第11回・rc梁曲げせん断 - 京都大学ocwへ ようこそ …¼•張鉄筋比 pt=ast/bd= %...

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- 1 - 第 11 回・RC 梁曲げせん断 実験の目的 RCはりの基本的な 2 種類の破壊形式である、曲げ破壊、せん断破壊についての理解を深め、それら の挙動について比較検討し、設計法について学ぶ。 実験方法 0)実験直前に使用材料試験(鉄筋の引張試験、コンクリートシリンダーの圧縮、割裂試験)を行う。 1)試験体の側面に石膏を塗布したのち側面にひびわれ観察用に格子に鉛筆で線を引いておく。 (上下5cm、軸方向10cm) 2)試験体が正しく載荷装置にセットされているか確かめる。 3)測定器のゼロ、計算機プログラムを確かめる。 4)載荷を開始し、異常がないか確かめる。 5) 載荷に伴って試験体に生じるひびわれの進展を観察してマジックインキでなぞり、記録する。 (写真撮影) 6)梁の破壊(曲げ型では鉄筋降伏後、曲げスパンの上縁コンクリートが圧縮破壊する。せん断型で はせん断スパンに斜めせん断ひびわれが発生して破壊する。)まで載荷する。 計測事項 荷重(ロードセル)、はり中央のたわみ(ひずみゲージ式変位計)、曲げスパンでの上縁ひずみ(電 気式ダイヤルゲージ)、下縁ひずみ(電気式ダイヤルゲージ)である。 データの記録 静ひずみ測定器により各データを計測し、計算機に取り込む。 荷重‐たわみ曲線を計算機のデイスプレイ上に表す。 データは紙にプリントアウトされる。 実験結果報告の要領 添付する参考資料に基づき、下記の事項についての報告書を作成する。 (曲げ破壊型梁の実験) (1)実験結果の概要 ひび割れ図、写真を用いて、ひび割れ発生、進展状況、最終的な破壊に至るまでの経緯を説 明する。 (2)荷重‐中央たわみ曲線 グラフを作成する。 ひびわれ発生点、曲げ降伏点、最大耐力点をグラフ上に示す。 (3)モーメント‐曲率曲線 グラフを作成する。 検討項目 ひび割れ発生前の曲げ剛性実験値と計算値の比較 グラフ上に記入して比較する。 ひび割れ発生後の曲げ剛性実験値と計算値の比較 グラフ上に記入して比較する。 (4)曲げひびわれ発生荷重と曲率 実験値と計算値の比較

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Page 1: 第11回・RC梁曲げせん断 - 京都大学OCWへ ようこそ …¼•張鉄筋比 pt=Ast/bd= % (公称断面積) せん断補強筋 :なし 使用材料の力学的特性

- 1 -

第 11 回・RC 梁曲げせん断

実験の目的

RCはりの基本的な 2 種類の破壊形式である、曲げ破壊、せん断破壊についての理解を深め、それら

の挙動について比較検討し、設計法について学ぶ。

実験方法

0)実験直前に使用材料試験(鉄筋の引張試験、コンクリートシリンダーの圧縮、割裂試験)を行う。

1)試験体の側面に石膏を塗布したのち側面にひびわれ観察用に格子に鉛筆で線を引いておく。

(上下5cm、軸方向10cm)

2)試験体が正しく載荷装置にセットされているか確かめる。

3)測定器のゼロ、計算機プログラムを確かめる。

4)載荷を開始し、異常がないか確かめる。

5) 載荷に伴って試験体に生じるひびわれの進展を観察してマジックインキでなぞり、記録する。

(写真撮影)

6)梁の破壊(曲げ型では鉄筋降伏後、曲げスパンの上縁コンクリートが圧縮破壊する。せん断型で

はせん断スパンに斜めせん断ひびわれが発生して破壊する。)まで載荷する。

計測事項

荷重(ロードセル)、はり中央のたわみ(ひずみゲージ式変位計)、曲げスパンでの上縁ひずみ(電

気式ダイヤルゲージ)、下縁ひずみ(電気式ダイヤルゲージ)である。

データの記録

静ひずみ測定器により各データを計測し、計算機に取り込む。

荷重‐たわみ曲線を計算機のデイスプレイ上に表す。

データは紙にプリントアウトされる。

実験結果報告の要領

添付する参考資料に基づき、下記の事項についての報告書を作成する。

(曲げ破壊型梁の実験)

(1)実験結果の概要

ひび割れ図、写真を用いて、ひび割れ発生、進展状況、最終的な破壊に至るまでの経緯を説

明する。

(2)荷重‐中央たわみ曲線 グラフを作成する。

ひびわれ発生点、曲げ降伏点、最大耐力点をグラフ上に示す。

(3)モーメント‐曲率曲線 グラフを作成する。

検討項目

ひび割れ発生前の曲げ剛性実験値と計算値の比較 グラフ上に記入して比較する。

ひび割れ発生後の曲げ剛性実験値と計算値の比較 グラフ上に記入して比較する。

(4)曲げひびわれ発生荷重と曲率 実験値と計算値の比較

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(5)曲げ降伏モーメントと曲率 実験値と計算値の比較

(6)最大曲げモーメントと曲率 実験値と計算値の比較

(7)梁の塑性率

(せん断破壊型梁の実験)

(1)実験結果の概要

ひび割れ図、写真を用いて、ひび割れ発生、進展状況、最終的な破壊に至るまでの経緯を説

明する。

(2)荷重‐中央たわみ曲線

(3)せん断ひび割れ発生荷重 実験値と計算値の比較

(4)最大せん断強度 実験値と計算値の比較

(5)曲げ破壊型試験体との比較

試験体形状と配筋(曲げ破壊型試験体)

(せん断破壊型試験体は曲げ主筋を 2-D16 とし、せん断スパンにスターラップがない)

曲げ破壊型試験体の基本諸元と材料特性

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○ 曲げスパン = mm(曲げモーメント‐定域)

○ せん断スパン = mm(せん断力‐定域)

○ はりの断面寸法 はり全せい D= mm

はり有効せい d= mm

はり幅 b= mm

○ 曲げ補強筋(主鉄筋) 2‐D10 (SD295A;異形鉄筋、規格降伏点 295N/mm2以上)

鉄筋径 ㎜ 本 鉄筋断面積 Ast = 143 mm2(公称断面積)

引張鉄筋比 pt=Ast/bd= %

○ せん断補強筋 2φ6 @75(SR235;丸鋼、規格降伏点 235N/mm2以上)

鉄筋径 ㎜ 一組のせん断補強筋の断面積 Ash= 56 mm2

あばら筋の間隔 s= mm (135 ゚フックつきスターラップ)

せん断補強筋比 pw= Ash/bs= %

使用材料の力学的特性

○ 主鉄筋の降伏強度 σsy= 358 N/mm2

引張強度 σsu= 497 N/mm2

弾性係数 Es= 205000 N/mm2

○ せん断補強筋の降伏強度 σwy= N/mm2

○ 試験時の材令 日

○ シリンダーテストの結果 (シリンダーサイズ 径 長さ )

圧縮強度試験 N/mm2

N/mm2 平均 =fc N/mm2

N/mm2 }

割裂引張試験 N/mm2

N/mm2 平均 =fct N/mm2

N/mm2

1/3 fc 割線弾性係数 Ec= N/mm2

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せん断破壊型試験体の基本諸元と材料特性

○ 曲げスパン = mm(曲げモーメント‐定域)

○ せん断スパン = mm(せん断力‐定域)

○ はりの断面寸法 はり全せい D= mm

はり有効せい d= mm

はり幅 b= mm

○ 曲げ補強筋(主鉄筋) 2‐D16 (SD295A;異形鉄筋、規格降伏点 295 N/mm2以上)

鉄筋径 ㎜ 本 鉄筋断面積 Ast = 398 mm2

引張鉄筋比 pt=Ast/bd= % (公称断面積)

○ せん断補強筋 :なし

使用材料の力学的特性

○ 主鉄筋の降伏強度 σsy= 336 N/mm2

引張強度 σsu= 520 N/mm2

弾性係数 Es= 205000 N/mm2

○ せん断補強筋の降伏強度 σwy= N/mm2

○ 試験時の材齢 日

○ シリンダーテストの結果 (シリンダーサイズ 径 長さ )

圧縮強度試験 N/mm2

N/mm2 平均 =fc N/mm2

N/mm2

割裂引張試験 N/mm2

N/mm2 平均 =fct N/mm2

N/mm2

1/3 fc 割線弾性係数 Ec= N/mm2

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(1)曲げ破壊型はり試験に関する計算式

曲げひびわれモーメント-曲率 に関する計算値

〇曲げひびわれ発生時の断面応力分布は実際は右図(b)

に近い分布であるが、略算で計算値を求める場合には図

(c)の等価な線形弾性分布を仮定し、さらに鉄筋の存在

を無視する。

ここで は曲げ強度(Modulus of rupture)で、

と仮定する。

また、 と仮定する。

ここで は割裂引張強度である。

ひびわれ発生前のはりの中立軸位置と曲げ剛性の計算式

〇ひびわれ発生前のはりの中立軸位置 および曲げ剛性

ヤング係数比 、 : 圧縮縁より中立軸位置までの距離

ひびわれ発生後のはりの中立軸位置と曲げ剛性の計算式

曲げ降伏モーメント、曲率の計算方法

引張主鉄筋降伏時の応力分布は右図(b)に示すよ

うであるが簡単のために図(c)の如く中立軸以下

のコンクリート引張分担を無視し、中立軸より上の

圧縮応力分布を線形と仮定する。

d

x C

εc σc X

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軸力の釣り合いから

このときモーメントは

降伏時曲率は

曲げ終局モーメント、曲率、塑性率の計算方法 本実験では、はりの鉄筋降伏後に圧縮へりひずみ

が限界値 に到達して最大耐力となる。曲げ終

局時の断面応力分布は、右図(b)に示すようで

あるが簡単のために(c)のように、等価な矩形

応力分布を仮定する。略算では、コンクリートの

引張分担を無視し、図中のβ=0.85、曲げ圧縮限

界ひずみ =0.003 とする。

軸力の釣合いから

このときのモーメントは

終局時の曲率:

断面の曲率塑性率 :

(2)せん断破壊型はり試験に関する計算式

はりのせん断強度と曲げ強度

・曲げ降伏モーメントの予測値(略算式による場合)

・せん断強度の予測値(荒川式)(重力単位系)

せん断ひび割れ耐力

(kgf)

:寸法による補正係数 ( )

:コンクリート圧縮強度(kgf/cm2)

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終局せん断耐力

(kgf)

:引張鉄筋比(例えば、1%ならば、 =0.01)

:寸法による補正係数 =0.96( )

・ACI 式(SI 単位系)

(N)

(N)

:せん断スパン比

今回の実験では、

曲げ降伏時および最大曲げ強度時の曲率分布とたわみ算定

曲げ破壊した鉄筋コンクリート梁断面のモーメント‐曲率関係(M‐φ関係)を下図のように3つ

の線分で近似する。曲げひび割れモーメントと曲率( および )、曲げ降伏時モーメントと曲率

( および )、最大曲げ強度時モーメントと曲率( および )にはそれぞれ計算値を用いる。

理想化されたモーメント‐曲率関係

また、梁の曲げモーメント分布は下図のように表される。

梁の曲げモーメント分布

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これに対応する梁断面の曲率分布は、曲げ降伏時および最大曲げ強度時関して下図のように描ける。

曲げ降伏時の曲率分布

最大曲げ強度時の曲率分布

以上のような関係にモールの定理を適用し、曲げ降伏時および最大曲げ強度時の梁中央でのたわみを

計算せよ。また、得られた計算値を実験値と比較し、その差などについて考察せよ。

中立軸位置の推移

曲げ型試験体について、横軸に梁中央たわみ、縦軸に曲げモーメント一定区間における中立軸位置

をとった下図のようなグラフを実験結果に基づいて作成せよ。

中立軸位置の推移

ひび割れの進展状況と上図を比較し、中立軸位置の推移とひび割れの進展の関係について考察せよ。

せん断破壊の防止

せん断破壊した梁には、せん断補強筋が配置されていない。曲げ降伏時のせん断力を終局せん断耐

力が上回るようにすることによって曲げ降伏以前でのせん断破壊を防止するには、どれだけのせん断

補強筋を配置すればよいか計算せよ。ただし、せん断補強筋の降伏強度は、200N/mm2とする。