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1 20. Miscellaneous Treatments 様々な治療 Norine Foley MSc, Robert Teasell MD, Sanjit K. Bhogal MSc, Elizabeth Kruger, Ross Graham BA Key Points 経絡鍼療法が脳卒中後の上肢機能を改善させる可能性があり,アロマセラピーと指圧療法の組み合 わせが肩の疼痛を和らげる可能性があるといういくつかのエビデンスがあるが,従来の鍼治療が脳 卒中のアウトカムを改善するかどうかに関しては不確かである. 手当療法では脳卒中後の機能的なアウトカムは改善しない. マッサージ療法は疼痛知覚や不安を軽減させる. 漢方薬は慢性期の脳卒中に有益であるかもしれない. 高圧酸素療法は効果的な治療ではない. 経頭蓋磁気刺激(TMS)は短期間上肢機能を改善させ,疼痛を軽減させる. 運動皮質刺激は神経因性疼痛の患者の約 50%の疼痛を緩和する手助けとなる.

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20. Miscellaneous Treatments 様々な治療

Norine Foley MSc, Robert Teasell MD, Sanjit K. Bhogal MSc, Elizabeth Kruger, Ross Graham BA

Key Points

経絡鍼療法が脳卒中後の上肢機能を改善させる可能性があり,アロマセラピーと指圧療法の組み合

わせが肩の疼痛を和らげる可能性があるといういくつかのエビデンスがあるが,従来の鍼治療が脳

卒中のアウトカムを改善するかどうかに関しては不確かである.

手当療法では脳卒中後の機能的なアウトカムは改善しない.

マッサージ療法は疼痛知覚や不安を軽減させる.

漢方薬は慢性期の脳卒中に有益であるかもしれない.

高圧酸素療法は効果的な治療ではない.

経頭蓋磁気刺激(TMS)は短期間上肢機能を改善させ,疼痛を軽減させる.

運動皮質刺激は神経因性疼痛の患者の約 50%の疼痛を緩和する手助けとなる.

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Table of Contents

Key Points ....................................................................................................................................... 1

20.1 Complimentary and Alternative Medicine (CAM)................................................................. 3

20.2 Traditional Chinese Medicine (TCM) .................................................................................... 3

20.2.1 Acupuncture ......................................................................................................................................... 3

20.2.2 Meridian Acupressure .........................................................................................................................15

20.2.3 Traditional Chinese Herbal Medicine ................................................................................................. 16

20.2.4 Reiki Treatments ................................................................................................................................ 17

20.2.5 Massage Therapy ............................................................................................…………………….…..18

20.2.6 Cupping ............................................................................................................................................. 20

20.3 Hyperbaric Oxygen Therapy ............................................................................................... 20

20.4 Brain Stimulation ................................................................................................................. 22

20.4.1 Motor Cortex Stimulation (MCS) ........................................................................................................ 23

20.4.2 Non-invasive Brain Stimulation .......................................................................................................... 27

20.5 Summary................................................................................................................................ 36

References..................................................................................................................................... 37

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20. Miscellaneous Treatments 様々な治療

20.1 Complementary and Alternative Medicine (CAM) 補完・代替医療

補完・代替医療は一般的にはセラピストは養成校で教わらず,多くの病院で利用できない.しかしながら,こ

れらの利用は広まっている.報告では,最高で 40%のアメリカ人が健康問題に対してある種の補完医療を利

用していることが示されている(Astin ら 2000).国立補完代替医療センター(NCCAM)は補完代替医療を 5

つのカテゴリーもしくは領域や以下のものに分類した:ホメオパシーのような代替医療システム,心身医療,

薬草や食物やビタミンを用いた生物学に基づいた治療,カイロプラクティックもしくは整骨療法を含む方法,

マッサージやエネルギー療法(科学的には存在が証明されておらず噂によると人の体を取り囲み貫通するエネ

ルギー場に影響を与える治療).ある種のエネルギー療法は圧を加えたり,手を動かして身体を操作したりす

ることによって生体電場を操作する.例として気功や手当療法,タッチ療法などがある.

補完代替療法の多くのタイプは厳格に評価されておらず,有効性は疑問のままである.2774 人の様々な状態

の患者が含まれた“遠隔治療”のシステマティックレビューでは,多くの研究デザインの方法論的な制限によ

って明確な結論が出せないでいる一方で肯定的な治療効果があり,さらなる調査が必要であると結論付けてい

る.脳卒中から回復した患者の補完代替療法を具体的に評価している研究はごく僅かである.

20.2 Traditional Chinese Medicine (TCM) 伝統的な漢方

伝統的な漢方には鍼やマッサージ,漢方薬を含む様々な治療がある.いくつかの研究では伝統的な漢方の使用

を行っており,大抵は急性期脳卒中である.これらの研究の多くは中国語で書かれ中国の雑誌で発表されてい

る.RCT を含む最近のレビューでは,脳卒中後の運動回復における鍼治療と漢方の効果について確認された

34 の試験を調査した(Junhua ら 2009).著者らは筋力や FIM,BI という観点では改善がみられるといういく

らかのエビデンスがあるとしている一方で,試験は方法論的な質の欠如があり公表バイアスが高いと感じてい

る. ※原本(本文の順番がバラバラになっています)※

20.2.1 Acupuncture 鍼治療

鍼治療は伝統的な漢方医学 2000 年の歴史において主要な治療であるが,西洋諸国において脳卒中リハビリテ

ーションの補助的なものとして最近注目されている.中国人は鍼治療を時間効率がよくシンプルで安全で経済

的な治療の形として受け入れており,脳卒中後の運動機能や感覚機能,言語コミュニケーション,神経機能を

良くするために大々的に用いられている(Tang ら 2003,Linfield 2002).Rabinstein と Shulman(2003)に

よると,“鍼治療は様々な技術による皮膚上の明確な解剖学的位置の刺激を含み,金属針を用いた最も共通し

ている刺激は徒手的に操作するか電流を流している電極として用いるかである.”従来の概念は,生命エネル

ギーは全ての臓器を互いに連結しているチャネルを通じて流れるということである.病気は,生命エネルギー

の不均衡から生じると説明され,鍼治療はチャネル間の特定の部位を刺激することによって健全なエネルギー

を復活させるとみられている(Rabinstein と Shulman,2003).脳卒中患者にある程度効果があるかもしれな

い,考えられ得る様々な鍼治療のメカニズムがある(Park ら 2006).例として,鍼は神経伝達物質の開放を

刺激し(Han & Terenius,1982),脳の深層構造に影響を及ぼす可能性がある(Wu ら 2002).また,Lo ら(2005)

は,少なくとも 10 分以上続けた時の鍼治療は鍼刺激を除いた後でも皮質の興奮性や可塑性において長期にわ

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たる変化をもたらすことを証明した.正確なメカニズムは全て明確にされていない一方で,刺激されている局

部と,局部と離れた身体領域の両方に生物学的反応が起こる.脳卒中リハビリテーションに関して,鍼治療の

利点は疼痛緩和や片麻痺からの回復に関して最も頻繁に評価されてきた.いくつかの RCT やメタアナリシス

からのエビデンスにも関わらず,鍼治療の有効性は不明確なままである.

脳卒中リハビリテーションの補助療法として鍼治療の有効性を調査し,過去15年で公表されたレビューがいく

つかある(Ernst and White 1996,Naeser 1997,Parkら2001,Szeら2002a).含まれている試験の数は6~

14であった.それらの全ては,治療に関連した利益のエビデンスがある一方でこのレビューに含まれている

個々の研究は方法論的な質の問題があると結論付けている.Zhangら(2005)は脳卒中後の鍼治療に関して,

14の研究で合計1208人の患者を含むコクランのレビューを行った.偽鍼治療もしくはコントロール条件と比

較して,死亡率のオッズもしくは少なくとも3カ月後の依存,死亡率,施設ケアの必要性の減少にぎりぎりの

統計学的な有意差がみられた.フォローアップ期全体では死亡のオッズに有意な減少がみられなかった.著者

らは,有害なエビデンスは無いけれども脳卒中後急性期の鍼治療の利益は不明確であると結論付けた.

Sze ら(2002a)は脳卒中リハビリテーションの有無における鍼治療の有効性のメタアナリシスに 14 の RCT

を含めた.著者らは“臨床的に診断されており運動機能障害や能力障害の測定を含めた脳卒中発症後 6 ヶ月以

内の急性期脳卒中患者における鍼治療と鍼治療なし(もしくは偽鍼治療)を比較している RCT”の研究を含

めた.著者らは脳卒中リハビリテーションに関して,鍼治療は運動回復には付加的作用はないが能力障害に関

してはわずかに肯定的な効果があることを見出した.しかしながら,著者らは,報告されたメリットはプラセ

ボ効果もしくは研究の質の低さによるものであると言及した.以前のレビューと同様に,著者らは脳卒中リハ

ビリテーションなしの鍼治療の有効性は不明確であり主な理由は利用可能な研究の質の低さであると結論付

けた.

Wu ら(2006)はまた,鍼治療のコクランレビューを行ったが,焦点は亜急性期(1~3 カ月)と慢性期(3 カ

月以上)であった.このレビューには 5 つの RCT しか含まれておらず全て質が低いとみなされており,合計

の患者は 368 人であった.死亡率や自立もしくは施設介護が必要な割合,神経障害の変化,QOL もしくは副

作用に関する利用可能なデータはない.鍼治療は全体的な神経障害の改善と関係があるが,著者らは,概算の

信頼性を疑問視しており,鍼治療の臨床で用いることを推奨する前に大規模で方法論的に正確な RCT からの

追加的なエビデンスが必要であると結論付けた.

Wu ら(2010)は,35 の中国語で書かれた論文から 56 の RCT からの結果を盛り込んだ.肯定的な結果は全

体の 45%の研究で報告されていた.38 の試験のデータ(鍼治療による改善率)は利用可能であった.無作為

化や方式,コントロールの方法,研究の情報源の国,無作為化の報告はメタ回帰分析を用いる際の不均衡の潜

在情報源であることがわかった.Kim ら(2010)は反対側の鍼治療が同側の鍼治療よりも優れているかどうか

を明確にするためにシステマティックレビューを行った.このレビューには 8 つの RCT からの結果が含まれ

ており全て中国や韓国のものであった.因果関係を示すメカニズムは未だに示されていないが,世間一般の見

解は反対側のバージョンがよいということである.統合分析では,反対側の鍼治療は高い奏効率と関連してい

るが,ADL や運動機能,神経障害に関するメリットはない.

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Kong ら(2010)による最近に公開されたレビューは,偽条件や 2 つの中国語の論文を含む RCT に限定され

ている.レビューには従来の鍼治療もしくは電気鍼治療を評価した,たった 10 の RCT からの結果が含まれて

いる.ADL(Barthel Index)や全体的な神経障害(NIHSS や Scandinavian Stroke Scale)に関して統合分析

が行われた.著者らは,機能的な回復の治療として鍼治療の有益性のエビデンスはないことを示した.

現在のエビデンスに基づいた脳卒中患者の鍼治療のレビューでは多数の研究が確認された.このレビューに含

まれていない多くの RCT は英語で公表されておらず大抵は中国語であった.

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Discussion of Acupuncture in Stroke Rehabilitation 脳卒中リハビリテーションにおける鍼治療の考察

多数の RCT がレビューされた.それらの多くは運動回復や ADL,痙性に関する評価をしていた.また,調査

された治療対比非常に多様であった.

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Park ら(2005)によって書かれた研究は偽鍼治療を用いたほんのわずかな研究のひとつで,治療群に対して

効果的に評価者も患者もブラインドしている.この研究は Barthel Index のスコアにおける 2 点の違いを検出

する力を与えられており,有意な治療効果を見出すことはできなかった.この研究はたった 2 週間の実施期間

であった.長い治療時間は有効であるかもしれないことが考えられる.アウトカム測定の選択(BI)は僅かな

機能の改善に反応しないとして批判されている.Wayne ら(2005)はまた,従来の妥当な鍼治療の方法を用

い治療群のブラインドに成功した.評価可能例の原則に関して,鍼治療に賛成していくらかの統計学的に有意

な結果があるが,サンプルサイズが小さくあいまいな見解で ITT 分析では否定的な意味であり,Wayne ら

(2005)は良くない試験であると考えている.Naeser ら(1992)は偽治療のひとつの形として,対応した電

気刺激なしに鍼灸針を挿入し,脳卒中から起こる麻痺に関して有望な治療として鍼の有益な効果を報告した.

Moon ら(2003)の研究では,電気鍼療法とコントロール群を比較し,また,治癒を高めるためのヨモギの燃

焼や小さくスポンジのような薬草を含む伝統的な中国の医療技術である灸の利点を評価した.直接的なヨモギ

や小さくコーンの形をしたもぐさは経穴上に置かれ燃やされる.しかしながら,この治療は脳卒中に関連した

痙性の治療には効果的でないように思われる.

適切なコントロール治療の不足が鍼の効果をさらに混乱させている.すなわち,鍼自体が治療的な利益をもた

らしているのか,もしくはその治療的な利益が理学療法に対する付加的な利益としてあきらかにされているの

か? Gossman-Hedstrom ら(1998)や Johansson ら(2001)の研究は否定的な見解を示している一方で,

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Johansson ら(2001)の研究はコントロールとして閾下の TENS を用いた.重ねて,鍼に対するコントロー

ルとして適している治療の合意の不足が,閾下刺激や電極の配置が非特異的な反応を示す可能性があるとして

これらの結果の解釈を難しくしている.最近,Park ら(2005)はよりバイアスがかからない方法で鍼の効果

を評価する事を願う他者によって適用される偽鍼技術を開発した.偽鍼治療は非貫通性でとがっておらず肉眼

では見えない針の使用を含み,その針は挿入感をもたらす.この装置は治療効果に必要不可欠であると思われ

る de qi(ひびき)の感覚を引き出さないとみられている.

Park ら(2002)は単一調査で 2 つの別々の RCT を行った.研究の目的は鍼治療介入において適切なプラセボ

治療として用いられる偽治療の装置の正当化を立証することであった.偽鍼治療と比較して鍼治療のリハビリ

テーションの効果を調査した 1 つの研究では,偽鍼治療を受けていると考えられる患者は誰もいなかった.偽

針と比較して本当の鍼治療の針の特異的な感覚(ひびき)の違いを調査したもう 1 つの研究結果は,偽鍼治療

群と比較して鍼治療群の患者が de qi(ひびき)で経験した相対危険率は 15.38 であった.これらの結果は,

本当の鍼治療の針と比較して新しい偽装置を用いた手順は患者には区別できないことを示した.また,偽治療

の手順は“特異的な針の感覚(ひびき)が活動の代理的測定として扱われる場合,受け身的である”.

鍼の治療効果に関する明確な結論は現時点では出ていないが,文献では解決されるべきいくつかの問題が明ら

かにされている.第一に,鍼の治療による利益を効果的に評価するために信憑性のある偽治療が必要とされて

いる.また,文献から明らかにされているように,伝統的な中国の鍼(Sallstromら1996, Kjendahlら1997),

や電気鍼(Siら1998,Wongら1999,Johanssonら2001,Moonら2003,Mukherjeeら2007,Hsiehら2007)を含

めたいくつかの違った方法が用いられている.違う方法と意図している効果との区別は真剣に検討されるべき

である.3つめに,最も重症な患者が優れた改善を示したというHuら(1993)の研究から,均整のとれた被験

者集団を用いたり,最も鍼治療の効果がみられる可能性がある患者特性を評価したりすることが推奨される.

Schulerら(2005)はまた,この高齢脳卒中患者の研究において,治療の不十分なコンプライアンスや高い脱

落率を報告した.治療に対する共存性と不耐性が主な貢献者として言及した.

一般的に,より高い方法論的な質の研究の間では治療効果は全く報告されていない.

Conclusions Regarding Acupuncture 鍼に関する結論

鍼が痙性を減らし,ADLの自立度を高めるもしくは脳卒中後の運動機能を強化するという対立したエビデン

ス(Level 4)がある.

20.2.2 Meridian Acupressure 経絡指圧

経絡指圧は,指圧を身体の経穴に適用することによる治療の一様式である.経絡は陰か陽かのどちらかであり,

身体表面の流れの方向によって決まる.陽の経穴は指から顔にかけてもしくは顔から足にかけて走行している.

陰の経穴は足から胴にかけてもしくは胴から指先の内側にかけて走行している.理論上は,指圧は上肢の血流

を増加させ,機能を改善させる.世界の東部では臨床的に用いられているが,脳卒中後の回復への適用を調査

鍼が脳卒中のアウトカムを改善するかどうかは不明である.

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した研究はたった1つであった.

Conclusions Regarding Meridian Acupuncture 経絡指圧に関する結論

経絡指圧は脳卒中後の上肢機能や関節可動域を改善させるという中等度のエビデンス(Level 1b)がある.

20.2.3 Traditional Chinese Herbal Medicine 伝統的な中国の漢方薬

伝統的な中国の漢方薬は,安全性や有効性に関して実験に基づいたエビデンスが不足しているにも関わらず,

脳梗塞の治療を目的に過去30年にわたって中国でごく普通に使われている.従来の薬は脳浮腫を減らしたり,

脳血管を拡張させたり,血小板の凝集を抑制させたり,循環を改善させたり,梗塞の再灌流障害を改善するこ

とによって脳卒中の回復を促す手助けとなる可能性がある(Wuら,2002, Szeら,2005).

最近,Wuら(2007)は脳卒中後に伝統的な中国の漢方を用いた59の研究のエビデンスの強さを評価した.22

の薬のみがRCTもしくは比較研究によって評価された.最も一般的に評価された薬は,レンゲソウ,Mailuoning,

イチョウ,タンジン,Xuesetong,プエラリン,こしあぶらであった.伝統的な中国漢方の使用は死亡や依存

のオッズの改善と関連がないが,試験の方法論的な質が乏しいにもかかわらず治療後の神経学的障害の改善の

オッズの増加がみられる.3つのRCTのみが無作為化二重盲検プラセボ比較研究であることを明確に記載して

いた.

タンジンは最も幅広く用いられる伝統的な中国漢方のひとつである.タンジンは植物のサルビアに由来する.

Wuら(2007)によって書かれた最近更新されたコクランレビューでは,タンジンとプラセボもしくは脳梗塞

後のプラセボ対照を比較した6つのRCTを確認した.治療の2週間後,タンジンの複合物は有意な神経学的改善

と関連づけられた.死亡は報告されなかった.しかしながら,研究の質は悪く信頼できる治療効果の概算値を

提供するための患者が少なすぎる.このレビューの著者は,質の高い追加的なRCTを行うべきだと提言した.

脳卒中後の運動機能に関して中国の漢方薬を評価した2つのRCTが確認され,1つは脳卒中後1カ月以内で実施

され,もう一方は慢性期に実施された.

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当帰芍薬散は施設入所の小規模の高齢脳卒中患者(80歳以上)において機能障害と能力障害の悪化の予防と関

連づけられる.効果のメカニズムは,十分に解明されていない.効果は神経保護作用であると考えられており,

アセチルコリンやドーパミン,ノルエピネフリンを含む神経伝達物質の合成と開放を強化すると考えられてい

る.

ニューロエイドはまた,神経保護剤として作用すると考えられている.1カ月間の治療に関連した統計学的に

有意な改善はないが,重症患者や椎骨脳底動脈系の梗塞患者に対して有益な傾向がある.

Conclusions Regarding Chinese Herbal Medicine 中国漢方に関する結論

ひとつの質の良いRCTの結果から,中国漢方の当帰芍薬散は慢性期脳卒中の能力低下を防ぐ可能性があると

いう中等度のエビデンス(Level 1b)がある.

20.2.4 Reiki Treatments 霊気治療

霊気は1900年代初めに日本で始まったエナジーヒーリングの一様式である.霊気はエネルギー治療のひとつで

あると考えられている.気は施術者が治療領域の上に手をかざすもしくは直接手当をしたときに患者に移ると

考えられている.霊気によって利益をもたらすメカニズムは,気の存在は仮説的であることから科学的に証明

されていない(Borang 1997,Rand 1991).治療の間,患者の身体に流れるヒーリングエナジーの道となるよ

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うに施術者は自身の身体を受身的な役割にする(Shiflettら,2002).

Conclusions Regarding Reiki Treatment 霊気治療に関する結論

ひとつの質の良いRCTの結果から,霊気治療では脳卒中後の機能的なアウトカムは改善しないという中等度

のエビデンス(Level 1b)がある.

20.2.5 Massage Therapy マッサージ治療

マッサージは効果的な反応を獲得するために,筋肉や結合組織,腱,靱帯,関節,リンパ管を含む身体の軟部

組織に対して徒手的にもしくは機械的補助でシステム化された圧や張力,運動,振動の適用を実践することで

ある.治療のひとつとして,マッサージは怪我の治療や精精神的ストレスの緩和,疼痛管理,循環改善のため

に身体の一部分もしくは連続的に全身に適用できる.身体的,精神的な利益のために用いる場合にはマッサー

ジは“治療的マッサージ療法”もしくは“徒手療法”と呼ばれる.マッサージは代替看護介入の間で最も頻繁

に用いられ,脳卒中後の補助的な治療として用いられている(Holland and Pokorny 2001).マッサージ療法

の効果を検証したいくつかの研究がある.

霊気治療では脳卒中後の機能的アウトカムは改善しない.

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Discussion 考察

MokとWoo(2004)は高齢脳卒中患者の肩の疼痛や不安感に対するゆっくりとした動作の背部へのマッサージ

を評価したRCTを実施した.全ての参加者は疼痛緩和やリラクゼーション,よく眠れるなどを含めたマッサー

ジ介入による有益な効果を報告した.また,コントロール群と比較してマッサージ療法を受けた患者は血圧や

不安感のレベル,疼痛,心拍数が有意に低かった.ある研究(Foxら,2006)では,マルマ療法や脳卒中に特

化したマッサージ療法を受けた患者からの全体的な好意的な反応を報告した.また,少数の患者は疼痛を報告

したが,全ての患者はマッサージを再度受けたいと回答した.指圧療法とアロマセラピーの組み合わせは脳卒

中に関連した肩の疼痛を軽減させるのに効果的である.この組み合わせ治療は,疼痛知覚を変化させるように

思われるリラクゼーションを促進することによって効果がある.

Conclusions Regarding Massage Therapy マッサージ療法に関する結論

ひとつの公平な質のRCTの結果から,マッサージ療法は脳卒中後の疼痛や不安感のレベルを減らすという中

等度のエビデンス(Level 1b)がある.

指圧療法とアロマセラピーの組み合わせは脳卒中後の肩の疼痛を緩和させるという中等度のエビデンス

(Level 1b)がある.

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20.2.6 Cupping 吸い玉療法

吸い玉療法は局所の圧を真空にすることによってつくり出すためにガラスもしくはプラスチックのカップを

用いた方法である.カップの内側の真空はその領域に血を形作り,治療の手助けとなる.吸い玉は腰痛に最も

よく用いられる.吸い玉は湿式と乾式の2種類ある.乾式の吸い玉は皮膚をカップの中に引き込むことで真空

となる.湿式の吸い玉では,血がカップの中に流れ込むように皮膚は裂かれる.吸い玉はリンパ系が引き金と

なって血管をきれいにすることによって有害な毒素を排出すると考えられている.

5つの研究結果(3つのRCTと2つの研究)を含むシステマティックレビューは全て中国のものであり,脳卒中

リハビリテーションにおける吸い玉の使用を調査している(Leeら,2010).脳卒中後の疼痛のある肩や手の

浮腫,上肢の筋力,失語,しゃっくりの治療のために乾式と湿式の吸い玉が用いられた.RCTでのコントロー

ルの状況は鍼である.肩の疼痛の度合いや関節可動域,筋力低下に対しては治療の効果があるが,著者らは治

療の有効性を支持するにはエビデンスは不十分であると結論付けた.

20.3 Hyperbaric Oxygen Therapy 高圧酸素療法

高圧酸素療法は 1.0 以上の絶対気圧を用いた 100%の酸素の治療的な投与である(Bennett ら 2005).高圧酸

素療法は組織に増加した分圧を生じさせる.脳梗塞後で考えられるメリットは酸素運搬の増加や脳浮腫の減少,

脂質過酸化反応の低下,白血球活性化の抑制,血液脳関門の完全性の維持である(Rusyniak ら 2003).高圧

酸素療法は再灌流におけるさらなる損傷から虚血ペナンブラの領域を保護し,それらを正常に機能させるため

に刺激する可能性がある(Bennett ら 2005).しかしながら,高用量の酸素療法は有害である可能性がある.

有害事象には耳や静脈洞へのダメージ,酸素中毒,閉所恐怖症が含まれる(Carson ら 2005).この治療の様

式はまだ十分に研究されていない.

Bennettら(2005)によるコクランレビューでは,合計参加者106人の3つの小規模の研究が確認された

(Andersonら1991, Nighoghossianら1995,Rusyniakら2003).高圧酸素療法に関連した3ヶ月と6ヶ月にお

ける死亡の相対危険度は有意に低下していなかった.これは統合するための唯一の十分なデータのアウトカム

である.Singhal(2007)は,高圧酸素療法は副作用が有害な可能性があり有効な治療ではないというエビデ

ンスにもかかわらず,強い理論的基礎や更なる調査を正当化する動物研究の好意的な結果があることを示した.

彼は,方法論的な欠点や小さいサンプルサイズに言及し,高圧酸素療法が効果的であると証明されない考えら

れる理由として初期治療を遅らせた.

Carson ら(2005)は脳卒中患者の治療における高圧酸素療法のリスクと効果を調査するためにメタアナリシ

スを実施した.彼らは合計 218 人の患者に加えて追加的な 17 の観察研究を含む 4 つの RCT とひとつの比較

研究をレビューした.脳卒中患者における高圧酸素療法は効果的でないというエビデンスを示した.結果が偏

見や混乱を招く可能性があるにも関わらず,20~83%の選ばれた脳卒中患者が高圧酸素療法後に改善を示した

と観察研究で報告された.また,9 つの観察研究では副作用や合併症が報告された。研究では“あらゆる脳卒

マッサージ療法は脳卒中後の疼痛や不安感のレベルを軽減させる.

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中患者の下位集団における高圧酸素療法の有効性を決定するには全体的なエビデンスは不十分である”と結論

付けた.

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Conclusions Regarding Hyperbaric Oxygen Therapy 高圧酸素療法に関する結論

高圧酸素療法は神経学的状態を改善しないという強いエビデンス(Level 1a)がある.

20.4 Brain Stimulation 脳刺激

脳刺激は上肢の運動回復を改善したり慢性期脳卒中の疼痛を緩和したりする手段として段々と研究されてい

る.侵襲的な方法と非侵襲的な方法が利用できる.

高圧酸素療法は効果的な治療ではない.

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20.4.1 Motor Cortex Stimulation (MCS) 運動皮質刺激

Tsubokawa ら(1991)が,運動皮質刺激が疼痛抑制に関連していると思われる筋収縮を引き起こすのに十分

であることを発見したことから,運動皮質刺激は脳卒中を含む様々な要因による慢性視床痛を治療するために

用いられる.神経因性疼痛で苦しんでいる脳卒中患者はリハビリテーションへの参加が困難になる(Cioni と

Meglio,2007).脳卒中後の疼痛もしくは視床痛は,中枢神経系において脊髄視床路をより高いレベルで通過

する,侵害受容のニューロンがある領域内の損傷によって引き起こされる(Katayama ら 1998).これらの患

者は,他の全ての薬物治療に失敗しており,しばしばオピオイドや NSAID に耐性を示す.fMRI は神経因性疼

痛の理解や特異的局在性を高めたが,薬物治療は疼痛緩和に関してわずかな改善しか示していない(Lazorthes

ら,2007).この外科的処置には患者の疼痛や筋力低下に関連した特定の運動皮質領域への電極の配置を含む.

刺激の程度と長さをコントロールする制御装置もまた同側の鎖骨下と胸廓の領域に埋め込まれる(Huang ら

2008).神経因性疼痛に影響を及ぼす運動皮質刺激の直接的なメカニズムは十分に理解されていないが,視床

や脳幹,大脳皮質の血流増加と関連があると考えられている.

どの患者が最も治療効果が出そうか予測するのは困難である.バルビツール酸系催眠薬の感度やオピオイドの

感受性のなさは,好意的な結果の考えられる指標として提案されてきた.どの患者が治療に応答するかを認識

するために非侵襲的な経頭蓋磁気刺激に対する反応が用いられる.重度の運動障害はおそらく禁忌である.

欧州神経学会(2007)は,慢性痛の治療における運動皮質刺激の効果には Level C のエビデンスがあることを

示し,運動皮質刺激は薬の副作用が少ない脳卒中後の中枢性の痛みや中枢性・末梢性の顔面神経痛の患者にお

いて 50~60%の人に有効であることを提示した.

システマティックレビューにおいて Lima と Frengi(2008)は慢性痛の治療のための反復経頭蓋磁気刺激を用

いた侵襲的・非侵襲的脳刺激の有効性を調査した.22 の侵襲的な研究において好意的な反応を示したのは平

均で 64%であり,11 の非侵襲的な研究の平均(40%)よりも高かった.このことは侵襲的な硬膜外の運動皮

質刺激はより効果的であることを示唆している.フォローアップ期において侵襲的な治療群の反応は 54.6%に

低下した.

いくつかの非比較研究や僅かな RCT は神経因性疼痛の治療のための運動皮質刺激の効果を検証している.

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一貫して,運動皮質刺激は顔面神経痛の緩和において最も好意的な結果を示している(Racsheら2006,Lazorth

ら 2007,Cioni と Meglio 2007).幻肢痛を含む神経因性上肢痛は運動皮質刺激による治療で平均して良くない

結果となっている(Lazorthes ら 2007,Levy ら 2008).脳卒中後の慢性痛の管理に関する運動皮質刺激の効

果を検証した RCT はなく,それゆえ,運動皮質刺激の効果のエビデンスは小規模の非比較研究や不均衡な参

加者による研究からなっている.十分な疼痛の軽減はおよそ 50%の患者で達成でき,時間が経てば効果は徐々

に縮小し最初の約半分になる.この侵襲的な手順に対して最も適している対象を確認するのは難しいままであ

る.何人かの著者は重度の運動麻痺の患者治療を避けるべきであると提案している.

電極や運動皮質刺激のために埋め込まれている制御装置の安全性は一般に意見がまとまってきている(Cioni

と Meglio 2007).不定期に起こる感染(Brown ら 2006,Rasche ら 2006)もしくは手術後の発病(Levy ら

2008)は機器の使用もしくは刺激とは無関係である.Rasche ら(2006)による長期間の単一研究では,運動

皮質刺激の有効性を調査した.全体的に,三叉神経の神経因性疼痛の患者は脳卒中後の疼痛患者よりも治療成

績が良かった(50%と 43%).この成功率は刺激耐性現象もしくは運動皮質再組織化によって説明される

(Lazorthes ら 2006).全ての著者らは,運動皮質刺激に関する最も確実なデータを確立するために前向きの

多施設無作為化二重盲検研究が必要であると述べている(Lazorthes ら 2006,Cioni と Meglio 2006,Levy ら

2008).

Conclusions Regarding Motor Cortex Stimulation 運動皮質刺激に関する結論

運動皮質刺激は脳卒中後 10 年までの間脳卒中後の中枢性の疼痛を軽減させるという限られたエビデンス

(Level 2)がある.

運動皮質刺激は脳卒中後の上肢機能を改善させるという中等度のエビデンス(Level 1b)がある.

運動皮質刺激は約 50%の脳卒中患者の神経因性疼痛を緩和する.

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20.4.2 Non-invasive Brain Stimulation 非侵襲的脳刺激

前節では脳卒中後の中枢性の疼痛を緩和するために外科的に埋め込んだ装置を用いた運動皮質刺激の効果を

レビューした.皮質の刺激はまた,運動機能の回復のために,単一もしくは反復の経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直

流電気刺激を用いて非侵襲的に実施可能である.

経頭蓋磁気刺激は脳卒中後の神経リハビリテーションにとって今までにない方法である.経頭蓋磁気刺激は単

一パルスや対のパルスもしくは反復刺激によって伝達される.反復経頭蓋磁気刺激は刺激時間以上に効果が持

続する.経頭蓋磁気刺激が運動皮質に対して一連の刺激の一様式として適用された場合,刺激のパラメータ次

第では脳の標的とする領域の促通もしくは抑制が可能である.低刺激のパラメーター(1Hz もしくはそれ以下)

は非損傷半球の興奮性を抑制させるために適用される一方で,高周波数の刺激(10~20Hz)は損傷半球の興

奮性を高めるために適用される.

一連の過程は無痛で非侵襲的であり,頭皮や頭蓋を通じて集中的な電気刺激を促通するために手で操作できる

磁石を必要とする.経頭蓋磁気刺激はまだ十分にわかっていないメカニズムを通じて皮質の興奮性の持続的な

増加をもたらす.非損傷半球の活動抑制は理論的にいえば最終的に運動機能の改善につながる損傷半球の活動

性の低下に至る(Frengi ら 2006).経頭蓋磁気刺激は,埋め込んだ装置を持続的に用いた運動皮質刺激によっ

て効果があるかもしれない患者を確認するために用いられている.

システマティックレビューでは,Lima と Frengi(2008)は慢性痛の治療のための反復経頭蓋磁気刺激を用い

た侵襲的・非侵襲的脳刺激の有効性を調査した.反復経頭蓋磁気刺激を用いた非侵襲的治療を評価した 11 の

研究において,積極的な治療群の中で応答した患者の数は偽治療群での数と比較して有意に多かった.

もう一方の非侵襲的な電気刺激の様式は経頭蓋直流電気刺激である.この手順は刺激したい領域と,反対の眼

窩より上の前頭部分の頭皮に用いた生理的食塩水で濡らされた 2 つの電極の表面を通じて軽度の電流の適用

を必要とする.陽極の刺激は皮質の興奮性を増加させる一方で陰極の刺激は皮質の興奮性を低下させる

(Alonso-Alonso ら 2007).経頭蓋磁気刺激とは対照的に,経頭蓋直流電気刺激は活動電位を生じさせないが,

代わりに休息しているニューロンの膜電位を調整する(Alonso-Alonso ら 2007).患者に偽治療ではなく本当

の治療であると感じさせる体性感覚の変化を引き出さないことから経頭蓋磁気刺激とは違って経頭蓋直流電

気刺激は良い研究対象である.

上肢機能の改善や慢性痛の緩和を目的とした,経頭蓋磁気刺激を用いた単一の治療や複合的な治療の効果を調

査した小規模の研究がある.反復経頭蓋磁気刺激は経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直流電気刺激と比較して高価であ

ると評価された.

運動回復や慢性痛に関する非侵襲的電気刺激の全ての様式の効果を評価した全ての研究結果は Table 20. 21に

示した.

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21 の RCT によって経頭蓋磁気刺激や反復経頭蓋磁気刺激,経頭蓋直流電気刺激を用いた非侵襲的脳刺激の有

効性が評価された.それらのうち 4 つは慢性痛に対する反復経頭蓋磁気刺激の効果を検証した.4 つのうち 3

つの研究は同じ著者のグループによって公開された.これらの研究全ては単一治療後において短期間の疼痛の

有意な改善を報告している.

残りの研究では,14 の研究は上肢機能の改善に関する脳刺激の効果を検証している.その研究の多くは,規

模は小さいながらも様々なアウトカムを用いて評価された治療効果を報告している.治療期間は短く,大抵 2

週間程度である.4 つの研究では急性期の脳卒中患者を対象とした(Khedr ら 2005,Pomeroy ら 2007,Chang

ら 2011,Hesse ら 2011).Pomeroy らの研究結果は,4 つの研究グループの使用や推測統計学の不足を考え

ると解釈が困難である.残りの研究は慢性期の脳卒中患者への介入を評価した研究である.研究規模の小ささ

やフォローアップの短さがあるものの,その研究の多くは上肢機能の改善を報告した.1 つの研究(Malcolm

ら 2007)は CI 療法と組み合わせた時に治療効果を示すことができなかった.

3 つの研究は下肢に関する反復経頭蓋磁気刺激の使用を調査した.Jayaram と Stinear (2009)は,全ての 3 つ

の神経調節の過程が歩行中の同側の一次運動野の有意な興奮性の増加をテストしたと報告した.治療は最大膝

伸展筋力の増加と関連がみられた(Tanaka ら 2011)が,Fugl-Meyer を用いた評価では活動性に改善はみられ

なかった(Chang ら 2010).

Conclusions Regarding Non-Invasive Brain Stimulation 非侵襲的脳刺激に関する結論

反復経頭蓋磁気刺激によって慢性期脳卒中患者の上肢機能が短期的に改善するという強いエビデンス(Level

1a)がある.

反復経頭蓋磁気刺激は脳卒中後の慢性痛を緩和するもしくはモビリティを改善するという対立したエビデン

ス(Level 4)がある.

経頭蓋磁気刺激は脳卒中後の上肢機能を一時的に改善させたり慢性痛を軽減させたりする.

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20.5 Summary 要約

1. 鍼が痙性を減らし,ADLの自立度を高めるもしくは脳卒中後の運動機能を強化するという対立したエビデ

ンス(Level 4)がある.

2. 経絡指圧は脳卒中後の上肢機能や関節可動域を改善させるという中等度のエビデンス(Level 1b)がある.

3. 指圧療法やアロマセラピーは片麻痺の肩の疼痛を軽減させるという中等度のエビデンス(Level 1b)があ

る.

4. 霊気治療では脳卒中後の機能的なアウトカムは改善しないという中等度のエビデンス(Level 1b)がある.

5. 当帰芍薬散は慢性期脳卒中の能力低下を防ぐ可能性があるという中等度のエビデンス(Level 1b)がある.

6. ひとつの公平な質のRCTの結果から,マッサージ療法は脳卒中後の疼痛や不安感のレベルを減らすという

中等度のエビデンス(Level 1b)がある.

7. 高圧酸素療法は神経学的状態を改善しないという強いエビデンス(Level 1a)がある.

8. 反復経頭蓋磁気刺激によって慢性期脳卒中患者の上肢機能が短期的に改善するという強いエビデンス

(Level 1a)がある.

9. 反復経頭蓋磁気刺激は脳卒中後の慢性痛を緩和するという対立したエビデンス(Level 4)がある.

10. 運動皮質刺激は脳卒中後の中枢性の疼痛するもしくはモビリティを改善するという対立したエビデンス

(Level 4)がある.

運動皮質刺激は脳卒中後 10 年までの間脳卒中後の中枢性の疼痛を軽減させるという限られたエビデンス

(Level 2)がある.

11. 運動皮質刺激は脳卒中後の上肢機能を改善させるという中等度のエビデンス(Level 1b)がある.

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