13 14 systemaethicaetainaka(ver.2015) - 田四十四庵...

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13 第2 What shall I do? のはじまり── 源流思想 初期ギリシア哲学 ──ミュトスからロゴスへ(西洋古代哲学) (1) 頃、ギリシアの (2) と呼ばれる人々が出現し、万物の根源 (3) )を論じた。 [024]ギリシア哲学の見取り図 自然哲学(タレス (4) 等) アルケー (5) (6) アレテーと無知の知 (7) (8) (9) 質料・形相 ヘレニズム思想( (10) (11) 禁欲主義と快楽主義/アタラクシアとアパテイア ギリシア哲学は (12) (13) の源流 1)theory(← θεωρία)(14) →近代では< (15) >だが、 ギリシアでは「 (16) (見ること)」を意味した。 テオリア θεωρία:見る →理論:theory プラクシス πρᾱξις :作る →実践:practice cf (17) 2)logic(← λόγος)(18) →近代では主として< (19) >の意味に用いられる ロゴスの意味 (20) (21) ことばをなりたたせているもの (22) 理性によって発見されるもの http://tainaka.sakura.ne.jp/ ホームページ http://1drv.ms/1aYKYEC データ格納場所 14 Systema Ethicae Tainaka (ver. 2015) [025] 自然哲学 ◆主な自然哲学者 (23) αρχη)を追求した 人物 アルケー ことばと注釈 (24) (25) (26) (小アジア)人。次の二人も。 アナクシマンドロス ト・アペイロン τό ἄπειρον(無限なるもの)→規定不能 アナクシメネス 空気 空気は無限で無規定だから。 (27) τὰ πάντα ῥεῖ(28) 同じ川に再び戻ることはできぬ。 (29) ピタゴラス (30) 魂の浄化をめざし,数と比例を崇拝 (31) 「有るものは有り,有らぬものは有らぬ (32) (変化しない何か) →ヘラクレイトス的変化の否定 エンペドクレス 火・水・土・空気 多元論。4元素は愛・憎で離合集散。 (33) (34) 原子論。「人の習わしでは、色・甘さ・苦さ。 (分割不可能なものしかし、真実には原子と空虚」 [026] ミュトスからロゴスへ──自然哲学の意義 (35) (神話から理性へ):ロゴスによって万物の根源を説明する 1)ミュトス: (36) (37) μύθος わからないことは「神様」で説明。 ex ヘシオドス『神統記』 ポリスの交流で「神話」の食い違いを知る 2)自然哲学者:万物の根源(=わからないこと)を (38) で考え, 合理的に説明した。 ロゴスを使ったテオリアによって (39) できる。 自然哲学は (40) (ことばを使った理性に従って思索する)の源流になった ex 科学(哲学)の父=タレス 15 http://tainaka.sakura.ne.jp/ ホームページ http://1drv.ms/1aYKYEC データ格納場所 ソフィストからソクラテスへ BC 5C頃、ギリシアの (1) (2) と呼ばれる人々が出現した 後、 (3) が現れ、 (4) (よく生きること)を説いた。 [027] ソフィスト ソフィスト:「 (5) (ソフィア σοφια)のある人」。職業教師。 青年達に (6) を教えた。 (7) から、「詭弁家」と評される。 (8) (9) <ある>ということについては <ある>ことの。<ない>ということについては<ない>ということの。 [028] ソクラテス (10) (11) のアポロン神の神託(「 (12) 」) (BC470 ? で、フィロソフィア(知を愛する。 (13) )の ~ BC399) 生活に入る。青年を腐敗させる罪で死刑。 (14) 」。 [029] 無知の知と問答法 (15) ソクラテスの方法。相手(知者?)と (16) ことで相手の無知を自覚させ,真理を生むこと を助ける(だから助産術)。 (17) 問答の結論:他の人間は<真に大切なもの>を知らない (汝自身を知れ) →ならば自分を無知と思う私(ソクラテス)の方が知を愛している。 (18) 16 [030] 魂と徳 (19) (20) ἀρετή (21) =「よさ」。 ex 馬のアレテー=早いこと (22) (23) 魂のよさ(徳)は, (24) 。(徳は知なり) →真の知があれば善い行動をする( (25) →魂がよくなり「よく生きる」ことが幸福だ( (26) [031] ソフィストとソクラテスの意義 ソフィストのどこが<売り>か?:ロゴスの対象を (27) 向けた。 (28) φύσις フュシス)の秩序(ロゴス)は,人間のことば(ロゴス)で解釈される。 ならば、 (29) νόμος ノモス)が探求の対象でなくてはならない。 ソフィストのどこが<アラ>か?: (30) に陥った。 人間は複数いる。→複数の人に複数の秩序。→秩序は人それぞれ。(相対主義) ソクラテスのどこが<売り>か?: (31) の概念を提出した。 個々の人間によって異なる相対的なよさ(ソフィストの知)を超えた、人間に共通のよさ (=徳。真に知るべきこと。)の存在を考えた。 cf アレテーの中身を整理したのは (32) ~<何がベストか>ということ以外には探求の価値はない。 (33) οὐ τὸ ζῆν περὶ πλείστου ποιητέον ἀλλὰ τὸ εὖ ζῆν Systema Ethicae Tainaka (ver. 2015)

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第2 What shall I do? のはじまり── 源流思想1 初期ギリシア哲学 ──ミュトスからロゴスへ(西洋古代哲学)

(1) 頃、ギリシアの(2) と呼ばれる人々が出現し、万物の根源((3) )を論じた。

[024]ギリシア哲学の見取り図

自然哲学(タレス(4) 等) アルケー

(5) →(6) アレテーと無知の知

(7) (8) と

(9) 質料・形相

ヘレニズム思想((10) と(11) ) 禁欲主義と快楽主義/アタラクシアとアパテイア

ギリシア哲学は(12) と(13) の源流

1)theory(← θεωρία):(14) →近代では<(15) >だが、ギリシアでは「(16) (見ること)」を意味した。

テオリア θεωρία:見る →理論:theoryプラクシス πρᾱξις :作る →実践:practice

cf (17)

2)logic(← λόγος):(18)

→近代では主として<(19) >の意味に用いられる

ロゴスの意味 <(20) >↓

<(21) > ことばをなりたたせているもの↓

<(22) ・ > 理性によって発見されるもの

http://tainaka.sakura.ne.jp/ ホームページhttp://1drv.ms/1aYKYEC データ格納場所 14 Systema Ethicae Tainaka (ver. 2015)

[025] 自然哲学◆主な自然哲学者 (23) (αρχη)を追求した

人物 アルケー ことばと注釈(24) (25) (26) (小アジア)人。次の二人も。

アナクシマンドロス ト・アペイロン τό ἄπειρον(無限なるもの)→規定不能アナクシメネス 空気 空気は無限で無規定だから。(27) 火 τὰ πάντα ῥεῖ((28) )

同じ川に再び戻ることはできぬ。(29)

ピタゴラス (30) 魂の浄化をめざし,数と比例を崇拝(31) 有 「有るものは有り,有らぬものは有らぬ(32)

(変化しない何か) 」→ヘラクレイトス的変化の否定

エンペドクレス 火・水・土・空気 多元論。4元素は愛・憎で離合集散。(33) (34) 原子論。「人の習わしでは、色・甘さ・苦さ。

(分割不可能なもの) しかし、真実には原子と空虚」

[026] ミュトスからロゴスへ──自然哲学の意義

(35) (神話から理性へ):ロゴスによって万物の根源を説明する

1)ミュトス:(36) 。(37) μύθος わからないことは「神様」で説明。ex ヘシオドス『神統記』

↓ ポリスの交流で「神話」の食い違いを知る

2)自然哲学者:万物の根源(=わからないこと)を(38) で考え,合理的に説明した。

ロゴスを使ったテオリアによって(39) できる。

→ 自然哲学は(40) (ことばを使った理性に従って思索する)の源流になったex 科学(哲学)の父=タレス

15http://tainaka.sakura.ne.jp/ ホームページhttp://1drv.ms/1aYKYEC データ格納場所

2 ソフィストからソクラテスへ

BC 5C頃、ギリシアの(1) に(2) と呼ばれる人々が出現した後、(3) が現れ、(4) (よく生きること)を説いた。

[027] ソフィストソフィスト:「(5) (ソフィア σοφια)のある人」。職業教師。

青年達に(6) を教えた。→(7) から、「詭弁家」と評される。

(8) (9) 。<ある>ということについては<ある>ことの。<ない>ということについては<ない>ということの。

[028] ソクラテス

(10) (11) のアポロン神の神託(「(12) 」)(BC470 ? で、フィロソフィア(知を愛する。(13) )の

~ BC399) 生活に入る。青年を腐敗させる罪で死刑。「(14) 」。

[029] 無知の知と問答法

(15) ソクラテスの方法。相手(知者?)と(16)

( ) ことで相手の無知を自覚させ,真理を生むことを助ける(だから助産術)。

(17) 問答の結論:他の人間は<真に大切なもの>を知らない(汝自身を知れ) →ならば、自分を無知と思う私(ソクラテス)の方が知を愛している。

~(18) 。

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[030] 魂と徳

(19) (20) ・ἀρετή (21) =「よさ」。ex 馬のアレテー=早いこと

~(22)

(23) 魂のよさ(徳)は,(24) 。(徳は知なり)→真の知があれば善い行動をする((25) )→魂がよくなり「よく生きる」ことが幸福だ((26) )

[031] ソフィストとソクラテスの意義

ソフィストのどこが<売り>か?:ロゴスの対象を(27) 向けた。

(28) (φύσις フュシス)の秩序(ロゴス)は,人間のことば(ロゴス)で解釈される。

ならば、(29) (νόμος ノモス)が探求の対象でなくてはならない。

↓ソフィストのどこが<アラ>か?:(30) に陥った。

人間は複数いる。→複数の人に複数の秩序。→秩序は人それぞれ。(相対主義)

↓ソクラテスのどこが<売り>か?:

(31) の概念を提出した。

個々の人間によって異なる相対的なよさ(ソフィストの知)を超えた、人間に共通のよさ

(=徳。真に知るべきこと。)の存在を考えた。 cf アレテーの中身を整理したのは(32)

~<何がベストか>ということ以外には探求の価値はない。

「(33) 」οὐ τὸ ζῆν περὶ πλείστου ποιητέον ἀλλὰ τὸ εὖ ζῆν

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17http://tainaka.sakura.ne.jp/ ホームページhttp://1drv.ms/1aYKYEC データ格納場所

3 プラトンとイデア

(1) は,(2) の概念と、それへの愛((3) )を追求する(4) だった。

[032] プラトン

(5) (6) の弟子。師の死後、(7) という学園を開いた。(BC427 前 期:ソクラテス思想の紹介。『(8) 』『クリトン』

~ 347) 中後期:イデア論等の展開。『パイドン』『饗宴』『(9) 』。

[033] イデア論

(10) (11) 。例 花が花とわかるのは,

ιδέα 花のイデアに似ているから。

(1)イデアはどこにあるか? :(12) に実在する。→経験・感覚では見えない((13) )。

(2)現実世界((14) )にあるものは?:不完全で変化するイデアの似姿。(3)魂はもともとイデア界にあったので,

イデアを(15) (アナムネーシス)することができる。(4)イデアがイデアである根拠は?:

(16) (究極のイデア=(17) )

エロス (18) (=想起する)こと。ἔρως →これによって「善のイデア」=「真に知るべき事」を求める

[034] 「愛」の概念の違い(19) :(20) :不完全な者が完璧なものを恋い慕う。アガペー :ゆるし :完全な神が不完全な人間を許し救う。フィリア :友愛(友情) :人間同士の相互信頼とおもいやり。慈悲 :いつくしみ :完全を求める者が命あるもの救う。

18

[035] 魂の三分説と四元徳

魂の三分説 部位 その働き よく機能した状態

=四元徳

頭 (21) =イデアの知を求める (22)

胸 (23) =勝利・名誉を求める (24)

腹 (25) =金銭・利益を求める (26)

(27)

[036] 哲人国家

(28) (29) べきだとする説。人 頭 胸 腹 →知恵の徳をもつ統治者

社会 統治者 防衛者 生産者 =(30)

[037] プラトンの意義

プラトンのどこが<売り>か?:(31) 。

「真の知」=「善のイデア」についての知↓

イデア論のどこが<売り>か?:(32) の世界を想定して、(33) を中心に世界を秩序だてた。 →(34)

Systema Ethicae Tainaka (ver. 2015)

19http://tainaka.sakura.ne.jp/ ホームページhttp://1drv.ms/1aYKYEC データ格納場所

4 アリストテレスとヘレニズム思想

(1) は、(2) の哲学を主張して(3) の徳を主張した。彼の後のギリシア思想は、(4) と(5) とに分かれた。

[038] アリストテレス

(6) (7) の人。(8) の弟子。(9) の家(BC384 庭教師。学園リュケイオンを開き、学問を集大成。

~ 322) 『(10) 』『詩学』『(11) 』

[039] 形相と質料

形相と質料 (12) :エイドス είδος(イデアと同義)。「もの」の本当の姿。~ただし、イデア界にはなく、「もの」の中に存在する。

(13) :ヒューレー ὕλη。「もの」の材料

[040] 徳と中庸

徳 (14) (15) ex 知識・技術→教育や学習で得る

(16) (17)

→(18) で得る(19) 倫理的徳とは中庸((20) )である

ex (21)

友愛と正義 (22)

社会でのバランスのとれた(23)

[041] 正義と政治

正義の二段階 (24) :ポリスの法を守る(25) :個人をフェアに評価する

(26) :能力・実績に応じて評価(27) :各人の利害を均等にする

20

幸福主義 (28)

◆幸福の段階 幸福(快楽):享楽的生活→幸福(富):蓄財的生活→幸福(名誉 ):政治的生活→幸福((29) ):(30) 的生活=(31)

[042] ヘレニズム思想

(32) 快楽主義 (33)

( ) (34) 魂が平静であるために(35)

(36) 禁欲主義 幸福=魂の平静さ=(37)

( )(38) (39) 。理性をもつ人類は国家を超え平等

[043] アリストテレスとヘレニズム思想の意義アリストテレスのどこが<売り>か?:(40)

プラトンの(41)

→イデアが現実世界にあるなら、世界の探求(自然哲学の目標)はナンセンスではない。 ~自然哲学と人間学(ソクラテス・プラトン)を統合した。

→(42)

なぜヘレニズム思想が生まれたか?:アレクサンドロス大王によって(43)

したから。

エピクロス派 →(44)

ストア派 →ポリスの枠を超える((45) )

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※ソクラテス思想の根幹 プラトン『ソクラテスの弁明』29c-30bεἰ οὖν με, ὅπερ εἶπον, ἐπὶ τούτοις ἀφίοιτε, εἴποιμ᾽ ἂν ὑμῖν ὅτι ‘ἐγὼ ὑμᾶς,私が知の探求をやめれば罪に問わないと提案されたと仮定して)アテネの諸君,私は諸君を本当に敬愛

している。

ὦ ἄνδρες Ἀθηναῖοι, ἀσπάζομαι μὲν καὶ φιλῶ, πείσομαι δὲ μᾶλλον τῷ θεῷ ἢ ὑμῖν,が,私は諸君に従わない。(ソクラテス以上の知者はいないと言った)神に従うのだ。

καὶ ἕωσπερ ἂν ἐμπνέω καὶ οἷός τε ὦ, οὐ μὴ παύσωμαι φιλοσοφῶν私は命の続く限り,可能な限り,知恵を愛することをやめない。

λέγων οἷάπερ εἴωθα, ὅτι ‘ὦ ἄριστε ἀνδρῶν, Ἀθηναῖος ὤν,

πόλεως τῆς μεγίστης καὶ εὐδοκιμωτάτης εἰς σοφίαν καὶ ἰσχύν,最高の都市,知恵と力で最も名高いアテネの市民である。

χρημάτων μὲν οὐκ αἰσχύνῃ ἐπιμελούμενος ὅπως σοι ἔσται ὡς πλεῖστα,でありながら,恥ずかしくないのか,金をほしがるとは。

καὶ δόξης καὶ τιμῆς, φρονήσεως δὲ καὶ ἀληθείας καὶ τῆς ψυχῆς ὅπως ὡς βελτίστηἔσται οὐκ ἐπιμελῇ οὐδὲ φροντίζεις;’ καὶ ἐάν τις ὑμῶν ἀμφισβητήσῃ καὶ φῇἐπιμελεῖσθαι, οὐκ εὐθὺς ἀφήσω αὐτὸν οὐδ᾽ ἄπειμι, ἀλ評判,名声の獲得に汲々として,知恵,真実,魂の鍛錬を気にかけないとは。

οὐδὲν γὰρ ἄλλο πράττων ἐγὼ περιέρχομαι ἢ πείθων ὑμῶν καὶ νεωτέρους καὶπρεσβυτέρους μήτε σωμάτων私のしていることはただ一つ,老若を問わず,諸君との議論だ。「a)諸君の肉体や富には構うな,

ἐπιμελεῖσθαι μήτε χρημάτων πρότερον μηδὲ οὕτω σφόδρα ὡς τῆς ψυχῆς ὅπως ὡςἀρίστη ἔσται, λέγων ὅτι魂の鍛錬にこそ配慮せよ」と。

私は説く,「金銭から徳は生まれない,b)金銭などの諸々は,徳によって,個人にとっても国家にとって

も,良きものとなるのだ」。

a)(46)

b)(47)

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※プラトンのイデア論 プラトン『パイドン』100c-dἀλλ᾽ ἐάν τίς μοι λέγῃ δι᾽ ὅτι καλόν ἐστιν ὁτιοῦν, ἢ χρῶμα εὐανθὲς ἔχον ἢ σχῆμα ἢἄλλο ὁτιοῦν τῶν τοιούτων, τὰ μὲν ἄλλα χαίρειν ἐῶ,—ταράττομαι γὰρ ἐν τοῖςἄλλοις πᾶσι—τοῦτο δὲ ἁπλῶς καὶ ἀτέχνως καὶ ἴσως εὐήθως ἔχω παρ᾽ ἐμαυτῷ, ὅτιοὐκ ἄλλο τι ποιεῖ αὐτὸ καλὸν ἢ ἡ ἐκείνου τοῦ καλοῦ εἴτε παρουσία εἴτε κοινωνίαεἴτε ὅπῃ δὴ καὶ ὅπως †προσγενομένη:誰かが言ったとしよう,「あるものが美しいのは,色が輝いているからだ」「形やその類いの性質がある

から(美しいの)だ」。私はその手の一切の説と訣別する。その手の説は私を混乱させるだけだ。私は

シンプルに,無造作に,愚直に,次のことにこだわりたい。ものを美しくしているのは,美が顕わにな

が浮かばないが,

οὐ γὰρ ἔτι τοῦτο διισχυρίζομαι, ἀλλ᾽ ὅτι τῷ καλῷ πάντα τὰ καλὰ γίγνεται καλά.とにかく,断じて言う,「すべての美しいものが美しいのは,美(のイデア)によってだ」と。

※プラトニック・ラブ──魂と恋(ちょっと大人向き)プラトン『アルキビアデス』131c-dΣωκράτης οὐκοῦν ὁ μὲν τοῦ σώματός σου ἐρῶν, ἐπειδὴ λήγει ἀνθοῦν, ἀπιὼνοἴχεται;ソクラテス 君の身体に恋してる者は,身体の盛りが過ぎれば,さっと逃げる

Ἀλκιβιάδης φαίνεται.アルキビアデス うん

Σωκράτης ὁ δέ γε τῆς ψυχῆς ἐρῶν οὐκ ἄπεισιν, ἕως ἂν ἐπὶ τὸβέλτιον ἴῃ;ソクラテス でも君の魂に恋する者は,君が魂を鍛錬している限り,逃げない。

Ἀλκιβιάδης εἰκός γε.アルキビアデス たぶん

Σωκράτης οὐκοῦν ἐγώ εἰμι ὁ οὐκ ἀπιὼν ἀλλὰ παραμένωνλήγοντος τοῦ σώματος, τῶν ἄλλων ἀπεληλυθότων.ソクラテス 僕は逃げないよ,君と変わることなく付きあうよ。

君の身体が盛りを過ぎ,他人が逃げ去っても。

Ἀλκιβιάδης εὖ γε ποιῶν, ὦ Σώκρατες: καὶ μηδὲ ἀπέλθοις.アルキビアデス ソクラテス,嬉しいよ,ずっと一緒だよ。

❤アルキビアデス君

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問1 青年期特有の悩みに関連して,このような心理的な状態を分析した次の人物ア~エと,それぞれの人物が強調したキーワードA~Dの組合せとして最も適当なものを,下の①~④のうちから一つ選べ。(2008 年本試)

ア エリクソン イ フランクル ウ シュプランガー エ レヴィン

A 自我のめざめ B 境界人 C 人生周期(ライフサイクル) D 生きる意味

① ア-A イ-B ウ-D エ-C ② ア-C イ-D ウ-A エ-B③ ア-C イ-A ウ-D エ-B ④ ア-D イ-C ウ-B エ-A

問2 エリクソンは,人生を八つの発達段階に分けて,それぞれの特徴について記述している。そのうち次の青年期以降の四つの発達段階ア~エとその特徴A~Dとの組合せとして最も適当なものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。(2009 年本試)

ア青年期 イプレ成人期(成人前期) ウ成人期(成人中期) エ老年期(成人後期)

A これまで培ってきた自分自身に対する認識を基盤として,特定の人との友情,愛,性的親密さを得ることが求められる。

B 自分は何者なのか,何をなすべきなのかという自己についてのゆれを克服し,自己確立についての確信を得ることが求められる。

C いろいろなことがあったこれまでの人生のすべてを,自分のものとして,受け入れることが求められる。

D 次の世代を支えていく子どもたちを生み,育てていくことに対し,積極的に関与することが求められる。

① ア-B イ-A ウ-D エ-C ② ア-A イ-C ウ-B エ-D③ ア-A イ-B ウ-D エ-C ④ ア-B イ-C ウ-D エ-A⑤ ア-A イ-B ウ-C エ-D ⑥ ア-B イ-A ウ-C エ-D

問3 古代ギリシア・ローマでは様々な仕方で善について考られてきたが,その説明として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2012 年本試)

① ストア派は,宇宙を貫く理法(ロゴス)に従って生きることで得られる精神的快楽を幸福とみなし,この幸福を最高善として理解した。

② プロタゴラスは,最高の真実在である善そのものを万物の尺度とみなし,それを認識した哲学者が国家を支配すべきであると説いた。

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③ アリストテレスは,理性を人間に固有の能力とみなし,人間にとっては理性に基づく魂の優れた活動こそが最高善であると考えた。

④ エピクロスは,物事の尺度は相対的なものであり,各人ごとに異なるため,善についての普遍的な判断というものは存在しないと主張した。

問4 文章中の 1 に入れるのに最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2004 年本試)

倫理というものを考える上で,「善とは何か」という問いは根本的である。およそ倫理的な行為は善に関する何らかの判断をもとにするからである。ギリシアの哲学者ソクラテスはただ生きるのではなく,自己の魂を善いものとすることで善く生きることを探究した。「一体,善とは何か」という問いに対して彼の弟子プラトンは魂の善を探究する道を押し進め,「善のイデア」と魂のかかわりによってこれに答えようとした。アリストテレスは善を人間の自然本性に基づく魂の内的働きと捉え,善のイデアに代えて万人の希求する善

とら

としての「幸福」の実現を目指した。さらに 1 は,様々な情念から解放され,外部の何ものにも煩わされない魂の状態を善と捉え,理想とした。

① ヘラクレイトス ② アナクシマンドロス③ ストア派のゼノン ④ タレス

問5 古代ギリシア・ローマでは欲望をめぐって様々な考察がなされてきた。その説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。2012 年追試)

① ソクラテスは,魂のそなえるべき徳が何かを知ればその知を利用して,手段を選ばずあらゆる欲望を満たすことができるので,徳の知を追い求めていくべきだと説いた。② プラトンは,人間の魂の三部分を二頭の馬とその御者に譬え,欲望的部分が御者とし

たと

て,理性的部分と気概的部分をあらわす二頭の馬を導いていくという人間の自然本性の姿を描いた。③ アリストテレスは,欲望や感情に関わる倫理的徳のみに従うことと,知性や思慮に関わる知性的徳のみに従うこととの両極端を避け,両者の間の中庸を選択するような性格を身につけるべきであると説いた。④ エピクロスは,快楽が人間にとっての幸福であるとみなしたが,その快楽とは,自然で必要な欲望を節度ある仕方で満たし,身体の苦痛や魂の動揺から解放された状態のことであると考えた。

Systema Ethicae Tainaka (ver. 2015)

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5 一神教とユダヤ教

パレスチナで生まれた(1) は、(2) を信じる(3) だった。

[044] キリスト教思想の見取り図

(4) ヤーウェ・律法・(5)

(6) (7)

原始キリスト教団 三元徳・教父哲学・スコラ哲学

イスラム教 (8) ・(9)

(10)

)」との関係a)(11) (よいことをしっていればよくなる)の限界→「善をなそうと思う自分には、いつも悪が付きまとっているという法則に気づきます。「内な

る人」としては神の律法を喜んでいますが、わたしの五体にはもう一つの法則があって心の

法則と戦い、わたしを、五体の内にある罪の法則のとりこにしているのが分かります。わた

しはなんと惨めな人間なのでしょう。 」(パウロ・『新約聖書』ローマの信徒への手紙 7-21 ~ 24)

~(12) という人間の現実をどう解決するか?

b)「知」が(13) をもたらすという矛盾→「律法によらなければ、わたしは罪を知らなかったでしょう。たとえば、律法が「むさぼる

な」と言わなかったら、わたしはむさぼりを知らなかったでしょう。」

(パウロ・『新約聖書』ローマの信徒への手紙 7-7)

2)脱神話の二つの型◆(14) →ロゴス(ギシリア思想)◆(15) →アガペーと信仰(キリスト教)

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[045] ユダヤ教ユダヤ教:パレスチナ地方にすむ(16) ( )の宗教。

(17) ユダヤ教の(18) 。

(19) 1)BC13 C頃のユダヤ人の指導者。それまでエジプト人の奴隷だったユダヤ人を連れて、エジプトを脱出。

(~「(20) 」『旧約聖書』)。2)(21) :モーセがヤーウェから授かった(22) 。

ex 安息日を守れ・姦淫するな・ものを盗むな

(23) ユダヤ教の聖典。「(24) 」=ヤーウェとユダヤ人との「契約」ヤーウェ

(25) ↑ ↓ (26)

ユダヤ人

(27) 神の作った人間(アダムとイブ)の犯した罪。

(28) 契約を交わした(29) が救われる。~ノアの方舟

[046] ユダヤ教の意義

ユダヤ教のどこが<売り>か?:(30) となった。

ユダヤ教のどこがイエスによって否定されたか?:(31)

(32) のみが、信仰→信仰の本質をイエスは問いなおした。

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6 イエスとキリスト教

紀元前後に出現した(1) は、神の本質を(2) と考え、(3)

を説いた。イエスの死後、(4) はキリスト教を地中海に広め、中世ヨーロッパのキリスト教世界の基礎を作り,(5) ・(6) へと発展した。

[047] イエス

(7) ユダヤのナザレに生まれ((8) )、(9) の洗( ) 礼を受けて30歳頃から主にしいたげられた人たちに宣教を開始、BC4?~ AD30? (10) (ユダヤ教)を批判、3年後に死刑。

[048] イエスの教え

(11) (12) (音信)。→神の国の実現や救いについての教え

(13) イエスの説いた愛。 1)(14) の愛 2)創造的愛 3)(15) の愛A:(16) ( )

罪人にも等しく注がれる愛(~神がイエスを送り、人類の罪を贖うため十字架にかけた愛)

↓B:(17) (信仰・心を尽くし,精神を尽くし、思いを尽くして,

あなたの神である主を愛しなさい。「マタイによる福音書」22-37)C:人と人との愛((18) ・隣人を自分のように愛しなさい。同 22-39)

~「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。」(「マタイによる福音書」5-44・いわゆる「山上の垂訓」

(19) キリスト教の聖典。イエスのもたらした神と人との新しい契約。神

信仰 ↑↓ (20) ( )(21)

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[049] イエスの意義

イエスの思想のどこが<売り>か?:1)(22) の内面化2)(23)

1)ユダヤ教の律法:外面的規定→イエス:心の中身(=信仰・隣人愛)を問題にした。2)隣人愛の拡大:ユダヤ人にための教え→全人類のための教え

[050] 原始キリスト教団(1)ペテロ(24) (?~ AD67 頃):イエスの最初の弟子。「ペテロの否認」→イエスの

復活の証人。(25) 教会の創始者。ネロの迫害によって殉死?(2)パウロ(26) (?~ AD46 頃):パリサイ派からキリスト教に回心。イエスの死後、

キリスト教を伝道、(27) を形成。ネロの迫害によって殉死?

(28) イエスの死=人の原罪をつぐなったもの,イエスの(29) 信仰と →(30) ~キリスト信仰の発生

(31) (32) ・ ・ 「信仰と希望と愛と,この三つはいつまでも残る」

[051] ローマカトリック──教父哲学とスコラ哲学

(33) (34) カトリック教義の確立。(35)

4~5C 『 』 1)人は原罪を負う→神の(36) で救われる(37) 2)世界の歴史は神の国と地の国との闘争

『 』 3)三位一体:(38)

(39) (40) (41) を体系化(アリストテレス13C 『 』 哲学で信仰と理性を統合する。信仰>理性

(42) 信仰を哲学から切り離す(オッカムの剃刀)。

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問1 ユダヤ教の選民思想を表す記述として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2009 年本試)① 厳しい自然に立ち向かうなかで育 まれた信仰であり,世界の創造主が現世に遣

はぐく

わした神の子が,彼らを選びその繁栄と救済を約束した。② 異民族との闘争のなかで育まれた信仰であり,彼らの血統が優れているがゆえ

に,人格を超えた神が,彼らを永遠の救いに導く約束をした。③ 異民族からの圧迫などの苦難のなかで育まれた信仰であり,唯一の絶対神であ

る人格神が,彼らを選びその繁栄と救済を約束した。④ 厳しい自然に翻弄されるなかで育まれた信仰であり,人格を超えた神である宇

ほんろう

宙の根本原理を理解できる彼らだけに,永遠の救いが約束された。

問2 旧約聖書に登場する宗教的指導者モーセについて述べたものとして最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2006 年本試)

① 王の宮殿で育てられたが,荒野で啓示を受け,奴隷となっていた同胞を約束の地へと向かわせ,神から授けられた掟を人々に示した。

おきて

② 異民族による支配は,多神教の影響による宗教的な堕落や貧者を虐げる社会的不正に対する神の罰だとして,神の裁きと救済を説いた。

③ 山の洞窟で神から啓示を受け,預言者として,礼拝や喜捨などの宗教的義務をどうくつ

果たし敬虔な信仰生活を送るべきことを説いた。けいけん

④ 王子として生まれ育ったが,死や病気に直面する人間の苦しみについて思い悩み,王家を出て真理に達し,人々にそれを示した。

問3 愛をめぐる様々な思索について述べた次の文章を読み,文章中の a ~ c に入れる語句の組合せとして正しいものを,下の①~⑥のうちから一つ選べ。(2013 年本試)

プラトンの説く愛(エロース)が,具体的な美への 憧 れを経て完全な美そのもののあこが

a へと向かわせる愛であるのに対して,アリストテレスの説く真の友愛(フィリア)は, b のために b にとっての善を願い,その実践へと向かわせる愛である。他方,『新約聖書』における愛(アガペー)とは,第一に,無条件にすべての人に与えられる無償の神の愛のことであり,次いで,それによって引き起こされた人間による c への愛を意味する。① a 観 想 b 親しい人 c 自 己② a 創 造 b 親しい人 c 他 者

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③ a 観 想 b 親しい人 c 他 者④ a 創 造 b すべての人 c 自 己⑤ a 観 想 b すべての人 c 自 己⑥ a 創 造 b すべての人 c 他 者

問4 罪についてのイエスの考え方の説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2012 年本試)① イエスは,神の意志に反する行為を実際に行ってしまう人間の傾向を罪とみなし,

その罪からの救済が誰に起こるかは,人間を超えた神の意志によって予定されていると主張した。

② イエスは,たとえそれを実行せずとも,人間が心のなかで悪しき思いを抱くことそれ自体を罪とみなし,自らが罪人であることを自覚し,その罪を赦す神の愛

つみびと ゆる

を信じるよう説いた。③ イエスは,原初の人間が自由意志を悪用して神に背いたことに由来する人間の

あり方を罪と考え,自由意志を正しく用いて自己自身を高めることで,その罪から脱却できると説いた。

④ イエスは,人間が神なしでも自力で生きていけると考えている傲慢を根源的なごうまん

罪であると考え,その罪は,律法を厳格に遵守することでのみ,神から義とされて赦されると主張した。

問5 パウロの事績に関する説明として最も適当なものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2008 年追試)

① イスラーム世界から伝来したアリストテレスの哲学を習得することによって,ギリシア人の自然理解をキリスト教的に解釈した。

② イエスの直弟子ではないが,その教えを深く理解し,新約聖書に収められた重要な手紙を書いて,キリスト教が世界宗教になる基礎を据えた。

③ イスラエル民族の指導者として,その民族をエジプトから脱出させ,その途中,シナイの山上で神から啓示された律法を受け取った。

④ イエスに呼びかけられてその弟子となり,イエスが捕らえられた時には弟子であることを否定したが,後に弟子として殉教した。

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