実解析勉強会: triebel-lizorkin 空間およびbesov空間...
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実解析勉強会: Triebel-Lizorkin 空間およびBesov空間に関して基本的な事項をまとめる.
平成 17 年 9 月 14 日
この勉強会では Triebel-Lizorkin空間および Besov空間の結果をまとめる.講演内容は基本的なものに限定する.この講演の目的はこれらの関数空間に対する理解をスムーズにするために基
本的な事実を整理することである.Triebel-Lizorkin空間および Besov空間は近年クオーク分解などにより,フラクタル上の関数空間まで理論ができており,この講演ではクオーク分解の定理
を紹介できればよいと考えている.基礎知識としては,学部3年から4年の解析の知識があれば,
書いてあることは理解できると思う.具体的には,Lebesgue積分と Fourier解析および関数解析の用語である.位相ベクトル空間に関しては少し知識があったほうがよいが,なくても理解でき
るようにしたい.
目 次
1 基本的な道具 2
1.1 Fourier変換 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
1.2 Fefferman-Steinのベクトル値不等式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
1.3 Lp 空間 0 < p < 1 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
1.4 その他 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
2 関数空間の定義 4
3 フーリエ変換像が一定のコンパクト集合に含まれるようなシュワルツ超関数の性質 5
4 関数空間はきちんと定義されていることの証明 10
5 基本的な性質 11
1
6 具体的なパラメータによる古典的な関数空間の復元 13
7 3つのパラメーターの持つ意味合いの考察 17
7.1 pの持つ意味合い . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
7.2 sの持つ意味合い . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17
7.3 qの持つ意味合い . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18
7.4 s− n/pのもつ意味合い . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20
8 同値なノルム 24
9 アトム分解 24
10 M. Frazier-B. Jawerthの仕事 27
11 クオーク分解 29
11.1 Regular case . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 30
11.2 一般の場合のクオーク分解 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31
1 基本的な道具
まず,初めに基本的な道具を用意する.ひとつは,コンパクト台を持つ超関数のフーリエ変換
で,もうひとつは極大作用素の不等式である.p < 1での Lp 空間も扱う.
1.1 Fourier変換
ここでは簡単な復習をする.
定義 1. f ∈ S ′ に対して,フーリエ変換 Ff ∈ S を< Ff, φ >=< f,Fφ >
で定義した.
定義 2. f ∈ S ′に対して,f の台ではない点 xとは次の性質を持つ点である.rxという実数が存
在して,supp (φ) ⊂ B(x, rx) となる φ ∈ S に対して,< f, φ >= 0が常に成り立つ.
定義 3. f ∈ S ′ がコンパクト台を持つとき,Ff ∈ S ′ は次の性質を持つ C∞(Rn)関数 gと同一
である.∂αgは多項式で絶対値が上から押さえられる.
2
1.2 Fefferman-Steinのベクトル値不等式
Fefferman-Steinのベクトル値不等式は基本的な道具であり,これを Triebel-Lizorkin空間でよく使う.
定義 4. M を Hardy-Littlewoodの極大作用素とする.
Mf(x) = supx∈Q
1|Q|
∫
Q
|f(y)| dy. (1)
ここで,Qは座標軸に平行な辺を持つ立方体とする.
定理 5. 1 < p < ∞かつ 1 < q ≤ ∞とするとき,定数 Cp,q が存在して∥∥∥∥∥∥∥
∞∑
j=0
Mfjq
1q
: Lp
∥∥∥∥∥∥∥≤ Cp,q
∥∥∥∥∥∥∥
∞∑
j=0
|fj |q
1q
: Lp
∥∥∥∥∥∥∥(2)
がすべての関数の系 fj∞j=0 に対して成立する.
証明は,Fefferman-Steinの論文もしくは Steinの調和解析の本を参照のこと.
このように以下ベクトル値不等式を考えることが多いので,次のような記号を用意する.
定義 6. 0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞とする.このとき,関数の系 fj∞j=0 に対して,
‖fj : Lp(lq)‖ :=
∥∥∥∥∥∥∥
∞∑
j=0
|fj |q
1q
: Lp
∥∥∥∥∥∥∥(3)
と定義する.0 < p ≤ ∞,0 < q ≤ ∞とする.Lp と lq の順序を入れ替えたノルム
‖fj : lq(Lp)‖ :=
∞∑
j=0
‖fj : Lp‖q
1q
(4)
も定義する.
1.3 Lp空間 0 < p < 1
Lp は p < 1の時には,ノルム空間ではないが,三角不等式と似ている
‖f + g : Lp‖ ≤ 21p (‖f : Lp‖+ ‖g : Lp‖)
を満たしている.SはLpの位相で稠密である.しかし,Lp ⊂ S ′ではない.0 < p < ∞の時には,
‖f : Lp‖ =(∫ ∞
0
pλp−1|x ∈ Rn : |f(x)| > λ| dλ
) 1p
が成り立つ.
3
1.4 その他
Plancherelの定理,Calderon-Zygmund理論,Sobolevの埋め込み定理,コンパクト埋め込み定理などが理解できていれば,これから定義する関数空間が理解しやすいであろう.
2 関数空間の定義
この節では定義だけする.
定義 7. 関数 φ ∈ S を次の条件を満たす関数とする.
supp (φ) ⊂
x ∈ Rn :14≤ |x| ≤ 4
, φ(x) = 1
12≤ |x| ≤ 2のとき. (5)
さらに,φj を j = 1, 2, . . .に対しては φj(x) = φ( x
2j
)で定義する.また,φ0 はこれとは別に
supp (φ0) ⊂ x ∈ Rn : |x| ≤ 4 およびφ0 ≡ 1, x ∈ Rn : |x| ≤ 2 . (6)
を満たすようにとる.
例 8. 上の定義においてさらに次の条件を課すこともできる.この条件があったほうがよいとき
もあるが,ここでは不要なときも多いので,関数空間を定義する際には定義 7の条件のみを満たしている関数を用いることにする.
条件:∞∑
j=0
φj(x) ≡ 1. (7)
Proof. 少なくとも
supp (ψ) ⊂
x ∈ Rn :14≤ |x| ≤ 4
, ψ(x) ≡ 1, x ∈ Rn : 2−1 ≤ |x| ≤ 2上で, ψ ≥ 0 (8)
を満たす ψを取れる.
φ(x) :=ψ(x)∑∞
j=−∞ ψ(2−jx)
とおいて,φ0 を
φ0(x) := 1−∞∑
j=1
φj(x)
で定めるとよい.
定義 9. 関数 τ に対して,(定義可能なときは)
τ(D)f := F−1(τFf) (9)
とおく.
4
例 10. φを定義 7に現れたものとする.このときは φ(D)f はすべての f ∈ S ′に対して定義されていてなおかつ φ(D)f は滑らかな関数である.
定義 11. 0 < p, q ≤ ∞とする.このとき,f ∈ S ′ に対して,セミノルムを次の式で定義する.
‖f : Bspq(R
n)‖φ = ‖f : Bspq‖φ = ‖2jsφj(D)f : lq(Lp)‖. (10)
関数空間 Bspq,φ をこのセミノルムが有限な f ∈ S ′ の全体とする.
定義 12. 0 < p < ∞, 0 < q ≤ ∞とする.このとき,f ∈ S ′に対して,セミノルムを次の式で定義する.
‖f : F spq(R
n)‖φ = ‖f : F spq‖φ = ‖2jsφj(D)f : Lp(lq)‖. (11)
関数空間 F spq,φ をこのセミノルムが有限な f ∈ S ′ の全体とする.
定義をしたところで,次の問いが自然に生まれてくるであろう.
問題 13. Bspq,φ(Rn), F s
pq,φ(Rn) は関数 φに依ってしまうのか?
φの役割を考えるとこの問いには否定的な答えを見出したくなる.
純粋にこの問題を考えているとどこから手をつけてよいのかわからない.しかし,φj(D)f はフーリエ像がコンパクト台を持つからそこから手をつければよさそうである.
3 フーリエ変換像が一定のコンパクト集合に含まれるようなシュ
ワルツ超関数の性質
この節ではフーリエ変換の像が一定のコンパクト集合特に原点中心の球に含まれるような超関
数の満たしている不等式を考察する.
定義 14. ΩをRdのコンパクト集合とする.SΩでもって,フーリエ変換の台が Ωに含まれているような超関数の全体を表すことにする.
次の定理はまったく以って前提知識がいらない(大学4年生のレベルで十分にわかる)もので
あるが,以下の考察において基本的である.
定理 15. r > 0と SB(O,1) の関数 f に関して,各点評価
supz∈Rd
|∇φ(x− z)|1 + |z|n
r≤ C sup
z∈Rd
|φ(x− z)|1 + |z|n
r≤ C [M (|φ|r) (x)]
1r .
が成り立つ.Oは原点を表す.
Proof. Fφは単位球に台を持つから,ψを単位球で 1となるコンパクト台をもつ滑らかな関数として
φ(x) = F−1ψ ∗ φ(x) =∫
Rn
F−1ψ(x− y)φ(y) dy
5
と表せる.τ = F−1ψとおく.φ(x) =∫
Rn
τ(x− z)φ(z) dzである.これを一回微分すると,
∂jφ(x) =∫
Rn
∂jτ(x− z)φ(z) dz
だから|∂jφ(y)|
1 + |x− y|nr≤
∫
Rn
|∂jτ(y − z)φ(z)|1 + |x− y|n
rdz
となる.ここで,
(1 + |x− z|nr ) ≤ C (1 + |x− y|n
r )(1 + |y − z|nr )
であるから,これを先ほどの式に代入すると,
|∂jφ(y)|1 + |x− y|n
r≤
∫
Rn
(1 + |y − z|nr )|∂jτ(y − z)| |φ(z)|
1 + |x− z|nr
dz
≤ supz∈Rn
|φ(z)|1 + |x− z|n
r
∫
Rn
(1 + |y − z|nr )|∂jτ(y − z)| dz
となる.よって,左側の不等式は証明された.
今度は右側の不等式を証明する.はじめに,|x−y| ≤ δ ≤ 1を満たしていると仮定する.(h > 0)x中心の半径 δの球を B とおく.y ∈ B に対して
|φ(y)| ≤ minz∈B
|φ(z)|+ nδ supz∈B
|∇φ(z)| ≤ Cδ
(∫
B
|φ(x)|r dx
) 1r
+ c0 δ supz∈B
|∇φ(z)|)
である.したがって,
|φ(x− z)| ≤ Cδ
(∫
z∈B
|φ(x− z − y)|r dz
) 1r
+ c0 δ supy∈B
|∇φ(x− z − y)|)
≤ Cδ
(∫
|u|≤(|z|+1)|φ(u)|r du
) 1r
+ c0 δ supy∈B
|∇φ(x− z − y)|)
(1 + |z|)nr で両辺を割って,
|φ(x− z)|(1 + |z|)n
r≤
(1
(1 + |z|)n
∫
|u|≤|z|+1|φ(u)|r du
) 1r
+ c0 δ supy∈B
|∇φ(x− z − y)|(1 + |z|)n
r
ここで,y ∈ B のとき,1 + |z| ≥ c (1 + |z + y|)より,
|φ(x− z)|(1 + |z|)n
r≤
(1
(1 + |z|)n
∫
|u|≤|z|+1|φ(u)|r du
) 1r
+ c1 δ supy∈B
|∇φ(x− z − y)|(1 + |z + y|)n
r
ゆえに,
supz∈Rn
|φ(x− z)|(1 + |z|)n
r≤
(1
(1 + |z|)n
∫
|u|≤|z|+1|φ(u)|r du
) 1r
+ c1 δ supz∈Rn
|∇φ(x− z)|(1 + |z|)n
r
定理の不等式の左側は証明済みなので,
supz∈Rn
|φ(x− z)|(1 + |z|)n
r≤ Cδ
(1
(1 + |z|)n
∫
|u|≤|z|+1|φ(u)|r du
) 1r
+ c2 δ supz∈Rn
|φ(x− z)|(1 + |z|)n
r
6
δを十分に小さくとって左辺に吸収させて,
supz∈Rn
|φ(x− z)|(1 + |z|)n
r≤ C
(1
(1 + |z|)n
∫
|u|≤|z|+1|φ(u)|r du
) 1r
これで右辺の不等式が証明された.
系 16. R, r > 0と SB(O,R) の関数 f に関しては,各点評価
R−1 supz∈Rd
|[∇(φ)](x− z)|1 + |Rz|n
r≤ C sup
z∈Rd
|φ(x− z)|1 + |Rz|n
r≤ C [M (|φ|r) (x)]
1r
が成り立つ.Oは原点を表す.
Proof. φの代わりに φR = φ(R−1·)を使うと,
supz∈Rd
|[∇(φR)](x− z)|1 + |z|n
r≤ C sup
z∈Rd
|φR(x− z)|1 + |z|n
r≤ C [M (|φR|r) (x)]
1r
となる.したがって,
R−1 supz∈Rd
|[∇(φ)](R−1x−R−1z)|1 + |z|n
r≤ C sup
z∈Rd
|φ(R−1x−R−1z)|1 + |z|n
r≤ C [M (|φ|r) (R−1x)]
1r
であるが,これを変数変換して解釈しなおせば,
R−1 supz∈Rd
|[∇(φ)](x− z)|1 + |Rz|n
r≤ C sup
z∈Rd
|φ(x− z)|1 + |Rz|n
r≤ C [M (|φ|r) (x)]
1r
となる.
系 17. 0 < p ≤ ∞とする.α ∈ N0n とするとき,
‖∂αf : Lp‖ ≤ c0 ‖f : Lp‖
がすべての f ∈ S [−1,1]n に対して成り立つ.
Proof. これは,定理の極大不等式より,
|∂αf(x)| ≤ cα (M [|φ|r](x))1r
が従うので,r =p
2として,Hardy-Littlewoodの極大不等式を用いれば明らかである.
定義 18. ΩをRnのコンパクト集合とする.LpΩでもって,フーリエ変換の台が Ωに含まれてい
るような Lp 関数の全体を表すことにする.
命題 19. f ∈ Lp,[−1,1]n に対しても定理 15は成り立つ.
Proof. ψを [−1, 1]n上では1でRn\[−2, 2]n上では0となる滑らかな関数とする.ft := F−1ψ(t·)f, t ∈(0, 1]は次の性質を満たしている.
supp (Fft) ⊂ [−t− 1, t + 1]n ⊂ [−2, 2]n, limt→0
ft(x) = f(x), limt→0
∂jft(x) = ∂jf(x) ∀j = 1, . . . , n
7
f は多項式増大度でF−1ψ(t·)はシュワルツ関数だから,ftもシュワルツ関数になる.したがって,
supz∈Rd
|∇ft(x− z)|1 + |z|n
r≤ C sup
z∈Rd
|ft(x− z)|1 + |z|n
r
および,
supz∈Rd
|ft(x− z)|1 + |z|n
r≤ C [M (|ft|r) (x)]
1r .
各点評価 |ft(x)| ≤ C |f(x)|が成立するので,t → 0に対して極限移行をすれば,f に対しても定
理 15は成り立つ.
次の定理はサンプル定理と呼ばれている.
定理 20. f ∈ Lp,[−1,1]n とする.このとき,十分に小さい h > 0に対して
C0
( ∑
k∈Zn
(max
x∈h(k+[−1,1]n)|f(x)|
)p) 1
p
≤ h−np ‖f : Lp‖ ≤ C1
( ∑
k∈Zn
(min
x∈h(k+[−1,1]n)|f(x)|
)p) 1
p
が成り立つ.
Proof. 左側の不等式の証明.x ∈ h(k + [−1, 1]n) のとき,
maxy∈h(k+[−1,1]n)
|f(y)| ≤ c0 supz∈Rn
|f(x− z)|1 + |z|n
r≤ c1 (M [|f |r](x))
1r
ここで,r =min(1, p)
2である.したがって,
hnp
( ∑
k∈Zn
(max
x∈h(k+[−1,1]n)|f(x)|
)p) 1
p
≤ c11p
(∫
Rn
(M [|f |r](x))pr dx
) 1p
≤ c2
(∫
Rn
|f(x)|p dx
) 1p
これで,左側の不等式が証明された.右側の不等式は次のようにして示す.ここで,hを十分に
小さくとる必要が生じる.x ∈ h(k + [−1, 1]n)のときに,
|f(x)| ≤ miny∈h(k+[−1,1]n)
|f(y)|+c3 h supy∈h(k+[−1,1]n)
|∇f(y)| ≤ miny∈h(k+[−1,1]n)
|f(y)|+c4 h (M [|f |r](y))1r .
いつものように,r = min(
p
2,12
)ととって,Hardy-Littlewoodの極大不等式を用いて,
h−np ‖f : Lp‖ ≤ c5
( ∑
k∈Zn
(min
x∈h(k+[−1,1]n)|f(x)|
)p) 1
p
+ c6 h · h−np ‖f : Lp‖
したがって,hを十分に小さくとれば,右辺第二項を左辺に吸収させられるので,
h−np ‖f : Lp‖ ≤ C
( ∑
k∈Zn
(min
x∈h(k+[−1,1]n)|f(x)|
)p) 1
p
が従う.
8
次の命題に留意する.
命題 21. f ∈ Lp∩S ′, p > 0に対してFf がコンパクトであるとする.このとき,f ∈ L∞である.
Proof. これは,サンプル定理の直接の系である.
次の二つの定理が関数空間の性質を調べる際に必須となる.
定理 22. 0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞ とする.Ω = Ωk∞k=1 をRn のコンパクト集合の列として,
0 < r < min(p, q)とする.dk = diam(Ωk)とする.このとき,k = 1, 2, . . .に対して fk ∈ Lp,Ωk
ならば, ∥∥∥∥ supz∈Rn
|fk(x− z)|1 + |dkz|n
r: Lp(lq)
∥∥∥∥ ≤ C ‖fk : Lp(lq)‖.
Proof. この定理は,系 16より従う.r =min(p, q, 1)
2として,
supz∈Rn
|fk(x− z)|1 + |dkz|n
r≤ C M [|fk|r](x)
1r
であるから,左辺は
∥∥∥M [|fk|r] 1r : Lp(lq)
∥∥∥ =∥∥∥M [|fk|r] : Lp/r(lq/r)
∥∥∥1r ≤ C ‖fk : Lp(lq)‖
によって上から押されられる.
定理 23. 0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞,s >n
min(p, q)+
n
2とする.Ω = Ωk∞k=1をRnのコンパク
ト集合の列とする.dk = diam(Ωk)とする.このとき,k = 1, 2, . . .に対して fk ∈ Lp,Ωk ならば,
‖Mk(D)fk : Lp(lq)‖ ≤ C
(supk∈N
‖Mk(dk·) : Hs2‖
)· ‖fk : Lp(lq)‖.
ここでHs はポテンシャル空間である.Hs2 = f ∈ S ′ : (1−∆)s/2f ∈ L2.
Proof. 次の補題を示せば,先ほどの定理と同様にベクトル値不等式を用いて定理が証明できる.
補題 24. 先ほどの仮定の下,さらに 0 < r < min(p, q), δ > 0ならば,
|Mk(D)fk(x)| ≤ C (M [|fk|r](x))1r ‖Mk(dk·) : H
nr + n+δ
22 ‖
が成り立つ.
Proof. 定義により,
Mk(D)fk(x) =∫
Rd
F−1Mk(y)fk(x− y) dy
である.0 < r < min(p, q)とする.系 16により,
|fk(x− y)|1 + |dky|n
r≤ C (M [|fk|r](x))
1r
9
だから,∣∣∣∣∫
Rd
F−1Mk(y)fk(x− y) dy
∣∣∣∣ ≤ c (M [|fk|r](x))1r
∫
Rd
|F−1Mk(y)|(1 + |dky|)nr dy
である.積分∫
Rd
|F−1Mk(y)|(1 + |dky|)nr dy にコーシーシュワルツの不等式を適用して,
∫
Rd
|F−1Mk(y)|(1 + |dky|)nr dy
≤(∫
Rd
|F−1Mk(y)|2(1 + |dky|) 2nr +n+δ dy
) 12
(∫
Rd
(1 + |dky|)−n−δ dy
) 12
= C
(dk−n
∫
Rd
|F−1Mk(y)|2(1 + |dky|) 2nr +n+δ dy
) 12
= C
(dk−2n
∫
Rd
|[F−1Mk](d−1k y)|2(1 + |y|) 2n
r +n+δ dy
) 12
= C
(∫
Rd
|F−1[Mk(dk·)](y)|2(1 + |y|) 2nr +n+δ dy
) 12
= ‖Mk(dk·) : Hnr + n+δ
22 ‖
これらをつなぎ合わせると,
|Mk(D)fk(x)| ≤ C (M [|fk|r](x))1r ‖Mk(dk·) : H
nr + n+δ
22 ‖
したがってこの補題が従う.
4 関数空間はきちんと定義されていることの証明
φj を次の条件を満たしている関数とする.
j ≥ 1 ならば φj(x) = φ1(x/2j−1), 1/4 < |x| < 4 のときφ1(x) > 0, |x| < 4 のときφ0(x) > 0.
supp (φ0) ⊂ |x| ≤ 8, supp (φ1) ⊂ 1/8 ≤ |x| ≤ 8ψj を次の条件を満たしている関数とする.
j ≥ 1 ならば ψj(x) = ψ1(x/2j−1), 1/4 < |x| < 4 のときψ1(x) > 0, |x| < 4 のときψ0(x) > 0.
supp (ψ0) ⊂ |x| ≤ 8, supp (ψ1) ⊂ 1/8 ≤ |x| ≤ 8問題はたとえば,
‖f : F spq(R
n)‖φ ∼ ‖f : F spq(R
n)‖ψ
が成り立つことを示すことである.そのためには,
‖f : F spq(R
n)‖φ ≤ C ‖f : F spq(R
n)‖ψ
10
を示せばよい.ψ−1 を 0として,j ∈ N0 := 0, 1, 2, . . .のとき
ψj(D)f = F−1(φjFf)
= F−1((ψj−1 + ψj + ψj+1)φj
(ψj−1 + ψj + ψj+1)Ff)
=φj
(ψj−1 + ψj + ψj+1)(D)F−1((ψj−1 + ψj + ψj+1)Ff)
ここで,したがって,ψj は φj の線形結合とmultiplierで表される.ちょうど,初めの数個を除いて,j < kのとき
φj
(ψj−1 + ψj + ψj+1)と
φk
(ψk−1 + ψk + ψk+1)
はお互いに 2j−k の dilationで結びついているので,定理 23が使えるようになっている.
‖f : F spq(R
n)‖ψ = ‖2jsψj(D)f : Lp(lq)‖≤ C ‖2js(φj−1 + φj + φj+1)(D)f : Lp(lq)‖≤ C ‖f : F s
pq(Rn)‖φ
ここで,定理 23は初めの不等式で用いた.
5 基本的な性質
ここでは,関数空間の性質を調べる.
命題 25. p, q, sはその関数空間が定義されるようなものとする.Bspq, F
spq は,完備なセミノルム
空間である.それらの位相は S ′ のものよりも強い.
注意 26. Aspq で以って,Bs
pq か F spq を表すものとする.このようにすれば,平行して証明される
命題をまとめて示せるので便利である.
Proof. セミノルム空間であることは明らかだから省略する.S ′ に連続に埋め込まれることを証明するには次の後で独立に示す事実をつなげて確認すると楽である.
(1) F と B の間に次の包含関係が成り立つ.
F sp,q ⊂ Bs
p,max(p,q), 0 < p < ∞, 0 < q ≤ ∞, s ∈ R.
これにより,B に対して,命題を示せばいい.
(2) ∆をラプラシアンとして(1−∆)M : S ′ → S ′
は,S ′ の位相同型だが,Bs+2M
p,q → Bsp,q
の位相同型も引き起こす.したがって,sは十分大きいとしてよい.
11
(3)Bs
p,q ⊂ Bs′∞,∞
ここで,s′ = s− n/pである.したがって,p = ∞としてよい.
(4) s > 0のときBs∞,∞ ⊂ Cb
Cb は有界連続関数のなす Banach空間である.これで,証明は完成する.
完備性は次のようにして示す.これも先ほどの包含関係を認めてしまって証明すると楽である.
fm ∈ Aspq,m = 1, 2,として,fmをコーシー列とする.包含関係を認めてしまえば,次のこと
を証明すればいい.
主張 27. fm∞m=1 が S ′ の位相で f ∈ S ′ に収束していれば,fm → f ∈ Aspq である.
これは,Fatouの補題より明らかである.
命題 28. S は,0 < p, q < ∞, s ∈ Rのときに Aspq において稠密である.
Proof. φj , j = 0, 1, 2, . . .は 1の分割条件を満たしているとして Aspq(Rn)の位相で
N∑
j=0
φj(D)f → f
が成立する.F スケールのときを証明する.実際に,定理 23により,∥∥∥∥∥∥f −
N∑
j=0
φj(D)f : F spq(R
n)
∥∥∥∥∥∥
=
∥∥∥∥∥2js∞∑
k=N+1
φk(D)φj(D)f : Lp(lq)
∥∥∥∥∥ =∥∥2jsχ[max(N,k−1),∞)(j)φk(D)φj(D)f : Lp(lq)
∥∥
≤ C
∥∥∥∥∥∥
j+1∑
k=j−1
φk(2k·)∥∥∥∥∥∥
∥∥2jsφj(D)f∞j=N : Lp(lq)∥∥ ≤ C
∥∥2jsφj(D)f∞j=N : Lp(lq)∥∥
N →∞として Aspq(Rn)の位相で
N∑
j=0
φj(D)f → f
を得る.したがって,各 fN を近似すればいい.ψ ∈ S, χB(0,2) ≤ ψ ≤ χB(0,1) とする.GN =fN ·ψ( 1
2kδN)とおくと,δN を十分に小さくすることでLebesgueの収束定理から supp (fN−GN ) ⊂
B(0, 2N+4) ‖fN −GN : Lp‖ < N !−1 と出来る.ψ ∈ S ゆえ,GN ∈ S.結局 S は F spq で稠密と
わかった.
補題 29. 0 < p, q ≤ ∞, s ∈ Rとする.f ∈ Aspq に対して,fk ∈ S, k = 1, 2, . . .で次の条件を満
たしているものが存在する.
fk → f ∈ S ′, ‖f : Aspq‖ ≤ limsupk→∞‖fk : As
pq‖ ≤ C ‖f : Aspq‖
12
Proof. 初めに‖f : As
pq‖ ≤ limsupk→∞‖fk : Aspq‖
が従うのは Fatouの補題からわかる.gk =k+1∑
j=0
φj(D)f とおく.gk → f ∈ S ′ はフーリエ変換を
すると明らかにわかる.サンプル定理より,k = 1, 2, . . .に対して
‖gk : Aspq‖ ≤ C ‖f : As
pq‖
も証明できる.gkは命題28と同じ方法によって,‖fk : Bspq‖ ≤ C‖gk : Bs
pq‖と出来る.gk−fk → 0が S ′ で成り立つ.この fk が所望の fk である.
例 30. s > 0のときに,Bs∞,∞(Rn) ⊂ Cb(Rn)
を証明しよう.
Proof. f ∈ Bs∞,∞(Rn)とする.φj , j = 0, 1, 2, . . .は 1の分割条件を満たしているとして
supj∈N0
2js‖φj(D)f : L∞‖ < ∞
であるから,S ′ の位相だけではなく,L∞ の位相で
N∑
j=0
φj(D)f → f
が成立する.N∑
j=0
φj(D)f は連続ゆえ,f も連続.
6 具体的なパラメータによる古典的な関数空間の復元
パラメーターをうまくとることによって古典的な関数空間は復元できる.次の関数空間におけ
る一致が見られる.
命題 31. 1 < p < ∞とせよ.このとき,
Lp(Rd) = F 0p2(R
d)
である.
Proof. φj は次の条件を満たしているとせよ.
∞∑
j=0
φj(x)2 = 1.
13
p = 2のときは,Plancherelの定理より,
‖f : F 022‖
=
∞∑
j=0
∫
Rn
φj(D)f(x)2 dx
12
=∞∑
j=0
(∫
Rn
φj(D)f(x)2 dx
) 12
=∞∑
j=0
(∫
Rn
|φj(ξ)Ff(x)|2 dx
) 12
=(∫
Rn
|Ff(x)|2 dx
) 12
= ‖f : L2‖
したがって,p = 2のときは,命題は確かに正しい.1 < p ≤ 2とする.L2から L2(l2)への線形作用素 Φを
Φ(f) := (φj(D)f)
で定義する.x ∈ Rn に対してCから l2 への線形作用素を k(x)を
k(x) = (F−1φj(x))∞j=0
で定めると,
Φ(f) =∫
Rn
k(x− y)f(y) dy
である.次の条件を確認すれば,
‖f : F 0p2‖ ≤ C ‖f : Lp‖
を証明できる.
条件1:|x| ≥ 2|y|のとき‖k(x− y)− k(x)‖l2 ≤
C |y||x|n+1
(12)
F−1φ0は |x|−n−1でおされられているから,F−1φj , j ≥ 1に関して考えればよい.j ≤ 1のとき,
F−1φj(x) = 2jnτ(2jx), τ(x) = [F−1φ1(2·)](x)
が成立する.|x| ≥ 2|y|のとき|F−1φj(x− y)−F−1φj(x)|≤ 2j(n+1)|y| sup
t∈[0,1]
|τ(2j(x− ty))| ≤ C |y||x|n+1
supt∈[0,1]
(2j |x− ty|)n+1|τ(2j(x− ty))|
ここで,
∞∑
j=1
(sup
t∈[0,1]
(2j |x− ty|)n+1|τ(2j(x− ty))|)2
≤ 2∑
j:2j |x|≤1
(sup
t∈[0,1]
(2j |x− ty|)n+1|τ(2j(x− ty))|)2
+ 2∑
j:2j |x|≥1
(sup
t∈[0,1]
(2j |x− ty|)n+1|τ(2j(x− ty))|)2
≤ C∑
j:2j |x|≤1
(sup
t∈[0,1]
(2j |x|)n+1
)2
+ C∑
j:2j |x|≥1
((2j |x|)−1
)2
≤ C
14
より,証明が終わる.
2 ≤ p < ∞のときの逆向きの不等式は次のようにして示す.S は Lpで稠密であるから,f ∈ Sとしてかまわない.双対性より,
‖f : Lp‖ :=∫
Rn
f(x)g(x) dx
となる gを Lp/(p−1) から取れる.したがって,Planchrelの等式および先ほど示した式
‖f : F 0p′2‖ ≤ C ‖f : Lp′‖, ‖g : Lp/(p−1)‖ = 1
より次の不等式が従う.
‖f : Lp‖ =∫
Rn
Ff(ξ)Fg(ξ) dx =∞∑
j=0
∫
Rn
φj(ξ)Ff(ξ)φj(ξ)Fg(ξ) dξ
=∞∑
j=0
∫
Rn
[φj(D)f ](x)[φj(D)g](x) dx =∫
Rn
∞∑
j=0
[φj(D)f ](x)[φj(D)g](x) dx
≤∫
Rn
∞∑
j=0
|φj(D)f(x)|2
12
∞∑
j=0
|φj(D)g(x)|2
12
dx
≤
∫
Rn
∞∑
j=0
|φj(D)f(x)|2
p2
dx
1p
∫
Rn
∞∑
j=0
|φj(D)g(x)|2
p′2
dx
1p′
≤ C
∫
Rn
∞∑
j=0
|φj(D)f(x)|2
p2
dx
1p
= C ‖f : F 0p2‖.
1 < p ≤ 2のときの ‖f : Lp‖ ≤ C ‖f : F 0p2‖ の証明.Ψ : L2(l2) → L2 を次の式で定める.
Ψ((fj)∞j=0) :=∞∑
j=0
φj(D)fj
この作用素が確かに定義されていて L2 有界であることは次のようにして証明される.すると∞∑
j=0
φj(D)fj ∈ L2 であるから,
∥∥∥∥∥∥
∞∑
j=0
φj(D)fj : L2
∥∥∥∥∥∥
=
∥∥∥∥∥∥
∞∑
j=0
φjFfj : L2
∥∥∥∥∥∥=
∞∑
j=0
∞∑
k=0
∫
Rn
φj(ξ)Ffj(ξ)φk(ξ)Ffk(ξ) dξ
=∞∑
j=0
j+1∑
k=max(0,j−1)
∫
Rn
φj(ξ)Ffj(ξ)φk(ξ)Ffk(ξ) dξ ≤ 3∞∑
j=0
∫
Rn
|φjFfj(ξ)|2 dx
≤ 3∫
Rn
∞∑
j=0
|Ffk(ξ)|2 dξ = 3∫
Rn
∞∑
j=0
|fk(x)|2 dx < ∞
15
これに対応する積分核K ′(x)は
k′(x) : l2 → C, (aj) 7→∞∑
j=1
F−1φj(x)aj
作用素ノルムは
‖k′(x)‖l2→C := ‖F−1φj(x) : l2‖であるが,これは先ほどの計算より Holmandar条件を満たしている.したがって,特異積分の理論より,1 < p ≤ 2のときの
‖f : Lp‖ ≤ C ‖f : F 0p2‖
が従う.
2 ≤ p < ∞のときの‖f : F 0
p2‖ ≤ C ‖f : Lp‖は双対性を用いて先ほどと同じく証明できる.
後に示す Lift operatorを用いると次の命題が簡単に示せる.
命題 32. 1 < p < ∞, s > 0とせよ.このとき,Hsp(Rd) = F s
p2(Rd)である.
Proof. どちらも Lift operatorによって先ほどの結果を lift出来る.
追記
命題 33. m ∈ N0, 1 < p < ∞のとき
Wmp (Rn) := f ∈ Lp : ∂αf ∈ Lp
ノルムは
‖f : Wmp ‖ :=
∑
|α|≤m
‖∂αf : Lp‖
で与えられるが,これはHmp と一致する.
Proof. |α| < mのとき,
‖∂αf : Lp‖ ≤ C ‖(1−D)m/2f : Lp‖を示せばよい.φα(x) = xα < x >−m は Holmanderの multiplierの定理の仮定をみたすから,(補題 34)
‖∂αf : Lp‖ = ‖φα(D)(1−D)m/2f : Lp‖ ≤ C ‖(1−D)m/2f : Lp‖となる.
補題 34. mはK =[n
2+ 1
]回連続微分可能な関数とする.
|∂αm(ξ)| ≤ C |ξ|−|α|
ならば,m(D)は Lp 有界である.
16
参考までに次の命題を挙げておく.
命題 35. m ∈ N0, 1 < p < ∞のとき
Hmp =
f ∈ Lp : ‖f : Lp‖+
n∑
j=1
‖∂mj f : Lp‖ < ∞
さらに,
‖f : Hmp ‖ ∼ ‖f : Lp‖+
n∑
j=1
‖∂mj f : Lp‖
命題 36. f ∈ L1loc に対して,
‖f : bmo‖ := sup`(Q)≥1
1|Q|
∫
Q
|f(y)| dy + sup`(Q)≤1
1|Q|
∫
Q
|f(y)− fQ| dy
とおくと,B2∞,∞ は L1
loc の元で代表されて
‖f : bmo‖ = ‖f : B0∞,2‖
である.
7 3つのパラメーターの持つ意味合いの考察
この節では関数空間の持つ 3つのパラメーターのもつ意味合いを考察する.次の命題を見ていただけば,その意味合いがわかってくるであろう.qの持つ意味はなかなかわかりにくい.
7.1 pの持つ意味合い
これは先ほどの関数空間の一致を見てもわかるように Lp 関数空間にどの程度近いかを表して
いると見てよい.
7.2 sの持つ意味合い
定義 37. m = 0, 1, 2, . . .に対して,
Cm := f : f は Cm(Rn) 級ですべてのm階までの導関数が有界
とおく.
次の命題を考えると sは微分可能性に関連していることが理解できるであろう.
命題 38. j = 1, . . . , nとする.連続作用素の意味で ∂j : As+1pq → As
pq が成り立つ.
17
Proof. ψを |x| ≤ 8のところで 1となり,|x| ≥ 16で消える関数とする.ψj(x) = xψ(x) とおく.
‖∂jf : As+1pq ‖ = ‖ψj(D)f : As
pq‖ ≤ C ‖f : Aspq‖
より結果が従う.ここで,定理 23を用いた.
命題 39. m = 0, 1, . . .に対して,Bm∞,1(R
n) ⊂ Cm(Rn).
Proof. 後でm = 0のときを示すからこの命題は先ほどの命題の系である.
7.3 qの持つ意味合い
qの持つ意味合いは非常に理解しづらい.滑らかさ,可積分性というような概念と結び付けな
いほうがよいのかもしれない.
命題 40. 0 < p ≤ ∞,0 < q1 ≤ q2 ≤ ∞とする.s ∈ Rに対して,
Bspq1
(Rn) ⊂ Bspq2
(Rn)
が成り立つ.0 < p < ∞,0 < q1 ≤ q2 ≤ ∞とする.s ∈ Rに対して,
F spq1
(Rn) ⊂ F spq2
(Rn)
が成り立つ.
Proof. これは lp 空間の単調性からわかる.つまり,証明には lq1 ⊂ lq2 を用いる.
命題 41. 0 < p ≤ ∞,0 < q1, q2 ≤ ∞とする.s ∈ Rに対して,
Bs+δpq1
(Rn) ⊂ Bspq2
(Rn)
が成り立つ.0 < p < ∞,0 < q1, q2 < ∞とする.s ∈ Rに対して,
F s+δpq1
(Rn) ⊂ F spq2
(Rn)
が成り立つ.
Proof. ノルムの定義を書き下すことによって,
補題 42. 0 < q0 < q1 < ∞のとき
‖ak : lq0‖ ≤ C ‖2kδak : lq1‖
を示せばよいとわかるが,これは Holderの不等式によって明らか.
F と B の関係を qの言葉で見ることができる.
18
命題 43. 0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞,s ∈ Rとする.このとき,
Bspp(R
n) = F spp(R
n).
が成り立つ.連続埋め込み
Bsp,min(p,q)(R
n) ⊂ F spq(R
n) ⊂ Bsp,max(p,q)(R
n).
も成り立つ.
Proof. 初めの式は,両方の空間のノルムを書き下すと (Fubiniの定理より)完全一致するから明らか.後半の式を証明しよう.
場合 44. q ≤ pのとき
今までに示したことにより,
F spq(R
n) ⊂ F spp(R
n) = Bspp(R
n) = Bsp,max(p,q)(R
n)
だから,実質的には
Bsp,q(R
n) ⊂ F spq(R
n)
を示すことになる.そのためには,
‖fk : lq(Lp)‖ ≥ ‖fk : Lp(lq)‖
を示せば十分である.これは,Minkowskiの不等式より明らかである.
場合 45. q ≥ pのとき
先ほどと同じように初めに示すべき式を確認してMinkowskiの不等式を使うことで証明が完結する.
命題 46. 1 ≤ p ≤ ∞とするとき,
B0p1(R
n) ⊂ Lp(Rn) ⊂ B0p∞(Rn)
が成立する.
Proof. B0p1(R
n) ⊂ Lp(Rn) の証明 : f ∈ B0p1(R
n)とする.ノルムの定義により,
∞∑
j=0
‖φj(D)f : Lp‖ < ∞
である.もちろんここで,1の分割条件∞∑
j=0
φj(x) ≡ 1 を仮定してよい.
‖f : Lp‖ :=
∥∥∥∥∥∥
∞∑
j=0
φj(D)f : Lp
∥∥∥∥∥∥
19
だから,三角不等式を用いて,1の分割条件を満たしているような φj に対して,
‖f : Lp‖ ≤ ‖f : B0p,1‖
が成立する.
Lp(Rn) ⊂ B0p∞(Rn) の証明 : f ∈ Lp とする.このとき,
‖f : B0p∞‖ = sup
j∈N0
‖φj(D)f : Lp‖
である.今 φj(D)f = F−1φj ∗ f で j ≥ 1のとき,F−1φj(x) = 2(j−1)nF−1φ1(x) より,
‖F−1φj : L1‖ ≤ C
という評価がすべての j ∈ N0 につき成り立つ.ハウスドルフヤングの不等式により,
supj∈N0
‖φj(D)f : Lp‖ ≤(
supj∈N0
‖F−1φj : L1‖)‖f : Lp‖ ≤ C ‖f : Lp‖ < ∞
だから,右辺の包含関係が従う.
p, sがきまった状態で,q を調節するというのが実際の考え方で q が小さいほうがたちがよい
と考えるといいであろう.
7.4 s− n/pのもつ意味合い
まず,s > 0, p > 1のときHsp = F s
p2を思い出しておく.Sobolevの埋め込み定理とは次の定理であった.
定理 47. s > 0, s′ > 0かつ p > 1, p′ > 1とする.もし,s > s′, s− n
p= s′ − n
p′が成り立つなら
ば,Hsp ⊂ Hs′
p′ である.
これに相当する定理が成り立つ.
定理 48. s > 0, s′ > 0かつ p, q > 0, p′ > 0とする.もし,s > s′, s− n
p= s′ − n
p′が成り立つな
らば,Bsp,q ⊂ Bs′
p′,q である.
定理 49. s > 0, s′ > 0かつ p, q > 0, p′, q′ > 0とする.もし,s > s′, s− n
p= s′ − n
p′が成り立つ
ならば,F sp,q ⊂ F s′
p′,q′ である.
したがって,これらの定理は埋め込み定理の拡張であると考えられて,Sobolev空間の結果を見事に再現している.ある程度準備が整うと証明は簡単である.
定理 48を証明してみよう.
まず,定理 20より次が従う.
20
補題 50. f ∈ S ′に対して,supp (Ff) ⊂ B(0, 1)のとき次の評価式が成り立つ.ただし,0 < p < p′
である.
‖f : Lp′‖ ≤ C ‖f : Lp‖C は f にはよらない.
Proof. サンプル定理より‖f : L∞‖ ≤ C ‖f : Lp‖
が従う.f ∈ Lp ∩ L∞ だから補間することで定理の結論を得る.
関数の台についての一般化は容易に出来る.
系 51. f ∈ S ′に対して,supp (Ff) ⊂ B(0, R)のとき次の評価式が成り立つ.ただし,0 < p < p′
である.
‖f : Lp′‖ ≤ CR−n/p+n/p′ ‖f : Lp‖C は上述の定理と同一のものである.
Proof. fR = f(R·)とおく.このとき,
‖fR : Lp‖ = R−n/p‖f : Lp‖かつ ‖fR : Lp′‖ = R−n/p′‖f : Lp′‖
であるから,結果が従う.
これを用いて定理 48は次のようにして証明される.φjは今までと同じとする.ψを supp (ψ) ⊂|x| ≤ 16となるものとする.ψj = ψ(·/2j)とおく.このとき,
2js‖φj(D)f : Lp‖= 2js‖ψj(D)φj(D)f : Lp‖ ≤ C 2j(s−n/p+n/p′)‖φj(D)f : Lp‖ ≤ C 2js′‖φj(D)f : Lp′‖.
定理 48の証明終わり
定理 49の証明 今までの埋め込み定理より,0 < r ≤ 1のとき,
F sp,∞(Rn) ⊂ F s′
p′,r(Rn)
を証明すればいい.φj(D)f を二通りに評価する.
サンプル定理 (20)より
2ks‖φj(D)f : L∞(Rn)‖ ≤ C 2jnp ‖f : F s
p,∞‖
となる.したがって,K を自然数として,
K∑
j=0
2js′ |φj(D)f(x)|r
1r
≤ C1 2nKp′ ‖f : F s
p,∞‖ (13)
21
となる.
一方で,s > s′ より,
∞∑
j=K+1
(2js′ |φj(D)f(x)|)r ≤ c 2Ks′r(
supj∈N0
2js|φj(D)f(x)|)r
したがって,
∞∑
j=K+1
(2js′ |φj(D)f(x)|)r
1r
≤ c 2K(s′−s)
(sup
j∈N0
2js|φj(D)f(x)|)
(14)
(13)と (14)をもとにして,
‖f : F s′p′,r(R
n)‖p′ =∫ ∞
0
p′λp′−1
∣∣∣∣∣∣∣
x ∈ Rn :
∞∑
j=0
2js′r|φj(D)f(x)|r
1r
> λ
∣∣∣∣∣∣∣dλ (15)
を評価する.(15)の積分を二つに分ける.
∫ ∞
0
p′λp′−1
∣∣∣∣∣∣∣x ∈ Rn :
∞∑
j=0
2js′r|φj(D)f(x)|r
1r
> λ
∣∣∣∣∣∣∣dλ
≤∫ M
0
p′λp′−1
∣∣∣∣∣∣∣
x ∈ Rn :
∞∑
j=0
2js′r|φj(D)f(x)|r
1r
> λ
∣∣∣∣∣∣∣dλ
+∫ ∞
M
p′λp′−1
∣∣∣∣∣∣∣
x ∈ Rn :
∞∑
j=0
2js′r|φj(D)f(x)|r
1r
> λ
∣∣∣∣∣∣∣dλ := I + II
第一項の評価は簡単である.(14)より,
I ≤∫ M
0
p′λp′−1
∣∣∣∣∣
x ∈ Rn : 2K(s′−s)
(sup
j∈N0
2js|φj(D)f(x)|) 1
r
> cλ
∣∣∣∣∣ dλ
≤ cMp′−p ‖2jsφj(D)f : Lp(l∞)‖p
したがって,第二項の評価をする.集合
x ∈ Rn :
∞∑
j=0
2js′r|φj(D)f(x)|r
1r
> λ
を上から
x ∈ Rn :(∑K
j=0(2js′ |φj(D)f(x)|)r
) 1r
> λ4
⋃ x ∈ Rn :
(∑∞j=K+1(2
js′ |φj(D)f(x)|)r) 1
r
> λ4
22
で評価する.C1を式 (13)に出てくるものとして,M = 2nKp′ +4
C1 ‖f : F sp,∞(Rn)‖ とおく.する
と,λ > M のときに,第一の集合は空集合になる.第二の集合は
x ∈ Rn : 2K(s′−s)
(sup
j∈N0
2js|φj(D)f(x)|)
>λ
4
で評価される.
したがって,
∫ ∞
M
p′λp′−1
∣∣∣∣∣∣∣
x ∈ Rn :
∞∑
j=0
2js′r|φj(D)f(x)|r
1r
> λ
∣∣∣∣∣∣∣dλ
≤∫ ∞
M
p′λp′−1
∣∣∣∣
x ∈ Rn :(
supj∈N0
2js|φj(D)f(x)|)
> 2K(s−s′)+2λ
∣∣∣∣ dλ
≤ C 2p′K(s−s′)∫ ∞
M
λp′−1
∣∣∣∣
x ∈ Rn :(
supj∈N0
2js|φj(D)f(x)|)
> λ
∣∣∣∣ dλ
≤ C 2p′K(s−s′)‖f : F sp,∞(Rn)‖ ≤ C2 2p′K(s−s′)‖f : F s
p,q(Rn)‖
したがって,すべての f ∈ F sp,∞ に対して,
‖f : F s′p′,r(R
n)‖ ≤ C ‖f : F sp,∞(Rn)‖+ C2 2p′K(s−s′)‖f : F s′
p′,r(Rn)‖
これより,特に f ∈ S ならば上の式の各項がすべて有限であるので,K を大きくとって
‖f : F s′p′,r(R
n)‖ ≤ C ‖f : F sp,∞(Rn)‖
f ∈ S でなくても,この不等式と補題 29より一般場合は Fatouの補題より従う.
命題 52. 0 < p, q ≤ ∞,s ∈ Rとする.次の同型が成り立つ.
(1−∆)δ/2 : Bspq → Bs+δ
pq
定理 23を使うべく次の補題を証明する.
補題 53. ∂α < x >s= Ps,α(x) < x >s−2|α|, s ∈ R, α ∈ N0n が成り立つ.ここで,Ps,α は n変
数多項式で次数は |α|である.
Proof. 帰納法で証明が簡単にできる.
この補題より次が従う.
系 54. 1/4 ≤ |x| ≤ 4のとき,|∂α < 2kx >s | ∼ 2sk
したがって,次のことがわかる.ψ(x) = 1を |x| ≤ 16で満たしているコンパクト台の関数に対して fk(x) =< 2kx > ψk(x)とおくとき,k ≥ 1の時,
‖fk : Hm2 (Rn)‖ ≤ C
このことと定理 23を使うと命題が証明できる.
次の形の liftも有用であろう.
23
命題 55. 0 < p, q ≤ ∞,m ∈ Zとする.同型
(1 + ∆2m) : Bspq → Bs−4m
pq
が成り立つ.
8 同値なノルム
アトム分解をして分解したものが実際に関数空間に入っているかどうかを判定する道具として
同値なノルムを利用する方法がある.ここから先は証明を大きく省くことが多い.
定義 56. k0, k′ はコンパクト台をもつ S の関数とする.k0, k
′ は |x|の関数である.k0 ≡ 1かつ k′ ≡ 1 が十分大きい原点中心の球上で成立しているとする.N を十分大きい自然数とする
k = ∆Nk′ とおく.
定義 57. f ∈ S ′ とする.k(t, f) :=
1tn
∫
Rd
k
(x− y
t
)f(y) dy.
とおく.k0 に対しても,
k0(t, f) :=1tn
∫
Rd
k0
(x− y
t
)f(y) dy.
定義 58. 0 < p, q ≤ ∞, s ∈ Rとする.N を十分大きい自然数とする.このとき,f ∈ Bspq(Rn)
に対して,両側ノルム評価
C0‖f : Bspq(R
n)‖ ≤ ‖k0(1, f) : Lp‖+ ‖k(2−j , f) : lq(Lp)‖ ≤ C1‖f : Bspq(R
n)‖
が成り立つ.0 < p < ∞, 0 < q ≤ ∞, s ∈ Rとする.N を十分大きい自然数とする.このとき,
f ∈ F spq(R
n)に対して,両側ノルム評価
C0‖f : F spq(R
n)‖ ≤ ‖k0(1, f) : Lp‖+ ‖k(2−j , f) : Lp(lq)‖ ≤ C1‖f : F spq(R
n)‖
が成り立つ.
証明には次の補題が役に立つであろう.
補題 59. b > 0, δ > n (1/p− 1)+ + n/2 + bとする.このとき,
‖Fλ(1 + | · |2) b2 : Lp‖ ≤ ‖λ : Hs
2‖
が成り立つ.
9 アトム分解
関数空間を分解するアトム分解を考察する.これは,クオーク分解をするための準備である.
24
定義 60. ここでは二つの定数を用意する.これらの定数は5冊の本では画一的に表されていな
いが次にあげる定数が現在は重要であろうと思われる.
σpq = n
(1
min(1, p, q)− 1
), σp = n
(1
min(1, p)− 1
)
定義 61. d > 1は固定する.CK 級関数 aが 1K-アトムであるとは
supp (a) ⊂ dQ0,k. (16)
および
‖∂γa |L∞(Rn)‖ ≤ 1 (17)
をすべての |γ| ≤ K に対して満たすことである.
定義 62. d > 1を固定する.CK 級関数 aが (s, p)K,L-アトムであるとは
supp (a) ⊂ dQν,k ∃ν ≥ 1. (18)
かつすべての |γ| ≤ K に対して
‖∂γa |L∞(Rn)‖ ≤ 2(|α|−(s−np ))ν (19)
を満たしていてさらにモーメント条件∫
xβa(x)dx = 0 (20)
をすべての |β| ≤ Lに対して満たしていることである.
定義 63. (Qν,m,正規化特性関数,数列空間)
Qν,m の定義:
Qν,m =[m1
2ν− 1
2ν+1,m1
2ν+
12ν+1
]× . . .×
[mn
2ν− 1
2ν+1,mn
2ν+
12ν+1
], (21)
ここで,ν ∈ Zかつm = (m1, m2, . . . ,mn).
正規化特性関数:
χ(p)ν,m(x) = 2
νnp χQν,m . (22)
2種類の数列空間:0 < p, q ≤ ∞とする.b-型空間:
bpq =
λ | ‖λ | bpq‖ =
∞∑ν=0
( ∑
m∈Zn
|λν,m|p) q
p
1q
< ∞
. (23)
0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞とする.f -型空間:
fpq =
λ | ‖λ | fpq‖ =
∥∥∥∥∥∥
( ∑
ν∈N0
∑
m∈Zn
|λν,mχ(p)ν,m|q
) 1q
|Lp
∥∥∥∥∥∥< ∞
. (24)
25
注意 64. 0 < c < 1の時,正規化特性関数を χ(p)cQν,m
と定義して数列空間を定義しても同じ関数
空間が得られる.
次の定理ではアトム分解における級数の収束を保証している.
命題 65. 0 < p, q ≤ ∞, s ∈ Rとする.K ≥ 0と L ≥ −1 が
K ≥ (1 + [s])+, L ≥ [σp − s].
を満たしている.λ ∈ bpq につき,級数
∞∑ν=0
∑
m∈Zn
λν,maν,m
は少なくとも S ′の位相で収束する. ここで,aν,mは 1K-アトムであり,(ν = 0のとき)ν ≥ 1なら (s, p)K,L-アトムである.
注意 66. fpq ⊂ bp max(p,q) より上の命題は f に関しての結果を含んでいる.
B スケールのアトム分解:
定理 67. 0 < p ≤ ∞,0 < q ≤ ∞,s ∈ Rとせよ.K ≤ 0と L ≤ −1 が
K ≥ (1 + [s])+, L ≥ [σp − s]
を満たしている整数であるとする.f ∈ S ′(Rn)がBspq(R
n)に属する必要十分条件は aν,mは 1K-アトムであり,(ν = 0のとき)ν ≥ 1なら (s, p)K,L-アトムであるとしてしかるべくアトムをとると
f =∞∑
ν=0
∑
m∈Zn
λν,maν,m(x)
かつ inf ‖λ | bpq‖ < ∞と表せることであり,この級数はS′(Rn)で収束しているとする.‖f |Bspq(Rn)‖
と条件にかなう bの数列ノルム inf ‖λ | bpq‖ の下限は同値である.
F スケールのアトム分解:
定理 68. 0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞,s ∈ Rとせよ.K ≤ 0と L ≤ −1 が
K ≥ (1 + [s])+, L ≥ [σpq − s]
を満たしている整数であるとする.f ∈ S ′(Rn)が F spq(R
n)に属する必要十分条件は aν,mは 1K-アトムであり,(ν = 0のとき)ν ≥ 1なら (s, p)K,L-アトムであるとしてしかるべくアトムをとると
f =∞∑
ν=0
∑
m∈Zn
λν,maν,m(x)
かつ inf ‖λ | fpq‖ < ∞と表せることであり,この級数はS′(Rn)で収束しているとする.‖f |F spq(R
n)‖と条件にかなう f の数列ノルム inf ‖λ | fpq‖ の下限は同値である.
26
10 M. Frazier-B. Jawerthの仕事
ここでは,M. Frazier-B. Jawerthの仕事を紹介する.これは φ変換といわれるもので,この結
果をこの箇所はクオーク分解の証明の際に必要となるが,実際のM. Frazier-B. Jawerthより許さんの証明法が非常に簡明なためその流れを紹介する.
定理 69. 0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞そして s ∈ Rとする.このとき,f ∈ F spq(R
n)に対して,
Λkm := 2k(s−n/p)φk(D)f(2−km)
とおけば,
‖f : F spq(R
n)‖ ∼ ‖Λkm : fpq‖が成り立つ.
Proof. 不等式‖f : F s
pq(Rn)‖ ≥ C1‖Λkm : fpq‖
の証明.x ∈ Qkm とする.
|Λkm| ≤ 2k(s−n/p) minx∈Qkm
|φk(D)f(x)|+ C 2k(s−n/p−1)|∇φk(D)f(x)|
ここで,系 16を用いることにより,
|Λkm| ≤ 2k(s−n/p) minx∈Qkm
|φk(D)f(x)|+ C 2k(s−n/p) (M [|φk(D)f |r](x))1r
p-正規化特性関数をかけて総和することで,∑
m∈Zn
|Λkm|χ(p)k,m(x)
≤∑
m∈Zn
(2k(s−n/p) min
y∈Qkm
|φk(D)f(y)|χ(p)k,m(x) + C 2ks (M [|φk(D)f |r](x))
1r
)
q-乗してから kに関して総和することで,
∑
k∈N0
∑
m∈Zn
|Λkmχ(p)k,m(x)|q
≤ C∑
k∈N0
∑
m∈Zn
(2ks miny∈Qkm
|φk(D)f(y)|)qχk,m(x) + C∑
k∈N0
(2ks (M [|φk(D)f |r](x))qr
Rn 上で積分して,∫
Rn
∑
k∈N0
∑
m∈Zn
|Λkmχ(p)k,m(x)|q dx
≤ C
∫
Rn
∑
k∈N0
∑
m∈Zn
(2ks miny∈Qkm
|φk(D)f(y)|)qχk,m(x) dx
+ C
∫
Rn
∑
k∈N0
(2ks (M [|φk(D)f |r](x))qr dx
27
r =min(p, q, 1)
2とする.極大不等式より,
∫
Rn
∑
k∈N0
∑
m∈Zn
|Λkmχ(p)k,m(x)|q dx
≤ C∑
k∈N0
∑
m∈Zn
∫
Rn
(2ks miny∈Qkm
|φk(D)f(y)|)qχk,m(x) dx
+ C∑
k∈N0
∫
Rn
(2ks (M [|φk(D)f |r](x))qr dx
= C∑
k∈N0
∑
m∈Zn
∫
Qk,m
(2ks|φk(D)f(x)|)q dx + C∑
k∈N0
∫
Rn
(2ks|φk(D)f(x)|)q dx
= C∑
k∈N0
∑
m∈Zn
∫
Qk,m
(2ks|φk(D)f(x)|)q dx + C
∫
Rn
∑
k∈N0
(2ks|φk(D)f(x)|)q dx
= C
∫
Rn
∑
k∈N0
(2ks|φk(D)f(x)|)q dx = ‖f : F spq‖q
よって,片側の不等式が証明できた.
もう片方の不等式を示す際には次の補題を用いる.
補題 70. ψを
x ∈ Rn : max(|x1|, |x2|, . . . , |xn|) ≤ 2πに台を持ち,
x ∈ Rn : max(|x1|, |x2|, . . . , |xn|) ≤ 4で 1となるような滑らかな関数とする.このとき,
φk(D)f(x) = c0
∑
m∈Zn
Λkm2−k(s−n/p)F−1κ(2kx−m)
である.
補題 70を認めて,定理の証明を完結させる.∣∣∣∣∣
∑
m∈Zn
Λkm2−k(s−n/p)F−1κ(2kx−m)
∣∣∣∣∣
≤∑
m:|2kx−m|≤2
∣∣∣Λkm2−k(s−n/p)F−1κ(2kx−m)∣∣∣
+∞∑
γ=1
∑
m:2γ≤|2kx−m|≤2γ+1
∣∣∣Λkm2−k(s−n/p)F−1κ(2kx−m)∣∣∣
≤ C∑
m:|2kx−m|≤2
∣∣∣Λkm2−k(s−n/p)∣∣∣ + C
∞∑γ=1
∑
m:|2kx−m|∈[2γ ,2γ+1]
12γM
∣∣∣Λkm2−k(s−n/p)∣∣∣
ここで,最後の不等式を得るにあたって任意の自然数M に対して,
|F−1κ(x)| ≤ c0(1 + |x|)−M
28
が成り立つことを用いた.r =min(p, q, 1)
2として,
∑
m:|2kx−m|≤2
∣∣∣Λkm2−k(s−n/p)∣∣∣ ≤ 2−ks
∑
k∈Z
|Λkmχ(p)k,m(x)|
および,∑
m:|2kx−m|∈[2γ ,2γ+1]
12γM
∣∣∣Λkm2−k(s−n/p)∣∣∣
≤ C 2−ks−γM
(∫
|x−2−km|≤2γ+2
∑
m∈Z
|Λkmχ(p)k,m(x)|r dx
) 1r
≤ C 2−ks+γ/r−γM
(M
[ ∑
m∈Z
|Λkmχ(p)k,m|r
](x)
) 1r
M を十分に大きな自然数とすると,
|φk(D)f(x)| ≤ c02−ks
(M
[ ∑
m∈Z
|Λkmχ(p)k,m|r
](x)
) 1r
ここで,Fefferman-Steinの不等式を用いると,
‖2ks|φk(D)f(x)| : Lp(lq)‖ ≤ c0
∥∥∥∥∥∥
(M
[ ∑
m∈Z
|Λkmχ(p)k,m|r
](x)
) 1r
: Lp(lq)
∥∥∥∥∥∥≤ ‖f : Lp(lq)‖
となり証明が終わる.
最後に補題 70を証明する.
Proof. φk(ξ)F−1f は x ∈ Rn : max(x1, x2, . . . , xn) ≤ 2k+4π の内部でしか 0ではないので,この立方体上でフーリエ展開が出来る.
φk(ξ)F−1f =∑
m∈Zn
c2−kn < φk · exp(i2−k−4m·),Ff > exp(i2−k−4mξ)
これに κ(2−k·)をかけて,上の等式を S ′の式とみなすことが出来る.この κ(2−k·)をかけて得られる等式
φk(ξ)F−1f =∑
m∈Zn
c2−kn < φk · exp(i2−k−4m·),Ff > κ(2−kξ)exp(i2−k−4mξ)
を S ′ の式として逆フーリエ変換をして得られる式が補題の式である.
11 クオーク分解
クオーク分解は近年フラクタルなどに応用されている関数の分解である.ここでは,[Tri-ε]の初めのクオーク分解の導入を行う.
29
11.1 Regular case
ここでは,先ほどのアトム分解を参考にしてクオーク分解の証明がどのようにされているかを
見てみよう.
定義 71. ψ ∈ S は supp (ψ) ⊂ x ∈ Rn : |x| ≤ 2r および,∑
j∈Zn
ψ(x− j) ≡ 1 を満たしている
とする.このとき
ψβ(x) = xβψ(x)
とおく.
(βqu)ν,m(x) = 2−ν(s−np )ψβ(2νx−m)
をクオーク関数とする.
以後,p, q > 1の時を考える.したがって,σp = σpq = 0 である.もし,s > 0ならば,アトム分解の定理は L = −1として取れるためにモーメント条件を考える必要がなくなる.
主張 72. c2−r|β|(βqu)ν,mは先ほどの 1K アトムになっている.ここで,K は任意の自然数で cK
は β やm, ν によらない定数である.
証明:αを任意の多重指数として
∂α2−r|β|(βqu)ν,m(x) = 2−ν(s−np )+2ν|α|
[2−r|β|[∂α(βqu)0,0](2νx−m)
]
ここでライプニッツ則を用いると
‖2−r|β|∂α(βqu)0,0‖∞ ≤ Cβ
となるので,K をとめて考えると適当な定数をかけることで結論が得られる.
定義 73. λ = λββ∈Nn0は三重複素数列 λβ = λβ
ν,mν∈N0,m∈Zn であるとする.
‖λ | bpq‖ρ := supβ∈N0
2ρ|β|‖λβ | bpq‖ (25)
ここで,ρ > r,0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞.
‖λ | fpq‖ρ := supβ∈N0
2ρ|β|‖λβ | fpq‖ (26)
ここで,ρ > r,0 < p ≤ ∞,0 < q ≤ ∞.
定理 74. ρ > r を大きくとるとする.regular case s > σp,0 < p ≤ ∞,0 < q ≤ ∞ を仮定す
る.f ∈ S ′ に対して f ∈ Bspq(Rn)であることと f が次のように分解されることは同値である. :
f =∑
β∈Nn0
∑
ν∈N0
∑
m∈Zn
λβν,m(βqu)ν,m, (27)
係数 λは
‖λ | bpq‖ρ < ∞ (28)
30
を満たしている.これらの条件を満たしているときは係数は
‖f |Bspq(R
n)‖ ∼ ‖λ | bpq‖ρ (29)
を満たしているように取れる.
F -スケールでも同様である.
定理 75. ρ > rを大きくとるとする.regular case s > σpq,0 < p < ∞,0 < q ≤ ∞ を仮定する.f ∈ S ′ に対して f ∈ F s
pq(Rn)であることと f が次のように分解されることは同値である. :
f =∑
β∈Nn0
∑
ν∈N0
∑
m∈Zn
λβν,m(βqu)ν,m (30)
係数 λは
‖λ | fpq‖ρ < ∞ (31)
を満たしている.これらの条件を満たしているときは係数は
‖f |F spq(R
n)‖ ∼ ‖λ | fpq‖ρ (32)
を満たしているように取れる.
分解されているものが関数空間に入ることを見てみる.F spq に関して示すことにする.そのた
めに,
fβ :=∑
ν∈N0
∑
m∈Zn
λβν,m(βqu)ν,m
とおく.
2−r|β|fβ =∑
ν∈N0
∑
m∈Zn
λβν,m[2−r|β|(βqu)ν,m]
はアトム分解だから,
‖fβ : F spq‖ ≤ C2−r|β|‖λβ
ν,m : fpq‖がわかる.したがって,関数空間の完備性を認めてしまえば,ρ > rだから
‖f : F spq‖ ≤ C
∑
β∈N0n
2−r|β|‖λβν,m : fpq‖
≤ C∑
β∈N0n
2−(ρ−r)|β|‖λβν,m : fpq‖ρ ≤ C‖λβ
ν,m : fpq‖ρ
となって証明が終わる.
11.2 一般の場合のクオーク分解
一般の場合にはもうひとつのクオークが必要である.
31
定義 76. L = −1, 1, 3, 5, 7, . . .とする.このとき
(βqu)Lν,m(x) := [(−∆)
L+12 (βqu)ν,m](x). (33)
定理 77. ρ > r を大きくとるとする.L ≥ 1を十分に大きな奇数として s > 0,0 < p ≤ ∞,0 < q ≤ ∞ を仮定する.f ∈ S ′に対して f ∈ Bs
pq(Rn)であることと f が次のように分解されるこ
とは同値である. :
f =∑
β∈Nn0
∑
ν∈N0
∑
m∈Zn
λβν,m(βqu)ν,m +
∑
β∈Nn0
∑
ν∈N0
∑
m∈Zn
ηβν,m(βqu)(L)
ν,m, (34)
係数 λ, ηは
‖λ | bpq‖ρ < ∞ (35)
を満たしている.これらの条件を満たしているときは係数は
‖f |Bspq(R
n)‖ ∼ ‖λ | bpq‖ρ + ‖η | bpq‖ρ (36)
を満たしているように取れる.
F -スケールでも同様である.
参考文献
[FrJ] F.Michael and J.Bjorn, A discrete transform and decompositions of distribution spaces.J. Funct. Anal. 93 (1990), no. 1, 34–170.
[Tri-β] H. Triebel, Theory of function spaces I, Birkhauser,1983.
[Tri-δ] H. Triebel, Fractal and Spectra, Birkhauser,1997.
[Tri-ε] H. Triebel, The structure of functions, Birkhauser,2001.
[Xu] B. Xu, personal communication.
32