2002 年(ドラフト)...2002年(ドラフト) 3...

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2002 年(ドラフト) 1 池間誠・大山道広編著 『国際日本経済論:依存自立をめざして』、文眞堂 「直接投資と企業内貿易 慶應義塾大学経済学部教授 木村 福成 はじめに 企業内貿易(intrafirm trade)は国際貿易研究の大きな盲点の1つである。世界 全体の貿易のおおよそ3分の1は企業内貿易と言われている。それが通常の企 業間貿易(arm’s-length trade)とはさまざまな異なった性格を有しているとすれ ば、当然、国際貿易論の中で大きな研究課題の1つとして取り上げるべきであ ろう。しかし、理論・実証を問わず、企業内貿易に正面から取り組んだ研究は 極めて限られている 1 企業内貿易の研究には多くの障害が横たわっている。理論に関して言えば、 そもそも直接投資と貿易との関係が十分に整理されていないだけでなく、立地 に分析の重点を置く貿易理論に企業という切り口をどのように導入するかにつ いても十分な研究蓄積が見られない。実証研究については、統計データの不足 が致命的である。通常の貿易データは商品ごとの通関記録に基づいて作成され ているため、それを企業内貿易と企業間貿易とに分離することは不可能である。 企業内貿易を把握するには企業レベルのセンサスやサーベイに頼ることになる。 しかし、かりに企業内貿易が別記されていたとしても、いったい何が貿易され ているのか、どこに立地する海外子会社と取引をしているのか、といった情報 はほとんど得られない。 本章の第2-4表で使用した個票データベースは、経済産業省経済産業政策局 調査統計部との協力の下で作成されたものである。しかし、本章の主張は著者 自身のものであることを付記しておく。また、データ加工に関し、清田耕造氏 の助力を得た。ここに謝意を表したい。 1 企業内貿易に関する数少ない先行研究としては Greenaway (1987)Bonturi and Fukasaku (1993)OECD (1993)Zeile (1997)Fukasaku and Kimura (2001)などが 挙げられる。

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2002年(ドラフト)

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池間誠・大山道広編著 『国際日本経済論:依存自立をめざして』、文眞堂

「直接投資と企業内貿易∗」

慶應義塾大学経済学部教授 木村 福成

はじめに

企業内貿易(intrafirm trade)は国際貿易研究の大きな盲点の1つである。世界全体の貿易のおおよそ3分の1は企業内貿易と言われている。それが通常の企

業間貿易(arm’s-length trade)とはさまざまな異なった性格を有しているとすれば、当然、国際貿易論の中で大きな研究課題の1つとして取り上げるべきであ

ろう。しかし、理論・実証を問わず、企業内貿易に正面から取り組んだ研究は

極めて限られている1。 企業内貿易の研究には多くの障害が横たわっている。理論に関して言えば、

そもそも直接投資と貿易との関係が十分に整理されていないだけでなく、立地

に分析の重点を置く貿易理論に企業という切り口をどのように導入するかにつ

いても十分な研究蓄積が見られない。実証研究については、統計データの不足

が致命的である。通常の貿易データは商品ごとの通関記録に基づいて作成され

ているため、それを企業内貿易と企業間貿易とに分離することは不可能である。

企業内貿易を把握するには企業レベルのセンサスやサーベイに頼ることになる。

しかし、かりに企業内貿易が別記されていたとしても、いったい何が貿易され

ているのか、どこに立地する海外子会社と取引をしているのか、といった情報

はほとんど得られない。

∗ 本章の第2-4表で使用した個票データベースは、経済産業省経済産業政策局調査統計部との協力の下で作成されたものである。しかし、本章の主張は著者

自身のものであることを付記しておく。また、データ加工に関し、清田耕造氏

の助力を得た。ここに謝意を表したい。 1 企業内貿易に関する数少ない先行研究としては Greenaway (1987)、Bonturi and Fukasaku (1993)、OECD (1993)、Zeile (1997)、Fukasaku and Kimura (2001)などが挙げられる。

Page 2: 2002 年(ドラフト)...2002年(ドラフト) 3 のと予想される。しかし同時に、グローバリゼーションはさまざまな形態の国 際間取引の費用を軽減させるので、企業間貿易の量も増加する。したがって、

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このように困難な状況下にある企業内貿易研究であるが、それでもわずかず

つ、関連する理論・実証研究が蓄積されつつある。本章では、近年の研究の進

捗を紹介しながら、企業内貿易をどのような枠組みで分析すればよいのかにつ

いて、議論していく。

第1節 研究課題の所在

まず、近年急速にグローバル化が進展する世界経済の状況を踏まえながら、

企業内貿易をめぐる理論・実証研究上の課題について簡単にまとめておこう。 1990 年代後半以降、経済活動のグローバル化はさらに加速しており、国境をまたいで活動拠点を展開する多国籍企業の存在はますます大きなものとなって

きている。UNCTAD (2000)によれば、1990年代末、約 63,500の多国籍企業が総計 690,000の海外子会社を有し、企業グループ全体として世界 GNP のおおよそ4分の1の付加価値を生み出している。1999 年の時点で、海外子会社のみの生み出す付加価値は 300億ドル(世界全体の GDPの約 10%)、輸出額は 320億ドル(世界の全輸出額の約 46%)に達しており、総就業者数も 4,000 万人にのぼるものとされている2。この種の推計にはさまざまな統計上の問題が存在するの

で注意する必要があるが、世界貿易の過半が多国籍企業の関与するものである

ことはほぼ間違いない。 しかし、多国籍企業が関与する貿易の比率が高まっているからと言って、そ

れに伴って企業内貿易の比率も上昇しているかどうかはわからない。企業内貿

易とは、異なる国に立地する親会社と子会社の間、あるいは子会社と子会社の

間の貿易をさす3。企業活動がグローバル化すれば、企業内貿易の量も増えるも

2 主要 OECD諸国経済における外資系企業の比重については Fukasaku and Kimura (2001, Table 1)、東アジア諸国経済については木村(2001、表 2-1)を参照してほしい。 3正確に言うと、海外事業所は「企業内」であるが、海外子会社は資本関係を伴

うが独立企業である。したがって、ここで言う「企業内貿易」は「企業グルー

プ内貿易」と呼んだ方が本当は正しい。しかしここでは、通例にしたがって、

上のように定義する。なお、OEM輸出その他も含めて広義の企業内貿易を定義することもある(たとえば岩田(1991)参照)が、ここでは狭義の定義を採用する。

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のと予想される。しかし同時に、グローバリゼーションはさまざまな形態の国

際間取引の費用を軽減させるので、企業間貿易の量も増加する。したがって、

世界貿易に占める企業内貿易の比率が本当に上昇しているかどうかは、実証的

に検証すべき問題である。 また、そもそもどのような企業が何を企業内で貿易しているのか、というご

く基本的な点についても、我々はほとんど知識を有していない。どのような企

業が直接投資を行うかについてはこれまでにさまざまな実証研究が行われてき

ており、その成果はたとえば OLI理論の枠組みで整理されている4。しかし、直

接投資によって海外子会社を設立してもそれが貿易を増加させるとは限らず、

またかりに貿易が生じたとしてもそれが企業内貿易という形をとる必然性もな

い。先行研究によって、企業内貿易の比率は産業によってかなり異なっている

ことがわかっている。しかし、それがどのような産業の性格に基づいて生じて

きているのか、企業レベルの性格の違いがどのように影響するのかについては、

実証研究もほとんど行われていない。 これらの実証的課題については、統計上の制約が強くかかっているとは言え、

まだまだ研究の余地がありそうである。まずは、企業内貿易に関する現状把握

が求められる。さらに理論の分野においても、国際貿易理論と企業の内部化理

論との融合が必要である。 企業内貿易が有する政策的含意についても、十分な議論が尽くされていない。

企業内貿易に係わる政策論と言うと、すぐに節税のための移転価格(トランス

ファー・プライシング)の問題が取り沙汰される。しかし、企業活動の国際化

が進んで企業活動全体の把握がさらに難しくなってくると、課税以外のさまざ

まな経済政策上の問題点が発生してくる可能性がある。また、企業間貿易では

なく企業内貿易が選択される背景には、国際取引にかかわる各国の政策環境が

係わっている可能性もある。 以上のような問題意識を踏まえ、次節ではまず、直接投資と企業組織に関す

る経済理論を提示し、その枠組みの中で企業内貿易をどのように取り扱ってい

くべきかについて議論する。第3節では、アメリカと日本の統計データを用い

て、企業内貿易に関する実証研究の一端を紹介する。第4節では、企業内貿易

をめぐる政策論の枠組みにつき、試論を展開する。

4 OLI理論については Dunning (1993, pp. 81-)参照。

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第2節 直接投資と企業組織

企業内貿易とは、親会社と海外子会社の間、もしくは異なる国に立地する子

会社間の貿易である。したがって、企業内貿易が起こるためには、まず直接投

資によって海外子会社が設立されなければならない。さらに、海外子会社が設

立されたからと言って、必ず企業内貿易が起こるとは限らない。直接投資と言

っても、製造プラントを丸ごと海外に移転するような貿易代替的直接投資の場

合には、企業内貿易の起こる余地はない。 したがって、企業内貿易の内容を直接把握する統計データは存在しないけれ

ども、基本的には企業内の垂直的工程間分業の結果生じてくるものと考えても

よいであろう。具体的には、企業内貿易とは、親会社と海外子会社との間で上

流と下流の生産を行っていて中間加工品を企業内で貿易するもの、あるいはど

ちらかで最終製品まで加工し終えたものを他国の卸売・小売拠点へと企業内で

貿易するものと考えられる。自動車産業や化学産業などにおいて差別化された

製品を双方向に企業内貿易を行うことも考えられるが、それも製品ごとに考え

れば一種の垂直的工程間分業と解釈できる。 そう考えると、企業内貿易を産業内貿易の一形態であるかのように議論する

ことも多いが、概念上は全く異なる次元で整理すべきである。産業内貿易は国

と国の間の貿易パターンに関する概念で、同一商品分類に属する商品が双方向

に貿易されている点に着目する。それに対し、企業内貿易という概念は、貿易

の当事者である企業同士が資本関係で結ばれているかどうかに注目するもので、

貿易が双方向に行われている必要はない。したがって、ある種の企業内貿易は

産業内貿易の一部を構成しうるけれども、基本的には全く別の概念として取り

扱うべきである。 さて、企業内貿易を企業グループ内での垂直的工程間分業と解釈するならば、

どのような理論枠組みの下で分析していけばよいだろうか。ここでは、R. W. ジョーンズや A. V. ディアドルフらが提唱するフラグメンテーション(fragmentation)理論を援用して、議論の整理を試みる5。 フラグメンテーションとは、「ある同一の最終生産物を生産するプロセスを、

5 フラグメンテーション理論については Jones and Kierzkowski (1990)、Deardorff (1998)、Kimura (2000)などを参照してほしい。

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複数のステップに分割して、異なる場所に立地させること」(Deardorff (1998))と定義されている。現実経済との符合を考える際には、「同一の最終生産物」と

いう部分はそれほど厳密に解釈する必要はなく、むしろ企業が自らの中に内部

化した上流から下流にかけてのアクティヴィティを考え、それを分散立地させ

る状況を想定すればよいだろう(第2-1図参照)。親会社と海外子会社、また

は海外子会社同士が両方とも製造業に属している場合、あるいはどちらかが卸

売・小売業に属している場合など、さまざまな垂直的工程間分業を含むものと

考えよう。

第2-1図挿入

フラグメンテーションが起こる場合に鍵となるのが「サービス・リンク(service link)」コストである。分割する各生産ブロック(production block)にはそれぞれに適する立地条件が存在するが、生産ブロックをつなぐサービス・リンクのコ

ストが十分低くなければ、分散立地しても全体として採算が合わなくなってし

まう。このサービス・リンク・コストには、輸送費、通信費、さらにはコーデ

ィネーションに要するさまざまなコストなども含まれる。企業内貿易もサービ

ス・リンクの一形態と解釈できる。サービス・リンクは生産規模にかかわらず

かかってくる固定費用的な性格を色濃く持っていることから、フラグメンテー

ションが起きるかどうかは第2-2図のような図を用いて表すことができる。

グローバリゼーションの1つの重要な顕現形態は、このサービス・リンク・コ

ストの低下である。グローバリゼーションはフラグメンテーションが可能な経

済環境をより多くの場面で作り出す。

第2-2図挿入

フラグメンテーション理論は、主として生産立地を分析課題とする伝統的な

国際貿易理論の中で展開されている。そのため、分散立地する生産ブロックが

誰によって経営されているのかについては、それほど関心を示さない傾向があ

る。暗黙のうちに企業内でのフラグメンテーションを想定している場合もある

が、企業間フラグメンテーションを明示的に排除しているわけではない。我々

が企業内貿易の理論を考えていくためには、もう1つ、企業という切り口を加

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え、企業内のフラグメンテーションとそうでないものとを区別して考えていく

必要がある。 企業がどのようなアクティヴィティを自らの中に取り込むかについては、か

ねてから産業組織論の中の垂直統合と取引費用の理論として研究が進められて

きた。その延長線上では、部品調達を内部化するのか、スポット市場で不特定

の企業から調達するのか、それとも下請、委託生産、外注、あるいは OEM(original equipment manufacturing)や EMS(electronics manufacturing service)などの中間的な契約形態を介在させるのかといった、企業の境界(boundary)と企業間関係についての分析も行われてきた6。企業内貿易の文脈に引き寄せて考えれば、企

業内フラグメンテーションの場合と企業間(arm’s-length)フラグメンテーションの場合とで何が異なってくるのかが問題となる。これは技術や業態によって

さまざまな違いがあるだろうが、全体的な傾向としては、企業内の方が企業間

に比べ取引費用が小さい、ということになるのだろう。第2-2図の文脈で解

釈すれば、固定費が相対的に小さく、変動費が大きいのが企業内フラグメンテ

ーションであると考えられる。 製造業アクティヴィティの立地について近年特に注目を浴びているのが、集

積(agglomeration)の利益の存在である。集積にもさまざまなパターンが存在するが、特に東アジアに形成されつつある産業集積では、電気・電子産業を中心

とする部品メーカーの集積が目を引く7。そこでは、日系をはじめとする下流部

門のセットメーカーを中心に部品のサプライヤー(協力会社と呼ばれることも

ある)が集積を形成しており、それらの間で特に非汎用品が委託生産や外注そ

の他の中間的契約形態も用いながら取引されている。近接して立地するメリッ

トの1つは、サプライヤーとセットメーカーとの間で密接なコーディネーショ

ンが可能な点にある。多国籍企業化したサプライヤーは、本国の親会社との物

理的距離は広がっても、クライアントとの顔をつき合わせたコミュニケーショ

ンの方を重視する。これも、コーディネーション・コストを削減するための1

つの工夫と解釈できる。グローバリゼーションは、分散と集中の双方を加速す

るのである。

6 特に下請けと中小企業に関する理論的分析については Kimura (2001)を参照してほしい。 7 東アジアにおける産業集積の形成については日本機械輸出組合(2000)を参照してほしい。

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東アジアに生産ネットワークを展開する日本の電気・電子製造企業は、企業

内のフラグメンテーションによって自らのアクティヴィティの配置を最適化す

るとともに、重要な協力会社にはともに集積を形成するよう促し、同時に汎用

品についてはインターネット取引なども利用しながらもっとも安いものを世界

中から調達するようになってきている。現代的な企業内貿易は、グローバリゼ

ーションによるサービス・リンク・コストの低下を背景に形成された国際的生

産ネットワークの中で生み出されるのである。

第3節 アメリカ・日本の企業内貿易

企業内貿易に関する情報を得るためには、把捉率の高い企業レベルのセンサ

スもしくはサーベイが必要であり、そのような統計データを集計している国の

数は極めて限られている。ここではアメリカと日本のデータを用いて、企業内

貿易の現状を見ていくことにする8。 アメリカ商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis, U.S. Department of

Commerce)は 1977年以来、アメリカ企業の海外子会社およびアメリカ国内の外資系企業の活動(ともに非銀行部門のみ)について、ほぼ5年に1度の頻度で

詳細にわたる全数調査を行っている。さらに間の4年について、調査対象を絞

り込んだサーベイを行っており、それをもとに全数についての推計値を発表し

ている。この経済分析局のデータは、対外・対内直接投資企業に関するものと

しては、把捉率や質問項目などの点で、世界で最も信頼のおける統計である。

企業内貿易の長期的趨勢を見るには、このデータに当たるしかない。 第2-1表はアメリカの財貨輸出・輸入に占める企業内貿易の比率を 1977年から5年おきに求めたものである。表中、海外子会社とはアメリカ企業が株式

の 10%以上を保有している海外法人、外資系企業とは外国企業が株式の 10%以上を保有しているアメリカ法人と定義している。ここでは、アメリカの親会社

と海外子会社との間の貿易、海外の親会社と外資系企業との間の貿易のみが記

載されており、海外子会社相互の貿易は含まれていない。

第2-1表挿入 8 以下の分析は主として Fukasaku and Kimura (2001)による。

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20 年間の企業内輸出比率、企業内輸入比率は、それぞれ 35%前後、40%前後とほぼ安定している。アメリカの多国籍企業が関与する輸出の比率は 1970年代から 80年代にかけて低下し、非多国籍企業の輸出市場への参画が進んだ。多国籍企業は海外展開を進めることによって企業内輸出も増やしていったが、それ

以上の速度で企業間貿易が拡大したのである。一方、輸入に関しては、1980 年代半ばまでの 10 年間、アメリカの多国籍企業の輸入が相対的に減少する一方、海外企業のアメリカ進出が進んで、企業内輸入の増加をもたらした。過去 20年間、内外の多国籍企業の生産・流通ネットワークの発展による企業内貿易比率

の押し上げ分と、企業間貿易の発展による同比率の下落分とが、ほぼ釣り合っ

てきたことがわかる。ここから世界全体の企業内貿易の趨勢を想像するのはや

や冒険であるが、グローバリゼーションは多国籍企業の活動の活発化によって

企業内貿易の増加をもたらす一方、企業間貿易に伴う取引費用も低下させて貿

易総量をそれ以上に増加させているものと解釈できる。また、産業別に見ると、

1990 年代のアメリカでは機械・輸送機械が企業内輸出・輸入の7割以上を占めるようになってきている。 次に、日本のデータを見てみよう。日系海外子会社と日本国内の外資系企業

に関しては、以前から通商産業省(現・経済産業省)が『海外投資統計総覧』、

『我が国企業の海外事業活動』、および『外資系企業の動向』という統計を発表

しており、そこに企業内貿易の数字も若干含まれている。しかし、これらは承

認統計であることから回答率が低く、しかも年々のサンプルが安定しないため、

特に企業内貿易に関しては十分に信頼に足る情報源とは言えない。 1990 年代にはいり通商産業省は、企業活動基本調査という企業レベルの悉皆調査を開始した。この調査は、日本国内に立地している企業の事業活動の実態

を把握する目的で行われているもので、特に国際化、情報化に対応した事業所、

国内・海外子会社の保有状況など、企業組織に関する情報を収集している。指

定統計であることから回答率が高く、サンプルが安定しているのも利点に1つ

である。ただし、対象企業は製造業、卸売・小売業等を営む事業所を保有する

ものに限られ、しかも常用雇用者数 50 人以上でかつ資本金 3000 万円以上のもののみをカバーしていることに注意しなければならない。 企業活動基本調査は日本国内に本拠を置く企業につき、国内・海外向け売上

高と仕入高を報告しており、さらにそれらのうち「関係会社」、すなわち資本金

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または出資金の 20%以上を保有している会社との取引を別記している9。この関

係会社との取引を企業内取引と解釈するならば、企業ごとに国内・海外向け企

業内売上・仕入比率を計算できる。なお、残念ながら、どこに立地する子会社

と取引をしているのか、あるいは何が取引されているのかといった情報は、こ

の統計からは得られない。 第2-2表は、1994 年度の公表データに基づき、産業別の売上と仕入の取引相手別比率を示したものである。企業内取引の大部分は国内の関係会社との取

引(全売上の 18.5%、全仕入の 22.8%)であり、海外関係会社との取引は全売上のわずか 2.6%、全仕入の 2.3%に過ぎない。しかし、産業ごとの相違はかなり大きく、企業内貿易も産業によっては無視し得ない大きさとなっている。企業内

輸出の過半(57.8%)は、一般機械、電気機械、輸送用機械、精密機械といった機械産業に属する企業によるものである。

第2-2表挿入

第2-3表は、国内、海外相手の企業内売上・仕入比率を示している。一般

に、国内の企業内取引比率よりも海外との企業内取引比率の方が高い傾向があ

る。これは、取引先に関する情報量、契約形態、紛争解決、そしてそれらから

生ずる不確実性などをめぐって、海外の企業間取引が国内のそれよりも多くの

コストを伴っていることを示している。企業内貿易はコストのかかる方法であ

るが、それを補って余りあるだけの垂直的分業のメリットがあり、また同時に、

企業間貿易はリスクやコーディネーション・コストの点で高くついてしまうケ

ースも確かに存在するのである。

第2-3表挿入

直接投資と研究開発集約度との間には強い正の相関があることが知られてい

9関係会社は、資本金または出資金の 50%以上の保有により定義される「子会社」と、20%以上 50%未満の「関連会社」の双方を含んでいる。1企業の売上高・仕入高は、その企業の保有する全事業所(少数であるが存在する海外事業所も

含む)の売上高・仕入高の合計である。しかし、国内・海外子会社や関連会社

のそれは含まない。

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る10。企業固有の高い技術を持った企業は、海外市場に進出する際、企業内に技

術をとどめた形で業務を展開しようとする。これが直接投資を行う主要な動機

の1つとなっているのである。それでは、企業内貿易も研究開発集約度と正の

相関を有しているのであろうか11。 第2-4表は、企業活動基本調査の個票データに基づき、企業内輸出比率と

企業内輸入比率を従属変数として、回帰分析を行った結果である。特に注目し

たいのは、製造業企業をサンプルとする回帰結果において、企業内輸出比率が

研究開発集約度(研究開発費・売上高比率)と負の相関を示している点である。

さらにサンプルを産業ごとに分けて回帰してみると、これは特に電気機械産業、

とりわけ通信機械産業、電子計算機産業に属する企業に顕著な傾向で、他産業

では正の相関を示す場合も多いことがわかる。負の相関を示す産業は特に競争

環境が厳しいことで知られており、企業は広範な内部化を試みるよりはむしろ

業務内容を絞り込んで競争力を高めようとする傾向が強い。また、グローバリ

ゼーションの中で、企業間貿易に伴うサービス・リンク・コストが他産業以上

に低下している可能性もある。いずれにせよ、企業内貿易と研究開発の間の関

係は、それほど単純なものではないことは確かである。

第2-4表挿入

以上の結果は 1994年度の日本企業のデータに基づくものであり、安易に一般化して論ずることは避けるべきであろう。しかし、企業内貿易を考えるために

は、垂直的国際分業ネットワークを構築するインセンティブの分析とともに、

企業内と企業間の取引の相違を慎重に検討すべきであることが、ここで確認さ

れた。

第4節 企業内貿易をめぐる政策論

10 たとえば Dunning (1993, p. 149)を参照のこと。 11 アメリカ企業その他についての過去の実証研究では、研究開発集約度と企業内貿易との間に正の相関を見出しているものもある。Dunning (1993, pp. 408-410)、Caves (1996, p. 33)参照。

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企業内貿易をめぐる政策論についても、これまで包括的な議論はほとんどな

されてきていない。以下では、3つの問題について論点を整理しておきたい。

第1は移転価格と国際課税の問題、第2は多国籍企業の活動をいかに把握する

かをめぐっての問題、第3は費用のかかる企業内貿易という手段を選択せざる

を得ないような政策環境に係わる問題である。 第1に、企業内貿易をめぐる政策論として古くから衆目を集めてきたのが移

転価格の問題である。移転価格とは、「多国籍企業が世界全体の税負担を最小化

するために、所得を関連子会社に移転する際に用いる手段」(岩田(1997、168ページ))である。たとえば、2国の間で利潤に課税される法人税率が異なって

いる時、企業内で貿易される中間財の価格を操作すれば、両国における利潤を

調整して合計課税額を軽減することが可能となる。1980年代後半から 90年代前半にかけ、移転価格問題は日米貿易摩擦の1つの焦点となった12。 多国籍企業の海外展開にともなう税制上の諸問題は、国際課税制度の枠組み

で取り扱われてきた13。国際課税制度の目的は、国際的二重課税の排除と国家間

の課税権の配分にある。日本の税制を例にとれば、属地主義に基づき内国法人

(国内に本店または主たる事務所を有する法人)のみならず外国法人にも納税

義務を課しつつ、外国税額控除制度(1953年導入、その後数回(最近年は 1992年)にわたる見直しを経て現在に至る)、移転価格税制(1986 年)、過小資本税制(1992 年)、タックス・ヘイブン税制(1978 年)が設けられている。そのうち移転価格税制では、海外の関連会社が立地する国との間の協議を踏まえ、通

常の取引価格(独立企業間価格と呼ばれる)を用いた算定方式に基づいて課税

を行うことを定めている。 その後、移転価格問題はやや沈静化している。その背景には、アメリカにお

ける移転価格税制の改定、経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development: OECD)による移転価格ガイドラインの作成などがあった14。また、1980 年代、90 年代を通じて二国間租税条約(double taxation treaties: DTTs)が数多くの二国間で締結されたことも、国際課税問題の安定化に

12 詳しくは岩田(1991、1997)、中里(1995)を参照されたい。 13 以下は財務省ウェブページ(http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou)による。 14 詳しくは OECDのウェブページ(http://www.oecd.org/daf/fa/tr price)を参照のこと。

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貢献した15。二国間投資協定(bilateral investment treaties: BITs)が主として投資の保護を目的とするのに対し、DTTsは投資によって生み出される税収を二国間で適切に分配することを目的とする。そこでは多くの場合、移転価格を調整す

るための企業間原則(arm’s-length principle)が規定されている。UNCTAD(2000, Chapter I)によれば、1999年末の時点で、世界には 1,982の DTTsが存在する。日本は、1955 年に締結された日米租税条約を皮切りに租税条約のネットワークを構築し始め、現在では多数の発展途上国を含む 55カ国(45条約)と締結している。 しかし、企業内貿易に関連する全ての国際課税問題が解決したわけではない。

今後サービス貿易の重要性が高まり、また関連会社間の技術貿易などが重視さ

れるようになってくれば、モノの貿易の際に用いた独立企業間価格概念の適用

が難しくなってくることも予想される。また、電子商取引の拡大も、さまざま

な問題を引き起こす可能性がある。 第2に、企業内貿易に限らず、そもそも国境をまたいで展開される多国籍企

業の活動全体が十分把握できない状態になっていることも大きな問題である。

このことは、課税にとどまらず、さまざまな政策論上の問題を惹起しうる。1

つの問題は、企業パフォーマンスのディスクロージャーが不十分となって、資

本市場に適切な競争原理が働かなくなる可能性が生ずることである。海外子会

社との間の経理操作により、たとえば負債隠しを行うことなども可能である。

不十分な情報開示しか行われていないことは、株式・資本市場の攪乱要因とな

りうる。もう1つの問題は、さらに進んで、国際収支の管理などのマクロ経済

政策を考える上でも、経済の実態を適切に把握できなくなってしまう可能性が

あることである。たとえば、韓国がアジア通貨危機に巻き込まれることになっ

た重要な要因の1つは、財閥の海外子会社による大量の外貨建て借入が十分に

把握されていなかったことにあった。海外市場との統合が進むにつれ、外貨の

総量管理でさえ容易なことではなくなってきているのである。 特に企業パフォーマンスのディスクロージャーに関しては、世界規模で連結

企業会計の導入が進められつつある。民間団体である国際会計基準委員会

( International Accounting Standards Committee: IASC)は国際会計基準(International Accounting Standards: IAS)の作成に当たっており、連結財務諸表は IAS27として IAS の中心的概念となっている。日本でも、現在進行中の会計 15 UNCTAD (1998, pp. 74-87)は DTTsについてやや詳しい解説を加えている。

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ビッグバンの目玉の1つとして、連結財務諸表制度が導入された。これは上場・

店頭登録企業を対象とするもので、国内および海外を問わず、議決権割合 50%超の子会社および議決権割合 50%以下でも企業経営に重要な影響を与える企業を連結し、財務諸表を作成することとしている16。これにより、少なくとも海外

に事業を展開している大企業に関しては、企業パフォーマンスのより正確な把

握が可能となるものと期待されている。 ただし、財務諸表のみでは、親会社と海外子会社に振り分けられているアク

ティヴィティや相互の取引内容などについてはほとんどわからない。さまざま

な政策ニーズに対応するためには、究極的には各国の事業所・企業統計を充実

させ、国際協力によってそれらの統計を接続することが求められる。 第3に、企業内貿易が選択される政策環境そのものの議論も重要である。企

業内貿易は、そもそも海外子会社が設立されなければ起こり得ないという意味

で、経済のグローバル化が進んで初めて選択される取引方法である。しかし一

方で、先に示した第2-3表に見るように、一般に国内の企業内取引比率より

も海外との企業内取引比率の方が高い。これは、海外との企業間取引には国内

とは異なる何らかの困難が存在していて、それがゆえにコストのかかる企業内

貿易という方法が選択されていることを示唆している。そこには政策環境が介

在している場合もあるだろう。たとえば、知的財産権の保護が不十分である場

合、取引相手となりうる企業を探し出すコストが高い場合、契約履行を保証す

るコストあるいは紛争解決のコストが高い場合などには、やむなく企業内貿易

という手段に頼らざるを得ないこともあるものと考えられる。 繰り返しになるが、経済のグローバル化の重要な帰結の1つは、地理的に離

れた経済主体間のサービス・リンク・コストが減少することにある。政策によ

る障害が取り除かれていくと、多様な取引方法が選択されるようになり、企業

の内部化パターンも効率を追求した形になってくるはずである。政策的介入が

比較的少なく競争環境が整っている電気電子産業などでは、ワンセット型で広

範な製品を扱う企業よりも、むしろアクティヴィティを絞り込んで生産性を上

げる企業が増えている。取引形態の多様化を許容し、またそのための経済制度

の整備を進めることが、グローバリゼーションの果実を享受するための不可欠

16 詳しくは金融庁ウェブページ(http://www.fsa.go.jp/p mof/singikai/kaikei/top.htm)、財務省ウェブページ(http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou)を参照のこと。

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な要件となってきているのである。そのような観点から、グローバリゼーショ

ンに対応した政策環境が実現しているかどうかを見直していくことも必要なの

であろう。

むすび

本章では、企業内貿易を分析する上での枠組みについて、理論、実証研究、

政策論の3面から試論を展開した。現在の世界経済における企業内貿易の重要

度は極めて高いにもかかわらず、どの角度から見ても企業内貿易をめぐる研究

は大きく遅れている。関係統計データの未整備が障害となっているのは事実で

あるが、国際経済学者は実社会から託された使命をしっかりと自覚し、さらに

研究を進めていく必要がある。

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2002年(ドラフト)

15

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16

第2-1図 フラグメンテーションの例

フラグメンテーション前

上流 下流

フラグメンテーション後

PB:生産ブロック SL:サービスリンク

PB

PB

PB

PB

PB

SL SL

SL

SL

SL

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第2-2図 フラグメンテーションと生産費用:例

注:①フラグメンテーションなし。 ②企業内フラグメンテーション。 ③企業間フラグメンテーション・ 下向きの矢印はグローバリゼーションの進展による さーびす・リンク・コストの低下を表す。

0

総生産費用

生産量

① ②

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18

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U@' 25,278 100.0% 77.4% 11.7% 8.3% 2.6% 100.0% 77.1% 14.1% 6.5% 2.3%

V'WXY' 13,784 100.0% 69.6% 18.5% 7.9% 4.0% 100.0% 70.2% 22.8% 5.3% 1.7%

50 V' 53 100.0% 83.4% 16.2% 0.4% 0.0% 100.0% 76.6% 22.4% 1.0% 0.0%

120 Z[\XY' 1,325 100.0% 82.9% 16.8% 0.2% 0.1% 100.0% 75.3% 19.3% 2.1% 3.3%

130 ][:^_`:a[XY' 222 100.0% 93.5% 6.3% 0.1% 0.0% 100.0% 84.4% 11.8% 2.5% 1.2%

140 bcd' 480 100.0% 84.9% 13.7% 1.2% 0.1% 100.0% 79.8% 16.1% 3.7% 0.4%

150 ef:gGhGbcX\XY' 556 100.0% 85.3% 14.3% 0.2% 0.2% 100.0% 84.3% 10.9% 3.4% 1.4%

160 ij:iX\XY'.klmno4 172 100.0% 78.5% 21.2% 0.1% 0.3% 100.0% 67.0% 25.0% 7.2% 0.8%

170 kl:pq\XY' 206 100.0% 86.8% 12.6% 0.4% 0.2% 100.0% 85.7% 12.5% 1.4% 0.4%

180 rDC:s:std\XY' 452 100.0% 82.6% 16.2% 1.1% 0.0% 100.0% 75.8% 21.4% 2.1% 0.8%

190 uv:wx:yz{@' 722 100.0% 91.5% 7.8% 0.5% 0.2% 100.0% 90.0% 9.7% 0.2% 0.1%

200 |}d' 942 100.0% 75.4% 17.7% 5.2% 1.7% 100.0% 74.2% 18.6% 4.5% 2.8%

210 ~�X\:~�X\XY' 59 100.0% 79.8% 17.2% 3.0% 0.1% 100.0% 28.6% 10.1% 52.3% 9.0%

220 C�����X\XY' 639 100.0% 84.7% 13.5% 1.4% 0.5% 100.0% 84.9% 13.9% 0.9% 0.3%

230 ��X\XY' 151 100.0% 56.9% 31.4% 6.7% 5.0% 100.0% 74.3% 17.8% 5.7% 2.2%

240 ����:yX\:��XY' 52 100.0% 77.1% 20.9% 1.7% 0.2% 100.0% 75.2% 18.6% 4.7% 1.4%

250 �':�~X\XY' 647 100.0% 83.9% 13.1% 2.3% 0.7% 100.0% 84.0% 14.3% 1.2% 0.5%

260 ��' 421 100.0% 76.1% 20.0% 3.2% 0.7% 100.0% 65.7% 29.3% 4.9% 0.1%

270 ����XY' 336 100.0% 77.2% 16.0% 5.4% 1.4% 100.0% 73.1% 16.7% 9.6% 0.6%

280 ��X\XY' 987 100.0% 87.5% 10.8% 1.0% 0.7% 100.0% 87.8% 11.3% 0.2% 0.6%

290 �����lXY' 1,575 100.0% 67.5% 14.3% 12.7% 5.6% 100.0% 81.7% 14.8% 2.2% 1.2%

300 �����lXY' 1,991 100.0% 56.4% 21.7% 14.5% 7.3% 100.0% 64.9% 28.8% 4.1% 2.2%

310 ������lXY' 1,154 100.0% 52.1% 26.0% 13.8% 8.0% 100.0% 66.1% 31.7% 1.6% 0.6%

320 � ���lXY' 337 100.0% 57.2% 21.6% 12.5% 8.8% 100.0% 63.6% 19.5% 13.9% 2.9%

340 gGhGXY' 305 100.0% 80.9% 9.4% 3.9% 5.9% 100.0% 86.8% 9.1% 2.8% 1.4%

480 ¡E:¢E' 10,231 100.0% 82.6% 6.7% 9.0% 1.7% 100.0% 80.2% 10.0% 7.3% 2.6%

gGhG@' 1,263 100.0% 92.8% 6.7% 0.4% 0.1% 100.0% 87.8% 8.8% 3.0% 0.4%

£&';¤<=¥¦W§¨©:z{¨©.ª+�«^¦uª�G¬­®¯Fmuª�°±8¨©4¥G<=m²³´£&'9¤<=¥¦gµ¯TG<=m²³´

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20

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K(LMN( 22.4% 21.0% 33.3% 24.5% 24.5% 24.5%

50 K( 16.2% 16.3% 0.0% 22.4% 22.6% 0.0%

120 OPQMN( 16.9% 16.8% 47.7% 22.5% 20.4% 60.4%

130 RP=STU=VPMN( 6.4% 6.4% 30.0% 13.1% 12.3% 33.1%

140 WXY( 13.8% 13.9% 9.2% 16.5% 16.8% 9.0%

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160 _`=_MQMN(/abcde5 21.4% 21.3% 71.5% 25.8% 27.2% 9.7%

170 ab=fgQMN( 12.8% 12.7% 31.5% 12.9% 12.7% 21.7%

180 hij=k=klYQMN( 16.3% 16.4% 3.8% 22.1% 22.0% 26.8%

190 mn=op=qrsB( 8.0% 7.8% 31.5% 9.8% 9.7% 43.3%

200 tuY( 19.4% 19.0% 24.7% 21.3% 20.0% 38.3%

210 vwMQ=vxMQMN( 17.3% 17.7% 3.5% 19.1% 26.1% 14.7%

220 jyz{|}MQMN( 13.9% 13.7% 25.0% 14.2% 14.1% 22.3%

230 ~�MQMN( 36.3% 35.5% 42.5% 20.0% 19.3% 28.3%

240 ����=qMQ=��MN( 21.1% 21.3% 12.1% 20.0% 19.8% 22.8%

250 �(=�vMQMN( 13.8% 13.5% 22.7% 14.8% 14.5% 28.2%

260 ��( 20.7% 20.9% 17.2% 29.4% 30.8% 2.4%

270 ����MN( 17.4% 17.2% 20.7% 17.3% 18.6% 5.7%

280 ��MQMN( 11.5% 11.0% 39.5% 12.0% 11.4% 74.3%

290 �����bMN( 19.8% 17.5% 30.5% 16.0% 15.3% 35.5%

300 �����bMN( 29.0% 27.8% 33.5% 31.0% 30.7% 34.6%

310 ������bMN( 34.1% 33.3% 36.9% 32.3% 32.4% 25.7%

320 �����bMN( 30.4% 27.4% 41.3% 22.4% 23.4% 17.4%

340 \]^]MN( 15.3% 10.4% 60.3% 10.4% 9.4% 32.8%

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