『留学生と日本人学生のためのレポート・論文表現ハンドブック』ウェブ資料（東京大学出版会） 

 

                              

エジプトへの観光旅行の安全性                       

マネージメント学部

学籍番号（○○○○○○○○）

久松アイマン

１．はじめに

エジプトは、アフリカ大陸の東北にある国であり、総人口は約 8000 万人である。リ

ビア、スーダン、イスラエルと地中海に囲まれている。エジプトでは、織物や食料生産

がメインの事業であるが、一番有名な事業は観光旅行である。毎年、多くの観光客がピ

ラミッドなどを見るためにエジプトへ行く。Yahoo Asia News によると、2005 年エジプ

トに訪れた観光客は 860 万人であり、68 億の収益を上げた。エジプトの観光事業はエ

ジプト経済の重要な要素である。しかし、近年さまざまな国で起きているテロリズムは、

テロをアラブ諸国に結びつけようとするアメリカ政府、メディアやイラク戦争によって、

アラブ諸国の安全性のイメージを破壊している。

では、エジプトで本当にテロは起きているのであろうか。エジプトは危険な国なのか。

エジプトへの観光旅行は安全ではないのか。一般の人はエジプトの安全性についてどう

思っているのであろうか。現在エジプトに行ってみたいと思っている人はどのくらいい

るのであろうか。

本稿では、エジプトへの観光旅行について一般の人はどういうイメージを持っている

のかをアンケート調査で確認し、エジプトへの観光旅行の安全性を統計資料の分析によ

って明らかにしたい。まず、一般の人の考え方について検討する。次に、エジプトで起

きているテロと、他の国を比較する。そして最後に、エジプト国内の犯罪率を探り、他

の観光地と比較する。

 

２．エジプト旅行に対する一般的な印象

 

図 1は日本人の海外旅行先ベスト 10 を表している。これは、日本経済新聞によるも

のである。この資料によれば、一度でいいから行ってみたい海外旅行先として、国別で

最も人気が高かったのはエジプトである。一つの理由は、『テレビなどの映像で何度も

見ているが、やはりこの目で大きさを確かめて生きたい』(50 代男性)というものであ

1  

る。このように、エジプトは観光旅行先として日本人にとってもっとも人気がある。ピ

ラミッド、スフィンクスやマミーを目当てに、大勢の観光客が引きつけられている。

そこで、エジプトへの観光旅行の安全性について一般にどう思われているのか調べて

みた1)。大学生 30 名を対象にアンケート調査を行ったところ、図 2に示すように、

87％がエジプトへの観光旅行に対して関心を持っていた。しかし、70％がエジプトへ行

くのが不安であると答えた。不安だと思う理由を尋ねたところ、「治安が悪そうなイメ

ージがあるから」や「盗難が多いと聞いたから」という理由が挙げられた。要するに、

大半の人がエジプトへの観光旅行に関心があるものの、不安であることがわかった。ま

た、不安である理由が事実に基づくものではなく、ステレオタイプな考え方に影響され

ていることがわかった。このようなステレオタイプな考え方は現在世界中で起きている

テロについて報道するメディアに大きく関係があるのではないか。

 

３．エジプトの安全性

３．１ エジプト国内のテロ発生率

図 3 は 2000 年から 2006 年までに世界で起きたテロの発生数を国別に示しているもの

である。これは MIPT Terrorism Knowledge Base によるものである。この図から、2000

年から 2006 年までエジプトで起きたテロは 11 件であり、ランクは 50 位であることが

わかる。ほかの国のテロ発生数を見てみる。1位はイラクである。イラクはエジプトの

419 倍、4606 件ものテロが起きている。アメリカは 20 位で 98 件、日本はエジプトを上

回る 37 位で、20 件のテロが起きている。

これらのことから、エジプトのテロ発生数はアメリカや日本よりも少なく、エジプト

は安全な国であるということが明らかになる。したがって、エジプトに対する悪いイメ

ージは、近くのイラク戦争やイラクで起きているテロを露呈するメディアに大きく影響

されているのではないかと考えられる。 

2  

３．２ エジプト国内の殺人発生率

図 4は 86 カ国の 10 万人に対しての殺人発生率を示している。これは国際連合による

ものである。エジプトの殺人発生率は 0.5 で、86 カ国の中 81 位である。一方、アメリ

カの殺人率は 9.4 で 24 位、フランスは 1.1 で 75 位、オーストラリアは 1.8 で５6位、

韓国は 1.6 で 64 位、中国は 1.4 で 71 位、英国は 0.9 で 77 位ある。ちなみに、日本で

の殺人発生率は 0.6 で 80 位である。

これらから、エジプトの殺人発生率は他の有名な観光地よりも低いということが明ら

かになった。

 

３．３ エジプトの犯罪発生件率

図 5はさまざまな発展途上国で過去 5年間に警察に報告された犯罪率を表している。

攻撃脅迫は、エジプトは 13 カ国中 3番目に低いことがわかる。さらに、エジプトの性

的事件は 13 カ国中なんと一番低いことがわかる。以上、エジプト国内の犯罪率は殺人

発生率と同様、ほかの観光地より低いということが明らかになった。

 

 

４． おわりに

本稿では一般の人がエジプト旅行に対して持っているイメージを明らかにして、その

理由を見ることによって、エジプトへの観光旅行の安全性について検討した。その結果、

エジプトで起きているテロの発生数と国内で起きている犯罪率はほかの観光地と比較す

ると低いということが明らかになった。つまり、エジプトへの観光旅行は安全であると

言え、エジプトの観光客を増やすには、この安全性を一般の人に知らせる必要があると

考えられる。また、エジプト政府は観光旅行サービスの改善を続けていくべきである。 

本稿では、エジプトへの観光旅行の安全性について明らかにした。しかし、この安全

性を一般の人が認識した上で、どのぐらい観光事業、エジプト経済に影響を与えるかに

ついては予測できなかった。この点については、今後さらに調査していきたい。 

 

3  

図 1 「一度でいいから行ってみたい」日本人の海外旅行先ベスト 10

0 50 100 150 200 250 300 350

⑩　中国　　

⑨　スペイン

⑧　スイス　

⑦　カナダ　

⑥　南極　　

⑤　フランス

④　ペルー　

③　米国

②　イタリア

①　エジプト

有効回答　4235調査日時　2007年10月下旬

出典:日本経済新聞(2007)より作成

図 2 「エジプトへの観光旅行の安全性」に関する調査結果

１）

4  

２）

３）

5  

図 3 テロ発生件数の国別比較(2000-2006)

NationMaster (2007) 「Terrorism Statistics > Terrorism acts > 2000-2006 > incidences by

country」より作成

図 4 10 万人当たりの殺人発生件数の国別比較(2005)

David C.Stolinsky (2005)「America : The Most Violent Nation」より作成

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資料 5 発展途上国 13 カ国の警察に報告された犯罪件数(1995)

UNICRI (1995) 「City Surveys in the Developing Countries」より作成

注

1) アンケートの調査票と調査報告書をレポート末尾の資料に示す。

参考文献

1) 日本経済新聞 NIKKEI プラス１ 「一度でいいから行ってみたい」2007 年 11 月 3 日

2) Yahoo Asia News（2006）Egypt bunches campaign to highlight importance of tourism,

http://asia.news.yahoo.com/060623/4/2mavc.html

3) Nation Master（2007）Terrorism statistics > Terrorism acts > 2000-2006 >

incidences by country, http://www.nationmaster.com/graph/ter_ter_act_200_inc-

terrorist-acts-2000-2006-incidences

4) UNICRI（1995）City Surveys in the Developing Countries,

http://www.samarthbharat.com/unicristatistics.htm

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5) David C. Stolinsky（2005）America: The Most Violent Nation?,

http://www.haciendapub.com/stolinsky.html

資料 「エジプト観光旅行の安全性」に関する調査

エジプトへの観光旅行の安全性に関する調査

調査内容

１） 調査目的 エジプトへの旅行の安全性に対する意識調査を通じて、エジプトに対して

抱いているイメージを明らかにすること。

２） 調査対象者 立命館アジア太平洋大学の学生 30 名

３） 調査期間 2007 年 12 月

４） 調査方法 面接によるアンケート調査

 調査結果

１） エジプトへの観光旅行に対しての関心

エジプト観光旅行に対してどの程度の関心があるかたずねたところ、「非常に関心がある」と

答えた人は 12 名で全体の 40％だった。「少し関心がある」と答えた人は 14 名で全体の 46％

だった。このことから、大多数の人がエジプトへの観光旅行に対して関心があるということが

わかった。

２） エジプト旅行の安全性

エジプト旅行の安全性についてどう感じるかたずねたところ、「少し不安である」と答えた人

は 21 名で全体の 70％を占めた。「安全である」と答えた人は 6名で全体の 20％だった。この

ことから、多くの人がエジプトへ行くことに対して不安に思っていることがわっかた。

３） 不安か安全ではないと思う理由

エジプト旅行の安全性の質問で、不安、安全ではないと答えた人に理由を聞いてみたところ、

ほとんどの人が「エジプトは遠いし行ったことがないから」と答えていた。ほかに、「治安が

悪そうなイメージがあるから」、「盗難が多いと聞いた」と書いていた人も少なくなかった。

このことから、エジプト旅行の安全性に対して不安だと感じる理由が、国境の壁が大きいこと

の他、事実に基づいていないことが明らかになった。

 考察

今回の調査によると、多くの人がエジプトへの観光旅行に関心があるものの不安であることが明ら

かになった。そして、不安である理由が事実に基づいたものではなく、ステレオタイプなイメージ

に影響されていると考えられた。したがって、観光客を増やすためには、このようなステレオタイ

プを除去する必要があると言えよう。 

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