コンピュータの知識を用いなくても理解できるビットコイン ver.1
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2014年9月26日(金) にギークオフィス恵比寿にて開催した「コンピュータの知識を用いなくても理解できるビットコイン」で使用したスライドです。この内容をブラッシュアップして 9月30日(火) にも同じ会場で開催します。TRANSCRIPT
コンピュータの知識を用いなくても理解できるビットコイン斉藤賢爾研究会 2014.9 (1)
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かんたんな自己紹介斉藤賢爾 (さいとうけんじ)慶應義塾大学 SFC研究所上席所員 (訪問)一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事http://twitter.com/ks91020 http://www.facebook.com/ks91media
経歴1993年、コーネル大学大学院より M.Eng取得(コンピュータサイエンス)
2006年、慶應義塾大学より博士号取得 (政策・メディア)
インターネットと社会に関する研究・教育に従事慶應義塾大学 SFC村井研究室所属主な研究テーマ : 「人間のデジタル通貨」の開発と実用化
福島のこどもたちのための「アカデミーキャンプ」を実施→ つながってるね!
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主な著書 (1)
「不思議の国の NEO—未来を変えたお金の話」ジャンル:“SFお金ファンタジー”
お金を根本から変えるデジタル通貨技術の存在それにより生まれるドラマ
英語版はフリーで公開http://grsj.jp/neo.pdf(CC-BY-SA 3.0)
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主な著書 (2)
「これでわかったビットコイン[生きのこる通貨の条件]」
ジャンル:“ステマ”
ビットコインについての本であるようでいて . . .
それと 180度違う概念をさりげなく打ち出す
読めるタイプのトロイの木馬この研究会も実は . . .
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この回の目的と手段ビットコインのシステムを正確に、かつ大まかに捉え、理解します今後の議論のための共通の土台とします
できるだけ物理的なメタファーを用いて解説しますそのために「ビーカーモデル」を採用します
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その前に . . .
ありのまま全体を眺めてみるビットコインって何だっけ?ビットコインシステムの全体像
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ビットコインって何だっけ?「必要なのは、信用ではなく暗号学的証明にもとづいた電子的支払いシステムである」
Satoshi Nakamoto, “Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic
Cash System”, 2008
最初のボタンをかけ違えているその信念にもとづいて開発された P2Pデジタル通貨
http://bitcoin.org/
設計の随所にインフレーションへの敵意が見られる単位は BTC (ISO標準に基づき、コードは XBTとなるか)
商品として売買されている2013年 11月末、1BTCの価格が 10万円を超え、騒ぎに
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過去の相場の動き
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利用者のソフトウェア
QRコードを利用して簡単に送金できる画面は星野 裕太さんが開発している「ビットお財布」から
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すべての取引は追跡できる
グローバルで単一な「元帳」にすべての取引を記録コンピュータの知識を用いなくても理解できるビットコイン— 2014-09-26 – p.10/39
ビットコインシステムの全体像
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ビーカーモデル《予告編》2,100万 cm
3 の、人類にとって無価値な液体の使いかた東京ドームの約 1
60,000(4tトラックに積める)
水なら 21tくらい (4tトラックに積んでは駄目)
cm3 は ccとも呼ばれますが、BTCと置き換えれば
そのままビットコインの話になります
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ビーカーモデルの世界 (1)
2,100万 cm3 の、人類にとっ
て無価値な液体があるタンクに入っている
1億分の 1cm3 まで計量できる
ビーカーを各自がいくつでも持てる平均 10分おきに選ばれた人だけが、自分のビーカーに今なら 25cm
3 くみ出せる特殊なくじ引きで選ぶ当たりくじは、各自の箱の中にあり、それぞれが全力でくじを引きまくる
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ビーカーモデルの世界 (2)
ビーカーの間で比較的自由に液体のやり取りができる先の「選ばれた人」は、やり取りを「監査」し、台帳に記録を残す「追記人」でもある
やり取りのおこぼれももらえる
ときどき、ビーカーを割ってしまう人がいる
そんな仕組みをデジタルでつくり、通貨と見なしてみた→ ビットコイン
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「通貨と見なしてみた」貨幣・通貨に、見なしを必要としない「ホンモノ」は存在しない通貨 =通用している貨幣 or貨幣の流通面
すべての貨幣・通貨は、それを「貨幣・通貨と見なす」ことにより存在する例 : 日本銀行が発行する券を通貨と見なしてみた→ 日本円
したがって、すべての通貨は仮想的な存在なので、「仮想通貨」という言葉は、ある意味ナンセンス
日本円は別に「実通貨」ではない
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日本円のビーカーモデル (1)
無尽蔵に湧き出る、人類にとって無価値な液体がある
大小ふたつの泉がある大きい方を「日本銀行」が仕切る小さい方を「政府」が仕切る
日本銀行は液体をビーカーに入れて政府や「銀行」に貸し出す
液体の量は増やして返さなければならない
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日本円のビーカーモデル (2)
人々はビーカーをやり取りしたり、銀行に預けることができる銀行は、実際に預かっているよりも多くの液体を所持していると見せかけても良い
必要に応じてたくさん貸し出す帳簿上で正しく操作できれば OK
もちろん増やして返してもらう
そんな仕組みを通貨と見なしてみた→ 日本円
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ビーカーモデル《本編》
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状況東京ドームの中にタンクがある ←ないかも
ビーカー置き場がある ←ないかも
掲示板がある ←あるっぽいけど、ないかも(あるというイリュージョン)
自由に出入りできる入りさえすれば誰でも掲示板が見られる
全体を取り仕切る「特定の誰か」は、いない入口で全員が同じ手引き書をもらう
この状況でいかにカオスにならずに液体の「量」のやり取りを可能にするか
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ビーカーモデルの概要
ビーカーは公共の空間に置き、宛先を指定してふたを閉じる宛てられた「本人」でないと開けられない
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ビーカーの容量
ビーカーひとつひとつには、全 BTCが入るだけの容量がある「量」は結局のところ「数」で表すから
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取引と手数料取引では、宛先が自分だと証明できる人が元のビーカー (複数可)から新しいビーカー (複数可)に液体を移せる
取引 =元のビーカー ×新しいビーカー
追記人に手数料をあげることができるあげなくても善意で動くこともある
手数料のあげかた元のビーカーに入っていた液体の合計よりも、新しいビーカーに入る液体の合計が小さい場合、残った分は追記人がタンクから汲み出す量に加える
手数料の相場は液体の量ではなくビーカーの数に依るコンピュータの知識を用いなくても理解できるビットコイン— 2014-09-26 – p.22/39
台帳取引をした人は、その内容を紙に書いて掲示板に張り出す追記人になりたいみんな (監査人)は、取引が正しそうだったら写真に撮り、取引の情報を集める
この世界には、1冊だけ、マスターの台帳がある集めた写真を台紙に貼って、台帳の最後に新しいページとして追加すれば記録に残せる
誰が新しいページを追加できるかを決める必要性「追記人」は、くじ引きで決める
ただし、くじを集中管理しなくてよい方法で
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掲示板記録を張り出す場所参加する全員が見るとは限らない
実際には「メモ回し」のようにして実現する取引の記録を回す台帳の末尾につけ足す新しいページの候補を回す
スマホで写真に撮ってから回すプリンタももっている
台帳は、スマホのカメラロールに入っている写真を組み合わせて各自が自分の頭の中でイメージをもつそれが全員で一致するように工夫する
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ダイジェスト「大相撲ダイジェスト」とは→ 取り組みを全部観なくても結果が分かる
ここでの「ダイジェスト」とは→ 長いふたつの記録を全部読まなくても違っているか分かるどんなに長い記録も 10∼16文字相当 (日本語)に· やり方によって結果の長さは決まっている· 結果は大きな「数」になる元の記録が少しでも違っていたら全然違うダイジェストになる· 比較に使えるどんな記録ならどんなダイジェストになるか、予め分からない
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台帳のつくりかた
1. 各監査人は、過去 10分ほどの間に収集した正しい取引記録を台紙に貼り、くじ引きを行う2. 当てた人は「追記人」となり、台紙の写真を掲示板に張り出す3. 各監査人は、それを台帳の新しい最終ページと認めるなら、その後ろにページをつなげるべく 1に戻る
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取引の連鎖
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この仕組みから分かること液体を本当に汲み出したらダメだ!後でやっぱり戻したりとか、大変
液体を本当には汲み出さないからこそ、記録に残す必要がある取引が正しいかを検証する必要がある特に、すでに空になっているはずのビーカーから、再び液体を移そうとしていないかどうか確かめる見かけ上でも液体を増やしちゃダメだという強い意思
だから、タンクの中身は空でもよいビーカーも実物はなくてよい割れないけど、本人だと証明できなくなってしまうことはある
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量の限界
21万ページ毎 (約 4年毎)に、追記人への報酬 (手数料除く)は半減このことにより 2,100万 BTCという極限値が求まる
1億分の 1 BTCが最小単位なので、2140年頃、手数料を除く報酬はゼロになる
20,999,999.9769 BTCを汲み出し終える
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ページをつなげるには (くじ引きの正体)
この操作を「落書きマッチ」と呼ぼう条件に適合 (マッチ)する落書きを総当たりで探すほかの監査人との勝負 (マッチ)
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ターゲットの調整
ターゲットは台帳の前のページから基本コピペしている
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作業証明が改ざんを難しくする
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本人の証明判子をもっているかどうかで決まるようなもの社会的なアイデンティティとは結びつかない
ゆるやかな匿名性がある
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署名
改ざんされていないということと、本人が送ったものだということが証明できる
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取引は何をしているか
一度参照されたコインは、消費済みとなり、二度と使えない
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取引と署名
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用語の対比ビットコイン ビーカーモデルブロックチェイン 台帳ブロック 台紙、ページマイニング (採掘) 落書きマッチマイナー (採掘者) 監査人,追記人入力 参照 (するビーカー)出力 ビーカー、コインBTC (bitcoin) cm
3, cc
ブロードキャスト メモ回し (掲示板)
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まとめビットコインは以下を実現する仕組み予め決められた「量」を、決められたペースに沿って供給する「量」の支配を移転できる法律ではなくプログラムコードによって実現する特定の権威に依らない . . .はずだが . . .
技術的・制度的な課題を残している秘密の鍵の紛失・漏洩に対して保障がない掲示板が健全に維持されることに依存している監査人が特権的であることは否めない. . .等々
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ご質問や議論を
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