1.位置決め画像撮影領域外におけるct用自動露出機構制御の...

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1.位置決め画像撮影領域外における CT 用自動露出機構制御の基礎的検討 川崎医科大学附属病院 中央放射線部 西山 征孝 佐内 弘恭 正勝 池長 弘幸 柳元 真一 【目的】 位置決め画像を基に管電流値制御を行う方 式の CT にて、位置決め画像の撮影領域外にお ける CT 用自動露出機構(CT-AEC)による画 像ノイズと管電流の制御について基礎的な検 討を行った。 【方法】 まず、 CT 装置 Aquilion64 (東芝)を用いて、 撮影範囲の異なる 3 種類の位置決め画像 Fig.1)を基に CT-AEC を作動した状態にお いて、人体ファントム CTU-41 (京都科学)の 同一範囲を撮影した。次に、撮影で得た Axial 画像を personal computer に取り込み、DRIP (フジ RI ファーマ)を用いて、肝臓、縦隔の 画像ノイズの計測を行った(Fig.2)。 そして、 Scano A を基準(撮影領域内)として、 Scano B の肝臓、 Scano C の縦隔(撮影領域外) における画像ノイズについて有意差検定 paired t-test)を行い評価した。また、管電 流値は、 Virtual Place 雷神 Plus AZE)にて 管電流値の読み取りを行い、 Scano A を基準に、 Scano BC における位置決め画像撮影領域外 の管電流値変化について評価を行った。 【結果】 位置決め画像の撮影領域内と外における画 像ノイズの比較を Fig.3 に示す。領域内に肝臓、 縦隔がある Scano A に対して、領域外の Scano B (肝臓)では有意な高値を、 Scano C (縦隔) は有意な低値を示した(p0.001)。次に、位 置決め画像の撮影領域内と外における管電流 値変化を比較した結果を Fig.4 に示す。Scano A に比べて、Scano B は、撮影領域外となる 220mm 以上の位置において、一定の低い管電 流値を示した。一方、Scano C は、220mm 下において、一定の高い管電流値を示した。 【結論】 位置決め画像撮影領域外における CT-AEC の制御は、領域内とは異なり、スライスごとの 管電流値は一定になり、画像ノイズに有意な差 を生じることが確認された。 Fig.1)位置決め画像と撮影範囲 Fig.2ROI 設定位置の例 Fig.3)位置決め画像の撮影領域内と外 における画像ノイズの比較 Fig.4)位置決め画像の撮影領域内と外 における管電流値の比較 中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表 62

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  • 1.位置決め画像撮影領域外におけるCT用自動露出機構制御の基礎的検討

    川崎医科大学附属病院 中央放射線部

    西山 征孝 佐内 弘恭 村 正勝 池長 弘幸 柳元 真一

    【目的】

    位置決め画像を基に管電流値制御を行う方

    式の CT にて、位置決め画像の撮影領域外にお

    ける CT 用自動露出機構(CT-AEC)による画

    像ノイズと管電流の制御について基礎的な検

    討を行った。

    【方法】

    まず、CT 装置 Aquilion64(東芝)を用いて、

    撮影範囲の異なる 3 種類の位置決め画像

    (Fig.1)を基に CT-AEC を作動した状態にお

    いて、人体ファントム CTU-41(京都科学)の

    同一範囲を撮影した。次に、撮影で得た Axial

    画像を personal computer に取り込み、DRIP

    (フジ RI ファーマ)を用いて、肝臓、縦隔の

    画像ノイズの計測を行った(Fig.2)。

    そして、Scano A を基準(撮影領域内)として、

    Scano B の肝臓、Scano C の縦隔(撮影領域外)

    における画像ノイズについて有意差検定

    (paired t-test)を行い評価した。また、管電

    流値は、Virtual Place 雷神 Plus(AZE)にて

    管電流値の読み取りを行い、Scano A を基準に、

    Scano B、C における位置決め画像撮影領域外

    の管電流値変化について評価を行った。

    【結果】

    位置決め画像の撮影領域内と外における画

    像ノイズの比較を Fig.3 に示す。領域内に肝臓、

    縦隔がある Scano A に対して、領域外の Scano

    B(肝臓)では有意な高値を、Scano C(縦隔)

    は有意な低値を示した(p<0.001)。次に、位

    置決め画像の撮影領域内と外における管電流

    値変化を比較した結果を Fig.4 に示す。Scano

    A に比べて、Scano B は、撮影領域外となる

    220mm 以上の位置において、一定の低い管電

    流値を示した。一方、Scano C は、220mm 以

    下において、一定の高い管電流値を示した。

    【結論】

    位置決め画像撮影領域外における CT-AEC

    の制御は、領域内とは異なり、スライスごとの

    管電流値は一定になり、画像ノイズに有意な差

    を生じることが確認された。

    (Fig.1)位置決め画像と撮影範囲

    (Fig.2)ROI 設定位置の例

    (Fig.3)位置決め画像の撮影領域内と外

    における画像ノイズの比較

    (Fig.4)位置決め画像の撮影領域内と外

    における管電流値の比較

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    62

  • 2 Dual Source CTによる仮想単色 X線画像の基礎的検討

    山口大学医学部附属病院 放射線部

    田中千弘 久冨庄平 佐野裕一 楢崎亜希子 山口貴弘 菊地友紀 上田克彦

    【目的】

    Dual source CT の Dual energy mode には

    異なる 2 つの X 線エネルギーで仮想単色 X 線

    画像を作成する monoenergetic 処理がある.

    我々は,ファントム実験にてこの処理のコント

    ラスト変化を調べ,造影検査における有用性を

    検討した.

    【方法】

    CT 装置は Siemens 社の SOMATOM

    Definition CTを用い,ファントムは直径14cm

    の円柱状容器に水を満たし,希釈ヨード造影剤

    を封入したシリンジを配置したものを自作し

    た.造影剤濃度は管電圧 120kV 撮影時に

    60HU,150HU,300HU,600HU になるもの

    の 4 種類である.密度の違いによる CNR 変化

    と比較するため Catphan ファントムと自作フ

    ァントムを Dual energy mode で撮像し

    monoenergetic 処理で設定できるエネルギー

    範囲 40keV から 190keV まで変化させ画像を

    得た.仮想単色 X 線画像と通常診断に用いら

    れるComposite画像(120kV相当)のCNRを測

    定し,比較検討を行った.

    【結果】

    造影剤 と水のコントラストは設定エネルギ

    ーが高いほど小さくなったが,Catphan では,

    設定を変化させてもコントラストはあまり変

    化しなかった.

    background の SD はどちらのファントムで

    も約 70keV で最低となった.

    CNR のピークとなる設定エネルギーは造影

    剤濃度に依存せず一定であった.

    CNR が最大となる設定エネルギーは自作フ

    ァントムで 62keV,Catphan ファントムで

    69keV となった.

    monoenergetic 処理は診断用画像より CNR

    が約 1.2 倍高い画像を作成できた.

    【考察】

    Catphan ファントムの CNR は密度の異な

    る同一物質間のものであるため,

    monoenergetic 処理で設定エネルギーを変え

    てもコントラストの変化がほとんどなく,

    CNR が最大となる設定エネルギーは

    backgroundのSDが最小となる70keVとほぼ

    等しくなった.しかし造影剤と水では物質が異

    なるため,設定エネルギーを変えるとコントラ

    ストも変化し,コントラストが大きくなる低エ

    ネルギー側へシフトしたと考える.

    【結語】

    同一物質間では設定エネルギーによりコン

    トラストはあまり変化しないが,異なる物質間

    では最適な設定エネルギーを選択することに

    より高くなるなど,monoenergetic 処理におけ

    る基本的なコントラスト特性が明らかになっ

    た.造影剤に適した設定エネルギーを選択する

    ことで,従来の診断画像よりも高い CNR を得

    ることができることから,造影検査における

    monoenergetic 処理の有用性が示唆された.

    図 1. 相対値で比較した CNR

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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  • 3 鏡視下腱板修復術後の CT撮影-主に骨孔観察方法について-

    済生会山口総合病院 放射線部 大平知之

    背景

    近年、 腱板断裂患者に対する治療方法として、

    鏡視下腱板修復術(以下 ARCR)はスタンダ

    ードな方法として行われてきた。 ARCR は関

    節鏡視下で縫合糸のついたアンカーを用いて

    修復する方法である。 そのアンカーへの強い

    ストレスは骨孔の拡大やアンカーの緩みを引

    き起こし、再断裂の要因となるものと考える。

    そこで骨孔が閉じていることを確認する事が

    重要となる。

    目的

    ARCR を施行した症例に対して、X 線 CT 検査

    を行い、骨孔の変化を調査した。

    調査方法

    ARCRを施行した症例に対して、術後 1ヶ月、3

    ヶ月、6 ヶ月、(12 ヶ月)の 3~4 回、X 線 CT

    検査を行い、VR画像、MPRで骨孔の変化を観察

    し、CPRの直交断で長径と短径を計測した。

    ・骨形成を観るには骨孔に対し 2~5mm 深部

    の直交断面で計測をする 。

    術後 1 カ月 術後 3 カ月 術後 6 カ月

    ・カラーマッピングを用い長径と短径を計測。

    ・閉じた例

    調査対象

    小・中断裂症例 1) (アンカー数 1~2 個)

    19 例(30 孔)48~88 歳(平均 67.2 歳)

    腱板修復群 2) ・・・15 例(23 孔)

    腱板再断裂群 2) ・・・4 例(7 孔)

    1)Cofield 分類…小断裂(1cm 未満)中断裂(1~3cm)

    2)菅谷分類…術後 6 カ月後の MRI にて判断

    結果

    ・修復群において骨孔は縮小傾向にあるが、

    完全に閉じたものはなかった。

    ・再断裂群において骨孔は有意に縮小し、完

    全に閉じているものが 5/7 孔あった。

    術後

    1 か月

    術後

    6 か月

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    1か月 3か月 6カ月 12か月

    0

    1

    2

    3

    4

    1か月 3か月 6カ月 12か月

    腱板修復群

    腱板再断裂群

    骨孔(平均)

    骨孔(平均)

    (mm)

    (mm)

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    64

  • 4 CT を用いた内臓脂肪の測定法

    ―内臓脂肪蓄積状態の男女差の検討―

    1) 岡山大学医学部 保健学科、2)岡山大学大学院 保健学研究科、3) 岡山大学

    病院医療技術部 放射線部門、 4)篠﨑クリニック、5)岡山大福クリニック

    高生 純 1)、上者 郁夫 2)、亀井山 弘晃 2)、山口 卓也2)、

    三村 誠一 2)、赤木 憲明 3)、篠﨑洋二 4)、宮木 康成 5)

    【目的】CT による内臓脂肪面積測定におい

    ては、臍部断面で計測する方法が一般的である。

    しかし、高度肥満者の場合、臍自体が下垂して

    いることがあり、臍部断面の画像に骨盤部が入

    り、脂肪面積に変動が生じる。そこで、肋骨弓

    下縁と上前腸骨突起部を結ぶ線の中点を修正

    位置と定義し、内臓脂肪面積を測定することが

    推奨されている。昨年の研究で、臍部と修正位

    置で内臓脂肪の蓄積状態について男女別に検

    討したところ、両部位での内臓脂肪面積の変化

    は、肥満の有無に関係なく男性の方が大きく変

    化した。これは、男性と女性で内臓脂肪の蓄積

    状態が異なるためと考えられるため、今回は上

    腹部から骨盤上部までに 7 か所の測定部位を

    設定し、男女差の検討を行った。

    【対象および方法】対象は、当研究室関連施設

    において肥満の精査目的で腹部 CT 検査を行っ

    た 123 人(男性 64 人、女性 59 人)。使用機種

    は GE 社製 Light Speed 16、測定ソフトは Aze

    社製 Virtual Place Liverty (Ver 2.03)を用

    いた。統計学的検討には Mann-Whitney 検定を

    用いた。

    【結果】男性では肥満群、正常群ともに修正位

    置よりも高い断面(+3d)で最大となり下方

    に行くにしたがって減少していた。全ての断面

    で正常群と肥満群の間で有意差が認められた。

    一方、女性の肥満群では臍部と修正位置の中間

    (+d)の位置で最大で、この断面を頂点とし

    て上下ほぼ対称的に減少する分布を示した。ま

    た、女性の正常群では臍部と修正位置の中間

    (+d)の位置で最大であったが各断面での差

    が少なかった。全ての断面で正常群と肥満群の

    間で有意差が認められた。

    【考察】昨年の検討結果から男性では臍部と修

    正位置の断面での内臓脂肪面積に有意差が認

    められたに対し、女性では有意差が認められな

    かった。これは、男性と女性では内臓脂肪の蓄

    積状態が異なるのではないかと推察し、本年度

    の研究では内臓脂肪の蓄積状態を調査するた

    め上腹部から骨盤上部まで等間隔で 7 か所の

    断面で測定を行った。

    男性では肥満の有無にかかわらず、修正位置

    よりも高い断面(+3d)で最大となり、下方に

    行くにしたがって減少していた。そのため臍部

    と修正位置の断面での内臓脂肪面積に有意差

    が認められたと考えられる。

    一方、女性の肥満群では臍部と修正位置の中

    間(+d)の位置で最大で、この断面を頂点と

    して上下ほぼ対称的に減少する分布を示した。

    このため女性では肥満の有無にかかわらず臍

    部と修正位置の断面での内臓脂肪面積に有意

    差が認められなかったと考えられる。

    【結語】内臓脂肪の蓄積状態は男性と女性で

    は有意に異なり、最大蓄積部位も異なるため、

    メタボリック症候群診断のための CT による内

    臓脂肪面積測定部位は男女で異なる断面にす

    べきであると考えられる。今後の課題として男

    女の内臓脂肪面積が最大となる断面と臍部断

    面で 100cm2 を肥満の基準とした場合のメタボ

    リック症候群診断能の比較が必要である。

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    65

  • 5 EGS5 による CT シミュレーション 第一報 線源

    医療法人 聖比留会 セントヒル病院 放射線部

    船越 猛,渡邉 篤史,菅原 庸介

    【目的】

    今回我々は CT 検査における被ばく線量評価に

    使用するため,モンテカルロ手法である EGS5

    を用いたコード作成を試み,線源及びCTシミ

    ュレーションの妥当性を検討した.

    【方法】

    1)EGS5 による診断用 X 線管のシミュレーシ

    ョンコードを作成し文献データ( Horst

    Aichinger)と比較した.

    2)CT 用に線質硬化フィルタを追加し Tucker

    の計算式近似と比較した.

    3)円筒銅製フィルターの中心に CT 用線量計

    を配置したCTシミュレーションコードを作

    成し実測値と比較した.

    【条件】

    CT:フィリップス・メディカル・システムズ社

    製 Brilliance 64,線量計:NERO mAx 8000型 X

    線出力アナライザ,金属フィルタ:銅板(C1220P

    0.1,0.5,1.0,1.5 ㎜),EGS5:Linux PC,体系

    形状作成:CGVIEW,焦点サイズ:1 ㎜×1 ㎜,

    加速電子数:2×109 個( 3.2×10-7mA),光子

    検出面:焦点より 6 ㎝,0.8 ㎝×0.8 ㎝,光子

    数:9819個(0.00295 sr)( 3.32×106 at 1sr),

    CT コーンビーム 1 mAs の時の線源光子数は

    1.73×1011 個

    【結果】

    1)Horst等のデータと比較すると低エネルギ

    ー成分が多く含まれた.フィールド内でのスペ

    クトルの変化は見られなかった.

    2)線質硬化フィルタを追加したスペクトルは

    Tuckerの近似計算値と一致した.(図1)

    3)円筒銅フィルター透過線量の相対値に対す

    る誤差は 0.5㎜で-6.5%,線量計のエネルギー

    特性(30keV~)を考慮すると-5.4%であった.

    (図2)

    【まとめ】

    Horst 等のデータと比較すると低エネルギー

    成分が多く含まれたが,近似式により求めたス

    ペクトルとは一致した.

    円筒銅フィルタ透過線量は線量計の誤差範囲

    内であり,エネルギー特性が解ればより精度の

    向上が期待できる.

    ボウタイフィルタ形状の組込みが今後の課題

    である.

    120kV 7°Re/W 1.2mmTi-filter

    0

    0.01

    0.02

    0.03

    0.04

    0.05

    0.06

    0.07

    0 20 40 60 80 100 120

    photon energy (keV)

    Rela

    tive inte

    nsi

    ty

    Tucker-24

    EGS5

    図 1

    120kV Cu cylind. 11.6cm

    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0.7

    0.8

    0.9

    1

    0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4Cu mm

    Rela

    tive

    dose

    CT chamber

    EGS(10 keV)

    図 2

    参考資料

    Horst Aichinger 等:「診断X線の基礎」笠井

    俊文・加藤博和監訳

    EGS研究会:http://rcwww.kek.jp/egsconf/

    X線スペクトル近似計算式:

    http://www.fujita-hu.ac.jp/~hid-kato/free

    soft.html

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    66

  • 6 EGS5 を用いたX線CTシミュレーション(第 2 報 被曝)

    セントヒル病院 放射線部

    渡邉 篤史、船越 猛、菅原 庸介

    【目的】

    現在、MDCTが普及し、CT検査時の被ばく線量

    への関心が高まっている。そこで X線CT検査時

    の被ばく線量評価に対応できるモンテカルロコー

    ドの開発を試み、線量評価の可能性を検討した。

    【方法】

    モンテカルロ計算には EGS5コードを用いた。第 1

    報の線源データを用い、シングルスキャンの CT

    シミュレーションコードを作成した。頭部用及び体

    幹部用 CTDIファントムを組み込んだシミュレーシ

    ョンを行い、実測データ、CTコンソール表示と比

    較した。EGSのヒストリー数は 2×109で行った。

    【結果】

    CTDIの比較を行うと、体幹部用ファントムでは、

    実測値、コンソール表示値、EGS ともに近い値を

    示した。しかし、頭部用ファントムでは EGSが約

    30%ほど低い値を示した。次に中心と周辺の各点

    における電離長 100mmに換算した吸収線量を比

    較した。頭部のグラフを図 1に、体幹部のグラフを

    図 2に示す。EGSでは体幹部用ファントムの中心

    で約 30%低い結果となった。

    【考察】

    ボウタイフィルタの影響が少ない領域において、

    光子数が低く見積もられていると考えられる。今回

    単位面積当たりの光子数を線束中心部の光子数

    に換算したが、この際の計算精度が大きく影響し

    ているものと思われる。体幹部の CTDIが一致し

    たのはボウタイフィルタの有無によるものと思われ

    る。中心で 30%少ない線量を、ボウタイフィルタを

    組み込んでいない周辺線量が補ったためと考え

    られる。

    【結語】

    EGSの絶対線量が 30%低いことがわかった。線

    源光子数の精度向上が今後の課題である。実測

    値に近づくようなボウタイフィルタの組込みが課題

    である。今回は CTDIでの比較を行ったが、将来

    的には、散乱線の強度分布や、任意の点の吸収

    線量などの評価に利用したい。線量計やファント

    ム、有償ソフト等、購入が難しい施設も多いかと思

    う。そのような施設でもパソコンさえあればできるの

    は大きなメリットである。今後も課題をクリアしてい

    き、より臨床で使える形にしたい。

    頭部

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    center 0時 3時 6時 9時

    吸収線量(m

    Gy)

    実測

    EGS

    図 1

    体幹部

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    center 0時 6時 3時 9時

    吸収線量(m

    Gy)

    実測

    EGS

    図 2

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    67

  • 体型 身長 cm 体重 kg SS 150 34 M 170 64 LL 180 99

    撮影部位 体型 k 胸部 SS 0.036

    M 0.025

    LL 0.018

    腹部 SS 0.031

    M 0.020

    LL 0.014

    骨盤 SS 0.024

    M 0.016

    LL 0.011

    0.00

    0.01

    0.02

    0.03

    0.04

    0.05

    0.06

    mS

    v/m

    Gy・cm

    SS

    M

    LL

    56 56

    7 CTの被曝線量計算(第1報)モンテカルロ計算

    浜脇整形外科病院 丸石博文 木原秀喜

    【目的】X線 CTによる被曝線量を DLPから実効線量を求める方法では、体型による変化や臓器線

    量は求まらない。そこで単純な形状を組み合わせて人体ファントムを作りモンテカルロ法で計算

    する方法を検討した。ここでは、撮影部位ごとに体型が変化したときの DLP-実効線量換算係数(以

    後 換算係数)kの変化を報告した。

    【方法】人体を体幹部(両肺を含む)、乳房、頭頸部、両四肢の合計 10 個の楕円体で構成した。

    肺は密度 0.25の水、他は全て密度1の水とし、このファントムの各臓器位置に合計 169点の線量

    計算点を配置した。得られた各臓器の平均線量に 2007年勧告の組織荷重係数をかけて実効線量を

    求めた。モンテカルロ法ではX線光子のエネルギーのサンプリングとその飛跡をトレースするだ

    けである。X線発生点と散乱点から線量計算点へ届く光子のエネルギーとフルエンスを計算し、

    これに水の質量エネルギー吸収係数をかけることでその座標の吸

    収線量とした。なお計算には、モンテカルロ法により求めた

    CTDIp,CTDIc,CTDIw が、装置付属のこれらのデータと一致するよ

    うなX線出力およびボウタイフィルタの形状を用いた。なお今回

    の計算に用いたファントムは右の表の3タイプである。

    【結果・考察】Mの体型のファントムの胸部では、120kV,1360mAs,

    ビーム幅 15mm の撮影条件で 4.7mSv、DLPが 189mGycm このとき換

    算係数 0.025 であった。右の表に、撮影部位・体型ごとの換算係

    数を示す。下の図は、ビーム中心から±56mmのビーム幅でビーム

    幅の中心が体軸に沿って移動したときの換算係数の変化を示した。

    それぞれのピークは、足方から男性生殖腺、女性生殖腺と膀胱、

    胃と肝臓、肺と乳房、甲状腺

    であり、第2と3のピークは

    結腸を含む。いずれの部位も

    体型が小さいほど換算係数

    は高い。これは体型が小さい

    ほどDLP当たりの平均臓器線

    量が高くなるからである。

    今回の計算では、一般に用

    いられている換算係数 0.015

    では実効線量を過小評価す

    ることが示された。

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    68

  • 8 CTの被曝線量計算(第 2報:線量計算ソフトの開発)

    浜脇整形外科病院 木原秀喜 丸石博文

    【目的】

    X線CTの被曝線量を当院の装置にマッチし

    た形で計算する方法を考案した。計算には、身

    長、体重、撮影範囲、ビーム幅、FOV、mAs

    値のパラメータを入力することにより臓器線

    量および実効線量が得られるようにした。

    なお、使用した CT装置は東芝製 Asteion4(4

    列)である。

    【方法】

    身長 150,160,170,180cm の4種類に、ロー

    レル指数(肥満度指数)100,110,130,152,170

    の5種類の体重を組み合わせ、合計20体型の

    ファントムを作成した。そして、それぞれのフ

    ァントムを3種類のFOVでモンテカルロ計算

    (第一報)により臓器線量を計算した。

    データは、X線ビームの入射範囲(スキャン

    方向)を 16mmとし、これを 16mmづつ体軸

    方向に移動して、各位置における 1mAsあた

    りの臓器線量を求め、データとした。

    データ数は、ファントム数(20)×FOV(3)×

    Z軸分割数(64)×臓器数(15)となる。

    任意のパラメータからの計算方法として、身

    長方向とローレル指数方向の2次元の内挿を

    行い、任意のデータを求めた。

    これらのデータを表計算ソフトのエクセル

    に読み込み、前記の6種類のパラメータ入力

    (図 1)により任意の体型およびスキャン条件

    の臓器線量と実効線量が計算できるようにし

    た。(図 2)

    【結果・考察】

    CTで実効線量を計算するには、市販のソフ

    トとして ImPACTを用いる方法や、DLP-実効

    線量換算係数を用いる方法があるが、身長や体

    重の補正は難しい。

    今回の方法ではこれらの補正をし、当院の照

    射録から得られる照射条件を入力することで

    任意の体型や撮影における実効線量と臓器線

    量が計算できた。

    また、今後の課題として当院の装置のAEC

    の対応や小児ファントムの作成など行なって

    いきたい。

    図 1

    図 2

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    69

  • 0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    1.2

    0 2 4 6 8 10 12

    CT1 ヘリカル 2mm CT1 コンベ 4mm CT1 ヘリカル 5mm PET/CT ヘリカル 3mm SPECT/CT ヘリカル 3mm 治療 コンベ 3mm

    コントラスト(%)

    9 当院における目的別CT装置の被曝線量と画質の現状調査 香川大学医学部附属病院 放射線部

    谷井 喬、松村 宣良、笹川 泰弘、片山 博貴、門田 敏秀

    三木 章弘、續木 将人、大久保 正臣、岩﨑 孝信、加藤 耕二

    【目的】近年、CTは日常診療にかかせないものとなっ

    ており、CT単独での使用のみならず他のモダリティと

    フュージョンして使用する頻度が高くなってきた。各

    モダリティ間でのCTの使用目的が異なるため、線量

    や画質は統一化されていない。そこで今回、当院にお

    ける各装置の線量と画質を把握し検討したので報告

    する。

    【方法】当院で使用している頭部および腹部の撮影条

    件にて CT 性能評価用ファントムを撮影し、低コント

    ラスト分解能、MTF について評価を行った。装置に表

    示される CTDIvol と低コントラスト分解能、MTF につ

    いて評価した。

    【使用機器】

    ・CT性能評価用ファントム

    Catphan600 / ファントム・ラボラトリー社

    ・解析用ソフト

    Auto QA Lite / IRIS社

    ・被曝線量推定ソフト

    ImPACT+SR250/ イギリス放射線防護庁

    【結果および考察】

    table.1頭部撮影条件

    table.2腹部撮影条件

    ※印は ImPACT にて算出した。撮影条件において頭部

    CTDIvol では治療 CTが最も高く、腹部 CTDIvolでも治

    療 CTが最も高かった。(table.1,2) MTF は 10%にて

    評価を行った。頭部では CT1 の 2mm が一番よく

    SPECT/CT、PET/CT が他の CT と比較して、低い結果と

    なった。(fig.1)腹部では PET/CT、治療 CTが 10%で

    評価が不可能であった。評価可能なものでは CT1が一

    番よく、IVR/CTが一番低い結果となった。

    fig.1頭部 MTF 空間周波数(cycles/cm)

    低コントラスト分解能の評価では頭部で通常の傾向

    とは異なり線量が低いものがよく、高いものが悪い結

    果となっており、スライス厚で評価しても厚いものほ

    どよいという傾向はなかった。(fig.2)

    fig.2頭部低コントラスト分解能 Diameter(mm)

    腹部では治療計画用 CT を除き、線量が高くスライス

    厚が厚いものが低コントラスト分解能がよい結果と

    なり、CT2が一番よい結果となった。(fig.3)

    fig.3腹部低コントラスト分解能 Diameter(mm)

    IVR/CT は診断用 CT 装置と同様の線量が照射されてお

    り、複数回撮影することを考慮すると、今後は画質を

    担保した上で線量低減の検討の必要が示唆された。

    核医学の CTは他の CTと比較して線量が低い事がわか

    った。これは主に吸収補正等に使用されるためである

    と考える。MTF は低く、低コントラスト分解能が優れ

    ていたため、ノイズを抑えるフィルタが選択されてい

    ると考えられる 。

    治療計画用 CT は頭部、腹部条件ともに最も CTDIvol

    が高くなっている事がわかった。MTFは診断用 CTと同

    程度だが、低コントラスト分解能は低い結果となった。

    【まとめ】日常使用している撮影条件において、性能

    評価用ファントムを用いて線量と画質について調査

    した結果、被曝線量および MTF・低コントラスト分解

    能の結果も異なっていることが判った。

    M

    T

    F

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

    治療CT コンベ 3mm CT1 ヘリカル 2mm CT1 ヘリカル 5mm CT1 コンベ 4mm PET/CT ヘリカル 3mm SPECT/CT ヘリカル 3mm

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    1.2

    2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16

    PET/CT ヘリカル 3mm 治療CT コンベ 3mm CT1 ヘリカル 5mm IVR/CT ヘリカル 5mm CT2 ヘリカル 5mm

    コントラスト(%)

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    70

  • 10 CT透視における従事者への被曝防護-CT透視の散乱線量の把握-

    岡山大学病院 医療技術部放射線部門

    ○山内 崇嗣,市川 大樹,山口 卓也,大西 治彦

    若狭 弘之,小林 久員,西田 直樹,稲村 圭司

    目的

    東芝製 CT装置,Radcal社製チェンバ,京都

    科学社製胸部ファントムを用い,室内,従事者

    が立つ位置,術者の手指付近の CT透視使用時

    の散乱線量分布の測定と把握すること。

    方法

    室内散乱線量について,ガントリ中心の高さ

    にて,体軸方向を 0°とし頭側 0~30°,足側

    0~60°を 15°毎に測定した。0.8,0.4,0.2,

    0.1 [μSv/s]の分布図を作成した。

    従事者が立つ位置について,足側の右側 45°

    (術者位置),頭側 0°(看護師位置)の 2 方

    向にて,60~120cm を 20cm 毎に測定した。

    高さは床から 80,115,150cmで行った。

    手指付近について,体軸方向 5~25cm,左右

    方向それぞれ 0~20cm を 5cm 毎に測定した。

    ファントムに接する位置にて測定を行った。

    結果

    室内散乱線量について,図のように左右では

    ほぼ等しく,頭側よりも足側が低い分布となっ

    た。15°方向が若干低くなり,60°方向では

    明らかに低い分布となった。

    術者の位置について,術者,看護師位置とも

    80cmが低く,術者位置では 115cm,看護師位

    置では 150cmが高かった。

    手指付近について,左右方向はほぼ等しい分

    布が得られた。体軸方向に 5~15cm では中心

    の線量が高く,15cm~では中心と辺縁の差が

    少なくなる傾向がみられた。

    考察

    室内散乱線量について,頭側よりも足側が低

    く,15°方向が低くなった原因は,主に足側

    に配置された寝台やファントムによる散乱線

    吸収が考えられる。60°方向が低くなった原

    因は,チェンバの一部がガントリに被っており,

    そこで吸収されたと考えられる。

    従事者の位置について,80cm が低くなった

    原因は寝台による吸収が考えられる。術者位置

    で 115cm,看護師の位置では 150cmが高くな

    った原因は,高さ方向でも寝台やファントムに

    よる吸収の影響があることが予想される。

    手指付近について,スライス面に近い位置で

    は中心が高く,離れると中心と辺縁の差が少な

    くなった原因は,近い位置ではファントムや寝

    台による吸収の影響が小さい事や距離の逆二

    乗則による散乱線の平滑化が考えられる。

    結語

    今回の測定で,散乱線量分布が把握できた。

    可能な限りガントリから離れるべきであるが,

    術者は離れることが困難であるため,使用可能

    な防護は行うべきである。特にガントリに近く

    なる手指の防護も検討すべきである。これらの

    事を放射線技師が把握,管理して他の従事者へ

    伝える事が必要である。

    0° 0°

    60°

    60°

    30°

    30°

    図 室内散乱線分布図

    頭 足

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    71

  • 11111 1 1 1 CTCTCTCT透視における従事者への被曝防護~透視における従事者への被曝防護~透視における従事者への被曝防護~透視における従事者への被曝防護~CTCTCTCT透視における被曝低減についての検討~透視における被曝低減についての検討~透視における被曝低減についての検討~透視における被曝低減についての検討~

    岡山大学病院 医療技術部 放射線部門

    ○市川大樹、山内崇嗣、山口卓也、大西治彦

    若狭弘之、小林久員、西田直樹、稲村圭司

    【目的】

    CT透視における術者の手指被曝を低減させ

    るために、簡易的に行える防護方法について検

    討した。

    【方法】

    撮影スライスを胸部ファントムの気管分岐

    部に合わせ、防護方法を変化させ CT透視を行

    い線量率を測定した。測定点はスライス面から

    尾側方向に 10~20cm、体軸から左右方向に各

    0~20cm、5cm 毎に測定を行った。防護方法

    は以下の 6種類で行った。

    ①エッジ有りプロテクタをスライス面から

    5cm 尾側に固定、②エッジ有りプロテクタを

    スライス面から 5cm、10cm、15cm と尾側に

    移動、③エッジ無しプロテクタにおいて2と同

    様の条件で測定、④エッジ有りプロテクタにエ

    ッジ無しプロテクタを重ね、0.50Pb 当量とし

    て1と同様の条件で測定、⑤エッジ無しプロテ

    クタを腹部に追加し、1と同様の条件で測定、

    ⑥エッジ無しプロテクタを寝台側に追加し体

    を一周する形にして1と同様に測定した。

    【結果】

    6種類の防護すべてに置いて、左右方向の変

    化はほとんど無かった。

    ①と②を比較するとエッジをスライス面に

    近い位置で固定させた方がより遮蔽できてい

    るのが分かる(図1)。②と③を比較するとエ

    ッジによる遮蔽効果が高いのが分かる(図2)。

    ①、④、⑤、⑥ではほとんど差は無かった。

    また、防護無しの状態と比較すると線量率は①

    で 7分の 1程度、③においても 2分の 1以下

    になった。

    【考察】

    エッジにより後方散乱腺が遮蔽できている

    ことが分かり、また、エッジ部をできるだけス

    ライス面に近づけて使用することで遮蔽効果

    が高いことも証明できた。①、④、⑤、⑥でほ

    とんど差がなかったため、患者の負担や準備も

    考慮してエッジ有りプロテクタ一枚で十分で

    あるといえる。また、エッジ無しプロテクタで

    あっても、エッジ有りには劣るが遮蔽効果はあ

    るため、使用することが望まれる。

    【結論】

    エッジ有りプロテクタを 5cm で固定させた

    ときが最も簡易的で高い遮蔽効果が得られ、術

    者の手指被曝を低減させることが可能である

    ことが分かった。有用性を理解した上で術者に

    提言することが重要である。

    図2 ②と③の比較

    図1 ①と②の比較

    012345678910

    10 15 20

    距離[cm]線量率[μSv/s]

    エッジ固定

    エッジ移動

    02468101214161820

    10 15 20

    距離[cm]

    線量率[μSv/s]

    エッジ有り

    エッジ無し

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    72

  • 12 高濃度造影剤(リピオドール)使用時におけるコーンビーム CTの

    最適条件の検討 1)川崎医科大学 附属川崎病院 中央放射線部 2)川崎医療短期大学 放射線技術学科

    藤井政明1) 田淵昭彦1)2) 荒尾信一2)

    【目的】Angio 装置搭載のコーンビーム CT は

    肝臓 IVR において簡便に 治療効果を判定可

    能である.しかしながら高濃度造影剤(リピオ

    ドール)の集積はアーチファクトを発生させ評

    価を困難にする場合

    がある.今回、我々は

    普及型装置を用い可

    変できるパラメータ

    ー《付加フィルター・

    FOV・SID》の組み合

    わせにより,高濃度造影剤による画質劣化を抑

    制するための最適パラメーターを検討した.

    【使用装置および使用器具】Angio 装置:

    INFX-8000V(東芝)FPD 12*12inch・ワークス

    テーション(WS):ZIO Station 2・自作ファ

    ントム:高濃度造影剤(480 mgI/ml)を封入した

    直径 8.9 mmφ高さ 39.0 mm の円柱ファント

    【実験 1】a.水中に

    ファントム長軸をベッ

    ドと垂直,b.長軸を

    ベッドと平行に固定し撮影を行った(Fig. 1).

    ファントム中心がアイソセンターとなるよう

    固定した.得られた画像より a.WS で MPR 画

    像を作成しファントム直径を半値幅で測定し

    実寸との差を比較した.計測は X 線管の軌道

    に沿って生じるアーチファクト方向,それに直

    交する方向とした.b.同様に高輝度アーチフ

    ァクトが発生した AP 方向,低輝度アーチファ

    クトが発生した 4-10 時方向の直径を半値幅で

    測定し実寸との差を比較した.

    【結果 1】ファントム長軸をベッドと垂直に置

    いた場合,実寸値との差が大きく生じた.

    【実験 2】実寸と差が大きかったファントムの

    置き方に対して,フィルター・FOV・SID を

    可変し,焦点-アイソセンター間距離を一定に

    して撮影を行った.撮影条件管電圧:113 KV

    管電流:500 mA 可変条件:フィルター1.8

    mm Al,0.2・0.5 mm Cu, FOV 8・12 inch,

    SID 110・120 cm

    【結果 2】

    すべての場合において 0.5 mm Cu が,実寸径

    に近い値を示した(Fig. 2).

    【考察】計測径と実寸径の違いは,アーチファ

    クトや,SID・FOV による幾何学的因子によ

    るボケ・歪が含まれると考えられる.1.フィル

    ターに 0.5 mm Cu を使用することで実寸値と

    の差が少なくなった.これは低エネルギー成分

    が吸収され実効エネルギーが上がることによ

    りアーチファクトの影響が抑えられたと考え

    られる.2 .FOVを 8 inchにすることにより,

    実寸に近い値を示した.これは最少ピクセルサ

    イズが小さくなり,分解能が向上したためであ

    ると考えられる.3.SID においては一定の傾

    向が見られなかった.これは 10cmの差では

    ほとんど影響がないと考えられる.

    【まとめ】本結果より,高濃度造影剤使用時に

    おける最適条件はフィルター: 0.5mm Cu

    FOV: 8 inch, SID: 120cmであることが示唆

    された.しかしながら FOV を小さくすると治

    療範囲をカバーできなくなる恐れがあり,使用

    には十分に注意が必要であると考える.

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    73

  • 13 低線量撮影を目的とした逐次近似法による画像再構成法の基礎的検討

    倉敷中央病院 放射線センター

    中川 美智子

    目的

    近年、被ばく低減に向けた技術の開発が目覚

    しく、当院でも逐次近似法による画像再構成を

    搭載した CT装置(シーメンス社製 SOMATOM

    Definition As)が導入された.今回導入され

    た逐次近似による再構成法 IRIS(Interative

    Reconstruction in Image Space)と従来の再

    構成法 FBP(Filtered back-projection)の物

    理特性の違いを理解し、臨床で使用することを

    目的に基礎的検討を行った.

    使用機器

    CT装置:Siemens社製 SOMATOM Definition AS

    逐次近似を用いた画像再構成法:IRIS

    方法1

    同一条件で撮影したファントムを IRISと

    FBPで画像再構成を行い MTF(ワイヤ法)と NPS

    について比較を行った.

    方法2

    線量を 50mAs~500mAsに変化させ、その他の

    撮影条件を一定にし、ファントム撮影を行った.

    IRISとFBPで CT値と SD、CNRの比較を行った.

    また、ファントム画像の模擬資料上にプロファ

    イルカーブをひき、IRISと FBPの比較を行っ

    た.ファントム画像の再構成は FOV200と FOV50

    で行い、それらの比較も行った.

    結果1

    MTFは FBPと IRISでほとんど同じ形状とな

    った。NPSは IRISで値が小さくなり、中間周

    波数で IRISと FBPの差が大きくなった.

    結果2

    CT値は IRIS、FBPともに変化せず、SDは IRIS

    を使用することで改善が認められ、CNRも向上

    した.IRISは FBPと比べ、最大 47.6%尐ない

    線量で同等の SDが得られた。

    プロファイルカーブは、再構成 FOV50で IRIS

    とFBPを比較した場合はmAs値の変動にかかわ

    らず、ほぼ同じ形状を示した.しかし、再構成

    FOV200 で比較した場合は、IRIS は FBPと比べ

    て mAs値が小さくなるにつれ、コントラストが

    つきにくい傾向にあった.

    考察

    IRIS は FBPと比べて空間分解能はほぼ同程

    度で、SDの改善が認められた.これより、IRIS

    は線量を下げて撮影した場合でも FBPと比べ

    て画質の改善が期待でき、被ばく低減可能であ

    ることが示唆される.

    しかし、再構成 FOVが大きく、かつ低線量に

    なるにつれ、コントラストの低下が認められた.

    これより、IRISの効果はピクセルサイズに依

    存する可能性があると考える.

    臨床使用にはさらなる検討が必要である.

    40

    60

    80

    100

    120

    140

    160

    180

    0 5 10 15

    CT

    Va

    lue(H

    U)

    Position

    FOV200 500mAs

    B36

    I36

    40

    60

    80

    100

    120

    140

    160

    180

    0 5 10 15

    CT

    Va

    lue(H

    U)

    Position

    FOV200 50mAs

    B36

    I36

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    74

  • 14 連続 CT画像再構成法の拡張による効果

    山口 雄作1),藤本 憲市2),吉永 哲哉2) 1)徳島大学大学院保健科学教育部

    2)徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部

    【背景】 医用 CT 画像の再構成には逆投影法または逐次法が一般的に用いられているがそれぞれ長所,短所がある.筆者等は,CT 逆問題を微分方程式系の初期値問題に帰着させ,解に沿った目標関数値の単調減少が保証された画像再構成法(連続時間CT 画像再構成法または連続法と呼ぶ)を提案している.連続法の勾配系は非線形微分方程式で記述され,電子回路実装により高速演算が可能である.連続法は,雑音や欠損が含まれる非適切な状況においても,逆投影法に比べて品質の高い再構成画像が得られる.さらに,計算機メモリ容量の削減やハードウェア縮小のため系をいくつかのブロックに分割し,部分勾配系を巡回的に切り替えながら解軌道を接続させる方法(ブロック連続法)も提案している. 【目的】 本研究において,連続法を拡張した微分方程式系の性質を検討する.提案法(拡張連続法と呼ぶ)は,少数方向の投影に基づく再構成問題の解法として有効であると考えられ,X線 CT においては被ばく量の低減に効果があると期待される.拡張した微分方程式系にみられる平衡点の安定性を理論的に証明し,数値実験により拡張の効果を検討する. 【方法】 二重 Kullback-Leibler ダイバージェンスをリアプノフ関数に定義し,真値に対応した平衡点が漸近安定であることを理論的に証明する.また,濃度が 2値および多値のディジタル・ファントムを対象にした少数方向投影からの再構成実験により,収束性や画像の性質を従来の連続法および逆投影法と比較する. 【結果】 孤立平衡点に関するリアプノフ関数の候補として,二重 Kullback-Libler ダイバージェンスを考える.平衡点を除くある部分空間内に系の初期値を与えた場合,解に沿った微分は負値となり,二重 Kullback-Libler ダイバージェンスはリアプノフ関数になることから,目標関数の単調減少性および平衡点の漸近安定性を証明できた. 2 値のファントムを対象とし,解軌道に沿ったリアプノフ関数(目標関数)値変化の数値例を図1に示す.横軸は時間,縦軸は目標関数値である.投影方向数を変化させて検討を行った結果,投影

    方向数によらず,図の時間範囲内において目標関数値の単調減少が確認できた. 次に,画像再構成の結果を図 2に示す.再構成画像および目標関数値より比較を行った結果,提案法は少数方向投影による2値画像に有効であることがわかった.また,多値画像においても,従来法と同等以上の品質であることがわかった.

    t

    V (x)

    図1 目標関数 V(x) の収束性 (投影方向数は,黒い実線:3,赤い実線:6)

    ファントム 拡張連続法 連続法 逆投影法

    3方向投影

    6方向投影

    9方向投影

    18方向投影

    1372.8 2853.3

    674.59 690.24

    378.39 418.34

    328.97 355.69

    ∞ 図 2 再構成画像 (画像下の数値は目標関数値を示す) 【まとめ】 拡張連続法の理論的検討を行い,目標関数の単調減少性および平衡点の漸近安定性を示した.数値実験の結果,画像濃度が 2値の場合だけでなく,濃淡画像においても拡張連続法の有用性が明らかになった.

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    75

  • 15 逐次近似法を応用した画像再構成法における最適ブレンド率の推定

    貝原 雄也 1) ,山口 裕之 1) ,下土居 一 1),梶岡 雄一 1)

    皿田 勝裕 1) ,松村 祐輔 1) ,重田 祐輔 1),藤川 光一 2)

    1) JA 広島総合病院 中央放射線科

    2) JA 広島総合病院 画像診断部

    【背景】

    逐次近似法を応用した画像再構成法で再

    構成した画像(ASIR 画像)は FBP 法で再構

    成された画像(FBP 画像)より画像ノイズが

    低減されるため撮影線量低減が可能である

    が,両者の画像は印象が異なるため,臨床

    ではASIR画像とFBP画像とを一定の割合

    でブレンドして使用している.

    【目的】

    ASIR 画像と FBP 画像のノイズ成分につ

    いて FBP 画像を基準として物理的に比較

    評価し,両者間において画像違和感が少な

    く線量低減可能な ASIR のブレンド率(最

    適ブレンド率)を推定した.

    【使用機器】

    LightSpeed VCT vision (GE healthcare)

    装置付属 QA ファントム,画像解析ソフト

    【方法】

    QA ファントムを 50mA で撮影し,ASIR

    ブレンド率を 10%から 100%まで変化させ

    て再構成を行った(ASIR 画像).ASIR 画像

    の均一性評価部分の SD 値を測定し,FBP

    法において同一のSD値が得られる 10通り

    の線量を算出して,QA ファントムの撮影

    を行った(FBP 画像).画像解析ソフトを用

    いて,ASIR 画像および FBP 画像の NPS

    曲線を取得した.NPS 曲線の形状の変化が

    画像違和感として現れると仮定して,定量

    的に評価するため曲線下の面積を算出し,

    有意差検定(unpaired t-test) を行った.

    【結果】

    同等の SD 値となるように撮影し ASIR

    画像と FBP 画像の NPS を比較すると,

    ASIR20%までは両者の曲線は一致したが,

    ブレンド率が 30%を超えると両者の曲線

    は乖離し始め,50%以上では異なる曲線と

    なった.両者の曲線下面積は,ASIR40%ま

    では有意差は認められなかった(図 1).

    図 1 最適ブレンド率の推定

    【考察】

    FBP 画像の NPS は撮影線量が増加する

    にしたがって低周波から高周波まで均一に

    低下しているが,ASIR 画像の NPS は低周

    波成分が低下せずに中周波から高周波にか

    けて急激に低下することが,画像違和感の

    原因と考えられる.今回の曲線下面積を用

    いた評価方法では,曲線の交点左右の曲線

    に囲まれた面積が等しくなると両者の差は

    検出不可能になることが問題点である.

    【結論】

    画像違和感が無く,且つ最もノイズ低減

    効果が大きい最適ブレンド率は 40%である.

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    76

  • 16.逐次近似法を応用した再構成画像におけるノイズ低減効果の基礎的検討

    益田地域医療センター医師会病院 放射線技術科

    永戸信吾、道下貴規、寺井真洋、青木早和、山田和幸

    [目的]

    逐次近似法を応用した画像処理 Intelli IP を用

    い、ノイズを低減したファントムの画像特性につ

    いて基礎的検討を行った。

    ~Intelli IP~

    ・分解能の低下を抑制しながらノイズ除去を行う。

    ・撮影部位ごとにチューニングされたフィルタを

    用いて画質を調整する。

    ・最適化されたプリセットパラメータ(アダプテ

    ィブ・フィルタ 2:AF2)は A~E の 5 段階に分け

    られ、Eが最もノイズ低減された画像となる。

    [方法]

    ① 水ファントムを撮像し、再構成を AF2 ごとに

    行い SD 法・CT 値を比較した。

    ② ワイヤーファントムを撮像し、MTF を測定し

    た。

    ③ 水ファントムの撮像にて NPS を測定した。

    [使用機器]

    CT:日立メディコ社製 64 列 MSCT「SCENARIA」

    水ファントム:Φ230mm

    ワイヤーファントム:自作

    [結果]

    ① SD 値の変化

    AF2 を変化に伴い SD 値は下がっていった。

    NorとEを比べると約20%のSD値の改善(SD15)。

    NorとEを比べると約18%のSD値の改善(SD12)。

    ② CT 値の変化は?

    AF2 を変化させた時の CT 値の変化はなし。

    均一性の条件(中央値より 2HU 以内)を満たして

    いた。

    ③ MTF の変化は?

    AF2 を変化させた時に MTF は変化しなかった。

    ④ NPS の変化は?

    AF2 の度合いに応じてノイズが抑制されていた。

    NPS からは中間周波数を中心に効果が表れている。

    ⑤ 視覚的評価

    腹部領域を撮像し、目視により確認できた。

    [考察]

    AF2 を変化させると SD 値、NPS は低減する。

    AF2 の強調度合いを変化させても CT 値、MTF は変

    化しなかった。

    視覚的にもノイズ低減処理の効果を確認できた。

    [まとめ]

    画像処理でノイズが低減しNPSの改善がみられた。

    強調処理に伴い被ばく線量の低減が期待できる

    ため、低線量撮影時や体格の良い被検者の撮影時

    などに有効。一方、画像処理の度合いによっては

    解像度を低下させ、視覚的な印象が異なることも

    あるため注意が必要である。

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    77

  • 17 量子ノイズフィルタを用いた画質補償についての基礎的検討

    倉敷中央病院放射線センター 福永 正明 萩原 芳明 中川 美智子 守屋 隆史 山本 浩之 小西 由美

    【背景・目的】

    当院の CT検査では,5mm厚のルーチン撮

    影画像と共に 1mm厚の Thin-slice画像を出力

    し,MPR・3D作成だけでなく読影診断にも活

    用されている.Thin-Slice画像はノイズ増加を

    伴うがその対策はされていない.そこでノイズ

    低減方法の一つである量子ノイズ低減フィル

    タ(Quantitative Denoise Filter:QDF)について

    基本特性を評価し,最適化を検討した.

    【方法】

    TOSHIBA社製 Aquilion64を用いて下記の方

    法で検討を行った.

    物理評価として,原画像(以下 ORG)及び

    QDF(Q-03~Q-10)の全 9種類の画像におい

    て,高コントラストとノイズへの影響について

    検討した.高コントラストはビーズ法による

    MTFを測定し評価した.ノイズは Catphan

    CTP486を使用して NPSを測定し評価した.

    視覚評価として,自作ファントム(アクリル

    製円錐を CT値差+15HUのゼラチンで覆った

    もの)を臨床と同等の SDとなるように撮影を

    行った.低コントラスト評価のため,円錐の頂

    点側からスライスを送り円として認識される

    最小径の大きさを比較した.また,Axial像・

    MPR像の任意断面をそれぞれ 9枚並べてモニ

    タ表示し,正規化順位法(観察者:診療放射線

    技師 8名)を用いて評価した.

    【結果】

    MTFはQDFの違いによる変化を認めなかっ

    た. NPSは QDFが強いほど低下し,高周波成

    分領域でより低下した(図 1).

    視覚評価の結果においては,認識された最小

    径は強い QDFほど小さくなった.また,正規

    化順位法の結果(図 2)において,強い QDF

    を用いると Axial像では高評価が得られたが,

    MPR像では評価が下がった. Axial像・MPR

    像共に ORGより QDFを使用した画像の方が

    良い評価が得られた.

    【考察】

    QDFを用いることで空間分解能を保持した

    ままノイズ成分の抑制が可能となり,

    Thin-Slice画像の画質改善が得られたが,過度

    の QDF設定は MPR像の劣化を招くことが示

    唆された.

    図 1 QDFの違いによるNPSの変化

    図 2 正規化順位法

    (点線内はそれぞれ有意差なしを表す)

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    78

  • 18 当院における検診マンモグラフィのソフトウエアコピー診断環境構築 益田市医師会立益田地域医療センター医師会病院 放射線技術科

    山田和幸 青木早和 永戸信吾

    デジタルマンモグラフィのソフトコピー診

    断をおこなう上で、5M ピクセル以上の高輝度高精細モニタを用い、読影に必要なツール

    を網羅するマンモグラフィ用ビュアソフトウ

    エアが必須である。既設の PACSや DICOMビュアで対応できない場合はデジタルマンモ

    グラフィ専用読影ワークステーション(以下

    MMG-WS)導入でソフトコピー診断が可能となる。 当院では平成 23年 1月の PACS更新時に検診マンモグラフィのソフトコピー診断実現

    を目的にMMG-WGを導入し、同年 7月よりソフトコピー診断へ移行した。今回読影効率

    を考慮した PACSサーバおよびMMG-WSの設定について検討をおこなった。

    ソフトコピー診断移行前の問題点として

    「膨大な画像管理」「読影室の使用停止」「複

    雑なフィルム管理」があり、これらをソフト

    コピー診断移行で解決できると考えた。 今回検診マンモグラフィのソフトコピー診

    断環境構築にあたり、次の項目を検討した。 ●MMG-WS設置場所 ●DICOM storage service classの変更 ●検査画像転送方法 まず「MMG-WS の設置場所」について、デジタルマンモグラフィ品質管理マニュアル

    では「直接光がモニタ画面に反射しないこと」

    とある。 条件を満たす場所として放射線技術科内で使用しなくなった暗室が候補に挙がっ

    た。 周囲光を遮ることができ、部屋の明るさを調整しやすいことから、MMG-WS 設置場

    所をこの暗室とした。 次に「DICOM storage service classの変更」について、CR 導入時に一般撮影とマンモグラフィ両方に対応できるようにした名残で、マン

    モグラフィの DICOM のモダリティタグを「CR」としていたが、今回フィルムレスも考慮するにあたり、画像検索を容易にするため

    「MG」へ変更した。 過去画像では昨年マンモグラフィを CR 化してから平成 23 年 1 月のPACS 更新までの期間でマンモグラフィを「CR」として保存していたことから、該当画像を PACS から削除し、マンモグラフィ専用 CR画像処理装置から「MG」で再送した。 「検査画像転送方法」については、MMG-WSから Q/Rで画像を取得するのではなく、モダリティから PACSサーバが画像を受け取った時点でMMG-WSへ過去画像も含めた自動画像送信をおこなうことで、操作者である読影医の負担

    軽減を図った。 上記を実施した結果として、まずソフトコピ

    ー診断の恩恵を得ることができた。具体的には

    フィルムの出し入れ等作業が無くなったことに

    よる読影効率の向上、フィルム管理の負担軽減、

    読影操作性向上(マウス操作のみで読影可能)

    で読影医にも好評であった。 また新たな作業としてMMG-WSのメンテナンスが加わった。具体的には画像保存領域の確

    保(定期的な画像削除)とモニタ精度管理であ

    る。 健診施設では現在も紙カルテを使用しており、

    結果返送は所見用紙でおこなっているが、今後

    は診療との連携を考慮しオンラインでの結果返

    送を検討したい。 【参考文献】 ○「デジタルマンモグラフィ品質管理マニュア

    ル」NPO法人マンモグラフィ検診精度管理中央委員会編集 医学書院 ○「DICOM入門」Herman Oosterwijk著 日本画像医療システム工業会監訳 篠原出版新社 ○「DICOM の世界」日本画像医療システム工業会 website http://www.jira-net.or.jp/dicom/

    接続概略 (放射線検査関係)

    PACS serverWeVIEW

    CRPROFECT CS

    IP-VPN

    オーダリングシステム電子カルテシステム

    RISconsole

    Viewer (3M×1)NV-1000

    Viewer (3M×2)NV-1000

    +report console

    3DWS serverVINCENT

    MMG-WS(5M×2)+17inch

    X TREK MAMMOLUCID

    RAID8TB

    ×8

    CR console×3

    ×2

    ×2

    MMGCR console

    AWS-c

    printerDRYPIX7000

    放射線科医師自宅

    放射線科外来

    保健予防センター

    放射線技術科

    DSAIntegris V5000

    DR(FPD)VersiFlex

    MDCTSCENARIA

    CRFCR5000plus

    CRVELOCITY U

    CR storage serverSPINE2

    MRIntera Achieva

    1.5T pulsar

    NASserver

    report serverNatural Report

    Viewer (3M×2)NV-1000

    +report console

    RISRIS server

    MWM servergateway serverbackup server

    DXADTX-200

    WS consoleVINCENT

    PMCPMIAOC

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    79

  • 19 NovationDRにおけるマンモグラフィ撮影条件の検討

    徳島大学病院 診療支援部診療放射線技術部門

    櫻川 加奈子,山田 健二,天野 雅史,多田 章久

    【背景】

    当院ではこれまでマンモグラフィ撮影につ

    いてオートの撮影条件が適切であるかの検討

    を行ったことがない.

    【目的】

    当院のマンモグラフィ装置のオート撮影条

    件が適切であるかの検討を行う.また,オー

    ト撮影を基準としてセミオート撮影にて,よ

    り適切な撮影条件を検討する.

    【方法】

    検討は平均乳腺線量(AGD)とコントラスト

    ノイズ比(CNR)とを用いて行った.これらの

    算出はデジタルマンモグラフィ品質管理マニ

    ュアルに準じて行った.PMMA ファントム厚を

    2cm から 6cm まで 1cm 刻みで変え,オート撮

    影とセミオート撮影との結果を比較し検討を

    行った.セミオート撮影では,管電圧を 26kV

    から 34kV まで 2kV ごとに変化させて,AGD と

    CNR を算出した.

    【結果・考察】

    PMMA ファントム厚が 2cm の結果を Fig.1 に

    示す.オート撮影では Mo/Mo で 25kV が選択さ

    れた. AGD が品質管理マニュアル推奨の 2mGy

    以下であることや CNR が高いことから適切な

    撮影条件であった.しかし,Mo/Mo の 26kV を

    使用することで AGD,CNR 共に良くなる事がわ

    かった.このとき,皮膚表面入射線量も少な

    くなっていたために,Mo/Mo の 26kV が最適な

    条件であると考えた.

    同様に,他の PMMA ファントム厚でも検討を

    行った結果,全てのファントム厚においてAGD

    が 2mGy を超えていなかったため現在使用し

    ているオート撮影は適切であると分かった.

    AGD が 2mGy を超えない範囲で CNR の向上を目

    的とした場合は,現在使用しているターゲッ

    ト/フィルタの組み合わせで,より低い管電圧

    を使用すればよいことが確認できた.しかし,

    PMMA ファントム厚が厚くなると AGD の増加に

    比べて皮膚表面入射線量の増加が大きくなる

    傾向を示したために被写体厚が厚い場合は注

    意が必要である.最大で約 10%の増加が確認

    できた.また,W/Rh の組み合わせでは CNR は

    低くなるが,皮膚表面入射線量と AGD が同等

    程度であることも確認出来た.これより今後

    撮影装置側で画像コントラストを上げる画像

    処理が可能となれば,AGD や皮膚表面入射線

    量の点から見ても W/Rh の組み合わせは最適

    となる可能性がある.

    【まとめ】

    現在当院で使用しているオート撮影条件は

    AGD,CNR の点から考えると適切であった.ま

    た,オート撮影条件からセミオートに撮影条

    件を変更することによって,より高い CNR を

    得ることが可能であった.

    0

    7

    14

    24 26 28 30 32 34

    管電圧 [kV]

    CNR

    Mo/Mo Mo/Rh W/Rh

    0

    0.6

    1.2

    24 26 28 30 32 34

    管電圧 [kV]

    AGD [mGy]

    Mo/Mo Mo/Rh W/Rh

    Fig.1 PMMA ファントム厚 2mmでのAGD と CNR オートで選択された条件を赤で最適と考えられる条件と黄で示している.

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    80

  • 20 装置の出力変動が視覚評価に与える影響

    島根大学医学部附属病院 放射線部 1) 県立広島大学 大学院 総合学術研究科 2)

    小玉紗弥香 1) 石井美枝 1) 永見晶子 1) 吉田彰 2) 小松明夫 1)

    【目的】MMG における日常の品質管理におい

    て,撮影条件に変化はないが,視覚評価が異な

    ることがある.この要因として,以前行った

    HVL 測定の時の照射線量の変動(0.5%)の大き

    さにあると考え,それによる視覚評価への影響

    を検討した.

    【使用機器】MMG 撮影装置:alpha RT

    INSTRUMENTAL 社製,線量計:Radcal

    ACCU-DOSE 2186,検出器:10×5-6M,

    Phantom:CIRS 社製 Mammography

    Research Set Model 012A BR50/50 2256・

    2273-A-4

    【実験方法】撮影条件は,管電圧:30kV,

    Target/Filter:Mo/Mo,照射条件:Semi Auto

    ModeとManual Mode(32mAs) の 2種類を使

    Fig.1 幾何学的配置図

    用した.Fig.1 に幾何学的配置図を示す.照射

    線量のモニタリングを行い,それぞれ 30 回の

    データ収集を行った.観察条件を一定にするた

    め,Film 濃度を Phantom 部分で D = 1.5±

    0.05 となるように調整し,評価用 Film を作成

    した.

    【視覚評価】視覚評価は検診マンモグラフィ認

    定技師 3 名により行った.各照射条件で Film

    10 枚を,2 回ずつ読影した.視覚評価は

    Phantom 内のアルミニウムと炭酸カルシウ

    ムの模擬石灰化信号 1 つずつに対して行い,信

    号がはっきりと見える:1 点,ぼんやりと見え

    る:0.5 点,見えない:0 点とし,3 人の合計

    点で評価した.

    【結果】照射線量の変動は Semi Auto Mode

    で 2.33%,Manual Mode で 0.61%となった.

    Fig.2 照射線量と視覚評価

    それぞれの条件で照射線量と視覚評価の関係

    を Fig.2 に示す.この 2 者の関係はスピアマン

    の順位相関係数を用いた検定の結果,Semi

    Auto Mode では有意差があり,2.33%の照射

    線量の変動は視覚評価に影響していることが

    判明した.

    【結語】Semi Auto mode は,Manual mode

    に比べて照射線量の変動が大きかった.視覚評

    価の Score は,照射線量に比例し変化した.照

    射線量の変動が大きいと視覚評価に影響があ

    った.今後,照射線量の変動が視覚評価にどの

    ように影響するか許容範囲を含め検討してい

    く必要がある.

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    81

  • 21 品質管理におけるマンモ用 IPの焼付け・残像の影響

    倉敷成人病センター放射線技術科 1),県立広島大学大学院総合学術研究科 2)

    鳥取大学医学部附属病院放射線部 3),島根大学医学部附属病院放射線部 4)

    森脇淳美 1) 石井里枝 3) 石井美枝 4)

    吉田彰 2) 藤元志保 1) 松田絢子 1) 荒尾圭子 1)

    【背景・目的】精中委では ACR推奨ファン

    トムを用いてMMGの QC をアクリル円板

    と周囲の濃度差(以後,ΔD)は 0.4以上で

    あることを推奨している.当院では,QCに

    用いる IPは臨床にも使用しており,使用開

    始から約 6年(約 14,

    000曝射)経過し,最

    近ΔDが 0.4未満とな

    ることを経験した.そ

    の原因の検討中に焼

    付け像(Fig.1)に気が

    付いた.今回我々は,この現象がΔDに及ぼ

    す影響について過去画像を用いて検討した.

    【使用機器・実験方法】MMG装置:Mermaid,

    IP:REGIUS CASETTE PLATE RP-5PM,

    ファントム:RMI156型,ステップファント

    ム.画像データの解析に imageJ を使用した.

    ΔDの変化を見るために,アクリル円板と周囲

    のデジタル値を測定し,デジタル値を濃度に変

    換するために,RMI156ファントムの両側に配

    置したステップファントム像の 1~10段のデ

    ジタル値と濃度を測定(Fig.2)し,デジタル

    値‐濃度曲線を作成した.

    【結果】Fig.3に曝射回数とデジタル値の関

    係を示す.a~eすべての測定点で,曝射回

    数の増加とともにデジタル値が上がった.グ

    ラフの勾配が大きい順に並べると b>e≒d

    ≒a>cとなった.この理由は,デジタル値

    の測定点

    が Fig.2

    に示すよ

    うに焼付

    けの辺縁

    部(白線)

    に相当す

    るためで

    ある.bが最も焼付いており,cが最も焼付

    けが少なかった.Fig.4に曝射回数とΔDの

    関係を示す.使用回数の増加に伴い,ΔDが

    変化し,そ

    の値は位置

    によって異

    なる変化を

    した.最も

    焼付いてい

    る bから a

    を引いた場

    合のΔDは,曝射回数の増加に伴い小さくな

    り,最も焼付けが少ない cから aを引いた場

    合のΔDは,徐々に大きくなった.よって,

    位置によるΔDの違いは焼付けの差が原因

    と考えられる.d‐aと e‐aの値を採用する

    かでΔDに違いが生じる.e‐aの値をとる

    と,この IPは約 7000回程度の曝射回数で

    管理指標を下回り始めることが判明した.

    【結語】IPは常に乳房が撮影投影されている

    部分以外では,著明な焼付け現象が認められた.

    この焼付け現象は,マンモグラフィの精度管

    理を行っている施設での QC に影響を及ぼ

    す.アクリル円板およびその周囲での焼付け

    効果が,ΔD に影響することが判明した.

    【謝辞】本実験に数々の貴重なご意見を賜り

    ました眞田泰三氏に心より感謝申し上げま

    す.

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

    82

  • 22 マンモトーム生検時の Pre fire画像における針先とターゲット

    の位置の検討

    香川大学医学部附属病院 放射線部

    松本 希

    [ 目的 ]

    通常、マンモトーム生検ではターゲットの

    位置に針を挿入し、ピアスをする前に位置確認

    のステレオ撮影(Pre fire 画像)を行い穿刺

    位置が良ければピアスを行う。その後再びステ

    レオ撮影を行い、開口部にターゲットがあるか

    最終位置確認後、組織を吸引していく。しかし、

    当院ではピアス後のステレオ撮影を行わない

    ため、Pre fire画像だけでピアス後のプロー

    ブ先端部(以下:針先)とターゲットの位置関

    係を推測し検査を進めている。そこで、画像ビ

    ューワにて Pre fire画像の針先とターゲット

    の距離関係を求めるために Excelシートを利

    用して計算ソフトを作成し、そのズレを認識し

    た上でピアス後の開口部とターゲットの位置

    を推測できるよう検討する。

    [ 実験方法 ]

    装置の SID や回転中心の距離の関係性から

    作成した計算ソフトが有用であるか以下の方

    法で検討を行った。

    ①プローブを照射野の中央にセットし針先の

    高さを変化させ左右ステレオ撮影を行った。

    ピアス前の針先:Z=20,30,40,50,60mm

    ②ピアス後、①と同様にして左右ステレオ撮影

    を行った。

    ③回転中心からのズレの影響を確認するため

    Y軸は固定とし、X軸を左右それぞれ 10mm移動

    させ、①②と同様にして撮影した。

    ④装置上でピアス前とピアス後の針先のZ座

    標を測定し、その差を求めた。

    ⑤画像ビューワ上で、①~③で撮影した画像よ

    り、基準位置からピアス前とピアス後の針先の

    X軸方向の距離をそれぞれ計測した。

    ⑥画像ビューワにて計測した「基準位置~ピア

    ス前の針先の距離」と、「基準位置~ピアス後

    の針先の距離」を今回作成した計算ソフトに入

    力し、ピアスによる進行距離を求め、装置上で

    求めたそれと比較した。

    ⑦模擬ファントムを用い検査時と同様にシミ

    ュレーションを行った。

    [ 結果 ]

    ①装置で求めたZ座標と計算ソフト上のZ

    座標の平均値

    ・装置上でのZ座標:18.4±0.85mm

    ・計算ソフト上のZ座標:18.6±0.83mm

    ②模擬ファントムでの計算上シミュレーショ

    ・ピアス前の針先とターゲットの距離:2.0mm

    ・ピアス後の針先とターゲットの距離:19.5mm

    ・実際ピアスで進んだ距離:18.6mm

    [ 考察 ]

    ピアスによって先端が進む距離は 19.3mm な

    ので、結果①より 0.7~0.9mm の誤差があるこ

    とが分かった。標準偏差は 0.85mmであり、0.7

    ~0.9mm の誤差範囲内であることが分かった。

    また、装置上で求めたZ座標と、計算上のZ座

    標の差は 0.2mmであったが、ターゲット選択時

    の再現性も考慮し、装置での値と今回作成した

    計算ソフトはほぼ相違がないことが考えられ

    る。

    中四国放射線医療技術第7号 一般研究発表

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