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1.5 樹脂の含浸技術に関して 材料10 熱硬化性樹脂野粘度管理(ポットライフ)について 含浸樹脂は繰り返し使用することが多い。このときの大切なことはどうしても繰り返し 使用回数が増すと樹脂の触媒の溶出や温度履歴で 樹脂の反応が進み、含浸樹脂 の粘度が大きくなり、含浸不良の原因となる。このために粘度寿命限界(ポットライフ) の確認と 適度な樹脂の新規補給等が必要である。 このためには反応係数や粘度 限界などの管理が重要になる。実用管理の参考にしてください。 1.49

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1.5  樹脂の含浸技術に関して

材料10  熱硬化性樹脂野粘度管理(ポットライフ)について

含浸樹脂は繰り返し使用することが多い。このときの大切なことはどうしても繰り返し使用回数が増すと樹脂の触媒の溶出や温度履歴で 樹脂の反応が進み、含浸樹脂の粘度が大きくなり、含浸不良の原因となる。このために粘度寿命限界(ポットライフ)の確認と 適度な樹脂の新規補給等が必要である。 このためには反応係数や粘度限界などの管理が重要になる。実用管理の参考にしてください。

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材料25  液状樹脂の注入含浸機構について 複雑な構成部材の組み合わせからなる装置は 液状樹脂を空隙無く含浸することが必要とされる。 この含浸についての 基礎的な含浸理論を理解していないと 無駄な心配をしたり、無駄な多大な費用での確認試験をしたりで難渋します。よりよきものの追求に実用的な実践含浸法について示しました。

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材料30   表面張力の算出法(パラコール法?とは)液体材料の表面張力が知りたい。しかし 実測する事はとても大変難しい。おおよその傾向値でもよいので 何とか求めたい。こんな場合に分子構造が明確であれば 机上計算で概ね 算出できます。これが パラコール法です。さあ 挑戦してみましょう。

液状樹脂の表面張力の算出法・・・1(パラコール法による概算)

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材料31  表面張力の温度依存性  液体の表面張力は 温度が上がると大きな変化をするのでないかと気にします。そこで 表面張力の温度依存性を計算してみましょう。これも計算できます。先人がすばらしい記録を残してあり、これを活用しましょう。

液状樹脂の表面張力の算出法・・・・・その2  (温度依存性の計算法)

液状樹脂の表面張力 r は 加熱されると 低下する。 この温度依存性は以下のRamsay,Shieldの式であらわされる。今度は 注入用の耐熱性エポキシ樹脂として使用されている 下記で示される、脂環式エポキシ樹脂(Unox289)について 調べてみましょう。

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  表面張力   r =  K(A-T)/(M/d)^(2/3) ・・・・・・・・・①

ここで A=2537(エポキシ樹脂の場合)K=2.1(定数)M=分子量(g/mol)=366 (Unox289:エポキシ樹脂)d=密度(g/cm3)T=絶対温度(K)

 前報の液状樹脂の表面張力の算出法(その1) では エポキシ樹脂(DER332)の T=20℃で 表面張力 r=109(dyn/cm)であったので 之をベースにして  温度依存性を計算してみよう。

①式の 物性で温度依存性があるのは 密度(d)です。従ってまず 密度の温度依存性評価が先です。 エポキシ樹脂の密度は 一般にこの場合も 20℃程度でd=1.2(g/cm3)です。通常の樹脂類 の体膨張係数は  1.0*10^(-3) 程度とすると密度の温度依存性は

密度 d(T)=1.2/(1+1*10^(-3)(T-20)) ・・・・・・②

①,②式を活用して  20℃から 180℃までの 密度、表面張力の 温度依存性を計算してまとめたのを 表に示しました。

表温度 ℃ 20 50 80 120 140 180密度 d 74 73 72 71 70 69  g/cm3表面張力 r 1.2 1.17 1.14 1.09 1.08 1.04  dyn/cm

 この結果から  樹脂の表面張力の 温度依存性は小さく、  温度が上昇すると 表面張力も小さくなるが  実用上最高温度の 180℃でも 常温の10%低下で 実測値のない、加熱した場合の表面張力は  常温値を 適用しても  あまり 差し支えは無いようです。 皆さんは 使い分けてください。

なお  その1のビスフェノール系エポキシ樹脂に対して  その2の脂環式エポキシ樹脂 は 表面張力が小さく、 含浸する場合には 温度を上昇すると流失 しやすいことを示している。 

材料33  液状樹脂のポットライフ(粘度寿命) 管理 液状樹脂の保管中の粘度の上昇は 樹脂の反応速度如何で決まる。この反応速度論じるには 反応次数が大きな意味合いを持つ。反応次数の計算が大切である。この算出法を覚えよう。

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1.6 吸湿・溶解・漏洩・分解に関する技術

材料24  気体/液体の漏洩(リーク)現象

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材料 26  結露現象とは結露現象は 湿気の場所でよく見かけますね。どうして 起こるのであろうか。これも 地球大気には水分が多く存在するためです。湿気は適度に存在しているといいのですが 多くなるとわたし達には薦められない環境のようです。さあ・・・・・・・・・。又 一方で 湿度がなくて乾燥しすぎると 空気中の粉塵はその動きで静電気を帯びやすい。相対湿度(RH)が40%以下では 静電気の発生頻度が高いので 超防塵室では除湿管理

結露 という現象夏の暑い日は 氷で冷やした飲料水が好まれますね。このとき 湿度が高いと 

すぐコップの外面に水滴がつきます。これが結露です。

空気中には 存在できる水蒸気の量は 温度が変わると変わります。

この状況は 図に示すようです。温度が高くなると空気中に存在

できる水蒸気量も多くなります。

50

空気に含まれる最大水蒸気量(飽和水蒸気量)

40

30

20

40%10

  湿度  60..%

00 -10 0 10 20 30 40

温度 【℃)

この図から  見方例を示しましょう。わたし達が気持ちの良い温度湿度は春先、

秋口などの 20℃、湿度60% あたりですね。

この快適な空気 も11.5℃に冷えると 露点(図の100%の飽和水蒸気曲線)に達します。

この11.5℃から 温度がさらに下がると 空気中に水蒸気が存在しにくくなり、

周辺の固形物に水滴ができます。このときの 結露水分量は A-B になります。

結露には室内空気に触れる面への表面結露(カビの発生原因となる)と室内から外部へ

流れる湿り空気の通路で、図の飽和水蒸気量曲線を上回る条件のところで発生する

内部結露があります。表面結露を防ぐには、断熱材により室内壁表面温度を高め、

室内の水蒸気排出を行うこと、内部結露を防ぐには室内から断熱材等への

水蒸気の排出を抑え、断熱材の低温側への水蒸気の滞留なきこと。やるべき防止は 行き着くところ 十分な換気と高気密・高断熱です。

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単位体積当たりの水蒸気量g/m3

 11.5℃

20℃5℃

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材料41  プラスチックの吸湿現象 この世の中 プラスチックが多様に使われています。これらのプラスチックも一見 水分を寄せ付けないよいうに見えますね。ところがミクロの目で見ると いくらかの水分を吸湿して様々な影響を受けます。 この吸湿理論を示してみました。吸湿現象は逆に乾燥させるのにどうすればよいかなどを 示してくれます。矢張り 吸湿理論は大切です。少し勉強しましょう。この面も。

プラスチックの吸湿現象 エポキシ樹脂やナイロンなどのプラスチックは表面から吸湿透過する現象があり、使用部位に よっては 大きな損害の起因となる事があります。特に 電気配線を内蔵する プラスチック モールド品などでの不具合があります。また 油などの液状態においても同様なことがいえるでしょうね。今回は この 吸湿現象について調べてみました。 プラスチックへの吸湿現象は高分子材料への拡散によるものと考えて フィックの法則が 適用できます。 図1のイメージを拡散方程式にて示すと以下となる。

∂C/∂t  =  D ( ∂2C/∂x

2 ) ・・・・・・・・・・・・・①

C ; 水分濃度t ; 時間D ; 拡散係数x ; 表面からの距離

  湿気の流れ

プラスチック     吸湿時間   図1  湿気の流れ模式図 図2  吸湿特性イメージこのように プラスチックの t 時間後における 吸湿率を qs 、 飽和吸湿率Qs

とすると 吸湿初期で (D*t/l2 )

< 0.06  では

qs/Qs  =( 4/√π )( D*t / l2 

 )^0.5 ・・・・・・② が成り立つ。一般的なフェノール積層板 20℃、RH=90%での水分の吸湿による拡散係数 D= 6*10^(-6) cm2/h である。 従って 厚さ l=6mm の場合にはqs/Qs の②式は 以下のグラフの様相を示す。

t (年) qs/Qs 1 0.865 1.929 2.58

13 3.117 3.5521 3.9425 4.329 4.6433 4.9437 5.2441 5.5145 5.7849 6.0253 6.27

引用文献 ; 日刊工業新聞  プラスチックによる 防食技術   電気絶縁塗料  産業図書  

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dx

x c

吸湿量

Q

t1

 Q :平衡吸湿量      (飽和吸湿量 q : t1 時間後吸湿量

 l

プラスチックスの吸湿現象

01234567

0 20 40 60

時間(y)

qs/Q

s

系列1

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材料42  絶縁油へのガスの溶解状況

気体のガスは 多くの液体に溶解します。その溶解状況は 気体の種類や液体の

種類・成分で大きく 異なることがあります。ココでは 絶縁油に溶解する気体ガス

の様子を纏めました。 一般に気体の液体への溶解は ヘンリ-の法則に従う。

気体は その存在する圧力に比例して液体に溶解する。温度が高くなると溶解量

は減少し、ガスの分子量が大きいと その溶解量も多くなる。 

 絶縁油中の溶解ガスについて

水、てんぷら油、絶縁油などの液体に気体のガスは ガス圧に比例して

液体中に溶解します。特に電気機器などは多量の絶縁油を冷却材に使用しています。

このため絶縁油中に溶解しているガス成分を分析すると その絶縁油が電気機器

から受けた損耗状況を把握する事ができます。これは電機協同研究第36巻

 第1号などに示されています。詳細はそれをご覧下さい。ここでは絶縁油の

異常時の発生ガス成分と それらのガス成分の絶縁油中での溶解量を示します。

引用文献は JEM-TR164:1988です。

 絶縁油の異常時の発生ガス成分

表10の溶解度をガスの種別で見ると酸素、窒素、炭酸ガス、一酸化炭素ガスを

除くとガスの溶解度は分子量の増大とともに大きくなる事がわかる。これらのガスは

炭化水素系で 絶縁油と同じ炭化水素系であること、温度が高くなると

ガスの溶解量は減少することも注意。

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各種ガスの絶縁油への飽和溶解度

1) 全ガスの分子量と溶解度との関係ガス種類 分子量 50℃時 80℃時H2 2 4.86 5.69CH4メタン 16 30.17 27.22C2H2アセチレン 26 92.98 69.39N2 28 7.22 8.77CO 28 9.58 11.6C2H4エチレン 28 113.02 82.36C2h6エタン 30 168.34 116.56O2 32 14.27 12.16

C3H6プロピレン 42 491.2 291.69

CO2 44 69 53.77

C3H8プロパン 44 540.22 326.66

C4H10 ブタン 58 1149.32 635.28

2)炭化水素系ガスの分子量と溶解度との関係 (水素含む)ガス種類 分子量 50℃時 80℃時

H2 2 4.86 5.69

N2 28

CO 28

O2 32

CH4メタン 16 30.17 27.22

C2H2アセチレン 26 92.98 69.39C2H4エチレン 28 113.02 82.36C2h6エタン 30 168.34 116.56C3H6プロピレン 42 491.2 291.69CO2 44C3H8プロパン 44 540.22 326.66C4H10 ブタン 58 1149.32 635.28

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絶縁油へのガスの溶解度

0

500

1000

1500

0 50 100

分子量(ガス)

溶解

度 50℃時

80℃時

ガスの分子量と溶解度との関係

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

0 20 40 60 80

ガスの分子量

溶解

度 50℃時

80℃時