従来の10倍以上の高い電流レートで充放電できる安全な二次...

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従来の10倍以上の高い電流レートで充放電できる安全な二次電池 マイクロエネルギー研究室 教員名 大澤 利幸 ポリアニリン電極の調整 重合液:テトラフルオロホウ酸(HBF₄)水溶液にアニリンを溶解 重合法:三極式定電流電解法 作用極:ITOガラス基板(1㎠) キャパシタ構成 両極:ポリアニリン電解重合膜 電解液:イオン液体 1.5MLiFSI/EMI-TFSI(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド) ◆ 電気二重層キャパシタ(EDLC)の容量が大きくなり二次電池容量に近づいている 。 ◆ 負極新素材を背景に二次電池のLTO(チタン酸リチウム)電極等で高出力化が進んでいる。 ◆ 導電性高分子ポリアニリン(PANI)はp型導電性高分子として安定であることから, 高出力二次電池正極材料として研究されたが 実用面で多くの課題を残してきた。最近, 両極にポリアニリンを用いたキャパシタ(259F/g)が報告され , キャパシタの負極材 料としての可能性が示された。 ⇒エネルギー容量は不純物準位におけるキャリア密度の変化, 放電開始電圧はフェルミレベルから不純物準位までの差と考えられる。 1991年リチウムイオン電池が世に出てから, 繰り返し充電が可能な二次電池の世界が変わった。それまでの鉛蓄電池・ニッケルカドミウム電池に 比べ自己放電がなく長持ち, しかも軽くて小型化が可能となった。しかし, 出力・安全性・価格においてはそれまでの電池を超えるものではない。 現在, 安価で出力が求められる用途には従来の水系二次電池や繰り返し寿命が求められる用途にはキャパシタが使用されている。 当研究室ではキャパシタ並みの出力と水系電池並の安全性を同時に実現できる蓄電池の研究に取り組んでいます。 コンポジット化によりさらに高エネルギーに! 当研究室では導電性高分子膜及びイオン液体を使用した安全で高出力な蓄電技術の研究に取り組んでいます! 改良Hummer法によりグラフェンを合成、グラフェン存在下でポリアニリンを化学合成、コンポジット化によりさらに高機能電極へ 従来3C相当, 50Cの放電が可能 ※1Cは1時間放電率です Yongcheol Jo et al: JOUNAL OF Applied Polymer Sci., 131,40306(2014) ~ポリアニリン/ポリアニリンキャパシタ~ N H N H n ポリアニリンの構造式 膜厚変化と容量変化の関係 充放電特性とサイクル特性 ITOガラス上に化学合成したポリアニリンをスピンコートし, 電極を作成し, サイクリックボルタン メトリー(CV)で評価を行った。 作用極:ポリアニリン化学重合膜およびポリアニリン/グラフェンコンポジット電極 対極, 作用極:Li金属 電解液:1.5M LiBF₄/EC-DMC(1:1wt%) ポリアニリン電極 ~疎水性イオン液体の合成~ 250cycle後, 初期容量の約96%保持 イオン液体とは? Green Solvents(グリーンソルベント)…低環境負荷, 難燃性, 再生利用可能 常温溶融塩 (融点100℃以下) 有機塩であるため, 無限の構造設計・機能制御が可能 難燃性, 広い温度域において液体で安定 応用先 キャパシタ溶媒(ポリアニリンキャパシタ等) ポンプの潤滑油 セルロースを溶解 イオン液体(EMI-FSI)の合成スキーム 合成したイオン液体 化学重合の合成方法 ポリアニリン電極 ポリアニリン/グラフェンコンポジット電極

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従来の10倍以上の高い電流レートで充放電できる安全な二次電池

マイクロエネルギー研究室 教員名 大澤 利幸

ポリアニリン電極の調整重合液:テトラフルオロホウ酸(HBF₄)水溶液にアニリンを溶解重合法:三極式定電流電解法

作用極:ITOガラス基板(1㎠)

キャパシタ構成両極:ポリアニリン電解重合膜電解液:イオン液体

1.5MLiFSI/EMI-TFSI(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)

◆ 電気二重層キャパシタ(EDLC)の容量が大きくなり二次電池容量に近づいている。◆ 負極新素材を背景に二次電池のLTO(チタン酸リチウム)電極等で高出力化が進んでいる。◆ 導電性高分子ポリアニリン(PANI)はp型導電性高分子として安定であることから, 高出力二次電池正極材料として研究されたが

実用面で多くの課題を残してきた。最近, 両極にポリアニリンを用いたキャパシタ(259F/g)が報告され*, キャパシタの負極材料としての可能性が示された。

⇒エネルギー容量は不純物準位におけるキャリア密度の変化, 放電開始電圧はフェルミレベルから不純物準位までの差と考えられる。

1991年リチウムイオン電池が世に出てから, 繰り返し充電が可能な二次電池の世界が変わった。それまでの鉛蓄電池・ニッケルカドミウム電池に比べ自己放電がなく長持ち, しかも軽くて小型化が可能となった。しかし, 出力・安全性・価格においてはそれまでの電池を超えるものではない。現在, 安価で出力が求められる用途には従来の水系二次電池や繰り返し寿命が求められる用途にはキャパシタが使用されている。当研究室ではキャパシタ並みの出力と水系電池並の安全性を同時に実現できる蓄電池の研究に取り組んでいます。

コンポジット化によりさらに高エネルギーに!

当研究室では導電性高分子膜及びイオン液体を使用した安全で高出力な蓄電技術の研究に取り組んでいます!

改良Hummer法によりグラフェンを合成、グラフェン存在下でポリアニリンを化学合成、コンポジット化によりさらに高機能電極へ

従来3C相当, 50Cの放電が可能※1Cは1時間放電率です

*Yongcheol Jo et al: JOUNAL OF Applied Polymer Sci., 131,40306(2014)

~ポリアニリン/ポリアニリンキャパシタ~

N

H

N

Hn

ポリアニリンの構造式

膜厚変化と容量変化の関係

充放電特性とサイクル特性

ITOガラス上に化学合成したポリアニリンをスピンコートし, 電極を作成し, サイクリックボルタンメトリー(CV)で評価を行った。作用極:ポリアニリン化学重合膜およびポリアニリン/グラフェンコンポジット電極対極, 作用極:Li金属 電解液:1.5M LiBF₄/EC-DMC(1:1wt%)

ポリアニリン電極

~疎水性イオン液体の合成~

250cycle後, 初期容量の約96%保持

イオン液体とは?

Green Solvents(グリーンソルベント)…低環境負荷, 難燃性, 再生利用可能

常温溶融塩(融点100℃以下)有機塩であるため, 無限の構造設計・機能制御が可能難燃性, 広い温度域において液体で安定

応用先キャパシタ溶媒(ポリアニリンキャパシタ等)ポンプの潤滑油セルロースを溶解

イオン液体(EMI-FSI)の合成スキーム

合成したイオン液体

化学重合の合成方法 ポリアニリン電極 ポリアニリン/グラフェンコンポジット電極