10 slidetoshi1.civil.saga-u.ac.jp/.../no10_ud/10_slide.ppt.pdf08.7.24 1 第10回...
TRANSCRIPT
08.7.24
1
第10回 都市デザインの手法
(1)図と地(景観資源と景観計画)
都市デザイン
1. なぜ景観か
(1)物的環境の総体としての景観 景観がよい = 都市計画、建築デザインなどがよい • 様々な環境要素の総合的調和の反映
– 自然系要素:地形、緑、水、気象など – 人工系要素:道路、建築、工作物、自動車など
• 土地利用計画(都市計画)の反映 – 住宅地、商業地、工業地などの用途
• 建物等の規模の反映 – 街区・敷地の規模 – 建物高さ
(2) 図と地(外部空間のあり方) →反転したときの美しさ
• 図としての景観資源の保全 • 地としての景観計画
芦原義信「外部空間の設計」
ゲシュタルト心理学における エドガー・ルビンの「盃の図」
盃
2人の顔
図と地の現象的特徴 (1)図となった領域は形をもつが、地は形をもたない。 (2)二つの領域を分ける境界線は、図となった領域の輪郭線となる。 (3)図は物の性格をもち、地は材料の性格をもつ。 (4)図となった領域は地となった領域よりも色が堅く、密である。 (5)一般に図は観察者のほうに近く定位される。 (6)図は地よりも印象的であり、意識の中心となりやすい。
(3)市民としての景観
• 景観論争 – 大規模建築物による影響 ☞ 京都タワー(後述) – 歴史的景観、自然景観の保全、など
• 確立していない「景観権」 vs 「財産権」(憲法) – 土地所有者ではない → 権利が発生するのか? – 範囲が明解でない → どの「景観」を守るのか?
☞ 国立
国立市大学通り
08.7.24
2
2.我が国における景観保全の歩み
• 1960年代 京都タワー問題:景観問題の端緒 – 1966,古都保存法(歴史的風土の保存、京都・奈良・鎌倉)
– 1968、金沢市伝統的環境保存条例 (日本で最初の景観関連条例)
古都保存法
古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法
・当初は京都・奈良・鎌倉。 ・都市周辺部における開発。 ・町並み保存ではない。
• 1970年代 町並み保存から景観形成の芽生えへ – 1978、神戸市都市景観条例 – 1980、文化財保護法改正「伝統的建造物群保存地区」の導入
神戸市都市景観条例(1978)
・1980年代 景観保全の拡大 各市町村で景観条例制定の増大 上位法よりも厳しい規制 = スポットゾーニング (上位法=建築基準法など)
スポットゾーニング • 非常に狭い区域または特定の敷地について • 周囲とは異なる地域制上の地域・地区指定 • 合法性
• 恣意的で不公平な地域制の運用 → 非合法 • 目的の公益性と手続きの公平性 → 合法
• 2000年代 景観行政の位置づけの向上 – 2002 美しい国づくり大綱 ☞ 国立市大学通りの判決 – 2004 景観法の制定 – 2005 景観緑三法の全面施行 景観法、屋外広告物法、都市緑地保全法
08.7.24
3
3.景観工学からのアプローチ
(1)景観資源 – 単一で、あるいは集合し、眺めるのに値する価値を持つ対象
– 一般には山岳や湖沼などの対象そのもの (広義には良好な眺望を保証する空間や対象を眺める視点を含む)
• 種 類<環境アセスより> – 自然景観資源(自然景観構成要素) → 自然遺産 – 人文景観資源(人文景観構成要素) → 文化遺産 – 自然人文景観資源(自然人文景観構成要素)
(2)景観操作指標
• 視対象(景観構成要素):学術調査による特質の解明 → 価値の特定(評価) → 保全対策
• 可視・不可視:見える見えないの指標
(2)景観操作指標
• 距離景:近距離景、中距離景、遠距離景 (視対象によって異なる)
神戸市都市景観条例(1978)
(2)景観操作指標
• 視線入射角:仮定面と視線のなす角度 – 仮定面=視対象を面の集合体として仮定
• 仰角・俯角<9°以内が自然に目に入る範囲
(2)景観操作指標
• 視点場:公共性の高い場所(例:公園など) – 視対象の性格 → 例)正面性が強い視対象に対する視点場
• ストーリー性:シークエンスなど
公園など
シークエンス
08.7.24
4
景観マスタープラン
役割:景観行政の目標と施策の体系化
アウトプットとしての図: • 現状図: 景観要素の分布、骨格、特性
景観要素が多岐に渡る場合は、「自然景観要素」と「歴史・文化的要素」に分けて示すことも多い。
• 課題図: 施設整備、景観整備に向けた課題
施設等の点的整備課題、街路等の線的整備課題、地域等の面的整備課題などが示される。
• 計画方針図: 課題を踏まえた景観整備の方向性
• ランドマーク整備などの考え方 • 地域の実情に応じ、
• ランドマークや道沿いの視点場、 • 河川沿いの歩道、街路樹の軸景、 • 見る人の動きに応じた景観の整備等が示される。
• 重点地区図: 整備期間(例えば10年)に行う重点施策
• 歴史的環境保全地区、 • 創造的整備地区、など • 景観整備の「重点地区」を抽出し、景観整備のイメージや河川、道路、広場、緑、公共施設、歩行者空間の整備に関することが表示される。
5.景観法による景観計画(2004年以降) (1)目的 • 我が国の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進する。
• 美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図る。
(2)景観行政団体の指定:責任の所在の明確化 • 指定都市、中核市(地方自治法) • 上記以外の区域においては都道府県 • 都道府県知事と協議し、その同意を得た市町村
(3)景観計画の策定
• 景観計画区域の設定 – 現にある良好な景観を保全する必要がある区域 – 地域の自然,歴史,文化等から、良好な景観の形成を要する区域
– 地域間交流の拠点となる区域で、良好な景観の形成を要する区域
– 住宅市街地開発等の区域で、良好な景観の創出を要する区域
– 不良な景観が形成されるおそれがある区域
08.7.24
5
• 計画の内容 – 景観計画区域における良好な景観の形成に関する方針
– 良好な景観の形成のための行為(形態意匠等)の制限に関する事項
– 景観重要建造物又は景観重要樹木の指定の方針 – 景観重要公共施設の整備に関する事項
• 住民提案(景観行政団体に対して) – 一人もしくは数人の共同 – NPO法人や企業など
• 行為の規制等 – 届出と勧告 ⇄ (通常の建築行為は「確認」) 参考:確認(主事)<届出(行政庁)<許可(審査会) – 変更命令等
• 景観地区(準景観地区) – 都市計画区域もしくは準都市計画区域内の景観計画区域 (上記以外の景観計画区域においては準景観地区)
– 必須の事項: 一 建築物の形態意匠の制限 可能(定めることができる事項): 二 建築物の高さの最高限度又は最低限度 三 壁面の位置の制限 四 建築物の敷地面積の最低限度
5.景観計画・景観デザインの先進事例
(1)磐梯猪苗代観光開発計画
• 丹下健三研究室(東京大学都市工学科)、1966
• コンピュータを用いた「動景観設計」
• 我が国最初のシークエンス自然景観デザイン
眺望範囲
テクスチュア 樹木・草原
シャープな眺望
空間の知覚範囲
区分例
第1楽章
第3、第4パッセージ 小節
音楽のソナタ形式に模された表現に関する概念図(出典:THE MASTER PLAN FOR THE DEVELOPMENT OF THE RESORTS IN BANDAI INAWASHIRO AREA) 磐梯猪苗代観光開発計画
玄関としてのPath空間 (磐梯熱海から見える磐梯山の山並み)
安達太良山へ抜けるヴィスタ 折り重なる山へのアプローチ
磐梯山を背に広がる湖沼群 ゴールドラインへの入り口
08.7.24
6
(2)伊豆・松崎町
• 石山修(早稲田大学教授)による全体計画
• うこん色のカラーリング計画
松崎町
伊豆の長八美術館 (3)松本城周辺高度地区
• 目的: – 松本城本丸及び二の丸(外堀)内から東山への優れた景観の保護
– 松本城天守閣の存在感の保持
– 松本城周辺の住環境の保全
• 特徴:段階的な高度地区規制
松本都市計画区域高度地区
(4)グラン・プロジェ・ド・パリ (フランス) • パリ=バロックの都市 → ヴィスタ、大パースペクティブ
ヴェルサイユ宮殿
08.7.24
7
新都心とオースマンのパリ大改造
デファンス地区(パリ市域外) グラン・プロジェ・ド・パリ
• ミッテラン大統領下での新たな都市大改造 • テット・デファンス(新凱旋門) → 都市軸の再考によるバロック都市の継承と再活性化
テット・デファンス(新凱旋門)
音楽シティ • ラ・ヴィレット公園への視線
配置図
ラ・ヴィレット公園
ラ・ヴィレット公園
08.7.24
8
音楽シティ 音楽都市 内観
まとめ
• 景観破壊への批判 → 景観の保全・創造 – 都市計画と建築・土木をつなぐ3次元的な役割としての期待
– 法的な整備としての景観法 • 景観法に託されていること
– 守るべきもの、守るべき景観を明確にする • 重要景観建築物、重要景観樹木 ← 価値 • 景観地区、など
– 景観計画の策定 – 景観デザイン