17/12/06 2070-1h29 the fabric of the modern implantology …2070-1h29_the fabric of the modern...

7

Upload: others

Post on 20-Oct-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 17/12/062070-1H29_The Fabric of the Modern Implantology 第 1 版 第 1 刷 _ カバー

  • ◦ 上顎臼歯部欠損部顎堤の歯槽頂切開は,原則として角化組織内に行う.顎堤の増大規模により,その減張量は決まる.上顎では口蓋側には角化粘膜が存在し,その部位での減張によるフラップの伸展は期待できない.したがって,骨増大量は頬側フラップのみの伸展量に依存することになる

    ◦ 上顎前歯部上顎では頬側フラップの減張にその伸展量は依存しているため,フラップ閉鎖後,歯槽頂部の縫合は口蓋側へと移動する.垂直方向への増大量が大きい場合,血流を考慮すると歯槽頂切開は可及的に頬側寄りの角化歯肉内に行うことが望ましいと考える

    歯槽頂切開は,欠損部顎堤の頬側寄り(歯肉歯槽粘膜境より2mmほど口蓋側寄りの角化組織内)の歯肉に対し,直角方向へメスを挿入する

    縦切開は,欠損部顎堤の1〜2歯近心側の歯牙の近心頬側の歯肉縁から始め,歯槽頂側から見て歯槽頂切開から直線,唇側から見て近心側へ45°になるように歯肉歯槽粘膜境を越えて切開する

    歯槽頂切開は,臼歯部と同様に頬側寄りの角化歯肉内に入れる

    臼歯部とは異なり,審美領域では可及的に犬歯の遠心に歯肉歯槽粘膜境を越える縦切開を入れる.欠損部位により両側に加える場合もある

    歯槽頂切開の遠心側は,遊離端症例では上顎結節最後縁から頬粘膜方向へ減張量に応じ切開する.遠心側に歯牙が存在する場合は歯肉溝切開を行い,必要あれば遠心頬側方向へ同じく縦切開を行う.口蓋側の切開は,歯間乳頭を含めず各歯牙の最口蓋側を結ぶ線で切開する

    フラップデザイン

    86

  • ◦ 下顎前歯部下顎前歯部の舌側の減張はフラップ内面の切開により可能となるが,過度の減張により舌小帯とともに口腔底が挙上してしまうため,主な減張は唇側フラップで行うことになり,上顎のフラップに準じて行うほうが良いであろう.また,下顎小臼歯部の頬側根尖側にはオトガイ孔が開口するため,切開前にパノラマ X線写真や,CT画像でオトガイ孔の位置を確認したうえでフラップのデザインを決定する

    ◦ 下顎臼歯部

    上顎とは異なり,下顎の減張は頬舌側のフラップが可能で,また欠損部の角化歯肉の幅は狭い場合が多いことから,歯槽頂切開は角化歯肉中央の最も厚い部分に加える

    臼歯部とは異なり,歯槽頂切開は角化歯肉の幅が確保されているなら頬側寄りに加える

    歯牙の唇側は,歯肉溝切開とする

    縦切開は欠損部より1〜2歯離して遠心方向へ45°で歯肉歯槽粘膜境を越える切開とする.必要があれば,欠損部の両側に切開する

    舌側は歯牙の最舌側歯肉縁を繋げる切開として,歯間乳頭は保存する.決して舌側には縦切開を加えない

    遊離端欠損の場合,遠心側はレトロモラーパッドまで歯槽頂切開を延長して,そのままレトロモラーパッドに沿って頬側方向へ歯肉歯槽粘膜境を越える切開線にする.レトロモラーパッドの舌側には,軟組織を支える骨が存在しないため,決して歯槽頂切開を入れてはならない.この領域にメスを入れる場合は,必ず骨の裏打ちがあることを確認してから切開する必要がある. 欠損部顎堤の遠心側に歯牙が存在する場合,頬側は歯肉溝切開を入れ,必要があれば遠心方向へ縦切開を加える.舌側は,歯牙の最舌側の歯肉縁を繋げる切開として,歯間乳頭は切開しない.下顎第二大臼歯の舌側歯頚部あたりには,舌神経が走行しているため,決して歯槽頂切開の遠心側に縦切開を行ってはならない.また近心方向にも舌神経が走行しており,下顎舌側には縦切開を加えず,欠損部近心の歯牙より2歯近心まで切開を延長することにより減張が可能となる

    近心側の縦切開は,欠損部より1〜2歯離して歯牙の近心頬側の歯肉縁から近心方向へ歯肉歯槽粘膜境を越えるように行う

    87

    06GBRを成功へと導くための原理と術式C

    HA

    PT

    ER

  • ここで,われわれがよく用いるInterpositional graft についてCase 3を用いて解説する.  2 │ 部は唇側の角化歯肉の幅と厚みが不足している.一方,│ 2~4 部にかけては減張量

    が大きかったため,MGJがかなり歯冠側へと移動している(図2).厚い口蓋側の歯肉

    Interpositional graft

    3-6〜3-10 歯肉の治癒を十分待った後,THAが露出するまで数回にわたりプロビジョナルのポンティック底にレジンを添加して形態を修正し,インプラント直上の歯肉を圧迫してスキャロップ形態を与えた

    3-11 ポンティックにより圧迫されて露出したTHAを外し,プロビジョナルとインプラントをネジ留めにより直結

    3-12,3-13 その後,埋没させる予定の1│ を3カ月かけて挺出させた.挺出後,歯質を削合して歯肉縁下に歯牙を埋没して保存

    3-14〜3-16 2次手術後3年,インプラントの印象前の状態.手術により平坦化した顎堤も,十分な骨量と適切なインプラントポジション,そして厚い軟組織を得ることにより,天然歯に近似したスキャロップ形態を歯肉に与えることが可能となった.また,RST(Root Submergence Technique,Chapter 10参照)を用いて1│ を保存することにより,ポンティックサイトの顎堤の吸収を抑制することが可能となる10)

    134

  • を有茎弁にて図3の黄色線まで唇側へスライドさせ,最も厚みのある歯槽頂の歯肉のピークをプラットフォームの唇側へ位置させたい.その歯肉のピークはインプラント埋入時に加えた歯槽頂切開の縫合部とほぼ一致しており,減張量が大きいほど,それは口蓋側に位置している.つまり,唇側へ移動させる量は部位により当然異なる.厚い歯肉を部分層にて唇側へ移動させることにより,FGGで起こるグラフトアイランドのような周囲軟組織との色調の不調和は回避されるが,移動量に応じて歯槽頂部に上皮の欠落した開放創が生じる.生じた開放創に角化上皮付きの厚い結合組織をブロックではめ込む術式を Interpositional graft という.Onlay graft との違いは,角化上皮付きのブロック片の唇側に,角化組織を切除した上皮下結合組織が存在することである.移植した歯肉片の直下にはインプラントが存在しており,移植片が生着するための血液供給が不足して壊死する可能性がある.そこで,生着率を高めるために,また歯槽頂と唇側の軟組織

    3-17 最終上部構造の装着時.歯牙を失い一度平坦化した顎堤は,軟組織の増大とプロビジョナルを用いたティッシュスカルプティングによりスキャロップ形態が得られている

    図2 MGJの位置 欠損部顎堤のMGJは,2度に及ぶ減張

    切開により1│ のMGJの位置に対して歯冠側に位置しており,唇側の角化歯肉が不足しているのが確認できる.このままパンチアウトしてインプラント体を露出させると可動粘膜にインプラントアバットメントが接することとなり,天然歯と調和した審美的で清掃性の高い結果を得ることは困難となる

    図3 フラップデザイン 切開線を赤色線,青色矢印の基底部が

    歯肉のピークで,矢印の長さは移動量を示している

    135

    08上顎前歯部におけるインプラント周囲のソフトティッシュマネジメントC

    HA

    PT

    ER

  • 最終章では,現代のインプラント治療が抱える課題について言及してみたい.ここでの課題とは,技術的な不具合・合併症をさすのではなく,避けては通れない,あるいは今後解決が望まれる問題と考えてもらいたい.具体的には,インプラント周囲炎と,顎骨の成長・経年的変化に起因すると思われるインプラント上部構造の不具合(上部構造の破損,オープンコンタクト,低位咬合)が該当するのではないであろうか.

    インプラント治療は,1970年代半ばの初期オッセオインテグレーションの時代からこれまでに着実に進歩しており,その予知性には議論の余地がない(Case 1).一方,近年では長期のフォローアップによりインプラント周囲炎が増加傾向にあることが多数報告されている.それゆえ,2015年に開催された Euro Perio 8では,安直な抜歯を行い,インプラントに置換してきた代償であろうか,「Save teeth, Less implants」がテーマとして取り上げられていた.骨結合を獲得するうえで,ラフサーフェスの優位性は述べてきたが,同時にインプラント周囲炎へのジレンマも開示した(Chapter 4参照).その内容は,天然歯と異なり,インプラント周囲には軟組織の付着が存在しないため,細胞レベルにおいて特にAdditiveな表面性状であるHA coatingでは,炎症が起きてインプラント周囲溝が酸性に傾きHA coatingまで波及すると,HAの融解が危惧され,ひいてはインプラント周囲炎のリスク因子となる(Case 2).同様に多孔性陽極酸化処理されたインプラントも,表面の剥離によりインプラント周囲炎のリスクは高まる 1,2).また現代の主流サーフェスである Subtractiveな表面性状であっても,口腔内細菌は数μm以下と小さいため,細菌とほぼ同じ大きさの凹部を有する場合,細菌が自らの形態を適合させるように変化させて嵌り込み,バイオフィルム形成の温床となり得る可能性があるため,インプラント周囲炎のリスクは存在する(Case 3).アメリカ歯周病学会は 2012年に用語集を更新し,インプラント周囲の生物学的問題

    インプラント周囲炎 〜ラフサーフェスのジレンマ〜

    予後から観たインプラント治療が抱える課題

    Problems of modern implantlogy from the viewpoint of prognosis

    船登彰芳 Akiyoshi Funato石川県・なぎさ歯科クリニック,5-D Japan ファウンダー

    15

    CH

    AP

    TE

    R

    216

  • は図 1のとおりに定義した.骨喪失を伴うインプラント周囲炎の治療法としては,重度 (50%以上の骨喪失 ) ではインプラント除去が第一選択となり,中等度(50%以下)では切除療法もしくは再生療法を推奨している 3~ 5)(Case 4).しかし,再生療法ではいかにインプラント表面をデブライドメントするかが鍵となり,その手法としては,抗菌薬などに直接浸漬する化学療法,滅菌ガーゼやチタンブラシ,プラスチックスケー

    1-1〜1-5 メインテナンス移行後20年の口腔内写真とパノラマX線写真.天然歯周囲の歯肉にリセッションを認めるも,咬合状態は良好である.またオープンコンタクトも認めない.臼歯部には機械研磨のインプラントが埋入されている

    2-1〜2-3 他医院より紹介にて来院.HA coatingのインプラントが埋入されているが,上顎は左側がすでにロストし,右側も予後不良である

    Case 1 上顎臼歯部に機械研磨のインプラントを用い 20 年経過した症例

    Case 2 他医院で HAインプラントが埋入された予後不良症例

    図1 アメリカ歯周病学会による用語の定義

    Peri-implant mucositis:インプラント周囲粘膜炎インプラント周囲の支持骨の欠損を伴わない粘膜に限局した炎症

    Peri-implantitis:インプラント周囲炎軟組織の炎症と支持骨の喪失を含むもの

    217