジ部に対して平行にコネクタの外周

に沿って円を描くようにコネクタのネジ部

のクリーニングを行います(図 12)。

3. イソプロパノールを湿らせたスワブを

使ってコネクタ内部のクリーニングを行

うときは、損傷防止のために細心の注意

を払い、加える圧力を最小にする必要が

あります。これは特に、内部導体と外部

導体を同心状態に保つために、空気を絶

縁体とするコネクタに適用されます。

PTFE を絶縁体とするコネクタにも同等

レベルの注意を払ってください。スワブ

が汚れてクリーニングに適さなくなった

ら、新しいものに交換してください。

メスコネクタでは、接合部周辺のクリーニングを行うときに注意が必要です。オスコ

ネクタでは、ネジ部からセンタピン間の部分をクリーニングする場合には、木製の楊

枝の先端に不織布をかぶせ、十分な注意を払ってクリーニングを進めてください。

4. コネクタの乾燥と最終検査の実施には圧縮空気を使用し、ゴミ、残留物、または損傷

の痕跡がないことを確認します。

図 12 ネジ部のクリーニング

図 13 内部のクリーニング

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保管、検査、クリーニング、取り扱い

取り扱い

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 14

コネクタ用の適切なクリーニング材料について情報が必要な場合は、最寄りのローデ・シュワ

ルツの事務所へご連絡下さい。

4.4 取り扱い

測定機器と被測定物を守るために、導電性の作業区域と接地されたリスト・ストラップを使っ

て、ESD に関する注意を遵守して頂くよう強くお勧めします。

ほとんどのケースで、検査を終えて汚れや損傷のないコネクタはすぐに使用することができま

す。コネクタの使用履歴がわかっていない場合や精度が要求されるアプリケーション(例:計

量)では、校正済みのゲージを使って接合面の機械的性質を測定する最終ステップがあります。

このステップは、接合公差を超えていないこと(超えていると、接合されるコネクタが損傷す

る可能性がある)を確認するために、すべてのコネクタに適用すべきだと考えています。

コネクタ同士を接続する場合には、以下の手順で行って下さい。

1. 2 つのコネクタを慎重に一直線上に揃え、共通軸に沿って接続します。

図 14 コネクタを一直線上に揃え、共通軸に沿って接続する

2. 外ネジの付いた導体がかみ合い始める前に、突き出たオスピンとメスソケットが嵌合

するタイプのコネクタでは、接合するコネクタの内部導体の一方または両方の損傷を

防止するために十分な注意を払ってください。

3. 外部コネクタのナットだけを回してください。

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保管、検査、クリーニング、取り扱い

取り扱い

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 15

HOLD

図 15 指で接続部を締め付ける(ナットだけを回す)

接合部の一方だけを他方のコネクタに対して回すことはしないでください。これをす

ると、接合面がお互いに対して動くことになり、特にオスの内部導体とメスの内部導

体の磨耗が加速され、損傷の危険性が大きくなります。

コネクタの接合部に汚れや損傷がなければ、半回転を超えない程度の範囲で必要トル

クを加えてナットを指で締め付けることが可能です。この時点に至る前に抵抗を感じ

る場合、あるいはスパナが必要な場合には、コネクタの一方または両方が損傷してい

る可能性があり、コネクタを切り離して直ちに検査を行ってください。

4. しっかりと接続したら、スパナを使って反対側のコネクタを固定しながら、校正済み

のトルクレンチを使ってナットにトルクを指定の限界値まで加えてください(図 16)。

HOLD

図 16 接続部へ正しいトルクを加える

5. トルクレンチが図 17 に示すような“折れた”状態となったときが正しいトルクに達した

ときです。この限界を超える力を加えることはしないでください。

Page 16: ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する 軸 RF コ … 年代に開発された50 Ω SMAコネクタは半精密型サブミニチュアユニットで、DC から12

保管、検査、クリーニング、取り扱い

取り扱い

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 16

図 17 正しいトルクの設定(上)とトルクをかけ過ぎた場合(下)

表 1 に示すように、各々のコネクタ・タイプには固有の限界トルクが設定されていま

す。

コネクタ

タイプ

限界トルク ナットの

開口部寸法

ローデ・シュワルツのトルクレンチ

lb-inch Nm Inch mm 部品番号 部品の内容

高強度 13.3 1.5 3/4 20 1311.8213.03 トルクフラットレンチ 1.5 Nm

タイプ N 13.3 1.5 3/4 20 1311.8213.03 トルクフラットレンチ 1.5 Nm

SMA 5 0.56 5/16 8 適用なし Not available

3.5 mm 8 0.9 5/16 8 1311.8213.02 トルクフラットレンチ 0.9 Nm

2.92 mm 8 0.9 5/16 8 1311.8213.02 トルクフラットレンチ 0.9 Nm

2.4 mm 8 0.9 5/16 8 1311.8213.02 トルクフラットレンチ 0.9 Nm

1.85 mm 8 0.9 5/16 8 1311.8213.02 トルクフラットレンチ 0.9 Nm

1.0 mm 3 0.34 0.236 6 1315.2803.02 トルクフラットレンチ 0.34 Nm

表 1 コネクタの限界トルク

注:

この表に示す値は、ローデ・シュワルツの供給するコネクタ(SMA を除く)に対する

ものです。他の同軸コネクタについては、損傷防止のためにその正しい限界トルクを

コネクタの供給メーカから入手して下さい。

適合性のあるコネクタ・タイプを接続するときには注意が必要です。3.5 mm コネクタ

と SMA コネクタを例に挙げると、2 つのコネクタ・タイプの低い方の限界トルクを使

用しなければなりません。

繊細な部品、高価な部品のコネクタが損傷する可能性を減らすために、“コネクタ・セーバ”の使

用をお勧めします。

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付録:同軸伝送ラインの電気的特性

特性インピーダンス

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 17

5 付録:同軸伝送ラインの電気的特性 RF とマイクロ波のアプリケーションでは、エネルギーを信号源から負荷へ送るのに不平衡同軸

伝送ライン構造が使われています。これらは可撓構造または剛体構造のいずれかにすることが

でき、一般的に 50 Ω の特性インピーダンスを有しています。

5.1 特性インピーダンス

同軸ケーブル(coax)の特性インピーダンスは、導体の物理的寸法と一定の誘電率との関数で

表されます。図 18 に同軸構造を示します。

d:内部導体の外径

D:外部導体またはシールドの内径

εr :比誘電率または誘電率

式 1は、特性インピーダンスを求めるための方程式です。

式 1:同軸伝送ラインの単位長さ当たりの近似特性インピーダンス

同軸伝送ラインの重要な要件は、最小の挿入損失と良好な耐電力を持つことです。

空気充填の同軸伝送ラインでは、D/d の値が約 3.6 のときに単位長さ当たりの挿入損失は最小

となり、77 Ω の特性インピーダンスが得られます。

最大の耐電力はこれとは違う形状で得られ、計算した D/d の比が約 1.65 で耐電力は最大とな

り、空気では 30 Ω の特性インピーダンスが得られます。

50 Ω は、耐電力と単位長さ当たりの挿入損失との間の妥協値であり、大部分の RF とマイクロ

波のアプリケーションで使われる公称の特性インピーダンスとなります。

図 18 同軸構造の断面図

εr D d

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付録:同軸伝送ラインの電気的特性

使用可能な上限周波数

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5.2 使用可能な上限周波数

同軸伝送ラインでは、エネルギーは DC から高周波数まで横電磁界(TEM)モードと呼ばれる

単一モードで伝搬します。ここで、電界と磁界は両方ともエネルギーの伝搬方向と直角になり

ます。しかし、さらに高い周波数において、同軸形状は支配的な TEM モードと干渉する高次

モードがあります。そのため、最初の高次モードが伝搬を開始する周波数を計算し、この“カッ

トオフ周波数”(fc1)より低い周波数だけを使用する必要があります。

絶縁体を充填した同軸伝送ラインでは、最初の高次モードである横電界(TE11)のカットオフ

周波数は式 2 によって表されます。

(

)√

式 2:同軸伝送ラインにおける TE11のカットオフ周波数

一般的に、同軸ケーブルの使用可能な上限周波数は TE11 のカットオフ周波数の約 90~95% と

して定義されます。このカットオフ周波数より低い周波数では、必要な TEM モードだけが伝搬

します。

たとえば、空気充填タイプの 3.5 mm コネクタは以下の寸法を持っています。

d = 1.52 mm

D = 3.5 mm

εr ~ 1

したがって、最初の高次モードの“カットオフ周波数”である fc は約 38 GHz となります。供給

メーカの中には、3.5 mm 精密型コネクタの定格を 33 GHz にしているところもあります。

式 2 は、内部導体と外部導体の物理的寸法が小さくなるとともに、最初の高次モードのカット

オフ周波数が大きくなることを示しています。ただし、適切なケーブルを選定する場合には、

他の要件を満足させることも考慮しなければなりません。たとえば、表皮深さによる損失を最

小にすることや適切な耐電力を確保することなどが挙げられます。

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参考文献

1MA99_v1.0 ローデ・シュワルツ 測定機器で使用する同軸 RFコネクタの選定/取り扱いガイダンス 19

6 参考文献 Doug Skinner, “Guidance on using Precision Coaxial Connectors in Measurement”,

Version 3, National Physics Laboratory. 2007.

Uwe Kulms and Martin Müller, “Interchangeable Port Connector System, Test Port

Adapter System”, 1MA100, Rohde & Schwarz. 2006.

Huber & Suhner, RF Coaxial connectors, General catalogue, 2013.

Paul Pino, “Intermateability of SMA, 3.5 mm and 2.92 mm Connectors”, Microwave

Journal, Cables & Connectors Supplement, 2007.

“Microwave Connectors”、www.microwaves101.com

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追加情報

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