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第一章
SAPの基礎知識
ITライブラリー (pdf 100冊)http://www.geocities.jp/ittaizen/itlib1/
一般社団法人
情報処理学会 正会員
腰山 信一
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ITライブラリー (pdf 100冊)http://www.geocities.jp/ittaizen/itlib1/
目次番号 180番 SAP 基本からSAP HANAまで
全9冊 800ページ
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SAP ERPの歴史
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SAP R/3の概要
SAP社の代名詞として知られている SAP R/3。「R」はりアルタイム、「3」は 3層アーキテクチャ
(①データベースサーバー、②アプリケーションサーバー、③クライアント)を採用している、という意昧が含まれています。
その後、 R/3 は R/3 enterprise(エンタープライズ)に後継され、構造が進化しています。
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1つめは、アプリケーシヨン部分をアップグレードが不要な中核(コア)部分と機能アップしていける 拡張部分(拡張セット) とに 分けたことです。
これにより 何か新しい機能を 追加する場合でも、プログラム全部のテストをせずに済むので、ユーザー企業にかかる負荷を最小限に抑えることが狙えます。
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SAP Basis
アプリケーション
SAP R/3 (4.6Cまで)
SAP R/3 Enterprise
SAP Enterprise
拡張セット
SAP R/3
Enterprise コア
SAP WEB
アプリケーション
サーバー
SAP Netweaver
04s
SAP ECC(=r/3)
コア
SAP ERP Edition
2005Component 6.00
SAP ERP Edition
2005
(mySAP ERP2005)
SAP ECC
拡張セット
SAP R/3からSAP ERPへ
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2つめは、基盤になるBasis(ベーシス)を切り離し、Webアプリケーションサーバーに変えたことです。
インターネット技術の対応によってミドルウエアを変更しなければならない場合でも、アプリケーションには どこにも触れずに 対応できるようにするためです。
2003年にはmysAP ERP 2003 (SAP R/3 EnterpriseとNetWeaverとをセットした製品)、
2004年7月にはSAP R/3 Enterpriseの後継として mySAP ERP 2004 がリリースされました。
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これには「SAP ECC (ERP Central Component; ERPの中央プログラム)5.0」と 統合基盤「NetWeaver2004」が融合されました。
SAP R/3 Enterprise の機能はSAP ECC 5.0に引き継がれていますが、 SAP社の発表している後継の位置付けには mySAP ERP 2004が置かれています。
2006年5月、mySAP ERP 2005がリリースされました。 2006年に発売されているのに、2005という名前が付いているのは不思議ですが、ここまで実に短い期間でメジャーバージョンアップが行われています。
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mySAP ERP 2005は、SOA や内部統制の対応が特色になっていますが、これまでのバージョンに比べて習熟度、安定度が高いと評判で当時、「2010年までメジャーバージョンアップはしない」とSAP社が述べたほどです。 現に2011年6月までメジャーバージョンアップは行われませんでした。
その後、 mySAP ERP 2005から名称がSAP ERP 2005となり、さらに現在はSAP ERP 6.0となっています。 旧 SAP R/3の部分は、 SAP ECC 6.0と呼ばれています。
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ちなみにmySAP.com というサービスは、インターネットの活用や、複数の企業の間でのビジネスなど、拡大を続けるユーザー企樂に 向けて提供されます。
mySAP.comは複数のコンポーネントからできているソリユーションなのでmySAP CRM や mySAP SCMなど 種類があります。
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1979年SAP R/2
1991年SAP R/3
2002年SAP R/3 Enterprise
2003年mysAP ERP 2003
2004年mySAP ERP 2004
2006年mySAP ERP 2005(mySAP ERP 2005、SAP ERP 6.0)
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SAP ERPの主なコンポーネント群
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① SDSales and Distribution 販売管理用のモジュール
② MMMaterial Management 在庫購買管理用のモジュール
③ WMWarehouse Management 倉庫管理用のモジュール
④ PPProduction and Planning 生産計画、生産管理用のモジュール
⑤ PMPlant Management プラント保全用のモジュール
⑥ HRHuman Resources 人事管理用のモジュール
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⑦ PSProject System ブロジェクト管理用のモジュール
⑧ FIFinancial accounting 財務会計用のモジュール
⑨ COControlling 管理会計用のモジュール
⑩ REReal Estate 不動産管理用のモジュール
⑪ IMInvest Management 設備予算管理用のモジュール
⑫ CACross Application クロスアプリケーション用のモジュール
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① SDSales and Distribution 販売管理用のモジュール
② MMMaterial Management 在庫購買管理用のモジュール
販売のサポート、受注活動、倉庫への出荷指図、顧客に対する請求処理という標準的な業務処理が一通り行えます。 また、これらの指示のための伝票の作成、印刷機能も含まれます。
販売を目的とする荷物の在庫を管理します。具体的には数量管理、金額管理、移動予定の管理、移動実績の管理です。また、仕入れに関わる購買を管理します。発注プロセス、入庫ブロセス、買掛計上プロセスなどです。
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③ WMWarehouse Management 倉庫管理用のモジュール
④ PPProduction and Planning 生産計画、生産管理用のモジュール
在庫の数金額の管理をします。在庫にも「利用していいもの」「利用できるが既に行き先・使い道の決まっているもの」といったカテゴリ分け、預託や移動中など、その場にない特殊在庫についても把握できます。 特にカテゴリ分けについては荷物はまったく動かないのに、現場で誤った指示が飛ばないようにシステム上で制御することができます。
生産活動に基づいて計画を立て、人や機械、部材と品目の所要を決めます。 計画担当者をサポートする機能なので、品目不足等の重要な状況を確認すると、手動および自動で修正ができます。 さらにこの計画からMRPへと繋げます。
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⑤ PMPlant Management プラント保全用のモジュール
⑥ HRHuman Resources 人事管理用のモジュール
プラントは、業務プロセスで使われる企業の外部向け、内部向けの組織です。 この組織の資材費や人件費、設備の詳細を管理することで、全体のコストの削減を進めながら、品質の水準を保ち、外注のパフォーマンスを高めていきます。
HRまたはHCR (Human Capital Mmanagement)とSAP ERPでは呼びます。 人材の採用から退職までのすべての局面を「データ化」していきます。 処遇、仕事の内容、役割といった現在や週去の情報管理から、今後の配置、スキルアップといったこれからの計画についても保管します。
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⑦ PSProject System プロジェクト管理用のモジュール
⑧ FIFinancial accounting 財務会計用のモジュール
大小さまざまなプロジエクトに関わる多くのタスクを計画、実行管理します。 予算内で締め切りを守り、かつ効率よく終わりを迎えられれば成功と言えます。 ワークパッケージという個別の活動の達成率を図る基準と、WBS(プロジェクトに関わる作業を階層構造で表すモデル)とで管理します。
企業と関わりのある組織や人に報告する財務諸表を作成します。 関係者が経営の健康状態や収益性を見ることで、今後の投資や取引の継続、税金等を判断します。 買掛金管理、売掛金管理、固定資産管理、総勘定元帳、特別目的元帳がSAPERPで管理できます。
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⑨ COControlling 管理会計用のモジュール
⑩ REReal Estate 不動産管理用のモジュール
内部会計と呼ばれ、期初に立てた計画に対する実績や業績の善し悪しを判断する、企業の内部資料を作成します。 原価要素会計、原価センター会計、活動基準原価計算、内部指図、製品原価管理、収益性分析、利益センター会計がSAP ERPで管理できます。
不動産のポートフォリオ、つまり資産の総体の管理します。不動産に関わる標準的なあらゆるシーンを想定してサポートしていて、不動産の所得と処分、ポートフォリオ管理、不動産管理、技術管理、サポートプロセスが含まれます。
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⑪ IMInvest Management 設備予算管理用のモジュール
⑫ CACross Application クロスアプリケーション用のモジュール
設備投資を管理します。 投資の計画、資金調達、決済、固定資産勘定への関連付けと、お金の流れを管理することになるので、SAPの会計システムと強く関わります。
定型化できず、担当者の判断や思考を使って進める業務、例えば企画業務や相手のいる折衝業務、新規・既存を含めた事業戰略、事業開発などをITで支援するための機能です。 ポートフォリオの管理、リソースの管理、プロジェクトの実行、技術管理を管理します。
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なお、これですべての機能を 御紹介したわけではありません。
業種業態に応じたコンポーネント など、SAP社からは、他にも
たくさんの機能が 提供されています。
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SAP ERPを使った業務管理
SAP ERPはヒト・モノ・カネ・情報といった企業のリソースを最適化するための標準的システムを目指しています。 したがって、SAP ERPに合わせて自社の業務プロセスを再構築すれば、企業リソースが自然と最適化する、BPR が行われると考えられています。
その後、BPRを発展させて継続的な改善を重視するBPM という考え方が生まれています。 具体的には業務プロセスのライフサイクルを通じて、業務プロセスの「見える化」 ●新業務プロセスの組み立て◆実行●評価 というステップを経て、改善と新しい業務の流れの組み立てを繰り返していきます。
BPR と BPMとの違いはわかりにくいのですが、BPRに比べて比較的小さな改善を繰り返すのがBPMと考えてください。
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以上のように、BPMは必ずしもITを要しませんが、SAPではIT化するために、SAP NetWeaver BPMを使ってBPMS環境を構築しています。 BPMを使って業務プロセスのフロー図を描き、利用者はユーザーインターフェイスを作ります。
このユーザーインターフェイスは SAP NetWeaver Portal 上で実行され、SAP ERPの機能(サービス)を マッピングします。 サービスはESR (エンタープライズサービスリポジ)という場所に、サードパーティの機能をサービス化したものも含め、登録したものから選びます。
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SAP NetWeaver BPMの登場によって、業務要件が変わった時でも、サービスを組み合わせるだけで、SAP ERPの機能が追加できます。 プログラマーは要りません。
ツールを使い、自分たちで組み立てられるので、機能の変更が柔軟に行えます。
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SAPによるBPMの環境構成イメージ
SAP NetWeaver BPMSAP Netvveaver
PortalSAP ERP
ESR UI(ユーザーインターフェイス)開発
業務プロセス
モデリング
ワークフロー
ルール設計
UI
(業務機能)
サービス
業務プロセス
モデリング
実行エンジン
プロセス
UI
(業務機能)
サービス
サービス
サービス
サービス
サービス
プロセス
プロセス
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プラント
SAP ERPの「組織構造」を語る上で外せないのが「プラント」です。 この用語の説明はなかなか難しいです。 各国にある支社や支店、グルーフ会社が独自のビジネスモデルや価格設定、取引条件を設定できる大切な区分けです。
しかし、一度プラントの方針を決めると変更は容易ではなく、取り返しがつかなくなります。
要件を詰める際には、慎重に、かつ将来新しいプラントを作るかどうかも含めて検討しましょう。
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「組織」の考え方
業務プロセスに基づいてお取引様向け、企業の内部向けの組織をSAP ERP上で表現します。 実際の組織を そのまま当てはめなくて結構です。
場合によっては内部向け組織を作成する際には、業務フローをわかりやすくしたり、イレギュラー処理をしやすくするために、実際には存在しない「空組織」を作る場合もあります。 まず、社内の組織構造とプロセスに必要だと思われる組織を分析し、SAP ERPの構造と一致させます。
SAPの組織要素は、以下の通りです。
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クライアント
クライアントとは、SAP ERPを導入する顧客本体の意昧で使います。 ホールディングス、グループの親会社など、組織のトップを示すため、通常は1つしか設定しません。
会社コード
会社コードは、決算単位で作成します。 B/S(損益計算害)、P/L(貸借対照表)もこの単位で発行するので、収支を分けて考える場合は、会社コードを分けて設定してください。 したがって、グループ全体の購買を集中して行っている組織がある場合には、そこも会社コードを付与します。 「会社」という組織にすべて付与するわけではありません。
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システムA社
アシアパシフィック
日本
カサタマーサポート
部門長
大手量販
食品加工
西日本物流センタ
通常出荷(001)
北アメリカ
中国
生産管理部
コールスタッフ
リテール
縫製
仙台工場
検品保管(002)
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組織ユニット、ポジション
組織ユニツトは、「営業1部」や「生産管理部」といった、実際の会社組織で使われます。 馴染みのある部署名そのままで構いませんただし、注意事項としては、組織の再編成が行われる時、どう考えるかということです。
部署の呼び名だけがかわるのと、ビジネスの統廃合が行われるのではまったく意昧が違います。将来のことを見据えて、組織ユニットを検討しましょう。
ポジションは、役員や部長、課長といった職位が考えられますが、SAP ERP内のデータを閲覧編集するなどの権限(アクセス権)を決めるためのものです。
部長も課長もSAP ERPの操作は閲覧しかしない、入力作業は行わないとなれば、分けることはお勧めしません。
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販売組織、製品部門
商品とサービスの流通に関係する単位が販売組織です。 販売後の製品に対する製造物責任や、得意先から商品のクレームが起きて、金銭を返却する償還請求権に対する貴任を負います。
地域別、国別または世界中で市場を分類することにも使います。 販売の実績を集計して業務管理や業務分析、販売管理レポートを発行する単位でもあります。
販売管理の業務処理 (受注伝票、出荷伝票、請求伝票の明細)は、いずれかの販売組織に属します。 販売組織として固有のマスターを持つことができます。
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販売組織は、営業に関する部署を当てはめられます。 「A営業所」や「Bグループ」という単位も用意されていますが、あまり細かく設定すると、組織変更時に大変ですし、顧客のニーズや時代の流れで、今のサービスの提供方法や内容が多様化し、将来像が描きにくいと思います。 できるだけシンプルにまとめるのが得策です。
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次に流通チャネルとして、「通販」「店販」「訪販」「直販」という販路もありますが、以下の要件にない場合は 使わなくてもよいでしょう。
・専用の受注入カシステムや個別のマスター登録など、プロセスが多岐に渡って処理される場合
・価格や条件(割引、インセンティブ)が異なる場合)
・商品マスターデータ が異なる場合 ( 専用タグ、店舗商品コードなど )
・得意先マスターデータ ( 販売エリア )が異なる場合
・特定の顧客にのみ、SAP ERPに対する権限が変わる、特権が与えられる場合
・レポートの要件が変わる場合(ただし、レポート要件だけでは、流通チャネルは変更できません。 得意先の階層などを示して、新しいグループ作りをしないとなりません。)
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そして製品部門とは、取り扱っている製品やサービスのことを指します。マスター登録をする際に、項目が大きく変わるものは 分けた方がよいでしょう。
例えばインターネットショッピングにおいて、多くの商材を扱う場合、アパレルだけ「ベビー」「キッズ」「ヤング」「アダルト」「シニア」などの登録項目を増やすのは、売上規模と比較して考慮すべきです。
できるだけ シンプルにまとめた方が新製品の登録時の負荷が減ります。
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プラント、保管場所の生かし方
プラントは、生産施設や流通センター、宮業所・本社、その他の設備拠点を表します。 プラントを通してでしか商品、サービスを提供することは、できません。 出荷する場所が複数ある場合、プラントをすべて登録する必要があります。 また分散購買を選択している場合は、購買組織も登録します。
保管場所は、実際に商品を置いてあるロケーションを登録するのではなく、出荷を制限したり、利用ができるように移動したうということをシステム上で行います。
例えば、福袋を倉庫内の商品で作る場合、外へ持ち出してはいませんが、保管場所をシステム上で変更します。 通常の出荷に引き当てが かからないようにして安心して在庫を確保するためです。
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ただし、ここでの注意点は、SAP ERPの仕組みに合わせて、たくさんの出荷先をプラント登録するのが難しい場合があるということです。
例えば、工場生産ラインを借りている生産拠点がたくさんあり、海外の出荷先を経由する時に中継する港の乙仲(おつなか)、つまり保税倉庫を使う場合などがそうです。
これらをプラント化し、それぞれで原価を設定し カスタマイズ(パラメータ設定) するのも大変ですが、今後どこまでプラントが増え続けるか、または使わなくなったプラントを どうするかなど、管理も面倒です。
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各社システム管理者、コンサルタントが頭を悩ませる問題です。 ここがプラントで最も難しいと言えます。 架空のプラントを作ったり、最後は倉庫に入るのだからと倉庫の保管場所として 生産拠点を設定したり工夫をしています。
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プラントを展開しないアイデアの例
倉庫
利用できる保管場所 1
これから利用できる保管場所 2
保税倉庫
在庫
本当は外にある
保税倉庫だけど、倉庫の保管場所ということにしちゃえ
在庫
在庫 在庫 在庫
在庫在庫在庫
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カスタマイズとアドオン
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カスタマイズ
SAP ERPの「カスタマイズ」とは、システムで用意されている項目の中から、当てはまるものを選択することです。 一般に「ノンカスタマイズ」と呼ばれます。
例えば、SAP ERPの場合、後で紹介する「アドオン」や「モディファイ」をしないことを指します。
「カスタマイズ」するのに「ノンカスタマイズ」と表現するため、非常にわかりにくいSAP社独自の言い方です。
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カスタマイズの進め方
SAP ERPのカスタマイズとは、SPR0 という トランザクションコードを入力すると表示される、ツリー構造のカスタマイズ項目を上から順番に設定していくことです。
簡単に言えば、企業構造という大きな分類から、「定義をして割当をする」を繰り返すことによってカスタマイズを実行します。
補足:
トランザクションコード:
文字と数字との造語。SAPアプリケーションの任意のタスクにジャンプするコマンドのこと。
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例を挙げます
①まず「会社」を定義するので、「化粧品」という会社を作ります。
②次に 「販売組織」 として 「一般化粧品」 を定義します。 これまでが「定義」のメニューです。
③次に「会社」に「販売組織」を
割り当てます。
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パラメータ設定などと聞くと、たくさんの選択肢や数字の入力枠が現れて、面倒なテストを受けるイメージが あるかもしれませんが、そんなことはありません。
システムの内部では、定義された要素のデータがお互いに紐付くよう、追加されていくイメージです。
参考までに、システムの内部ではどんな処理をしているかというと、1つの定義した情報が 1つのデータベーステープルに1行追加されます。
そして、割り当てすることで、定義した情報が加わったテーブルに紐付け情報が追加され、次々と定義した情報が更新されていくと、紐付けされた先でも 情報が共有できるというわけです。
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手続き上は簡単なのですが、SAP ERPを導入する際の会議の量や、プロジェクトの要員数、教育の時間もすべて このカスタマイズに比例します。
作業の手順より数量がポイントになります。 導入する企業の要件によって異なるため正確ではありませんが、生産の設定項目を1とすると、購買.在庫は2、 販売と財務会計は6ぐらいの割合で増えていきます。
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組織要素
販売伝票
基本契約伝票
受注伝票
引合伝票
見積伝票
ヘッダ
明細
※多くの伝票の項目をカスタマイズする必要がある
定義して割り当てる
〇〇伝票
定義して割り当てる
〇〇伝票
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カスタマイズのコツ
SAP ERPのカスタマイズを実行すると、取りあえず動くプロトタイプができあがるはずです。 もし動かないとしたら、標準で入っているサンプルをコピーし、要らない設定を削除していきます。
一見、不要なものが目立ちますが、見よう見まねで自分の思うように設定してもうまくいきません。
使える事例はたくさんあるので、探していくようにすることがまずコツの第一歩です。
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次にプロトタイプを確認しながら、要件の中に抜け落ちがないかどうか検討します。
正規の流れを追って業務を見ている場合、抜けは目立ちませんが、イレギュラー対応 などは 要チェックです。
ただし、頻度の余りに低い事例であれば、列挙に止め、オペレーションでカバーするよう検討します。
もし、頻度の高いものが見つかった場合は、定義を見直したり、後にご紹介するアドオンの対象としたりする場合もあります。
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イレギュラーに対応するため、作業が複雑になることがありますが、これはアドオン としては成立しにくい案件です。
SAP ERPでは複雑な手順も、1つのルールとして運営することになりますので、マニユアルを整備し、トレーニングを強化して、オペレーションのダブルチエックをするなど、あらゆる手をもって 正確で素早いシステム入力が できるように進めてください。
入カデータや手順を誤った場合、修正の方法は入力したデータを消して、再度入力することになります。
これも大変面倒なことですが、失敗をおそれず正確な入力を心掛けてもらいたいものです。 なお、気づいたことは順次、メモをしていくことをお勧めします。
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アドオン
SAP ERPの標準機能では実現が難しい場合、ERPパッケージを業務に会わせて改変することができます。
それが不足する機能を追加開発する「アドオン」と、販売・購買などのモジュールに新たな項目を付加する 「モディフィケーション(モディファイ)」です。
この開発の規模によって、全体のスケジュール、費用感が大きく変わります。
実施しない方がいいのですが、どうしても業務を変えられない場合、選択せざるを得ない方法です。
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嫌われるアドオン、モディファイ
ERPパッケージを導入する際には、業務プロセスを見直して標準化することと、チェンジマネジメントと呼ばれるシステム利用者の意識改革が必要です。
しかし、これまでの業務を変えられない、あるいは変えたくないという選択をした場合にはパッケージを改変するしかありません。
ただし、これには注意が必要です。
不足する機能を追加開発するアドオンを多く行った場合、予定より予算が膨らんだ上、期待される導入効果が現れない場合があります。
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また、モジユールに新たな項目を付加するモディファイは、パッケージのアップグレードができなくなるので導入後、SAP ERPが機能アップしたり、新しいOSに対応できるようこなったりしても、そのバージョンは現行のシステムには使えないことになります。
以前のようにインターネットに接続しない環境ならともかく、セキユリティ上、あまり好ましくありません。
Windows などのOSの問題で、どうにも
防ぎきれないセキユリティの穴は、マイクロソフト社が提供するバッチというプログラムでしか塞げないので、危険を知りながらシステムを運用するのはとてもお勧めできません。
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必要だと判断されるアドオン
アップグレードできなくなるモディファイはともかく、すべてのアドオンが良くないわけではありません。
例えば、原価計算で総合償却を行いたいとしても、SAPではまだサポートされていません。 この場合は、SAPがバーチカル・ソリューションに加えてくれる可能性を待つか、ビジネスプロセスを変えるかになります。
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バーチカルソリューション:
ソフトウェアに、業務に特有の機能を付加したソリューションのこと。
ここでは、願客の要望が高いため、次のバージョンから擢能を追加すると約束する未来のソリューションになる
補足:
総合償却:
建物や般備などを一括で償却すること。
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アドオンは、 ABAP (アバップ) と呼ばれる開発言語を使います。
アドオンの要件がエンジニアにきちんと伝わり、こちらの主旨の通り開発できるのかを確認します。
開発者や要件をまとめるSEに説明をしたら、
要件定養書として、先方にまとめてもらってください。
その理解とプログラム方針に不安を感じたら、改めてアドオン開発をすべきか、もしくは要件をより簡素にするかなどの検討をします。
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また、必要なアドオンというものもあります。 レポート系の出力やバッチインプットと 呼ばれるデータをやり取りするファイルの連携や、帳票出力用の開発がそうです。
日本固有の帳票文化への対応は仕方ないと 諦めざるを得ません。
コンサルタント頼み、技術者頼みではなく、コアメンバーたちが納得し、リスクを理解して上で、アドオン開発をやるのかやらないのか選択すべきだと思います。
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アドオンを検討する際、要件を提示するコツ
業務を細かく説明するより、
①目的②達成したいこと③現状のSAP ERPでなぜ出来ないのかの理由
をまとめます
顧客の指示を的確に把握し
①システムフロー
②達成したいことを実現する方法論③アドオン開発の工数の算出
をまとめます
アドオン要件を述べる人 アドオン開発のSE
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