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Page 1: 1. 配電方式...結ぶ送電線では20kVとか275kVさらには50万Vという非常に高い電圧で電気が送られてきています。これ は電圧を高くすることによって限られた電線サイズで効率良く,しかも電圧に比例して多くの電気(電力)を送
Page 2: 1. 配電方式...結ぶ送電線では20kVとか275kVさらには50万Vという非常に高い電圧で電気が送られてきています。これ は電圧を高くすることによって限られた電線サイズで効率良く,しかも電圧に比例して多くの電気(電力)を送

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1. 配電方式1.1 発電所から需要家まで現在では多数の発電所,変電所が編み目状につながれてネットワークを作っていますが,モデル的に簡略化すると図 1.1 のようになります。家庭で使う電気は 100V とか 200V ですが,市街地の変電所から電柱(柱上トランス)までの配電線には 6600V という高い電圧で送られてきています。もっとさかのぼると発電所と変電所を結ぶ送電線では 20kVとか 275kV さらには 50 万 Vという非常に高い電圧で電気が送られてきています。これは電圧を高くすることによって限られた電線サイズで効率良く,しかも電圧に比例して多くの電気(電力)を送ることができるからです。したがって,電気を多く使う工場やビルなどの大口需要家には高い電圧で直接電気が供給され,需要家の変電所で安全な電圧に変えてから使用されます。

1.2 送配電電圧と方式1.2.1 電圧の種別電気設備の保安確保のために電気設備技術基準(省令)第 2条で,電圧は低圧,高圧,特別高圧の 3種類に分類されています。その区別は表 1.1 の通りです。電圧が高くなれば当然それだけ危険性も増大します。したがって,低圧,高圧,特別高圧という区別によって保安確保のための規制も大きな区分けが行われているわけです。さらに,危険の段階に応じてこれらの電圧を細分して規制が行われています。低圧は一般需要家の屋内電路に使用される電圧です。特に一般の人が触れる恐れがあり,電圧による危険性を考慮しなければならない家庭内の電路や電気機器では,原則として対地電圧を 150V 以下とするように規制されています。高圧は主として電力会社の配電幹線で使用される電圧ですが,大工場の大形電気設備機器にも使用されます。特別高圧は主として発・変電所,送電線路及び特定需要家向けの配電線路で使用される電圧です。大都市においてはビルの高層化にともなってビルの受電容量が大容量化するとともに,高層ビルの集中によって電力需要密度が著しく高まっており,この電力需要の過密に対応するために特別高圧による配電を行い,回線数の抑制を図りながら配電容量を増大しています。

1.2.2 標準電圧電線路を代表する線間電圧のことを電路の公称電圧といい,100V から 500kV の範囲内の公称電圧を標準化したのが標準電圧です。標準電圧は JEC 0222 で表 1.2 に示す値に定められています。わが国の送配電電圧は表1.2に示す標準電圧(公称電圧)に統一され,機器類を規格化し,他の送配電線との連係を容易にし,電力系統の単純化を図っています。

低  圧高  圧特別高圧

交  流600V以下

7,000V以下7,000Vを越えるもの

直  流750V以下

表1.1 電圧の種別

3,3006,60011,00022,00033,00066,00077,000

110,000154,000187,000220,000275,000500,000

1,000Vをこえる公称電圧(V)1,000V以下の公称電圧(V)

表1.2 標準電圧(公称電圧)

100200

100/200230400

230/400

図1.1 電力系統の構成

火力発電所

水力発電所

火力発電所

水力発電所

原子力発電所

超高圧変電所 一次変電所

中間変電所

154kV

154kV

154~66(77)kV

275~500kV

66(77)kV6kV 6kV66(77)kV

22kV

6~3kV 6~3kV

200V

100V100V100V 400~200V

100V/200V

配電用変電所送電線

配電線

小工場~50kw

一般家庭

低圧需要家高圧需要家

ビル中工場

50~2000kw

自家用変電所

自家用変電所

自家用変電所

大工場高層ビル

2000~10000kw大工場

10000~50000kw

電力会社

需要家

特別高圧需要家

柱上トランス

400 ~200V

400 ~200V

高圧スイッチギヤキュービクル式高圧受電設備特高キュービクルおよび特高C-GIS

Page 3: 1. 配電方式...結ぶ送電線では20kVとか275kVさらには50万Vという非常に高い電圧で電気が送られてきています。これ は電圧を高くすることによって限られた電線サイズで効率良く,しかも電圧に比例して多くの電気(電力)を送

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1.2.3 契約電力と受電電圧(供給電圧)電力を供給する場合,契約電力の大小に応じて,合理的,経済的な受電電圧がほぼ一義的に決まってきます。たとえば,契約電力が 5000kWの需要家に 100V の低圧で供給すると大電流を流す必要があり,この大電流に見合った極めて太い配電線が必要となり技術的にも,経済的にも大きな問題となります 。これとは反対にきわめて小容量の一般家庭に高い電圧で供給すると,消費電力に不相応な変圧器が必要になったり,危険防止のために相当な電気技術の知識が必要になります。このように契約電力の大きさと供給電圧の間には,主として経済的理由にもとづく一定の関係があります。そんなわけで表 1.3 に示すように契約電力の kW数に応じて低圧,高圧,特別高圧に区分され,設備の管理方法も異なります。低圧供給と高圧供給の境界は,契約電力 50kWとなっています。

なお,各電力会社では各々の電気供給約款などで契約電力と供給電圧(受電電圧)を表 1.4 のように決めています。ただし,供給設備の都合によりこれより上位または下位の電圧で供給されることがあります。また,東京,大阪など※印の都心部では,契約電力が 500kW以上になると 20kV級または,30kV級のスポットネットワーク配電方式を推奨される場合があります。

表1.3 契約電力と受電電圧

契  約  電  力

50kW未満

50kW以上2000kW未満

2000kW以上

受  電  電  圧

低圧(一般には200V)

高圧(6kV級)

特別高圧(一部高圧あり)

管  理  方  法

一般用電気設備(電力会社)自家用電気設備

(保安協会などに委託可)(注)自家用電気設備(主任技術者)

注.保安協会などへの委託は契約電力に関係なく、高圧受電であれば可能。

表1.4 電力会社別の契約電力と供給電圧

北海道電力

東 北 電 力

東 京 電 力

北 陸 電 力

中 部 電 力

関 西 電 力

中 国 電 力

四 国 電 力

九 州 電 力

6

  2,000未満

※ 2,000未満

  2,000未満

※ 2,000未満

※ 2,000未満

  2,000未満

  2,000未満

※ 2,000未満

10,20,30

需給地点の供給可能電圧による

2,000~10,000未満(10,20,30kV)2,000~10,000未満(10,20,30kV)2,000~10,000未満(20,30kV)

2,000~10,000未満(20,30kV)

2,000~10,000未満(20,30kV)

2,000~10,000未満(20kV)

2,000~10,000未満(10,20,30kV)

60,70

10,000~50,000未満(60kV)

10,000~50,000未満(60kV)

10,000~50,000未満(60,70kV)

10,000~50,000未満(70kV)10,000以上(70kV)

10,000~30,000未満(60kV)

10,000以上(60kV)

2,000以上

供給電圧(kV)

電力会社

単位〔kW〕

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1.2.4 受電回路方式受電回路方式は,受電設備容量,施設の重要度,電力会社の供給条件や立地条件などによって決定されます。6kV級では経済性に重点をおき,1回線受電方式(T分岐受電)が多く用いられておりますが,主要な受電方式は図 1.2 のようになります。産業及び社会活動の高度な情報化や豊かな生活のために電力供給の安定性,信頼性に対する要求はますます厳しいものとなってきています。代表的な受電方式を電力供給信頼性の面から見ると,1回線受電方式の場合は,電力会社の供給電路が停止あるいは受電遮断器が故障すると復旧までに長時間の停電となります。2回線受電方式(ループ受電方式)の場合は,1回線のケーブル故障では,停電することはありませんが,二重事故に対しては全停電となります。スポットネットワーク受電方式(3回線受電)は,通常,3回線で受電し,それぞれの受電回線に変圧器を設置して 2次側を並列に接続する方式です。1回線が停止しても完全に無停電であり,二重事故のような重大事故が発生しても 1回線が残っていれば,負荷を制限することにより,全停電になることはなく,一番供給信頼性の高い受電方式です。東京,大阪などの都心部では,契約最大電力 500kW以上になるとスポットネットワーク受電方式を推奨される場合があります。

図1.2 受電回路方式

(C需要家)電力会社変電所

A需要家自家用受電設備

B需要家

A需要家

B需要家

C需要家

CB

CB

DSCBDS DS

DS

負荷

負荷

負荷

負荷

負荷

常用線

常用線

予備線

負荷

負荷

負荷

負荷

予備線

A変電所(常用電源)

B変電所(予備電源)

ループ配電線

ネットワークプロテクタ

配電線

A需要家 B需要家

400V母線

(1)1回線受電方式

(2)2回線受電方式   平行2回線受電…6, 20/30, 60/70kV

(3)スポットネットワーク受電方式… 20/30kV

   本線・予備線受電…20/30, 60/70kV

   ループ受電…20/30, 60/70kV

   専用1回線受電…6, 20/30, 60/70kV

   T分岐受電…6kV

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1.2.5 周波数わが国の電力系統の周波数は 50Hz と 60Hz の2種類が用いられています。日本列島のほぼ中央部,静岡県の富士川付近を境にして東側の東京・東北・北海道電力管内は 50Hz,西側の中部・北陸・関西・中国・九州・沖縄電力管内は 60Hz です。これは電気事業が開始された当初,東京では 50Hz 系のヨーロッパから機器を輸入し,大阪では 60Hz 系のアメリカから機器を輸入したことによるものです。新潟県と長野県では両周波数が混在しています。周波数の違いは,全国的に電気を融通させようという場合には大きな障害となります。現在では静岡県の佐久間発電所,東清水変電所と長野県の新信濃変電所に周波数変換装置を置いて,東西の電気が融通できるようになっています。周波数が違うと,使えなくなる電気機器が多くありますが盤用機器も例外ではありません。例えば,モータやモータの原理を使った電気機器(電力量計,タイマー)では,回転速度が周波数に比例し,駆動力が周波数の影響を受けるため,正しく働かなくなります。また,コイルを使った電気機器も磁束密度や励磁電流が周波数の影響を受けるため,電磁力や発熱,効率がちがってきます。例えば,電磁開閉器の操作コイルでは,発注時に周波数の指定が必要です。

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図1.3 電力会社別電力供給区および周波数分布

(平成6年3月末現在)

北海道

北海道電力

岩手

茨城

静岡

長野岐

三重

滋賀

奈良

愛媛

宮崎

熊本

福岡

長崎

大阪和歌山

沖縄

沖縄電力

九州電力

四国電力

関西電力

北陸電力

中部電力

東京電力

東北電力

中国電力

石川

千葉

栃木群

宮城

山形

新潟

秋田

青森

福島

山梨

富山

福井

京都兵庫

鳥取

島根 岡山広島

山口

大分

鹿児島

佐賀

高知徳島香川

愛知

埼玉

東京神奈川

50Hz 地区

60Hz 地区

50Hz,60Hzの主な混在地区