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眼底写真の新しい展開 加齢黄斑変性を早期に捉える眼底自発蛍光撮影 JAMIT News Letter(No.6) 2010.7 キヤノンマーケティング株式会社 山村 義昭 神奈川 太郎

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眼底写真の新しい展開 加齢黄斑変性を早期に捉える眼底自発蛍光撮影

JAMIT News Letter(No.6) 2010.7

キヤノンマーケティング株式会社 山村 義昭

神奈川 太郎

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発表の流れ

1. 眼底写真について 2. AMD・FAFの概要 3. 画像処理への応用 4. まとめ

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1. 眼底写真について

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<眼底写真>

• 眼底とは,眼球の内部,奥の部分のことをいう. • 眼底には,網膜・視神経・血管などの大切な組織が存在する. • 網膜の中心部である黄斑部は,中心視力にとって最も大切

な部分である.

右眼正常眼底

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
眼底写真とはなんなのか,解説します. 眼底は,眼球の内部,奥の部分のことで,体の中で唯一血管の見える部位です.そこには,健康に影響する網膜や視神経血管など重要な組織が写ります. このような特殊な機械で覗き込み撮影すると,下の写真のような眼底(網膜)が見られます. さらに,網膜の中心部である黄斑部は,視力にとって最も大切な部分と言われています. 医師が診断するときは,血管の走行を見たり,黄斑部の変化を見ることで,高血圧や糖尿病の血管への影響,動脈硬化の程度を知ることができます.
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<眼底写真>

• カラー眼底写真撮影 眼底のカラー写真を撮影する方法であり,眼底全体の状態や色の観察には適しているが,血管状態の観察には適していない. • 蛍光眼底写真撮影 被験者に蛍光剤を注射し,眼底血管に注入した蛍光剤が発する蛍光を撮影する手法.眼底血管を浮き出させたコントラストの高いグレースケール画像であり,血管の状態を

観察するのに優れている.

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<眼底検査> • どういったタイミングで撮影するか? 1.人間ドックや住民健診,老人健診 カラー眼底写真を使用

2.眼科医による検査 カラー眼底写真&蛍光眼底写真を使用

① 糖尿病網膜症 ② 網膜静脈閉塞症 ③ 加齢黄斑変性(AMD)

蛍光眼底造影写真

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
眼底写真はどういったタイミングで撮影されるか? また通常,眼底検査をするケースは2つありまして,1つは人間ドックや住民健診など,健康診断的な意味で行う検査です.人間ドックでは必須化されています.特定の検診では追加検査とされています. このケースでは,図のような眼底カメラを用いてのカラーの眼底画像を使った検査が多いです. しかし,色合いをメインに判定するので,精密さという意味では限界があります.例えば,微小な症状は映りにくかったり,眼球内の濁りが検査を阻害するなどはあります. それに対してより精密な検査をしたいときに,眼科医による検査が行われます.これにはカラーの眼底写真を用いた診断の他に,蛍光眼底検査というのも行われます. これを検診で運用するには,費用が掛かりすぎるという問題点がありますが,この図のようなグレースケールの画像を用いることで,精密な検査ができ,右の3つの病気の診断に有用だとされています. 今回は記事に倣って,特に加齢黄斑変性(AMD)と呼ばれる病気について,背景を交えて解説します.
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2. AMD・FAFの概要

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• 現在,様々な診療科で抗加齢医療が試みられているが,眼科において注目を集める疾患の一つに加齢黄斑変性(AMD:Age-related Macular Degeneration )がある.

• AMDは50歳以上の1.3%に発症するとされてお

り,高齢者の増加や生活習慣の変化により今後の増加も予想されている.

• このAMDの診断に役立つとされている検査法が眼底自発蛍光撮影法( FAF:Fundus Auto Fluorescence )である.

背景

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加齢黄斑変性 (AMD:Age-related Macular Degeneration)

• 加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ,見ようとするところが見えなくなる病気.

• 黄斑部のみ障害されるので,真ん中が見えなくなったり,歪んで見える.

AMDによる症状 萎縮型 滲出型

カラー眼底写真

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
加齢黄斑変性とは. 加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ,見ようとするところが見えなくなる病気である. 萎縮型と滲出型に分かれます. 日本人に多いのは滲出型で,画像の特徴として血管が破れて血液中の成分が漏れ出し,滲んだような画像になる. 病気の進行が速いので,早期発見が重要だといわれています. また,治療せずにいると視力の低下,見え方の異常(ゆがみ,中心暗転,コントラスト低下)が急速に進む.
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眼底自発蛍光撮影法 (FAF:Fundus Auto Fluorescence)

• 自発蛍光とは,特定の周波数の光を当てると,それより長波長の蛍光を発する現象であり,造影剤なしで,その蛍光を撮影する手法がFAFである.

• 加齢により代謝機能低下を起こしたRPE領域に貯留する色素は,自然に蛍光を発する.

• 若年者ではRPEによる発光は観察されず,加齢に伴い均一に増加するのが正常.

RPE

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
眼底自発蛍光撮影法について解説します. 自発蛍光とは物質によって特定の周波数の光を当てると,それより長波長の蛍光を発する現象で,その蛍光を撮影する手法がFAFです.大きなメリットとして造影剤(蛍光剤)がいらないというのがあります. 加齢などにより代謝機能低下を起こしたRPEという領域は,リポフスチンというものが貯留します.このリポフスチンが自発蛍光によって発光するので, その発光量を捉えることでAMDの早期発見に生かせるのではないかという手法です. また,若い人間ではRPEによる発光は観察されず,加齢に伴い均一に増加します.このFAFはかなり歴史が古く,昔から発光するということは知られていましたが, 近年の,撮影用フィルターの進歩によって日常臨床でも広がるようになった技術です.
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自発蛍光眼底写真

50代 正常 患眼

• 部分的に黄斑部の発光量が増加,あるいは低減すればRPEの代謝機能異常(AMD)が疑われる.

• FAFは,通常のカラー眼底写真よりも,血管などを

鮮明に撮影することができるため,早期発見に有効である.

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
図のように,黄斑部の発光量が部分的に増加したり,あるいは低減すればRPE代謝機能異常が疑われます. FAFは通常のカラー眼底写真よりも,異常部位(血管や黄斑部)を鮮明に撮影することができるため,早期発見などに利用されます. しかし,異常の判定基準はかなり主観的であり,背景蛍光より白いか黒いかによって評価されているため,慎重な解釈が必要であるといわれています.また, リポフスチン以外の代謝物も自発蛍光を発することから,過蛍光の解釈が難しいといった問題点もあります. とは言っても,日常診療医おいて,蛍光色素(造影剤)を使用せずに簡単にRPEの評価を行えるので検診などでも利用でき,便利であるといわれています.
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3. 眼底写真の画像処理

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• FAFによる撮影で簡便に蛍光画像による診断が

可能になったが,日本での検診おける蛍光眼底検査は,費用面から困難である.

• しかし,医師が非造影の眼底から低コントラストとなる血管の異常を見つけることに,多大な労力を要する.

• 非造影の眼底写真から画像を解析し,医師の診断を支援することを目的としたコンピュータ診断支援システム(CAD: Computer-Aided Diagnosis )の開発が求められている.

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提案されているCADの1例

<血管領域抽出法>

村松 千佐子“モルフォロジーフィルタバンクを用いた眼底画像における血管抽出”.信学技報.110(364), 105-108, 2011

原画像 2値化 強調画像 マニュアルトレース

モルフォロジーフィルタバンクを用いた血管抽出

プレゼンター
プレゼンテーションのノート
現在提案されているCADで、AMDに対するのCADがなかったので、代わりに眼底画像でよく研究されている 血管領域抽出による血管瘤の検出システムについて1例を紹介したいと思います。 この画像はモルフォロジーフィルタバンクを用いた血管抽出法による抽出結果です。 これは血管の構造や形に注目して、さらにただそれだけではなくて、異なった大きさで抽出した血管を加算して、強調画像として 表現する手法です。 一番左が原画像で、これが医師によるマニュアルとレースを行った画像。これが強調画像で、右の2値化のみの抽出法よりもノイズが少なく、かつマニュアルとレースに近い結果となっていることがわかります。
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モルフォロジフィルタバンク

微小領域抽出 平滑化

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4. まとめ

• 眼底写真について解説し,カラー眼底と蛍光眼底の違いを述べた.

• 加齢黄斑変性(AMD)の所見と、眼底自発蛍光撮影法(FAF)の概要とメリットについて述べた.

• 眼底画像に対する代表的なコンピュータ診断支援システム(CAD)を紹介し、簡単にアルゴリズムを解説した.