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参 1-1 1.地下水保全関係

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参 1-1

1.地下水保全関係

参 1-2

1.1 雨水浸透量の算定資料

1.1.1 開発前の雨水浸透量の評価

(1)検討条件

1)雨水浸透モデル

開発前・後の降雨に対する雨水浸透量の検討は、九州大学環境影響評価モデル(神野・堤モデル)

の考え方を用いて行う。以下にその概念図と計算式を示す。

図-1.1.1 九州大学環境影響評価モデル(神野・堤モデル)の考え方

2)検討対象年と雨量

気象庁の前原地点(アメダス観測所)の過去 9年(1993 年~2002 年のうち 1994 年を除く)のうち

5番目に多い雨量の年を検討対象年とする。その結果以下の表に示すように、1999 年を検討対象年と

する。また、雨水浸透量の計算は 1999 年の元岡地点(農学部観測)の時間雨量を用いて計算する。

表-1.1.1 前原(気象庁)の年雨量と順位

所管 地点名 1993 年 1994 年 1995 年 1996 年 1997 年 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 10年平均

気象庁 前原 2017mm 740 mm 1640 mm 1275 mm 1900 mm 1706 mm 1677 mm 1359 mm 1973 mm 1359 mm 1569 mm

(順位) 1 除外 6 9 3 4 5 7 2 7

3)蒸発散量

蒸発散量は、ソーンスウェイト法(「土木学会水理公式集」,p17)により求められる可能蒸発散量

と、森林の樹木による遮断量を考慮する。

ソーンスウェイト法とは、月の日平均蒸発散能が月平均気温だけの関数として表されるとしたもの

である。

ajp J/tD.E )10(5330 0=

514.1

12

1

23

)5/(

49293.001792.00000771.0000000675.0

∑=

=

++−=

jjtJ

JJJa

ここに、

月の月平均気温(度): 

を1とする)可照時間(12 :

)の日平均蒸発散能( :

0

j

j

p

mm/dayjE

h/day

遮断蒸発量とは、図-1.1.2 に示すように、既存の研究結果を整理すると、小川、大槻ら※1)による

九州大学福岡演習林での観測値や、既往文献を整理した堤ら※2)の報告でも林外雨量(平坦地の転倒

式雨量計を用いた観測雨量)を 100%とすると、樹冠遮断雨量は約 20%に相当するとある。また、滴

下雨量+直達雨量が 30%、樹幹雨量が 50%という内訳になる。

ここでは、堤らが整理した遮断蒸発量 IM(mm/月)と平均降雨量 rM(mm/月)との関係式(IM/ rM=48

/(rM+98))を用いて遮断蒸発量を求め(表-1.1.2 参照)、これを用いて降雨条件に応じたタンク及

び地下水面からの蒸発散量を推定している。なお、遮断蒸発量がソーンスウェイト法で求まる可能蒸

発散量を上回っている場合には、遮断蒸発量に可能蒸発散量と同じ値を与え、蒸散量は”0”とする。

※ 1:“マテバシイ林における年間樹冠遮断量の推定”佐藤、大槻、小川 九州大学篠栗演習林実測結果より ※2:「森林

水文学 塚本良則編」文永堂出版 実測結果の整理より

※ 2:“遮断降雨を考慮した雨水の地下水涵養モデル”堤、神野、森、広城 水工学論文集、第47巻、2003 年 2 月

参 1-3

林外雨量

雨量 樹冠遮断雨量

林内雨量 滴下雨量

樹冠通過雨量(直達雨量)

樹幹流下雨量

表-1.1.2 可能蒸発散量および遮断量(1999 年)

年 月 月雨量

(mm/月)

ソーンスウェイト法から求まる

可能蒸発散量(mm/月)

月遮断量

(mm/月)

1 52.0 9.9 16.9

2 51.0 10.3 16.7

3 99.0 27.5 24.4

4 95.0 47.0 23.9

5 93.0 82.9 23.6

6 441.0 119.7 39.4

7 226.0 137.8 33.7

8 265.0 151.4 35.2

9 177.0 127.8 31.1

10 56.0 68.6 17.7

11 97.0 34.2 24.1

1999

12 25.0 13.5 9.9

合 計 1677 831 297

4)開発前の土地利用条件(モデルのパラメータ)

開発前の雨水浸透量は、観測井戸の地下水位変動結果に基づき決定された九州大学環境影響評価モ

デル(神野・堤モデル)のパラメータを用いて算出する。表-1.1.3 に地下水位変動結果から同定し

たパラメータを示す。

図-1.1.3 に、開発前の土地利用及びモデルパラメータ同定に用いた観測井戸の位置を示す。

表-1.1.3 タンクモデルパラメータを決定できた観測井戸およびそのパラメータ 表面流出率 種別(観測

井戸)

観測井戸

番号

有効空隙

率 ne

絞り係数

aL(1/hr)

初期損失

高 R0(mm) r1/2(mm/hr) f∞※ 1 0.075 0.22 7.0 3.8 0.30

6 0.140 0.09 13.0 2.5 0.30

8 0.200 0.17 14.0 1.6 0.30

9 0.250 0.08 19.0 27.1 0.30

11 0.157 0.05 12.0 19.7 0.30

15 0.129 0.44 15.0 5.3 0.30

16 0.125 0.11 9.0 5.5 0.30

17 0.090 0.51 14.0 8.5 0.20

19 0.175 0.39 7.0 9.0 0.20

21 0.080 0.43 7.0 2.5 0.30

23 0.080 0.28 14.0 2.3 0.20

観測井戸

24 0.225 0.13 17.0 6.6 0.30

※f∞:山地の場合 0.3、畑地(休耕田)の場合 0.2と想定

(2)検討結果

九州大学環境影響評価モデル(神野・堤モデル)を用いて、計算した結果より得られた開発前の

雨水浸透量は流域平均で約 922(mm/年) であり、年間降水量 1671mm(1999 年)の約 55%に相当す

る。

図-1.1.2 樹木による降雨遮断のイメージ

参 1-4

図―1.1.3 開発前の土地利用とモデルパラメータ同定に用いた観測井戸

参 1-5

1.1.2.開発後の雨水浸透量の評価 (1)検討条件

1)雨水浸透モデル

開発前の雨水浸透量の試算に用いたモデル(九州大学環境影響評価モデル(神野・堤モデル))とする。

2)検討対象年と雨量

開発前の雨水浸透量の試算に用いた検討対象年(1999 年)及び雨量(元岡地点時間雨量)とする。

3)蒸発散量

保全緑地については、開発前の雨水浸透量の試算と同様の条件を、それ以外の部分はソーンスウエイト

法による可能蒸発散量を用いる。

4)開発後の土地利用条件(モデルのパラメータ)

開発後の雨水浸透量は、開発前・後の土地利用の変化に伴い流出率が変化するとし、観測井戸の地下水

位変動結果に基づき決定されたモデルのパラメータのうち F∞(降雨強度が十分大きい場合の流出率)の

みを変更して算出する。表-1.1.4 に開発後のモデルのパラメータを示す。なお、開発後の F∞の値は、「文

部省大臣官房文教施設部技術課 H9.3 土木設計資料」の値を用いた。

図-1.1.4 に移転前後の水循環諸量の変化イメージを、図-1.1.5 に開発後の土地利用図を示す。

表-1.1.4 開発後のモデルのパラメータ

表面流出率 対象土地利用 有効空隙率

ne 絞り係数 aL(1/hr)

初期損失高 R0(mm) r1/2(mm/hr) F∞

道路 開発前のパラメータを使用する。 開発前のパラメータを使用する。

0.8

緑地・法面 〃 〃 0.3

畑 〃 〃 0.2

建物用地 〃 0 1.0

運動施設 〃 開発前のパラメータを使用する。

0.6

駐車場 〃 〃 0.8

開発後

山地 〃 〃 0.3

[水田の取り扱い]

・ かんがい期(6月~9月)::減水深(九州大学内調査 18mm/日~22 mm/日より、20mm/日とした)の内、

2割を深部浸透量とし(農水省の HP)、浸透量は 4mm/日。

・ 非かんがい期(6月~9月以外):畑と同様の取り扱い。

[調整池の取り扱い]

・ 1 号および 5号調整池は利水容量を確保するため、浸透量は 2mm/日(平川池および 5号調整池の浸

透量、約 10mm/日の 2割を深部浸透量とした)。

・ 1 号および 5号調整池以外は、周辺土地利用のモデルパラメータと同様とした。

図-1.1.4 移転前後の水循環諸量の変化イメージ

(2)検討結果

開発前・後の土地利用の改変により、九州大学移転敷地内の概略の雨水浸透量の減少量は約 362,000 m3/年程度である。

赤字:変更したパラメータ

参 1-6

図―1.1.5 開発後土地利用図(メッシュ単位:50m×25m)

参 1-7

1.1.3.開発前・後の雨水浸透量比較 (1)開発前・後の雨水浸透量の比較

雨水浸透量の評価を行う際には、土地利用条件や地形条件によってブロック分割し、各ブロックで

減少する浸透量を評価することとした。

1)ブロック分割

河川流域および土地利用状況、地盤の透水係数等を考慮して表-1.1.5 のようにブロック分割し、

ブロック分割毎に雨水浸透量を算出した。ブロック分割図を図-1.1.6 に示す。

表-1.1.5 ブロック分割

ブロック No 名称 工区

1 1 号調整池流域 2 工区

2 2 号調整池流域 2 工区

3 3 号調整池流域 2 工区

4 4 号調整池流域 1 工区

5 5 号調整池流域 3 工区

6 6 号調整池流域 3 工区

7 4 工区 4 工区

8 その他(保全緑地) 開発なし

2)開発前・後の雨水浸透量の比較

開発前・後の土地利用の改変により、九州大学移転敷地内の概略の雨水浸透量は表-1.1.6 に示す

ように、減少量は約 362,000m3/年程度である。また、移転敷地全体の降雨量 1,671mm/年に対して、

開発前の雨水浸透量は、約 922mm/年であり、降雨量に対して 55%となり、開発後の雨水浸透量は約

790mm/年(=922mm-132mm)であり、降雨量に対して 48%となり、開発前・後では、7ポイント(=55%

-48%)減少する。

図-1.1.7 に開発前・後の雨水浸透量の差をメッシュ単位(50m×25m)で示す。

表-1.1.6 開発前・後の水収支 (単位:m3/年)

開発後の雨水浸透量は、1671mm の年雨量に対して、132mm 減少

(=361,951m3/移転地面積 275ha)

ブロック NO. 1 2 3 4 5 6 7 8 合計

メッシュ数 327 157 171 360 205 140 213 959 2532

流域面積(m2) 408,750 196,250 213,750 450,000 256,250 175,000 266,250 1,198,750 3,165,000

開発前 683,021 327,934 357,176 751,950 428,194 292,425 444,904 2,003,111 5,288,715

開発後 683,021 327,934 357,176 751,950 428,194 292,425 444,904 2,003,111 5,288,715 雨

量 差 0 0 0 0 0 0 0 0 0

開発前 206,234 112,484 125,902 258,180 131,539 89,409 157,752 665,012 1,746,513

開発後 205,748 91,179 92,754 209,241 109,754 86,999 151,240 665,012 1,611,927

量 差 -486 -21,306 -33,148 -48,939 -21,785 -2,410 -6,512 0 -134,586

開発前 92,555 41,596 43,793 78,319 49,718 35,955 37,331 244,800 624,067

開発後 149,950 109,602 136,742 227,721 136,602 60,083 55,102 244,800 1,120,603

量 差 57,395 68,006 92,949 149,403 86,884 24,128 17,771 0 496,537

開発前 384,233 173,854 187,481 415,451 246,936 167,062 249,820 1,093,299 2,918,135

開発後 327,324 127,153 127,680 314,988 181,837 145,343 238,562 1,093,299 2,556,185

量 差 -56,909 -46,700 -59,801 -100,463 -65,099 -21,719 -11,258 0 -361,951

参 1-8

図-1.1.6 ブロック分割図(メッシュ単位:50m×25m)

参 1-9

図-1.1.7 開発前・後の雨水浸透高の差(mm/年)(メッシュ単位:50m×25m)

参 1-10

1.2 雨水浸透施設の整備関係資料

1.2.1 雨水浸透施設等の必要施設量

(1)検討手順

九州大学移転地の開発前・後で減少する雨水浸透量(約 363,000m3/年)を補うこ

とを目標として雨水浸透施設の必要施設量を試算する。必要施設量の試算は図-

1.2.1 のフローに従って行う。

図-1.2.1 雨水浸透施設等の必要施設量の算定フロー

(2)検討条件

1)雨水浸透施設からの浸透量の計算方法

雨水浸透施設(雨水浸透ます、雨水浸透トレンチ、透水性舗装、空隙貯留浸透

施設)を配置した場合、水の循環系は、図-1.2.2 のように変化する。また、雨水

浸透施設での浸透量の計算は、「雨水浸透施設技術指針(案)調査・計画編」に基

づいて、計算する。

なお、透水性舗装から浸透量は、神野・堤モデルにおける f∞を、“0.8(施設設

置前)”から“0.4(施設設置後)”にすることにより算出した。

2)雨水浸透施設に関わる条件

施設からの浸透量を算出する際に、必要な Kf(比浸透量)を求める方法を、図

-1.2.3 に示す。

3)雨水浸透施設のモデル化

雨水貯留浸透施設による浸透モデルイメージを図-1.2.4 に示す。

雨水浸透量目標値

(開発前・後の減少した雨水浸透量)

雨水浸透施設(ます、トレンチ、透水性舗装)配置

雨水浸透施設(空隙貯留浸透施設)の規模検討

YES

NO

雨水浸透施設等の必要施設量の算定

雨水浸透量目標値<雨水浸透対策浸透量

雨水浸透施設(ます、トレンチ、透水性舗装)による

雨水浸透対策量の算定

雨水浸透施設(空隙貯留浸透施設)の規模検討

参 1-11

図-1.2.2 開発前後の水循環の変化

dtmAnqq

AndtKCK

thth

qqhKmCKdtdhmAn

e

outin

e

fww

outinwfw

e

−+−=+

−+−=

0

0

)()1(

)/(

)/(

)(

)/(:

3

3

20

2 )(

(m)

smqsmq

CmKsmK

mA

nh

ijout

ijin

f

e

w

m

の流出量空隙貯留浸透施設から

流入量空隙貯留浸透施設への

含む)影響係数(めづまりを

比浸透量

透水係数

雨水浸透透施設の面積

雨水浸透施設の基数

雨水浸透施設の空隙率

:水深

ここで

::

参 1-12

1)浸透ます ■比浸透量:Kf

mW 1≤ ただし、W:施設幅(m) Kf=ah2+bh+c

a=0.12W+0.985 b=7.837W+0.82 c=2.858W-0.283 ここで、W=1 の場合、a=1.105、b=8.657、c=2.575。 ■ 空隙率:0.36(換算空隙率) ■越流高さ:0.55m 2)浸透トレンチ ■比浸透量:Kf Kf=ah+b

a=3.093 b=1.34W+0.677 ここで、W=0.6 の場合、a=3.093、b=1.481 ■ 空隙率:0.3(砕石を想定) ■越流高さ:0.35m

3)空隙貯留浸透施設 ■比浸透量:Kf

1<φ≦10 ただし、W:施設幅(m) L:施設延長(m)

Kf=ah+b a=3.297L+(1.971W+4.663)

b=(1.401W+0.684)L+(1.214W―0.834) ■ 空隙率:0.3(砕石を想定)または、0.9(人工物を想定) ■越流高さ:1.0~2.0m(地下水位や地盤透水係数による)

図-1.2.3 雨水浸透施設の標準施設(案)および非浸透量(Kf)の条件

1,000 500

550

1,000 250 500

550 20

0 35

0

600

1,000

350

350

600

W

L

1,00

0~2,

000

W

参 1-13

図-1.2.4 雨水貯留浸透施設による浸透モデルイメージ

参 1-14

4) 雨水浸透施設配置数(雨水浸透ます、雨水浸透トレンチ、透水性舗装) 検討対象地域のブロック毎に雨水浸透施設配置数を表-1.2.1 に示す。また、雨水浸透ますおよび

雨水浸透トレンチを配置する、「建物」、「運動施設」および「駐車場」の施設周囲延長も同様に示す。 雨水浸透施設配置数は、図-1.2.5 に示すような施設配置図より建物周囲延長を計測し、次のよう

にして計算した。 雨水浸透ます :15m 間隔に設定 雨水浸透トレンチ:ます以外の施設周囲すべてに設置 透水性舗装 :駐車場、駐輪場の全面に配置(歩道は除外)

施設周囲延長が 150m の場合、雨水浸透ますは 10 基(=150/15)、 雨水浸透トレンチは 140m(=150-10)。

5)地盤の透水係数 検討対象地域のブロック毎の地盤透水係数は、既存資料や現地踏査結果より設定した。設定した透水係数を整理して表-1.2.1 に示す。また、移転地の浸透能(透水係数)マップを図-1.2.6 に示す。

表-1.2.1 雨水浸透施設(雨水浸透ます、雨水浸透トレンチ、透水性舗装)配置数および透水係数

ブロック NO 1 2 3 4 5 6 7 8 合 計 メッシュ数 327 157 172 360 205 140 216 955 2,532 面積(m2) 408,750 196,250 215,000 450,000 256,250 175,000 270,000 1,201,250 3,165,000

周囲の総延長(m) (建物、運動施設、駐車場)

4,982 2,650 4,938 8,517 5,944 2,800 1,100 0 30,931

ます(基) 70 152 238 348 200 - 70 - 1,078 建物

トレンチ延長(m) 986 2,133 3,338 4,867 2,800 - 1,030 - 15,154 ます(基) 121 0 51 17 - 190 - - 379

運動施設 トレンチ延長(m) 1,691 0 715 243 - 2,610 - - 5,259 ます(基) 141 24 40 203 196 0 0 0 604

駐車場 トレンチ延長(m) 1,973 341 556 2,839 2,748 0 0 0 8,457

1×10-4 1×10-4 1×10-4 1×10-4 1×10-4 - 1×10-4 - - 建 物 3×10-5 3×10-5 3×10-5 3×10-5 3×10-5 - 3×10-5 - -

運動施設 1×10-4 - 1×10-4 1×10-4 - 1×10-4 - - - 透水係数 (cm/s)

駐車場 3×10-5 1×10-4 1×10-4 3×10-5 1×10-4 1×10-4 - - -

参 1-15

図-1.2.5 施設配置図

参 1-16

図-1.2.6 透水係数マップ

参 1-17

(3)対策後の地下水浸透量の評価 1) 雨水浸透施設(雨水浸透ます、雨水浸透トレンチ、透水性舗装)からの浸透量 建物周りおよび運動施設周辺に、雨水浸透ますおよび雨水浸透トレンチを設置した場合の雨水浸透量を表-1.2.2 に示す。 これら雨水浸透施設を設置することにより、開発前・後の雨水浸透量の差(減少分)約 362,000m3/年に対して、約 66%の(=239,000 m3/年/362,000m3/年)雨水浸透量が補足できる。なお、補足できない雨水浸透量は、約 123,000 m3/年である。 また、表―1.2.3 に、雨水浸透対策後(雨水浸透ます、雨水浸透トレンチ、透水性舗装)の水収支を示す。

表-1.2.2 対策前後浸透量算出結果

雨水浸透量(m3/年) ブロックNO.

メッシュ数 流域面積 (m2)

浸透量の差 (A) (m3/年) 雨水浸透ます 雨水浸透トレンチ 透水性舗装

浸透量合計 (B)

不足分 (A)-(B) (m3/年)

1 327 408,750 56,909 7,500 19,421 13,026 39,947 16,962 2 157 196,250 46,700 6,278 17,728 1,902 25,907 20,793 3 172 215,000 59,801 10,385 27,623 2,450 40,458 19,343 4 360 450,000 100,463 20,567 34,143 11,770 66,480 33,984 5 205 256,250 65,099 8,890 25,073 14,217 48,180 16,919 6 140 175,000 21,719 3,222 8,443 0 11,664 10,054 7 216 270,000 11,258 1,469 4,628 0 6,098 5,160 8 955 1,193,750 0 0 0 0 0 0 合計 2532 3,165,000 362,677 58,310 137,060 43,365 238,735 123,216

※ます 1基の貯留量:底面積 1m2×越流高 0.55m×空隙率 0.36 ≒0.20m3/1 基 ※トレンチ 1基(単位長さ 1m)の貯留量:幅 0.6m×単位長さ 1m×越流高 0.35m×空隙率 0.3 ≒0.06m3/1 基(1m)

表-1.2.3 対策前後水収支

雨水浸透量

二次浸透量 開発状況 対策状況

降雨量 蒸発散量 一次流出量 (浸透施設流入量) 一次浸透量

ます トレンチ 空隙貯留 合計 合計

二次流出量 降雨量―蒸発散量-雨水浸透量-二次流出量

開発前(A) 5,288,715 1,746,513 624,067 2,918,135 - - - - 2,918,135 624,067 0

対策前(B)

5,288,715 1,611,927 1,120,603 2,556,185 - - - - 2,556,185※2 1,120,603 0 開発後 対策後

(C) 5,288,715 1,614,424 1,074,741 2,599,550※1 58,310 137,060 - 195,369 2,794,919 879,372 0

※1: 透水性舗装により一次浸透量が増加、透水性舗装による浸透量:43,365m3 ※2:開発前後の雨水浸透量の差:362,677m3=2,917,887 m3-2,555,209 m3 ⇒1 m3合わないのは丸め誤差

参 1-18

2) 雨水浸透施設(空隙貯留浸透施設)からの浸透量 2-1)雨水浸透施設(空隙貯留浸透施設)の対策量 表-1.2.2 より、移転地全体の浸透量の不足分(雨水浸透ますおよび雨水浸透トレンチで補えない量)124,000m3/年の浸透量を補う必要がある。 2-2)配置条件 以下に示す条件を可能な限り満足するエリアを対象に、図-1.2.7に示す位置に雨水浸透施設(空隙貯留浸透施設)を配置した。 (条件) ★配置対象土地利用:駐車場、緑地、運動施設 ★周辺条件 :透水係数が高いエリア、集水エリアが広いエリア

ただし、雨水浸透施設(空隙貯留)を設置する場合、開発後浸透量(一次浸透量)の設置面積分は、同施設の上面から流入すると仮定するため、一次浸透量、二次浸透量のトータルで開発前浸透量を上回るように空隙貯留施設規模を検討する。

(一次浸透量-空隙貯留上面からの流入量) + 二次浸透量 ≧ 開発前浸透量

2-3)施設条件 ・各施設の越流高は 1.0~2.0m とした。 ・各施設の空隙率は、砕石を想定した場合を 0.3 とし、人工物を想定した場合を 0.9 とした。

図-1.2.7 雨水浸透施設(空隙貯留)の配置図

降雨

表面流出

地下浸透 (一次浸透)

蒸発散 降雨

表面流出

地下浸透 (一次浸透)

蒸発散

地下浸透 (二次浸透)

雨水幹線

雨水幹線から の横流入

空隙貯留施設

空隙貯留浸透施設がない場合 空隙貯留浸透施設がある場合

参 1-19

2-4)検討結果 雨水浸透施設(空隙貯留浸透施設)を配置した場合の雨水浸透量を以下の表-1.2.4、1.2.5 に示す。 雨水浸透ます、雨水浸透トレンチ、透水性舗装に加えて空隙貯留浸透施設(人工物(空隙率 0.9)あるいは砕石(空隙率 0.3)を想定)を配置することにより、対策後の雨水浸透量の総量は、開発前の雨水浸透量約2,900,000m3/年と同等になるものと予測される。

表-1.2.4 雨水浸透施設(空隙貯留浸透施設)による浸透量

最大設置規模(空隙率:0.9) 最大設置規模(空隙率:0.3) ブロッ ク NO

流域 不足量 (m3)

施設 NO 流入量 流出量 浸透量 流入量 流出量 浸透量

1 17,912 2,576 15,337 18,375 2,454 15,921 2 19,191 7,725 11,466 19,607 8,272 11,335 1 水崎川 16,962 3 31,178 13,782 17,396 31,178 14,089 17,089

2 水崎川 20,793 - - - -

合計:44,199

- - -

合計:44,345

4 7,070 1,848 5,222 7,675 1,385 6,290 5 15,530 8,091 7,438 15,769 7,850 7,919 6 4,439 1,107 3,332 4,648 1,119 3,529

3 水崎川 19,343

7 5,840 1,257 4,582

合計:20,574

5,944 1,991 3,953

合計:21,690

8 18,093 6,901 11,192 18,253 6,285 11,968 9 4,134 0 4,134 4,493 0 4,493 4 大原川 33,984 10 18,262 10,043 8,219 18,501 9,843 8,658

5 大原川 16,919 11 76,420 44,466 31,954

合計:55,500

76,766 43,989 32,777

合計:57,897

6 杉山川 10,054 12 29,521 17,882 11,638 合計 11,638 29,521 17,996 11,525 合計:11,525 7 水崎川 5,160 13 9,893 2,581 6,676 合計:6,675 10,429 3,557 6,872 合計:6,872 8 - - - - - - - - -

合計 123,943 257,484 118,895 138,587 261,160 118,831 142,329 ※空隙貯留 1基(単位面積 1m2) の貯留量 砕石を想定した場合 :底面積 1m2×越流高 1.0m×空隙率 0.3 =0.30m3/1 基(1m2) 人工物を想定した場合:底面積 1m2×越流高 1.0m×空隙率 0.9 =0.90m3/1 基(1m2)

表-1.2.5 雨水浸透施設(空隙貯留浸透施設)による浸透量および施設規模 (単位:m3/年)

雨水浸透量 二次浸透量

開発状況 対策状況

降雨量 蒸発散量 一次流出量 (浸透施設流入

量) 一次浸透量 ます トレンチ 空隙貯留 合計

合計 二次流出量

降雨量―蒸発散量-雨水浸透量-二次流出量

開発前(A) 5,288,715 1,746,513 624,067 2,918,135 - - - - 2,918,135 624,067 0 対策前(B) 5,288,715 1,611,927 1,120,603 2,556,185 - - - - 2,556,185 1,120,603 0 対策後(C) 5,288,715 1,614,424 1,074,741 2,599,550※1 58,310 137,060 - 195,369 2,794,919 879,372 0 対策後(D) 砕石を想定

5,288,715 1,614,424 1,074,741 2,584,141※2 58,310 137,060 142,329 337,698 2,921,839 752,452 0 開発後

対策後(D) 人工物を想定

5,288,715 1,614,424 1,074,741 2,587,956※2 58,310 137,060 138,588 333,957 2,921,913 752,378 0

※1: 透水性舗装により一次浸透量が増加、透水性舗装による浸透量:43,365m3 ※2:空隙貯留浸透施設により一次浸透量が減少