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平成28年10月20日 資料3

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防 衛

平成28年10月20日

資料3

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1.我が国を取り巻く安全保障環境等

2.防衛関係費の概要

3.防衛関係費の個別課題(調達改革)

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1.我が国を取り巻く安全保障環境等

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沖ノ鳥島

尖閣諸島

グアム島

竹島問題

【東シナ海】中国による・力を背景とした現状変更の試み・不測の事態を招きかねない危険な行為

【朝鮮半島】緊張の高まり※延坪島砲撃事件等

●金正恩体制の構築

●核実験・弾道ミサイル発射

5回目の核実験(16年9月9日)

度重なる弾道ミサイルの発射等

北朝鮮

●軍事力の強化

空母就役、ステルス戦闘機の開発等

●我が国周辺海空域における活動の活発化

中国公船による尖閣諸島周辺の我が国領海への侵入等

●南シナ海における活動の活発化

大規模かつ急速な埋め立て、滑走路や港湾施設の整備

中国

●北方領土問題

北方領土における軍事演習

●極東ロシア軍による活動の活発化

爆撃機による我が国周辺の飛行や海軍による大規模演習

ロシア

●厳しい財政状況

●アジア太平洋地域へのリバランス米軍プレゼンスの強化

油ガス田開発

米国

我が国のシーレーン

【南シナ海】・中国と周辺国の摩擦表面化・中国による力を背景とした現状変更の試み※中国による南シナ海における急速かつ大規模な埋立て、インフラ整備等

○依然として領土問題や統一問題をはじめとする不透明・不確実な要素が残る

○領土や主権、経済権益などをめぐる、いわゆるグレーゾーンの事態が増加する傾向

○周辺国による軍事力の近代化・強化や軍事活動などの活発化の傾向がより顕著

我が国を取り巻く安全保障環境 防衛省作成資料

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ステルス機(J-20) 対艦弾道ミサイル(DF-21D)

次世代ステルス戦闘機の開発

世界初の対艦弾道ミサイル

測位衛星システム(「北斗」)

極超音速滑空ミサイル(「DF-ZF」(WU-

14))

5回目の核実験実施「人工衛星」と称する弾道ミサイル発射

累次の弾道ミサイル発射(開発中の潜水艦発射弾道ミサイル、中距離弾道ミサイル「ムスダン」を含む。)

国産ステルス機(T-50 PAK FA)

潜水艦発射弾道ミサイル(SS-N-32 ブラヴァ)

長距離巡航ミサイル(カリブル) 人間と機械のコラボレーション及び

戦闘チーム化

その他、以下の技術分野にもゲームチェンジャー技術として投資。

レールガン レーザーシステム スクラムジェットエンジン

AH-64とUAV(MQ-1C Grey

Eagle)

P-8AとISR機(MQ-4 Triton)

2017年度予算案(第3のオフセット戦略関連技術の例)

長距離攻撃に対抗する先進的兵器 潜水システムの向上 ヒューマン・マシン・チーム及び小型無人機の「群れ」による

作戦 人工知能を用いたサイバー及び電子戦システム その他の新たなコンセプトに関するウォーゲーム

第3のオフセット戦略(※)を通じ、軍事作戦上及び技術上の優位を維持することを提唱。

北朝鮮の核・弾道ミサイル開発の継続

ロシアによる先進技術獲得に向けた研究開発

中国による⽶国の技術的優越を脅かす技術獲得に向けた多様な研究開発の強化

⽶国による技術的優越の確保

(※)「オフセット戦略」とは、米国に挑戦する対抗者に対して、相手とは異なる非対称的手段でその力を相殺(オフセット)すること。

ボレイ級戦略原潜(ブラヴァ搭載)

中距離弾道ミサイル「ムスダン」

各国の装備品研究開発を巡る動向

2

防衛省作成資料

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(FMS予算額推移)(物件費に占めるFMSの推移) (単位:億円)(単位:億円)

※1 金額は、当初予算額(物件費(契約ベース))の合計である。※2 SACO関係経費、米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分、新たな政府専用

機の導入に伴う経費を含まない。

※1 金額は、当初予算額(契約ベース)である。※2 新たな政府専用機導入に伴う経費は含まない。

877 637  642  569  431 

1,380 1,179 

1,905 

4,705  4,858 

3,939 

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

26,850 27,233 26,334 25,848 25,927 27,332 26,813 

29,199 

32,917 30,748 

33,223 

3.3%2.3% 2.4% 2.2%

1.7%

5.0%4.4%

6.5%

14.3%

15.8%

11.9%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

FMS以外 FMS FMSの割合

有償援助調達(FMS)について

3

防衛省作成資料

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1.策定の背景政府全体の国家安全保障に資する技術政策の現状

防衛省において、研究開発を中⼼とした技術政策を的確かつ機敏に遂⾏していくためには、「防衛技術戦略」の策定が必要

「防衛計画の⼤綱」「中期防衛⼒整備計画」「国家安全保障戦略」 「第5期科学技術基本計画」

2.防衛省の技術政策の⽬標

○諸外国に対する技術的優越を確保することは、防衛⼒強化に直接的に寄与するとともに、バーゲニングパワーの源泉ともなる。

(1) 技術的優越の確保○防衛⼒整備上の優先順位との整合性を確保しつつ、優れた防衛装備品を効果的・効率的に創製する。

(2) 優れた防衛装備品の効果的・効率的な創製

3.具体的施策

技術移転を適切に実施するための技術管理

防衛省が保有する知的財産の活⽤

スマート化、ネットワーク化への取組 無⼈化への取組

現有装備の機能・性能向上への取組 ⾼出⼒エネルギー技術への取組

特に重視する4つの取組 中⻑期技術⾒積りの策定(H28.8.31公表)

(1)技術情報の把握 科学技術等の現状と動向の把握

(2)技術の育成

研究開発ビジョンの策定(「将来無⼈装備に関する研究開発ビジョン」をH28.8.31公表)

国内外の関係機関等との技術交流の強化 加速する科学技術イノベーションの進展への対応

ファンディング制度の推進

プロジェクト管理による最適な防衛装備品に向けた対応

防衛⼒構築の基盤を着実に担う研究開発

(3)技術の保護

⾃由⺠主党国防部会提⾔(H28.5) 防衛装備・技術政策に関する有識者会議報告書 (H28.8)

防衛技術戦略(H28.8.31公表)の概要

4

防衛省作成資料

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2.防衛関係費の概要

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防衛関係費の在り方

○ 「中期防衛力整備計画」では、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備するため、防衛関係費について、平成26年度から平成30年度までの平均実質0.8%の伸び率による所要経費(23兆9,700億円)の枠内とすることを規定。

○ また、深刻な財政状況を踏まえ、他の一般歳出同様、防衛関係費についても、「経済・財政再生計画」で示された方針に沿って、調達改革をはじめとする歳出改革に取り組む必要。

「経済・財政再生計画」(抄)

○ 国の一般歳出については、安倍内閣のこれまでの

取組を基調として、社会保障の高齢化による増加分

を除き、人口減少や賃金・物価動向等を踏まえつ

つ、増加を前提とせず歳出改革に取り組む。

※ 国の一般歳出の水準の目安については、安倍内閣のこれまでの3年

間の取組では一般歳出の総額の実質的な増加が1.6兆円程度となっ

ていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度(平

成30年度)まで継続させていくこととする。

○ 防衛力の整備については、「中期防衛力整備計

画」に基づき、効率的に整備する。その際、ライフ

サイクルを通じたプロジェクト管理の強化等の調達

改革を進め、費用対効果の向上を図る。

「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)

Ⅵ 所要経費

1 この計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る金

額は、平成25年度価格でおおむね24兆6,700億円程

度を目途とする。

2 本計画期間中、国の他の諸施策との調和を図りつつ、調達改革等を通じ、一層の効率化・合理化を徹底した防衛力整備に努め、おおむね7,000億円程度の実質的な財源の確保を図り、本計画の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費は、おおむね23兆9,700億円程度の枠内とする。

「中期防衛力整備計画」(抄)(平成25年12月17日閣議決定)

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SACO・米軍再編経費等除く防衛関係費(―は対前年度伸率)

SACO・米軍再編経費

政府専用機

685734

1,0101,472

1,794

1,794 

‐1.0%

‐0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2.0%

2.5%

3.0%

3.5%

4.0%

35,000

37,000

39,000

41,000

43,000

45,000

47,000

49,000

51,000

53,000

24 25 26 27 28 29要求

(億円)

年度

(▲0.4%)

(0.8%)

(2.2%)

(0.8%) (0.8%)

(当初予算)

51,685

47,13847,538

49,801

48,848

50,541

防衛関係費の推移

注1:SACO(Special Action Committee on Okinawa)は、平成7年9月の米兵暴行事件を契機に、橋本総理・クリントン大統領で合意し設置した、在日米軍に係る土地・施設の返還、訓練・運用改善による沖縄県の負担軽減等についての日米協議に係る特別行動委員会の呼称。

注2:米軍再編は、平成18年5月に日米安全保障協議委員会で承認された「再編の実施のためのロードマップ」に基づいて実施する、在日米軍の日本国内外の再編等に係る事業。

46,453

48,221

6

(2.3%)46,804 47,838

48,607

49,735

26中期防衛力整備計画期間

○ 25年度以降、SACO・米軍再編経費を除く防衛関係費は+0.8%の伸びで推移している(※) 。

※ 26年度予算については給与特例減額終了に伴う人件費増等があり、それを除けば、対前年度伸び率は実質+0.8%。

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防衛関係費の構造

   (単位:億円)

29年度 30年度 31年度

契  約 後年度負担  合計 46,537

24年度前

金 (A+B)

25年度前

A 既定分の

26年度前

金   後年度負担

23,662

27年度前

    B  

28年度 新規分の後年度負担   22,875

③一般物件費

10,692

前金 636

総額50,541

①人件・糧食費

21,473

後  年  度  負  担

24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 32年度以降

②歳出化経費

18,377

割合42.5%

36.4%

21.2%

①人件・糧食費: 隊員の給与、退職金、営内での食事など

②歳出化経費 : 前年度以前の契約に基づき、当年度に支払われる経費(戦車、護衛艦、戦闘機など)

③一般物件費 : 装備品の修理・油購入等の活動費、基地周辺対策費、在日米軍駐留経費負担など

○ 防衛関係費は、義務的な経費である、①人件・糧食費と②歳出化経費(過去の装備品等の調達の後年度負担)が、その8割を占めており、硬直的な構造になっている。

○ 特に、新規の後年度負担(国庫債務負担行為等)は、翌年度以降の歳出化経費として予算の硬直化の要因となるため、その水準はできる限り抑制していく必要がある。

(単位:億円)

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17,943 17,984 18,330 17,461

17,002 17,303

18,476

17,299

21,733

25,623

22,875

25,052

15,000

17,000

19,000

21,000

23,000

25,000

27,000

18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度 29年度要求

新規後年度負担額の推移

(注1)各年度の新規後年度負担額は一般会計当初予算計上額を記載。なお、東日本復興特別会計については、24年度計上額は59億円、25年度計上額は376億円、26年度計上額は80億円。

(注2)〔 〕についてはSACO・米軍再編等を除く。(注3)特定防衛調達分は、27年度分は固定翼哨戒機P-1、28年度分は哨戒ヘリコプター(SH-60K)等、29年度分は輸送ヘリコプター(CH-47JA)、輸送機

(C-130R)のPBL、ペトリオット・システムの能力向上改修等を含む。

(0.4%)(0.2%)

(1.9%)

(▲4.7%)(▲2.6%)

(1.8%)

(6.8%)

(▲6.4%)

(25.6%)

(17.9%)

()は対前年比

(▲10.7%)

(▲0.3%)17,708

(0.0%)17,711

(1.5%)17,972

(▲5.5%)16,990 (▲2.2%)

16,623

(▲0.5%)16,540

(8.2%)17,895

(▲7.7%)16,517

(17.8%)19,465

(18.2%)22,998

(▲9.6%)20,800

特定防衛調達(長期契約)分

○ 新規後年度負担は、「中期防衛力整備計画」等を踏まえ、26年度及び27年度で増加したが、28年度では将来の予算の硬直化等をまねくことのないよう抑制したところであり、29年度も減額を図る必要。

○ なお、「長期契約法」(平成27年4月22日成立)に基づく装備品の調達も新規後年度負担の増加の一因。長期契約に基づく装備品等のまとめ買いは、調達コストの低下に資する一方、ある年度の歳出化経費の急増を招きかねない。後年度の歳出化のタイミングを踏まえつつ、計画的な予算の編成を図る必要。

(9.5%)

(10.6%)22,997

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29年度予算編成に向けた基本的考え方

○ 安全保障環境が一層厳しくなる中で、周辺海空域における安全確保、島嶼部に対する攻撃や弾道ミサイル攻撃への対応等、各種事態における実効的な抑止及び対処を実現するため、これまでも予算の重点化を図ってきたところ。

○ 防衛関係費については、29年度においても、「中期防衛力整備計画」等に沿って、南西地域の防衛態勢の強化や弾道ミサイル攻撃への対応等について重点化を図りつつ、調達改革等を通じた効率化・合理化を通じて、メリハリある予算としていく必要。

9

28年度予算の主要事業事例

哨戒ヘリコプター(SH-60K)の取得

現有の海自哨戒ヘリコプター(SH-60J)の後継機として、対潜探知能力や攻撃能力が向上したSH-60Kを取得。

28年度予算1,026億円(17機)

潜水艦の建造

東シナ海をはじめとする周辺海域の警戒監視能力等の強化のため、「そうりゅう」型12番艦(2,900トン)を建造。

28年度予算636億円

周辺海空域における安全確保 島嶼部に対する攻撃への対応 弾道ミサイル攻撃等への対応

機動戦闘車の取得

機動運用を基本とする作戦基本部隊等に航空機等での輸送に適した機動戦闘車を取得し、これらの機動展開能力を強化。

28年度予算252億円(36両)

与那国島の沿岸監視部隊に関連する

施設の整備

南西海域における各種兆候の早期察知機能の強化に向け、付近を通行する艦船や航空機の監視を行うための沿岸監視部隊を与那国島に新編するため、これに必要となる関連施設を整備。

28年度予算55億円

イージス・システム搭載護衛艦の建造

弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図り、我が国を多層的かつ持続的に防護する体制を強化するため、イージス・システム搭載護衛艦(8,200トン)を建造。

28年度予算1,734億円

PAC-3ミサイルの再保証

PAC-3ミサイルについて、耐用期限の到来した部品を交換するとともに、全体の点検を実施し、所要数を確保。

28年度予算65億円

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施策の例 26年度 27年度 28年度 29年度 30年度

維持・整備方法の見直し(ロジスティクスの改革)

81億円 336億円 432億円

装備品のまとめ買い 331億円 350億円 465億円

民生品の使用・仕様の見直し 250億円 423億円 455億円

長期契約制度の導入 - 417億円 148億円

PM/IPT制度の導入国際共同開発・生産の推進

- - -

単年度計 660億円 1,530億円 1,500億円

累 計 660億円 2,190億円 3,690億円 7,000億円

調達改革について

2年度間の要効率化額約3,310億円(単年度あたり約1,655億円)

○ 「中期防衛力整備計画」では、調達改革等を通じ、おおむね7,000億円程度の実質的な財源を確保することとされている。

○ 調達改革については、厳しい財政状況の下、効率的かつ実効的な防衛力整備を行うために不可欠であり、昨年10月に設立された防衛装備庁に課せられた重要なミッション。

〔平成27年10月1日中谷防衛大臣臨時会見録抜粋〕

本日、防衛省改革の組織改編といたしまして・・・(中略)・・・防衛装備庁の新設につきましては、この防衛装備品をより効果的・効率的に取得をするとともに、拡大する装備行政に的確に対応するために設置をするものでありまして、分散をしている装備取得関連部門を集約・統合することによって、まず、質の高い装備品のより低コストでの取得、わが国の技術的な優位の確保を重視をした研究の開発、そして、国内の生産基盤、そして技術、これの強化を図る。そして、諸外国との防衛装備・技術協力といった課題について、専門的知見を集約するとともに、一貫した責任体制で取り組むということになります。・・・(以下略)10

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3.防衛関係費の個別課題(調達改革)

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調達改革の必要性

○ 「中期防衛力整備計画」で定められた調達効率化7,000億円を確実に実施する必要。

○ 近年、装備品の高性能化・複雑化する中、長期的な開発・取得の戦略の不足もあいまって、開発・製造コ

ストが上昇し、装備品の取得単価及び維持整備費が上昇。これにより、調達数量が減少し、更なる調達単価

の上昇がもたらされるという、悪循環が生じている。

○ 従来より、防衛装備品の調達は、自衛隊による所要を前提に開発や生産(国内生産、ライセンス国産、輸

入等)が行われ、取得数量も限られていることなどから、量産効果による価格低減は作用しにくかった。ま

た、海外の量産機を調達する場合でも、自衛隊仕様への改造や、防衛生産・技術基盤を維持するために行

うライセンス国産により、調達価格の上昇等を招いている。

○ 国内生産の場合、国内のメーカー・生産基盤は原価計算方式の下で一定の公需を確保することで存続す

ることが可能であったことから、企業再編を含む厳しい競争や民需の開拓などの営業努力に至らず、結果と

して、価格低減に結びついていないケースが見受けられる。

○ このような状況を受け、防衛省は本年8月に「取得戦略計画」を策定・公表したところであるが、更なるプロ

ジェクト管理の徹底や、民需の開拓・海外移転を含む、調達改革を通じた装備品の価格の低減への取組み

も重要課題。

悪循環

調達数量の減少

・装備品の高価格化

・維持整備費の増大

防衛力整備水準の未達成

防衛産業からの企業撤退

生産基盤・技術基盤の脆弱化

11

装備品の高性能化・複雑化

量産効果の低い自衛隊所要の調達

価格低減努力に結びつかない価格決定

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① 装備品の取得方法の効率化・最適化

○ 防衛省は、装備品の効率的な調達に向けた取組みとして、「防衛生産・技術基盤戦略(平成26年6月)」において、①装備品の取得方法の効率化・ 適化をはじめ、②装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化、③「防衛装備移転三原則」(平成26年4月)を踏まえた装備品等の海外移転、④研究開発に係る知的財産権の活用、⑤国内産業の組織再編・連携を自ら掲げており、早期の具体化を図る必要。その際、各取組みの進捗状況が外部から分かりにくいため、同戦略の進捗を可視化する工程表を策定する必要。

○ さらに、装備品の価格の低減等を図るため、⑥原価の監査の徹底、⑦GCIP率の在り方、⑧契約時における価格上昇リスクの抑制に取り組む必要。

装備品の効率的な調達等に向けた取組み

実際の装備品の調達プロセスは、機種選定時に取得方法が絞り込まれ、対外的な説明が十分に行われていない。この

ため、装備品の調達に際しては、各取得方法を比較し、そのメリット・デメリットを国民に対し明確にして透明性を高めた上で、効率的な取得方法を選択すべき。例えば、回転翼機についてライセンス国産を選択する場合、同型機を輸入で調達し、調達先においてPBL(Performance Based Logistics)で維持整備を行う方法等、他の取得方法との比較を行い、コスト面等、そのメリット・デメリットを社会的にオープンにした上で、取得方法を含む機種選定を行うべき。

この際、ライセンス国産や国内開発を選択する理由として、産業振興や技術基盤維持といった別途の政策目的がある場合には、防衛関係費で措置する必要性や当該技術の優位性等を併せて説明していく必要。

12

取得方法 メリット デメリット 望ましいと考えられる分野 留意点

国内開発

【事例】10式戦車、P-1、C-2 等

○防衛生産・技術基盤の維持・強化に直結

○国内に技術がある場合、自衛隊の要求性能を直接満たすことができる

○維持整備経費が割安になる傾向がある

●技術的リスクが伴う●開発費及び調達価格の上昇リスクを伴う

・ 自衛隊の要求性能、運用支援、ライフサイクルコスト、導入スケジュール等の条件を既存の国内技術で満たせるもの

・ 安全保障上の観点から、外国からの導入が困難なもの 等

・ 国内開発のメリットや意義を明確にしつつ、プロジェクト管理を含めたコスト上昇を抑制する取組みが不可欠

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取得方法 メリット デメリット 望ましいと考えられる分野 留意点

国際共同開発・生産

【事例】BMD用能力向上型迎撃ミサイル(SM-3ブロックⅡA)等

○他国の先端技術へのアクセスを通じて国内技術の向上が図れる

○参加国間の同盟・友好関係が強化され、防衛装備品の相互運用性の向上が期待できる

○参加国間で開発・生産コストとリスクの相互負担が期待できる

●参加国の思惑が事業に影響するため国家間の調整等に多大な労力が必要になる場合がある

●自衛隊が求める要求性能が十分に満たされない可能性もある

●中核技術の獲得・保持が困難となる可能性がある

・ 他国が保有する先進技術へのアクセス、参加国間の同盟・友好関係の強化、参加国間の開発・生産コストやリスクが相互負担できるといったメリットが十分もたらされる場合 等

・ コスト面を含めて、参加国の技術・能力の最適化を図る形で、分担を決定する必要

ライセンス国産

【事例】回転翼機(AH-64D、UH-60、CH-47等)等

○当面の間、国内開発できないものについて、技術基盤を保持することができる

○国内に維持整備基盤を保持することができる

●輸入よりも調達価格が割高になる場合がある

●我が国独自の防衛装備品改善はライセンスの条件により困難な場合がある

・ 当面の間、国内開発できないもの、開発のために膨大な経費を要するもので、維持整備等の運用支援基盤の確保のために国内に防衛生産・技術基盤を保持しておく必要があるもの

・ コスト、スケジュール等の観点から国際共同開発・生産の選択が難しい場合 等

・ ライセンス元の生産ラインの状況等により、一方的な価格上昇のリスクがある

・ ライセンス国産を行う装備品の種類については、国内企業の技術レベルや国際競争力(民需含む)を踏まえて判断する必要

輸入(FMS取得を含む)

【事例】F-35A戦闘機、グローバルホーク 等

○取得単価は国内開発・ライセンス国産と比較して安価になる場合がある

○自衛隊の要求性能を満たす装備品が海外にある場合、早期取得が可能となる

●国内の防衛生産・技術基盤の向上に繋がらない

●維持整備経費が割高になる場合がある

●供給国側の都合により調達価格の上昇、納期遅延、維持整備の継続についてのリスクがある

・ 防衛生産・技術基盤が保持する技術が劣後するもので、一定期間内に整備が必要なもの

・ 性能、ライフサイクルコスト、導入スケジュール等の面で問題がないもの 等

・ 供給国側の生産ラインの状況等により、一方的な価格上昇のリスクがある

・ FMS取得の場合、他のユーザー国の取得条件が開示されないといった点があり、価格の透明性・合理性を一層求めていく必要

・ 維持整備については、海外企業とのPBL(※)の活用等による長期的な体制の構築も選択肢

※ Perforamnce Based Logistics:長期的な成果の達成に応じて対価を支払う契約方式13

装備品の効率的な調達等に向けた取組み

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② 装備品のライフサイクルを通じたプロジェクト管理の強化

(ⅱ)ライフサイクルコスト(LCC)の精緻化

プロジェクト管理体制の構築に向けた防衛省の取組み状況は初期段階。平成27年11月に重点装備品12品目について、プロジェクトマネージャー(PM)及びプロジェクトチーム(IPT)を設置し、プロジェクト管理を開始。本年8月には当該12品目について「取得戦略計画」を策定・公表。(ⅰ)今後、対象装備品の拡大が必要。

プロジェクト管理を強化するため、(ⅱ)コストデータベースの構築等による装備品のライフサイクルコスト(LCC)の精緻化を図るとともに、(ⅲ)想定以上の価格上昇等のリスクが顕在化した場合に事業の見直しや中止を行う実効的なプロジェクト管理上の仕組みを構築する必要。

※ 防衛省は、プロジェクト管理手法の導入により、「取得に係る関係者において、自ずとコスト、スケジュール及びリスクの管理が強化され、コストの増大に歯止めがかかる。」と説明。(平成27年12月25日 経済・財政一体改革推進委員会 「経済・財政再生アクションプログラム 参考資料」より。)

(ⅰ)プロジェクト管理の対象装備品の拡大

(ⅲ)プロジェクトの見直し等

14

装備品の効率的な調達等に向けた取組み

・訓令の見直し等により、装備品の対象範囲を拡大していく必要。

・当初見積もりよりもLCCが上昇することが多い実態を踏まえ、原価の監査の充実を図るとともに、進捗していないコストデータベースを早急に構築し、メーカー等との価格協議等に実効性を持たせる必要。

・現状は、装備品の見積もり額と実際の調達価格に一定以上の乖離が生じた場合、「取得戦略計画」の見直しや事業の中止を検討する旨の訓令が規定されているが、米国の例も踏まえ、事業継続に対してより厳格な手続きを必要とするといった対応の検討が必要。

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(参考)プロジェクト管理における事業見直し基準

重要な不履行 クリティカルな不履行

現行基準見積比 15%上昇 25%上昇

当初基準見積比 30%上昇 50%上昇

見直しのタイミング 4半期毎

取るべきアクション ○ 45日以内に、計画の変更の内容やその原因等の必要事項を記載した不履行通知書及び当該4半期の取得計画報告を議会(下院)に提出

○ コスト上昇の根本原因分析を実施し、事業を継続する場合、60日以内に、国防長官から議会(下院)へ同分析を提出するとともに、以下を証明し、承認の可否を問う・安全保障上の不可欠性・事業のコスト増を賄う他の事業より優先順位が高いことの証明・コスト・コントロールを実施する枠組み 等

継続の要件 - ○ 議会(下院)の承認が必要

日本:装備品等のプロジェクト管理に関する訓令(H27.10.1付 防衛大臣訓令)

取得戦略計画の見直し等について(H28.4.8付 防衛装備庁長官通達)

現行基準見積比 15%上昇 25%上昇

当初基準見積比 30%上昇 50%上昇

見直しのタイミング 原則として年度毎(訓令§15②)

取るべきアクション

○ 防衛装備庁長官は、取得戦略計画の見直しについて、関係局長及び関係幕僚長等と調整を行う(通達§3①)

○取得戦略計画の重要な事項に変更を及ぼすような見直しを行う場合は、装備取得委員会の審議を踏まえ、防衛大臣への報告又は承認が必要(訓令§16②)

○ 防衛装備庁長官は、取得プログラムを中止することが適当と認めるか否かについての防衛大臣の判断に資するため、関係局長及び関係幕僚長等と調整を行い、取得プログラムの継続の必要性について検討する(通達§3②)

継続の要件 -○ 防衛大臣は、当該取得プログラムを中止することが適当と認める

ときは、その中止を命じる(訓令§17)

米国:国防授権法(National Defense Authorization Act)の改正事項(ナン=マッカーディー条項)

(出典)米国防省HPから作成

○ 米国の国防授権法(ナン=マッカーディ条項)では、装備品単価の一定の上昇が生じた場合、事業継続について議会の承認を要することとするなど、日本と比して厳格な要件を置いている。

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装備品の効率的な調達等に向けた取組み

④ 研究開発に係る知的財産権の活用

「防衛生産・技術基盤戦略」では、防衛技術と民生技術との間でのデュアル・ユース化、ボーダーレス化が進展している中で、民生技術を積極的に活用するとともに、防衛関連事業で得られた成果等の民生技術への活用促進は、我が国の産業力・技術力の強化等の観点から重要とされている。

防衛省は、例えば、F-2戦闘機の米国との共同開発からは、ETCの処理システムや自動車用衝突防止レーダー、MRJやB787に採用された複合材など、スピンオフによる産業への波及効果があったとしている。

他方、防衛省が保有する特許権により民間企業から利用料を得た実績は1件(00式個人用防護装備)のみ。研究開発費が国費で賄われていることを踏まえれば、知的財産権の帰属の明確化及びその適正な活用について、検討する必要。

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③ 「防衛装備移転三原則」を踏まえた装備品等の海外移転

装備品の海外移転は、我が国の防衛装備品の市場拡大が期待でき、量産効果による装備品の価格低減に加え、防衛生産・技術基盤の維持・強化に資する可能性。

「防衛省開発航空機の民間転用に関する検討会(平成22年8月)」において、防衛省開発航空機であるUS-2救難飛行艇やC-2輸送機について、開発企業による民間転用の見通しや、国・企業間の枠組みの在り方を整理。

こうした検討に関わらず、これまで海外移転の実現例はない。これは、とりわけ価格面において十分な国際競争力を有さないことの裏返しとも言え、今後は装備品のコストダウンの実現とともに、移転実現に向け、政府と企業が一丸となった取組みが不可欠。

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装備品の効率的な調達等に向けた取組み

⑤ 国内産業の組織再編・連携

※ 米国の防衛産業は、冷戦終結後のクリントン政権下において、米国の航空・防衛産業の業界再編成を一段と加速すべきとの立場が明確にされ、1980年代半ばまで防衛関連企業は50社以上あったが、1997年末までに、ボーイング、ノースロップ・グラマン、ロッキード・マーチン、レイセオンの4社に統合・再編。

※ 欧州においても、国境を越えた再編が進み、BAEシステムズやエアバス・グループなど欧州各国にまたがる規模の防衛関連企業が存在。(出展)衆議院調査局 安全保障調査室「日本の防衛産業」(平成25年3月)

「防衛生産・技術基盤戦略」では、「我が国防衛産業組織の特徴としては、欧米のような巨大な防衛専業企業が存在せず、また、企業の中での防衛事業のシェアは総じて低く、企業の経営トップへの影響力は一般的に少ない状況にあり、欧米諸国と比べて、企業の再編も進んでいない」とし、「事業連携、部門統合等の産業組織再編・連携は有効な手段」と指摘。

また、同戦略において、「防衛装備品の生産は、その特殊性から、技術と資本について、相当の蓄積を必要とする」ため、類似の機能を有する複数の企業が入札で争うことで双方の企業が疲弊し、「防衛生産・技術基盤の弱体化が生じうる」と指摘。このため、「企業の『強み』を結集できるような企業選定方式の導入や、複数年一括契約による契約対象企業の絞り込み等の契約制度の運用を含め、産業組織の適正化を検討する」と記載。

したがって、まず、非競争・非効率的な調達がこうした組織再編を阻害することのないよう、機会の平等や調達の効率化を徹底していく必要。 また、複数企業の強みの結集を促すような企業選定方式(JV型受注体制)の導入についても、

早急に実現すべき。その上で、国際的な状況(※)も踏まえ、国内防衛産業の部門統合や事業再編の具体的な促進策を検討する必要。

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装備品の効率的な調達等に向けた取組み

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⑥ 原価の監査の徹底

多くの防衛装備品は、個別に積み上げた製造原価にGCIP率(※)を掛け合わせることで、取得価格を算出している。こうした算定方法は、市場価格が存在しない分野での調達において一般的であるが、GCIP率が一定であっても、製造原価が上昇すれば自動的に利益額が上昇するため、構造上、企業のコスト削減努力が働きにくい。このため、原価の監査の徹底やコストデータベース管理などにより製造原価の抑制を図る必要。

当初想定より取得単価等が上昇している装備品も散見されることから、調達時の契約で義務付ける等により、材料費・加工費・直接経費・GCIP率等の個々の要因を分析し、官民が協力してWBS(※)ベースでその妥当性を厳しく精査し、契約の履行期間を通じてコストの上昇を回避するための取組みを実施する必要。

※GCIP率: 一般管理及び販売費(General Cost)率、利子(Interest)率、利益(Profit)率※Work Breakdown Structure: 装備品を構成要素や実施項目等を基準に適切に管理できる要素まで分解した体系

GCIP率の在り方についても、経営効率化を促す仕組みとすることが必要。例えば、GC率については、企業の実績値が採用されるため、企業において販管費を削減するインセンティブが働かない。また、防衛装備品の生産に伴い、国が費用負担を行う「初度費」(専用治工具等)にもGCIPが計上されている。こうしたGCIP率の在り方について、経営効率化を促す仕組みにするとともに、GCIPを計上すべき費用項目について再検討が必要。

なお、平成27年度の予算執行調査・反映状況票においては、初度費の特性や利益計算の方法に関する指摘を含め、「平成28年度中を目標として、訓令(『調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令』)の改正を行う」とされている。

⑧ 契約時における価格上昇リスクの抑制

機種選定時に、企業から様々な提案が行われるが、実際の契約にはその提案内容が盛り込まれるとは限らず、結果的に選定プロセスでの提案に拘束力が生じていない場合がある。このため、企業からの提案や説明内容については予算編成過程等においても十分に検討し、不確実性のある内容については、価格上昇等のリスクを防衛省(国)が一方的に負うことのないよう、国と企業の間で適切なリスク分担が必要。

⑦ GCIP率の在り方

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期間費用

期間工数加工費率=

一般管理及び販売費

売上原価GC率 =

標準利益率

× 事業特性調整係数

× 契約履行難易度調整係数

利益率=

経営資本 × 標準金利

期間総原価

利子率=※ 標準利益率は、統計資料により製造業企業が得られる利益

を平均したもの。事業特性調整係数は、装備品製造のために大型の設備保有

が必要な場合、資産が膨らみ資本回転率が悪くなる傾向がある。そのため、防衛産業の特性を利益率に反映。契約履行難易度調整係数は、契約履行上の難易度を考慮す

るもの(25年度から契約金額を上限とする原価監査付契約において契約履行難易度調整の枠組みで付加リスク料率を加算)。

※ 期間費用は、年間の加工に関係する人件費や間接的な経費の総額であり、期間工数は、対応する期間の総作業時間のこと。

※ 経営資本は、総資産のうち経営目的に直接関係するもの。標準金利は、統計資料による短期、長

期、社債等に係る金利を平均したもの(製造業企業の標準的な資金調達手段などを考慮)。

※ 一般管理及び販売費は、年間の本社の経費(人件費、販売活動にかかる費用)のこと。

(参考)原価計算方式の計算構成について

➣ 原価計算方式は、市場価格がない場合に(原則は市場価格方式)、構成要素ごとに積み上げた製造原価に利益等を付加して計算価格を算出する方式のこと。

直接材料費

直接経費

加工費(工数×加工費率)

製造原価直接労務費

製造間接費

一般管理及び販売費(GC)

(製造原価×GC率)

総原価

利益(P)(総原価×利益率)

利子(I)(総原価×利子率)

梱包輸送費等

計算価格

(計算価格の範囲内で予定価格を設定。)

防衛省作成資料

(I)

(P)

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(参考)P-1哨戒機、C-2輸送機のライフサイクルコストについて

≪P-1哨戒機≫ ≪C-2輸送機≫

取得戦略計画(平成28年8月31日公表)

ライフサイクルコスト 19,326

構想段階(H3~H12) 0

開発段階(H5~H20年代後半) 2,498

量産段階(H23~H30年代) 4,891

運用・維持段階(H23~H60年代) 11,936

廃棄段階(H50年代以降) 0

当初見積時

・ H23年度から約30機(27年度までの取得分8機を含む)を取得し、運用期間を1機あたり約30年として想定

・ 物価変動は考慮せず、為替レートは120円/ドルを使用・ 計数は、四捨五入による。

・ H20年度から約70機(27年度までの取得分34機を含む)を取得し、運用期間を1機あたり23年として想定

・ 物価変動は考慮せず、為替レートは120円/ドルを使用・ 計数は、四捨五入による。

ライフサイクルコスト 32,182

構想段階(H3~H20) 0

開発段階(H4~H24) 3,101

量産段階(H20~H30年代) 13,542

運用・維持段階(H13~H60年代) 15,538

廃棄段階(H40年代以降) 0

ライフサイクルコスト 17,296

構想段階(H5~H12) 6

開発段階(H13~H20年代) 2,038

量産段階(H23~H30年代) 5,492

運用・維持段階(H17~H70年代) 9,760

廃棄段階 見積もらず

・ H23年度に取得を開始し、合計約40機を取得するものとし、運用期間を1機あたり約40年として想定

・ 物価変動は考慮せず、為替レートは103円/ドルを使用・ 計数は、四捨五入による。

ライフサイクルコスト 22,850

構想段階(H4~H19) 553

開発段階(H13~H23) 2,474

量産段階(H20~H30年代) 8,928

運用・維持段階(H13~H60年代) 10.895

廃棄段階 見積もらず

・ H20年度に4機、以後H30年代までに約70機を取得するものとし、運用期間を1機あたり約20年として想定

・ 物価変動は考慮せず、為替レートは113円/ドルを使用・ 計数は、四捨五入による。

平成20年度ライフサイクルコスト管理年次報告書 平成21年度ライフサイクルコスト管理年次報告書

○ 当初見積時と取得戦略計画におけるライフサイクルコストを比較し、1機あたりのライフサイクルコスト(LCC)を算出すると、P-1は約1.4倍(約326億→約460億)、C-2は約1.5倍(約432億→約644億)となっている。

防衛省公表資料を元に作成

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(単位:億円) (単位:億円)

(単位:億円) (単位:億円)

1機あたりLCC約326億円

1機あたりLCC約460億円

1機あたりLCC約432億円

1機あたりLCC約644億円