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全国循環器撮影研究会誌 Vol.24 2012 - 14 - 複合モダリティの画像情報を統合した インターベンション支援アプリケーション 株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン ヘルスケア事業部 X-ray モダリティスペシャリスト 田中 智史 1. はじめに 近年、血管撮影装置においては、治療ガイドを目的とした多様なアプリケーション機能が臨床現場 から求められており、数多くのアプリケーションが登場している。中でも、3次元画像を用いたアプ リケーションの進歩は著しく、様々な治療手技において重要な役割を担うようになっている。 また近年では、 CTMRIによって撮影された3次元画像を積極的に治療手技に活用するためのアプ リケーションが求められており、クロスモダリティのアプリケーションの開発が進んでいる。 このような背景を踏まえ、本稿では、血管撮影装置における3次元画像の取得方法を概説し、3次元 画像によりインターベンションを支援するアプリケーションを紹介したい。 2. 3次元画像の取得 フラットパネルディテクタの登場により、血管撮影装置によって撮影される3次元画像は大きな進 歩を遂げた。従来のイメージインテンシファイア(I.I.)と比べ画像歪がないことから、回転撮影画像 から3次元再構成する際に歪補正を施す必要がなくなり、より正確な3次元画像の取得が可能となった。 また、解像度もI.I./CCDカメラ系での1024マトリクスのサンプリングから最大視野サイズで5Mピク セルまでの細かいデータ収集が可能となり、飛躍的な解像度の向上がもたらされた。さらに、濃度分 解能が14bitまで引き上げられたことで、造影剤を注入した血管コントラスト重視の3次元画像だけで なく軟部組織などの低コントラストを描出するCT様の画像再構成が可能となった。 また近年では、CTMRIによって撮影された診断情報をインターベンション中に参照することが 一般的となっている。冠動脈CT画像においては、血管撮影装置にてデータを取り込み、冠動脈の抽 出や各種解析を行うことが可能となり、術前のプランニング等に用いられている。 以下に、血管撮影装置にて3次元撮影を行う3D-RAXperCT3D-CA、心臓CT画像を血管撮影装 置に取り込み解析を行うCT TrueViewについて解説する。 2.1 3D-RA 1 3D-RAは、回転撮影画像を基に血管等の3D画像を再構成するアプリケーションである。3D-RA血管撮影装置による診断、治療において、欠かすことのできないアプリケーションとなりつつある。 3D-RAでは、180°以上の回転撮影で取得された投影から、Feldkamp法に基づく三次元フィルタ補 正逆投影法により3次元の血管像を構築する(図1)。機器の進歩に伴い、当初は数分かかっていた画 像再構成が、回転撮影終了とほぼ同タイミングにて完了し3次元画像を表示できるようになり、術中 に簡便に撮影することが可能となった。これにより、診断に加えて、治療術中に本アプリケーション を用いて状況の確認ができるなど、血管内治療の強力なリアルタイム支援ツールとなっている。 2.2 XperCT 2 XperCTは、回転撮影画像を基にCTと同様の画像再構成を行うことにより、骨、血管等に加え、CT 様の軟部組織の3次元画像を取得するアプリケーションである(図2)。XperCTでは、軟部組織を含 FOV内の組織全般の描出を主眼としており、 3D-RAと比較してより多くの投影数から再構成される。 技術解説

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全国循環器撮影研究会誌 Vol.24 2012

- 14 -

複合モダリティの画像情報を統合した

インターベンション支援アプリケーション

株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン ヘルスケア事業部

X-ray モダリティスペシャリスト 田中 智史

1. はじめに

近年、血管撮影装置においては、治療ガイドを目的とした多様なアプリケーション機能が臨床現場

から求められており、数多くのアプリケーションが登場している。中でも、3次元画像を用いたアプ

リケーションの進歩は著しく、様々な治療手技において重要な役割を担うようになっている。

また近年では、CTやMRIによって撮影された3次元画像を積極的に治療手技に活用するためのアプ

リケーションが求められており、クロスモダリティのアプリケーションの開発が進んでいる。

このような背景を踏まえ、本稿では、血管撮影装置における3次元画像の取得方法を概説し、3次元

画像によりインターベンションを支援するアプリケーションを紹介したい。

2. 3次元画像の取得

フラットパネルディテクタの登場により、血管撮影装置によって撮影される3次元画像は大きな進

歩を遂げた。従来のイメージインテンシファイア(I.I.)と比べ画像歪がないことから、回転撮影画像

から3次元再構成する際に歪補正を施す必要がなくなり、より正確な3次元画像の取得が可能となった。

また、解像度もI.I./CCDカメラ系での1024マトリクスのサンプリングから最大視野サイズで5Mピク

セルまでの細かいデータ収集が可能となり、飛躍的な解像度の向上がもたらされた。さらに、濃度分

解能が14bitまで引き上げられたことで、造影剤を注入した血管コントラスト重視の3次元画像だけで

なく軟部組織などの低コントラストを描出するCT様の画像再構成が可能となった。

また近年では、CTやMRIによって撮影された診断情報をインターベンション中に参照することが

一般的となっている。冠動脈CT画像においては、血管撮影装置にてデータを取り込み、冠動脈の抽

出や各種解析を行うことが可能となり、術前のプランニング等に用いられている。

以下に、血管撮影装置にて3次元撮影を行う3D-RA、XperCT、3D-CA、心臓CT画像を血管撮影装

置に取り込み解析を行うCT TrueViewについて解説する。

2.1 3D-RA1

3D-RAは、回転撮影画像を基に血管等の3D画像を再構成するアプリケーションである。3D-RAは

血管撮影装置による診断、治療において、欠かすことのできないアプリケーションとなりつつある。

3D-RAでは、180°以上の回転撮影で取得された投影から、Feldkamp法に基づく三次元フィルタ補

正逆投影法により3次元の血管像を構築する(図1)。機器の進歩に伴い、当初は数分かかっていた画

像再構成が、回転撮影終了とほぼ同タイミングにて完了し3次元画像を表示できるようになり、術中

に簡便に撮影することが可能となった。これにより、診断に加えて、治療術中に本アプリケーション

を用いて状況の確認ができるなど、血管内治療の強力なリアルタイム支援ツールとなっている。

2.2 XperCT2

XperCTは、回転撮影画像を基にCTと同様の画像再構成を行うことにより、骨、血管等に加え、CT

様の軟部組織の3次元画像を取得するアプリケーションである(図2)。XperCTでは、軟部組織を含

むFOV内の組織全般の描出を主眼としており、3D-RAと比較してより多くの投影数から再構成される。

技術解説

技術解説:IVR 支援アプリ

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以下に、XperCTの撮影条件例を示す。XperCTの再構成には、Fledkamp法に基づくアルゴリズムが

用いられている。回転撮影によって得られた投影は、ゲイン補正、オーバースキャン補正、散乱線補

正、直線性補正、リングアーチファクト補正、階調調整等の前処理を経て、三次元フィルタ補正逆投

影法によって再構成される。

XperCTは、脳動脈瘤塞栓術に用いられるデバイスの描出、動静脈奇形(AVM)や動静脈瘻(AVF)

における血管走行の確認,プラーク性状判断,肝細胞がんにおける肝動脈塞栓療法時の肝動脈造影

(CTHA),経動脈性門脈造影(CTAP)への応用が進んでいる。肝細胞がんに対する経カテーテル的

肝動脈化学塞栓療法(TACE)時には、栄養血管の同定,塞栓範囲の確認(Lipiodol CT),濃染の不

明瞭な腫瘍に対する塞栓効果の確認、Non-target enbolizationの予防等に対し有用である。

図1 3D-RA画像

図2 頭部のXperCT画像 (国家公務員共済組合会虎の門病院様ご提供)

全国循環器撮影研究会誌 Vol.24 2012

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2.3 3D-CA3

3D-CAは、投影角度差が30度以上の2方向の撮影画

像から、近似的に冠動脈の3次元画像を再構成するア

プリケーションである(図3)。撮影画像の取得は、

CAGにて施行された回転撮影もしくはXperSwing

(Dual-axis rotational coronary angiography)に

よる撮影画像から任意の2画像を選択する。このよう

に作成された冠動脈3次元画像から、病変長、血管径、

狭窄率、分岐角度などの計測が行われる。 図3 腹部のXperCT画像

図4に、3D-CAによって作成された冠動脈の3次元画像、解析の様子を示す。

冠動脈を三次元的に描出することで、不適切な病変部の観察角度により病変部が实際より短く認識

されてしまうこと(図5)を回避し、正確な測定が可能となる。また、これらの三次元的解析結果を

用いて、最適なワーキングアングルを決定することが可能である。モニター上で観察中の3次元画像

の角度から、血管撮影によって同じ投影像を得るために必要なCアームの角度が計算される。これに

より、病変部を適切に投影可能なCアーム角度など、術中に必要なワーキングアングルのシミュレー

ションが可能である。

図6は、冠動脈3次元画像上の関心領域が、アーム角度によってどのように視覚的に短縮化されるか

示したものであり、Optimal View Mapと呼んでいる。縦軸と横軸はそれぞれCran/Caud方向と

RAO/LAO方向のアーム角度を示し、それぞれのアーム角度において透視・撮影を行った場合の関心

領域の視覚的短縮率が、カラー表示される。Optimal View Mapにより、関心領域の観察に適したC

アーム角度を検討することが可能である。

シミュレーション結果は、直ちにCアームの角度に反映することが可能である。また、現在のCア

ームの角度に3D画像表示角度を追従させることが可能である。

図4 左 3D-CAにより作成された冠動脈3次元画像、右 病変部の3次元解析

図5 不適切な角度からの投影による病変部分の短縮化

技術解説:IVR 支援アプリ

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図6 Optimal View Map 血管の長さや重なりから、

最も観察しやすいアングルを自動算出する

2.4 CT TrueView4

マルチスライスCTを用いた心臓撮影技術の進歩は著しく、PCIの治療戦略策定に心臓CT画像を用い

ることは現在では一般的となっている。

CT TrueViewは、心臓CT画像を血管撮影装置に取り込み、3D-CAと同様に3次元の計測やワーキング

アングルのシミュレーションを行うアプリケーションである。

撮影・再構成された心臓CT画像は、CT装置やPACSサーバからオンラインで取得される。画像取得

後、オートセグメンテーション機能により、心臓区域分け、冠動脈の抽出、左心耳削除などが全自動

で行われる(図7)。抽出された冠動脈に対しては、病変長、血管径、狭窄率、分岐角度などの3次元

計測(図8)や、Optimal View Mapを用いたワーキングアングルのシミュレーションが可能である。

CT TrueViewでは、心臓の解析機能を血管撮影装置側にて行うことで、冠動脈の3次元画像とCアー

ムのシームレスな連携が可能となった。シミュレーション結果は直ちにCアームの角度に反映するこ

とが可能であり、現在のCアームの角度に3次元画像表示角度を追従させることも可能である。また、

DICOM画像から一連の解析を行うことで、CT装置の種類やベンダーに依存せず、心臓CTを積極的

に治療計画に用いることが可能となった。

図7 オートセグメンテーション 図8 CT TrueViewによる3D-QCA

3. Live 3D Guidance

近年、ハードウェアの進化と共に、3D-RAやXperCTにおける画像の転送、再構成時間は大きく短

縮されている。従来3次元の画像再構成には撮影終了後数分から数十分かかっていたが、現在は回転

撮影終了後数秒から数十秒程度で3次元画像が取得できるようになった。

これにより、従来診断や術後の確認を中心として活用されていた3次元画像が、術中に積極的に用

いられるようになってきた。そのような中、「Live 3D Guidance」というコンセプトの下、3Dロー

ドマップに代表される3次元画像を用いたリアルタイムの術中ナビゲーションのアプリケーションが

登場し、様々な手技、臨床領域ごとに開発が進んでいる。これらのアプリケーションは、3D-RAや

XperCTによる3次元画像に加え、MRIやCT等の画像を用いることで、より各疾患や手技に適した3

次元画像情報を活用できるよう進化している。

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以下、透視画像と三次元画像のフュージョン技術を解説し、Live 3D Guidanceのコンセプトによっ

て開発された治療支援アプリケーションを解説する。

3.1 CTO Navigator

冠動脈完全閉塞(CTO)病変では、冠動脈造影像では完全

閉塞部位と遠位部の血管走行を描出することができないが、

CTでは描出が可能である。そこで、術中に完全閉塞部の血管

走行を確認するために、CTによる冠動脈画像を別モニタに表

示し、参照することがしばしば行われる4。このワークフロー

を改善したのがCTO Navigatorである。

CTO Navigatorでは、前述のCT TrueViewによって心臓CT

から抽出した冠動脈の走行を参照画像上に重ね合わせ、完全

閉塞病変部の血管走行を確認できる(図9)。従来の冠動脈造

影では見えなかった完全閉塞病変部のルートをCT画像との重

ね合わせにて描出することで、より正確に病変を把握できる。

図9 CTO Navigator

完全閉塞病変部の血管走行を

心臓CTにて再現

3.2 EP Navigator5

カテーテルアブレーションにおいて、手技中の透視画像上にはカテーテル等のデバイスしか映って

いない(図10)。EP Navigatorでは、心臓CT等によって得られた3次元画像を透視画像に重ね合わ

せることで、すべてのカテーテルの位置、左心房や肺静脈などの解剖学的情報をリアルタイムに確認

することができる(図11)。心臓CT画像は、造影画像や脊椎、食道等をランドマークに位置合わせ

を行う。一旦重ね合わせを行うと、心臓CT画像はCアームと相互連動し、Cアーム角度や拡大率の変

更にCT画像が自動追従する(図12)。この時、透視に重ね合わせる3次元画像を内腔表示させること

で、カテーテル先端の位置確認を、より正確に行うことが可能となる(図12)。

現在では、心臓CT画像の替りに、血管撮影装置の回転撮影から得られた心臓の3次元画像を用いる

ことも可能である6(図13)。この場合、データ取得時のジオメトリを血管撮影装置が記憶している

ため、位置合わせのプロセスは自動化される。また、回転撮影の場合、手技当日の左心房の形態が忠

实に再現される。

このようなリアルタイムでの画像情報支援により、手技の精度向上や時間削減、被ばく線量の低減

などが期待できる。アブレーションをの成功率を高め、肺動脈狭窄などの合併症を減らすために、本

アプリケーションは有用であると考えられる。

図10 透視画像 図11 EP Navigatorのアプリケーション画面

技術解説:IVR 支援アプリ

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図12 Cアームの動きにCT画像がリアルタイムに追従。内腔表示により

カテーテル先端のポジションをより正確に把握できる。

図13 左 CTによる左心房画像、右 血管撮影装置による左心房画像

3.3 HeartNavigator7,8

HeartNavigatorは、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)のプランニングと、術中のナビゲー

ションを行うアプリケーションである。TAVIは、高齢化に伴って増加している大動脈弁狭窄症に対

する治療法の一つで、大腻動脈もしくは心尖部等からカテーテルを挿入し人工弁を設置する手技であ

る。TAVIは近年、手術適応が困難な症例へのアプローチ法として注目されており、現在治験も实施

されている。

TAVIにおいては、適切なデバイスサイズの選択と術前のプランニングが非常に重要である。TAVI

のプランニングは、心エコーや心臓CTによって行われ、石灰化等の病態評価や患者固有の臓器形態

(冠動脈起始部と大動脈弁との距離、血管径、弁のサイズ等)の評価をもとに、デバイスサイズやデ

バイス留置位置を決定する。デバイス留置が不適切な場合、重篤な合併症を引き起こし外科手術によ

る再建が必要となるため、デバイスのサイズや留置位置は各種の計測結果に基づき慎重に決定される。

HeartNavigatorは、この心臓CTによるTAVIのプランニングを支援するアプリケーションである。

HeartNavigatorでは、CT TrueViewと同様、CT装置やPACS等から心臓CTのデータを読み込み、

オートセグメンテーションを行う(図14)。ここで、大動脈、冠動脈起始部、左室、大動脈弁、3つ

の弁尖の底部を通る弁口面、石灰化が自動的に識別され、3次元画像の作成が行われる。次に、作成

された3次元画像上で、病変部の計測や仮想デバイステンプレートによるデバイス選択、留置位置の

プランニングを行う(図15、図16、図17)。この時、プランされたデバイス留置位置に基づき、透

視に最適なCアームのアングルが自動計測され、保存することが可能である。

TAVIの術中においては、HeartNavigatorはリアルタイムのナビゲーションを提供する。プランニ

ングで用いられたCT画像および冠動脈起始部や弁尖の底部、弁口面等の解剖学的ランドマーキング

全国循環器撮影研究会誌 Vol.24 2012

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や石灰化、仮想デバイスを透視画像にリアルタイムにオーバーレイすることで、正確なデバイスの留

置をサポートする(図18)。また、事前に設定した最適なワーキングアングルは、オートポジション

コントロールによりワンタッチで再現され、ワーキングアングルを探すための造影や被ばくを大きく

低減することができる。全ての3次元情報は、Cアーム角度や視野サイズ、SIDの変更等にリアルタイ

ムに追従する。また、現在のCアーム角度へ3次元画像を追従することも可能である。

このように、HeartNavigatorは、TAVIの事前プランニングから術中のナビゲーションまで、包括

的にTAVIの手技を支援するアプリケーションとして期待されている。

図14 HeartNavigatorによる心臓CTの

オートセグメンテーション

図15 3次元画像からランドマークが自動抽

出される。赤・青は冠動脈起始部、黄は弁尖

の基部を示している。冠動脈起始部と弁口面

の距離も計測可能。

図 16 バーチャルデバイス

テンプレートによるデバイ

スのプランニング

図17 プランニングが完了した

ところ。最適なサイズのデバイス

が選択され、手技に最適なCアー

ム角度が算出されている。

図18 HeartNavigatorによる

術中のナビゲーション。手技に

必要な情報が透視画像にオー

バーレイされる。

技術解説:IVR 支援アプリ

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3.4 XperGuide9,10

XperGuideは、穿刺検査を支援するアプリケーションで、血

管撮影室内で目的部位の同定、穿刺軌道プランニング、穿刺中

のモニタリング、穿刺終了時の針先の位置確認を可能とするも

のである(図19)。

一般的に、超音波診断装置を用いた超音波ガイド下での穿刺

は、針先のリアルタイムな確認、穿刺ガイド表示機能など操作

性や簡便性により広く普及している。しかし、信号減衰の問題

から骨に近い部位や体幹の深部等に関しては適応外となるこ

とも多かった。また、CT透視下での穿刺は、CT透視による高

画質のモニタリングが可能であるが、CTガントリ内で行うこ

とによる作業スペースや穿刺方向の制限がある。

XperGuideを用いた透視下での穿刺は、穿刺における高い自

由度を提供し、簡便なプランニングとリアルタイムでのモニタ

リングを实現するものである。XperGuideは、従来血管内治療

が主であった血管撮影装置の用途を、非血管系のインターベン

ションへと拡張することを可能にした。

以下に、XperGuideを用いた手技の手順を紹介する。

・プランニング

XperCT、もしくはCT、MRI画像上にて、目的部位を確認し穿刺軌道のプランニングを行う。透視

ガイド下で穿刺を行うには、目的部位と穿刺部位を結んだ直線上から観察するエントリービュー(図

20)と、針先が計画軌道にそって進んでいる様子を確認できるプログレッシブビュー(図21)の2つ

の投影角度が必要となる。

プランニング終了後、アプリケーション側でこのエントリービューとプログレッシブビューの2つ

に必要なアーム角度が自動計算される。この時、プログレッシブビューはエントリービューと90°の

角度差を成す。

図 19 XperGuide のアプリケーション画

面:計画された穿刺軌道と 3 次元

画像、透視画像により穿刺時の針

先が計画通りにトレースしているかを

リアルタイムに確認できる。

図 20 エントリービュー(穿刺

ポイントと目的部位が重なる

面):穿刺ポイントがモニタ上

に出現し透視下で確認しながら

穿刺を行う。

図 21 プログレッシブビュー(エントリービューに

対して 90°の傾きを持つ面):穿刺針が計画通りに

進んでいるかを確認できる。目的部位まで到達した

ら、XperCT や 3D-RA によって正確な確認を行う。

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それぞれのビューに必要なアーム角度は、以降の手順を簡便化するため、血管撮影装置に保存され、

オートポジション機構等により再現される。

モニター上には、透視画像にプランに用いたXperCT、CT、MRIの3次元画像がオーバーレイ表示

される。また、目的部位、穿刺位置、穿刺軌道等のプラン情報も同時にオーバーレイ表示され、一画

面上で透視画像、3次元画像、プラン情報を確認することができる。

・穿刺位置の確認と位置決め

エントリービューにて、穿刺位置を透視下で確認する。透視画像上にはプランした穿刺位置がマー

キングされており、透視画像上の穿刺針がプランした穿刺位置を示すマークと重なり合うように位置

決めを行う。計画通りに穿刺針がポジショニングされていることを確認し、穿刺を開始する。

・穿刺軌道確認

ある程度針を進めた所で、プログレッシブビューに観察方向を変更する。針先が計画した軌道をト

レースしているか、透視画像上で確認しながら、目的部位まで穿刺を行う。必要に応じて、プログレ

ッシブビューとエントリービューを切り替える際も、それぞれのビューに必要なCアーム角度が簡便

に再現される。この時、Cアームの角度を任意に変更し観察方向を変えても、3Dロードマップと同様、

リアルタイムに3次元画像とプラン情報の表示が追従する。

・目的部位への到達の確認

穿刺針の目的部位への到達は、XperCT画像により確認可能である。XperCTを撮影し、穿刺針の目

的部位への確かな到達を確認し、バイオプシ等の手技へと移行する。

3.5 XperGuide Ablation

近年、肝細胞癌や転移性肝癌等に対する経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)は、局所療法の標準的な治

療法の1つとして施行されている。RFAは、高周波電流を用いて、組織の抵抗と誘電加熱によって生

体蛋白質を凝固変性させる治療法である。

RFAの手技は、一般的に超音波もしくはCT透視のガイド下で行われ、超音波・CT透視ガイド下で

電極針を腫瘍内に穿刺し、焼灼を行う。RFAにおいては、脈管や近接臓器への影響、治療後の臓器機

能の低下、合併症を最小限に抑えるために、穿刺位置や電極の種類、電極の本数などの適切な治療計

画が必要となる。

XperGuide Ablationは、RFAの治療計画、穿刺計画をサポートし、X線による透視ガイド下での穿

刺のナビゲーションを行う、新しいアプリケーションである。

・プランニング

XperGuide Ablationでは、MRIやCT画像およびXperCT

画像上で電極針のプランニングが可能である。ターゲット

と穿刺方向を指定すると、予め設定した電極針の仮想焼灼

範囲が表示される(図22)。複数の電極針を計画する場合、

それぞれの仮想焼灼範囲が表示され、MRIやCT画像上の

腫瘍を確認しながら、最適な電極針の穿刺位置と本数を検

討することができる。仮想焼灼範囲のパラメータは自由に

変更できるため、あらゆる種類の電極針をシミュレートで

きるほか、凍結融解壊死治療(クライオアブレーション)

にも対応可能である。

プランニングが完了すると、XperGuideと同様、それぞ

図 22 XperGuide Ablation では、プ

ランニングの際に仮想焼灼範囲を表示

技術解説:IVR 支援アプリ

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れの針に対するエントリービューとプログレッシブビューが自動計算され保存される。

・穿刺位置の確認と位置決め、穿刺軌道確認

穿刺位置の確認と穿刺のナビゲーションは、XperGuideと同様に行われる。XperGuide Ablationでは、

プランニング時に用いたMRI、CT画像に加え、各電極の仮想焼灼範囲も同時に透視画像にオーバー

レイ表示可能である。

・目的部位への到達の確認

最終的に、XperCTによって電極針の目的部位への確かな到達を確認し、焼灼を实施する(図23)。

3.6 Dynamic 3D roadmap11,12

Dynamic 3D roadmapは、透視画像と3次元画像を重ね合わせる事により、3Dのロードマッピング

を行う機能である。特に頭蓋内の血管は血管走行の蛇行により、マイクロカテーテルの進行方向を把

握するために多方向からの像が必要になる場合がある。このような場合に、3Dロードマップ機能によ

るガイドが有益である。3次元画像としては、現在は3D-RA、XperCTによって作成された3次元画像

に加え、MRIやCTで撮影された3次元画像も用いられている。

従来の2次元のロードマッピングでは、透視画像、もしくはDSA画像をマップ像として用いる。2D

ロードマップにおいて、Cアームの角度を変えると、透視もしくは撮影によりマップ像を作成するた

め、現在の血管走行に最も近いマップ像を得ることが可能である。その反面、角度を変える度に造影

剤を追加注入する必要がある。これに対して3Dロードマップでは、3次元画像がCアームの回転、SID、

視野サイズ等の変更に連動し、リアルタイムに追従するため、その都度マップ像を作成する必要はな

い。その結果、被験者の被ばく線量、造影剤注入量の低減が可能である。また、3Dロードマップ画像

は専用のカラーモニタに表示されるため、透視画像と3Dロードマップ画像は個別に表示される。これ

により、2Dロードマップと併用することも可能であり、複雑な血管走行を複数のアプリケーションか

ら決定することが可能である。

4. まとめ

本稿では、3次元撮影やフュージョンの技術を踏まえ、Live 3D Guidanceというコンセプトによっ

て開発された、複合モダリティの画像情報を統合する治療支援のアプリケーションを紹介した。これ

らの技術により、従来は術者自身が様々なモニタを参照し頭の中で統合していた情報が、透視画像上

に融合されることで、より正確かつ直感的な治療へのアプローチが可能となる。

図 23 XperCT による確認。

プランで用いられた仮想焼

灼範囲が表示され、正確な確

認が可能。

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インターベンションにおけるデバイスや治療術式の進歩はもちろん、各モダリティや診断技術の進

歩に対応した实践的なアプリケーションを高い技術で製品化することは、われわれの使命である。今

後も是非多くのフィードバックを頂ければ幸いである。

図24 Dynamic 3D roadmap 頭頚部以外にも、末梢領域で使用されはじめている。

技術解説:IVR 支援アプリ

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