20100515創造するアーキテクチャ4

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アーバンコンピューティング 2つの意味 中西泰人 慶應義塾大学環境情報学部

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Page 1: 20100515創造するアーキテクチャ4

アーバンコンピューティング

2つの意味

中西泰人慶應義塾大学環境情報学部

Page 2: 20100515創造するアーキテクチャ4

• 携帯電話の位置情報を使ったグループウェア

iCAMS(1999-2002)

Page 3: 20100515創造するアーキテクチャ4

• 位置の近い順に並びかえられるメンバー

• あいうえお順ではなく

• 「いまから会おうよ」たまたま会える機会を提供

• 位置とスケジュールに応じてアドレスリストをソート

• 気遣いのあるコミュニケーション(新しい距離感)

• 位置とアドレスの順番から状況をユーザが読み取る

• 背景知識の違いが意味の違いを生む

iCAMS(1999-2002)

Page 4: 20100515創造するアーキテクチャ4

時空間ポエマー(2002-2004)

Page 5: 20100515創造するアーキテクチャ4

時空間ポエマー(2002-2004)

• 違う街で : 六本木、仙台一番町、仙台卸町、多摩センター、恵比寿

• 違う場所で:路に面したギャラリー・商店街・美術館

Page 6: 20100515創造するアーキテクチャ4

SpaceTracer/カメラバー(2005-2006)

Page 7: 20100515創造するアーキテクチャ4

SpaceTracer/カメラバー(2005-2006)

• 1時間のスローシャッター

• 人の動き方のパターンが分かる

• 顔はぼやけるのでプライバシーを守れる

• 街に偏在するカメラをコミュニケーションに転用できるか?

• 空間的なしつらえでみせる:バーとして

• 固定された眼差し(カメラ)が写す様々な時空間のパターンを空間で共有

Page 8: 20100515創造するアーキテクチャ4

• モノを貸し借りするプラットフォーム http://www.bozaar.com

• 貸す人が貸した人をCCに入れて貸した時の写真をシステムへメール送信

• 写真から顔を抽出して、顔の上にあったモノが貸し借りされたとする

• 返す時は借りた人が貸した人をCCに入れて返した時の写真を送信

• あえて不便な(?)モノの貸し借りを通じて対面コミュニケーションの機会を

• 人どうしの信頼関係を築くきっかけを提供+又貸しを促進するSNS

BOZAAR(2007- )

登録 閲覧

管理・再流通貸し借りの実践

Page 9: 20100515創造するアーキテクチャ4

新しい振る舞い・行動パターン

(振舞・行動・インタラクション)社会設計

建築(空間) 

 情報環境(情報システム)

3次元仮想都市

空間を

情報システムへ

空間的情報システム‥‥‥

情報システムを空間へ

コンパイル ・アジャイル・インタープリタ

位置情報・カメラ・AR ‥‥‥

都市性を

情報システムへ

情報システムを都市へ

Page 10: 20100515創造するアーキテクチャ4

アーバンコンピューティング2つの意味

• 情報システム を 都市へ  :Computing in Urban-area

• 都市性 を 情報システムへ :Computing of Urbanism

• 都市性って??

都市で動かす 都市性を持つ iCAMS ● ● BOZAAR ● 時空間ポエマー ● ● カメラバー ● ●

Page 11: 20100515創造するアーキテクチャ4

都市性とは? 都市とは?• 『都市』の明確な定義がない… orz(Wikipedia)

• 都市とは何か 岩波講座 都市の再生を考える 第1巻 

• 第5章 齋藤純一 都市空間の再編と公共性 - 分断/隔離に抗して

Page 12: 20100515創造するアーキテクチャ4

都市性とは? 都市とは?• 都市空間の特徴:非-排除性・複数性・予見不可能性

• 非-排除性:誰にも開かれている

• 複数性(プルーラリティ):必要や関心、人種や階級、宗教やライフスタイルなどを異にする人々の間に相互の交渉をもたらす

• 予見不可能性:否応無く異質なものに曝され、予期せぬ出来事や新しい接続の可能性が生まれる

• 公共性=非-排除性・複数性 != 共同体(排他性と等質性)

• 同時に制御されるべきリスクとしても見られてきた:多様性が宿す潜在的なカオスに対処し、恐怖や不安の源泉を除去する統治能力

• 両義性を持つ:都市というもののあり方

• 刺激と魅力に富む開かれた空間 + 不安と危険に充ちたアモルフな空間

Page 13: 20100515創造するアーキテクチャ4

都市性とは? 都市とは?• 分断/隔離:ゲイティッドコミュニティ、貧困層の排除

• 私化:複合性や多義性を失い消費や娯楽へ一元的に整序化された商業空間

• 治安管理の強化:セキュリティの私的構築、 恐怖を増幅させるスパイラル

• 公共的なものは都市空間や社会制度として無価値なものとされつつある⇒自由とはそこへ入ってゆくのではなく、そこから離脱すべきものとされる

• 抗する手がかりとして:他者との接点・接触を具体的に回復する

• 都市空間の再-公共化:複数性や多元性の回復=経済+政治/芸術/教育

• 制度による架橋:立場や意見の異なる人々の意見交換を意図的に作る

Page 14: 20100515創造するアーキテクチャ4

全都市カタログ• 別冊宝島の第1号:『都市で生活することを余儀なくされた人たちに、このカ

タログが役立つことを祈ります。』(植草甚一編/片岡義男+北山耕平など)

Page 15: 20100515創造するアーキテクチャ4

Whole Earth Catalog• www.wholeearth.com

• 1960-70年代のヒッピーカルチャーに多大な影響( -> Steve Jobs)

• Stay Hungry, Stay Foolish

Page 16: 20100515創造するアーキテクチャ4

全都市カタログピーナツ・バターが農村の人のための保存食ではなく、都会の人たちのための消費物資となったとき、そこに都市が成立する。都市に住む人びとは、間接的な消費者なのだ。そしてこの間接性は、おカネが支えている。

おカネを支払えばたいていのものは手に入るが、ものごとの真実には直接手で触れることができない。

そしてこの自覚にたって「自分の生活の中に直接性を少しずつでも取り戻す」ためのマニュアル作りをはじめようではないか。

Page 17: 20100515創造するアーキテクチャ4

全都市カタログどう考えても、もう救いようなどのない文明のなかにとりこまれてしまっているぼくたちには、もはやなにものもない。そう思ってあたりをながめると、そこには、大量生産システムから送り出されてくる安価な商品がある。

どうにでもなれといった、やけっぱちで、考えてみれば消極的な自己認識のうえにたつシティ・ボーイなのではなく、むしろ、ぼくたちにはすでに自然などというものはなく、システムの最末端としての商品しかないのであり、だからこそそのような末端商品を馬鹿にすることなく、ぼくたちシティ・ボーイはぼくたちの技術・思想をつくり出していかなければならないのだ。

資本主義とは、ものを買うことによって成りたっている社会なのだから、それをいつのまにか買わされていたシティ・ボーイが、あるとき目覚めると、世界は音をたてて一変する。

Page 18: 20100515創造するアーキテクチャ4

全都市カタログ「都市に生まれ、都市に絶望しながら、都市に生きる」

Page 19: 20100515創造するアーキテクチャ4

都市に生きる• 都市の発達と共に発生した人々の孤独や葛藤

• 農村から開放されたはずの自由な生活…存在の不安

1967 19731959

Page 20: 20100515創造するアーキテクチャ4

ネットに生きる• 情報空間の発達と共に発生した人々の孤独や葛藤

• 実空間から開放されたはずの自由な生活…存在の不安

dividual / 分人 を主題に

Page 21: 20100515創造するアーキテクチャ4

郊外/ケータイ+ネットに生きる• 郊外に生まれ、郊外に絶望しながら、郊外に生きる?

• ネットに生まれ、ネットに絶望しながら、ネットに生きる??

Page 22: 20100515創造するアーキテクチャ4

郊外/ケータイ+ネットに生きる• 郊外に生まれた人にとっては、郊外ではなくジモト

• 携帯の番号を変えない = IDを変えない

• IDを知っている人とはアドホックなコミュニケーションも取る

• ファスト風土的都市・マクドやチェーン居酒屋を駆使(『場面で』)

• ガラパゴス的アーキテクチャに棲む

• 前略プロフィール/リアル/メルボ/爆サイト/アメブロ

• 2ch/ニコニコ動画では匿名で都市的な情報空間を楽しむ

Page 23: 20100515創造するアーキテクチャ4

郊外/ケータイ+ネットに生きる• IDを知らない相手とのコミュニケーション能力は低い…??

• ジモト大好き(?)知らない街/海外へ行かない

• 知らない店に入らない(ネットで調べてから…)

• 初対面の人とはケータイの写真を見せ合うことで間を保つ

• ケータイの利用頻度の上昇と共に農民的になりつつある…??

• 抗する手がかりとして:他者との接点・接触を具体的に回復するには??

都市性  農村性?(誰にも開かれている)  非-排除性    排除性

(異なるスタイルの人々の間の相互作用)   複数性  単一性(予期せぬ出来事+新しい接続の可能性)予見不可能性  予見可能性

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都市+郊外+(ケータイ+ネット)に生きる

1. 逆を行く?

• 身体的なコミュニケーションを作り出す??

• リアルコミュニケーションの能力を高める??

2. 今のままで良い??(それが普通だし、消費社会も行き尽くすまで…)

3. 逆手にとる?

• ケータイ+ネットの中に都市性を / 都市の中でケータイ+ネットを

• ケータイで新しい『場面』を作り出す?? ネットの祭りを都市にも??

Page 25: 20100515創造するアーキテクチャ4

44 Mobile Society Review 未来心理 Vol.006   45

没場所性の物質的豊かさと場所の最良の質とをつなぎあわせる情報技術の使い方はあるだろうか ? 

はじめに

 テクノロジーは時間と空間を絶えず再編成し、世界の構図を描きなおしている。 たとえば、鉄道ができるまでは、都市の時間は太陽の運行などを目安に街ごとに定められていた。教会の鐘の音が届く範囲でだけ、時刻は同期していた。だが、都市間を結ぶ鉄道を「ダイヤ」にそって運用するためには、なによりもまず出発地と到着地の時間が同期していなくてはならない。かくして鉄道会社が国家全体での時間の同期を要請し、「標準時」の制度をつくらせた。 田舎の時間が都会の時間とつながり、諸都市・諸地域の時間が厳密に同期したのである !。 遠く離れた都市とで時計を合わせるためにはリアルタイムの通信技術が必要だ。それを可能にしたのは電信である。線路に併設された電信柱があってはじめて、鉄道はダイヤどおりに運用できる。電柱が「電力柱」ではなく「電信柱」と呼ばれるのは、電力よりも先に電信のために立てられたものだからだ。 鉄道は線路と汽車と電信の複合システムである。この移動/通信テクノロジーが、19世紀の時間と空間を再編成したのであった。 そして今日、多数のネットワークを縦横に相互接続するパーソナルで移動可能な情報通信技術は、さまざまなかたちで人々の生活の構図に変化を及ぼしている。それは鉄道や標準時制度のような露な変化を伴うものではないかわりに、より親密な水準で人々のふるまいのあり方に影響を与えているように思われる。 人々のふるまいのあり方を支える世界の構図を、われわれは「場所」とよぶ。 テクノロジーは繰り返し「場所」を描きなおしていく。しかし同時に、人々がかかわりあうことを通じて「場所」は刻々と新しい「場所」になっていく。

場所の没場所化

 「情報」や「場所」のように、あまりに一般的であたりまえの概念は、幅広く、混乱しており、定義することが難しい。定義は往々にして同語反復に陥る。かといって、議論のために限定的な状況に概念を閉じ込めることは不可能

であり不誠実である。そのような場合には、むしろ、その欠如、不在の状態を見定めることによって、逆にそのシルエットを明瞭に示すことができることがある。 カナダの地理学者エドワード・レルフが『場所の現象学』において提示する「没場所性(placelessness)」という概念は、まさに「場所」の姿をシルエットとして描きだそうとするものである "。レルフによれば、没場所性とは「どの場所も外見ばかりか雰囲気まで同じようになってしまい、場所のアイデンティティが、どれも同じようなあたりさわりのない経験しか与えなくなってしまうほどまでに弱められてしまうこと」である。没場所性は「個性的な場所の無造作な破壊と、場所の意義に対するセンスの欠如がもたらす、規格化された景観の形成」によっておこる "。 没場所性は北米に特有の現象などではない。日本においても普通に見られる。たとえば、ロードサイドショップがケバケバしい看板を並べて乱立するバイパス沿道は、典型的な没場所性に覆われた空間である。サイディングの色だけ違えた建て売り住宅が隙間なく並ぶミニ開発の分譲住宅地も、ガラスと花崗岩のカーテンウォールをかぶった高層オフィスビルとコンドミニアムがせめぎあう大規模再開発地も、オープンカフェとコンビニと抽象彫刻とでにぎやかに飾り立てられた足元の “アメニティ・スペース” も、等しく没場所性に支配されている。 没場所性は、単に「意義ある場所をなくした環境」のことをさすばかりでなく、「場所のもつ意義を認めない潜在的姿勢」のことでもある。それは「ますます支配的になりつつある一つの態度であると同時に、またその態度の表現」だとされる。場所に対する姿勢が切実でなく安易な様子は、今日の「場所への愛着の喪失と本物の場所づくりの能力の衰え」の現れなのである "。そうした姿勢でつくられる今日の景観は、否応なく没場所性を帯びるであろう。 しかし同時に没場所性は「場所からの自由をも意味し、日常性は官僚的消費社会のワナとともに、心地よさと安全さを意味する」ものであるし、没場所的ではあっても現代の景観は「一般に心地よいまったく効率的な地理」を構成しているともいえる "。逆に、政治的あるいは経済的理由で自由に移動できない人々にとっては、場所は「牢獄」である。我々は没場所性を自ら望んでもいるのだ。

没場所性の物質的豊かさと場所の最良の質とをつなぎあわせる情報技術の使い方はあるだろうか?

本江正茂 Motoe Ma sa sh ige  中西泰人 Na k a n ish i Ya suto

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都市+郊外+(ケータイ+ネット)に生きる

• 逆手の戦法

• 没場所性の物質的豊かさと場所の最良の質とをつなぎあわせる情報技術の使い方はあるだろうか ? - Mobile Society Review 未来心理[6号]

• 街に偏在するカメラをコミュニケーションに転用できるか?

• = 監視カメラを別の目的に転用できるか?

• 他には??

• ケータイ/電子マネー/ファスト風土/ネトゲ廃人/

• その戦法では、消費社会・都市に直接性を取り戻せなかった…??

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3次元仮想都市

空間を

情報システムへ

空間的情報システム‥‥‥

情報システムを空間へ

コンパイル ・アジャイル・インタープリタ

位置情報・カメラ・AR ‥‥‥

都市性を

情報システムへ

情報システムを都市へ

アーバンコンピューティング2つの意味

• 情報システム を 都市へ  :Computing in Urban-area

• 都市性 を 情報システムへ :Computing of Urbanism

3. 逆手にとる? 直接性の回復につながるか??

• ケータイ+ネットの中に都市性を / 都市の中でケータイ+ネットを

• ケータイで新しい『場面』を作り出す?? ネットの祭りを都市にも?

• 直接性の回復につながるか??

• 非-排除性・複数性・予見不可能性はどうか??