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- 1 1 ドローン等を用いた先端技術の開発 (2) ドライアイス投下による繁殖抑制技術の開発 要旨 ドローンを活用したドライアイスによるカワウの繁殖抑制技術の開発を行った。2017 5 月に、遠 隔操作によって底が抜ける容器を作成し、ドライアイスを遠隔的に投下できる技術を確立した。2017 5 31 日に山梨県甲府市にあるカワウの繁殖コロニーにおいて、カワウの巣へのドライアイス投入 に成功した。その後、ドローンを用いてドライアイスの投入を行った巣のモニタリングを継続した結 果、4 つの卵とも孵化することがなく繁殖を抑制することができた。 . はじめに カワウは卵を取り除くだけでは、また産み足してしまうため、ニセモノの卵(擬卵)と置き換える か、何らかの処理によって、ふ化しない卵にすることが必要となる。ドライアイスを巣内に投入し卵 の発生を止め、繁殖を抑制する技術は、山梨県ですでに確立されている(坪井・芦澤 2012)。しかし、 擬卵でもドライアイスでも、繁殖抑制対策を行うと、繁殖コロニーをかく乱することになり、結果と してカワウは人のアクセスしにくい場所に営巣することが経験的に知られている。遠隔的にドライア イスを運搬、巣内に投入する技術が開発されれば、より多くのコロニーで繁殖抑制が可能となり、個 体数増加を抑制できると期待される。本課題は、ドライアイスを用いた卵冷却による繁殖抑制にドロ ーンを導入することで、高所やアクセスの悪い場所における繁殖抑制を可能にするための技術開発を 行うものである。本年度は、遠隔的にドライアイスを投入する技術の開発を目的とした。 2.ドローンを用いたドライアイス投下による繁殖抑制技術開発 (1)方法 1 の道具を利用して、ドライアイスをドローンで運搬し、遠隔的に投下するためのシステムを開 発した。ドローンは Inspire2 を用いた。

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Page 1: 1 ドローン等を用いた先端技術の開発 - maff.go.jp...- 1 − 1 ドローン等を用いた先端技術の開発 (2) ドライアイス投下による繁殖抑制技術の開発

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1 ドローン等を用いた先端技術の開発

(2) ドライアイス投下による繁殖抑制技術の開発

要旨

ドローンを活用したドライアイスによるカワウの繁殖抑制技術の開発を行った。2017 年 5 月に、遠

隔操作によって底が抜ける容器を作成し、ドライアイスを遠隔的に投下できる技術を確立した。2017

年 5月 31日に山梨県甲府市にあるカワウの繁殖コロニーにおいて、カワウの巣へのドライアイス投入

に成功した。その後、ドローンを用いてドライアイスの投入を行った巣のモニタリングを継続した結

果、4 つの卵とも孵化することがなく繁殖を抑制することができた。

1. はじめに

カワウは卵を取り除くだけでは、また産み足してしまうため、ニセモノの卵(擬卵)と置き換える

か、何らかの処理によって、ふ化しない卵にすることが必要となる。ドライアイスを巣内に投入し卵

の発生を止め、繁殖を抑制する技術は、山梨県ですでに確立されている(坪井・芦澤 2012)。しかし、

擬卵でもドライアイスでも、繁殖抑制対策を行うと、繁殖コロニーをかく乱することになり、結果と

してカワウは人のアクセスしにくい場所に営巣することが経験的に知られている。遠隔的にドライア

イスを運搬、巣内に投入する技術が開発されれば、より多くのコロニーで繁殖抑制が可能となり、個

体数増加を抑制できると期待される。本課題は、ドライアイスを用いた卵冷却による繁殖抑制にドロ

ーンを導入することで、高所やアクセスの悪い場所における繁殖抑制を可能にするための技術開発を

行うものである。本年度は、遠隔的にドライアイスを投入する技術の開発を目的とした。

2.ドローンを用いたドライアイス投下による繁殖抑制技術開発 (1)方法

表 1 の道具を利用して、ドライアイスをドローンで運搬し、遠隔的に投下するためのシステムを開

発した。ドローンは Inspire2 を用いた。

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表 1. 試験で使用した機材一覧

(2)結果と考察

2L 容器の底にルーターで 25mm の穴を1つ空け、アクリル板でふさぐようにした(図 1)。次に容

器側面にラジコン飛行機の電動引込脚を横向きに設置した。なお、ドライアイスによって冷却される

と結露等により作動しない可能性があったため、厚さ 2mm 程度のベニヤ板を容器と引込脚の間に挟む

ようにして固定した。容器も含めた総重量は 450g 程度となった。遠隔的に投入するためのスイッチに

ついては、使用したドローン Inspire2 が改造不可能な構造のため、別のコントローラーを用いた。

図 1. ドライアイスを遠隔的に投下するための容器

次にドライアイスを入れて、実験を行ったところ、アクリル板が冷却され、容器と固着してしまう

ことが明らかになった。凍結防止のために消毒用のアルコールをアクリル板周辺に塗布しながら投入

実験を行うことで、ほぼ 100%の確率で遠隔的にドライアイスを投入できるようになった(図2)。

製品名 備考

ド ローン( ド ラ イ アイ ス投入) DJI社 Insp ire 2 カ メ ラ およびモニタ ーと なるタ ブレッ ト PCは別途必要

ド ラ イ アイ ス用ボト ル 麦茶等を入れる2Lの容器

ボト ルの底を抜く 装置 ラ ジコ ン飛行機の電動引込脚 コ ント ローラ ーは別途必要

アク リ ル板 厚さ 1mm

ペレッ ト 状のド ラ イ アイ ス 昭和炭酸

エアチュ ーブ 外径6mm, 内径4mm ド ラ イ アイ ス容器をド ローンから 吊るすひも

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図 2. ドライアイスの投入実験(2017年 5月 26日中央水研内水面研究センター)

3. カワウの繁殖コロニーでの実証試験 (1)方法 国土交通省東京航空局よりドライアイス(危険物)の運搬ならびに投入の許可を得た上で 2017 年 5

月 31 日、山梨県甲府市にあるカワウの繁殖コロニー(通称: 下曽根コロニー)において、実証試験を

行った。

(2)結果と考察 図 3 のとおり、1 巣のみであるがドライアイスの投入に成功した。この巣についてその後もモニタ

リングした結果、4 卵全てで繁殖を抑制することができた(図 4)。

営巣している樹木はニセアカシアやサワグルミであったが、すでに新緑が成長し、投入は困難を極

めた。新緑の芽吹く前、関東地方であれば 4 月下旬までがドローンを用いたドライアイス投入作業の

効率が高いと考えられる。なお、繁殖期初期は大型の親鳥が多くの大きな卵を産み、巣立たせる雛の

個体数も多いことが明らかになっている(Tsuboi et al. 2009)。そのため、繁殖期初期にドローンを活

用して繁殖抑制を行うことは、カワウの繁殖戦略にも合致しているといえる。

今後、改良を重ね、効率的に、そしてより精度高く巣内にドライアイスを投入する技術を開発する

必要がある。具体的には、ドライアイスを入れる容器とドローンとの距離の最適化があげられる。つ

まり、容器を吊るしているエアチューブが短いとプロペラと枝との接触リスクが高まり、一方で、長

いとドローンの風で容器がぶれてしまい巣の直上で安定しないというトレードオフがある。2018 年 3

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月現在、エアチューブと容器の間にラジコン用ウィンチを装着し、容器を巣の上空でホバリングさせ

た後、ウィンチを延ばして巣の直上まで容器を持っていくことを検討している。

図3. ドローンによるドライアイスの投入

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図 4.ドライアイスの投入装置と実際に繁殖抑制を行ったカワウの巣におけるその後の営巣状況

4. 引用文献

Tsuboi J. and Ashizawa A. (2011) Seasonal decline of investment in egg production with

increasing food abundance on the Great Cormorant in a riverfront colony.

Ornithological Science 10, 113–118.

坪井 潤一, 芦澤 晃彦 (2012)山梨県におけるカワウ繁殖コロニー管理. 日本鳥学会誌 61, 38-45.

https://doi.org/10.3838/jjo.61.38

5. 成果の公表

坪井潤一(2017)ドローンを使ったカワウ被害対策 FRA ニュース 52, 2017 年 9 月号:10-11. http://www.fra.affrc.go.jp/bulletin/news/fnews52.pdf

5/31 4卵確認、 ド ラ イ アイ ス投入

6/14 3卵確認、 孵化し ていない

6/28 1卵確認、 孵化し ていない( アラ イ グマやカ ラ スに食べら れた可能性)

7/12 親鳥の巣の放棄を確認

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坪井潤一(2017)カワウ個体群管理のための最善策を探る アクアネット 2017年 10 月号:24-26.

坪井潤一(中央水産研究所)

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1 ドローン等を用いた先端技術の開発

(3) 効果的かつ効率的なドローンによる追い払い技術の効果検証

要旨 カワウによる捕食被害を減じるため、ドローンに小型スピーカーを搭載し、ドローンのカメラを用

いてカワウを追跡しながら爆音で追い払う方法を用いて、群馬県みどり市渡良瀬川流域において、そ

の効果検証をおこなった。実験は、2017年 11月 29 日から 1月 17 日にかけて行われた。渡良瀬川の相

川橋の上・下流に 500~600mの幅で 2 つの追い払い区と非追い払い区をそれぞれ設置した。追い払い

を実施する前、実施後 1 時間後、実施後 2 時間後に河川におけるカワウの飛来数をドローンの自動飛

行機能を用いて調査したところ、追い払い区については、追い払いの前後で飛来数が減少した。一方、

非追い払い区については、1 つはカワウの飛来がなかったが、もう一つの区間については、追い払い実

施前後で個体数が増加した。これらのことから、爆音ドローンによるカワウ追い払いは、実施後 2 時

間は高い忌避効果を示すことが示唆された。また、指定した試験区内全域において、実験期間前より

カワウの飛来数が減少していることが示唆されたため、試験区外に範囲を広めてカワウの飛来数調査

を行った。まだ、データ解析途中であるが、爆音ドローンを用いたカワウの追い払いは、当初我々が

予想した 500~600m区間より広いエリアに忌避効果を及ぼしている可能性が示唆された。

1. はじめに カワウによる捕食被害を減じるためには、河川への飛来を防除するため追い払いを行う必要がある。

しかし、単純な刺激にはカワウはすぐに慣れてしまうため、人が花火や銃器を用いて追い払うことが

最も忌避効果の高い追い払い刺激と考えられている(山本 2010)。人による追い払いは、労働力がか

かること、また、河川によっては堤防の整備などがされておらず、人間が追い払いに行けない場所が

あるなどのデメリットがある。そこで、ドローンに小型スピーカーを搭載し、ドローンのカメラを用

いてカワウを追跡しながら爆音で追い払う方法が中央水産研究所の坪井潤一研究員によって開発され

た。本研究では、群馬県両毛漁協の協力のもと、ドローンと小型スピーカーを用いた爆音追いがカワ

ウを河川から追い払う上での効果を検証する調査を行った。

2. 群馬県渡良瀬川におけるドローンを用いた追い払いの効果検証 (1)方法

ドローンは汎用機である Phantom 4Proを用いた。スピーカーには、Anker Sound mini(5W・210g・

1800mAh、Anker 社)を最大音量に設定し、ドローンにネットを用いて吊り下げた(図 1)。追い払いに

使用した音源としては、銃撃音を用いた。ドローンの操縦は、DII Go4(DJI 社)を用い、自動飛行に

は、Ground Station Pro(DJI社)を用いた。

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図 1. ドローンにスピーカーを装着した様子の 1例

2017年 11月 29 日から 2018 年 12月 13 日にかけて、ドローンと小型スピーカーを用いた爆音追い払

いの効果検証を行うため、群馬県渡良瀬川において合計 4 回の調査を実施した。場所は、群馬県みど

り市にある高津戸ダムのコロニーから直線距離でおおよそ 1km ほど離れた試験区間で実施した(図 2)。

相川橋を挟んで上流の 500m 区間を①、②と設定し、下流の 600m 区間をそれぞれ③、④と設定した(図

3)。そして①と③を追い払い区、②と④を非追い払い区と設定した。

図 2.試験区間と渡良瀬川上流にある高津戸ダムのコロニーの位置図

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図 3. 相川橋を挟んだ試験区間の設定. 相川橋より上流の 500m区間①、下流の 600m区間③を追い払い区、上流の

500m区間②と下流の 600m区間④を非追い払い区と設定した。

追い払う前と追い払い後 1時間後、2 時間後にそれぞれ試験区間にて飛来調査を行った。飛来調査は

午前 10 時に開始し、時速 36~40km、フレームレート 30、ジンバル角度 45~90°、高度 30m にて、試

験区の範囲の流域全体が撮影できるようにコースを設定し、自動操縦にて実施した(図 4)。ドローンが

撮影した動画から、河川に飛来するカワウの数を計数した。追い払い前の飛来数調査が終了したのち、

試験区内においてスピーカーで銃撃音を大音量で鳴らしながら追い払いを実施した。追い払いの方法

は、追い払い試験区①と③にて、追い払い前の飛来数調査を実施した直後に行った(図 4.)。追い払い

の方法は、河川の上を 5m~10mの高度で飛行し、カワウを発見したら、カワウに接近し、追い払い区

域の外へ追い出すまで追跡を行った。追い払い時間は、バッテリー1 本分(約 15 分間)とし、見落とし

が無いように流域全体を飛行し、追い払いを続けた。

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図 4. 試験区間内の飛来数調査の経路模式図(左)と追い払いの経路模式図(右)

12 月 13 日まで図 3.の試験区間で追い払いと飛来調査を実施したところ、追い払い区間も非追い払

い区間もカワウの飛来がほとんどなかったことから、追い払いの前後の日程で、試験区間外に調査範

囲を拡大し、カワウの飛来数調査を行った(図 5)。追い払い前の試験区間外も含む飛来数調査を、12

月 21 日、25 日、1月 7 日、8日、15日(合計 5日間)実施し、追い払いと当日の試験区間の飛来数調

査を 12月 22日、26 日、1月 9日、16日(合計 4日間)、追い払い実施翌日の試験区間外も含む飛来数

調査を 12月 23 日、27 日、1 月 17日(合計 3日間)実施した。

(2)結果と考察

図 5. 試験区間外に延長した飛来数調査エリア 緑のエリアが合計 2.2km の試験区間を示し、赤いエリアが延長

した飛来数調査エリアを示す。渡良瀬川にかかる福岡大橋~松原橋の間の区間に相当する。

① ①

② ②

③ ③

2 ㎞

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(2)結果と考察

追い払い実証試験の試験区間①~④における追い払い開始前、1 時間後、2 時間後のカワウ飛来数±

SD を表 1 に示す。

試験区①については、開始前は飛来があったが、開始後は飛来は 0 になった。試験区②では、開始

前後とも飛来が 0 だった。一方、試験区③は、追い払い前後で顕著に飛来数が減少した(試験前 4.6

羽→1 時間後 0、2 時間後 0.2 羽)、一方、非追い払い区は追い払い前後での飛来数は追い払い後が増加

した。これは、③で追い払われたカワウが④の試験区間内に逃げ込んだ可能性が高い。

表 1. 試験区間①~④の開始前、1時間後、2時間後の平均カワウ飛来数

①(追い払い区) ②(非追い払い区) ③(追い払い区) ④(非追い払い区)

開始前 0.40±0.52 0±0 4.60±3.53 3.00±1.63

1時間後 0±0 0±0 0±0 4.40±1.90

2時間後 0±0 0±0 0.2±0.63 3.7±1.95

12月 13日以降、追い払い前日に試験区間外まで範囲を広め飛来数調査を行った結果、追い払い前日

の飛来調査では、相川橋より下流の追い払い区域③、④と非追い払い区域にはカワウが戻っていた。

河川の調査範囲を広げた結果、追い払い区域から下流側7kmにある松原橋より下流側に飛来している

個体が多かった。

試験区間内の結果から、カワウの追い払い前後で、カワウの飛来数が①、③ともに減少していたこ

とから、ドローンによる追い払いは、追い払い後少なくとも 2 時間はその忌避効果が持続しているこ

とが示された。非追い払い区の②はもともとカワウが飛来しなかったため不明だが、追い払い区④に

ついては、付近で追い払われたカワウが移入するためか、飛来数が直後は増加する傾向がみられた。

また、今回設置した試験区間は、それぞれ 500~600m という規模の河川区間をそれぞれの試験区間と

して設置したが、4つの区間すべて含めて、以前よりカワウの飛来数が大きく減少してしまった(両

毛漁協中島組合長 私信)。一方、試験区間外においては、追い払い区域から下流側7km にある松原橋

よりさらに下流側に飛来している個体が多かった。上流側は追い払い区域から 5km 上流にある新栄橋

まで飛来数調査を行ったが、飛来はほとんどなかった。よって、これらの結果から、爆音ドローンに

よるカワウ追い払いの忌避効果は当初、想定していた 500~600m 区間での効果よりも広いエリアに忌避

効果を及ぼしている可能性が示唆された。カワウの採餌範囲は、ねぐら・コロニーを中心におおよそ

10km圏内に 97%が含まれるという報告がある(日野・石田 2012)。よって、高津戸のコロニーからの

距離を鑑みながら、来年度以降は、カワウの飛来場所と試験区の設定をさらに広範囲で検証を行う必

要がある。

4. 引用文献

1.山本麻希 「カワウに立ち向かう2」 2010 年 全国内水面漁連 HP

http://www.naisuimen.or.jp/jigyou/kawau/kawau2.pdf

2. 日野輝明、石田朗 2012 年 「GPS アルゴス追跡による東海地方のカワウの行動圏と季節移動」

日本鳥学会誌 61巻 p17~28.

5. 成果の公表

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なし

山本麻希(長岡技術科学大学)、三栖誠司(全国内水面漁業協同組合連合会)