2 蒸気圧・蒸発潜熱mishima/h17_02_physical...4.2 蒸気圧・蒸発潜熱 4.2.1...

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4.2 蒸気圧・蒸発潜熱 4.2.1 蒸気圧・蒸発潜熱を用いた基礎計算 蒸気圧式 工業的に蒸留装置などを作る場合には、蒸気圧と温度の正確な関係が必要になる。物質の蒸気圧と温 度の関係を熱力学的に導出したのが、式 (6.1) に示すクラウジウス-クラペイロン( Clausius Clapeyron)式である。 T B A p = ° ln (6.1) ここで、AB は定数であり、狭い温度範囲において成り立つ。図 6-1 の蒸気圧の対数値を1/T に対 して表すと、狭い温度範囲で直線関係がみられる。工学的には、式(6.1)よりも実測値を精度よく表現す る次のアントワン(Antoine)式が広く用いられている。 ) ( ln C T B A p + = ° (6.2) ここで、ABC はアントワン定数と呼ばれる物質固有の値である。ただし、使用する温度範囲、温 度と圧力の単位によりその値が異なるので、使用する場合には注意を要する。水、メタノール、アセト ンなどのなじみの深い物質に関して、アントワン式で計算した温度 T と蒸気圧の関係を図 18 に示す。 0 200 400 600 800 1000 0 20 40 60 80 100 120 温度(℃) 蒸気圧(mmHg) 760 34 78 64 57 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 0.01 0.03 0.05 0.07 0.09 1/T logp°[mmHg] ジエチルエーテル アセトン メタノール エタノール 18 温度Tと蒸気圧p o の関係 これらの計算結果は、実測値とよく一致している。これらのグラフから、蒸気圧p o が温度Tの増加に対し て指数関数的に増加していることがわかる。さらに、クラウジウス-クラペイロン(Clausius Clapeyron)式に示されるように、蒸気圧p o の対数lnp o が温度の逆数 1/Tの一次関数で表されることがわ かる。 例題 6.1 6-2 のような耐圧 4.0 atm 4.00×1.01325×10 2 kPa)のガラス容器がある。この中にエタ 1

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  • 4.2 蒸気圧・蒸発潜熱 4.2.1 蒸気圧・蒸発潜熱を用いた基礎計算 蒸気圧式 工業的に蒸留装置などを作る場合には、蒸気圧と温度の正確な関係が必要になる。物質の蒸気圧と温

    度の関係を熱力学的に導出したのが、式 (6.1)に示すクラウジウス-クラペイロン(Clausius‐Clapeyron)式である。

    TBAp −=°ln (6.1)

    ここで、A、B は定数であり、狭い温度範囲において成り立つ。図 6-1 の蒸気圧の対数値を1/T に対して表すと、狭い温度範囲で直線関係がみられる。工学的には、式(6.1)よりも実測値を精度よく表現する次のアントワン(Antoine)式が広く用いられている。

    )(ln

    CTBAp+

    −=° (6.2)

    ここで、A、B、C はアントワン定数と呼ばれる物質固有の値である。ただし、使用する温度範囲、温度と圧力の単位によりその値が異なるので、使用する場合には注意を要する。水、メタノール、アセト

    ンなどのなじみの深い物質に関して、アントワン式で計算した温度 Tと蒸気圧の関係を図 18に示す。

    0

    200

    400

    600

    800

    1000

    0 20 40 60 80 100 120

    温度(℃)

    蒸気圧(mmHg) 760

    34 78

    ジエチルエーテル

    アセトン 水

    エタノール

    メタノール

    6457

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    3.5

    0.01 0.03 0.05 0.07 0.09

    1/T

    logp°[mmHg]

    ジエチルエーテル アセトン メタノール

    エタノール水 図 18 温度Tと蒸気圧poの関係

    これらの計算結果は、実測値とよく一致している。これらのグラフから、蒸気圧poが温度Tの増加に対して指数関数的に増加していることがわかる。さらに、クラウジウス-クラペイロン(Clausius‐Clapeyron)式に示されるように、蒸気圧poの対数lnpoが温度の逆数 1/Tの一次関数で表されることがわかる。 例題 6.1 図 6-2のような耐圧 4.0 atm(4.00×1.01325×102kPa)のガラス容器がある。この中にエタ

    1

  • ノールを封入した。今、この中の液体を何度まで加熱すると、ガラス容器が破損する可能性があるか。

    ただし、この温度範囲におけるエタノールのアントワン定数は、A=16.66404、B=3667.705、C=-46.966、po[kPa]、T[K]であるとする。 [解] エタノールのアントワン定数より、式(6.2)を用いて蒸気圧が 4.0atmとなる温度 Tを求める。

    [ ])(

    lnCT

    BAkPap+

    −=°

    966.46)101.013250.4ln(66404.16

    705.3667ln 2

    +××−

    =−°−

    = CpA

    BT

    T = 39104 K = 117.9 ℃ 6.2 Clausius‐Clapeyron式の導出 熱力学第 1 法則は、次式で与えられる。すなわち、系の熱量変化 dQ は、内部エネルギー変化 dU、系の圧力 Pおよび体積変化 dVを用いて次式で与えられる。 dQ=dU+PdV (6.3) 熱力学第二法則より、温度 Tにおける dQとエントロピー変化 dSは次式で与えられる。 dQ=TdS (6.4) (6.3)、(6.4)式より、 dU=TdS-PdV (6.5) このとき、エンタルピーHは次式で定義される。 H=U+PV (6.6) (6.6)式を全微分すると、 dH=dU+PdV+VdP (6.7) (6.7)式に(6.5)式を代入すると、 dH=TdS+VdP (6.8) ここでギブス(Gibbs)の自由エネルギーGは、H、T、Sを用いて次式で定義される。 G=H-TS (6.9) (6.9)式を全微分すると、 dG =dH-TdS-SdT (6.10)

    2

  • (6.8)、(6.10)式より、 dG = VdP -SdT (6.11) dG = VdP - SdT (6.12) 純物質(一成分系)の系について,気液両相が平衡状態で共存している状態を考える。ある圧力pおよび温度Tで平衡(equilibrium)状態であるためには気相と液相の全成分の化学ポテンシャルがそれぞれ等しくなっていなければならない。純物質系では、化学ポテンシャルは 1molあたりのギブス(Gibbs)の自由エネルギーGmに等しいので、気相、液相、それぞれのギブスの自由エネルギーGmV とGmL は等しく、GmV = GmLとなる。ここで、下付きのmは 1モル当たりの量を表す.次に圧力がdp,温度がdT変化して、再び気液両相が平衡になったとすれば、GmV + dGmV = GmL + dGmLとなり、次式となる。 dGmV = dGmL (6.13) また、式(1)を気液両相の 1molに対して適用すると、次の関係が得られる。 dGmV = VmV dp-SmV dT (6.14) dGmL = VmL dp-SmL dT (6.15) ここで、平衡の条件として、式(6.13)を適用すれば、上式より次式が導かれる。

    Lm

    Vm

    Lm

    Vm

    VVSS

    dTdp

    −−

    = (6.16)

    ここで、気相と液相のエントロピーの差SmV - SmLは、蒸発に伴うモルエントロピー変化ΔSv,mであり、モル蒸発潜熱ΔHv,mを用いてΔHv,m/Tと表せるので次式を得る。

    TH

    SSS m,VLmV

    mm,V

    ΔΔ =−= (6.17)

    式(6.16)および式(6.17)より次式を得る.

    )( LmV

    m

    m,V

    VVTH

    dTdp

    −=

    Δ (6.18)

    式(6.18)は、クラウジウスークラペイロン式と呼ばれている。圧力が高くなく,気相の体積が液相の体積より十分大きい(大気圧下では、気相の体積は液相の 1,000倍程度ある。)と見なせるとVmV≫VmLであり、理想気体とみなせるとすれば、理想気体の状態方程式(pVm=RT)により次式が得られる。

    3

  • RTp

    VVV V== L

    mL

    mm

    11−

    (6.19)

    式(6.19)を用いて式(6.18)を整理すると、次式が得られる。

    2m,V

    RTH

    pdTdp Δ

    = (6.20)

    狭い温度範囲では、ΔHv,mが一定とみなされるとすれば、ΔHv,mを定数として式(6.20)を積分することで、次式が導出される。

    TBAp −=°ln (6.21)

    ここで,Aは積分定数であり,B = ΔHv,m/Rである. 6.3 パラメータの決定方法 (6.2)式に示すアントワン式のパラメータ A, B, Cは各物質に対して固有の値であり、各物質の蒸気圧と温度の関係を良好に表現するように実験値から決定される。4章で示した Langmuir式のような 2つの未知の変数をもつモデルについては、最小二乗法により決定できることを示した。しかし、3 つのパラメータを有するアントワン式には、最小二乗法の適用は困難である。このように化学工学では、モ

    デル式中に含まれる変数を最適化の手法を用いることで、決定することが多い。最適化の手法について

    は、マルカート法、修正シンプレックス法、直接探索法など多くの手法がある。 ここでは、最小二乗法によるパラメータの決定方法を以下に示す。 [問題] 水、トルエン、エタノール、1-プロパノールの温度 T [℃]と蒸気圧 P [mmHg]のデータは以下のように与えられている。Clausius-Clapeyronから導かれる次式を用いて、各物質の Aおよび Bを最小二乗法により決定せよ。また、決定した Aおよび Bを用いて各物質の 50℃における蒸気圧を計算せよ。 蒸気圧式 lnP=A‐B/T

    4

  • 水 トルエン エタノール 1-プロパノール

    20 17.1893 21.6588 43.6367 14.4081

    30 31.3785 36.3915 77.8755 28.0876

    40 54.7542 58.7469 133.1703 51.7038

    50

    60 148.3944 138.1271 348.6829 151.5839

    70 232.2947 202.6172 537.8146 244.0960

    80 353.1642 289.7050 806.7594 379.5788

    T [℃]P [mmHg]

    解)温度T [℃]と蒸気圧P [mmHg]のデータをlnP [mmHg]と 1/T [K-1]のデータに変換する。

    水 トルエン エタノール 1-プロパノール

    0.003411 2.8448 3.0760 3.7766 2.6683

    0.003299 3.4467 3.5950 4.3559 3.3359

    0.003193 4.0036 4.0740 4.8925 3.9462

    0.003095

    0.003002 5.0008 4.9291 5.8552 5.0220

    0.002914 5.4490 5.3123 6.2886 5.4986

    0.002832 5.8680 5.6699 6.6942 5.9401

    1/T[K-1]lnP[mmHg]

    このデータをグラフにプロットすれば次のようなグラフが得られる。それぞれの物質について最小二乗

    法を用いて関係式を求めると次のようになる。

    2

    4

    6

    0.0028 0.003 0.0032 0.0034

    1/T [K-1]

    lnP [mmHg]

    トルエン

    エタノール

    1-プロパノール線形 (エタノール)

    水 y=-5214.6x+20.645 トルエン y=-4473.9x+18.35 エタノール y=-5032.8x+20.955

    5

  • 1-プロパノール y=-5641.2x+21.937 したがって定数 A,Bはそれぞれ次のようになる。

    水 トルエン エタノール 1-プロパノール

    定数A 20.645 18.35 20.955 21.937

    定数B -5214.6 -4473.9 -5032.8 -5641.2 これらの値を使用し、それぞれの物質について 50℃における蒸気圧を計算すると下の表のようになる。

    水 トルエン エタノール 1-プロパノール

    50 90.760 90.500 217.198 88.243

    T[℃]P[mmHg]

    http://www.pirika.com/chem/ChemEngE/antoine.htm Antoine定数を決定するオンライン計算 4.2.2 データのない物質に対する蒸気圧の推算 蒸気圧と温度の測定データから蒸気圧を相関する方法としては、前述のクラジウス・クラペイロン式

    やアントワン式が有名であるが、測定データのない系に対して蒸気圧を推算する方法としては、リーデ

    ル(Riedel)式やシック・シュティール(Thek-Stiel)式などがある。これらでは、その物質の臨界温度、臨界圧力、標準沸点や蒸発潜熱から蒸気圧を計算する。物質の構造式から臨界定数を求める方法は、

    6 章で説明するが,臨界定数がわかれば種々の物性値を推算でき、蒸気圧も推算できる.一例として、リーデル式を示す。 Riedel equation calculate vapor pressure as follow,

    Tc : Critical Temperature Pc : Critical Pressure Tbr : boiling Point / Critical Temperature Tr = measure Temperature / Critical Temperature リーデル式を用いたオンライン計算のサイトもある。 http://www.pirika.com/chem/ChemEngE/antoine.htm Antoine定数を決定するオンライン計算 5. 輸送物性 5.1 粘度 臨界定数を求める方法は、6 章で説明するが,臨界定数がわかれば種々の物性値を推算できる.ここでは,一例として気体の粘度の推算方法について述べる.粘度(viscosity)は,工業装置を作る場合に重要となる.粘度と温度の相関関係,実験値がない場合の粘度の推算法,粘度に及ぼす圧力の影響の推

    算法などを簡単に述べる.

    6

    http://www.pirika.com/chem/ChemEngE/antoine.htmhttp://www.pirika.com/chem/ChemEngE/antoine.htm

  • 気体の粘度は圧力の影響を大きく受ける.液体の粘度は温度の上昇に伴い急激に低下するが,低圧に

    おける気体の粘度は温度の上昇とともに増大する.気体分子運動論であるチャップマン・エンスコッグ

    (Chapman・Enskog)理論により,低圧における気体の粘度ηは次式により表わされる.

    v

    MTΩδ

    =η 269.26 (3.27)

    ここで,ηは気体の粘度[μP],σは分子の直径[Å],Mは気体の分子量,Tは絶対温度[K],Ωvは衝突積分であり,次式により求めることができる.

    *FTDTB* TE

    TC

    TA

    v ++=Ω (3.28)

    ∈=

    kTT * (3.29)

    C)0693.07915.0( Tk

    ω+=∈

    (3.30)

    式(3.30)において,ωは偏心因子であり,付表 6 に示される値を用いる.また,式(3.28)の A~F は定数であり以下のように表される. A=1.16145,B=0.14874,C=0.52487,D=0.77320,E=2.16178,F=2.43787

    以下に示す相関式に

    r ++−− TT ee (3.31)

    水素結合を有する極性気体でTr < 2の場合

    (3.32)

    水素結合のない極性気体でTr

    r (3.33)

    また,ξは次式で表される.

    気体の粘度には対応状態原理(臨界点からの隔たりより予測する.)が成立し,

    り,気体の粘度を推算できる. 無極性気体では,

    1.094.104.2610.4 rr 058.4449.0618.0 −=ηξ T

    4/5−−=ηξ ZT Cr )055.0775.0(

    < 2.5の場合

    3/25/4)29.090.1( −−=ηξ ZT C

    32

    C21

    6C

    PM

    T1

    ξ= (3.34)

    ここで,式(3.34)は対臨界状態原理によるレスツォウ・スティールの相関式である.また,ZCは臨界点

    3.10] エチレンの 101℃における粘度を求めよ.ただし,エチレンの臨界温度は 282.8K,臨界圧a

    ,PC=50.4atm,M=28.05なの

    における圧縮係数,ηは低圧における気体の粘度[μP],Trは対臨界温度T / TCである. [例題力は 5.11MP (50.4atm),臨界圧縮係数は 0.28,分子量は 28.05である. [解] エチレンの臨界温度,臨界圧力および分子量はそれぞれTC=282.8Kで,式(3.41)より定義因子ξを求める.

    7

  • 0355.0)4.50()05.28(

    )8.282(

    32

    21

    6

    32

    C21

    6C ===

    11

    ξ

    PM

    T

    エチレンは無極性気体なので,式(3.38)より粘度を求めることができる.

    323.18.282

    15.273101=

    +==

    Cr T

    TT

    ξ++−

    =η−− 1.094.104.2610.4 rr 058.4449.0618.0r

    TT eeT

    P7.1250355.0

    1.094.104.2323.1610.4 323.1058.4323.1449.0618.0 µ=++−×=×−×− ee

    気体粘度の推算においてさまざまな相関式が提案されているが,低圧における気体の粘度を分子構造

    (原子団寄与)より求める方法に,次式に示すライヘンベルク(Reichenberg)の方法がある.

    61

    rr

    r

    )]1(36.01[

    *

    −+=η

    TT

    Ta (3.35)

    ここで,a*はパラメータであり,次式より求められる.

    ∑=

    iCnTM

    aii

    C21

    * (3.36)

    Mは分子量,niは原子団Iの数,Ciは原子団について決められた加算値であり,それぞれの原子団の加算値を表 3-2に示す. 表 3-2 ライヘンベルクによる気体の粘度を推算するための原子団の加算値10)

    原子団 加算値Ci 原子団 加算値Ci-CH3 9.04 >C=(環状) 3.59

    >CH2(非環状) 6.47 -F 4.46 >CH-(非環状) 2.67 -Cl 10.06 >C<(非環状) -1.53 -Br 12.83 =CH2 7.68 -OH(アルコール) 7.96

    =CH-(非環状) 5.53 >O(非環状) 3.59 >CH=(非環状) 1.78 >C=O(非環状) 12.02

    ≡CH 7.41 -CHO(アルデヒド) 14.02 ≡C-(非環状) 5.24 -COOH(酸) 18.65 >CH2(環状) 6.91 -COO-(エステル)

    または HCOO(ギ酸化物)

    13.41

    >CH-(環状) 1.16 -NH2 9.71 >C<(環状) 0.23 >NH(非環状) 3.68

    8

  • =C-(環状) 5.90 =N-(環状) 4.97 -CN 18.13 >S(環状) 8.86

    [B. E. Poling, J. M. Prausnitz and J. P. O’Connell, The Properties of Gases and Liquids 5th edit., p.9.13, McGraw-Hill (2000)より引用] [例題 3.11] エチルメチルエーテルの 80℃での低圧における気体の粘度を求めよ.ただし,エチルメチルエーテルの分子量は 60.1,臨界温度は 437.8Kである. [解] エチルメチルエーテルの分子量は 60.1,臨界温度は 437.8Kなので,式(3.36)よりパラメータ a*を求める.

    5.11959.3147.6104.92

    8.437)1.60(*21

    ii

    C21

    =×+×+×

    ==∑

    iCnTM

    a (1)

    式(3.42)より,エチルメチルエーテルの気体の粘度を求める.

    807.08.437

    15.27380

    Cr =

    +==

    TTT (2)

    P37.97)]1807.0(807.036.01[

    807.05.119

    )]1(36.01[

    *

    61

    61

    rr

    r µ=−××+

    ×=

    −+=η

    TT

    Ta (3)

    5.1.2 液体の粘度 液体の粘度を推算する多くの方法が報告されているが、ここではそれらの推算法の中で一般的なもの

    を紹介する。しかし、これらは、大きな誤差がでる場合があるので、これらの推算法を用いる前に、実

    験データを考えてみることが重要である。 トーマス(Thomas)は、次式で示す経験式で、標準沸点以下の温度での液体の粘度を計算することを提案している。

    ⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛−=⎟

    ⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛× 11569.8log 2/1

    rL

    L

    ρη

    Lη [cP]は液体粘度、 Lρ [g/cm3]は液体密度、 [K]は対臨界温度であり、rT θは表 の値から計算され

    る定数である。 表 θを計算する構造加算因子

    [B. E. Poling, J. M. Prausnitz and J. P. O’Connell, The Properties of Gases and Liquids 5th edit., p.9.13, McGraw-Hill (2000)より引用]

    9

  • 例題 Thomasの方法により、60℃におけるクロロホルムの粘度を推算せよ。ただし、クロロホルムの臨界温度は、536.4Kであり、この温度における密度は、1.413g/cm3である。 [解] クロロホルムのこの温度での対臨界値は、

    621.04.536

    6015.273=

    +==

    cr T

    TT

    表よりθを計算すると、 807.0249.0340.03462.0 =+×+−=θ

    492.01621.01807.0

    413.1569.8log 2/1 =⎟⎠

    ⎞⎜⎝⎛ −=⎟

    ⎠⎞

    ⎜⎝⎛ × L

    η

    431.0=η cP (答) 431.0=η cP

    液体の粘度を推算する方法として、オリックとエルバール(Orrick-Erbar)が原子団寄与法により求める方法を提案しており、次式を用いる。

    θρη

    TBA

    MLL +=⎟⎟

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛ln

    ここで、 Lη [cP]は液体粘度、 Lρ [g/cm3]は液体密度、 [K]は対臨界温度であり、rT M は分子量である。

    この場合、定数 A,Bを次に示す表から原子団寄与法で決定する。 表 A,B決定のための Orrick-Erbarの原子団寄与の値

    10

  • [B. E. Poling, J. M. Prausnitz and J. P. O’Connell, The Properties of Gases and Liquids 5th edit., p.9.13, McGraw-Hill (2000)より引用] 5.2 拡散係数 溶質の濃度勾配に起因する拡散現象は、化学装置の設計・操作に利用される場合がある。その際、対

    象となる物質の拡散係数が物性値として必要となる。拡散現象は、次式で示されるフィック(Fick)の第一法則で表される。

    dxdnDJ =

    ここで、J、n、xがそれぞれ拡散流束、濃度、位置座標であり、Dが拡散係数である。 拡散係数Dは、気相と液相中で大きく異なるので、その相関方法、推算方法も気相、液相で異なる。 5.2.1 気相での拡散係数 低圧から常圧における2成分系気体混合物の拡散理論は確立されており、Boltzmann 式を解いたもので、チャップマン(Chapman)とエンスコッグ(Enskog)の理論と呼ばれている。

    DDABBA

    BAAB fnMM

    MMkTD

    Ω⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛ += 2

    2/112

    163

    πσπ

    ここで、 物質 A,B のそれぞれの分子量であり、n,k,T はそれぞれ混合気体中の分子の数密度、

    ボルツマン定数、絶対温度である。拡散に対する衝突積分

    BA MM ,

    DΩ は温度と衝突する2種類の分子の分子間

    11

  • ポテンシャルの関数であり、 ABσ は衝突する分子 A,Bの特性直径である。この理論をもとにして、広く

    利用されているのが、フェーラーーシェトラーーギディング(Fuller-Schettler-Giddings)の方法で、次式で示される。

    23/13/1

    2/175.13

    ])()[(

    10

    BA

    BA

    BA

    AB vvPMM

    MMTD

    ∑∑ +⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛ +

    =

    ここで、T[K]、P[atm]はそれぞれ絶対温度、圧力である。∑vをもとめるには次表に示す原子拡散体積を用いる。表中の値は多くの拡散係数の実験値を,回帰分析にて決定したものです。 表 Fuller-Schettler-Giddings式の原子拡散体積

    [B. E. Poling, J. M. Prausnitz and J. P. O’Connell, The Properties of Gases and Liquids 5th edit., p.9.13, McGraw-Hill (2000)より引用] 例題 Fuller-Schettler-Giddings式を用いて、25℃、0.101325MPaの空気中に拡散するプロパノール分

    子の拡散係数を求めよ。ただし、空気の∑vは 20.1、分子量は 28.8とする。

    [解]上に示す表より、プロパノール(C3H7OH)の∑vを算出する。

    )()(8)(3(C3H7OH)

    OHCv ++=∑ 48.598.185.163 +×+×= =70.8 プロパノールの分子量Mpは 60であるから、Fuller-Schettler-Giddings式にこれらの値を代入すると、

    23/13/1

    2/175.13

    ])()[(

    10

    BA

    BA

    BA

    AB vvPMM

    MMTD

    ∑∑ +⎟⎟⎠

    ⎞⎜⎜⎝

    ⎛ +

    =

    12

  • 23/13/1

    2/175.13

    ]1.208.70[18.28608.286029810

    ⎟⎠⎞

    ⎜⎝⎛

    ×+

    ×=

    ABD

    =4.84/46.9=0.103 cm2/s (答) 0.103 cm2/s 気体の拡散に対する圧力の影響 気体の拡散係数に対する圧力の影響は、低圧で密度が低い場合(ρr

  • 6.0

    2/18 )(104.7

    AB

    BAB V

    TMD

    ηφ−×=

    ここで は溶媒B中での溶質Aの無限希釈点での拡散係数,cm2/s 、MABD Bは、溶媒Bの分子量、 η

    B は溶媒の粘度でありTは絶対温度,Kである。VAは、標準沸点における溶質Aのモル体積,cm3/mol、 φは溶媒Bの会合度(無次元)である。 標準沸点における液体のモル体積 標準沸点における液体のモル体積は、Tyn-Calus の方法により、臨界体積がわかれば次式で計算できる。

    048.1285.0 cb VV =

    Vcが不明な場合は、シュローダー(Schroeder)やリーバス(Le Bas)の加算容積を用いるとよい。 表 標準沸点における液のモル体積を計算する 加算因子とその値

    [B. E. Poling, J. M. Prausnitz and J. P. O’Connell, The Properties of Gases and Liquids 5th edit., p.9.13, McGraw-Hill (2000)より引用] 例題 メタノール中を 30℃でアジピン酸が拡散する場合の拡散係数を推算せよ。メタノールの 30℃における粘度は、0.514cP、アジピン酸の標準沸点におけるモル体積は、173.8cm3/mol、メタノールの分

    14

  • 子量は 32.04である。メタノールの会合度(無次元)φは 1.5とする。(物性推算ハンドブックようり引用) [解]Wilke-Chang)の式を用いると、

    6.0

    2/18 )(104.7

    AB

    BAB V

    TMD

    ηφ−×=

    6.0

    2/18

    8.173514.02.303)04.325.1(104.7

    ×××

    ×= −

    =1.37×10-6cm2/s

    6 臨界定数

    臨界定数(臨界温度Tc,臨界圧力pc,臨界体積Vc)を知ることが重要である.また,この臨界定数から他の物性を計算することもできる.臨界定数は,化合物の分子式から,原子団寄与法・グループ寄与

    法の一種であるライダーセン(Lydersen)の方法(原子団寄与法)を用いることで次のように推算できる.

    ( )2B

    C567.0 ∑∑ ∆−∆+

    =TT

    TT [K] (3.4)

    ( )2C 34.0 ∑∆+=

    pMp [atm] (3.5)

    ∑∆+= vV 40C [cm3 ・mol-1] (3.6) ここで, TB,Mは,それぞれ標準沸点[K](その物質の蒸気圧が 760mmHgとなる温度),分子量[g・mol-1]であり,ΔT,Δp,ΔVは,それぞれ臨界温度,臨界圧力,臨界容積を求めるために各原子団について決められた加算因子を表す.また,表 3-1に各構造による加算因子ΔT,Δp,ΔVの値を示す. 表 3-1 ライダーセン法における臨界定数の加算因子 12)

    構造 ΔT △p △v -CH3 0.02 0.227 55 -CH2 0.02 0.227 55 -CH 0.012 0.21 51 -C- 0 0.21 41 =CH2 0.018 0.198 45 =CH- 0.018 0.198 45 =C- 0 0.198 36 =C= 0 0.198 36 ≡CH 0.005 0.153 36 ≡C- 0.005 0.153 36 -CH2- 0.013 0.184 44.5 -CH- 0.012 0.192 46 -C- -0.007 0.154 31

    15

  • =CH- 0.011 0.154 37 =C- 0.011 0.154 36

    F 0.018 0.224 18 Cl 0.017 0.32 49 Br 0.01 0.5 70 I 0.012 0.83 95

    -OH(アルコール) 0.082 0.06 18 -OH(フェノール) 0.031 -0.02 3 -O-(非環状) 0.021 0.16 20 -O-(環状) 0.014 0.12 8 -C=O(非環状) 0.04 0.29 60 -C=O(環状) 0.033 0.2 50

    HC=O(アルデヒド) 0.048 0.33 73 -COOH(酸) 0.085 0.4 80

    -COO-(エステル) 0.047 0.47 80 =O(上記以外) 0.02 0.12 11 -NH2 0.031 0.095 28

    -NH(非環状) 0.031 0.135 37 -NH(環状) 0.024 0.09 27 -N-(非環状) 0.014 0.17 42 -N-(環状) 0.007 0.13 32 -CN 0.06 0.36 80 -NO2 0.055 0.42 78 -SH 0.015 0.27 55

    -S-(非環状) 0.008 0.24 45 [R. C. Reid, J. M. Prausnitz and T. K. Sherwood, The Properties of Gases and Liquids 4th edit., McGraw-Hill (1977)より]

    [例題 3.3] ライダーセンの方法を用いて 1-ヘプタノールの臨界圧力Pc,臨界温度Tc,臨界体積Vcを求めよ. [解] 1-ヘプタノールの分子式,分子量および標準沸点は下記に示す. 分子式:CH3(CH2)6OH(分子量M = 116.20,標準沸点TB = 176.81℃) また,1-ヘプタノールのそれぞれの分子式についての加算因子を求めると,下記の表のようになる. 分子式 グループ数 ΔT Δp ΔV -CH3 1 0.02 0.227 55 -CH2 6 0.02 0.227 55 -OH 1 0.082 0.06 18 表より,1-ヘプタノールの分子式に基づいて,各加算因子の合計を求めると,次のようになる.

    ΣΔT = ( 0.02 × 1 ) + ( 0.02 × 6 ) + 0.082 × 1 = 0.222 ΣΔp = ( 0.227 × 1 ) + ( 0.227 × 6 ) + ( 0.06 × 1 ) = 1.649 ΣΔv = ( 55 × 1 ) + ( 55 × 6 ) + ( 18 ×1 ) = 403 TB = 176.81 + 273.15 = 449.96K

    16

  • したがって,1-ヘプタノールの臨界定数はそれぞれ次のように求められる.

    K608})222.0(222.0567.0{

    96.449)567.0( 22

    BC =−+

    =−+

    =TT

    TTΣΔΣΔ

    atm4.29))649.134.0((

    20.116))34.0(( 22C

    =+

    =+

    =P

    MPΣΔ

    Vc = 40 + ΣΔv = 40 + 403 = 443cm3・mol-1 問題 イソブチルアルコールおよびエタノールの臨界温度 Tc、臨界圧力 Pc、臨界容積 Vcを決定せよ。ただし、イソブチルアルコールの沸点は 108℃、分子量は 74.123である。 化学構造は次のようである。

    CH3

    CH-CH2-OH CH3

    解)TC=546.6 K、PC=44.5 atm、vC=274 cm3/mol また、エタノールの沸点は 78.325℃、分子量は 46.07である。化学構造は次のようである。

    CH3-CH2-OH TC=521.4 K、PC=63.2 atm、vC=168 cm3/mol インターネットによるオンライン計算を利用した臨界定数の推算 2.3 にて、インターネットを用いたオンライン計算を紹介しました。ここでは、6.臨界定数の例題で行った計算に対して、オンライン計算でも求めてみましょう。 http://www.pirika.com/chem/TCPEE/CriP/jobackCP.htm 臨界定数の計算サイト 「Critical Properties Estimation」は、臨界定数の推算の意味です。使用例を次に示します。 次のような画面が表示されます。 Please input functional group number and push calc button. If molecule contains ring, please select (R) fragment. 例題 3.3に示した 1-ヘプタノールの臨界圧力Pc,臨界温度Tc,臨界体積Vcをこのオンライン計算で求めてみましょう。 [解] 1-ヘプタノールの分子式,分子量および標準沸点は下記に示す. 分子式:CH3(CH2)6OH(分子量M = 116.20,標準沸点TB = 176.81℃) 1-ヘプタノールの分子式から、官能基のグループ数は、-CH3=1、-CH2=6、-OH=1であるので、 官能基のグループ数 1,6,1と沸点Tb=449.96K(画面ではBP)を入力画面に入力して、下の計算ボタン「Calc.」をクリックすると計算結果として、Tc,Pc,Vcの値が画面に表示されます。 この場合、Tc,=609.78333366 K、Pc,=30.932899117 bars、Vc =446.6cm3/mol となり、例題 3.3とほぼ一致していることがわかる。

    17

    http://www.pirika.com/chem/TCPEE/CriP/jobackCP.htm

  • 18

  • 付表 1 基本物理量の SI基本単位

    物理量 SI単位 記号 長さ メートル m 質量 キログラム kg 時間 秒 s 温度 ケルビン K 物質量 モル mol 電流 アンペア A 光度 カンデラ cd

    付表 2 SI誘導単位

    物理量 SI単位 SI単位記号 SI単位の定義 力 ニュートン N m kg s-2 圧力 パスカル Pa m-1 kg s-2 (=N m-2)

    エネルギー ジュール J m2 kg s-2 仕事率 ワット W m2 kg s-3 (=J s-1) 電気量 クーロン C A s 電位差 ボルト V m2 kg s-3 A-1 (=J A-1 s-1) 電気抵抗 オーム Ω m2 kg s-3 A-2 (=V A-1) 電導度 ジーメンス S m-2 kg s-1 A2 (=Ω-1) 電気容量 ファラット F m-2 kg s-1 A2 s4 (=A s V-1) 周波数 ヘルツ Hz s-1

    付表 3 SI単位の接頭語 接頭語 ピコ ナノ マイクロ ミリ センチ デシ キロ メガ ギガ 大きさ 10-12 10-9 10-6 10-3 10-2 10-1 103 106 109 記号 p n μ m c d k M G

    19

  • 付表 4 基本的数値・物理定数 定数 記号 数値

    円周率 π 3.141593 ファラデー定数 F 9.6485456×104 C mol-1 ボルツマン定数 K 1.38066×10-23 J K-1 気体定数 R 8.31441 J K-1 mol-1 8.2056 ×10-2 dm3 atm K-1 mol-1 1.98720 cal K-1 mol-1 アボガドロ数 L 6.02205×1023 mol-1 プランク数 H 6.62618×10-2 J s 重力加速度 G 9.80665 m s-1 光の速度 C 2.997925×108 m s-2 理想気体の標準モル体積 2.241383×10-2 m3 mol-1 付表 53) アントワン定数

    )(ln

    CTBAp+

    −= p [ kPa ],T [ K ]

    物質名 A B C 温度範囲[K] 水 16.56989 3984.923 -39.724 273.15~373.15 クロロフォルム 13.99869 2696.249 -46.918 263.15~333.15 n-ヘプタン 13.85871 2911.319 -56.510 270.15~400.15 メタノール 16.59214 3643.314 -33.424 288.15~357.15 エタノール 16.66404 3667.705 -46.966 293.15~366.15 n-プロパノール 17.27826 4117.068 -45.712 258.15~371.15 n-ブタノール 14.94047 3005.329 -99.723 362.15~399.15 シクロヘキサン 13.76108 2778.000 -50.014 280.15~354.15 ベンゼン 13.82650 2755.642 -53.989 281.15~353.15 トルエン 13.98998 3090.783 -53.963 246.15~384.15 p-キシレン 14.08130 3346.646 -57.840 300.15~389.15 アセトン 14.37284 2787.498 -43.486 260.15~328.15 Gmehling J.et al. DECHEMA Chemistry Data Series.Vol.1,Part1-8(1977-1984)より抜粋

    20

  • 付表 68) 主な物質の臨界定数 物質名(分子記号) 臨界圧力Pc

    [MPa] 臨界温度Tc

    [K] 臨界体積Vc[cm3/mol]

    偏心因子 ω

    一酸化炭素(CO) 3.491 132.91 93.5 0.049 二酸化炭素(CO2) 7.38 304.2 94.4 0.225 水(H2O) 22.12 647.30 57.11 0.344 二酸化窒素(NO2) 10.1 431 82 0.86 二酸化硫黄(SO2) 7.884 430.8 122 0.251 フッ化水素(HF) 6.48 461 69 0.372 塩化水素(HCl) 8.31 324.6 81 0.12 臭化水素(HBr) 8.55 363.2 110 0.063 ヨウ化水素(HI) 8.31 424.0 135 0.05 シアン化水素(HCN) 5.39 456.8 139 - 硫化水素(H2S) 8.94 373.2 98.5 0.100 アンモニア(NH3) 11.28 405.6 72.5 0.250 メタン(CH4) 4.595 190.55 98.9 0.008 エチレン(C2H4) 5.076 282.65 128.68 0.085 エタン(C2H6) 4.871 305.3 147 0.098 プロパン(C3H8) 4.250 369.82 203 0.152 ベンゼン(C6H6) 4.898 562.16 259 0.212 シクロヘキサン(C6H12) 4.07 553.4 308 0.443 トルエン(C6H5・CH3) 4.109 591.79 316 0.257 ナフタレン(C10H8) 4.11 748.4 408 0.302 メタノール(CH3OH) 8.10 512.58 118 0.559 エタノール(C2H5OH) 6.38 516.2 167 0.635 フェノール(C6H5OH) 6.13 694.2 264 0.440 アセトアルデヒド(CH3CHO) 5.54 461 168 0.303 アセトン((CH3)CO) 4.70 508.2 209 0.309 酢酸(CH3COOH) 5.79 594.45 171 0.454 酢酸メチル(CH3COOCH3) 4.69 506.8 228 0.324 酢酸エチル(CH3COOC2H5) 3.83 523.2 286 0.363 ジメチルエーテル(CH3)2O 5.37 400 190 0.192 ジエチルエーテル(C2H5)2O 3.638 466.70 280 0.281 アニリン(C6H5NH2) 5.31 699 279 0.382 四塩化炭素(CCl4) 4.56 556.4 276 0.194 R. C. Reid, J. M. Prausnitz and B. E. Poling, The Prope ties of Gases and Liquids, 4th edit., Appendix, McGraw – Hill (1987)より抜粋.

    r

    21

  • 表 4-1 気体の定圧モル熱容量 8) Cp,m = a1 + a2T + a3T2 + a4T3 ( Cp,m [JK‐1 mol‐1] , T [K] ) 物質 a1 a2×103 a3×105 a4×108 CO 30.87 ‐12.85 2.789 ‐1.272 CO2 19.80 73.44 ‐5.602 1.715 CS2 27.44 81.27 ‐7.666 2.673 Cl2 26.93 33.84 ‐3.869 1.547 F2 23.22 36.57 ‐3.613 1.204 H2 27.14 9.274 ‐1.381 0.7645 HCl 30.67 ‐7.201 1.246 ‐0.3898 HF 29.06 0.6611 ‐0.2032 0.2504 H2O 32.24 1.924 1.055 ‐0.3596 H2S 31.94 1.436 2.432 ‐1.176 I2 35.59 6.515 ‐0.6988 0.2834 N2 27.016 58.12 ‐0.289 - NH3 27.31 23.83 1.707 ‐1.185 NO 29.35 ‐0.9378 0.9747 ‐0.4187 NO2 24.23 48.36 ‐2.081 0.0293 O2 28.11 ‐0.003680 1.746 ‐1.065 SO2 23.85 66.99 ‐4.961 1.328 SO3 19.21 1374 ‐11.76 3.700 ギ酸 23.48 31.57 2.985 ‐2.300 ホルムアルデヒド 11.71 135.8 ‐8.411 2.017 メタン 19.25 52.13 1.197 ‐1.132 エチレン 3.806 156.6 ‐8.348 1.755 アセトアルデヒド 7.716 182.3 ‐10.07 2.380 酢酸 4.840 254.9 ‐17.53 4.949 エタン 5.409 178.1 ‐6.938 0.8713 エタノール 9.014 214.1 ‐8.390 0.1373 アセトン 6.301 260.6 ‐12.53 2.038 プロパン ‐4.224 306.3 ‐15.86 3.215 ベンゼン ‐33.92 473.9 ‐30.17 7.130 R. C. Reid, J. M. Prausnitz and B. E. Poling, The Prope ties of Gases and Liquids, 4th edit., Appendix, McGraw – Hill (1987)より抜粋.なおN

    r2(g)は日本化学会編、”化学便覧基礎編(改訂3版)”、

    p.II-239、丸善(1984)の値である.

    22

  • 表 4-2 チュー-スワンソンによる 293Kにおける液体熱容量の原子団加算因子 4) J mol-1 K-①

    原子団 加算値 飽和結合

    -CH3-CH2-

    | -CH-

    | -C-

    |

    36.8 30.4

    21.0

    7.36

    二重結合

    =CH2|

    = C-H |

    = C-

    21.8

    21.3

    15.9 三重結合

    -C≡H -C≡

    24.7 24.7

    環状結合 | -CH-

    | | -C = または-C-

    | -CH = -CH2-

    ハロゲン -Cl(1または 2番目の炭素に結合)

    -Cl(3または 4番目の炭素に結合)

    -Br

    18

    12

    22 26

    36

    25

    38

    原子団 加算値 -F -I

    含酸素結合 -O- > O =

    H |

    17 36

    35

    53.0

    -C = O O ∥ -C-OH

    O ∥ -C-O- -CH2OH

    | -CHOH

    | -CCOH

    | -OH -ONO2

    含窒素結合 H |

    H-N- H | -N- -N- -N=(環状) -C≡N

    53.0

    79.9

    60.7 73.2

    76.1

    111.3

    44.8 119.2

    58.6

    43.9 31 19 58.2

    原子団 加算値

    含硫黄結合 -SH -C-

    水素結合 H-(ギ酸、ギ酸エステル、シアン化水

    素など)

    44.8 33

    15

    R. C. Reid, J. M. Prausnitz and B. E. Poling, The Properties of Gases and Liquids, 4th edit., Appendix, McGraw – Hill (1987)より抜粋.

    23

  • 問題 1 アントワン式を用いて水の 50℃における蒸気圧を求めよ。アントワン式は、次式で与えられる。ただし、水のアントワン定数は、A = 16.56989、B = 3984.923、C = -39.724 とする。(1 atm=101.325 kPa)

    アントワンの式 )]K[(

    [kPa]lnCT

    BAp+

    −=°

    (解)

    510.2724.39)15.27350(

    923.398456989.16)]K[(

    [kPa]ln =−+

    −=+

    −=°CT

    BAp

    p0=12.31 kPa = 0.1215 atm 問題 2 以下の問について回答せよ。 2-1. 耐圧 2atm の圧力弁が設置されている圧力鍋に、水を入れた場合、その水が沸騰する温度を計算せよ。ただし,水のアントワン定数は A = 16.56989、B = 3984.923、C = -39.724とする。 2-2. 圧力鍋を用いると短時間に料理が出来る理由を物理化学的に説明せよ。 (解)

    )724.39(3984.92316.56989)1001325.10.2ln( 2−

    −=×T

    724.39)101.013250.2ln(56989.16

    923.3984ln 2

    +××−

    =−°−

    = CpA

    BT

    = 393.67 K = 120.5℃ 問題 3 図のような耐圧 4.00 atm(4.0×1.01325×102kPa)のガラス容器がある。この中にエタノールを封入した。今、この中の液体を何度まで加熱すると、ガラス容器が破損する可能性があるか。ただ

    し、この温度範囲におけるエタノールのアントワン定数は,A = 16.66404、B = 3667.705、 C = -46.966、 po[kPa]、 T[K]であるとする。 (解) エタノールのアントワン定数およびアントワン式を用いて蒸気圧が 4.00atm となる温度 T を求める.

    [ ])(

    lnCT

    BAkPap+

    −=°

    966.46)101.013250.4ln(66404.16

    705.3667ln 2

    +××−

    =−°−

    = CpA

    BT

    T = 391.05 K = 117.9 ℃

    24

    ABC