睡眠時無呼吸症候群（Sleep Apnea Syndrome：SAS）

について サス

1.ＳＡＳの病態

2.ＳＡＳの診断方法

3.ＳＡＳの治療方法

目次

1. 睡眠時無呼吸症候群の病態

疫学

疾患の定義

合併症

2. 睡眠時無呼吸症候群の診断方法

3. 睡眠時無呼吸症候群の治療方法

目次

日本 米国

SAS

潜在患者数約256万人

（人口の2％※1）1200万人

（人口の5％※2）

CPAP※3

候補患者数約64万人

（潜在患者の25％※1）300万人

（潜在患者の25％ ※2 ）

CPAP患者数（現在）

約15万人（CPAP候補患者の23％）

90万人以上（CPAP候補患者の30％ ※2 ）

睡眠時無呼吸症候群の現状・日本の潜在患者は、人口の２％といわれています

睡眠時無呼吸症候群の患者の顕在化がまだ遅れているのが現状です。

・治療法としてはCPAP療法が第１選択となっています（中等症以上保険適応1998年より）

※1：治療学 30 (2) 179‐182，1996，閉塞性睡眠時無呼吸症候群の有病率と性差、年齢差※2：A Report of the National Commission on Sleep Disorders Research. Wake Up America. A National Sleep Alert;1993

※3:CPAP （経鼻的持続陽圧呼吸療法）

夜間睡眠中に無呼吸を繰り返し、その結果、日中傾眠などの種々の症状を呈する疾患の総称。

7時間の睡眠中に30回以上の無呼吸もしくはAI≧5

無呼吸（Apnea) ：10秒以上の気流の停止

AI（Ａｐｎｅａ Index） ：睡眠1時間あたりの無呼吸の回数

Sleep Apnea Syndrome（SAS）

実際の臨床での重症度判定には、無呼吸に低呼吸を加味した無呼吸低呼吸指数（AHI）が用いられる。

低呼吸（Hypopnea)：酸素飽和度の低下や覚醒を伴う気流の低下

AHI （Apnea Hypopnea Index) ：睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数

睡眠時無呼吸症候群とは？サス

睡眠時無呼吸の分類

閉塞型（Obstructive Sleep apnea=OSA)

睡眠中に上気道が閉塞して気流が停止するもので、無呼吸の間でも胸壁と腹壁の呼吸運動が認められるが、動きは互いに逆になるという奇異運動を示す。

中枢型（Central Sleep apnea=CSA)

呼吸中枢の機能異常によりREM期を中心とした睡眠中に呼吸筋への刺激が消失して無呼吸となる。

慢性心不全患者や脳血管障害患者に合併する頻度が高い。

混合型（Mix Sleep Apnea）

中枢型無呼吸で始まり、後半になって閉塞型無呼吸に移行する場合が多い。閉塞型無呼吸の一つとして分類することが多い。

気流

胸部

腹部

SpO2

気流

胸部

腹部

SpO2

気流

胸部

腹部

SpO2

最も頻度が高い（全体の9割）

閉塞型無呼吸（OSA）の原因OSAは、上気道の閉塞によって無呼吸・低呼吸が起きるために発症する。

＜閉塞の原因＞①形態的異常 ： 肥満に伴う上気道軟部組織への脂肪沈着、扁桃肥大、巨舌症、

鼻中隔彎曲症、アデノイド、小顎症(日本人に多い）など

②機能的異常 ： 気道を構成している筋肉の保持する力が低下する。

舌

咽頭扁桃

軟口蓋

重力

気道の閉塞

吸気

オーサ

ＯＳＡＳの病態

睡眠

呼吸の再開

血中酸素飽和度の低下

血中CO2の上昇

胸腔内圧の低下

無呼吸・低呼吸の発生

このサイクルを1晩中、繰り返す！！

筋緊張の低下

神経活動の低下

ガス交換が出来無い

換気努力の継続覚醒反応

いびき

ＳＡＳの交通事故への影響Findley L, et al: Automobile accidents involving patients with obstructive sleep apnea. Am Rev Respir Dis, 1988

Driving simulator performance in patients with sleep apnea. Am Rev Respir Dis, 1988

0.06

0.41

0.16

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

健常人（n=35）

SAS患者（n=29）

全運転者（n=3.7 mil）

交通

事故

発生

率

0.160.13

0.24

0.46

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

全運転者（n=3.7 mill）

軽症（n=16）

中等症（n=17）

重症（n=13）

交通

事故

発生

率

２９名のＳＡＳ患者と３５名の健常人、

３７０万人の全運転者における５年間

の交通事故発生率を比較。ＳＡＳ患者

の事故発生率は、健常人の約７倍と

有意に高くなっている。

p<0.01

p<0.01

また、重症度が増すにつれ発生率が

高くなっている。

生活習慣病におけるSASの合併率

Sjostrom et al.

Thorax 2003

Logan et al.

J. Hypertension 2001

Javaheri et al.

Circulation 1999

Schafer et al.

Cardiology 1999

Elmasry et al.

Intern Med 2001

Somers et al.

Circulation 2004

西村 et al.

J.Cardiol.2005

57%

36%

30%

35%

50%

50%

80%

0% 20% 40% 60% 80%

メタボリック

糖尿病

冠動脈疾患

高血圧

心房細動

心不全

薬剤抵抗性高血圧

OSAS患者の生命予後He,J.,Kryger,M.,Zorick,F.J.,Conway,W.,Roth,T.:

Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea-Experience in 385 male patients- Chest 94:9～14,1988

246名の無治療のOSAS患者をAIが20以下の群(n=142)と

AI 20以上の群(n=104)に分けた累積生存率。

⇒ AI>20では明らかに予後が悪い。

1. 睡眠時無呼吸症候群の病態

2. 睡眠時無呼吸症候群の診断方法

問診・スクリーニング

診断（確定診断・簡易診断）

3. 睡眠時無呼吸症候群の治療方法

目次

診断の流れ

問診、スクリーニング（在宅）外来

治療方法の選択治療

簡易診断ポリソムノグラフィー 簡易診断検査

ポリソムノグラフィー

問診・スクリーニング

問診、スクリーニング（在宅）外来

治療方法の選択治療

ポリソムノグラフィー 簡易診断 簡易診断検査

ポリソムノグラフィー

ＳＡＳの症状

いびき日中の眠気

起床時の

頭痛

熟睡感がない

眠っている間に呼吸が止まる

問診自覚症状、日中の眠気の程度、生活習慣、基礎疾患の有無などに関し問診（ベッドパートナー同席が望ましい）を行う。日中の眠気の定量評価には、Epworthの眠気テスト（ESS）等が用いられる。

状況 点数

１．すわって何かを読んでいる時（新聞、雑誌、本、書類など）

２．すわってテレビを見ているとき

３．会議、映画館、劇場などで静かにすわっているとき

４．乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき

５．午後に横になって、休息をとっているとき

６．すわって人と話をしているとき

７．昼食をとった後（飲酒なし）、静かにすわっているとき

８．すわって手紙や書類などを書いているとき

０、 １、 ２、 ３

０ 、１、 ２、 ３

０、 １、 ２、 ３

０、 １、 ２、 ３

０、 １、 ２、 ３

０、 １、 ２、 ３

０、 １、 ２、 ３

０、 １、 ２、 ３

正常：合計１０以下

<<Epworthの眠気テスト（ESS）>> 日本呼吸器学会 ＪＥＳＳ 2006（ESS 日本語版）

もし、以下の状況になったとしたら、どのくらいうとうとする（数秒～数分眠ってしまう）と思いますか。

最近の日常生活を思いうかべてお答え下さい。

０：うとうとする可能性はほとんどない １：うとうとする可能性は少しある

２：うとうとする可能性は半々くらい ３：うとうとする可能性が高い

スクリーニング検査-メモリー機能付パルスオキシメーターの活用-

■自宅などで睡眠中のSpO2を記録■睡眠中の低酸素回数および

低下の程度からODIを算出■ODI（SｐO2低下回数／時間）は

AHIと高い相関を示しスクリーニングとして有効といわれている。（中野博ほか 睡眠呼吸障害のスクリーニング検査法としてのパルスオキシメトリー解析方法 呼吸16(5) 791-797 1998 ）

定義：1時間あたりのSpO2の低下回数

３％（または４％)以上の低下を 1回とカウント→

SpO2

〔ＯＤＩ：Oxygen Desaturation Index 酸素飽和度低下指数〕

健常人

ＳＡＳ波形

ポリソムノグラフィー（Polysomnography：PSG）

問診、スクリーニング（在宅）外来

治療方法の選択治療

簡易診断ポリソムノグラフィー 簡易診断検査

ポリソムノグラフィー

PSGとは？

睡眠状態を評価したり睡眠中に生じる異常な生体現象を客観的に捉えるために行われ、睡眠覚醒障害(※)をきたす疾患の診断やその治療効果の判定に用いられる検査。ＳＡＳの確定診断が可能。

※睡眠覚醒障害をきたす疾患：睡眠時無呼吸症候群・周期性四肢運動障害

◎ 睡眠中の呼吸状態・循環状態などを同時に観察できる

呼吸の状態

口・鼻からの気流胸・腹の呼吸努力いびき音

呼吸が乱れていないか無呼吸のタイプ判別

睡眠状態

脳波（EEG）眼球運動（EOG)

頤筋電図（EMG)

起きてるか、寝ているか睡眠が分断されていないか睡眠ステージ判断

PSGの検査風景

パルスオキシメーター

眼球運動（ＥOＧ）

脳波（EEG）

頤筋筋電図（EMG）

胸部バンド

腹部バンド

体位センサー

気流センサー

睡眠状態

呼吸状態

いびき音センサー（マイク）

下肢センサー

SASの確定診断が可能

痛みは伴わない

寝返りやベッド上で起き上がる事も可能

トイレに行くことも出来る

簡易診断

問診、スクリーニング（在宅）外来

治療方法の選択治療

簡易診断ポリソムノグラフィー 簡易診断検査

ポリソムノグラフィー

SASの簡易診断

SASの確定診断には、終夜のポリソムノグラフィーの施行が必須であるが、検査体制や設備の制約により、全例にPSGを施行することは困難である為、胸壁・腹壁の動き、鼻の気流、血中酸素飽和度などの呼吸状態を検査する簡易診断器が用いられる場合がある。

主な簡易診断器の測定項目

圧力センサー（鼻カニューラ）から呼吸曲線の形状を得て

フローリミテーション（気道狭窄）、いびき、気道の閉塞を検出し、

インダクティブセンサー（胸腹バンド）により、呼吸努力を検出、

指先のパルスオキシメータより酸素飽和度を測定する簡易診断器

…主な算出項目：AI、AHI

例：生体情報モニター

モルフェウス

簡易診断器

自宅で簡単に装着・操作できる携帯用検査機器も開発され、鼻の気流・いびきなどの呼吸状態および血中酸素飽和度の測定により、SAS診断が可能

エアフローセンサ（気流・いびき）

パルスオキシメータｰ（SpO2）

例：携帯用睡眠時無呼吸検査装置

機器レンタル（機器自宅配送サービス）

1. 睡眠時無呼吸症候群の病態

2. 睡眠時無呼吸症候群の診断方法

3. 睡眠時無呼吸症候群の治療方法

治療方法

CPAP の治療原理

目次

治療法の選択

問診、スクリーニング（在宅）外来

治療方法の選択治療

簡易検査ポリソムノグラフィー 簡易検査検査

ポリソムノグラフィー

・生活習慣の改善・歯科装具・外科的治療・CPAP

SASの治療法

CPAP 経鼻的持続陽圧呼吸法

外科的手術

UPPP、アデノイド・扁桃肥大除去手術

生活習慣の改善

口腔内装具

中等～重症SASには、CPAP療法が治療の第一選択といわれている。軽症～中等症には他の治療法が選択される場合もある。

軽症

重症

中等症

AHI 20以上

睡眠時無呼吸症候群は、舌が気道をふさぐなどの原因により気道が閉塞し、無呼吸になります。

CPAPは鼻マスクを介して、陽圧を加えた空気を送り続ける事で、上気道を広げ閉塞を防ぎます。広げるための圧力は患者さん個々に異なります。

CPAPの働き

睡眠時無呼吸 CPAP療法

CPAP療法の原理

CPAP機器

オートセットモード

時間

圧力 最大圧力

最小圧力

ひと呼吸ごとにフローリミテーション、いびき、無呼吸、

リークをモニターし、治療圧力を自動的に調整します。

オートセットC

オートセットモードによる自動変圧で患者さんの状態に合わせた治療が可能

機能と特長

静音設計

カードシステム

その他の親切機能