1.2 測量の分類 測量はいくつかの観点から分類される...

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1 測量学テキスト 2016 第 1 章 概説 1.1 測量の定義 測量とは,地表の自然および人工物の位置を求め, これを数値や図で表現する技術をいう.具体的には, 距離高度差角度などを測り,誤差を調整して,製 図等に必要な数値を算出し,図面設計書を作成した り,またこれを利用して面積体積を求めたりする一 連のデータ処理技術である. そして,測量に関する理論,方法およびそれらの応 用を研究する科学が測量学である. 字句的にみると,「」も「」も「はかる」と読み, 同義語に「」などがある.科学技術の分野で「はか る」という行為は,何か対象となる物理量を,ある単 位を基準として相対的に把握することである.機器を 用いて,「はかる」行為を「測定」,「計測」,「計量」な どと表現するが,これらは主として単一あるいは部分 的に「はかる」ことである.これに対して,測量は上 述のようにいくつかの量を測り,処理する一連の行為 であり,全体的・システム的に「はかる」行為である といえる. 熟語では「観測」という言葉が連想される.これは, 自然現象の推移・変化を観察・測定することで,天文 学や気象学などの用語であるが,個々の測量の経過の なかで,「角を観測する」などと表現することもある. この場合,測定と観測は同じ意味で用いられている. 測定値と観測値などの用語が混在している著書も見か けるが,本書では,区別する必要のない場合は,観測 は使わずに,測定を用いることとする. さて,測量の対象が地物であることは,上の定義で も述べており,我が国の「測量法」にも土地に限定し ている.しかし,天文観測により地球上の各地点の位 (緯度経度)を求めるもの,あるいは地磁気,重力 等を対象とした地球物理学的な測定,河川・海洋にお ける測定なども測量の範囲に含める場合もある. また,地球の形状と大きさの測定を対象とする測地 と深い関連をもっており,測量を測地学の一部とす る考えもある.さらに,測量の成果を地図として表現 することから,広義の地図学に測量を含ませる場合も ある. 最近では,航空機や人工衛星などに搭載されたセン サーによって,地表物体や空間・流体などの諸現象を 電磁波特性を利用して,広域かつ間接的に調査するモートセンシングも測量に含まれる. 1.2 測量の分類 測量はいくつかの観点から分類されるが,主なもの を挙げれば図 1-1 に示すようなものがある. (a) 区域の大小による分類 ① 大地測量 ② 平面測量 (b) 法律による分類 ① 基本測量 ② 公共測量 ① 巻尺測量 ① 地形測量 三角測量 ② 平板測量 ② 地積測量 ① 基準点測量 多角測量 ③ 土木測量 水準測量 ④ レベル測量 ④ 建築測量 地形測量 ⑤ コンパス測量 ⑤ 森林測量 ② 細部測量 地積測量 ⑥ 写真測量 ⑥ 鉱山測量 水路測量 ③ 応用測量 河川測量 (d) 目的による分類 (e) 内容による分類 地球の形状を考慮して行う広範囲の測量 地球の表面を平面とみなす小範囲の測量 すべての測量の基礎となるもので国土地理院の行う測量 基本測量以外の測量のうち、費用を国または公共団体が負担ない し補助するもの トランシット測量 (c) 使用機器による分類 図 1-1 測量の分類 1.3 測量に用いられる単位 測量の基本的な測定は距離である.角度の単位 は, 360 度法[単位記号:°]が一般に用いられる. rad(ジアン)grad(グラード)も用いられることがあるが, これらの関係は以下の通りである. 1°= 180 π rad360°=400 grad 距離の単位は,メートル法[単位記号:m]を用いる のが一般的で,国際的に SI 単位系の基本単位とされて いる.1m は,1790 年代に地球の北極から南極までの 子午線長の 1,000 万分の 1 と定義された.これを現示 するためにメートル原器が作られたが,測定に種々の 誤差が避けられないので, 1900 年にこの原器が示す長 さを 1m と定義し,ガス状のクリプトン 86(Kr 86 )のだすオ レンジレッドのスペクトル線の波長の 1,650,763.73 と決められた.しかし,電磁波の測定精度が向上し, 1983 年に以下のように再定義された. 1m=光が 1 299,792,458 秒の時間に真空を進む距離 1.4 地球の形状と緯度・経度 地球の形状は,ジオイド面できめられる.海につい ては平均海面,陸については,無数に運河を掘って海 水を導いたと仮定してできる面をジオイド面という. このジオイド面は重力の等ポテンシャル面である.ジ オイドは重力場に直交し,重力場の方向は地球内部の 密度の不均一さのため場所によって不規則である.そ のため,ジオイド面は,物理的な地表面ほどではない が, 図 1-2 に示されるような不規則な形状をしており, 「西洋梨型」,「おにぎり型」,「ジャガイモ型」などと 呼ばれている.地球の形状を数学的に表現するには,

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測量学テキスト 2016

第 1 章 概説

1.1 測量の定義

測量とは,地表の自然および人工物の位置を求め,

これを数値や図で表現する技術をいう.具体的には,

距離,高度差,角度などを測り,誤差を調整して,製

図等に必要な数値を算出し,図面や設計書を作成した

り,またこれを利用して面積や体積を求めたりする一

連のデータ処理技術である. そして,測量に関する理論,方法およびそれらの応

用を研究する科学が測量学である. 字句的にみると,「測」も「量」も「はかる」と読み,

同義語に「計」などがある.科学技術の分野で「はか

る」という行為は,何か対象となる物理量を,ある単

位を基準として相対的に把握することである.機器を

用いて,「はかる」行為を「測定」,「計測」,「計量」な

どと表現するが,これらは主として単一あるいは部分

的に「はかる」ことである.これに対して,測量は上

述のようにいくつかの量を測り,処理する一連の行為

であり,全体的・システム的に「はかる」行為である

といえる. 熟語では「観測」という言葉が連想される.これは,

自然現象の推移・変化を観察・測定することで,天文

学や気象学などの用語であるが,個々の測量の経過の

なかで,「角を観測する」などと表現することもある.

この場合,測定と観測は同じ意味で用いられている.

測定値と観測値などの用語が混在している著書も見か

けるが,本書では,区別する必要のない場合は,観測

は使わずに,測定を用いることとする. さて,測量の対象が地物であることは,上の定義で

も述べており,我が国の「測量法」にも土地に限定し

ている.しかし,天文観測により地球上の各地点の位

置(緯度,経度)を求めるもの,あるいは地磁気,重力

等を対象とした地球物理学的な測定,河川・海洋にお

ける測定なども測量の範囲に含める場合もある. また,地球の形状と大きさの測定を対象とする測地

学と深い関連をもっており,測量を測地学の一部とす

る考えもある.さらに,測量の成果を地図として表現

することから,広義の地図学に測量を含ませる場合も

ある. 近では,航空機や人工衛星などに搭載されたセン

サーによって,地表物体や空間・流体などの諸現象を

電磁波特性を利用して,広域かつ間接的に調査するリ

モートセンシングも測量に含まれる.

1.2 測量の分類

測量はいくつかの観点から分類されるが,主なもの

を挙げれば図 1-1 に示すようなものがある.

(a) 区域の大小による分類① 大地測量 :② 平面測量 :

(b) 法律による分類① 基本測量 :② 公共測量 :

① 巻尺測量 ① 地形測量 三角測量② 平板測量 ② 地積測量 ① 基準点測量 多角測量③ ③ 土木測量 水準測量④ レベル測量 ④ 建築測量 地形測量⑤ コンパス測量 ⑤ 森林測量 ② 細部測量 地積測量⑥ 写真測量 ⑥ 鉱山測量 水路測量

: :③ 応用測量 河川測量

(d) 目的による分類 (e) 内容による分類

地球の形状を考慮して行う広範囲の測量地球の表面を平面とみなす小範囲の測量

すべての測量の基礎となるもので国土地理院の行う測量

基本測量以外の測量のうち、費用を国または公共団体が負担ないし補助するもの

トランシット測量

(c) 使用機器による分類

図 1-1 測量の分類

1.3 測量に用いられる単位

測量の基本的な測定は角と距離である.角度の単位

は,360 度法[単位記号:°]が一般に用いられる.rad(ラ

ジアン)や grad(グラード)も用いられることがあるが,

これらの関係は以下の通りである.

1°=180

π rad,360°=400 grad

距離の単位は,メートル法[単位記号:m]を用いる

のが一般的で,国際的に SI 単位系の基本単位とされて

いる.1m は,1790 年代に地球の北極から南極までの

子午線長の 1,000 万分の 1 と定義された.これを現示

するためにメートル原器が作られたが,測定に種々の

誤差が避けられないので,1900 年にこの原器が示す長

さを 1m と定義し,ガス状のクリプトン 86(Kr86)のだすオ

レンジレッドのスペクトル線の波長の 1,650,763.73 倍

と決められた.しかし,電磁波の測定精度が向上し,

1983 年に以下のように再定義された.

1m=光が1

299,792,458秒の時間に真空を進む距離

1.4 地球の形状と緯度・経度

地球の形状は,ジオイド面できめられる.海につい

ては平均海面,陸については,無数に運河を掘って海

水を導いたと仮定してできる面をジオイド面という.

このジオイド面は重力の等ポテンシャル面である.ジ

オイドは重力場に直交し,重力場の方向は地球内部の

密度の不均一さのため場所によって不規則である.そ

のため,ジオイド面は,物理的な地表面ほどではない

が,図 1-2 に示されるような不規則な形状をしており,

「西洋梨型」,「おにぎり型」,「ジャガイモ型」などと

呼ばれている.地球の形状を数学的に表現するには,

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ジオイド面に近い回転楕円体に近似し,これを基準楕

円体と呼んでいる.基準楕円体は,図 1-3 のように長

半径 aと短半径 bによって表現でき,これらの値は様々

な観測が行われ,表 1-1 のように逐次新しい値が計算

されてきた.我が国では,測地基準系 1980(GRS80)の

値が採用されている.

もし,地球を球で近似するときには,地球の半径と

して幾何平均の 3 2a b ≒6,370km とする.

地表のある点 P の経度は,グリニッジを通る子午線

面とその点を通る子午線面のなす角 λ によって定義さ

れる.グリニッジから東回りを正の方向として測る.

正の経度を東経,負の経度を西経という.

一方,ある点 P の緯度は,その点から子午線に下し

た垂線の延長が赤道面となす角 φによって定義される.

赤道から北を正の緯度(北緯),南を負の緯度(南緯)とい

う.

1.5 距離と角度および地図

地表の 2 点 A,B は,一般に図 1-4 のような位置関係

にある.これらを基準楕円体面状に正投影した点 A1,B1

の弧長 S は球面距離と呼ばれる.この長さがあまり長

くないか,またはそれほど精密な結果を必要としない

場合には投影面を水平面とすることが出来る.このと

き,投影点 A2,B2を結ぶ距離 s は平面上の直線となり,

これを平面距離または水平距離という.

一方,測量において主として測定される角は図1-5

に示す水平角αと鉛直角βである.

基準楕円体面上の形を平面上に投影し地図を作る場

合,いかなる投影法を採用しても完全な相似形を得る

ことは不可能である.このため,地図の目的に応じた

様々な投影法が考案されている.我が国では,日本を

19 の区域に分け,各々に平面直角座標系を設定してこ

れを使用しているが,この場合の投影法として横軸等

角円筒図法の 1 つであるガウスクルーガー法が採用さ

れている.

ある地点から他の地点への方向を表す場合,基準と

する方向の違いによって,方位角と方向角の 2 つが使

われる.方位角は北を基準として時計回りに測った角

であり,北以外の任意の方向を基準として測った角を

方向角という.

ところで,通常地球上では真の子午線と磁針の示す

方向は一致しない.真の子午線の方向は真北と呼ばれ,

磁針の指す方向は磁北と呼ばれる.また,一般に地図

は上方を北にするよう作成されるが,この北を平面直

図 1-2 地球の形状とジオイド 図 1-3 基準楕円体

表 1-1 主な基準楕円体の諸元

楕円体の種類 年代 赤道半径 a(m) 扁 平 率 の 逆 数

(1/f)

ベッセル楕円体 1841 6,377,397.155 299.152813 クラーク 〃 1880 6,378,249.145 293.4663 ヘルマート 〃 1907 6,378,200 298.3 ヘイフォード 〃 1909 6,378,388 297.0 クラソフスキー〃 1943 6,378,245 298.3 測 地 基 準 系1980(GRS80) 〃 1980 6,378,137 298.257222101

注) f=(a-b)/a すなわち,短半径 b は a(1-f).

図 1-4 距離 図 1-5 角

角座標系の X 方向とすれば真北や磁北と異なり,これ

は座標北と呼ばれる.なお,真北と磁北の偏りを磁針

の偏差と呼ぶが,現在日本では,5°~9°程度西に偏

っている.

次に,方位とは子午線の北または南を基準として,

これから東または西方向に測った 90°より小さい水平

角の角度をいい,数値の頭に基準方向を示す N(北)また

は S(南),末尾に測った方向を示す E(東)または W(西)

の記号をつける.方位角と方位には表 1-2 に示すよう

な関係がある.

表 1-2 方位角と方位

方位角(α) 方位0°~90° NαE90°~180° S(180°-α)E180°~270° S(α-180°)W270°~360° N(360°-α)W

図 1-6 方位角,方向角および北

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1.6 我が国の測量の基準

我が国の位置の基準として,以下の日本経緯度原点が

設置されている.

地点:東京都港区麻布台二丁目十八番一地内

日本経緯度原点金属標の十字の交点

原点数値

経度:東経 139 度 44 分 28 秒 8869 緯度:北緯 35 度 39 分 29 秒 1572 原点方位角※ 32 度 20 分 46 秒 209

※【原点方位角】日本経緯度原点において真北を基準として

右回りに測定した茨城県つくば市北郷1番地内つくば超長基

線電波干渉計観測点金属標の十字の交点の方位角と定められ

ている.

また,日本水準原点は以下の地点に設置されており,

その高さは以下のようである.

地点:東京都千代田区永田町一丁目一番地内

水準点標石の水晶板の零分画線の中点

原点数値:東京湾平均海面上 24.3900m

つまり,この水準原点の下 24.3900m のところにジオ

イド面があると規定していることになる.

ところで,河川や港湾などの測量では,その地方の

干潮面を利用する方が便利であるので,表 1-3 のよう

な各地に適合した特殊な基準面が設置されている.右

欄の数値は東京湾平均海面(Tokyo Peil:T.P.)との差であ

る.

経緯度原点と水準原点を基準にして,三角点や水準

点などの国家基準点が全国各地に設置されている.国

土地理院が管理する三角点は,一等,二等,三等,四

等の種類に区分されており,全国で約 10 万点,水準点

には,一等水準点と二等水準点の 2 つがあり,主要な

道路に沿って,ほぼ 2km の間隔で設置されており,約

2 万点ある.

表 1-3 特殊基準面

利根川(Y.P.) -0.8402m 荒川,多摩川(Arakawa Peil : A.P.) -1.1344m 大阪湾 低潮位(Osaka Peil : O.P.),淀川 -1.3000m

1.7 点の位置の求め方

測量を行う際に地表に測点を設置するが,この測点

は基準・目標となる点で,木ぐい,石ぐい,コンクリ

ートぐいなどを用いる.アスファルトなどの路面には,

鋲を用いたり,ペイントでマーキングをして測点とす

る.そして,測点と測点を結んだ線を測線といい,測

線の連結したものをトラバースという.

さて,同一平面上の 2 つの測点 A,B から新しい測

点 C を求めるためには,図 1-7 に示すような方法があ

る.(a)は AC および BC を測る三辺測量である.(b)は

(a) (b) (c) (d)

図 1-7 点の位置の求め方

AB∟CD となる CD および AD または DB を測るオフセ

ット測量(あるいは水準測量)である.(c)は AC と∠CAB

を測るトラバース測量(あるいはスタジア測量)である.

(d)は∠BAC および∠ABC を測る三角測量である.

3 次元における点の位置の求め方を,人工衛星を利

用した測量技術である GPS(Global Positioning System)

で説明しよう.

衛星は高度 2 万 km で傾斜角 55°の 6 つの異なった軌

道上を 3 個ずつ周回する.各衛星は,軌道情報や時刻

信号の電波を地上に送る.地上ではこの電波を受信す

るが,同時刻における 3 つの衛星の軌道上の位置から

地上の観測地点の距離が即時計算される.4 つの点で

形成される三角錐の 6 つの辺長が確定し,位置関係が

決定する.原理的には,3 つの衛星で位置が決定する

が,実際には精度を上げるためもう 1 つの衛星を加え,

合計 4 つの衛星から電波を受信する.GPS は地表の静

的な位置を測定するだけでなく,動く船舶,車両,航

空機の位置や航法などに応用されている.

図 1-8 GPSによる位置の測定

1.8 測量の誤差と精度

一般に,物理量を測定する場合,どんなに精巧な器

械器具を用い,どんなに熟練しようとも必ず測定値に

は以下のような誤差が伴う.

① 過誤(過失):過誤とは,測定者の不注意によって

生ずる誤差である.目盛りの誤読や記帳,計算の

誤りであり,これは複数の人により十分注意し,

計算をくり返すなどにより発見,除去できる.

② 定誤差:定誤差は,原因が明らかで,ある条件の

もとでは常に一定の質と量の誤差を生じるもので

ある.定誤差は,個人的なもの,器械的なもの,

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物理的なものがあり,その原因と状態を調べるこ

とにより理論的に取り除くことが可能である.例

えば,温度変化による測尺の伸び縮み,目盛りの

不正,視準軸の不備に起因するものなどで,計算

や測定方法の工夫によって除去できる.

③ 偶然誤差:偶然誤差は,原因が明らかでなく,定

誤差や過誤を取り除いても,なお残る小さな誤差

で,その誤差の符号や大きさがランダムであるも

のをいう.これを全く無くすることはできない.

誤差理論で用いられる誤差という用語は,特に断ら

ない限り偶然誤差を意味し,過誤や定誤差が取り除か

れた値を単に測定値と呼ぶことにすれば

誤差=真の値-測定値

である.

一方,精度は,誤差とは逆の表現であり,相対誤差

とも呼ばれる.例えば,1m の長さを測り,2mm の誤

差がでたとすると,精度は 2/1,000=1/500 のように

分子が 1 の分数で表した値で示す.したがって,誤差

が明らかになれば精度は自ら定まるが,現実には真の

値は知り得ないので,厳密には誤差や精度はその近似

値ということになる.

1.9 測量の工程

誤差を出来る限り少なくし,目的を十分満たした結

果を得るためには,次の点に配慮して適切な器械や方

法を選定し,測量を実施することが大切である.

① 測量の目的および精度

② 土地の広さおよび状況

③ 所要時間および経費 など

そして,測量の工程は一般に,図 1-9 のような順序で

行われる.踏査・選点とは測定に先立ち,あらかじめ測

量区域内を歩いて,その地勢に応じ, 小の労力・費用

および時間で測量を終わらせるために,測点場所や測量

の方法などをおおよそ決定する作業をいう.

また,作業を行う場所によって,外業(野外で測定す

る作業)と内業(室内で製図に必要な種々の計算を行い,

図面や設計書などを作る作業)に分けられる.

図 1-9 測量の工程

終的な測量の結果は,①器械の精度,②測定の精

度,③計算の精度,④図解の精度 などに影響される.

したがって,器械の性能を十分に知り,定誤差が消去

されるような測定を行うことが必要である.そして,

計算に測定値の有効数字をはるかに超えた桁数を取っ

ても無意味である.さらに,図示する場合に,例えば

0.1mm の大きさが図化の限度とすると,縮尺 1/1,000

では実長 10cm の大きさを示すことが出来るが,それ

以下のものは示すことが出来ない.このように,それ

ぞれの精度を考慮して測量することが肝要である.

建設の分野では,以上のような一般的な地物の測量

のほかに,工事実施に並行して,その基準となる点・

面・高さを現場に標示する,いわゆる工事測量(または

測設ともいう)が行われる.

第2章 測量の基本

2.1 角の測定

(1) 概要

測角は測距とともに測量における も基本的な事項

である.角を精密に測定するためには,経緯儀(トラン

シットやセオドライト)が用いられる.トランシットと

セオドライトの構造はほとんど同じであるが,前者は

角度の読み取り装置がバーニア読み,後者はマイクロ

読みとなっているものが多い.

トランシット(セオドライト)は,主として水平角や

鉛直角を精密に測定する器械であるが,スタジア線に

よる距離の測定や高低差の測定も行うことができる

(2.5参照)

主要構造は,図 2-1 に示すように大別して上部と下

部に分けられる.上部は視準線をもつ望遠鏡,これを

回転させる水平軸と鉛直軸およびこの角軸の回転角を

測るための目盛盤が付いている.

下部は,器械本体の傾きを示す気泡管とこの傾きを

調整する整準台および底盤からなっている.望遠鏡は

倍率 25~30 倍程度のものが多い.望遠鏡の接眼レンズ

を覗くと,視野には図 2-2 に示すような目標の位置を

正確に視準するための十字線が設けられている.目標

物の像の焦点と十字線の焦点は,それぞれ別の合焦ね

じによってあわせるようになっている.また,各回転

軸には締め付けねじと微動ねじが対になって備えられ

ている.すなわち,大きな回転でおおよその位置を決

めるときに締め付けねじを使い,小さな回転で正確な

視準位置を決めるときに,微動ねじを使うのである.

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図 2-1 トランシット(セオドライト)

図 2-2 各種の十字線

図 2-3 バーニア読み

図 2-4 マイクロ読み

目盛りの読み取り装置は,上述のように

①バーニア読み方式

②マイクロ読み方式

の 2 通りがある.図 2-3 はバーニア読み方式の例で,

主尺と副尺(これをバーニアという)からなる.この場合

の主尺の 小目盛は 20′であるが,バーニアにより

20″まで読み取ることができる.図 2-4 はマイクロ読

みの目盛視野の例である.

測角は,視準線の回転に応じて目盛りを進める上部

運動と,目盛りを止める下部運動によって行う.望遠

鏡が鉛直目盛盤の右側にあるとき正位,望遠鏡を 180°

回転して鉛直目盛盤の左に位置するとき反位という.

正位と反位による測定をすれば,器械の調整の不完全

などによる定誤差が消去できる.

(2) 測角の方法

a. 水平角の測定

水平角の測定方法には,以下に示す単測法,倍角法,

方向法および全角法(角観測法ともいう)がある.

① 単測法:図 2-5 において,測点 O に器械の鉛直軸

を通る線がくるように配置し(この操作を求心とい

う),器機を水平にする(この操作を整準と呼ぶ).

下部運動により望遠鏡の視準線を A 点に合わせ,

目盛りを読み取る(始読).次に,上部運動により B

点を視準し,目盛りを読み取る(終読).これを正位

(時計回り)の測定いう.次に,望遠鏡を水平軸回り

に反転して,上部運動により B 点を視準し,B 点

から A 点に測角する.これを反位(反時計回り)の

測定という.正反あわせて一対回といい,各々の

測定値を平均する.

図 2-5 単測法

② 倍角法:図 2-6 のように,上盤を固定して下部運

動により A 点を視準し,このときの目盛 a0を読み

取る.次に,上部運動により B 点を視準し,目盛

a1を読み取る.上盤を締めて再び A 点を視準する.

そして,下盤を締めて再び B 点を視準すると,2

回分狭角(2 倍角という)が累加されたことになる.

このようにして,2,3,4…n 倍角を測定する.倍角法

は n 回分の狭角を累加させ,その結果から得られ

た測定値を n で割り,読み取り精度を高めようと

するものである.

図 2-6 倍角法

③ 方向法:図 2-7のようにまず,OA の方向を基準と

して,時計回り(正)に AB,BC,CD を測ったら,

OD の方向を基準として,反時計回り(反)に DC,

CB,BA を測る.これを 1 対回とする.1 点に多く

角が集まるときに使われ,3 対回以上行う.

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図 2-7 方向法 図 2-8 全角法

④ 全角法:図 2-8のように,2 つの視準方向により作

られる角の全てを個別に正位と反位で測ったもの

を1対回とする.測定方向が n であるとき,角の

総数 N は,N=n(n-1)/2 となる.この方法は, も

精度の良い方法で,一等および二等三角点やダム

サイト変位測定などに用いられる.

許容誤差は,表 2-1 のように定められている.測定

差とは各対回の差(較差)の 大値と 小値の差をいい,

倍角差とは正位と反位の測定値の和の 大値と 小値

の差である.

b. 鉛直角の測定

天頂よりの角(天頂角)を測る場合と水平面よりの角

(高度角;見上げる角を仰角,見下ろす角を俯角という)

を測る場合がある.正位と反位の測定を行い,その差

が制限以内であれば,その平均値をとる.鉛直角は,

水平を基準とするため器機の十分な調整が必要である.

表 2-1 基準・補助多角測量の各測定の制限

測量種別 測器種 測 定

倍 角

鉛 直 角

定数

適用

2 秒読 15″ 30″ 20″ 12 秒読 30″ 42″ 42″

基準多角測量

補助多角測量 20 秒読 50″ 60″ 60″

路線狭角,

三角形,三

角鎖,多角

交 会 点 に

適用

測かん(桿) 1 秒読 6″ 8″ - 特例

直交基準法 12 秒読 24″ 36″ 42″ 特例

図 2-9 鉛直角

2.2 距離の測定

(1) 概要

測量において距離と言えば,一般的に水平距離を指

す.起伏の多い長い距離を精密に測定することは,大

変困難であったが,近年のエレクトロニクスの進歩に

よって電磁波測距儀が開発され,高精度で求めること

が可能になってきた.しかし,従来から使用されてい

る巻尺は,簡単な調査やあまり精度を要しない測距の

道具として,現在でも手軽で便利なものである.

測距の許容精度は土地の状態・目的などによって異

なるが,地形と土地利用状態によって区別すると概略

次のようである.

山林・森林 1/500~1/1,000

平坦地・農耕地 1/2,500~1/5,000

市街地 1/1,000~1/5,000

一方,使用器機によって期待できる精度は異なるが,

以下のようである.

① 布巻尺(精度 1/500~1/2,000):麻布に銅の細い針金を

織り込んだ帯材(幅 15mm 位)に 5mm 単位の目盛り

を施したもので,全長 20~50m のものが多い.

② ガラス繊維尺(精度 1/1,000~1/5,000):3 万本以上の

ガラス繊維を平行に並べて外側を塩化ビニールで

被覆した帯材に目盛りを施したもので,耐水性に

優れている.

③ 鋼巻尺(精度 1/5,000~1/100,000):幅 10~50mm,長

さ 10~50m の帯状の鋼面に mm 単位の目盛りが刻

まれている.

④ インバー巻尺(精度 1/100,000~1/1,000,000):特殊ニ

ッケル鋼で作られたもので,熱膨張係数が鋼の約

1/10 程度小さく帯状または線状として精密な基準

測量に用いられる.

⑤ 光波測距儀(誤差 10mm+D×(1~2)×10-6,D は測定距

離):1 点から強度変調した光を送り,発射光と他

地点で反射して返ってくる反射光との位相差を測

定し,距離を算出する器械である.

⑥ 電波測距儀(誤差 30mm+D×(3~4)×10-6,D は測定距

離):測定距離の両端に主局と従局を設置し,主局

においてマイクロ波を発受信し,従局で再発射し,

位相差を測定し,距離を算出する器械である.光

波測距儀と電波測距儀を総称して電磁波測距儀と

いう.

以上のほか,過去には鉄製のチェーン,竹尺,測量

縄などが用いられていた.

図 2-10 巻尺 図 2-11 光波測距計と反射プリズム

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図 2-12 測距のための補助器具

(2) 巻尺による距離測定

一般の巻尺によって距離を測定するには,前手,後

手,記帳手およびポール手の 4~5 名を要する.前手は

巻尺の一端を持ち,後手に先だって前進する者,後手

は巻尺の他端を持ち前手に追従する者,ポール手は各

測点上にポールを立てる係,記帳手は得られた結果を

野帳(Field Note)に記入する係である.

a. 平坦地の測距法

平坦地にある A,B 間の距離の測定は以下のように行

われる.普通,前手と後手が交代した往復 2 回の測定

値の相加平均をとるのが原則である.

巻尺の長さを 1 測長といい,測点間の距離によって,

次のようにして測定を行う.

① 測点間の距離が 1 測長以内の場合:後手は前手と

呼応して巻尺に屈曲がないように数回波打たせて

十分に張り,A 点上の巻尺の目盛り(巻尺の零また

はその付近)と B 点上の目盛りを読み,記帳してそ

の差を計算する.

② 測点間の距離が 1 測長以上の場合:測点の両端に

ポールを立てておき,前手はポールと測量ピンを

持ち,直線に沿ってほぼ巻尺の長さだけ前進し,

そこにポールを立てる.記帳手は図 2-13 のように,

このポールの鉛直を正しつつ正確に見通し線内に

誘導する.ポールを正しく見通し線内にいれたな

ら,正しく巻尺の先端部に測量ピン(あるいは指標

板)を置く.巻尺を 1 回張るごとに前手は測量ピン

等を置いて進み,後手はこれにしたがって進んで,

測量ピン等の地点で次の区間の測定を行う.この

操作をくり返す.

図 2-13 測距法

b. 傾斜地の測距法

傾斜地での水平距離の測り方には,次の方法がある.

一般に,降測法の方が精度は高い.

① 降測法:図 2-14(a)に示すように,傾斜地を降りる

方向に測る方法で,後手は B に巻尺の零を合わせ

前手はポールに添えた巻尺を水平に張り,その先

端から下げ降りを地面に下ろして印を付けて,こ

の点(D)を次の操作の後点として以上の操作をく

り返す.

② 登測法:図 2-14(b)に示すように,前手が巻尺の零

を地上に接触させて,後手は巻尺を水平に張り,

後点に鉛直に立てたポールを切る巻尺の目盛りを

読む.

図 2-14(a) 降測法 図 2-14(b) 登測法

c. 精密な測距法

鋼巻尺を用いて 1/10,000 以上の精度を得ることがで

きるが,以下にその方法について述べる(図 2-15).

図 2-15 精密な測距法

巻尺の全長より少し短い区間 AB を大体等しい小区

間に分割し,各分点に支杭を千鳥の形に打ち,その内

側に巻尺の幅より少し長い釘を等しい高さにそろえて

打ち,これに巻尺を保持させる.点 A,B には測点杭

と呼ばれる杭を打ち,その頭部をそろえて水平に切り

落とし,上部に厚紙などを貼り,真中に読み取り線を

引いておく.巻尺の両端には張力計(スプリングバラン

ス)を通して張力が働くようにし,中間の 2 点に巻尺用

温度計を掛ける.A 点の後手と B 点の前手は同時に,

なるべく所定の張力(ふつう 10kgf)で引っ張る.合図に

より同時に A 点(始読)と B 点(終読)の読みと温度およ

び張力を記録する.両端の読みは 0.1mm までを読み取

る.測定は偶数回行い,個人誤差を消去するために毎

回各々の読み取り係を交替する.

また,各測定値は以下に示す補正を施したのち平均

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する.

①温度補正

温度補正量 Ct=+α(t-t0)L

ここに,α:熱膨張係数(≒1.2×10-5)

t :測定時の温度(℃)

t0:標準温度(℃)

L :測定距離(m)

②張力補正

張力補正量 CP=0(P- P ) L

AE+

ここに,P :測定張力(kgf)

P0:標準張力(kgf)

A :巻尺の断面積(cm2)

E :鋼の弾性係数(≒2.1×106kgf/cm2)

③たるみ補正

たるみ補正量 CS=

2 2

2d L

24Pw

ここに,w :単位長さ当たりの重さ

d :支点間の距離(m)

④特性値補正

特性値補正量 CC= Lsδ

+

ここに,s :巻尺の全長(m)

δ:特性値(m)

⑤傾斜補正

傾斜補正量 Cg≒

2 2

2h h L2L 2L

− = −

ここに,h :高低差(m)

⑥標高補正

標高補正量 Ch≒H LR

ここに,H :平均標高(m)

R :地球の半径(≒6,370×103m)

【距離の補正に関する例題】

点 A から点 B まで,一様な傾斜の道路上で 50m 鋼巻

尺による測距を行い,斜面に沿った測定値として L=

672.635m を得た.測定中の温度 t=24℃,張力 P=15kgf,

高低差 h=12.340m であった.また,鋼巻尺の特性値

δ=-8.2mm,熱膨張係数 α=1.2×10-5 / ℃,弾性係数

E=2.1×106kgf/cm2,単位長さ当たりの重さ w=0.0485kgf/m,

単位重量は 0.00785kgf/cm3,標準温度 t0=15℃,標準張

力 P0=10kgf であるとするとき測定値を補正せよ.

【解】

まず,温度補正量を計算すると

Ct=+α(t-t0)L=1.2×10-5 ×9×672.635≒0.073

次に,張力補正量を計算すると

CP=0(P- P ) L

AE+

=5×672.635/(0.000485/0.00785×2.1×106)

≒0.026

したがって,温度・張力補正を施した後の長さ L1は

L1=672.635+0.073+0.026=672.734m

次に,特性値の補正を行った後の長さ L2は

CC= Lsδ

+ =-0.0082×672.734/50=-0.110

だから

L2=672.734-0.110=672.624 m

となり,この値を用いて傾斜補正を行った後の長さ L3

L3=672.624-(12.340)2/(2×672.624)=672.511 m

となる.

【問題】

点 A から点 B まで,一様な傾斜の道路上で 30m 鋼巻

尺(+0.005)による測距を行い,斜面に沿った測定値とし

て L=365.138m を得た.テキスト(P8)の例題と同じ条

件の下に測定値を補正せよ.

2.3 角と距離の同時測定

(1)平板測量

a.概要

平板測器は,図 2-16 に示すようなもので,測点上に

図面を設置し,任意の方向の測線,すなわち角を図面に

描きとることができる.距離は巻尺や光波測距器などで

測定し,図面の縮尺に直して実物の形に対応する相似形

を得る.平板は,上面が図紙を貼るように平らになって

おり,裏面の金具に整準ねじの付いた三脚が取り付けら

れる.アリダードは,両端に目標の方向を視準するため

の金属製の前・後視板,中央に気泡管(水準器)および側

面に定規が備えられている.

平板を据え付ける際,次の 3 条件を満足させなければ

ならない.

①整準:図 2-17 のように,平板を測点上に置き,三脚

および整準ねじによってアリダードの水準器の気泡を

互いに直角の方向で常に中央にくるようにする.

②求心(致心):求心器と下げ振りによって,地上の測点

とそれに対応する図面上の点を同一鉛直線上にあるよ

うにする.

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③標定(定位):図面に描かれたすべての線が,これに対

応する実際の線と同じ方向になるように平板を向ける.

これらの操作を一通り行って,3 条件を満足させたつ

もりでも,どれかがくるうことが多く,幾度かくり返し

て 3 条件を満足させる.

平板測量は,器材も簡素で軽量のため土木・建築技術

者が手軽に利用できるもので,大縮尺(1/200~1/500)の局

地的な地図を作成するのに適している.

b.測定法

平板測量には,放射法,道線法および交会法等がある.

放射法は,図 2-18 に示すように,O 点より各測点を

視準するとともに,各測点までの距離を測定し,図上に

a,b,c,d,e を描く方法である.

道線法は,図 2-19 に示すように,まず A 点に平板を

据え(整準・求心),前方を視準し,測長し,図上に ab を

描く.前進して,B 点に平板を据え(整準・求心),A 点を

視準し,ab 上にあることを確かめて(標定),前方 C を視

準して,測長し,図上に c を描く.以下同様にして前進

していく.

交会法には,前方交会法,側方交会法,後方交会法の

3 種類があるが,後述する.

(2)トータルステーション

トータルステーションは,光波測距儀と電子式セオドラ

イトとを単一器械として組み込んだ装置であり,機器の

歴史的発展経緯から電子式タキオメータともいう.測角・

測距の測定値がデジタル表示・記録処理することができ,

大幅に作業の省力化や能率化が可能となっている.測

角・測距は,本体から見える求点に反射鏡を置いて測定

を行い,反射鏡までの距離,基準方向よりの水平角,鉛

直角が直接求められる.これらの測定は,望遠鏡の同一

視準軸で行われるので,一回の視準でよく,測定値も自

動で読み取られ,従来の野帳に代わり,電子野帳(デー

タコレクタ)に直接記録される.

トータルステーションの例を図 2-20 に示すが,測定

値や計算結果を表示する表示部,様々な測定を選択・開

始させたり,計算のための数値を入力するためのキーボ

ード部,測角・測距のための望遠鏡および電子的測定装

置および従来のセオドライト同様の整準,求心装置など

からなっている.測定された斜距離を鉛直角によって水

平距離と高低差に変換する機能は,トータルステーショ

ンとして基本的な演算処理であるが,これ以外にも次の

ような応用計算機能が付加されている.

a.座標計算機能:器械点の座標を設定しておけば,測定

点の X,Y,Z 座標が計算,表示される.

図 2-16 平板測器

図 2-17 整準

図 2-18 放射法 図 2-19 道線法

図 2-20 トータルステーション

図 2-21 トータルサーベイシステム

b.測設機能:基準距離をキー入力することにより,測距

値との差を表示する.

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c.対辺測定機能:任意の 2 点間の狭角と器械からの距離

を測定することによって,2 点間距離と高低差を求める

ことができる.

d.リモートエレベーション機能:直接プリズムを設置で

きない頭上や下方の測点のほぼ真下もしくは真上にプ

リズムを設置し,器械とプリズム間の距離を測定してお

き,その後望遠鏡を上下に振って測定点を視準すれば,

このときの鉛直角によってプリズムからの高さを計算,

表示する.

トータルステーションは,本来トラバース測量用に開

発されたものであるが,三辺・三角測量,水準測量によ

る横断測量と土工量の測定,路線測量の中心杭の設置,

3次元的地形点の測量と画像への展開,平面測量の自動

化,写真測量の補測点測量など,3 次元的位置を求める

機能を発揮させ,またトータルサーベイシステムと併用

させることによって多方面への利用が広がっている.

2.4 高低差の測定

(1) 概要

地表の高低差を測ることを水準測量と呼んでいる.

高低差は,水準儀(レベル;Level)を用いて 2 点間に立

てた標尺(スタッフ;Staff)の目盛りを読み取り,その差

によって求められる.

従来からの光学系のレベルは,構造上から気泡管レ

ベルと自動レベルに分けられる.気泡管レベルには,Y

レベル,ダンピーレベル,ティルチングレベルなどがある.

近年は,自動レベルがよく用いられている.ティルチ

ングレベルや自動レベルの中で,標尺の読みが 0.01mm

まで読み取れるものを精密レベルと呼ぶ.一方,エレ

クトロニクスの発達によりレーザーレベルや光波プレ

ーナーが開発されている.前者は,光学系では不利な

地下や夜間の測量などにも活用され,後者は,回転式

レーザ発光器により 150m 以内の同一平面を測定する

ことができるので,大型ビルのサッシの位置決めなど

に用いられる.

図 2-22 に自動レベルの断面を示すが,望遠鏡に,水

準器と整準器が付属した支承部に三脚を取り付けて使

用する.鉛直軸回りの回転を固定する締め付けねじと

微動ねじを備え,望遠鏡の視野には十字線の上下にス

タジア線が設けられている.標尺は,白松,モミ材,ア

ルミニウム等で作られ,普通箱形の断面をしているの

で,箱尺とも言う.

(2) 測定方法の原理

図 2-23 のように,A 点,B 点のほぼ中央にレベルを

図 2-22 自動レベルの断面

図 2-23 水準測量の原理と標尺の読み

据え付け,各点上に立てた標尺を視準して,その読み

hAおよび hBを得たとすれば

h=hA -hB

である.A 点の標高(HA)がわかっていれば,B 点の標

高(HB)は

HB=HA+h

である.この場合のように,進行方向の B 点を視準す

ること,あるいはその標尺の読みを前視(FS;フォアサ

イト)といい,A 点を視準すること,あるいはその標尺

の読みを後視(BS;バックサイト)という.

また,望遠鏡の視準線の標高を器械高(IH)という.

図では

器械高(IH)=HA+hA

である.なお,高低差を求める 2 点が遠く離れている

場合は,何度もレベルを移し替えて,前視と後視をと

るためのもりかえ点(TP)をいくつか設定する.これに対

して,付近の標高だけをとるような点を中間点(IP)とい

う.もりかえ点で連絡された路線を水準路線と呼び,

これが網状に組み合わされたものを水準網と呼ぶ.

(3) 測定の方法

測量の手順は,次の通りである.

① 測量区域を踏査し,もりかえ点,レベルの位置を

あらかじめ大体の見当をつけておく.このとき,

見通し,地盤の状態,地形の変化などに注意する.

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② 標尺手は,A 点に標尺を立て,垂直に保持する.

標尺に簡単な水準器が付いている場合は,これを

利用するが,ない場合に垂直に立てるには,姿勢

を正しくし,標尺の重心より上で両手を側面にあ

てて,わずかに持ち上げて浮かし,そのまま静か

に下ろす.

③ 地盤の堅固な点にもりかえ点を設けて,もう 1 つ

の標尺を立てる.

④ レベルを両標尺間のほぼ中央に据え付ける.

⑤ レベルの気泡が中央にあることに注意しながら,A

点の標尺を視準し,その読み(後視)をとる.

⑥ 望遠鏡を水平に回転させて,もりかえ点に立てた

標尺を視準し,その読み(前視)を取る.

⑦ A 点の標尺を移動し,次のもりかえ点に標尺をた

て,この中間にレベルを据え付け,後視・前視を

とる.この操作を B 点までくり返す.必要なら,B

点から A 点までの復路を同様の方法で測定する.

視準距離(器械から標尺までの距離)は,レベルの性

能,天候,測定者の視力などにより一定でないが,大

体 20~80m 程度に選べばよい.後視・前視への視準距

離を等しくとれば,視準線が水平でないために生じる

誤差は消去され精度はよくなる.視準は,接眼鏡の視

度調節環を回して,十字線が明瞭に見えるように調整

した後,望遠鏡を標尺に向け,焦点ねじで標尺にピン

トを合わせ,微動ねじで十字線を視野の中央に導く.

標尺の目盛りを読むときに,視差(パララックス)が生じ

ることがある.すなわち,接眼鏡を覗いたまま眼を少

し上下左右に動かすと標尺の読みに変化が起こること

があり,これが生じていないかを確かめる必要がある.

また,標尺の読みに正確を期するためには,標尺を視

準方向に対して前後に動かせて,読みの 小値を採用

すればよい.

野帳の記入方法には

① 昇降式:中間点(IP)が少ないとき便利な方法

② 器高式:中間点(IP)が多いとき(横断測量等)に用い

るとよい方法

がある.昇降式と器高式の野帳記入例を表 2-2(図 2-24

に対応)と表 2-3(図 2-25 に対応)にそれぞれ示す.

図 2-24 水準測量の断面模式図(昇降式)

表 2-2 昇降式野帳記入例

前視

測点距離

(m)

後視

BS (m)

TP IP 昇降 (m)

地盤高 GH(m)

補正

値 (m)

調 整地盤高

(m) A 0.473 60.864 60.864B 54 0.749 1.928 -1.455 59.409 -0.001 59.408C 38 0.819 1.873 -1.124 58.285 -0.002 58.283

D 36 0.942 1.794 -0.975 57.310 -0.003 57.307

E 40 1.498 1.306 -0.364 56.946 -0.004 56.942

F 48 0.807 0.512 0.986 57.932 -0.004 57.928

G 30 2.539 1.199 -0.392 57.540 -0.005 57.535

H 40 2.030 0.764 1.775 59.315 -0.006 59.309

A 46 0.474 1.556 60.871 -0.007 60.864

計 332 9.857 9.850

A 点から出発し A 点に戻ったのであるから,60.871-60.864=0.007 の誤差となる.後視の計 9.857 と前視の計 9.850 の差も 0.007 であるので補正値 は 距 離 に 比 例 し て 配 分 す る . 0.007 × 54/332 ≒ 0.001 , 0.007 ×(54+32)/332≒0.002,….

図 2-25 水準測量の平面模式図(器高式)

表 2-3 器高式野帳記入例

前視 FS(m) 測点

m

後視

BS(m) 器高

IH(m) TP IP 地盤高

GH(m) 補正

値(m)

調 整

地盤高

(m) BM1 1.728 61.023 59.295 59.295② 1.453 59.570 59.570③ 1.328 59.695 59.695④ 0.825 60.198 60.198① 72 1.203 61.302 0.924 60.099 0.004 60.103⑤ 1.325 59.977 0.004 59.981⑥ 1.538 59.764 0.004 59.768⑦ 0.895 60.407 0.004 60.411

BM2 47 1.173 60.129 0.006 60.135計 2.931 2.097

BM1 の地盤高 59.295 と BM2 の地盤高 660.135 は既知である.測定によると BM2 の地盤高は 59.295+2.931-2.097=60.129 となる.誤差は60.135-60.129=0.006 であるので,補正値は距離に比例配分して,測点①⑤⑥⑦に対して 0.006×72/(72+47)≒0.004,BM2 に対しては0.006 を加える.

(4) 水準測量の誤差と精度

水準測量の誤差と精度は,レベルの種類,天候の状

態などによって異なる.誤差には次のようなものがあ

る.

① 器械・器具による誤差

(1)レベルの調整不完全:前視・後視の視準距離を等し

くする.

(2)標尺の目盛りの不完全:標準尺と比較し補正する.

② 視準時の誤差

(1)焦準の不完全(視差):接眼鏡を調整して,十字線を

はっきりだす.合焦ねじを調整して像を正しく十字線

面に合わせる.

(2)気泡が正しく中央にない:中央に合わせる.器械を

180°回転させて移動する場合は,移動量の半分を整準

ねじで寄せ,残りの半分は気泡管調節ねじで移動させ

て調整する.

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12

③ 取り扱い誤差

(1)レベルの沈下:地盤に留意する.

(2)標尺の沈下:地盤に留意する.標尺台等を利用する.

(3)標尺の傾斜:正しく垂直に立てる.

(4)標尺の継目の不完全:点検しておく.

その他,自然現象による誤差などが考えられる.

一方,一定の距離当たりに生じる偶然誤差は,器械

の据え付け回数が増せば大となる.したがって,勾配

が急なところでは,平坦なところよりも据え付け回数

が増し,精度は低下する.また,視準距離がある長さ

以上になると標尺の読みの誤差が急に大きくなり,精

度は低下する.同一器械で,同じ条件で適当な方法で

測定すれば,誤差は距離の平方根に比例して大きくな

ることがわかっている.

一般に,水準測量の許容誤差(E)は,1km についてレ

ベルの据え付け回数が一定ならば, E C D= となる.

ただし,D は全測線長(km)で,C は 1km 当たりに許さ

れる誤差であって,

C=50mm:山間地であまり精度を要しない場合

C=10mm:平地であまり精度を要しない場合

C=2mm:平地で高い精度を要する場合

である.

2.5 距離および高さの簡易測定

(1) スタジア測量

セオドライト(トランシット)やレベルの十字線の上下に張

られたスタジア線を利用して目標までの距離や高さを

計算によって求める測量である.距離や高さを巻尺や

レベルで直接測定した値に比べるとかなり精度は劣る

が,作業は簡単で非常に早くできる.この測量は主と

して細部測量や地形測量などのあまり高精度を必要と

しない測量や本測量に先立つ予備的な測量などに利用

される.

a. 視準線が水平な場合

前方に立てた標尺を視準して,上下のスタジア線の

示す目盛りを読み,スタジア線に挟まれた長さ l を求

めれば,器械から標尺までの距離 D は,以下のように

して求めることができる.図 2-26 において

S:l=f : i S=f×l/i ∴ D=f×l/i+f+c

ここで,K=f/i,C=f+c とおけば,

D=K×l+C

となる.これをスタジア公式という.K を乗定数,C を

加数というが,一般に,K=100,C=0 としたものが多

い.

図 2-26 スタジア測量の原理

b. 視準線が傾斜している場合

図 2-27 のように B 点に立てた標尺を視準して,上

下のスタジア線の示す目盛り(挟まれた長さ l),鉛直角

v および器高 I を測定し,AB 間の水平距離 D,高低差

H は以下のように求めることができる.

D=Kl cos2 v+C cos v

H= Kl cos v sin v+C sin v+I-m

図 2-27 視準線が傾斜している場合のスタジア測量

(2) 平板のアリダードを利用する方法

平板のアリダードの視準板には,図 2-29 のように前・

後視板の間隔の 1/100 を 1 単位とした目盛りが刻んで

あり,これを利用して高さや距離を求めることもでき

る.

図 2-28において点 C を視準して測定した目盛数を n

とし,距離 L を実測すれば,高さ H は次のようになる.

n:100=H:L ∴ H=nL/100

また,図 2-30 において点 C および点 D を視準して,

測定して得られる目盛りの読みをそれぞれ n1,n2とす

る.CD 間の高さを h とすれば,距離 L は,次のよう

にして求められる.

H1=n1×L/100,H2=n2×L/100

h=H1-H2=(n1-n2)L/100

∴ L=100×h/(n1-n2)

図 2-28 高さの測定 図 2-29 視準板の目盛

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図 2-30 距離の測定

第3章 基準点測量

3.1 概要

基準点測量とは,基準点を設置するための測量をい

うが,基準点はこれをもとにして細部に至る点の位置

を定めるので,精度の高いものでなくてはならない.

基準点によって測量網が形成されるが,その典型的な

例が,国の行っている一等三角網であり,一等水準路

線網である(図 3-1).前者は,経度・緯度(水平位置)を

決めることを主目的としたもので,後者は高さを決め

ることを目的としたものである.

測量の方式に着目すると,基準点測量は以下のよう

に分類できる.

① 三角測量

② 三辺測量

③ トラバース測量

④ 水準測量

以前は,三角測量が主体であったが,電磁波測距儀

が出現してからは三辺測量やトラバース測量がより多

く用いられるようになった.

図 3-1 一等水準路線網(左)と一等三角網(右)

3.2 三角測量

(1) 三角測量の原理

三角測量は,三角網の 小単位である三角形の全て

の内角を経緯儀(トランシット,セオドライト)で測定

することにより,基準点の位置を求める測量である.

網の大きさを決めるために少なくとも 1 つの辺を基線

として選び,精密に測定する.

図 3-2 の三角形において,基線を AC(辺 b)とし,測

定した 3 つの角α,β,γとして正弦定理

sin sin sina b cα β γ= = により,

sin sin,sin sin

b ba cα γβ β

⋅ ⋅= =

となる.

図 3-2 三角測量の原理

三角測量の作業は,一般に ①選点・造標,②基準長

測定,③角測定,④調整計算,⑤辺長計算,⑥作図 の

ように進められる.

(2) 三角測量の計算手法

三角網を一意的に決めるための幾何学的条件には,

次の 3 つがある.

① 角条件式:三角形の内角の和が 180°であるという

条件

② 辺条件式:三角網の 1 つの辺から正弦定理によっ

て,次々と辺長を計算し, 後に元の辺にもどっ

たとき 初の辺長と等しくなる条件

③ 辺長条件式:基線が 2 つ以上ある場合,第 1 の基

線から正弦定理によって計算していき,第 2 の基

線の長さを求めて,既知の辺長と等しくならなけ

ればならないという条件

図 3-3 において,角条件式は

α1+α2+α6=180°

α3+α4+α5=180°

α7+α8-α5=0°

であり,正弦定理にしたがって,AB から BD,BC,

AB の順に辺を求めると, 初の AB と 後の AB が等

しいという条件から以下の式を得る.これが辺条件式

である.

7 4 6 1

1 3 8 6

sin sin( )sin 1sin( )sin sin

α α α αα α α α

+=

+

図 3-4 において,S1から正弦定理にしたがって,次々

と辺長を計算していき, 後に ED の長さを得る.こ

れが S2と等しいという条件から,以下の辺長条件式を

得る.

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図 3-3

1 2 5 7 10

2 3 6 9 12

sin sin sin sinsin sin sin sin

SS

α α α αα α α α=

次に,四等三角測量で使われてきた座標の簡略調整

計算法について示すが,これは複数の既知点から 1 つ

の新点を求める場合の計算法である.

図 3-5 は,3 つの既知点 P1,P2,P3から新点 Q を求

める例である.まず,既知点の座標値および既知点に

おける方向角を使って,Q 点から既知点までの距離の

仮想値 S1,S2,S3を求めておく.次に,既知点 P1から

Q 点への方向角 β1,β2,β3 を使って,座標北を基準と

した Q 点から各既知点への方向角の仮想値 T1,T2,T3

を計算する.すなわち

T1=t1-180°,T2=T1+β2,T3=T1+β3

測定に誤差がなければ,T2=t2-180°および T3=t3-

180°であるが,一般にはそうはならない.そこで,

T1′=T1+Z ,T2′=T2+Z,T3′=T3+Z

ここで,Z={Σ(Ti-ti+180)}/3 とする.これは,Tiの

平均と(ti-180)の平均が等しくなるように Ti を修正し

たことに相当する.

次に,Tiと tiを使って

t1′={t1+(T1′-180)}/2

t2′={t2+(T2′-180)}/2

t3′={t3+(T3′-180)}/2

を求める.以上で,各既知点から新点 Q への方向角の

平均値が得られたことになり,ti′と Si から各既知点を

基準として Q 点の座標値が求められる.Piの座標値を

xi,yiとし,Piから求めた Q の座標値を xi′,yi′とすると

xi′=xi+cos (ti′),yi′=yi+sin (ti′)

のように,3 組の Q の座標値が得られる.この 3 組の

平均値を求めて, 確値(x,y)とする.

図 3-4 図 3-5

3.3 三辺測量

三辺測量は,電磁波測距儀の普及に伴って出現した

比較的新しい測量方式で,測距儀のみを用いるもので

ある.我が国では,1974 年から第 3 次基本測量長期計

画に採用され, 近では高精度を必要とする地震予知

のための 1 次基準点測量などに,従来の三角測量に代

わって用いられている.

三辺測量の対象となる三角網は,三角測量のそれと

同様であるが,三角測量より 1 桁の精度の向上が見ら

れる.

既知点か各測線長を測定し,新点の座標を計算して,

次々と決めていく.この際,コンピュータを用いて観

測方程式による厳密調整計算を行うのが普通である.

図 3-6 のような有心三角形について,a~f の辺を測

定した場合,中心点 D の回りの α,β および γ の 3 つ

の角は測定辺長から計算できる.すなわち,第 2 余弦

定理を適用すると次式を得る.

2 2 2

2 2 2

2 2 2

cos ( ) /(2 )

cos ( ) /(2 )

cos ( ) /(2 )

c b a bc

e c d ce

b e f be

α

β

γ

= + −

= + −

= + −

三角形が平面上にあれば,α+β+γ=360°である

ので,次の閉合差(ε)によって,作業現場で測定値の良

否を点検できる.

ε=α+β+γ-360°

図 3-6 三辺測量の原理

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3.4 トラバース測量

(1) トラバース測量の原理

トラバース測量は多角測量とも呼ばれ,既知点と新

点とを折れ線で連結し,測線長と水平角を測ることに

より新点の座標を求めるものである.測距に巻尺を用

いる限り作業能率などの面で三角測量を超えることは

なかったが,1960 年代に光波測距儀が出現し,普及し

たため,基準点測量の手法として有利な測量方式とな

った.

トラバース測量は,原則として既知三角点を結合す

る結合トラバースと,始点から一周して始点に戻る閉合

トラバースが使用されるが,図 3-7 に示すように開トラ

バース,閉合トラバース,結合トラバース,トラバース

網がある.

トラバース測量の手順は三角測量の場合とほとんど

同様である.測距は鋼巻尺や光波測距儀で行い,測角

は,セオドライト(トランシット)で行う.測角の測定

方法には①交角法,②偏角法,③方向角法があるが,

一般に交角法が用いられている.

交角法は,閉合トラバースの場合,多角形の内角を

測定する場合と外角を測定する場合があるが,一般に

は内角を測定することが多い.

偏角とは,前の測線の延長線と次の測線との間の角

のことで,基準とした延長線より右回りに測る偏角を

正(+),左回りを負(-)の符号をつけて表す.

方向角法は,それぞれの測線の方位角(北を基準とし

て右回りに測る角)を直接測定っていく方法である.

トラバース測量で,角を測定した場合,次のようにし

て,誤差を発見し点検する.

a.交角法の場合:n 角形の内角の和は(n-2)×180°

であるから,誤差 ε1は,各測定値をα1α2…αnとする

と以下のようになる.

ε1=(n-2)×180°-Σαi

b.偏角法の場合:n 角形の偏角の和は 360°であるから,

誤差 ε2は,各測定値をα1α2…αnとすると以下のよう

になる.

ε2=360°-Σαi

c.方向角法の場合:図 3-10 のようなトラバースで,A,

B,C の順に測定していく場合, 初 AB の方位角α1

と同時に AD の方位角ωを測っておく.α4-ω=180°

であるから誤差 ε3は,以下のようになる.

ε3=180°-(α4-ω)

さて,1つの角を測定したとき,この程度の誤差は

やむを得ないとする限度(許容誤差)は,測量の目的,

図 3-7 トラバースの種類

図 3-8 交角

図 3-9 方位角と偏角

図 3-10 方向角法

測角の難易,使用機器の精度などで異なるが,大体の

標準は以下の通りである.

山 林:90″

平坦地:30~60″

市街地:20~30″

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また,n角形の閉合トラバース全体の許容誤差 ε0は,

すべての角が同じ精度で測られる場合,多角形の角数

の平方根に比例すると考えられるので

( )0 nε = ± × 1つの角に対する許容誤差

となる.

許容誤差の範囲内であれば,これを各内角に等配分

して幾何学的条件を満たす.一方,測距と測角の精度

の釣り合いを示すと表 3-1 のようである.

表 3-1 測距と測角の釣合い

精度 測距 測角機器

1/3,500 布巻尺又はチェーン 1′ 読み 1/7,000 ビニール巻尺 30″ 読み 1/10,000~ 鋼巻尺,電磁波 20″ 読み

(2) 座標計算と調整法

トラバース測量では,図 3-11 のように子午線を X

軸(北を+),東西方向を Y 軸(東を+)とする.X 方向お

よび Y 方向の成分をそれぞれ緯距 L,経距 D として表

す.緯距・経距は,測線長 S と方向角 αによって,以

下のようになる.

Li=Si cos αi

Di=Si sin αi

各測点 Pi+1の XY 座標値は,以下のようにその 1 点

手前の測点 Piの座標値を加えて計算することができ,

それぞれの合緯距,合経距と呼ぶ.

測点 Pi+1の合緯距:x i+1=x i+Li =x i+Si cos αi

測点 Pi+1の合経距:y i+1=y i+Di =y i+Si sin αi

n 角形のトラバースの場合,(x n,y n)は以下のようにな

る. 1

11

1

11

cos

s

n

n i ii

n

n i ii

x x S

y y S in

α

α

=

=

= +

= +

各測線の中点から X 軸に至る距離を横距といい,そ

の 2 倍を倍横距という.倍横距は,2 測点の Y 座標の

和(y i+y i+1)≡M iで与えられ,これは面積計算に用いら

れる.

閉合トラバースならば,Pn+1=P1 であるが,測定に

閉合誤差 εがでたとき, 2 2 2 2 2

1 1 1 1( ) ( )L D n nx x y yε ε ε + += + = − + −

となる.そして,閉合誤差と全長の比を閉合比と呼び,

通常 1/R のような分数で表し,トラバース測量の精度

を表す.

1RS

ε= =∑

閉合比

図 3-11 トラバース測量の緯距・経距

この閉合比の制限(許容誤差)は,測量の目的,測量

の難易などで異なるが,大体の標準は以下の通りであ

る.

山 林:1/500~1/1,000

平坦地:1/1,000~1/5,000

市街地:1/5,000 以上

トラバースの閉合比が許容精度以内の場合には,次

のような方法で緯距・経距を修正し,図形を閉じさせ

る.

図 3-12 トラバースの閉合誤差

(a)トランシット法則:測距より測角の精度が高いとき

に適用される.降雨時などの場合に鋼巻尺が使えずに,

エスロン巻尺等で代用したときなどは,測角精度が上回

る.このようなときに,トランシット法則が適用される.

補正量は,以下のように測線の緯距(Li)・緯距(Di)の長さ

に比例して配分する.

緯距の補正量:CLi=(ΣLi)×Li/Σ|Li|

経距の補正量:CDi=(ΣDi)×Di/Σ|Di|

ただし,添字 i は,i 番目の測線に対するものを示す.

また,添字 L,D はそれぞれ緯距,経距に対応する.

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(b)コンパス法則:測距と測角の精度が大体同じときに

適用される.過去,コンパス(磁針と水平角,高低差を

測定できる簡単な装置を1つにした器械)とチェーン

を用いてトラバース測量をしていたときに名付けられ

た方法である.

補正量は,以下のように測線の長さ(Si)に比例して配

分する.

緯距の補正量:CLi=(ΣLi)×Si/ΣSi

経距の補正量:CDi=(ΣDi)×Si/ΣSi

(3) トラバースの面積

前項で述べた倍横距と緯距によって閉合トラバース

の内部の面積を求めることができる.すなわち,各測線

の倍横距,緯距をそれぞれ,M1,M2,…Mn,L1,L2…Ln

とすれば,面積 A は以下の式で表される.

A=|M1L1+M2L2+…+Mn L n|/2

ただし,倍横距 Mi は東(E)に向かうものは正(+),西

(W)に向かうものは負(-),緯距 Liは北(N)に向かうもの

は正(+),南(S)に向かうものは負(-)の符号を持つ.

倍横距には以下の関係が成立する.

M1=y1+y2=y1+y1+D1=2y1+D1

M2=y2+y3=y1+D1+y2+D2=M1+D1+D2

M3=y3+y4=y2+D2+y3+D3=M2+D2+D3

: :

Mi=yi+yi+1=yi-1+Di-1+yi+Di=Mi-1+Di-1+Di

この面積公式を,図 3-13 のような多角形について考

えれば以下のようになる.

台形 A1ADD1の面積

=(A1A+DD1)×A1D1/2=|DA の倍横距|×|DA の緯距|/2

↑符号+ ↑符号-

台形 B1BAA1の面積

=(B1B+AA1)×B1A1/2=|AB の倍横距|×|AB の緯距|/2

↑符号+ ↑符号-

台形 C1CDD1の面積

=(C1C+DD1)×C1D1/2=|CD の倍横距|×|CD の緯距|/2

↑符号+ ↑符号+

台形 B1BCC1の面積

=(B1B+CC1)×A1D1/2=|BC の倍横距|×|BC の緯距|/2

↑符号+ ↑符号+

∴四辺形 ABCD の面積=台形 C1CDD1の面積

+台形 B1BCC1の面積

-台形 A1ADD1の面積-台形 B1BAA1の面積

=Σ(各測線の倍横距)×(緯距)/2

図 3-13

3.5 水準測量

水準測量は,レベルと標尺を用いる直接水準測量と

高低差に関係のある他の量を測って計算によって求め

る間接水準測量の 2 つに大別される.後者は,水面の

あるような特殊な地形の場合や精度の低い測量以外に

は行われない.

以下に,直接水準測量の調整法について述べる.

(1) 両端が既知点と求点の単一路線

測点 A の標高 HAが既知の単一路線 AB を往復した

全測線長を n 個に分割する.盛替点 T1,…TM(測点 B

が M 番目の盛替点とする),…Tnに対して,高低差 h1,

…hM,…hnを測定すれば,測点 B の調整地盤高 HBは,

次式のようになる.

HB=HA+h1+…+hM+ΔHB

ただし,⊿HB=-(h1+…hM+…hn)/2

図 3-14 両端が既知点と求点の単一路線

(2) 両端が既知点の単一路線

測点Aおよび Bの標高HAおよびHBが既知の単一路

線ABを往復した全長 Sを n個に分割する.盛替点T1,

…TM(求点 P が M 番目の盛替点とする),…Tn(HB)に対

して,高低差 h1,…hM,…hnおよび s1,…sM,…sn を

測定する(往復の平均をとる).測点 P の調整地盤高 HP

は,次式のようになる.

HP=HA+h1+…+hM+ΔHP

ただし,⊿HP=-[h1+…hM-(HB-HA)](s1+…sM)/S

図 3-15 両端が既知点の単一路線

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(3) 環状路線の往復

測点 A(標高 HAが既知)から同じ点に帰る環状路線全

長 S を n 個に分割する.盛替点 T1,…TM(求点 P が M

番目の盛替点とする),…Tn(測点 A)に対して,高低差

h1,…hM,…hn および s1,…sM,…sn を測定する(往復

の平均をとる).測点 P の調整地盤高 HPは,次式のよ

うになる.

HP=HA+h1+…+hM+⊿HP

ただし,ΔHP=-(h1+…hM)(s1+…sM)/S

図 3-16 環状路線

(4) 複数の既知点から求点に至る路線

標高が既知である測点 A,B,C,…から求点 P の高低差

h1,h2,h3,…および各測線長 s1,s2,s3…を測定する.各点よ

り求めた標高を H1,H2,H3,…とすると,測点 P の調整地

盤高 HP は,重みを各測線長の逆数とした加重平均で,

次式のようになる.

HP=(H1/s1+H2/s2+H3/s3…)/(1/s1+1/s2+1/s3…)

図 3-17 複数の既知点から求点に至る路線

(5) 1 つの既知点から求点に至る複数路線

標高が既知である測点 A から,複数路線を経由して

求点 P の高低差 h1,h2,h3,…および各測線長 s1,s2,s3…を

測定する.各点より求めた標高を H1,H2,H3,…とすると,

測点 P の調整地盤高 HPは,重みを各測線長の逆数とし

た加重平均で,次式のようになる. HP=HA

+(H1/s1+H2/s2+H3/s3…)/(1/s1+1/s2+1/s3…)

図 3-18 1 つの既知点から求点に至る複数路

公共測量の水準測量は,精度に応じて以下のように

区分される.

① 一等水準測量:主要道路に約 2km ごとに配置した

水準点を測量するもので,我が国ではこれが も

精度が高いものである.往復の較差は 2km の往復

距離 S(km)に対して 3mm 以内とされている.

② 二等水準測量:一等水準路を連絡するために中間

に設けられた水準点を測量するものである.往復

の較差は 2km の往復距離 S(km)に対して 5 2S mm

以内とされている.

③ 三等水準測量:国土調査法の基本水準測量に相当

し,建設工事や地形測量の水準測量に適用される

ものである.往復の較差は 2km の往復距離 S(km)

に対して 15mm 以内とされている.

④ 測標水準測量:山間部では,往復でなく片道水準

測量をすることがあり,これを測標水準測量とい

う.標尺台の低(2.5cm 高)と高(5cm 高)とを 1 測点

ごとに読み取り,高・低の較差は 30cm 以下とさ

れている.

⑤ 簡易水準測量:簡易レベルやハンドレベルを用い

て水準測量するものを含み,往復の較差は 小等

高線間隔の 1/5 以内とされている.

水準測量の規格をまとめると表 3-2 のようである.

表 3-2 水準測量の規格

区分 往復の較差 閉合差 視準

距離

目盛

水準器

感度

一等 3mm 以下 (2km 往復)

1.5 S mm 60m 以下

0.1mm 10″ 以上

二等 5 2S mm 5 S 〃 70m 〃

1 〃 20″ 〃

三等 15mm (2km 往復)

10 S 〃 70m 〃

1 〃 40″ 〃

測標 30mm(高・

低の較差) - 70m

〃 1 〃 40″ 〃

簡易 小等高線

間隔の 1/5 200 S 〃 80m

〃 5 〃 40″ 〃

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19

第4章 細部測量

4.1 概要

前章で説明した基準点測量は,主として国土を対象

とした精密なもので,明治以降の国土基本図作成に必

要なものであった.すなわち,先人達は全国を三角網

や水準路線網で覆い,国家基準点の座標を精密に決定

し,これにより局地的な地形や地物の位置を求める細

部測量を行い,全国の隅々にわたる地図を作成してき

た.そして,今では各種の地形情報等が蓄積され,だ

れでも手軽に利用できる環境にある.

しかし,国土は時々刻々と変貌しており,今もなお

細部にわたる地表の現況を捉えることは重要なことで

ある.細部測量には平板測量や空中写真測量,人工衛

星によるリモートセンシング画像を活用している.写

真測量やリモートセンシングなどの場合は,縮尺が

1/1,000 以下であり,1/1,000 以上の大縮尺や空中写真に

写らない場合などは,主として平板測量を用いる.

一般に,平板測量による地形図作成は以下の手順で

行われる.

① 基準点測量:40~50m 間隔で 1 点の基準点を設置

し,トラバースを確定する.この基準点測量のこ

とを骨組測量ともいう.

② 基準点の展開:座標展開機,自動製図装置等を用

いて,図紙上に基準点および輪郭線をそれらの座

標値に応じて正確に図示する.

③ 細部測量:基準点等に平板を設置(整準・致心・標

定)し,アリダードで対象物を視準して,地形,地

物を図紙上の位置に図示する.地物の水平位置は,

放射法やオフセット法(支距法)などにより測定して

図示する.対象物の標高は,基準点の標高を既知

として,アリダードと標尺等とを組み合わせて基

準点との相対的な高さを求めて決定する.

④ 編集:図式に従って,地図としての体裁を整える.

地形図では,等高線で地形を表現するのを原則と

するが,崖や大きな岩のあるところ,砂礫が散ら

ばっているところなどの特殊な場所では,等高線

に代え,またはこれと併用して特有の記号を用い

る.等高線には,基本的な等高線である主曲線,

主曲線を 5 本ごとに 1 本太めにした計曲線,補助

曲線(地形を特に詳細に表現するために主曲線間隔

の 1/2 の間隔をもった曲線)および特殊曲線(補助曲

線と主曲線との間隔の 1/2 の間隔をもった曲線)が

ある.

⑤ 製図:図面に着墨して仕上げる.

現在,国土地理院で刊行している地形図類には表4-1

のようなものがある.

表 4-1 国土地理院の地形図

図名 対象地域 枚数

1/10,000 地形図 都市地域 311 面

1/25,000 地形図 全国 4419 面

1/50,000 地形図 全国 1291 面

一方,多くの技術者が測量機器を実際に使用する場

面としては,以下のようなものが考えられるが,ふつ

う小区域で基準点(図根点ともいう)を設定し,骨組測

量および細部測量を行う.

建設工事の事前調査

遺跡の調査

建物や地盤の変形・沈下などの調査

災害の被害調査

測量技術の修得のための実習など

本章では,測量技術の修得のための実習に対して考

慮し,建設分野における構造物の建設工事に先立ち,

設計・計画などの資料を集めるための建設敷地および

その周辺を調査する測量(敷地測量)について説明する

が,他の場面にも十分参考になるものと思われる.

敷地測量では,以下の項目について調査・測量が行

われる.

① 敷地の形状・地物の位置の測量および面積計算:

構造物の種類,規模,敷地の大小,地域などによ

って測量の制度や必要事項などが異なり,測距器

械だけによる測量,トラバース測量,スタジア測

量,まれに三角測量あるいはこれらの併用によっ

て行うことがある.

② 敷地内外の高低関係の測量:地盤の高低は,特定

の基準に対する関係高によって示す.基準として

は,水準点(ベンチマーク;BM)の場合と仮設の水準

点(仮ベンチマーク;仮 BM)の場合がある.

③ 埋設物や地下構造物との関係の調査:敷地内にあ

る電力線,電信電話線,ガス,上下水道などは建

設工事に際し,工事の妨害となったり,工事のた

めに悪影響を及ぼす場合が考えられ,移設したり,

保護する必要があるので詳細な調査を必要とする.

本書では,③は測量以外のデータや調査を必要とす

るので割愛する.

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4.2 敷地の平面形状とその面積

(1) 巻尺による敷地測量

巻尺だけによる骨組測量(基準点測量)およびオフセ

ット法(支距法)による細部測量について説明しよう.

【使用器具:巻尺,メートル縄,ポール,かけ矢また

は金槌,杭または鋲,野帳および筆記用具など】

測量の順序は,以下のように行う.

Ⅰ.敷地周辺の踏査を行い,適切な位置に測点を選ん

で杭または鋲を打つ.この場合,通行人がつまずいて

怪我をしたり,抜かれたりしないような場所を選び,

交通の邪魔にならないよう配慮する.

Ⅱ.各測線長の往復測定の精度と閉合比の目標を定め

て,各測線長を巻尺(鋼巻尺,エスロン巻尺など)で往

復測定する.

トラバースは,(a)つなぎ線法,(b)垂線法,(c)三角区

分法などにより確定する.障害物のない場合は,垂線

法や三角区分法を用いる(図 4-1)が,そうでない場合は,

つなぎ線法を用いる.つなぎ線法の場合の測距は以下

の通りである.

① 測点AとBに互いに向かい合うようにポールを立て

る.ポールは体の正面になるように軽く両手でささ

えて,地面から数センチ上に上げると自然に鉛直方

向に下がるので,これをゆっくり測点の真上にもっ

ていく.また,測線長が巻尺より長い場合は,測点

A の者は,測線の間に立てたポールが測点 B のポー

ルを見通して,ちょうど測線上にくるように中間の

ポールを誘導する.測点 A に,巻尺の端(0m;始読)

を置き,ねじれないように中間点 1 まで張って距離

(終読)を読み取る.中間点が多数ある場合は,中間

点 1 から 2 までの距離,中間点 2 から測点 B までの

距離を同様に測り,合計して測線長とする.また,

復路は,往路とは異なった中間点を設けて同様な測

定を行う.往復の測定値をそれぞれ,l1 および l2 と

する.この差(l1-l2)を較差と呼ぶが,較差と平均長

(l1+l2)/2 との比を往復測定の精度とする.

精度=(l1-l2)/ (l1+l2)/2=1/(l1-l2) (l1+l2)/2

これが許容精度以下であればよいが,そうでなけ

れば再測する.また,測点 B とこれに一番近い中間

点との間にメートル縄を張っておく.

② 以上の要領で,測線長 BC を測る.測線 AB と測線

BC 部分長 aB と Bc およびつなぎ線 ac の距離を巻尺

で測る.

③ すべての測線とつなぎ線の距離を以上の要領で測

定する.

(a) つなぎ線法 (b)垂線法 (c)三角区分法

図 4-1 トラバースの確定

図 4-2 距離の測定

図 4-3 つなぎ線

Ⅲ.図面に適当な縮尺(1/500~1/100)でトラバースを描

く.全測線長を閉合誤差 E で割った逆数(次式)を閉合

比と呼ぶ.

1

/ Eγ =

全測線長

γが許容精度以下であれば,次の要領で誤差を調整し,

トラバースを完全に閉じた多角形とする.

図 4-4 に示すような場合,適当な縮尺で 1 直線上に

全測線長 aa′を描き,a′から垂線を立て,閉合比 E をそ

のままの長さでとり,垂線の上端を a″とする.点 a と

点 a″を結んだ直線と点 b,c,d から立てた垂線との交

点を b0,c0,d0とすると,各線分 bb0,cc0,dd0が各点にお

ける調整量となる.各点 b,c,d より aa′に平行な直線

を引き,それぞれの調整量をとると,修正トラバース(一

点鎖線)が得られる.

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図 4-4 誤差の調整

Ⅳ.細部測量は,各測線に沿って,オフセット測量で行

う.オフセットとは,図 4-5(a)に示すように,測線(本

線)の左右に至る垂直距離をいう.正確を期する場合や

障害物があるときには,図 4-5(b)のような斜めオフセ

ットで測ることもある.

(a)オフセット (b)斜めオフセット

図 4-5 オフセット(支距)

オフセット測量の野帳記入法には図 4-6 に示すよう

① スケッチ法

② 縦覧法

がある.

(a)オフセット (b)斜めオフセット

図 4-6 オフセット(支距)

(2) 平板による敷地測量

平板を用いて敷地の測量を行い,地図を作成する方

法について説明しよう.踏査・選点および杭打ちは前

項と同様である.

【使用器具:平板一式,巻尺,メートル縄,ポール,

筆記用具など】

a. 骨組測量

骨組みは,巻尺によるものを使用してもよいが,以

下に,平板図面上にトラバースを展開する前進法につ

いて述べる.

Ⅰ.トラバースの展開(整準・致心・標定)

まず,各測線長の往復測定の精度と閉合比の目標を

設定しておく.そして,以下の要領で測定する.

① 図面を平板に張り,三脚の平板締め付けねじを平

板下部の穴に引っ掛けて,ねじを締め,平板を三

脚に取り付ける.

② トラバース全体が図面に納まるような位置関係に

なるように,測点 A に対応する図面上の点 a を設

定し,ピンを立てる.

③ 求心器の先端を点 a に置き,これに付けていた下

げ振り(垂球)が測点 A を指すように平板全体を移

動させると同時に平板がほぼ水平になるように三

脚の位置関係を調整しておく.

④ 【整準】三脚についている任意の 2 つの整準ねじ

と平行な位置にアリダードを平板の上に置き,気

泡がぴったり中央にくるように 2 つの整準ねじを

回す.続いて,アリダードを直角方向に置き換え

て,もう 1 つの整準ねじを回して,気泡がぴった

り中央にくるように調節する.この一連の操作を

繰り返せば,平板は水平に設置される.水平にす

ることを整準という.

⑤ 【致心】平板締め付けねじをゆるめて,求心器の

先端を点 a に置き,これに付けていた下げ振り(垂

球)が測点Aをぴったり指すように平板全体を水平

に移動させる.このことを致心という.移動量が

多ければ,平板の水平がくずれるので,もう一度

整準を行う.

⑥ アリダードの原点を点 a に一致させて,測点 B を

視準し,方向線を引く.測線 AB の距離を巻尺で,

できるだけ精密に往復測定する.中間点はアリダ

ードの視準線のポールを誘導して設ければよい.

往復測定の精度が,許容精度以下であればよい.

そうでなければ再測する.測線 AB の距離に相当

する長さを点 a からとって,点 b を得る.

⑦ 【標定】つぎに平板を移動し,測点 B 上で据つけ

て整準し,点 b に一致させる.さらに,図面上の

線分 abに沿わせたアリダードの視準線が測点Aを

通るように,平板を水平回転させる.このことを

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標定という.回転量が多ければ,平板の水平がく

ずれるので,整準・致心をやり直す.

⑧ さらに,次の測点 C を視準し,測線の距離を測定

して図面上に点 c を得る.同様にしてすべての測

線(トラバース)が展開される.

⑨ なお,磁石によって南北方向を図面に記入してお

く.

(a) 整準 (b) 致心

(c)致心

図 4-7 平板の設置(整準・致心・標定)

II. 閉合比の計算

閉合比が許容精度以下であれば,誤差を調整し,ト

ラバースを完全に閉じた多角形とする(前項図 4-4 参

照).

b. 細部測量

修正トラバースを作成した後,細部測量を行う.平

板による放射法や交会法または巻尺によるオフセット

測量などにより主要な地物の輪郭または記号を書く.

細部測量は,主として基準点に設置した平板の図面

上に地形や地物を測定していくが,既設の測点から見

通せない場合には,適当に測点の増設を行なって,測

量を行なっていく.

以下に交会法(前方交会法,側方交会法,後方交会法)

について述べる.

①前方交会法:測点 A (図上の記号 a)と測点 B (図上の記

号 b)より未知の点 P(図上の記号 p)を求める方法で,さ

らに検査の意味で測点 C(図上の記号 c) より点 P を視

準し,その線が p と合致すればよい.合致しない場合に

できる三角形を示誤三角形という.この三角形に内接

する円の直径が 0.4mm 以内ならば,その円の中心を交

会点とする.測線 AB を基線,AP,BP などを方向線と

いい,方向線と基線の角(交会角)を 40°~140°にする

と誤差は少なくてすむ.この方法は,距離を測定しな

いで諸点を求めることができるので,障害物がある場

合または遠距離の位置を求めるときに便利である.た

だし,視準点が多いと図面が混乱し,間違いを起こし

やすく,また精度も高くない.

②側方交会法:拠点 A に平板を設置(整準・致心・標定)

し,方向線 ap を引く.この方向線上に点 p を推定し,

測点 P 上に平板を移し正しく測点 A の方向に標定する.

つぎに b 点に針をさし,Bb 線を延長し ap との交点を

求める.この点が,正しい点 p である.

③後方交会法:3 つの既知点を用いて,未知の点を図上

に決定する方法であるが,実際に応用されることは少

ない.つぎのような方法がある.

i )レーマン法:未知点 P に平板を設置し,既知の測点 A,

B,C を視準し,視準線 Aa,Bb,Cc を引く.3 つの線

が l 点に合致すれば,その点が点 p である.合致しな

い場合の未知点の位置は,つぎの性質を利用して推定

する.

(a)示誤三角形が△ABC の内側にあれば,未知点 p は

示誤三角形の内側にある.

(b)示誤三角形が△ABC の外側にあれば,外接円の内

側ならばβγに関して示誤三角形と反対側にある.

(c)示誤三角形が△ABC の外側にあれば,内角の内側に

あるならばβγに関して示誤三角形と同じにある.

(d)未知点が外接円の円周上にある場合は,示誤三角形

は生じない.解は不定となる.

図 4-8 前方交会法 図 4-9 側方交会法

ii)ベッセル法:円に内接する四辺形の幾何学的関係を用

いる厳密解である.つぎの順序で図解的に未知点 p を

求める.何回も平板を動かすので時聞がかかる.

(a) 点 P と図上の点 a を一致させ,ab 線にアリダード

を沿わせて B 点を視準する.つぎに,a 点にアリダー

ドを沿わせて C 点を視準して,ad 方向線を描く.

(b) 点 P と図上の点 b を一致させ,ab 線にアリダード

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図 4-10 レーマン法

を沿わせて A 点を視準する.つぎに,b 点にアリダー

ドを沿わせて C 点を視準して,bd 方向線を描く.

(c) c d 線は GP の正しい方向を示す.したがって,cd

線にアリダードを沿わせて C 点を視準すると,平板は

正しく標定されたことになる.このとき,a 点にアリ

ダードを沿わせて A 点を視準して ap 方向線を描き,

dc との交点を求めるとこれが点 p である.

iii)トレーシングペーパー法: も簡単な方法であるが,精

度は劣る.

まず,図上に大体の見当で未知点 p をとり,トレー

シングペーパーをのせ,既知の点 A,B, C を視準し,

その方向線 pa,pb, pc を描く.その 3 つの方向線が,

それぞれ同時に 3 点 a,b, c を通る位置で固定して,

その交,点を図上に針で印をすれば,とれが求める点

p であり,この点に平板を据え直せばよい.

c. 平板測量の誤差

①視準誤差:視準孔の直径と視準糸の太さから,視準す

る方向に生じる誤差のことである.図上誤差を 0.2mm

まで許すとすれば,図上に引く線(方向線)は,縮尺に

関係なく,20cm 以下(ほぼアリダードの長さ)では無視

してさしつかえない.

②偏心誤差:普通のアリダードは視準線と定規線に約

3cm へだたりがあるが,このために生じる誤差のこと

である.図上誤差を 0.2mm まで許すとすれば,縮尺

1/200 以下の場合は,無視してさしつかえない.

一般に,鉛筆で描く線や点を 0.2mm 程度と考え,縮

尺を 1/Mとする.これらが判別できる実際の長さ x は,

0.2:x=1:M,x=0.2×M

である.M=200 のとき,x=40mm=4cm となる.

一方,距離の往復精度を l/N とすれば,100mに対して,

x:100=1:N ∴ x=100/N

図 4-11 ベッセル法

図 4-12 トレーシングペーパー法

である.N=2,000 のとき,x=0.05m=5cm となる.

したがって,実長 4~5cm 程度の誤差が許されること

になる.

(3) 測角機器と測距機器による敷地測量

精密な敷地測量は,一般にトランシット(セオドライ

ト)と鋼巻尺または光波測距計を用いて,トラバース測

量を行なう.

セオドライトを用いて角度を測定し,トラバースの

計算をする方法について説明しよう.踏査・選点およ

び杭打ちは前項と同様である.

【使用器具:セオドライト 1式,巻尺または光波測距計,

ポール,筆記用具など 】

a. トラバース測量の外業

まず,測角および測距の精度と閉合比の目標を設定

しておく.そして,以下の要領で測定する.

Ⅰ.セオドライトのすえつけ

①脚頭がほぼ水平で,下げ振りがおよそ測点上にくる

ように三脚を踏み込み,脚頭ねじを締める.

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②移心装置で下げ振りを正確に測点と一致させて固定

ねじを締める.

③気泡管を整準ねじ A,B と平行にする.

④気泡管の気泡の位置を確認し,整準ねじ A,B を操

作して気泡を中央に導く.

⑤機械を 90°回転し,整準ねじ C を操作して気泡を中

央に導く.

⑥図 4-13 の(a)および(b)の状態で気泡がともに中央に

あれば,⑦の操作へ進めるが,そうでなければ③へ戻

る.

⑦光学求心装置で正しく求心する.

⑧もう一度図 4-13 の(a)および(b)の状態で気泡がとも

に中央にあるかを調べ,中央にあれば据え付け完了,

そうでなければ③へ戻る.

II. セオドライトの調整(第 1 調整)

上の操作をして,気泡の振舞いがおかしい場合は,

気泡管軸が器械の鉛直軸に垂直でないことがあるので,

以下のように調整を行なう.(これを第 1 調整と呼ぶ.

第 2 調整~第 5 調整は巻末に示す.)

①セオドライトをすえつけ,正しく整準する.

②上部運動で上盤を静かに 180°回転する.

③気泡が中央にあるままの場合は気泡管軸が器械の鉛

直軸に垂直であり,調整完了となるが,そうでなけれ

ば,つぎの要領で調整する.

④図 4-14 のように気泡が中央から移動した量の 1/2 だ

け,気泡管調節ねじをピンで回し,気泡を中央に導く.

さらに,残りの 1/2 を整準ねじで気泡を中央に導く.

うまく調整できたかを検査するために②の操作へ戻る.

Ⅲ.視準の仕方

①十字線が も明瞭に見えるように接眼鏡の視度調節

環を回して調節する.

②鉛直締付けねじ,下部締付けねじ(または,上部締付

けねじ)をゆるめ,視準点の方向に回転する.

③照星により見通して,視準点の少し手前で止め,各

締付けねじを締める.

④焦準ねじを操作して,ポールが も明瞭に見えるよ

うにピントを合わせる(図 4-15(a)).

⑤下部微動ねじ(または,上部微動ねじ)を回して,視

準点に十字縦線を一致させる(図 4-15(b)) .

⑥鉛直微動ねじを回し,十字線の交点を視準点に一致

させる(図 4-15(c)).

Ⅳ.水平角の測定(3 倍角)

前章で述べたように,測角法にはいくつかの種類が

あったが,図 4-16 に示す閉トラバースの内角(∠B)を 3

倍角で測定した例を図 4-17 に示す.この測定結果を記

入した野帳は表 4-1 のようである.

図 4-13 整準ねじの操作

図 4-14 気泡管の調整(第 1 調整)

図 4-15 視準の順序

図 4-16 内角の測定(3 倍角)

表 4-1 倍角法野帳記入例(3 倍角一対角)

測定角 累計角 測定角 備考 望遠

鏡の

位置

° ′ ″ ° ′ ″ ° ′ ″ ° ′ ″

A 10 39 30 81 15 50 正 右 3 B

C 222 29 15 211 49 45 70 36 35 70 36 20

C 49 31 20 338 54 40 反 左 3 B

A 197 41 5 211 50 15 70 36 45 70 36 40

Ⅴ.測線長の測距

巻尺の場合は,前述の通りであるが,ここではセオ

ドライトの柱上に搭載される光波測距計による測定方

法を示す.

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①点 B にトランシットを据え付け,点 A を視準し,始読を取り野帳に記入する.

↓ →(始読:10°39′30″)②上部運動で点 C を視準し,水平目盛で角度を読み取り,野帳に記入する(単測角). →(備考,81°15′50″) ↓ 差 81°15′50″-10°39′30″=70°36′20″ ③下部運動(望遠鏡と目盛が固定された状態)で再び点 A を視準する.

目盛は動かない.動かさない.注意!↓ (上部締め付けねじを締め,微動ねじにも触れない)④上部運動で点 C を視準する.(2 倍角) →角度は読み取らなくてよい. ↓

⑤下部副運動(望遠鏡と目盛が固定された状態)で再び点 A を視準する. 目盛は動かない.動かさない.注意!

↓ (上部締め付けねじを締め,微動ねじにも触れない)⑥上部運動で点 C を視準し,終読を取って野帳に記入する.(3 倍角)

→(終読:222°29′15″)

⑦正位の測定角(終読-始読)を求め野帳に記入する. ↓ 差 222°29′15″-10°39′30″=211°49′45″ → ÷3 70°36′35″

⑧望遠鏡を反位にし,上部運動で点 C を視準し,反位の始読を取り野帳に記入する.

↓ →(反位始読:49°31′20″)

⑨上部運動で点 A を視準し,角度を読み取り,野帳に記入する(単測角). →(備考,338°54′40″) ↓ 差 409°31′20″-338°54′40″=70°36′40″ ⑩下部運動(望遠鏡と目盛が固定された状態)で再び点 C を視準する.

目盛は動かない.動かさない.注意!↓ (上部締め付けねじを締め,微動ねじにも触れない)⑪上部運動で点 A を視準する.(2 倍角) →角度は読み取らなくてよい. ↓ ⑫下部副運動(望遠鏡と目盛が固定された状態)で再び点 C を視準する.

目盛は動かない.動かさない.注意!↓ (上部締め付けねじを締め,微動ねじにも触れない)⑬上部運動で点 A を視準し,終読を取って野帳に記入する.(3 倍角)

→(終読:197°41′5″)

⑭正位の測定角(終読-始読)を求め野帳に記入する. ↓ 差 409°31′20″-197°41′5″=211°50′15″ → ÷3 70°36′45″

⑮正位と反位の測定角の平均を求める.これが∠ABC の角度である.

(70°36′35″+70°36′45″)/2=70°36′40″

図 4-17 3 倍角の測定例

① セオドライトを測点 A 上に設置する.測距計の条

件に応じたプリズム定数,気象補正係数を確認し,

入力する.

② 測点 B 上に反射プリズムを設置し,セオドライト

の望遠鏡でターゲットの中心を視準する(セオドラ

イトの視準軸と光波測距計の光波軸の平行調整を

あらかじめ行って置けば,俯仰角調整ねじを使っ

て,光波測距計の視準望遠鏡の十字線と反射プリ

ズムの中心を合わせることができる).

③ 測定のためのスイッチを押すと,しばらくして表

示窓に結果が現れる.これは,斜距離 D である.

水平距離 L は,セオドライトにより天頂角φを測

定し,以下の式によって求める.

L=D sinφ

トータルステーションの場合の測定はこれとほぼ同

様であるが,水平距離が瞬時に表示窓に出力される.

b.トラバース測量の内業

図 4-19 のような測定結果が得られた.図 4-20 に示

すようなトラバースを図面に描くまでの計算手順にし

たがって,処理していこう.

(a)測距計と反射プリズムの位置関係

(b) 表示窓の例

図 4-18 光波測距計による測距

測線 距離(m)

AB 41.388

BC 38.813

CD 39.083

DE 40.635

EA 37.387

図 4-19 測定結果

計算

方位角の計算

方位の計算

緯距・経距の計算

緯距・経距の調整計算

合繊距・合経距の計算

トラバースの作図

図 4-20 トラバース計算

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①測角誤差の調整計算

5 角形の内角の和は,(5-2)×180°=540°であるか

ら,表 4-2 に示すように調整する.誤差が 36"である

から,36"÷5 =7"余り 1"となり,どれか 1 つの角だけ

8",他の角は 7"を加えて調整する.8"を調整する角は

いずれを選んでもよいので,ここでは∠A に加えた. 表 4-2 測角調整

角 実測内角 調整量 調整内角

A 116°55' 34″ +8″ 116°55' 42″

B 101°39' 40″ +7″ 101°39' 47″

C 108°44' 15″ +7″ 108°44' 22″

D 112°34' 30″ +7″ 112°34' 37″

E 100°05' 25″ +7″ 100°05' 32″

計 539°59' 24″ +36″ 540°00' 00″

②方位角の計算

a.右回り 測線 AB の方位角 66°56' 00"

+) 180° 246°56' 00"

-) 101°39′ 47″ 測線 BC の方位角 145°16'13"

+) 180° 325°16' 13"

-) 108°44′ 22″ 測線 CD の方位角 216°31' 51"

+) 180° 396°31' 51"

-) 112°34′ 37″ 測線 DE の方位角 283°57' 14"

+) 180° 463°57' 14"

-) 100°05′ 32″ 363°51' 42"

+) 360° 測線 EA の方位角 3°51' 42"

+) 180° 183°51' 42"

-) 116°55′ 42″ 測線 AB の方位角(検算) 66°56'00" ok

b.左回り 測線 AE の方位角 183°51' 42"

+) 100°05′ 32″ 283°57' 14"

-) 180° 測線 ED の方位角 103°57' 14"

+) 112°34′ 37″ 216°31' 51"

-) 180° 測線 DC の方位角 36°31' 51"

+) 108°44′ 22″ 145°16' 13"

+) 360° 505°16' 13"

-) 180° 測線 CB の方位角 325°16' 13"

+) 101°39′ 47″ 426°56' 00"

-) 180° 測線 BA の方位角 246°56' 00"

+) 116°55′ 42″ 363°51' 42"

-) 180° 測線 AE の方位角(検算) 183°51' 42" ok

③方位の計算

方位は南北線を基準として東西に 90°以下の角度で

表すので表 4-3 のように 4 種類の表し方となる. 表 4-3 方位角と方位

測線 方位角 方位

AB 66°56' 00" N66°56' 00"E

BC 145°16'13" S34°43'47"E

CD 216°31' 51" S36°31' 51"W

DE 283°57' 14" N76°02' 46"W

EA 3°51' 42" N 3°51' 42"E

④緯距・経距の計算

図 4-21 の測線 AB の緯距および経距は,以下の式で

求められる.

測線 AB の緯距 L=A1B1=AB cosθ

測線 AB の経距 D=A2B2=ABsinθ

図 4-21 緯距・経距

そこで,図 4-19 の各測線の緯距・経距を求めると表

4-4 のようになる.

表 4-4 緯距・経距の計算表

緯距 経距 測

距離

(m)

方位

N (+) S(-) E (+) W(-)

AB 41. 388 N 66°56'00" E 16.216 38.079

BC 38.813 S 34°43'47" E 31. 898 22.112

CD 39.083 S 36°31'51" W 31. 405 23.265

DE 40.635 N 76°02' 46" W 9.799 39.436

EA 37.387 N 3°51'42" E 37.302 2.518

計 197.306 63.317 63.303 62.709 62.701

∑L=+0.014 ∑D=+0.008

閉合誤差は

( ) ( )2 2

2 20.014 0.008

0.016

E L D= +

= +

=

∑ ∑

閉合比は 0.01 1 1

197.30 12332 12000

ER

s≈= = =

閉合比が,許容精度(例えば 1/10,000)以内であれば,

つぎのように誤差を配分して調整を行う.

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⑤緯距・経距の調整計算

緯距の調整量

AB :41.388×0.014/197.306= 0.003 BC :38.813×0.014/197.306= 0.003 CD :39.083×0.014/197.306= 0.003 DE :40.635×0.014/197.306= 0.003 EA :37.387×0.014/197.306= 0.002 計 0.014

経距の調整量

AB :41.388×0.008/197.306= 0.002 BC :38.813×0.008/197.306= 0.001 CD :39.083×0.008/197.306= 0.002 DE :40.635×0.008/197.306= 0.002 EA :37.387×0.008/197.306= 0.001 計 0.008

表 4-5 緯距・経距の調整計算

調整緯距 調整経距 測

距離

(m) N (+) S(-) E (+) W(-)

AB 41. 388 16.213 38.077

BC 38.813 31. 901 22.111

CD 39.083 31. 408 23.267

DE 40.635 9.796 39.438

EA 37.387 37.300 2.517

計 197.306 63.309 63.309 62.705 62.705

⑥合緯距・合経距(座標計算) 測点 A を原点(0,0)にとると,以下

測点 B (0+16.213=16.213, 0+38.077=38.077)

測点 C (16.213-31.901, 38.077+22.111)

=(-15.688,60.188)

測点 D (-15.688-31.408, 60.188-23.267)

=(-47.096,36.921)

測点 E (-47.096+9.796, 36.921-39.438)

=(-37.300,-2.517)

検算:測点 E から測点 A の座標を計算すると,確か

に(0,0)となる.

以上の計算をまとめると表 4-6 のようになる.

⑦トラバースの作図

トラバースは以下の順序で作図する.

i)各測点の座標を小縮尺で方限紙に展開する(図4-22).

ii)方眼紙に製図の縮尺,細部測量に必要な領域を見込

んで,製図用紙の大きさを決め,その大きさの輪郭

を描く.

iii)製図用紙に原点の位置を定め,直交した座標軸 X,

Y を描く.

iv)座標軸 X,Y に一定の間隔で平行線を格子状に引く.

v)各測点を展開し,トラバースを描く(図 4-23).

表 4-6 トラバース計算表

緯距 経距 調整緯距 調整経距 測線 方位角α 方位θ cosθ sinθ

距離

(m) N (+) S(-) E (+) W(-) N (+) S(-) E (+) W(-)

AB 66°56' 00" N66°56' 00"E 0.39180 0.92005 41. 388 16.216 38.079 16.213 38.077

BC 145°16'13" S34°43'47"E 0.82185 0.56971 38.813 31. 898 22.112 31. 901 22.111

CD 216°31' 51" S36°31' 51"W 0.80354 0.59526 39.083 31. 405 23.265 31. 408 23.267

DE 283°57' 14" N76°02' 46"W 0.24114 0.97049 40.635 9.799 39.436 9.796 39.438

EA 3°51' 42" N 3°51' 42"E 0.99773 0.06735 37.387 37.302 2.518 37.300 2.517

計 197.306 63.317 63.303 62.709 62.701 63.309 63.309 62.705 62.705

∑L=+0.014 ∑D=+0.008

調整量計算

緯距調整量(m) 経距調整量(m) 測線

l ∑L/∑l 調整量 l ∑D/∑l 調整量 合緯距 合経距

AB 41. 388 0.014/197.306 -0.003 41. 388 0.008/197.306 -0.002 測点

x(m) y(m)

BC 38.813 0.014/197.306 -0.003 38.813 0.008/197.306 -0.001 A 0.000 0.000

CD 39.083 0.014/197.306 -0.003 39.083 0.008/197.306 -0.002 B +16.213 +38.077

DE 40.635 0.014/197.306 -0.003 40.635 0.008/197.306 -0.002 C -15.688 +60.188

EA 37.387 0.014/197.306 -0.002 37.387 0.008/197.306 -0.001 D -47.096 +36.921

計 -0.014 -0.008

閉合誤差

( ) ( )2 2

2 20.014 0.008

0.016

E L D= +

= +

=

∑ ∑

閉合比

0.01 1 1

197.30 12332 12000

ER

s≈= = =

E -37.300 -2.517

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28

図 4-22

図 4-23

⑧トラバースの面積

各測線の倍横距,緯距をそれぞれ,M1,M2…Mn,

L1,L2…L n とすれば,面積 A は以下の式で表される.

A=|M 1L1+M2L2+…+MnL n|/2

ただし,倍横距 Mk は東(E)に向うものは正(+),西(W)

に向うものは負(-),緯距 Lkは北(N)に向うものは正(+),

南(S)に向うものは負(-)の符号を持つ.倍横距 Mk に

は以下の関係が成立する.

M1=y1+y2=y1+y1+D1= 2y1+D1

M2=y2+y3=y1+D1+Y2+D2=M1+D1+D2

M3=y3+y4=y2+D2+ y 3+D3=M2+ D2+D3

Mk=yk+yk+l=yk-1 + Dk-1 + Y k+ Dk=Mk-1 +Dk-l +Dk

倍横距と緯距を用いて面積を求めると表 4-7 のよう

になる.

4.3 敷地内外の高低関係の測量

(1) 閉トラバースの水準測量

トラバースの各測点の標高を求める例を示そう

【使用機器:レベル一式,巻尺,標尺台,筆記用具など】

I.レベルのすえつけ

図 4-24 のようにレベルと標尺の距離(前視と後視)

をできるだけ等しい距離にとる.これは,両標尺と器械

の距離が厳密に等しいときは,視準線と気泡管軸線が

平行でなくてもこれによる誤差は除かれるからであ

る.

表 4-7 面積の計算

調整緯距 L(m) 調整経距 D(m) 倍面積(㎡) 測

線 N (+) S(-) E (+) W(-)

倍横距

(m) + -

AB 16.213 38.077 +38.077 617342

BC 31.901 22.111 +98.265 3134.752

CD 31.408 23.267 +97.109 3049.999

DE 9.796 39.438 +34.404 337.022

EA 37.300 2.517 -2.517 93.884

計 63.309 63.309 62.705 62.705 954.364 6278.635

倍面積:678.635-954.364=5324.271

面積:5324.271/2=2662.136

図 4-24

II. レベルの検査・調整

丸形レベルの中央の接線と鉛直軸とを直角にする.

気泡を中央に導き,器械を 180°回転したとき気泡が

常に中央にあればよいが,気泡が移動したときは,盤

準ねじで移動した量の半分を中央に庚し,残りの半分

をレベルの調整ねじで戻す.この l 回の操作で調整で

きないときは,繰り返して検査する.他の調整について

は巻末に示す.

Ⅲ.標尺の読定

標尺手は,両手で標尺の側面をささえて持ち,鉛直

に立てる.標尺を立てる点は,沈下や移動のしないとこ

ろを選ぶ.地盤のわるいところを避けられないときは,

標尺台を用いるとよい.又,標尺の読みに正確を期すた

めには,図 4-25 のように標尺を視準方向に対して前後

に動かし,読みの 小値を採用すればよい.

図 4-25

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29

Ⅳ.野帳の記入と誤差の調整

図 4-26 のような結果が得られたとする.野帳の記入

方法には前述のように,昇降式と器高式がある. トラ

バースの各測点(盛替点とする)のみの測定では,前者

が便利であり,その例を表 4-8 に示す.

測点 1 を出発して戻ってきたのであるから,誤差は

10. 000-9.994=0. 006m

である.許容誤差を 10 D (D は全測線長[km])とする

と,10√0.3836=6.2mm である.誤差はこれ以内であ

り,各測点の調整量は距離に比例するものとして配分

する.すなわち,測点 2 の場合は

0.006×56.3/383.6≒0.001

測点 3 の場合は

0.0 06×(56.3+48.7) /383.6≒0.002

のように調整する.

図 4-26

表 4-8 野帳記入例(昇降式)

点 距離 後視 前視 昇 降

地盤

調整

調整地盤

1 2.012 10.000 0.000 10.000

2 56.3 2.198 1.213 0.799 10.799 +0.001 10.800

3 48.7 1.636 0.988 1.210 12.009 +0.002 12.011

4 56.5 0.567 1.438 0.196 12.207 +0.003 12.210

5 52.8 1.439 1.644 1.077 11.130 +0.003 11.133

6 36.4 1.235 1.513 0.074 11.056 +.0004 11.060

7 42.9 1.437 1.634 0.408 10.648 +0.004 10.652

8 38.0 1.432 1.836 0.399 10.249 +0.005 10.254

1′ 52.0 1.687 0.255 9.994 +0.006 10.000

383.6 11.956 11.962 2.207 2.213 計 11.956

0.006 2.207

0.006

(2) 交互水準測量

川や谷を越えて水準測量を行うときは,レベルを中

央に置くことはできない.このとき,前視・後視の距

離が著しく異なり不正確になりやすい.そこで,図4-27

のように両岸で同じレベルを用いて測定し,2 組の高

低差の平均を求める.これを交互水準測量という.

いま,図 4-27 において AC=BD=l とし,点 C において

2 点 A,B の標尺の読みを a1 b1,誤差を e1 ,e2',点 D

において 2 点 A,B の標尺の読みを a2,b2,誤差を e2″,

e2″ とする.2 点 A,B の地盤高を HA,HB,高低差を

図 4-27 交互水準測量

H とすると

H=HB-HA = (a1 -e1')-(b1 -e2')

=(a2 -e2″) -(b2-e1″)

e1'=e1″, e2'=e2″であるから

H ={ ( a1 -b1) +( a2 –b2) } /2

たとえば,a1 =1. 432,b 1 = 0.932,b 2 =1. 957,a 2 =2.461

とすると

H= {(a1 -b1) + (a2 -b2) } /2

= {(1.432-0.932)+(2.461-1.957) }

=0.502

(3) 縦断測量と横断測量

i) 縦断測量は道路,水路などの場合に一定線に沿って,

各点の高低と起点からの水平距離を測り,勾配を求め

たり,縦断面図を作ったりする測量である.ふつう,中

心線上に 20m ごとに中心杭を打ち,それに起点(No. 0)

から順に No.1,2,3,・・・の番号を付ける.また,変

化のある箇所や重要な地点には別に枕を打ち,その枕

の番号には前の中心杭からその杭までの距離を記す.

このような杭をプラス杭という.図 4-28 は縦断測量の

例,図 4-29 は縦断測量の結果から縦断面図を作成した

例である.

ii)横断測量は縦断翻量の中心杭およびプラス杭の位置

で,中心線に対して直角方向の地盤の高低を求める測

量で,地形測量や道路工事のための切土・盛土の土量

計算などに利用される.図 4-30(表 4-9)に横断測量の

例を示す.

山林の斜面などは,巻尺とポールあるいはポールだ

けで横断測量を行うこともある(図 4-31 参照).

図 4-28 は縦断測量の例

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図 4-29 縦断面図の例

図 4-30 横断測量の例

表 4-9 横断測量の野帳記入例(単位:m)

測点 距離 後視 器械高 前視 地盤高 備考

1 1.36 12.771 11.411

左 5.20

10.50

16.30

20.00

1.83

2.65

1.21

2.84

10.941

10.121

11.561

9.931

右 6.80

12.70

14.10

20.00

0.89

1.47

0.78

0.32

11.881

11.301

11.991

12.451

No.1 のくいの

地 盤 高 を

11.41 とする.

図 4-31 ポールによる横断測量

(4) 等高線

地形の起伏や建築物などの状況を基準点測量と細部

測量によって位置決定したとき,これらを総合して地

形図を作成する作業を総称して地形測量という.ふつ

う地形は平面図上に等高線で表す.等高線の測定は,セ

オドライト(トランシット),レベル,平板などを組み

合わせて行なわれるが,以下に示すような方法がある.

①直接測定法:図 4-32 において,点 P にセオドライト

をすえつけ,望遠鏡気泡管によって視準線を水平にし

て,標尺の一定目盛が十字線と一致するように,標尺

を次々と移動させて 1,2,3…の各点を求める.セオド

ライトのかわりに,平板を利用することもできる.

図 4-32

②方眼法:図 4-33 に示すように,測量区域を正方形ま

たは長方形に分割し,その交点に立てた標尺をレベル

で視準して標高を求める.各測点間の高さに比例関係

を利用して等高線を曲線で結ぶ.地形の不規則な部分

に対しては分割を細かくしたり,余分の点を取ったり

する.

図 4-33

③横断点法:図 4-34 に示すように,1つの路線に沿って

縦断測量をしたのち,その線上の適当な箇所(多くは一

定距離および地形変化の著しい点)で,これに直角の方

向に数点をとり,その標高と距離とを測定する.これを

図上に示し,その高さから比例関係を利用して等高線

を描く方法である.左右に数点を取るには,巻尺とハン

ドレベルがよく用いられる.

図 4-34

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31

第5章 写真測量

5. 1 概説

写真測量は,写真を媒体としてその中に画像として

盛り込まれた情報を取り出す技術であり,対象物の計

測を目的とした狭義の写真測量(一般的な写真測量)と

対象物の定性的情報を得ようとする写真判読に分けら

れる.後者はリモートセンシングという新しい分野と

して考えられるようになってきたが,両者は完全に独

立したものではなく相互に依存しあって利用されてい

る.

写真測量は,地形図作成をはじめとして広く応用さ

れているが,撮影位置によって

地上写真測量:とくに高低差の大きい山岳地方などに用いる.

空中写真測量:飛行機などから専用のカメラで撮影する.

に分けられる.さらに,空中写真測量は撮影方向によっ

て分けると,以下のようである.

①垂直写真測量:飛行機からカメラの光軸の傾きを 3~

5°以内にして撮影したものを垂直写真といい,この傾

きが 0°のものをとくに鉛直写真というが,このよう

な写真を用いる測量である.

②斜め写真測量:係留気球などから,カメラの光軸を傾

けて撮影した写真を用いる測量である.

従来,三角測量やトラバース測量で骨組を決め,こ

れを基準にして細部を平板測量などで図面化して地形

を作成してきた.この方法で大規模な広域の測量を行

なうと,図化までに相当の年月を要し,現状の地形と

合致しなくなる.そこで,迅速に均一の精度で,かつ広

域の地形図を作成する方法として写真測量が発達して

きた. 近はコンピュータを使って処理するデジタル

画像の撮影技術や図化機の自動化などの研究も盛んに

行なわれている.

5. 2 写真測量の手順

写真測量による地形図作成の手順を図 5-1に示す.撮

影間隔は図 5-2 に示すように,飛行方法の重なり(エン

ドラップ)を 60%とし,コース聞の重なり(サイドラップ)を

30%とする.

飛行高度を H,レンズの焦点距離を f とすると,写

真縮尺は

l/mp=f/H

である.また,写真縮尺(l/mp)と地形図の縮尺(l/mt)には

以下の関係式が成立する.

mp=M√mt

ただし,M は係数(200~400)で,普通 250 位にとる.

撮影高度(H)とある図化機で描画することのできる

図 5-1 写真測量の手順

図 5-2 空中写真の撮影

図 5-3 対空標識の例

小等高線間隔(⊿h)には以下の式が成り立つ.

H=C⊿h

ここで,C は C フアクターといい,撮影条件,図化

機の性能,地形などのよって異なるが,高級図化機ほ

ど値が大きい.

空中三角測量のための地上基準点を標定点という.

標定点は,既設の三角点などを用いてもよいが,その

位置に対空標識を設置して写真上で容易に確認できる

ようにする.対空標識は図 5-3 に示すような十字形・

三射形・正方形などが用いられている.撮影および図化

作業に必要なこの標定点を設置する作業を標定点測量

といい,水平位置および標高を決定する作業である.

通常の基準点測量(三角測量,三辺測量など)と根本的

に異ならないが,撮影コースの要点に離れて設置する

必要がある.

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32

設置した対空標識が写真上において明瞭に確認する

ことのできない場合,または対空標識を設置しないで

撮影した写真から図化する場合に,現地において写真

上の明瞭な地点に偏心(目的の地点から近傍の点にず

らすこと)を行なって表示する作業を刺針作業という.

空中三角測量とは,写真上の点の位置を測定する機

械(コシパレータなど)により,標定点などの座擦を測

定し,調整計算を行なったのち,それらの水平位置お

よび標高を定める作業をいう.隣接する写真画面の重

複部をステレオモデルといい,図化はステレオモデル

ごとに行なわれる.空中三角測量では実体精密図化機

によって,各モデルと隣接モデルとの接合を正確に行

い,コース単位またはブロック単位の広範囲わたる地

域の基準点を定めるのである.

5. 3 実体視の原理とその応用

視覚で遠近が判定できるのは,網膜に結像される像

の位置がずれることによる.図 5-4 はこれを説明する

もので,点 A は a1, a2に点 E は e1,e 2に結像する.左

右の眼の間隔は約 65mm である.遠方にある物体相互

の関係を判定するには,左右の限に相当する所にカメ

ラを据え付けて,左右の眼の間隔(基線長 B)を大きくす

ればよいことが分かる.写真測量はこのような原理に

基づいて写真撮影がなされている.

基線長 B を大きくとって,観測範囲を大きくして実

体図化をする機械を図化機という.図化機は特殊機械

なので,どこにでもあるというものではないが,図 5-5

のような反射実体鏡は,一対の写真により実体視の原

理を習得するための簡単な道具である.

以下に,反射実体鏡により,高低差(比高)を求める

方法について示す.

①右眼で右側撮影点から写した写真を,左限で左側撮

影点から写した写真をみる. 2 つの写真像が寄ってき

て,1 つに融合したとき,その写真像が鮮明に見え,

実体感を得ることができる.

②一方の写真上で明確な点 Sを刺針する.刺針していな

い一方の写真上で,点 S に対応する点に測針の先端を

おく.実体視して点 S に針先が実体的に一致したとき,

軽くついて測針をはずす.

③左右の針穴を実体視して,縦視差を除く.縦視差は,

図 5-6(a)の場合であり,実体鏡の位置を直して,図

5-6(b)の位置関係になるようにする.

④針穴の実体像が空中または地下に見えないかどうか

を点検し,誤りがないことを確認して針刺する.この点

S'は点 Sの移写した点であるという.

図 5-4

図 5-5

図 5-6

図 5-7

⑤図 5-7 のように写真 I,写真Ⅱの指標をそれぞれ直

線を結んで,主点(写真画面の中心点)P1,P2を決め刺針

する.

⑥実体視して主点 P1,P2 を写真Ⅱ,写真Ⅰに移写し,

これを P1',P2'とする.この主点を連ねる線 P1P2',P2P1'

を主点基線という.

⑦各写真上で P1P2',P2P1'を結ぶ直線を引き,主点基織

が一直線になるようにさせながら,写真の間隔を調整

して完全な実体視をつくる.

⑧比高(高低差)を求めようとする点 A および B を決め

る(図 5-8).

⑨視差測定かん(図 5-9)で 初に点 A に両測線をあわ

せ,測標の実体像が厳密に写真面に接着するように間

隔を調節し,そのときの目盛 l1を読み取って記録する.

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視差測定かんは,回転握りの操作によって実体測標の

刻まれたガラス板の相互の間隔が変化ずるようになっ

ており,0.01mm まで読み取れるようになっている.

⑩地点 B を同じようにして測定し,目盛 l2を読み取り,

視差差⊿l= l1- l2を求める.

⑪2 枚の写真の主点基線長を正確に測定し,主点基線

の平均値 b を求め,撮影高度 H(m)を写真に写っている

高度計から読取ると,比高 h(m)は

h=⊿l ・H/b

によって求めることができる.

5. 4 実体写真測量の原理および標定

実体図化機は,「2 つの投影器に 1 対の写真をかけ,

撮影時の幾何学的状態(位置と傾き)をそのまま再現す

れば,対応する光束の交点の集合は被写体の表面と全

く合同なモデルを作る」という,再現の原理に基づい

てつくられている.写真の位置は X,Y,Z の 3 つの座

標で表され,傾きはこの 3 つの軸のまわりの回転角 φ,

ω,κとして表現される(図 5-10).これらの 6 つの量を

決めることを標定というが,標定作業には,地上とは

無関係に 1 対の写真の関係位置・関係傾斜を定める相

互標定と地上の 4 個( 少限 3 個)の既知点によって,

その方位と縮尺を正して水準面を修正する絶対標定等

に分けられる.

(1)相互標定

縦視差を投影器で調整する操作を相互標定という.1

対の写真を投影器にかけ,予定するステレオモデルの

縮尺(機械縮尺という)に応ずる概略の撮影高度(投影

高度) z,および空中基線 bxを与え,つぎのようにして

φ,ω,κの修正を行なう.

①ステレオモデルに図 5-11 に示すような 6 点を選ぶ.

1,2 は両写真の主点(写真画面の中心点)またはその付

近,3,5 および 4,6 は両主点の上下両側で 1,2 の主

点基線長 b に等しい距離 a にするのがよい.

②両写真を投影した際,標定が完全でない場合は,こ

れらの 6 点のうちいずれかの点が上下に離れて見える

現象,いわゆる縦視差が生じ,商写真の関係位置が正

しければ縦視差が生じない.したがって,この

縦視差を消すようにφ,ω,κを修正すればよい(図

5-12).

(2) 絶対標定

相互標定が終っただけでは,2 つの投影器の関係位

置が定まるだけで,両投影器の地面に対する関係位置

はまだ定まらない.そこで,これを定めて方位と縮尺を

図 5-8 実体視による視差差の測定

図 5-9 視差測定かん

図 5-10 実体写真測量の原理

図 5-11 相互標定の点の配置

図 5-12 相互標定要素の作用

正して水準面を修正するが,この操作を絶対標定とい

う.絶対標定に必要な標定点は,理想的な関係位置にあ

る場合,座標ⅹ,y と標高 H が既知である 2 点と,標高

H が既知である点の計 3 点が 小限必要である.また

は,ステレオモデルの 4 すみに座標ⅹ,y と標高 H が既

知である点が各 1点ずつ,計 4個あることが望ましい.

2 標定点間の既知距離に応じて,ステレオモデル上に

おける関投影器の間隔が所要の縮尺になるように修正

し,つぎに両点の方位にあわせてステレオモデルを旋

回し,方位の規整を行なう.水平面の決定は,コース

に直角方向の 2 個の水準点,およびコースに平行方向

の水準点により諸量を修正する.

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(3) 接続標定

一対の写真の標定が完了すれば,連続して撮影した

写真を次々と接続して標定しなければならない.この

操作を接続標定という.

写真 I とⅡのステレオモデルによって,Ⅱの主点付

近とその上下に各 1 点ずつ,計 3 点の明確な位置と高

さを正確に測定しておき,写真ⅡとⅢのステレオモデ

ル上の該当する点をそれぞれの地点にあわせる.これ

により,ⅡとⅢのステレオモデルの縮尺および水平面

の傾きが修正される.以下ⅢとⅣ,ⅣとⅤのように標定

を繰り返す.

5. 5 写真判読

(1) 写真判読の基礎

写真上に現われている各種の地形や地物を観察して,

的確な判定をすることを写真判読という.写真判読は,

専門的な知識と経験が要求されるが,その基礎をなす

ものとしては,一般につぎのようなものが挙げられる.

①撮影条件:飛行高度,カメラの焦点距離,撮影年月

日・時刻などで,この条件により縮尺を決定したり,

季節によって写る植物などの判読に役立たせる.

②平面形状:大きな建物,鉄道,道路,河川など特有の

形から判読できる.既製の地形図などを参照すること

も必要である.

③陰影:陰影によって立体的な構造が判る.

④色調:農作物,植物など色調によって判読できる.ま

た,濃淡によって地下水位の程度も区別される.

(2) リモートセンシング

リモートセンシングは,「航空機や人工衛星などの

プラットホームに搭徹されたセンサを用いて,地表

物体や空間・流体などの諸現象を電磁波特性を利用

して,広域かつ間接的に調査する手法の総称」であ

る.

写真測量は可視光線の波長帯(0.4~0.7μm)を使用

した画像によるものである.電磁波は可視光線を含

むすべての波長帯に対する用語であり,したがって,

リモートセンシングは写真測量を含むものと考えら

れるが,一般には地球的規模の遠隔観測を意味して

いるようである.リモートセシシングの応用例とし

てはつぎのようなものがある.

①気象… 天気予報など

②農業・林業… 農作物・植物の分布状況の把握など

③環境… 水質汚染調査など

④都市… 土地利用状況の把握など

⑤その他… 災害調査など

図 5-13 リモートセンシングによるデータ収集

5. 6 写真図の縮尺とモザイク

1 枚の空中写真の縮尺を求めるにはつぎのように行

なう.主点をとおる任意の対角線上に,標高のほぼ等し

い 2 点を選び,その 2 点間の距離を写真上で測り,こ

れを l とする.この 2 点に対応する地上の実距離を実測

または参考図から計算して L とすれば,写真の縮尺は

l /L である.

さて,隣接する写真をはりあわせて作った広い地繊

の 1 枚の写真図をモザイクといい,写真をはりあわせ

ていく作業の方法を集成法という.モザイクをつくる

方法には以下のような方法がある.

①略集成法:撮影したままの写真の重複部分を次々と

はり合わせて写真地図を完成させる方法である.精度

は劣るが,広い範囲の概略を知るためには便利な方法

である.

②厳密集成法:撮影した写真のひずみを修正してはり

合わせて,写真図を完成させる方法である.カメラの

傾きによる写真像のひずみを修正し,鉛直撮影の写真

とし,また,写真の縮尺を所定の縮尺に統一する.こ

の操作を偏位修正といい,ふつうの写真引き伸ばし機

を大がかりにしたような偏位修正機が用いられる.た

だし,偏位修正をしても高低差による像の偏位をなく

すことはできない.

偏位修正機は,つぎに述べる 3 つの条件が必要であ

る.

(a)自動焦点装置付きの条件:自動焦点装置があり,きわ

めて鮮明な像を結ぶものであること.

(b)三面公会条件:どのように傾けても,ネガ・レンズ・

投影面の 3 つの面が常に一線で交わるように自動的に

修正され,どのような場合でも常に焦点が正しくあう

ようにすること.

(c)幾何光学的距離条件:ネガを傾けると,レンズの中心

とは異なってくるので,これに応ずるだけネガをずら

すこと

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第6章 建設工事の測量

6. 1 概要

前章までは,主として現状の地形・地物を測定し地

図作成などを目的とする方法について述べてきた.こ

こでは,これらの測量器機を用いて建設現場において,

工事実施の際に必要な点や線を地面および建設中の基

礎・主体の平面や立面に作業に先立ち標示す方法(測設

と呼ぶ)について述べる.

測設が施工に適切な方法で明確に示されているかど

うかは,工事の能率や仕上がりに大きな影響を与える.

また,現場は各種の仮設物や材料の貯蔵などのために,

損傷したり汚染したりすることがあるので,これらの

障害に対応するとともに,工事の進行中も常に検査し,

正しく工事が行なわれるように気をつけなければなら

ない.

測設に使用する機器には,前述のレベル,セオドラ

イト,巻尺などのほか,補助器具として以下のような

ものがある(図 6-1).

①尺づえ:短い距離や高さを測るときに用いる約 4cm

角・長さ約 4m 位で 20~50cm ごとに目盛を付けたひの

きなどの良質の材料で作った尺.

②おおがね:板を組合せて作った大型の直角定規(辺の

比を 3:4:5 などの関係を用いてつくる).

③差し下げ定規:根切りの幅や深さを検査する T 型の定

規.

④折尺:携帯が便利なように折りたたみのできる 1m 位

の物差し.

⑤さしがね(かね尺):小さい角の直角の測設や検査に用

いる金属製の L 字型の物差し.

⑥水糸:水平線を示すために用いる糸.

⑦墨つぼ:2 つの直線を結ぶ直線を墨線で示すときに用

いる.

⑧棒状水平器:水平および鉛直の測設や検査に用いる.

⑨下げ振り:下方の点を上方へ移したり,あるいは鉛直

を検査する場合に用いるもの.

⑩ゴム管水平器:金属性の水槽の下部にゴム管をつなぎ,

その先端にガラス管を取り付けたもので,水槽の水面

とガラス管の水面が同一面上にあることを利用し,等

高点の測設に用いる.

6. 2 測設の標示

①やりかた(水盛やりかた):やりかたというのは,施工上

必要な中心線・基礎幅・根切り深さ・水平線などを示

すために設ける仮設物であり,図 6-2 に示すように水

ぐいと水ぬきからなっている.水ぐいは,適当な間隔で

図 6-1 測設のための補助器具

2 本打ち込み,その上端をいすかに切っておくのが普

通である.水ぐいに一定の高さをそろえた水ぬきを打

って,水ぬきの上端を高さの基準として,その面に基

礎中心線・基礎幅・根切り幅などを記入しておき,中

心線の位置には小さい釘を打っておく.建物の隅のや

りかたをすみやりかた,間仕切・見通し箇所のやりかた

を平やりかた,鉛直方向に用いたやりかたをたてやりか

たという.

②なわ張り:建物の柱や壁の中心の位置を,敷地上にな

わを張って示すことをなわ張りという.

③水盛り:建物を水平に立てるために必要な水平面を

定めることを,水盛りという.

④地ぐい:図 6-3 に示すように柱や基礎の中心点などを

示すために地中に打ち込んだ小さいくいで,やりかた

では工事の障害となる場合に,やりかたの代用とした

り,地面のすき取り,割ぐり石,敷砂利,捨コンクリ

ートなどの高さを出すための基準として用いたりする.

⑤地墨・立て墨・水墨:地墨は,床面に示した墨線で,

中心線,限界線などを示すのに用いる.立て墨は立面

上に示した鉛直線で,中心線,仕上げ線などを示すの

に用いる.水墨は,壁面,柱面に標示した水平の墨線

で,高さの基準とする.これらの墨線は,正しい位置

に示すことができない場合は,適当な距離だけ離れた

位置に標示する.この線を逃げ墨といい,逃げの距離

と方向を記入しておく.

6. 3 各種の測設方法

(1) 直線の測設

a.水糸による場合:図 6-4 のように,水糸に約 5m 間隔に

白墨をこすりつけて,A,B 間に強く張り,2~3 回引

き上げてはじくと床や壁面などに短い点の連なりとな

って白線が残る.この線を墨線で結べば長い直線が得

られる.

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b. セオドライトによる場合:図 6-5 において,A 点にセオ

ドライトをすえつけ,B 点を視準し,その視準線上に

C,D 点をとって,これらを連ねれば直線が得られる.

図 6-6 のように,A 点にセオドライトがすえつけられ

ないときは,AB 線上と思われる点にすえつけ,B 点を

視増し,望遠鏡を反転し A'点を得る.セオドライトを

{b/ (a+b) } ×AA' だけ移動すれば AB 上に入れるこ

とができる.a. b を目測で求めても,3~4 回程度この

操作を繰り返すとセオドライトを AB 上に入れること

ができる.

(2) 2 斜線の交点の測設

図 6-7 において,2 直線 AB と CD の交点を測設する

には,A 点にセオドライトをすえつけて B 点を視準し,

その延長線上で交点であると思われる前後に 2 点 P1,P

2を設け,P1,P 2間に水糸を張る.つぎに,点 C にセオ

ドライトを移し,D 点を視準し,その延長線上で交点

を求め,ここに打ったくいに釘を打てば交点の測設が

できる.

(3) 角の測設

a.巻尺による場合:直角は図 6-8 のように,辺の比 3:4:5

を利用したり,2 等辺 3 角法などによって測設するこ

とができる.

任意の角の場合は,図 6-9 で,BC=ABtanαであるか

ら,計算によって求め,点 C を設置し,点 C と A を結

べば∠αを測設することができる.

b.セオドライトによる場合:図 6-9 において,A 点にセオド

ライトをすえつけ,下部運動で B 点を視準し,始読を

読み(目盛を 0°に設定しておく),上部運動で∠αを得

るように望遠鏡を回転させ,その視準線中に C 点を設

ければよい.

図 6-2 やりかた

図 6-3 地ぐい

図 6-4 水糸による測設

図 6-5 セオドライトによる測設

図 6-6

図 6-7

(a) 3:4:5 法

(b)二等辺三角形法

図 6-8 角の測設(巻尺の場合)

図 6-9 角の測設(セオドライトの場合)

(4) 水平線の測設

a. ゴム管水平器による場合:小規模の工事(たとえば、木

造住宅の水盛りやりかた)にはよく使われる方法であ

り、長いゴム管の先についたガラス管の水位はタンク

の水位に等しいから、これを利用して各点で等高点を

測設することができる.

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b. レベルによる場合:図 6-10 において、基準点 A から h

の高さを測設するには以下のように行なう.

i )適当な地点にレベルをすえつけ、基準点 A に立てた

標尺を視準して、その読み a をとる。

ii)a-h=b を求め、各 B,C, D 点でくいにそって標尺

を上げ下げして b が読めるようにする.

iii)視準線と b が合致したとき、標尺の底面に沿ってく

いの側面に線を記入する.

(5) 勾配の測設

a.レベルによる場合:図 6-11 のように、必要な点の l1,l2

…を測れば、h1,h2…求まるから、水平線の測設で求め

た各等高点から、それぞれの値を測って測設を行なう

ことができる.

b. セオドライトによる場合:図 6-11 において、tanθ=h/l=s

である.これより θを求め、鉛直目盛盤を正しく合わせ

て各点を規準し測設する.

(6) 鉛直線の測設

a.下げ振りによる場合:下げ振りをつるし、その水糸の位

置で求める.または、下げ撮りの水糸の上下の 2 方向か

ら同方向に等距離の 2 点を設けてそれを墨線で結ぶ.

b. セオドライトによる場合:十分調整されたセオドライト

を用い、標示する壁面から直角方向にできるだけ離れ

てすえつけ、水平回転を止めて、望遺鏡を鉛直に動か

し上下 2 点を測設する.この 2 点を結んだたて墨をうつ.

図 6-10 図 6-11

(7) 曲線の測般 道路・鉄道・運河のような交通を目的とする通路や

用水路・排水路などの水路のような線状をなす構造物,

を路線といい,このような路線計画,設計および敷設

することを目的として行なう測量を路線測量という.

路線において使用される曲線には図 6-12 のような

ものがある.

円曲線

単心曲線 複心曲線 反向曲線 ヘアピン曲線

平面曲線

緩和曲線 3 次放物線 クロソイド曲線

曲線

縦曲線 放物線 円曲線

図 6-12 曲線の種類

a. 単心曲線の測設

単心曲線の測設に必要な用語・略号を図 6-13 に示す.

交角 I を測定し曲線半径 R を決めると,以下の関係式

によって諸量を求めることができる. (1) T.L.=Rtan(I/2)

(2) C.L.=RI=πR I0 /180≒0.0174533 R I0

ただし,I はラジアン単位,I0は度単位

(3) E=R {sec(I/2)-1}

(4) M=R {l-cos( I/2)}

(5) C=Rsin( /2)

(6) δ=l/(2R) [rad]≒1718.87 l / R[分]

ただし,l は AG の弧長で,I の単位は,式(2)以外は度分秒.

A:曲線始点(B.C.) B:曲線終点(E.C.) V:交点(I.P.) ∠BVD:交角(I)

OA=OB:曲率半径(R) VA=VB:接線長(T.L.) P:曲線中点(S.P.)

VP:外割(E または S.L.) PQ:中央縦距(M) AB:弦長(C)

APB:曲線長(C.L.) ∠VAG:偏角(δ) ∠AOB:中心角(∠AOB=I)

∠VAB=∠VBA:総偏角 (∠VAB=∠VBA=I/2) G,H,J:中心ぐい

図 6-13

単曲線の測設法には,(a)偏角弦長法,(b)弦角弦長法,

(c)偏角動径法,(d) 偏距法,(e)オフセット法などがあ

る.(a)はセオドライト(トランシット)により図 6-14 に

示すような偏角を測り,巻尺等で弦長を測って曲線を

設置する方法で, も多く用いられる.以下,(a)の方

法の概略について述べる.

図 6-14

まず,始点 A(=B.C.)から交点 V(=I.P.)を基準方向

0°に定め P1,P2,P3,B(=E.C.)に対する偏角 δ1,δ2,

δ3,δ4を計算する.すなわち,偏角の単位を[分]として

δ1=1718.87AP1/R≒1718.87AP1/R

δ2=1718.87AP2/R≒1718.87AP2/R

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δ3=1718.87AP3/R≒1718.87AP3/R

δ4=1718.87AB/R≒1718.87AB/R

である.厳密には弧長を測定すべきであるが,めんど

うなので弦長とするのが普通である.l/ R<1/10 の場合

は弧長=弦長としてさしつかえない.

始点 A(=B.C.)にセオドライトをすえつけて,V(=

I.P.)より偏角を δ1 だけ右に振り,この視準線上に弦長

AP1 の距離をとり 初の杭を打つ.順次 δ2,δ3 に対し

て弦長 AP2,AP3 の距離をとり,杭を打つ. 後に弦長

AB の距離をとり,E.C.点と一致していればよい.また,

許容誤差以内であれば,中心ぐいを順次補正するが,

そうでなければ 初から作業をやり直す.

b. ク口ソイド曲線の測設

道路の緩和曲線には,主にクロソイド曲線が用いられ

る.図 6-15 において OP はクロソイド曲線であり,曲

率は原点 O において 0,点 P において l/R である.クロ

ソイド曲線は曲線長に反比例して曲率が減少するとい

う性質があり,次式が成り立つ.

1/R=C×L

ただし,C は定数である.ここで RL=1/C≣A2 として,

この式をクロソイドの基本式という.A はクロソイド

のパラメータと呼ばれる.

クロソイド曲線の測設にはクロソイド曲線表を用い

ると便利であるが,コンピュータによって計算するこ

ともできる.

主接線から直角座標による方法で測設するには,次

の順序で行なう.まず,円曲線部の半径 R およびパラ

メータ A あるいは緩和曲線長 L を定める.このとき,

R/3≦A≦R になるようにするのが望ましい.

次に,原点O(K.A.)から,各中心ぐいまでの曲線長

L1,L2,…に対してクロソイド表(またはコンピュータ

による計算)により,これらのくいに対するクロソイド

曲線の諸量を求めて,各中心ぐい座標を求める.これを

地上に設けるには,まず,原点O(K.A. )にセオドライ

トをすえつけ,交点(1.P. )を視準する.この視準線を X

軸とし,各中心ぐいの X~標値に対する距離を測定し,

印をつける.次に,これらの印の位置にセオドライト

を移動してすえつける.そして原点O(K. A.)を視準し,

上部運動で 90°振って Y 軸とする.この Y 軸の視準線上

に Y 座標値に対する距離を測定し中心ぐいの位置が決

定する.

6. 4 各種工事の測設

工事の内容によって測設は多少異なるが,基本は

点・角・線を各工事にあうように標示すればよい.

O:クロソイド原点,M:クロソイド上の点 P における曲率の中心,OP:クロソイド曲線長

OX:主接線(クロソイド原点における接線),τ,σ:点 P における接線角,極角

X,Y:点 P の X 座標,Y 座標,R:点 P における曲率半径,⊿R:移程(シフト)

XM,YM:点 M の X 座標,Y 座標,TK,TL:短接線長,長接線長,S0:動口径,N:法線長

U: TK の主接線への投影長,V: N の主接線への投影長,T: X+V=TL+U+V

β:点 M の X 座標から交点(I. P.)までの距離,α:β+XM,PQ;同曲線

図 6-15 クロソイド曲線

(1)仮設工事測設

設計図面に従って,地ぐいを打ち,地なわを張って

なわ張りを行い,建築物の位置が決まると根切りに支障

のないように,やりかたを設けて,水盛り・心出しを

する(図 6-16).

(a)なわ張り・やりかた (b)水盛り・心出し

図 6-16 仮設工事の測設例

(2) 土工事の測設

土地を正方形・長方形に区分して,その交点に木ぐ

いを打ち,木ぐいに施工基面の位置を水準点から求め

てしるしておく.根切りは,やりかたの柱心・壁心に水

糸を張り,差し下げ定規によって深さを測る(図 6-17).

(3) 基礎工事の測設

捨コンクリート面に,柱心・壁心・型わくの限界線

を標示して,基礎背筋・型わくの基準を測設する(図

6-18)

図 6-17 図 6-18 基護工事の測設例

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(4) 主体工事の測設

a. 鉄骨工事

柱の頂部から鋼線の下げ振りをさげ,定規をあてて,

鋼線を基準として上部と下部の離れ寸法が等しくなる

ようにひずみ直しする.

セオドライトを用いるときは,柱の頂部・下部を通る

中心線を視準して垂線を決定する(図6-16).

b. 鉄筋コンクリート工事

鉄筋コンクリート工事の柱・壁の中心線を上階に移す

には,図6-17のように下階の逃げ墨の交点を上階に引き

上げて,床面に地墨で標示する.これを基準として,型

わくの限界線の地墨を測設する.

図6-16,鉄骨工事の測設例

図6-17 鉄筋コンクリート工事の測設例

(5) 仕上工事の測設

仕上工事の測設は,水平・鉛直の基準線,開口部取

り付け位置,各仕上面を,床・柱・壁などに墨で標示

する(図 6-18).

図 6-18 仕上工事の測設

第7章 面積および体積の計算

7. 1 面積の計算

(1) 三斜法

図 7-1 のように多角形を三角形に分割して,底辺 Ci

と高さ hiとから各三角形の面績を求めて

多角形の面積:S= (∑ci・hi)/2

とする方法を三斜法という.精度の低下を防ぐため 1/3

≦c/h≦3 の範囲とする.

図 7-1 三斜法

(2) 三辺法

三角形の三辺を a,b,c とすると 面積:S = ( )( )( )s s a s b s c− − − ただし,s=(a+b+c)/2

である(図 7-2).

図 7-2 三辺法

(3) メッシュ法

図 7-3 のような任意の図形において,メッシュ(長方

形または正方形)の網をかぶせる.メッシュの単位面積

u を求めておいて,この単位メッシュがいくつあるか

を数えて,N 個あったとすると,

面積 S=u・N

である.ふつう各メッシュに半分以上含まれる数をカ

ウントする.

図 7-3

(4) 台形公式

図 7-4 のような面積は

S = {xl(y0 +y l )+( x2-xl)(yl +y2)+…}/2

となる.間隔が等間隔の場合は

S =l { y0 +y n )+ 2 (yl +y2 +…yn-l )}/2

によって求めることができる.これは本線からのオフ

セットで区切られた図形を台形(曲線部分を直線)で近

似したもので,台形公式と呼ばれる.

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図 7-4

(5) シンプソン公式

台形公式では,曲線部分を直線で近似したものであ

るが,曲線を 2 区間ごとに,放物線で近似するシンプソ

ンの第 1 法則と 3 区間ごとに 3 次式で近似するシンプソ

ンの第 2 法則がある.それぞれ以下のように表される.

S = l { y0 +4(yl +y3+y5 +…)+2(y2 +y4+ y6 +…)+ y n }/3

S =3 l { y0 + y n +3(yl +y2 +y4+y5 +…)+2(y3+ y6 +y9 +…) /8

(6) プラニメータによる方法

不定形の図面上の面積を求めるのに,図 7-5 のよう

なプラニメータを用いる.

図 7-5

(7) 座標法

多角形の各点の座標を(xi,yi)で示すとき

S={( yl +y2) (x2-xl)+ (y2 + y3) (x3-x2)

+ (y3 + y4) (x4-x3) + (y4 + y1) (x1-x4)}/2

となる.一般に,n 角形の場合は以下のようになる.

S={( yl +y2) (x2-xl)+ (y2 + y3) (x3-x2)

+ (y3 + y4) (x4-x3) +…+ (yn + y1) (x1-xn)}/2

図 7-6

7. 2 体積の計算

(1) 断面法

図 7-7 のような多角形よりなる両底面が平行で側面

がすべて平らである立体を擬柱という.この体積は

V=h (S1+4Sm+S2) /6

となる.これを擬柱公式という.擬住公式で

Sm= (S1+ S2) /2

とすると,

V= h (S1+ S2) /2

となるが,これを端面公式という.

図 7-7

(2) 点高法

図 7-8 のような直四角柱の頭を斜めに切断した立体

の体積 V は,底面積を S,側面の高さをそれぞれ hl,h

2,h3, h4とすると.

V=S・(h1+h2+h3+h4)/4

となる.また,図 7-9 のような直三角柱では

V=S・(h1+h2+h3)/3

である.

図 7-8 図 7-9

図 7-10 のような格子の交点の標高が既知のとき,

V=S・(∑h1+2∑h2+3∑h3+4∑h4)/4

となる.また,図 7-11 のような場合は

V=S・(∑h1+2∑h2+…7∑h7+8∑h8)/ 6

となる.

図 7-10 図 7-11

(3) 等高線法

地形図の等高線を利用して,土量やダムの貯水量な

どを次式で算出することができる.

V=h・{Sl+Sn+2 (S3+S5+…+Sn-l)+4(S2+S4十…+Sn-2)}/3

ただし,h:等高線間隔,S1,S2…:各等高線に囲まれた

面積である. S1,S2…はプラニメータなどで測定する.

図 7-12 ダムの貯水量の計算

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第8章 付録

トランシットの調整法

トランシットでの観測を行う前には、十分な調整が必要

である。

1)平盤気泡管の調整

・まず地盤堅固な場所に三脚を展開し、トランシットを据え

付ける。

・平盤気泡管と調整ねじで、平盤(下盤)を水平になるよう調

整する。

・調整は平盤気泡管の位置を変えながら複数回行い、十

分に行う。

これにより、鉛直軸が調整される。

鉛直軸の狂いは、トランシットの器械誤差の中でも、正

反の平均などでは消去できないため、その調整は非常に

大切である。

2)十字線の調整

十字線とは、望遠鏡の視野内に表示される線のことで、

横線が水平軸、縦線が鉛直軸にあたる。

まずは、十字線の傾きを調整する。これには、望遠鏡を

上下させたときに目標物が十字縦線に沿って移動するか

どうかを調べる。動きが縦線からずれる場合は、十字線の

わくを回転させて調整する。

次に、視準軸と水平軸の直交を調整する。この直交が正

しく調整されている場合、高低角ゼロのとき、正位と反位で

の観測結果の差はちょうど180°となる。よって、トランシット

と同じ高さの目標点を正位と反位で観測し、その差を調べ

る。差がある場合は、その1/2の角度の視準軸誤差があ

るので、微動ねじで調整する。

3)水平軸の調整

水平軸と鉛直軸の直交がずれていても、高低角ゼロで

は誤差は生じない。しかし、高低角が大きくなるに従い、誤

差は大きくなる。よって、水平軸の調整は次のように行う。

・高い位置にある目標物(P 点)に焦点を合わせ(視準し)、

そのまま望遠鏡を下げて地上に十字線の交点をマーキン

グ(A 点)する。

・次に、望遠鏡を反位にして P 点を視準し、同様に望遠鏡

を下げる。

・このとき、十字線の交点が A 点と一致しない場合、B 点と

してマーキングする。

・水平軸が正しければ、地上の点は A 点と B 点の中間点 C

点となるはずだから、

・微動ねじで器械をまわし C 点を視準し、その位置から望

遠鏡を上げたときに P 点に一致するよう、水平軸の傾きを

調整する。

4)望遠鏡気泡管の調整

これはトランシットで水準測量を行う際に必要な調整で、

視準方向を水平に調整するための気泡管である。

水準測量の項を参照。

5)高度目盛盤の調整

視準線が水平方向のときに、正しく0°を指すよう、バー

ニアを調整する。

円形気泡管調整

円形気泡管の気泡の位置にずれがないか確認し、ずれ

ているときは、調整を行う。

① 整準ねじを使って気泡を○の中央に入れる。

② 本体を 180°回転させる。気泡がずれなければ正常

であが、ずれた場合は、次のように調整する。

③ 整準ねじで、ずれ量の半分を戻す。

④ あとの半分は、六角レンチを使い、円形気泡管調整

ねじをまわして、○内に気泡を入れる。

⑤ 再度本体を 180°回転させる。気泡がずれなければ

調整完了。ずれた場合は、再度手順 ③、④ を繰り返す。